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特許7371580車両制御装置、方法、プログラム、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】車両制御装置、方法、プログラム、及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 1/00 20060101AFI20231024BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20231024BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20231024BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231024BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B60L1/00 L
B60L50/60
B60L58/10
H02J7/00 P
H02J7/00 303C
H02J7/10 B
H02J7/10 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020117159
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2022014677
(43)【公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河井 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 真一
(72)【発明者】
【氏名】大野 徹
(72)【発明者】
【氏名】日下 康
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-072484(JP,A)
【文献】特開2019-205275(JP,A)
【文献】特開2008-289303(JP,A)
【文献】特開平10-304503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00
B60L 50/60
B60L 58/10
H02J 7/00
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バッテリーと、第2バッテリーと、前記第2バッテリーを電源とする補機負荷と、前記第1バッテリーから前記第2バッテリー及び前記補機負荷の少なくとも一方への電力供給を行うDCDCコンバーターとを備えた、車両に搭載される車両制御装置であって、
前記DCDCコンバーターの動作及び前記補機負荷の動作を制御する動作制御部と、
車両の始動用スイッチの状態及び乗車の状態を判断する判断部と、
前記第2バッテリーの電圧を取得し、前記第2バッテリーの電圧に基づいて前記第2バッテリーの蓄電率を導出する取得部と、を備え、
前記動作制御部は、前記判断部において前記始動用スイッチがオフ状態かつユーザーが車内にいると推定できる非始動乗車状態であると判断された場合
前記蓄電率が第1閾値以上である場合は、前記補機負荷を駆動させた後に前記DCDCコンバーターを駆動させ、
前記蓄電率が前記第1閾値未満である場合は、前記DCDCコンバーターを駆動させた後に前記補機負荷を駆動させる、
車両制御装置。
【請求項2】
第1バッテリーと、第2バッテリーと、前記第2バッテリーを電源とする補機負荷と、前記第1バッテリーから前記第2バッテリー及び前記補機負荷の少なくとも一方への電力供給を行うDCDCコンバーターとを備えた、車両に搭載される車両制御装置であって、
前記DCDCコンバーターの動作及び前記補機負荷の動作を制御する動作制御部と、
車両の始動用スイッチの状態及び乗車の状態を判断する判断部と、
前記第2バッテリーの電圧及び温度を取得し、前記第2バッテリーの電圧及び温度に基づいて前記第2バッテリーの内部抵抗を導出する取得部と、を備え、
前記判断部において前記始動用スイッチがオフ状態かつユーザーが車内にいると推定できる非始動乗車状態であると判断された場合、
前記取得部は、前記第2バッテリーの電圧、前記第2バッテリーの内部抵抗、及び前記非始動乗車状態における第1期間に前記補機負荷が消費すると推定される推定消費電流に基づいて、前記非始動乗車状態の前記第1期間が経過した後の前記第2バッテリーの電圧である推定低下電圧を導出し、
前記動作制御部は、前記非始動乗車状態において、
前記推定低下電圧が第2閾値以上である場合、前記補機負荷を駆動させた後に前記DCDCコンバーターを駆動させ、
前記推定低下電圧が前記第2閾値未満である場合、前記DCDCコンバーターを駆動させた後に前記補機負荷を駆動させる、
両制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記第2バッテリーの電圧に基づいて求められる前記第2バッテリーの蓄電率と前記第2バッテリーの温度とに基づいて、前記第2バッテリーの内部抵抗を導出する、
請求項に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記第2バッテリーの内部抵抗と前記推定消費電流との乗算によって求められる電圧降下分を、前記非始動乗車状態と判断した直後の前記第2バッテリーの電圧から減算することによって、前記推定低下電圧を導出する、
請求項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記動作制御部は、前記DCDCコンバーターを駆動させる前に、前記第1バッテリーと前記DCDCコンバーターとの電気的な導通状態を切り替えるリレーを、接続状態に制御する、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
第1バッテリーと、第2バッテリーと、前記第2バッテリーを電源とする補機負荷と、前記第1バッテリーから前記第2バッテリー及び前記補機負荷の少なくとも一方への電力供給を行うDCDCコンバーターとを備えた、車両に搭載される車両制御装置のコンピューターが実行する制御方法であって、
車両の始動用スイッチの状態及び乗車の状態を判断するステップと、
前記第2バッテリーの電圧を取得し、前記第2バッテリーの電圧に基づいて前記第2バッテリーの蓄電率を導出するステップと、
前記始動用スイッチがオフ状態かつユーザーが車内にいると推定できる非始動乗車状態であると判断した場合であって前記蓄電率が第1閾値以上である場合は、前記補機負荷を駆動させた後に前記DCDCコンバーターを駆動させるステップと、
前記非始動乗車状態であると判断した場合であって前記蓄電率が前記第1閾値未満である場合は、前記DCDCコンバーターを駆動させた後に前記補機負荷を駆動させるステップと、を含む、
制御方法。
【請求項7】
第1バッテリーと、第2バッテリーと、前記第2バッテリーを電源とする補機負荷と、前記第1バッテリーから前記第2バッテリー及び前記補機負荷の少なくとも一方への電力供給を行うDCDCコンバーターとを備えた、車両に搭載される車両制御装置のコンピューターが実行する制御方法であって、
車両の始動用スイッチの状態及び乗車の状態を判断するステップと、
前記第2バッテリーの電圧及び温度を取得し、前記第2バッテリーの電圧及び温度に基づいて前記第2バッテリーの内部抵抗を導出するステップと、
前記始動用スイッチがオフ状態かつユーザーが車内にいると推定できる非始動乗車状態であると判断された場合、前記第2バッテリーの電圧、前記第2バッテリーの内部抵抗、及び前記非始動乗車状態における第1期間に前記補機負荷が消費すると推定される推定消費電流に基づいて、前記非始動乗車状態の前記第1期間が経過した後の前記第2バッテリーの電圧である推定低下電圧を導出するステップと、
前記非始動乗車状態において、前記推定低下電圧が第2閾値以上である場合、前記補機負荷を駆動させた後に前記DCDCコンバーターを駆動させるステップと、
前記非始動乗車状態において、前記推定低下電圧が前記第2閾値未満である場合、前記DCDCコンバーターを駆動させた後に前記補機負荷を駆動させるステップと、を含む
制御方法。
【請求項8】
第1バッテリーと、第2バッテリーと、前記第2バッテリーを電源とする補機負荷と、前記第1バッテリーから前記第2バッテリー及び前記補機負荷の少なくとも一方への電力供給を行うDCDCコンバーターとを備えた、車両に搭載される車両制御装置のコンピューターに実行させる制御プログラムであって、
車両の始動用スイッチの状態及び乗車の状態を判断するステップと、
前記第2バッテリーの電圧を取得し、前記第2バッテリーの電圧に基づいて前記第2バッテリーの蓄電率を導出するステップと、
前記始動用スイッチがオフ状態かつユーザーが車内にいると推定できる非始動乗車状態であると判断した場合であって前記蓄電率が第1閾値以上である場合は、前記補機負荷を駆動させた後に前記DCDCコンバーターを駆動させるステップと、
前記非始動乗車状態であると判断した場合であって前記蓄電率が前記第1閾値未満である場合は、前記DCDCコンバーターを駆動させた後に前記補機負荷を駆動させるステップと、を含む、
制御プログラム。
【請求項9】
第1バッテリーと、第2バッテリーと、前記第2バッテリーを電源とする補機負荷と、前記第1バッテリーから前記第2バッテリー及び前記補機負荷の少なくとも一方への電力供給を行うDCDCコンバーターとを備えた、車両に搭載される車両制御装置のコンピューターに実行させる制御プログラムであって、
車両の始動用スイッチの状態及び乗車の状態を判断するステップと、
前記第2バッテリーの電圧及び温度を取得し、前記第2バッテリーの電圧及び温度に基づいて前記第2バッテリーの内部抵抗を導出するステップと、
前記始動用スイッチがオフ状態かつユーザーが車内にいると推定できる非始動乗車状態であると判断された場合、前記第2バッテリーの電圧、前記第2バッテリーの内部抵抗、及び前記非始動乗車状態における第1期間に前記補機負荷が消費すると推定される推定消費電流に基づいて、前記非始動乗車状態の前記第1期間が経過した後の前記第2バッテリーの電圧である推定低下電圧を導出するステップと、
前記非始動乗車状態において、前記推定低下電圧が第2閾値以上である場合、前記補機負荷を駆動させた後に前記DCDCコンバーターを駆動させるステップと、
前記非始動乗車状態において、前記推定低下電圧が前記第2閾値未満である場合、前記DCDCコンバーターを駆動させた後に前記補機負荷を駆動させるステップと、を含む、
制御プログラム。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両制御装置を搭載した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される車両制御装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、降車時や乗車時などの車両が走行していない始動用スイッチがオフ状態において、電動モーターなどの主機と呼ばれる車載機器に電力を供給する高圧バッテリーから、電子ミラーや乗車支援機器などの補機と呼ばれる車載機器(補機負荷)に電力を供給する補機バッテリーへ、電力供給を行う電源装置が開示されている。
【0003】
この特許文献1に記載の電源装置では、補機負荷の消費電力が所定値よりも大きい場合に、DCDCコンバーターを駆動させて高圧バッテリーから補機負荷への電力供給を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-205275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の電源装置では、DCDCコンバーターを駆動させるタイミングと補機負荷を駆動させるタイミングとの関係が考慮されていない。このため、補機バッテリーが補機負荷を駆動するために必要な電力を供給できない状態(蓄電率や電圧)である場合に、DCDCコンバーターの駆動処理よりも先に補機負荷の駆動処理を実施してしまうと、補機負荷が駆動しないおそれがある。
【0006】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、車両の始動用スイッチがオフかつユーザーが乗車中であると推定される状態において、補機負荷を確実に駆動させることができる車両制御装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、第1バッテリーと、第2バッテリーと、第2バッテリーを電源とする補機負荷と、第1バッテリーから第2バッテリー及び補機負荷の少なくとも一方への電力供給を行うDCDCコンバーターとを備えた、車両に搭載される車両制御装置であって、DCDCコンバーターの動作及び補機負荷の動作を制御する動作制御部と、車両の始動用スイッチの状態及び乗車の状態を判断する判断部と、第2バッテリーの電圧を取得する取得部と、を備え、動作制御部は、判断部において始動用スイッチがオフ状態かつユーザーが車内にいると推定できる非始動乗車状態であると判断された場合、第2バッテリーの状態に基づいて、DCDCコンバーターの駆動と補機負荷の駆動との順序を決定する、車両制御装置である。
【0008】
また、本開示技術の他の一態様は、第1バッテリーと、第2バッテリーと、第2バッテリーを電源とする補機負荷と、第1バッテリーから第2バッテリー及び補機負荷の少なくとも一方への電力供給を行うDCDCコンバーターとを備えた、車両に搭載される車両制御装置のコンピューターが実行する制御方法であって、車両の始動用スイッチの状態及び乗車の状態を判断するステップと、第2バッテリーの電圧を取得するステップと、始動用スイッチがオフ状態かつユーザーが車内にいると推定できる非始動乗車状態であると判断した場合、第2バッテリーの状態に基づいて、DCDCコンバーターの駆動と補機負荷の駆動との順序を決定するステップとを含む、車両制御装置のコンピューターが実行する制御方法や、車両制御装置のコンピューターに実行させる制御プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
上記本開示の車両制御装置などによれば、車両の始動用スイッチがオフかつユーザーが乗車中であると推定される状態である場合、補機バッテリーの電圧に基づいて、補機負荷及びDCDCコンバーターのいずれを先に駆動させるかを決定するので、補機負荷を確実に駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る車両制御装置とその周辺部の機能ブロック図
図2】車両制御装置の各構成が行う第1制御の処理手順を示すフローチャート
図3】第1制御に基づく乗車時の動作タイミングの一例を示す図
図4】車両制御装置の各構成が行う第2制御の処理手順を示すフローチャート
図5】第2制御に基づく乗車時の動作タイミングの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の車両制御装置は、ユーザーが乗車中と推定され、かつ、車両のイグニッションがオフ状態であるときに、補機バッテリーの状態が補機負荷を駆動するために必要な条件を満たさなければ、補機負荷の駆動よりもDCDCコンバーターの駆動を優先させて実施する。これにより、補機負荷の駆動のために供給する電力を、DCDCコンバーターを介して高圧バッテリーから確保することができるので、補機負荷を確実に駆動させることができる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
[実施形態]
<構成>
図1は、本開示の一実施形態に係る車両制御装置200とその周辺部の機能ブロック図である。図1に例示した機能ブロックは、高圧バッテリー110と、高圧メインリレー120と、DCDCコンバーター(DDC)130と、補機バッテリー140と、バッテリーセンサー150と、第1補機負荷160と、第2補機負荷170と、車両制御装置200と、高圧系制御装置300と、を備えている。なお、図1では、電力用の信号線を実線で、制御/通信用の信号線を破線でそれぞれ示している。
【0013】
高圧バッテリー110は、リチウムイオン電池などの充放電可能に構成された二次電池であり、例えば走行用電動モーターなどの車両に搭載されるいわゆる主機(図示せず)を含む高圧システムへ電力供給を行う車両走行に関わるバッテリー(第1バッテリー)である。この高圧バッテリー110は、高圧系制御装置300によって接続/遮断の状態(電気的な導通状態)が切り替え制御される高圧メインリレー120を介して、DCDCコンバーター130と接続されており、接続状態であるときにDCDCコンバーター130に電力を供給することができる。
【0014】
DCDCコンバーター130は、高圧メインリレー120を介して、高圧バッテリー110と、補機バッテリー140、第1補機負荷160、及び第2補機負荷170とを接続する。そして、DCDCコンバーター130は、車両制御装置200による制御に基づいて、高圧バッテリー110に蓄えられた電力を補機バッテリー140、第1補機負荷160、及び第2補機負荷170の一部(例えば、補機バッテリー140のみ)又は全部に供給することができる。電力供給の際、DCDCコンバーター130は、車両制御装置200の電圧指示値に従って、入力電圧である高圧バッテリー110の高電圧を、補機バッテリー140に規定された所定の低電圧や第1補機負荷160及び第2補機負荷170に要求される低電圧に変換(降圧)して出力することができる。
【0015】
補機バッテリー140は、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの充放電可能に構成された二次電池であり、第1補機負荷160及び第2補機負荷170を含む補機システムへ電力供給を行う電源となるバッテリー(第2バッテリー)である。一般に、補機バッテリー140は、高圧バッテリー110よりも定格電圧が低く設定されている。この補機バッテリー140は、バッテリーセンサー150によってバッテリーの状態が監視されている。本実施形態のバッテリーセンサー150には、補機バッテリー140へ流入する電流及び補機バッテリー140から流出する電流を検出する電流センサー、補機バッテリー140の端子電圧を検出する電圧センサー、及び補機バッテリー140の温度を検出する温度センサーが、少なくとも含まれる。バッテリーセンサー150によって検出されたバッテリー状態(電流値、電圧値、及び温度値)は、車両制御装置200に随時出力される。
【0016】
第1補機負荷160及び第2補機負荷170は、例えば電子ミラーや乗車支援機器などの車両に搭載されるいわゆる補機であり、所定の動作を実行するために必要な電力を消費する負荷である。この第1補機負荷160及び第2補機負荷170は、後述するIG-ON信号の入力や乗車中信号の入力があるときに、DCDCコンバーター130を介して高圧バッテリー110から供給される電力や補機バッテリー140に蓄えられた電力で動作する。
【0017】
本実施形態において、第1補機負荷160は、車両の始動用スイッチであるイグニッションがオン状態であるとき(IG-ON信号の入力があるとき)に動作する補機負荷である。第2補機負荷170は、イグニッションがオン状態だけでなくオフ状態であっても、車両内にドライバーやパッセンジャーなどの人(以下「ユーザー」という)が存在すると推定される状態であるとき(乗車中信号の入力があるとき)に動作する補機負荷である。この第2補機負荷170の駆動/停止の動作は、車両制御装置200から受信する駆動要求に基づいて制御される。
【0018】
なお、図1では、第1補機負荷160と第2補機負荷170とが1つずつ車両に搭載されている例を示したが、第1補機負荷160及び第2補機負荷170はそれぞれ2つ以上が車両に搭載されていてもよい。
【0019】
車両制御装置200は、高圧バッテリー110及び補機バッテリー140を用いた車両の電源をマネージメントすることができる装置である。本実施形態の車両制御装置200は、特に、車両のイグニッションがオフの状態においてDCDCコンバーター130を好適に制御し、第2補機負荷170の駆動を制御することを行う。この車両制御装置200は、動作制御部210、判断部220、及び取得部230を含む。
【0020】
動作制御部210は、DCDCコンバーター130の動作を制御するための構成である。具体的には、DCDCコンバーター130の出力電圧値を指示する電圧指示値を含む駆動信号を、DCDCコンバーター130に対して出力する。この駆動信号を入力して駆動したDCDCコンバーター130から動作制御部210へは、電圧指示値に基づく駆動が完了した旨が通知される。また、動作制御部210は、高圧系制御装置300に対して駆動/停止を要求することができる。さらに、動作制御部210は、第2補機負荷170に対して駆動/停止を要求することができる。
【0021】
判断部220は、ユーザーが車内にいる、すなわち乗車中であると推定される状態であるか否か、及び車両のイグニッションがオフ状態であるか否かを判定するための構成である。ユーザーが乗車中であるか否かの判断は、典型的には、ユーザーが乗車中であると推定することができる特定の操作が行われた場合に発生する乗車中信号が、車両制御装置200に入力されたか否かに基づいて行われる。特定の操作としては、車両ドアを開扉した後に閉扉する一連の扉操作や車両ドアの施錠/解錠操作などを、例示できる。なお、判断部220は、特定の操作に基づいた乗車中信号を確認する以外の方法(着座センサー、ドライバーズカメラなど)でユーザーが乗車中であることを判断してもよい。また、車両のイグニッションがオフ状態であるか否かの判断は、典型的には、イグニッションがオン状態のときに出力されるIG-ON信号が、車両制御装置200に入力されたか否かに基づいて行われる。なお、判断部220は、IG-ON信号を確認する以外の方法でイグニッションがオフ状態であることを判定してもよい。
【0022】
取得部230は、補機バッテリー140の充電状態に関する情報を取得するための構成である。この取得部230は、補機バッテリー140からバッテリー状態(電流値、電圧値、及び温度値)を取得する。具体的には、後述する第1制御を実行する際、取得部230は、バッテリー状態として補機バッテリー140から電圧値を取得する。そして、取得部230は、取得したバッテリー状態に基づいて、補機バッテリー140の蓄電率(SOC:State Of Charge)を導出する。また、後述する第2制御を実行する際、取得部230は、バッテリー状態として補機バッテリー140から電流値、電圧値、及び温度値を取得する。そして、取得部230は、取得したバッテリー状態に基づいて、補機バッテリー140の内部抵抗、第2補機負荷170の電力消費によって低下すると推定される電圧(推定低下電圧)を導出する。蓄電率、内部抵抗、及び推定低下電圧の導出については後述する。
【0023】
この車両制御装置200は、典型的にはプロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェースなどを含んだ電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)の一部又は全部によって構成され得る。電子制御装置には、高圧メインリレー120の接続/遮断状態を制御できるECUや、DCDCコンバーター130の出力電圧値を制御できるECUや、補機バッテリー140の状態を監視できるECUなどが含まれる。車両制御装置200は、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することによって上述した機能を実現する。
【0024】
高圧系制御装置300は、高圧メインリレー120の接続状態と遮断状態との切り替えを制御する。この切り替えは、接続状態とするための駆動信号を高圧メインリレー120に出力するか否かによって行われる。また、高圧系制御装置300は、車両制御装置200の要求に基づいて、自装置の駆動/停止を制御することができる。要求に基づく駆動/停止の制御が完了したことは、高圧系制御装置300から車両制御装置200へ通知される。この高圧系制御装置300は、補機バッテリー140を電源として動作するように構成されている。
【0025】
<制御>
図2乃至図7をさらに参照して、本開示の一実施形態に係る車両制御装置200が実行する制御を説明する。
【0026】
(1)第1制御
図2は、車両制御装置200の各構成が行う第1制御の処理手順を示すフローチャートである。図3は、第1制御に基づく各構成の動作タイミングの一例を示す図である。図3は、ユーザーが車両に乗車するときの例であり、車両のイグニッションがオフ状態において、ユーザーが車内に乗り込んだ後、すぐにユーザーがイグニッションをオン状態に切り替えない場合の制御を説明するものである。
【0027】
(ステップS201)
判断部220は、ユーザーが乗車中であると推定され、かつ、イグニッションがオフ状態(非始動乗車状態)であるか否かを判断する。乗車時では、例えば、車両ドアが開錠された後に車両ドアを開扉して閉扉する一連の扉操作があったことで、ユーザーが車両に乗車したと推定することができる。また、イグニッションがオフ状態であることは、IG-ON信号の有無によって確認することができる。ユーザーが推定乗車中かつイグニッションがオフ状態の非始動乗車状態である場合は(ステップS201、はい)、ステップS202に処理が進み、それ以外の場合は(ステップS201、いいえ)、ステップS201の判断を繰り返す。
【0028】
(ステップS202)
取得部230は、バッテリーセンサー150から入力する補機バッテリー140の電圧値から導出される補機バッテリー140の蓄電率(SOC)が、第1閾値以上であるか否かを判断する。この第1閾値は、第2補機負荷170を駆動するために必要な電力に基づいて設定される。より具体的には、DCDCコンバーター130が駆動して高圧バッテリー110から電力が供給されるまでの間、補機バッテリー140だけで第2補機負荷170が消費する電力の供給を維持することができる蓄電率以上の任意の値に設定される。補機バッテリー140の蓄電率は、SOC-OCV特性などを用いた周知の手法で導出することができる。補機バッテリー140の蓄電率が第1閾値以上である場合は(図3のt1:(h)実線)(ステップS202、はい)、ステップS203に処理が進む。一方、補機バッテリー140の蓄電率が第1閾値未満である場合は(図3のt1:(h)破線)(ステップS202、いいえ)、ステップS207に処理が進む。
【0029】
(ステップS203)
動作制御部210は、第2補機負荷170に対して駆動を要求する。この要求は、第2補機負荷170に駆動要求信号を出力することで可能である。これによって、第2補機負荷170が駆動を開始する(図3のt2:(c)実線)。また、第2補機負荷170の駆動に伴って、補機バッテリー140から流出する放電電流が生じる(図3のt2~t3:(g)実線)。第2補機負荷170の駆動が要求されると、ステップS204に処理が進む。
【0030】
(ステップS204)
動作制御部210は、高圧系制御装置300に対して駆動を要求する。この要求は、高圧系制御装置300に駆動要求信号を出力することで可能である。これによって、高圧系制御装置300が駆動を開始すると共に、高圧メインリレー120が電気的に導通した接続状態となる(図3のt3:(d))。また、高圧系制御装置300の駆動に伴って、補機バッテリー140から流出する放電電流が増加する(図3のt3~t4:(g)実線)。高圧系制御装置300の駆動が要求されると、ステップS205に処理が進む。
【0031】
(ステップS205)
動作制御部210は、高圧系制御装置300の駆動が完了したか否かを判断する。この判断は、駆動要求信号に対応して高圧系制御装置300から返信される駆動完了信号を受信することで可能である。高圧系制御装置300の駆動が完了した場合は(ステップS205、はい)、ステップS206に処理が進み、それ以外の場合は(ステップS205、いいえ)、ステップS205の判断を繰り返す。
【0032】
(ステップS206)
動作制御部210は、DCDCコンバーター(DDC)130を駆動させる。具体的には、動作制御部210は、第2補機負荷170に電力を供給できる電圧指示値を設定した駆動信号を、DCDCコンバーター130に出力する(図3のt4:(e))。この制御により、DCDCコンバーター130が駆動し(図3のt4:(f))、高圧バッテリー110から第2補機負荷170へ電力が供給される。なお、本実施形態では、DCDCコンバーター130から補機バッテリー140へは、充電するための電力は供給されない。このため、DCDCコンバーター130の駆動に伴って、補機バッテリー140から流出する放電電流がなくなる(図3のt4:(g)実線)。DCDCコンバーター130が駆動されると、本第1制御が終了する。
【0033】
(ステップS207)
動作制御部210は、高圧系制御装置300に対して駆動を要求する。この要求は、高圧系制御装置300に駆動要求信号を出力することで可能である。これによって、高圧系制御装置300が駆動を開始すると共に、高圧メインリレー120が電気的に導通した接続状態となる(図3のt3:(d))。また、高圧系制御装置300の駆動に伴って、補機バッテリー140から流出する電流が生じる(図3のt3~t4:(g)破線)。高圧系制御装置300の駆動が要求されると、ステップS208に処理が進む。
【0034】
(ステップS208)
動作制御部210は、高圧系制御装置300の駆動が完了したか否かを判断する。この判断は、駆動要求信号に対応して高圧系制御装置300から返信される駆動完了信号を受信することで可能である。高圧系制御装置300の駆動が完了した場合は(ステップS208、はい)、ステップS209に処理が進み、それ以外の場合は(ステップS208、いいえ)、ステップS208の判断を繰り返す。
【0035】
(ステップS209)
動作制御部210は、DCDCコンバーター(DDC)130に対して駆動を指示する。具体的には、動作制御部210は、第2補機負荷170に電力を供給できる電圧指示値を設定した駆動信号を、DCDCコンバーター130に出力する(図3のt4:(e))。本実施形態では、DCDCコンバーター130から補機バッテリー140へは、充電するための電力は供給されない。DCDCコンバーター130の駆動が指示されると、ステップS210に処理が進む。
【0036】
(ステップS210)
動作制御部210は、DCDCコンバーター130の駆動が完了したか否かを判断する。この判断は、DCDCコンバーター130の駆動が完了する前に第2補機負荷170を駆動させてしまうことを回避するために行われる。DCDCコンバーター130の駆動が完了することによって(図3のt4:(f))、高圧バッテリー110から第2補機負荷170へ電力が供給される。また、本実施形態では、DCDCコンバーター130から補機バッテリー140へは、充電するための電力は供給されないため、DCDCコンバーター130の駆動に伴って、補機バッテリー140から流出する放電電流がなくなる(図3のt4:(g)破線)。DCDCコンバーター130の駆動が完了すると、ステップS211に処理が進む。
【0037】
(ステップS211)
動作制御部210は、第2補機負荷170に対して駆動を要求する。この要求は、第2補機負荷170に駆動要求信号を出力することで可能である。これによって、第2補機負荷170が駆動を開始する(図3のt5:(c)破線)。第2補機負荷170の駆動が要求されると、本第1制御が終了する。
【0038】
このように、第1制御では、ユーザーが乗車中であると推定される状態かつイグニッションがオフ状態の非始動乗車状態である場合、補機バッテリー140の蓄電率(SOC)が第1閾値以上であれば、第2補機負荷170の駆動を優先的に実施し(ステップS203~S206)、補機バッテリー140の蓄電率が第1閾値未満であれば、第2補機負荷170の駆動よりもDCDCコンバーター130の駆動を優先させて実施する(ステップS207~S211)。このように、補機バッテリー140の蓄電率が第2補機負荷170を駆動させるには十分ではない場合には、高圧バッテリー110から電力供給を行える状態にしてから第2補機負荷170の駆動を開始するので、第2補機負荷170を必ず駆動させることができる。
【0039】
なお、上記ステップS203~S206の処理フローでは、第2補機負荷170を駆動させた後に高圧系制御装置300を駆動させているが、補機バッテリー140の蓄電率が十分に高いため、第2補機負荷170と高圧系制御装置300とは、同時に駆動しても構わない。
【0040】
(2)第2制御
図4は、車両制御装置200の各構成が行う第2制御の処理手順を示すフローチャートである。図5は、第2制御に基づく各構成の動作タイミングの一例を示す図である。図5は、ユーザーが車両に乗車するときの例であり、車両のイグニッションがオフ状態において、ユーザーが車内に乗り込んだ後、すぐにユーザーがイグニッションをオン状態に切り替えない場合の制御を説明するものである。
【0041】
(ステップS401)
判断部220は、ユーザーが乗車中であると推定され、かつ、イグニッションがオフ状態(非始動乗車状態)であるか否かを判断する。乗車時では、例えば、車両ドアが開錠された後に車両ドアを開扉して閉扉する一連の扉操作があったことで、ユーザーが車両に乗車したと推定することができる。また、イグニッションがオフ状態であることは、IG-ON信号の有無によって確認することができる。ユーザーが推定乗車中かつイグニッションがオフ状態の非始動乗車状態である場合は(ステップS401、はい)、ステップS402に処理が進み、それ以外の場合は(ステップS401、いいえ)、ステップS401の判断を繰り返す。
【0042】
(ステップS402)
取得部230は、バッテリーセンサー150から入力する補機バッテリー140の電圧値、電流値、及び温度値から導出される補機バッテリー140の推定低下電圧が、第2閾値以上であるか否かを判断する。この推定低下電圧とは、ユーザーが乗車中であると推定され、かつ、イグニッションがオフ状態(非始動乗車状態)の第1期間において第2補機負荷170が消費すると推定される電流(推定消費電流)を補機バッテリー140だけで供給した場合に、流出電流によって降下すると推定される補機バッテリー140の電圧値である。この第1期間は、第2補機負荷170の消費電流が補機バッテリー140だけで供給される期間であり、通常の処理シーケンスによって非始動乗車状態が判断されてから高圧系制御装置300によってDCDCコンバーター130が駆動されるまでの期間とすることができる。
【0043】
具体的には、補機バッテリー140の推定低下電圧Vb_estは、バッテリーセンサー150から取得する補機バッテリー140の現在の電圧Vb_nowと、補機バッテリー140の内部抵抗Rbと、第2補機負荷170の第1期間における推定消費電流ILとを用いて、下記の式[1]によって算出される。なお、補機バッテリー140の内部抵抗Rbは、補機バッテリー140の蓄電率(SOC)及び補機バッテリー140の温度と対応付けられた、所定の内部抵抗マップから求めることができる。内部抵抗マップは、車両制御装置200がメモリ(図示せず)などに予め保持していればよい。
Vb_est = Vb_now -(Rb×IL) … [1]
【0044】
よって、第2閾値は、第2補機負荷170を駆動するために必要な電圧のみならず、車両制御装置200、DCDCコンバーター130、高圧系制御装置300、及び高圧メインリレー120を動作させるために必要な電圧、に基づいて設定される。より具体的には、DCDCコンバーター130が駆動して高圧バッテリー110から第2補機負荷170に電力が供給されるまでの間、補機バッテリー140の電圧が、第2補機負荷170の動作に必要な電圧であり、かつ、車両制御装置200、DCDCコンバーター130、高圧系制御装置300、及び高圧メインリレー120の動作に必要な電圧以上となる、任意の値に設定される。
【0045】
補機バッテリー140の推定低下電圧が第2閾値以上である場合は(図5のt1:t4の時点で第2閾値を上回ると推定される(h)実線)(ステップS402、はい)、ステップS403に処理が進む。一方、補機バッテリー140の推定低下電圧が第2閾値未満である場合は(図5のt1:t4の時点で第2閾値を下回る(従来制御だと一点鎖線となる)と推定される:(h)破線)(ステップS402、いいえ)、ステップS407に処理が進む。
【0046】
(ステップS403)
動作制御部210は、第2補機負荷170に対して駆動を要求する。この要求は、第2補機負荷170に駆動要求信号を出力することで可能である。これによって、第2補機負荷170が駆動を開始する(図5のt2:(c)実線)。また、第2補機負荷170の駆動に伴って、補機バッテリー140から流出する放電電流が生じて補機バッテリー140の電圧が低下する(図5のt2~t3:(g),(h)実線)。第2補機負荷170の駆動が要求されると、ステップS404に処理が進む。
【0047】
(ステップS404)
動作制御部210は、高圧系制御装置300に対して駆動を要求する。この要求は、高圧系制御装置300に駆動要求信号を出力することで可能である。これによって、高圧系制御装置300が駆動を開始すると共に、高圧メインリレー120が電気的に導通した接続状態となる(図5のt3:(d))。また、高圧系制御装置300の駆動に伴って、補機バッテリー140から流出する放電電流が増加して補機バッテリー140の電圧がさらに低下する(図5のt3~t4:(g),(h)実線)。高圧系制御装置300の駆動が要求されると、ステップS405に処理が進む。
【0048】
(ステップS405)
動作制御部210は、高圧系制御装置300の駆動が完了したか否かを判断する。この判断は、駆動要求信号に対応して高圧系制御装置300から返信される駆動完了信号を受信することで可能である。高圧系制御装置300の駆動が完了した場合は(ステップS405、はい)、ステップS406に処理が進み、それ以外の場合は(ステップS405、いいえ)、ステップS405の判断を繰り返す。
【0049】
(ステップS406)
動作制御部210は、DCDCコンバーター(DDC)130を駆動させる。具体的には、動作制御部210は、第2補機負荷170に電力を供給できる電圧指示値を設定した駆動信号を、DCDCコンバーター130に出力する(図5のt4:(e))。この制御により、DCDCコンバーター130が駆動し(図5のt4:(f))、高圧バッテリー110から第2補機負荷170へ電力が供給される。なお、本実施形態では、DCDCコンバーター130から補機バッテリー140へは、充電するための電力は供給されない。このDCDCコンバーター130の駆動に伴って、補機バッテリー140から流出する放電電流がなくなり、補機バッテリー140の電圧が徐々に回復する(図5のt4以降:(g),(h)実線)。DCDCコンバーター130が駆動されると、本第2制御が終了する。
【0050】
(ステップS407)
動作制御部210は、高圧系制御装置300に対して駆動を要求する。この要求は、高圧系制御装置300に駆動要求信号を出力することで可能である。これによって、高圧系制御装置300が駆動を開始すると共に、高圧メインリレー120が電気的に導通した接続状態となる(図5のt3:(d))。また、高圧系制御装置300の駆動に伴って、補機バッテリー140から流出する電流が生じて補機バッテリー140の電圧が低下する(図5のt3~t4:(g),(h)破線)。高圧系制御装置300の駆動が要求されると、ステップS408に処理が進む。
【0051】
(ステップS408)
動作制御部210は、高圧系制御装置300の駆動が完了したか否かを判断する。この判断は、駆動要求信号に対応して高圧系制御装置300から返信される駆動完了信号を受信することで可能である。高圧系制御装置300の駆動が完了した場合は(ステップS408、はい)、ステップS409に処理が進み、それ以外の場合は(ステップS408、いいえ)、ステップS408の判断を繰り返す。
【0052】
(ステップS409)
動作制御部210は、DCDCコンバーター(DDC)130に対して駆動を指示する。具体的には、動作制御部210は、第2補機負荷170に電力を供給できる電圧指示値を設定した駆動信号を、DCDCコンバーター130に出力する(図5のt4:(e))。本実施形態では、DCDCコンバーター130から補機バッテリー140へは、充電するための電力は供給されない。DCDCコンバーター130の駆動が指示されると、ステップS410に処理が進む。
【0053】
(ステップS410)
動作制御部210は、DCDCコンバーター130の駆動が完了したか否かを判断する。この判断は、DCDCコンバーター130の駆動が完了する前に第2補機負荷170を駆動させてしまうことを回避するために行われる。DCDCコンバーター130の駆動が完了することによって(図5のt4:(f))、高圧バッテリー110から第2補機負荷170へ電力が供給される。また、本実施形態では、DCDCコンバーター130から補機バッテリー140へは、充電するための電力は供給されないため、DCDCコンバーター130の駆動に伴って、補機バッテリー140から流出する放電電流がなくなり、補機バッテリー140の電圧が徐々に回復する(図5のt4以降:(g),(h)破線)。DCDCコンバーター130の駆動が完了すると、ステップS411に処理が進む。
【0054】
(ステップS411)
動作制御部210は、第2補機負荷170に対して駆動を要求する。この要求は、第2補機負荷170に駆動要求信号を出力することで可能である。これによって、第2補機負荷170が駆動を開始する(図5のt5:(c)破線)。なお、この第2補機負荷170の消費電力は、高圧バッテリー110から供給されるため、補機バッテリー140の電圧は低下しない。第2補機負荷170の駆動が要求されると、本第2制御が終了する。
【0055】
このように、第2制御では、ユーザーが乗車中であると推定される状態かつイグニッションがオフ状態の非始動乗車状態である場合、補機バッテリー140の第1期間における推定低下電圧が第2閾値以上であれば、第2補機負荷170の駆動を優先的に実施し(ステップS403~S406)、補機バッテリー140の推定低下電圧が第2閾値未満であれば、第2補機負荷170の駆動よりもDCDCコンバーター130の駆動を優先させて実施する(ステップS407~S411)。このように、補機バッテリー140の推定低下電圧が将来的に各構成を動作させるために必要な電圧を維持できない場合には、高圧バッテリー110から電力供給を行える状態にしてから第2補機負荷170の駆動を開始するので、第2補機負荷170を必ず駆動させることができる。
【0056】
また、この第2制御では、第2補機負荷170の第1期間における推定消費電流に基づいて算出した電圧降下分を補機バッテリー140の現電圧と直接比較して、第2補機負荷170の駆動を優先させるか遅延させるかを判断することができるため、上述した蓄電率に基づく第1制御と比べてより高精度に判断することができる。
【0057】
なお、上記ステップS403~S406の処理フローでは、第2補機負荷170を駆動させた後に高圧系制御装置300を駆動させているが、補機バッテリー140の電圧が低下分を考慮しても十分に高いため、第2補機負荷170と高圧系制御装置300とは、同時に駆動しても構わない。
【0058】
[作用・効果]
以上のように、本実施形態に係る車両制御装置200によれば、ユーザーが乗車中であると推定される状態であり、かつ、車両のイグニッションがオフ状態であると判断したときに、補機バッテリー140の蓄電率(SOC)又は推定低下電圧が第2補機負荷170を駆動するために必要な所定の閾値を満たさなければ、第2補機負荷170の駆動よりも高圧系制御装置300、高圧メインリレー120、及びDCDCコンバーター130の駆動を優先させて実施する。
【0059】
この制御によって、第2補機負荷170の駆動のために供給する電力を、DCDCコンバーター130を介して高圧バッテリー110から確保することができるので、第2補機負荷170を確実に駆動させることができる。
【0060】
以上、本開示の一実施形態を説明したが、本開示は、車両制御装置、車両制御装置が実行する制御方法、制御プログラム、及び当該制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記録媒体、あるいは車両制御装置を搭載した車両として捉えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示の車両制御装置などは、車両走行用の高圧バッテリーを搭載したハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、及び電気自動車(EV)などの電動車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
110 高圧バッテリー
120 高圧メインリレー
130 DCDCコンバーター
140 補機バッテリー
150 バッテリーセンサー
160 第1補機負荷
170 第2補機負荷
200 車両制御装置
210 動作制御部
220 判断部
230 取得部
300 高圧系制御装置
図1
図2
図3
図4
図5