(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】エンジン装置
(51)【国際特許分類】
F02D 41/14 20060101AFI20231024BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F02D41/14
F02D41/04
(21)【出願番号】P 2020168547
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】元古 武志
【審査官】藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-115598(JP,A)
【文献】特開2018-115600(JP,A)
【文献】特開2020-023912(JP,A)
【文献】特開2020-093560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 - 41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの排気管に取り付けられた触媒と、
前記排気管の前記触媒よりも下流側に取り付けられた空燃比センサと、
前記エンジンを制御する制御装置と、
を備えるエンジン装置であって、
前記制御装置は、前記エンジンの燃料カットの要求があるときにおいて、
前記空燃比センサが活性状態である場合、前記空燃比センサにより検出される空燃比がリーンのときの吸入空気量の積算値としての第1積算空気量が第1閾値以上のとき
に前記エンジンの燃料カットの要求を解除し、前記空燃比センサが非活性状態である場合、前記エンジンの燃料カットを実行しているときの吸入空気量の積算値としての第2積算空気量が第2閾値以上のとき
に前記エンジンの燃料カットの要求を解除する、
エンジン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエンジン装置としては、エンジンと、エンジンの排気管に取り付けられた触媒と、排気管の触媒よりも下流側に取り付けられた空燃比センサと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このエンジン装置では、エンジンの燃料カットの要求があるときにおいて、空燃比センサにより検出される空燃比がリーンのときにカウントアップされる空燃比用カウンタが閾値以上に至ると、エンジンの燃料カットの要求を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のエンジン装置では、空燃比センサが非活性状態のときには、空燃比センサにより空燃比を検出することができないため、リッチかリーンかを判定することができない。このため、エンジンの燃料カットの要求が開始された後において、空燃比センサが非活性状態になった場合、実際の空燃比がリーンを継続していても、空燃比用カウンタが適切に更新されずに、エンジンの燃料カットの要求を解除できない可能性がある。
【0005】
本発明のエンジン装置は、空燃比センサが非活性状態のときでもエンジンの燃料カットの要求を解除可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンジン装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のエンジン装置は、
エンジンと、
前記エンジンの排気管に取り付けられた触媒と、
前記排気管の前記触媒よりも下流側に取り付けられた空燃比センサと、
前記エンジンを制御する制御装置と、
を備えるエンジン装置であって、
前記制御装置は、前記エンジンの燃料カットの要求があるときにおいて、前記空燃比センサにより検出される空燃比がリーンのときの吸入空気量の積算値としての第1積算空気量が第1閾値以上のとき、または、前記エンジンの燃料カットを実行しているときの吸入空気量の積算値としての第2積算空気量が第2閾値以上のときには、前記エンジンの燃料カットの要求を解除する、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のエンジン装置では、エンジンの燃料カットの要求があるときにおいて、空燃比センサにより検出される空燃比がリーンのときの吸入空気量の積算値としての第1積算空気量が第1閾値以上のとき、または、エンジンの燃料カットを実行しているときの吸入空気量の積算値としての第2積算空気量が第2閾値以上のときには、エンジンの燃料カットの要求を解除する。これにより、空燃比センサが活性状態のときには、第1積算空気量に基づいてエンジンの燃料カットの要求を解除することができる。また、空燃比センサが非活性状態のとき、即ち、空燃比センサにより空燃比を検出できないときには、第2積算空気量に基づいてエンジンの燃料カットの要求を解除することができる。
【0009】
本発明のエンジン装置において、前記制御装置は、前記触媒の温度に基づいて、前記第1閾値および/または前記第2閾値を設定するものとしてもよい。この場合、前記制御装置は、前記触媒の温度が高いほど大きくなるように、前記第1閾値および/または前記第2閾値を設定するものとしてもよい。これらのようにすれば、空燃比センサの活性程度を考慮して燃料カットの要求を解除することができる。
【0010】
本発明のエンジン装置において、前記制御装置は、前記触媒の温度が第1所定温度未満のとき、および/または、前記触媒の温度が前記第1所定温度よりも高い第2所定温度以上のときには、前記第1閾値および/または前記第2閾値に値0を設定するものとしてもよい。こうすれば、触媒の温度が低いときには、不必要に燃料カットが実行されるのを抑制することができる。また、触媒の温度が高いときには、燃料カットによって高温の触媒が多量の酸素に晒されて触媒の劣化が促進されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】エンジン装置を搭載するハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【
図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【
図3】エンジンECU24により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図4】第1閾値設定用マップの一例を示す説明図である。
【
図5】エンジンECU24により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としてのエンジン装置を搭載するハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40と、バッテリ50と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70とを備える。実施例の「エンジン装置」としては、主として、エンジン22とエンジンECU24とが該当する。
【0014】
エンジン22は、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する内燃機関として構成されており、プラネタリギヤ30のキャリヤに接続されている。
図2は、エンジン22の構成の概略を示す構成図である。図示するように、エンジン22は、エアクリーナ122により清浄された空気を吸気管123に吸入してスロットルバルブ124を通過させると共に燃料噴射弁126から燃料を噴射して空気と燃料とを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室129に吸入する。そして、吸入した混合気を点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。燃焼室129から排気バルブ131を介して排気管133に排出される排気は、浄化装置134,136を介して外気に排出される。浄化装置134,136は、排気中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する触媒(三元触媒)134a,136aを有する。
【0015】
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポートを備える。エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。エンジンECU24に入力される信号としては、例えば、エンジン22のクランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランク角θcrや、エンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Twを挙げることができる。吸気バルブ128を開閉するインテークカムシャフトの回転位置や排気バルブ131を開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカム角θci,θcoも挙げることができる。スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルポジションセンサ124aからのスロットル開度THや、吸気管123に取り付けられたエアフローメータ148からの吸入空気量Qa、吸気管123に取り付けられた温度センサ149からの吸気温Taも挙げることができる。排気管133の浄化装置134よりも上流側に取り付けられた空燃比センサ135aからの空燃比AF1や、排気管133の浄化装置134と浄化装置136との間に取り付けられた空燃比センサ135bからの空燃比AF2も挙げることができる。
【0016】
エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24から出力される信号としては、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ124bへの制御信号や、燃料噴射弁126への制御信号、点火プラグ130への制御信号を挙げることができる。エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。
【0017】
エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算している。また、エンジンECU24は、吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて負荷率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLなどを演算している。さらに、エンジンECU24は、水温センサ142からの冷却水温Twとエンジン22の回転数Neや負荷率KLとに基づいて、浄化装置134,136の触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2を推定している。
【0018】
プラネタリギヤ30は、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤには、モータMG1の回転子が接続されている。プラネタリギヤ30のリングギヤには、駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸36が接続されている。プラネタリギヤ30のキャリヤには、エンジン22のクランクシャフト26が接続されている。
【0019】
モータMG1は、例えば同期発電電動機として構成されており、上述したように、回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、例えば同期発電電動機として構成されており、回転子が駆動軸36に接続されている。インバータ41,42は、モータMG1,MG2の駆動に用いられると共に電力ライン54を介してバッテリ50に接続されている。電力ライン54には、平滑用のコンデンサ57が取り付けられている。モータMG1,MG2は、モータECU40によってインバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、電力ライン54に接続されている。
【0020】
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号、例えば、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置θm1,θm2などが入力ポートを介して入力されている。モータECU40からは、インバータ41,42の複数のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の電気角θe1,θe2や角速度ωm1,ωm2,回転数Nm1,Nm2を演算している。
【0021】
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポートを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、例えば、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPを挙げることができる。また、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ88からの車速Vも挙げることができる。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52と通信ポートを介して接続されている。
【0022】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、エンジン22の回転を伴って走行するハイブリッド走行モード(HV走行モード)や、エンジン22の回転停止を伴って走行する電動走行モード(EV走行モード)を切り替えながら(エンジン22を間欠運転しながら)走行する。
【0023】
次に、こうして構成された実施例のエンジン装置を搭載するハイブリッド自動車20の動作、特に、エンジン22の燃料カットの要求を解除する際の動作について説明する。ここで、エンジン22の燃料カットの要求は、例えば、空燃比センサ135bが活性状態で(空燃比AF2を検出できていて)且つ所定時間に亘って空燃比センサ135bにより検出される空燃比AF2がリッチで継続しているときに開始される。実施例では、空燃比センサ135bは、活性状態のとき(活性温度以上のとき)には、空燃比AF2を検出することができ、非活性状態のとき(活性温度未満のとき)には、空燃比AF2を検出することができないものとした。また、エンジンの22の燃料カットの要求が行なわれているときには、エンジンの22の燃料カットの実行条件が成立しているとき、例えば、HV走行モードでアクセルオフされているときなどに、エンジン22の燃料カットを行なう。
図3は、エンジンECU24により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。この処理ルーチンは、エンジン22の燃料カットの要求が開始されたときに実行が開始される。
【0024】
図3の処理ルーチンが実行されると、エンジンECU24は、最初に、活性状態フラグFafや、空燃比AF2(空燃比センサ135bが活性状態のとき)、吸入空気量Qa、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2などのデータを入力する(ステップS100)。ここで、活性状態フラグFafは、図示しない活性状態フラグ設定ルーチンにより設定された値が入力される。活性状態フラグ設定ルーチンでは、エンジンECU24は、空燃比センサ135bが活性状態のとき(空燃比AF2を検出できているとき)には、活性状態フラグFafに値1を設定し、空燃比センサ135bが非活性状態のとき(空燃比AF2を検出できていないとき)には、活性状態フラグFafに値0を設定する。空燃比AF2は、空燃比センサ135bが活性状態のときには空燃比センサ135bにより検出された値が入力され、空燃比センサ135bが非活性状態のときには入力されない。吸入空気量Qaは、エアフローメータ148により検出された値が入力される。触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2は、エンジン22の冷却水温Twや回転数Ne、負荷率KLに基づいて推定された値が入力される。
【0025】
こうしてデータを入力すると、活性状態フラグFafの値を調べる(ステップS105)。そして、活性状態フラグFafが値1のとき、即ち、空燃比センサ135bが活性状態のときには、空燃比AF2がリーンであるか否かを判定し(ステップS110)、空燃比AF2がリーンでないときには、ステップS110に戻る。このとき、エンジン22の燃料カットの要求は継続される。
【0026】
ステップS110で空燃比AF2がリーンであるときには、吸入空気量Qaに基づいて、空燃比AF2がリーンのときの吸入空気量Qaの積算値としての積算空気量Gleを演算する(ステップS120)。この処理は、現在の積算空気量Gleに吸入空気量Qaを加えた値を新たな積算空気量Gleに設定することにより行なわれる。なお、積算空気量Gleは、エンジン22の燃料カットの要求が開始されたときに、初期値としての値0にリセットされる。
【0027】
続いて、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2に基づいて閾値Glerefを設定する(ステップS130)。ここで、閾値Glerefは、積算空気量Gleに基づいて燃料カットの要求を解除するか否かを判定するための閾値であり、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2と第1閾値設定用マップとに基づいて設定される。第1閾値設定用マップは、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2と閾値Glerefとの関係として予め定められ、図示しないROMに記憶されている。
図4は、第1閾値設定用マップの一例を示す説明図である。図示するように、閾値Glerefは、触媒134aの温度Tc1が所定温度T11未満で且つ触媒136aの温度Tc2が所定温度T21未満の領域や、触媒134aの温度Tc1が所定温度T12以上の領域、触媒136aの温度Tc2が所定温度T22以上の領域では、値0が設定される。また、その他の領域では、閾値Glerefは、正の範囲内で、触媒134aの温度Tc1が高いほど大きく、且つ、触媒136aの温度Tc2が高いほど大きくなるように設定される。ここで、閾値T11,T21は、それぞれ、例えば、触媒134a,136aの活性温度などが用いられる。閾値T12,T22は、それぞれ、例えば、エンジン22の燃料カットによって触媒134a,136aが多量の酸素に晒されたときに触媒134a,136aの劣化が促進される可能性がある温度範囲の下限などが用いられる。
【0028】
こうして閾値Glerefを設定すると、積算空気量Gleを閾値Glerefと比較する(ステップS140)。そして、積算空気量Gleが閾値Gleref未満のときには、エンジン22の燃料カットの要求を解除する必要がないと判断し、ステップS100に戻る。このとき、エンジン22の燃料カットの要求は継続される。一方、積算空気量Gleが閾値Gleref以上のときには、燃料カットの要求を解除して(ステップS190)、本ルーチンを終了する。これにより、空燃比センサ135bが活性状態のときには、空燃比AF2がリーンのときの積算空気量Gleに基づいてエンジン22の燃料カットの要求を解除することができる。
【0029】
また、実施例では、触媒134aの温度Tc1が所定温度T11未満で且つ触媒136aの温度Tc2が所定温度T21未満の領域や、触媒134aの温度Tc1が所定温度T12以上の領域、触媒136aの温度Tc2が所定温度T22以上の領域では、閾値Glerefに値0を設定することにより、燃料カットの要求を直ちに解除することになる。これにより、触媒134a,136aが非活性状態のときに、不必要に燃料カットが実行されるのを抑制することができると共に、触媒134a,136aが高温のときに、燃料カットによって触媒134a,136aが多量の酸素に晒されて触媒134a,136aの劣化が促進されるのを抑制することができる。
【0030】
ステップS105で活性状態フラグFafが値0のとき、即ち、空燃比センサ135bが非活性状態のときには、エンジン22の燃料カットを実行中であるか否かを判定する(ステップS150)。そして、エンジン22の燃料カットを実行中でないときには、ステップS100に戻る。このとき、エンジン22の燃料カットの要求は継続される。
【0031】
ステップS150でエンジン22の燃料カットを実行中であるときには、吸入空気量Qaに基づいて、エンジン22の燃料カットを実行中の吸入空気量Qaの積算値としての積算空気量Gfcを演算する(ステップS160)。この処理は、現在の積算空気量Gfcに吸入空気量Qaを加えた値を新たな積算空気量Gfcに設定することにより行なわれる。なお、積算空気量Gfcは、エンジン22の燃料カットの要求が開始されたときに、初期値としての値0にリセットされる。
【0032】
続いて、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2に基づいて閾値Gfcrefを設定する(ステップS170)。ここで、閾値Gfcrefは、積算空気量Gfcに基づいて燃料カットの要求を解除するか否かを判定するための閾値であり、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2と、上述の第1閾値設定用マップと同様の第2閾値設定用マップと、に基づいて設定される。実施例では、閾値Gfcrefは、閾値Glerefと同様の傾向に設定される。具体的には、閾値Gfcrefは、触媒134aの温度Tc1が所定温度T11未満で且つ触媒136aの温度Tc2が所定温度T21未満の領域や、触媒134aの温度Tc1が所定温度T12以上の領域、触媒136aの温度Tc2が所定温度T22以上の領域では、値0が設定される。また、その他の領域では、閾値Glerefは、正の範囲内で、触媒134aの温度Tc1が高いほど大きく、且つ、触媒136aの温度Tc2が高いほど大きくなるように設定される。
【0033】
こうして閾値Gfcrefを設定すると、積算空気量Gfcを閾値Gfcrefと比較する(ステップS180)。そして、積算空気量Gfcが閾値Gfcref未満のときには、エンジン22の燃料カットの要求を解除する必要がないと判断し、ステップS100に戻る。このとき、エンジン22の燃料カットの要求は継続される。一方、積算空気量Gfcが閾値Gleref以上のときには、燃料カットの要求を解除して(ステップS190)、本ルーチンを終了する。これにより、空燃比センサ135bが非活性状態のときには、エンジン22の燃料カットを実行中の積算空気量Gfcに基づいてエンジン22の燃料カットの要求を解除することができる。なお、実施例では、空燃比センサ135bが活性状態で且つ所定時間に亘って空燃比AF2がリッチで継続しているときなどに、エンジン22の燃料カット要求が開始される。このため、その後に空燃比センサ135bが非活性状態になるときとしては、例えば、外気温が低い状態で、エンジン22の燃料カット要求が開始された後にエンジン22を停止してEV走行モードに移行し、そのEV走行モードをある程度の時間に亘って継続したときなどが挙げられる。
【0034】
また、実施例では、触媒134aの温度Tc1が所定温度T11未満で且つ触媒136aの温度Tc2が所定温度T21未満の領域や、触媒134aの温度Tc1が所定温度T12以上の領域、触媒136aの温度Tc2が所定温度T22以上の領域では、閾値Gfcrefに値0を設定することにより、燃料カットの要求を直ちに解除することになる。これにより、触媒134a,136aが非活性状態のときに、不必要に燃料カットが実行されるのを抑制することができると共に、触媒134a,136aが高温のときに、燃料カットによって触媒134a,136aが多量の酸素に晒されて触媒134a,136aの劣化が促進されるのを抑制することができる。
【0035】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置では、エンジン22の燃料カットの要求があるときにおいて、空燃比センサ135bにより検出される空燃比AF2がリーンのときの積算空気量Gleが閾値Gleref以上のとき、または、エンジン22の燃料カットを実行しているときの積算空気量Gfcが閾値Gfcref以上のときには、エンジン22の燃料カットの要求を解除する。これにより、空燃比センサ135bが活性状態のときには、積算空気量Gleに基づいてエンジン22の燃料カットの要求を解除することができる。また、空燃比センサ135bが非活性状態のとき、即ち、空燃比センサ135bにより空燃比AF2を検出できないときには、積算空気量Gfcに基づいてエンジン22の燃料カットの要求を解除することができる。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置では、閾値Glerefは、触媒134aの温度Tc1が閾値T11以上や触媒136aの温度Tc2が閾値T21以上で且つ触媒134aの温度Tc1が閾値T12以下で且つ触媒136aの温度Tc2が閾値T22以下の領域では、正の範囲内で、触媒134aの温度Tc1が高いほど大きく、且つ、触媒136aの温度Tc2が高いほど大きくなるように設定されるものとした。しかし、閾値Glerefは、この領域で、一定値が用いられるものとしてもよい。閾値Gfcrefについても同様に考えることができる。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置では、閾値Glerefは、触媒134aの温度Tc1が所定温度T11未満で且つ触媒136aの温度Tc2が所定温度T21未満の領域では、値0が設定されるものとした。しかし、閾値Glerefは、この領域で、正の値が設定されるものとしてもよい。閾値Gfcrefについても同様に考えることができる。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置では、閾値Glerefは、触媒134aの温度Tc1が所定温度T12以上の領域や、触媒136aの温度Tc2が所定温度T22以上の領域では、値0が設定されるものとした。しかし、閾値Glerefは、この領域で、正の値が設定されるものとしてもよい。閾値Gfcrefについても同様に考えることができる。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置では、閾値Glerefは、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2に基づいて設定されるものとした。しかし、閾値Glerefは、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2のうちの何れかだけに基づいて設定されるものとしてもよい。閾値Gfcrefについても同様に考えることができる。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置では、閾値Glerefは、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2に基づいて設定されるものとした。しかし、閾値Glerefは、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2に代えてまたは加えて、触媒134a,136aの劣化程度Dc1,Dc2や、触媒134a,136aの最大酸素吸蔵量OSM1,OSM2などのうちの少なくとも1つに基づいて設定されるものとしてもよい。閾値Gfcrefについても同様に考えることができる。
【0041】
これらの場合、例えば、エンジンECU24は、
図3の処理ルーチンに代えて、
図5の処理ルーチンを実行するものとしてもよい。
図5の処理ルーチンは、ステップS100の処理がステップS102の処理に置き換えられた点や、ステップS130の処理がステップS132~S136の処理に置き換えられた点、ステップS170の処理がステップS172~S176の処理に置き換えられた点を除いて、
図3の処理ルーチンと同一である。したがって
図5の処理ルーチンのうち
図3の処理ルーチンと同一の処理については、同一のステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0042】
図5の処理ルーチンが実行されると、エンジンECU24は、最初に、
図3の処理ルーチンのステップS100の処理と同様に、活性状態フラグFafや、空燃比AF2(空燃比センサ135bが活性状態のとき)、吸入空気量Qa、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2を入力するのに加えて、触媒134a,136aの劣化程度Dc1,Dc2を入力する(ステップS102)。ここで、触媒134a,136aの劣化程度Dc1,Dc2は、例えば、図示しない劣化程度推定ルーチンにより、吸入空気量Qaや空燃比AF1,AF2、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2に基づいて推定された値が入力される。
【0043】
ステップS105で活性状態フラグFafが値1であり、即ち、空燃比センサ135bが活性状態であり、且つ、ステップS110で空燃比AF2がリーンであるときには、ステップS120で積算空気量Gleを演算すると、閾値Glerefを設定し(ステップS132~S136)、ステップS140以降の処理を実行する。
【0044】
閾値Glerefの設定では、最初に、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2に基づいて温度係数Ktle1,Ktle2を設定する(ステップS132)。続いて、触媒134a,136aの劣化程度Dc1,Dc2に基づいて劣化係数Kdle1,Kdle2を設定する(ステップS134)。そして、最大酸素吸蔵量OSM1と温度係数Ktle1と劣化係数Kdle1との積と、最大酸素吸蔵量OSM2と温度係数Ktle2と劣化係数Kdle2との積との和として閾値Glerefを設定する(ステップS136)。ここで、温度係数Ktle1,Ktle2は、例えば、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2と温度係数Ktle1,Ktle2との関係を予め定めたマップに、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2を適用することにより得られる。劣化係数Kdle1,Kdle2は、例えば、触媒134a,136aの劣化程度Dc1,Dc2と劣化係数Kdle1,Kdle2との関係を予め定めたマップに、触媒134a,136aの劣化程度Dc1,Dc2を適用することにより得られる。最大酸素吸蔵量OSM1,OSM2は、例えば、触媒134a,136aが劣化していないときの触媒134a,136aの酸素吸蔵量OS1,OS2の最大値として予め定められた値が用いられる。
【0045】
ステップS105で活性状態フラグFafが値1であり、即ち、空燃比センサ135bが活性状態であり、且つ、ステップS150でエンジン22の燃料カットを実行中であるときには、ステップS160で積算空気量Gfcを演算すると、閾値Gfcrefを設定し(ステップS172~S176)、ステップS180以降の処理を実行する。
【0046】
閾値Gfcrefの設定では、最初に、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2に基づいて温度係数Ktfc1,Ktfc2を設定する(ステップS172)。続いて、触媒134a,136aの劣化程度Dc1,Dc2に基づいて劣化係数Kdfc1,Kdfc2を設定する(ステップS174)。そして、最大酸素吸蔵量OSM1と温度係数Ktfc1と劣化係数Kdfc1との積と、最大酸素吸蔵量OSM2と温度係数Ktfc2と劣化係数Kdfc2との積との和として閾値Gfcrefを設定する(ステップS176)。ここで、温度係数Ktfc1,Ktfc2は、例えば、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2と温度係数Ktfc1,Ktfc2との関係を予め定めたマップに、触媒134a,136aの温度Tc1,Tc2を適用することにより得られる。劣化係数Kdfc1,Kdfc2は、例えば、触媒134a,136aの劣化程度Dc1,Dc2と劣化係数Kdfc1,Kdfc2との関係を予め定めたマップに、触媒134a,136aの劣化程度Dc1,Dc2を適用することにより得られる。
【0047】
これらのように閾値Glerefや閾値Gfcrefを設定することにより、閾値Glerefや閾値Gfcrefをより適切な値とすることができるから、エンジン22の燃料カットの要求をより適切なタイミングで解除することができる。
【0048】
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置では、エンジン22は、排気管133に取り付けられた触媒134a,136aを備えるものとした。しかし、エンジン22は、触媒134aだけを備えるものとしてもよい。
【0049】
実施例のエンジン装置では、ハイブリッド自動車20に搭載されるものとした。しかし、走行用のモータを備えない一般的な自動車に搭載されるものとしてもよい。また、自動車以外の車両に搭載されるエンジン装置の形態としてもよいし、建設設備などの移動しない設備に搭載されるエンジン装置の形態としてもよい。
【0050】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、触媒134a,136aが「触媒」に相当し、空燃比センサ37bが「空燃比センサ」に相当し、エンジンECU24が「制御装置」に相当する。
・波線部OK?
【0051】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0052】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、エンジン装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジンECU、26 クランクシャフト、30 プラネタリギヤ、36 駆動軸、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40 モータECU、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、54 電力ライン、57 コンデンサ、70 HVECU、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 大気圧センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、124a スロットルポジションセンサ、123 吸気管、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、129 燃焼室、130 点火プラグ、131 排気バルブ、132 ピストン、133 排気管、134 浄化装置、134a,136a 触媒、135a,135b 空燃比センサ、140 クランクポジションセンサ、144 カムポジションセンサ、142 水温センサ、148 エアフローメータ、MG1,MG2 モータ。