(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ゴム栓
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
(21)【出願番号】P 2020068155
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚田 並輝
(72)【発明者】
【氏名】深津 幸弘
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-142118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を貫通させる筒状のシール機能部と、前記電線を貫通させる筒状部とを有し、
前記シール機能部は、端子収容室の内周面と前記電線の外周面とに弾性的に密着することでシール性能を発揮し、
前記筒状部は、前記シール機能部よりも後方に配され、
前記筒状部の外周に、前記筒状部に対して相対変位が可能な
複数の錘部が形成されて
おり、
前記複数の錘部は、周方向に間隔を空けて配置され、前記筒状部の外周から径方向に突出した形態であるゴム栓。
【請求項2】
前記複数の錘部は、前記筒状部の軸線方向に見た背面視において突出端部を分岐させた形状である請求項1に記載のゴム栓。
【請求項3】
前記錘部の突出端部はT字形に分岐した形状である請求項2に記載のゴム栓。
【請求項4】
電線を貫通させる筒状のシール機能部と、前記電線を貫通させる筒状部とを有し、
前記シール機能部は、端子収容室の内周面と前記電線の外周面とに弾性的に密着することでシール性能を発揮し、
前記筒状部は、前記シール機能部よりも後方に配され、
前記筒状部の外周に、前記筒状部に対して相対変位が可能な錘部が形成されており、
前記錘部は、前記筒状部の外周から径方向に突出し、前記筒状部の軸線方向に見た背面視において突出端部を分岐させた形状であり、
前記錘部の突出端部はY字形に分岐した形状であ
るゴム栓。
【請求項5】
電線を貫通させる筒状のシール機能部と、前記電線を貫通させる筒状部とを有し、
前記シール機能部は、端子収容室の内周面と前記電線の外周面とに弾性的に密着することでシール性能を発揮し、
前記筒状部は、前記シール機能部よりも後方に配され、
前記筒状部の外周に、前記筒状部に対して相対変位が可能な錘部が形成されており、
前記錘部は、前記筒状部の外周から径方向に突出し、前記筒状部の軸線方向に見た背面視において突出端部を分岐させた形状であり、
前記錘部の突出端部はm字形に分岐した形状であ
るゴム栓。
【請求項6】
前記筒状部の内径寸法は、前記電線の外径寸法以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のゴム栓。
【請求項7】
前記電線を貫通させる筒状の延長部を有し、
前記延長部は、前記シール機能部の後端から後方へ延出して、前記筒状部の前端に連なった形態であり、
前記シール機能部と前記延長部が弾性変形していない自由状態において、前記延長部の径方向の肉厚寸法は前記シール機能部の径方向の最大肉厚寸法よりも小さい請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のゴム栓。
【請求項8】
前記シール機能部の前端から前方へ延出し、端子金具の固着を可能にする筒状の端子固着部を有しており、
前記錘部を含む前記筒状部の外周形状が、前記端子固着部の外周形状とは異なっている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のゴム栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴム栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電線を貫通した状態でハウジング内に挿入されるゴム栓が開示されている。ゴム栓の前端部は、電線とともに端子金具に圧着されている。電線のうちゴム栓の後方へ導出された部分は、ハウジングの外部において配索されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴム栓が車両用のコネクタに取り付けられた場合、走行中の振動によって、電線が、ゴム栓の後端を支点として首を振るように揺動する。このとき、ゴム栓の後端では電線が小さい曲率半径で屈曲するので、電線の揺動が繰り返されると、電線がゴム栓の後端において断線することが懸念される。
【0005】
本開示のゴム栓は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の断線を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のゴム栓は、
電線を貫通させる筒状のシール機能部と、前記電線を貫通させる筒状部とを有し、
前記シール機能部は、端子収容室の内周面と前記電線の外周面とに弾性的に密着することでシール性能を発揮し、
前記筒状部は、前記シール機能部よりも後方に配され、
前記筒状部の外周に、前記筒状部に対して相対変位が可能な錘部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電線の断線を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】
図4は、端子金具に固着したゴム栓を端子収容室に収容した状態の側断面図である。
【
図7】
図7は、実施例4のゴム栓の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のゴム栓は、
(1)電線を貫通させる筒状のシール機能部と、前記電線を貫通させる筒状部とを有し、前記シール機能部は、端子収容室の内周面と前記電線の外周面とに弾性的に密着することでシール性能を発揮し、前記筒状部は、前記シール機能部よりも後方に配され、前記筒状部の外周に、前記筒状部に対して相対変位が可能な錘部が形成されている。この構成によれば、筒状部が電線に追従して揺動するときに、錘部が筒状部に対して相対変位することによって、電線の振動エネルギーが減衰される。したがって、電線が断線する虞はない。
【0010】
(2)前記錘部は、前記筒状部の外周から径方向に突出し、前記筒状部の軸線方向に見た背面視において突出端部を分岐させた形状であることが好ましい。この構成によれば、背面視において、錘部の重心が筒状部の外周面から離隔した部位に配されるので、電線の振動エネルギーを減衰する効果が高い。
【0011】
(3)前記錘部の突出端部はT字形に分岐した形状であることが好ましい。この構成によれば、背面視において、錘部の重心が筒状部の外周面から離隔した部位に配されるので、電線の振動エネルギーを減衰する効果が高い。
【0012】
(4)前記錘部の突出端部はY字形に分岐した形状であることが好ましい。この構成によれば、背面視において、錘部の重心が筒状部の外周面から離隔した部位に配されるので、電線の振動エネルギーを減衰する効果が高い。
【0013】
(5)前記錘部の突出端部はm字形に分岐した形状であることが好ましい。この構成によれば、背面視において、錘部の重心が筒状部の外周面から離隔した部位に配されるので、電線の振動エネルギーを減衰する効果が高い。
【0014】
(6)前記筒状部の内径寸法は、前記電線の外径寸法以下であることが好ましい。この構成によれば、筒状部の内周面を電線の外周面に密着させることができるので、電線の振動エネルギーを効果的に減衰することができる。
【0015】
(7)前記電線を貫通させる筒状の延長部を有し、前記延長部は、前記シール機能部の後端から後方へ延出して、前記筒状部の前端に連なった形態であり、前記シール機能部と前記延長部が弾性変形していない自由状態において、前記延長部の径方向の肉厚寸法は前記シール機能部の径方向の最大肉厚寸法よりも小さいことが好ましい。この構成によれば、電線を貫通させたゴム栓を端子収容室に収容した状態では、シール機能部の径方向の潰れ量に比べると、延長部の径方向の潰れ量が小さいので、延長部はシール機能部に比べると弾性変形し易い。ゴム栓の後方で電線が揺動したときに、延長部の内周後端部が電線の動きに追従して弾性変形するので、電線が小さい曲率半径で屈曲する虞はない。したがって、電線の揺動が繰り返されても、電線が破断する虞はない。
【0016】
(8)前記シール機能部の前端から前方へ延出し、端子金具の固着を可能にする筒状の端子固着部を有しており、前記錘部を含む前記筒状部の外周形状が、前記端子固着部の外周形状とは異なっていることが好ましい。この構成によれば、ゴム栓の前後の向きを識別することができるので、端子金具が誤って筒状部に固着されてしまうことを防止できる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のゴム栓Aを具体化した実施例1を、
図1~
図4を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、前後の方向については、
図2,4における左方を前方と定義する。前後方向と軸線方向を、同義で用いる。
【0018】
本実施例のゴム栓Aは、
図4に示すように、導体21を絶縁被覆22で包囲した電線20の前端部を包囲している。ゴム栓Aは、電線20とともに端子金具24に固着され、ハウジング28の端子収容室29内に収容されるようになっている。ゴム栓Aは、電線20の外周面と端子収容室29の内周面との間を液密状にシールする防水機能を発揮する。ハウジング28は車両に搭載されるワイヤーハーネスのコネクタ(図示省略)を構成する。
【0019】
端子金具24は、全体として前後方向に細長い形状である。端子金具24の後端部には、電線20の前端部に圧着するためのオープンバレル状の圧着部25が形成されている。圧着部25は、ワイヤバレル部26と、ワイヤバレル部26の後端に連なるインシュレーションバレル部27とによって構成されている。ワイヤバレル部26は、電線20の前端部において絶縁被覆22を除去して露出させた導体21に固着されている。インシュレーションバレル部27は、電線20に外嵌された状態のゴム栓Aの前端部の端子固着部13に固着されている。
【0020】
ゴム栓Aは、全体として円筒形をなす単一部品である。
図1,2に示すように、ゴム栓Aは、シール機能部10と、端子固着部13と、延長部14と、筒状部15とを有する。シール機能部10の内周面には、周方向に延びる複数の内周側リップ部11が、前後方向に一定ピッチで形成されている。シール機能部10の外周面には、周方向に延びる複数の外周側リップ部12が、前後方向に一定ピッチで形成されている。内周側リップ部11は、電線20の絶縁被覆22の外周面に対し液密状に密着する。外周側リップ部12は、端子収容室29の内周面に対し液密状に密着する。
【0021】
端子固着部13は、シール機能部10の先端から前方へ同軸状に延出した形態である。ゴム栓Aに電線20が貫通していない状態における端子固着部13の各寸法は、次の通りである。端子固着部13の内径寸法と外径寸法は、いずれも、端子固着部13の前端から後端まで全長にわたって一定の寸法である。端子固着部13の内径寸法は、シール機能部10の最小内径寸法よりも大きい寸法である。端子固着部13の外径寸法は、シール機能部10の最大外径寸法よりも小さい寸法である。
【0022】
延長部14は、シール機能部10の後端から後方へ同軸状に延出した形態である。ゴム栓Aに電線20が貫通していない状態における延長部14の各寸法は、次の通りである。延長部14の前後寸法は、シール機能部10及び端子固着部13の前後寸法よりも小さい。延長部14の内径寸法と外径寸法は、いずれも、延長部14の前端から後端まで全長にわたって一定の寸法である。延長部14の内径寸法は、シール機能部10の最小内径寸法よりも大きい寸法である。延長部14の内径寸法は、電線20の外径寸法以下、即ち電線20の外径寸法と同じか、電線20の外径寸法よりも小さい寸法である。延長部14の外径寸法は、シール機能部10の最大外径寸法よりも小さい寸法である。延長部14の外径寸法は、端子収容室29の内径寸法以上、即ち端子収容室29の内径寸法と同じか、端子収容室29の内径寸法よりも少し大きい寸法である。延長部14の径方向の肉厚寸法は、シール機能部10の径方向の最大肉厚寸法よりも小さい。
【0023】
筒状部15は、外周に識別部としての複数の錘部16と複数の凹部17とを有している。
図1,3に示すように、複数の錘部16と複数の凹部17は、周方向に一定ピッチを空けて交互に配置されている。錘部16は、筒状部15の前端から後端まで全長に亘って形成されている。錘部16は、筒状部15の外周から径方向に突出している。錘部16の基端18は筒状部15の外周面に連なっている。筒状部15の軸線方向に見た背面視(
図3を参照)において、錘部16は、突出端部をT字形に分岐させた形状である。背面視において、錘部16の重心は、錘部16の基端18よりも突出端に近い位置、即ち筒状部15の外周から離隔した位置に配置されている。複数の錘部16と凹部17は、識別部としての機能を兼ね備えている。識別部は、端子固着部13と筒状部15との形状の違いを目視によって識別するための部位である。
【0024】
電線20のうちゴム栓Aの後端から後方へ導出してハウジング28の外部に配索された部分を導出領域と定義する。電線20の導出領域が上下左右に揺動すると、筒状部15が電線20に追従して弾性的に揺動するとともに、各錘部16が、筒状部15に対して弾性的に相対変位する。筒状部15の弾性的な揺動と錘部16の弾性的な相対変位とにより、電線20の振動エネルギーが減衰されるので、ゴム栓Aの後端部における電線20の振幅が低減される。したがって、電線20が断線する虞はない。
【0025】
ゴム栓Aに電線20が貫通していない状態における筒状部15の各寸法は、次の通りである。筒状部15の内径寸法は、筒状部15の前端から後端まで全長にわたって一定の寸法であり、延長部14の内径寸法と同じ寸法である。したがって、延長部14の内周面と筒状部15の内周面との間には、段差が存在しない。筒状部15のうち凹部17が形成されている部分の外径寸法は、延長部14の外径寸法よりも小さい寸法である。筒状部15のうち凹部17が形成されていない部分、つまり錘部16が形成されている部分の外径寸法は、延長部14の外径寸法よりも大きい寸法である。ゴム栓Aの軸線を湾曲させるような外力が作用した状態における筒状部15の剛性は、延長部14の剛性よりも小さい。
【0026】
端子金具24と電線20に固着されたゴム栓Aが、端子収容室29に挿入された状態では、端子固着部13の全体と、シール機能部10の全体と、延長部14の全体が端子収容室29内に収容される。シール機能部10は径方向に潰れるように弾性変形し、内周側リップ部11が電線20の外周面に対して弾性的に密着し、外周側リップ部12が端子収容室29の内周面に対して弾性的に密着する。この密着した接触形態により、電線20の外周と端子収容室29の内周との隙間が液密状にシールされる。延長部14の内周面は電線20の外周面に接触し、延長部14の外周面は端子収容室29の内周面に接触する。
【0027】
筒状部15の全体は、端子収容室29の外部、つまりハウジング28の外部後方へ突出している。電線20のうちゴム栓Aよりも後方の領域も、ハウジング28の外部後方へ導出されている。電線20のうちハウジング28の外部に配索された導出領域は、車両の走行中の振動やエンジンの振動によって首を振るように揺動する。このとき、電線20の導出領域は、ゴム栓Aの後端部を支点として揺動する。電線20が揺動の支点において小さい曲率半径で屈曲する場合は、揺動の繰り返しによって電線20の導体21が破断することが懸念される。
【0028】
この対策として、ゴム栓Aの後端部には筒状部15が形成されている。筒状部15は、延長部14よりも剛性が低いので、電線20が揺動すると、筒状部15は電線20に追従して弾性的に揺動する。筒状部15の弾性変形によって電線20の振動エネルギーが減衰されるので、筒状部15及び延長部14における電線20の揺動の振幅が低減される。
【0029】
また、筒状部15が柔軟に弾性変形すると、筒状部15の前端が連なる延長部14の後端において、電線20が小さい曲率半径で屈曲し、この屈曲部分で電線20が破断することが懸念される。この対策として、延長部14の径方向の肉厚寸法を、シール機能部10の最大肉厚寸法よりも小さくした。これにより、延長部14が電線20と端子収容室29との間で径方向に潰される量、つまり径方向の弾性変形量が、シール機能部10よりも小さくなるので、延長部14の内周部に生じる応力は、シール機能部10に生じる応力に比べると小さい。つまり、電線20が揺動したときに、延長部14の内周後端部は比較的弾性変形し易い。したがって、電線20が延長部14の後端において小さい曲率半径で屈曲する虞がなく、電線20の破断が防止されている。
【0030】
本実施例1のゴム栓Aは、電線20を貫通させる筒状のシール機能部10と、電線20を貫通させる筒状部15とを有する。シール機能部10は、端子収容室29の内周面と電線20の外周面とに弾性的に密着することでシール性能を発揮する。筒状部15は、シール機能部10よりも剛性が低く、シール機能部10の後方に配されている。電線20がゴム栓Aの後方で揺動したときに、筒状部15が電線20に追従して弾性的に揺動することによって、電線20の振動エネルギーが減衰される。これにより、ゴム栓A内における電線20の揺動の振幅が低減されるので、電線20の破断を防止することができる。
【0031】
錘部16は、筒状部15の外周から径方向に突出している。錘部16は、筒状部15の軸線方向に見た背面視において、突出端部をT字形に分岐させた形状である。この構成によれば、背面視において、錘部16の重心が筒状部15の外周面から離隔した部位に配されるので、電線20の振動エネルギーを減衰する効果が高い。
【0032】
ゴム栓Aは、電線20を貫通させる筒状の延長部14を有する。延長部14は、シール機能部10の後端から後方へ延出して、筒状部15の前端に連なった形態である。シール機能部10と延長部14が弾性変形していない自由状態において、延長部14の径方向の肉厚寸法はシール機能部10の径方向の肉厚寸法よりも小さい。電線20を貫通させたゴム栓Aを端子収容室29に収容した状態では、シール機能部10の径方向の潰れ量に比べると、延長部14の径方向の潰れ量が小さいので、延長部14はシール機能部10に比べると弾性変形し易い。ゴム栓Aの後方で電線20が揺動したときに、延長部14の内周後端部が電線20の動きに追従して弾性変形するので、電線20が小さい曲率半径で屈曲する虞はない。したがって、電線20の揺動が繰り返されても、電線20が破断する虞はない。
【0033】
筒状部15の内径寸法は、電線20の外径寸法以下、即ち電線20の外径寸法と同じか、電線20の外径寸法よりも小さい寸法なので、筒状部15の内周面を電線20の外周面に密着させることができる。これにより、電線20の振動エネルギーを効果的に減衰することができる。筒状部15の内径寸法は、延長部14の内径寸法と同じ寸法であるから、延長部14の内周後端と筒状部15の内周前端とが連なる部分では、段差が生じない。これにより、電線20における応力の集中を緩和できる。
【0034】
筒状部15は、外周面に凹部17を形成した形態であるから、筒状部15の内周面を断面が円形の形状に形成しても、筒状部15の剛性を低下させることができる。これにより、筒状部15の内周面を電線20の外周面に密着させることが可能なので、電線20の振動エネルギーを効果的に減衰することができる。
【0035】
ゴム栓Aは、シール機能部10の前端から前方へ延出し、端子金具24の固着を可能にする筒状の端子固着部13を有している。筒状部15の外周には、端子固着部13の外周面とは形状の異なる識別部として凹部17と錘部16が形成されている。この凹部17と錘部16により、ゴム栓Aの前後の向きを識別することができるので、端子金具24の圧着部25が誤って筒状部15に固着されてしまうことを防止できる。
【0036】
[実施例2]
本開示のゴム栓Bを具体化した実施例2を、
図5を参照して説明する。本実施例2のゴム栓Bは、筒状部30を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0037】
本実施例2の筒状部30の外周には、複数の錘部31と複数の凹部32が形成されている。複数の錘部31と複数の凹部32は、周方向に一定ピッチを空けて交互に配置されている。錘部31は、筒状部30の外周から径方向に突出している。錘部31の基端33は筒状部30の外周面に連なっている。筒状部30の軸線方向に見た背面視(
図5を参照)において、錘部31は、突出端部をY字形に分岐させた形状である。背面視において、錘部31の重心は、錘部31の基端33よりも突出端に近い位置、即ち筒状部30の外周から離隔した位置に配置されている。
【0038】
電線20(
図5には図示省略)の導出領域が揺動すると、筒状部30が電線20に追従して弾性的に揺動するとともに、各錘部31が、筒状部30に対して弾性的に相対変位する。筒状部30の弾性的な揺動と錘部31の弾性的な相対変位とにより、電線20の振動エネルギーが減衰されるので、ゴム栓Bの後端部における電線20の振幅が低減される。したがって、電線20が断線する虞はない。複数の錘部31と凹部32は、識別部としての機能を兼ね備えている。識別部は、端子固着部13(
図5には図示省略)と筒状部30との形状の違いを目視によって識別するための部位である。
【0039】
[実施例3]
本開示のゴム栓Cを具体化した実施例3を、
図6を参照して説明する。本実施例3のゴム栓Cは、筒状部35を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0040】
本実施例3の筒状部35の外周には、複数の錘部36と複数の凹部37が形成されている。図に示すように、複数の錘部36と複数の凹部37は、周方向に一定ピッチを空けて交互に配置されている。錘部36は、筒状部35の外周から径方向に突出している。錘部36の基端38は筒状部35の外周面に連なっている。筒状部35の軸線方向に見た背面視(
図6を参照)において、錘部36は、突出端部をm字形に分岐させた形状である。背面視において、錘部36の重心は、錘部36の基端38よりも突出端に近い位置、即ち筒状部35の外周から離隔した位置に配置されている。
【0041】
電線20(
図6には図示省略)の導出領域が揺動すると、筒状部35が電線20に追従して弾性的に揺動するとともに、各錘部36が、筒状部35に対して弾性的に相対変位する。筒状部35の弾性的な揺動と錘部36の弾性的な相対変位とにより、電線20の振動エネルギーが減衰されるので、ゴム栓Cの後端部における電線20の振幅が低減される。したがって、電線20が断線する虞はない。複数の錘部36と凹部37は、識別部としての機能を兼ね備えている。識別部は、端子固着部13(
図6には図示省略)と筒状部35との形状の違いを目視によって識別するための部位である。
【0042】
[実施例4]
本開示のゴム栓Dを具体化した実施例4を、
図7を参照して説明する。本実施例4のゴム栓Dは、筒状部40を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0043】
本実施例4の筒状部40の外周には、円筒形の錘部41と、錘部41を筒状部40に繋ぐ支持部42が形成されている。錘部41の内径寸法は、筒状部40の外径寸法よりも大きい寸法である。錘部41は筒状部40と同軸状に配置されている。支持部42は、ゴム栓Dの軸線と直角な円環形の板状をなす。支持部42の内周は筒状部40の外周に連なっている。支持部42の外周縁は、錘部41の内周前端部に連なっている。
【0044】
筒状部40の径方向の肉厚寸法は、延長部の径方向の肉厚寸法に比べると、充分に小さい寸法である。支持部42の前後方向の板厚寸法は、錘部41の径方向の肉厚寸法よりも小さい寸法である。支持部42の板厚寸法は、筒状部40の径方向の肉厚寸法以下、即ち筒状部40の径方向の肉厚寸法と同じか、筒状部40の肉厚寸法よりも僅かに小さい寸法、あるいは筒状部40の肉厚寸法よりも僅かに大きい寸法である。錘部41の径方向の肉厚寸法は、筒状部40の肉厚寸法及び支持部42の板厚寸法に比べると、十分に大きい寸法である。錘部41の内径寸法は筒状部40の外径寸法よりも大きいので、錘部41の重量は、筒状部40の重量に比べると、充分に大きい。
【0045】
電線20(
図7には図示省略)の導出領域が揺動すると、筒状部40が電線20に追従して弾性的に揺動するとともに、錘部41が、筒状部40に対して弾性的に相対変位する。このとき、錘部41自体は弾性変形しないが、筒状部40と錘部41を繋ぐ支持部42が弾性変形する。筒状部40の弾性的な揺動と錘部41の弾性的な相対変位とにより、電線20の振動エネルギーが減衰されるので、ゴム栓Dの後端部における電線20の振幅が低減される。したがって、電線20が断線する虞はない。複数の錘部41は、識別部としての機能を兼ね備えている。識別部は、端子固着部13と筒状部40との形状の違いを目視によって識別するための部位である。
【0046】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例1~4に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例1~4では、筒状部の内径寸法は電線の外径寸法以下であるが、筒状部の内径寸法は電線の外径寸法よりも大きい寸法であってもよい。
上記実施例1~4では、シール機能部の後端と筒状部との間に延長部を形成したが、延長部を有せず、シール機能部の後端に筒状部の前端が直接連なった形態であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…シール機能部
11…内周側リップ部
12…外周側リップ部
13…端子固着部
14…延長部
15、30、35、40…筒状部
16、31、36、41…錘部(識別部)
17、32、37…凹部(識別部)
18、33、38…錘部の基端
20…電線
21…導体
22…絶縁被覆
24…端子金具
25…圧着部
26…ワイヤバレル部
27…インシュレーションバレル部
28…ハウジング
29…端子収容室
40…筒状部
42…支持部
A、B、C、D…ゴム栓