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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】走行制御装置および走行制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
G08G1/16 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020145945
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040967
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】関根 淑敏
(72)【発明者】
【氏名】上原 将人
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴史
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-038768(JP,A)
【文献】国際公開第2019/202881(WO,A1)
【文献】特開2017-204301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者による監視義務のない第1の自動運転レベルおよび前記運転者による監視義務のある第2の自動運転レベルのうちいずれかの自動運転レベルにより前記車両の運転制御を行う運転制御部と、
前記運転制御の自動運転レベルが前記第1の自動運転レベルから前記第2の自動運転レベルに変更される場合、所定時間の間、前記運転者に対し、前記車両の運転操作を行うこと、または、前記運転操作が可能な運転姿勢をとる要求を通知する通知部と、
前記車両に設けられたセンサの出力に基づいて前記運転者の運転に対する意識レベルを判定する判定部と、
判定された前記意識レベルが高い場合の前記所定時間が、前記意識レベルが低い場合の前記所定時間よりも短くなるように前記所定時間の始期を維持しつつ終期を早める時間変更部と、
を備える走行制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記運転者による前記車両の運転操作を受け付ける操作受付部への前記運転者の接触時間閾値より長い接触を示す前記センサの出力が検出された場合、当該出力が検出されない場合よりも前記意識レベルを高く判定する、
請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、操作量閾値よりも大きい前記運転者による運転操作を示す前記センサの出力が検出された場合、当該出力が検出されない場合よりも前記意識レベルを高く判定する、
請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記運転者の顔を表す顔画像を生成する前記センサにより出力された前記顔画像に基づいて、前記運転者の視線方向を検出する視線方向検出部をさらに備え、
前記判定部は、前記視線方向が前方を向いている場合、前記視線方向が前方を向いていない場合よりも前記意識レベルを高く判定する、
請求項1-3のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記運転者が着座する運転席が、前記運転者が前記運転姿勢をとるのに適した状態に設定されていることを示す前記センサの出力が検出された場合、当該出力が検出されない場合よりも前記意識レベルを高く判定する、
請求項1-4のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【請求項6】
車両の運転者による監視義務のない第1の自動運転レベルおよび前記運転者による監視義務のある第2の自動運転レベルのうちいずれかの自動運転レベルにより前記車両の運転制御を行い、
前記運転制御の自動運転レベルが前記第1の自動運転レベルから前記第2の自動運転レベルに変更される場合、所定時間の間、前記運転者に対し、前記車両の運転操作を行うこと、または、前記運転操作が可能な運転姿勢をとる要求を通知し、
前記車両に設けられたセンサの出力に基づいて前記運転者の運転に対する意識レベルを判定し、
判定された前記意識レベルが高い場合の前記所定時間が、前記意識レベルが低い場合の前記所定時間よりも短くなるように前記所定時間の始期を維持しつつ終期を早める
ことを含む走行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を制御する走行制御装置および走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者による監視を必要とせずに車両の走行を制御する技術(自動運転レベル3)が開示されている。自動運転レベル3で制御される車両の運転者は、運転操作から解放され、テレビ視聴やスマートフォン操作といったセカンダリアクティビティを行うことができる。
【0003】
周辺環境の変化等に起因して、車両の走行の制御が、自動運転レベル3から、運転者による監視のもとで車両の走行を制御する自動運転レベル2などに変更される場合がある。自動運転レベル2で制御される車両の運転者には、運転状況の監視および必要に応じた車両の運転操作が求められる。
【0004】
特許文献1には、現在の自動運転レベルを終了させる操作スイッチの誤操作による高レベルの自動運転の終了を防止するため、自動運転レベルに応じて自動運転を終了させるための操作を異ならせる車両制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-155956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両の走行の制御が、運転者による監視を必要としない自動運転から運転者による監視を必要とする自動運転に変更される場合、走行制御装置は、運転状況の監視または車両の運転操作を運転者に要求するため、所定時間の間通知を行うことが好ましい。しかし、十分に運転に意識を向けている運転者にとっては、このような通知は煩わしいものと受け取られる場合がある。
【0007】
本発明は、車両の運転者に煩わしさを感じさせないように自動運転レベル変更時に運転者に対し所定の対応を要求することができる走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる走行制御装置は、車両の運転者による監視義務のない第1の自動運転レベルおよび運転者による監視義務のある第2の自動運転レベルのうちいずれかの自動運転レベルにより車両の運転制御を行う運転制御部と、運転制御の自動運転レベルが第1の自動運転レベルから第2の自動運転レベルに変更される場合、所定時間の間、運転者に対し、車両の運転操作を行うこと、または、運転操作が可能な運転姿勢をとる要求を通知する通知部と、車両に設けられたセンサの出力に基づいて運転者の運転に対する意識レベルを判定する判定部と、判定された意識レベルが高い場合の所定時間が、意識レベルが低い場合の所定時間よりも短くなるように所定時間を変更する時間変更部と、を備える。
【0009】
本発明にかかる走行制御装置において、判定部は、運転者による車両の運転操作を受け付ける操作受付部への運転者の接触時間閾値より長い接触を示すセンサの出力が検出された場合、当該出力が検出されない場合よりも意識レベルを高く判定することが好ましい。
【0010】
本発明にかかる走行制御装置において、判定部は、操作量閾値よりも大きい運転者による運転操作を示すセンサの出力が検出された場合、当該出力が検出されない場合よりも意識レベルを高く判定することが好ましい。
【0011】
本発明にかかる走行制御装置は、運転者の顔を表す顔画像を生成するセンサにより出力された顔画像に基づいて、運転者の視線方向を検出する視線方向検出部をさらに備え、判定部は、視線方向が前方を向いている場合、視線方向が前方を向いていない場合よりも意識レベルを高く判定することが好ましい。
【0012】
本発明にかかる走行制御装置において、判定部は、運転者が着座する運転席が、運転者が前記運転姿勢をとるのに適した状態に設定されていることを示すセンサの出力が検出された場合、当該出力が検出されない場合よりも意識レベルを高く判定することが好ましい。
【0013】
本発明にかかる走行制御方法は、車両の運転者による監視義務のない第1の自動運転レベルおよび運転者による監視義務のある第2の自動運転レベルのうちいずれかの自動運転レベルにより車両の運転制御を行い、運転制御の自動運転レベルが第1の自動運転レベルから第2の自動運転レベルに変更される場合、所定時間の間、運転者に対し、車両の運転操作を行うこと、または、運転操作が可能な運転姿勢をとる要求を通知し、車両に設けられたセンサの出力に基づいて運転者の運転に対する意識レベルを判定し、判定された意識レベルが高い場合の所定時間が、意識レベルが低い場合の所定時間よりも短くなるように所定時間を変更する、ことを含む。
【0014】
本発明にかかる走行制御装置によれば、車両の運転者に煩わしさを感じさせないように自動運転レベル変更時に運転者に対し所定の対応を要求することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】走行制御装置が実装される車両の概略構成図である。
図2】走行制御装置のハードウェア模式図である。
図3】走行制御装置が有するプロセッサの機能ブロック図である。
図4】所定時間の変更を説明する図である。
図5】走行制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、車両の運転者に煩わしさを感じさせないように自動運転レベル変更時に運転者に対し所定の対応を要求することができる走行制御装置について詳細に説明する。走行制御装置は、車両の運転者による監視義務のない第1の自動運転レベルおよび運転者による監視義務のある第2の自動運転レベルのうちいずれかの自動運転レベルにより、車両の運転制御を行う。また、走行制御装置は、運転制御の自動運転レベルが第1の自動運転レベルから第2の自動運転レベルに変更される場合、所定時間の間、運転者に対し、車両の運転操作を行うこと、または、運転操作が可能な運転姿勢をとる要求を通知する。走行制御装置は、車両に設けられたセンサの出力に基づいて運転者の運転に対する意識レベルを判定し、判定された意識レベルが高い場合の所定時間が、意識レベルが低い場合の所定時間よりも短くなるように所定時間を変更する。
【0017】
図1は、走行制御装置が実装される車両の概略構成図である。
【0018】
車両1は、ドライバモニタカメラ2と、ステアリングホイール3と、ステアリングコントローラ4と、運転席5と、シートコントローラ6と、メーターディスプレイ7と、走行制御装置8とを有する。ドライバモニタカメラ2、ステアリングコントローラ4、シートコントローラ6およびメーターディスプレイ7と走行制御装置8とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0019】
ドライバモニタカメラ2は、車両1に設けられたセンサの一例であり、ドライバモニタカメラ2は、CCDあるいはC-MOSなど、赤外光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上の撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系とを有する。また、ドライバモニタカメラ2は、赤外光を発する光源を有する。ドライバモニタカメラ2は、例えば車室内の前方上部に、運転者シートに着座する運転者の顔に向けて取り付けられる。ドライバモニタカメラ2は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに運転者に赤外光を照射し、運転者の顔が写った顔画像を出力する。
【0020】
ステアリングホイール3は、運転操作受付部の一例であり、車両1を操舵するステアリング機構の動作を要求する運転者の操作に応じた信号を、ステアリングコントローラ4に出力する。ステアリング機構の動作を要求する操作は、例えば、ステアリングホイール3を右回りまたは左回りに回転させる操作である。車両1は、他の運転操作受付部として、不図示のアクセルペダルおよびブレーキペダルを有する。
【0021】
ステアリングホイール3は、ステアリング保持センサ3aを有する。ステアリング保持センサ3aは、車両1に設けられたセンサの一例であり、運転者がステアリングを保持しているか否かに応じたステアリング保持信号を、ステアリングコントローラ4に出力する。ステアリング保持センサ3aは、例えば、ステアリングホイール3に設けられる静電容量センサであり、運転者がステアリングホイール3を保持することにより接触しているときと保持していないことにより接触していないときで異なる静電容量に応じた信号を出力する。
【0022】
ステアリングコントローラ4は、通信インタフェースと、メモリと、プロセッサとを有するECU(Electronic Control Unit)である。ステアリングコントローラ4は、車両1に設けられたセンサの一例であり、運転者の操作に応じた信号およびステアリング保持信号をステアリングホイール3から受け付けて、走行制御装置8に送信する。
【0023】
運転席5は、運転者が着座する座席である。運転席5は、シートコントローラ6の出力する信号に応じて座席の姿勢を変更する姿勢アクチュエータを有する。姿勢アクチュエータは、例えば背もたれの角度、座面の前後位置等を変更する。運転席5は、運転者が運転姿勢をとるのに適した第1の状態(例えば、背もたれが立ち上がり、ステアリングホイール3との距離が、運転者がステアリングホイール3を適切に操作可能な距離となる)に設定されることができる。また、運転席5は、運転者が運転姿勢をとるのに適していない第2の状態(例えば、背もたれが後ろに倒れている)に設定されることができる。
【0024】
シートコントローラ6は、通信インタフェースと、メモリと、プロセッサとを有するECUである。シートコントローラ6は、走行制御装置8から運転席5の姿勢を変更するための姿勢制御信号を受信し、姿勢制御信号に応じて運転席5の姿勢アクチュエータを動作させる。また、シートコントローラ6は、車両1に設けられたセンサの一例であり、走行制御装置8からの問合せに応じて、または、所定の時間間隔(例えば10秒ごと)で、運転席5の状態を表す状態信号を、走行制御装置8に送信する。
【0025】
メーターディスプレイ7は、通知部の一例であり、例えば液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイといった表示デバイスを有する。メーターディスプレイ7は、走行制御装置8から受信した、運転者に対する対応の要求を表す画像の表示を要求する画像表示要求に基づいて、画像を表示する。例えば、メーターディスプレイ7は、運転者にステアリングホイールの保持を要求する画像の表示を指示する画像表示指示に基づいて、「ステアリングホイールを保持してください」といった文字列を含む画像を表示する。メーターディスプレイ7は、走行速度、走行距離、各種警告といった走行関連情報を表示してもよい。
【0026】
車両1は、メーターディスプレイ7に代えて、もしくはメーターディスプレイ7に加えて、スピーカ(不図示)を通知部として有していてもよい。スピーカは、走行制御装置8から受信した、運転者に対する対応の要求を表す音声の出力を指示する音声出力指示に基づいて、所定の音声を出力する。
【0027】
走行制御装置8は、通信インタフェースと、メモリと、プロセッサとを有するECUである。走行制御装置8は、所定の自動運転レベルにより車両1の運転制御を行い、自動運転レベルが変更される場合、メーターディスプレイ7を介して運転者に所定の対応を要求する。
【0028】
図2は、走行制御装置8のハードウェア模式図である。走行制御装置8は、通信インタフェース81と、メモリ82と、プロセッサ83とを備える。
【0029】
通信インタフェース81は、通信部の一例であり、走行制御装置8を車内ネットワークへ接続するための通信インタフェース回路を有する。通信インタフェース81は、受信したデータをプロセッサ83に供給する。また、通信インタフェース81は、プロセッサ83から供給されたデータを外部に出力する。
【0030】
メモリ82は、揮発性の半導体メモリおよび不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ82は、プロセッサ83による処理に用いられる各種データ、例えば画像表示要求を出力するための画像表示要求データ、音声出力要求を出力するための音声出力要求データ、センサ出力値と意識レベルとを対応づけた意識レベルテーブル、運転者の運転に対する意識レベルに基づいて所定時間を短縮するか否かを決定するための意識閾値等を記憶する。また、メモリ82は、各種アプリケーションプログラム、例えば走行制御処理を実行する走行制御プログラム等を保存する。
【0031】
プロセッサ83は、制御部の一例であり、1以上のプロセッサおよびその周辺回路を有する。プロセッサ83は、論理演算ユニット、数値演算ユニット、またはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0032】
図3は、走行制御装置8が有するプロセッサ83の機能ブロック図である。
【0033】
走行制御装置8のプロセッサ83は、機能ブロックとして、運転制御部831と、通知部832と、視線方向検出部833と、判定部834と、時間変更部835とを有する。プロセッサ83が有するこれらの各部は、プロセッサ83上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ83が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとして走行制御装置8に実装されてもよい。
【0034】
運転制御部831は、車両1の運転者による監視義務のない第1の自動運転レベルおよび運転者による監視義務にある第2の自動運転レベルのうちいずれかの自動運転レベルにより、車両1の運転制御を行う。
【0035】
運転制御部831は、車両1の周囲の状況を検出するように車両1に設置されたカメラ(不図示)により生成された周囲画像を、通信インタフェース81を介して受信する。そして、運転制御部831は、車線区画線を検出するように予め学習された識別器に受信した周囲画像を入力することにより、車両1の周囲の車線区画線を検出する。また、運転制御部831は、他車両を検出するように予め学習された識別器に受信した周囲画像を入力することにより、車両1の周囲の他車両を検出する。
【0036】
識別器は、例えば、入力側から出力側に向けて直列に接続された複数の層を有する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とすることができる。予め車線区画線または他車両を含む画像を教師データとして用いてCNNに入力し、学習を行うことにより、CNNは画像から車線区画線または他車両を検出する識別器として動作する。
【0037】
例えば、運転制御部831は、第1の自動運転レベルにより車両1の運転制御を行う場合、検出された車線区画線に基づいて車両1が車線を適切に走行し、かつ、検出された他車両との車間距離が所定距離よりも長くなるように、通信インタフェース81を介して車両1の走行機構(不図示)に制御信号を出力する。走行機構には、例えば車両1に動力を供給するエンジン、車両1の走行速度を減少させるブレーキ、および車両1を操舵するステアリング機構が含まれる。
【0038】
例えば、運転制御部831は、第2の自動運転レベルにより車両1の運転制御を行う場合、検出された車線区画線に基づいて車両1が車線を適切に走行するように、通信インタフェース81を介して車両1の走行機構(不図示)に制御信号を出力する。
【0039】
通知部832は、運転制御の自動運転レベルが第1の自動運転レベルから第2の自動運転レベルに変更される場合、所定時間(例えば1分)の間、運転者に対し、所定の対応の要求を通知する。所定の対応とは、第2の自動運転レベルにより運転制御される車両1の運転者に求められる行為であり、例えば車両1の運転操作を行うこと、および、運転操作が可能な運転姿勢をとることである。
【0040】
通知部832は、例えばステアリングホイール3の保持を要求する画像の表示を指示する画像表示指示をメーターディスプレイ7に送信する。また、通知部832は、ステアリングホイールの操作を要求する音声の出力を指示する音声出力指示をスピーカに出力してもよい。また、通知部832は、ステアリングホイール3以外の運転操作受付部(例えばアクセルペダル)の操作を要求してもよい。また、通知部832は、車両1の後方の状況を確認するためのルームミラーの向きを、後方の他車両が見える角度に調整する角度調整操作の要求を通知してもよい。
【0041】
視線方向検出部833は、ドライバモニタカメラ2により出力された顔画像に基づいて、運転者の視線方向を検出する。視線方向は、車両1の進行方向と運転者の視線との間の水平方向または鉛直方向の角度により表される。
【0042】
視線方向検出部833は、取得した顔画像を、瞳孔および光源の角膜反射像の位置を検出するように予め学習された識別器に入力することにより、顔画像に含まれる運転者の目における瞳孔および角膜反射像の位置を特定する。そして、視線方向検出部833は、瞳孔と角膜反射像との位置関係に基づいて、視線方向を検出する。
【0043】
識別器は、例えばCNNとすることができる。予め瞳孔および角膜反射像を含む顔画像を教師データとして用いてCNNに入力し、学習を行うことにより、CNNは瞳孔および角膜反射像の位置を特定する識別器として動作する。
【0044】
判定部834は、車両1に設けられたセンサの出力に基づいて運転者の運転に対する意識レベルを判定する。
【0045】
意識レベルとは、運転者が運転に対して意識を向けている程度を示す数値であり、意識レベルが高いほど自動運転からの運転交代がスムーズに実行される可能性が大きい。判定部834は、メモリ82に記憶された意識レベルテーブルにおいてセンサの出力に対応づけられた値を、意識レベルとして判定する。また、判定部834は、複数のセンサの出力に対応づけられたそれぞれの値の合計、平均といった代表値を、意識レベルとして判定してもよい。
【0046】
時間変更部835は、判定部834により判定された意識レベルが高い場合の、通知部832が所定の対応を要求する時間である所定時間が、意識レベルが低い場合の所定時間よりも短くなるように、所定時間を変更する。例えば、時間変更部835は、判定部834により判定された意識レベルがメモリ82に記憶された意識閾値よりも高い場合の、通知部832が所定の対応を要求する時間である所定時間が、意識レベルが意識閾値以下の場合の所定時間よりも短くなるように、所定時間を変更する。また、時間変更部835は、複数の意識レベルと対応する所定時間とを関連づけて記憶するメモリ82を参照することにより、判定された意識レベルに対応する所要時間を設定してもよい。このとき、メモリ82には、高い意識レベルほど長い所定時間が対応する関連づけが記憶されている。
【0047】
判定部834が意識レベルを「1(意識あり)」「0(意識なし)」のいずれかに判定する場合、意識閾値は0.5といった0より大きく1より小さい値に設定される。時間変更部835は、意識ありと判定された場合の所定時間が、意識なしと判定された場合の所定時間よりも短くなるように、所定時間を変更する。
【0048】
時間変更部835は、意識レベルが意識閾値以下の場合の所定時間を基準とし、意識レベルが意識閾値よりも高い場合に所定時間を短縮する。また、時間変更部835は、意識レベルが意識閾値よりも高い場合の所定時間を基準とし、意識レベルが意識閾値以下の場合に所定時間を延長してもよい。また、時間変更部835は、意識レベルが意識閾値よりも高い場合に所定時間を短縮する長さが、意識レベルが意識閾値以下の場合に所定時間を短縮する長さよりも長くなるように所定時間を変更してもよい。また、時間変更部835は、意識レベルが意識閾値よりも高い場合に所定時間を延長する長さが、意識レベルが意識閾値以下の場合に所定時間を延長する長さよりも短くなるように所定時間を変更してもよい。
【0049】
本実施形態において、判定部834は、例えば通信インタフェース81を介してステアリングコントローラ4から、ステアリングホイール3のステアリング保持センサ3aが出力するステアリング保持信号に応じた信号を受信する。ステアリング保持信号に応じた信号を所定の接触時間閾値(例えば3秒)よりも長く継続して受信された場合、判定部834は、ステアリング保持信号に応じた信号が接触時間閾値よりも長く継続して受信されない場合よりも意識レベルを高く判定する。
【0050】
また、本実施形態において、判定部834は、通信インタフェース81を介してステアリングコントローラ4から、運転者の操作によりステアリングホイール3にかかるトルクの強さを示す信号を受信してもよい。メモリ82に記憶されたトルク有無閾値(例えば1.0Nm)以上のトルクを示す信号を所定時間(例えば3秒間)継続して受信された場合、判定部834は、トルク有無閾値以上のトルクを示す信号が所定時間継続して受信されない場合よりも意識レベルを高く判定する。トルク有無閾値は、操作量閾値の一例である。
【0051】
また、本実施形態において、判定部834は、通信インタフェース81を介してステアリングコントローラ4から、運転者の操作によるステアリングホイール3の回転角を示す信号を受信してもよい。例えば左右交互のステアリングホイール3の回転角を示す信号が所定時間(例えば1分間)に反転頻度閾値(例えば4回)以上受信された場合、判定部834は、回転角を示す信号が所定時間に反転頻度閾値以上受信されない場合よりも意識レベルを高く判定する。反転頻度閾値は、操作量閾値の一例である。
【0052】
また、本実施形態において、判定部834は、視線方向検出部833により検出された運転者の視線方向が前方を向いている場合、運転者の視線方向が前方を向いていない場合よりも意識レベルを高く判定してもよい。
【0053】
また、本実施形態において、判定部834は、ドライバモニタカメラ2から受信する顔画像から検出される視線移動の速さ、瞬きの終期、口の開き具合等に基づいて算出される眠気度合いが所定の眠気閾値よりも高い場合、眠気度合いが眠気閾値よりも低い場合よりも意識レベルを低く判定してもよい。
【0054】
また、本実施形態において、判定部834は、通信インタフェース81を介してシートコントローラ6から、運転席5の状態を表す状態信号を受信してもよい。運転席5が、運転者が運転姿勢をとるのに適した第1の状態に設定されていることを示す状態信号が受信された場合、判定部834は、第1の状態に設定されていることを示す状態信号が受信されない場合よりも意識レベルを高く判定する。
【0055】
図4は、所定時間の変更を説明する図である。
【0056】
運転制御部831による運転制御の自動運転レベルは、時刻t0において、第1の自動運転レベルから第2の自動運転レベルに変更される。通知部832は、時刻t0から時刻t2までの所定時間の間、運転者に所定の対応の要求を通知する。図4の例では、時間変更部835は、判定部834により判定された意識レベルが意識閾値よりも高い場合の所定時間を短縮し、時刻t0から、時刻t2より前の時刻t1までの所定時間の間、運転者に所定の対応の要求を通知する。
【0057】
図5は、走行制御処理のフローチャートである。走行制御装置8のプロセッサ83は、車両1が走行を行う間、走行制御処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0058】
まず、判定部834は、車両1に設けられたセンサの出力に基づいて、運転者の運転に対する意識レベルが意識閾値よりも高いか否かを判定する(ステップS1)。
【0059】
意識レベルが意識閾値よりも高いと判定された場合(ステップS1:Y)、時間変更部835は、意識レベルが意識閾値よりも高くないと判定された場合よりも所定時間を短縮し(ステップS2)、プロセッサ83の処理は次のステップS3に進む。一方、意識レベルが意識閾値よりも高くないと判定された場合(ステップS1:N)、プロセッサ83の処理は次のステップS3に進む。
【0060】
次に、通知部832は、運転制御部831による運転制御の自動運転レベルが第1の自動運転レベルから第2の自動運転レベルに変更されるか否かを判定する(ステップS3)。
【0061】
第1の自動運転レベルから第2の自動運転レベルに変更されると判定された場合(ステップS3:Y)、通知部832は、運転者に所定の対応の要求を通知する(ステップS4)。そして、通知部832は、要求の通知を開始してから所定時間が経過したか否かを判定し(ステップS5)、所定時間が経過していないと判定された場合(ステップS5:N)、ステップS4に戻って要求の通知を継続する。一方、所定時間が経過したと判定された場合(ステップS5:Y)、プロセッサ83は走行制御処理を終了する。
【0062】
第1の自動運転レベルから第2の自動運転レベルに変更されると判定されない場合(ステップS3:N)、プロセッサ83は、走行制御処理を終了する。
【0063】
このように走行制御処理を実行することにより、車両の運転者に煩わしさを感じさせないように自動運転レベル変更時に運転者に対し所定の対応を要求することができる。
【0064】
変形例によれば、時間変更部835は、判定された意識レベルに応じて、所定時間が3種類以上となるように所定時間を変更する。例えば、ステアリングホイール3にかかるトルクの強さに基づいて意識レベルを判定する場合において、時間変更部835は、トルク有無閾値よりも大きいトルク強弱閾値(例えば2.0Nm)以上のトルクを示す信号が受信された場合に、さらに所定時間を短縮する処理を行うようにしてもよい。時間変更部835は、トルク強弱閾値以上のトルクを示す信号が受信された場合、所定時間を対応要求の開始から現在時刻までの時間に変更する。これにより、トルク強弱閾値以上のトルクを示す信号が受信された場合、対応要求を直ちに終了させることができる。
【0065】
異なる変形例によれば、判定部834は、車両1に設けられた複数のセンサのそれぞれの出力の組み合わせに基づいて意識レベルを判定する。例えば、判定部834は、ステアリングコントローラ4からステアリング保持信号を受信し、ドライバモニタカメラ2により出力された顔画像に基づいて検出された視線方向を取得する。判定部834は、ステアリング保持信号を接触時間閾値よりも長く継続して受信し、かつ、視線方向が前方を向いている場合、いずれか一方の条件のみを満たす場合よりも意識レベルを高く判定する。
【0066】
さらに異なる変形例によれば、時間変更部835は、車両1に搭載された複数のセンサのうち一のセンサの出力が所定の条件を満たすことを条件として、所定時間の短縮を行う。例えば、時間変更部835は、例えば、シートコントローラ6から受信する、運転席5の状態信号が、運転者が運転姿勢をとるのに適した第1の状態であることを示すことを条件として、所定時間の短縮を行ってもよい。すなわち、時間変更部835は、例えばステアリング保持信号を接触時間閾値よりも長く継続して受信しても、運転席5の状態信号が運転姿勢をとるのに適していない第2の状態であることを示す場合には、所定時間の短縮を行わない。また、時間変更部835は、顔画像から算出される眠気度合いが所定の眠気閾値よりも低いことを条件として、所定時間の短縮を行ってもよい。
【0067】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0068】
1 車両
8 走行制御装置
831 運転制御部
832 通知部
833 視線方向検出部
834 判定部
835 時間変更部
図1
図2
図3
図4
図5