(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ポリイミド樹脂、ポリイミドワニス及びポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2020513407
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2019015454
(87)【国際公開番号】W WO2019198709
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018075508
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 洋平
(72)【発明者】
【氏名】関口 慎司
(72)【発明者】
【氏名】末永 修也
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-044180(JP,A)
【文献】特開2016-204568(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199926(WO,A1)
【文献】特開2018-031018(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221776(WO,A1)
【文献】特開2018-028053(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066522(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/143314(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有するポリイミド樹脂であって、
構成単位Aが下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)と、下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2)とを含み、
構成単位Bが下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)を含み、
構成単位Aが下記式(a-x)で表される化合物に由来する構成単位(A-X)を含まず、
構成単位A中における構成単位(A-1)の比率が
60~
80モル%であり、
構成単位A中における構成単位(A-2)の比率が
20~
40モル%であり、
構成単位A中における構成単位(A-1)及び(A-2)の合計の比率が99モル%以上である、ポリイミド樹脂。
【化1】
【請求項2】
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率が50モル%以上である、請求項1に記載のポリイミド樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリイミド樹脂が有機溶媒に溶解してなるポリイミドワニス。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポリイミド樹脂を含む、ポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミド樹脂、ポリイミドワニス及びポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド樹脂は優れた機械的特性及び耐熱性を有することから、電気・電子部品等の分野において様々な利用が検討されている。例えば、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ等の画像表示装置に用いられるガラス基板を、デバイスの軽量化やフレキシブル化を目的として、プラスチック基板へ代替することが望まれており、当該プラスチック基板として適するポリイミドフィルムの研究が進められている。このような用途のポリイミドフィルムには無色透明性が求められる。
【0003】
ガラス支持体やシリコンウェハ上に塗布したワニスを加熱硬化してポリイミドフィルムを形成すると、ポリイミドフィルムに残留応力が生じる。ポリイミドフィルムの残留応力が大きいと、ガラス支持体やシリコンウェハが反ってしまうという問題が生じるため、ポリイミドフィルムには残留応力の低減も求められる。
特許文献1には、低残留応力のフィルムを与えるポリイミド樹脂として、テトラカルボン酸成分として4,4’-オキシジフタル酸二無水物を用い、ジアミン成分として数平均分子量1000のα、ω-アミノプロピルポリジメチルシロキサン及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを用いて合成されたポリイミド樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、ポリイミドフィルムには無色透明性や低残留応力が要求されるが、優れた機械的特性及び耐熱性を維持しながら、それら特性を向上させることは容易ではない。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、機械的特性、耐熱性、及び無色透明性に優れ、更に残留応力が低いフィルムの形成が可能なポリイミド樹脂、並びに該ポリイミド樹脂を含むポリイミドワニス及びポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構成単位の組み合わせを含むポリイミド樹脂が上記課題を解決できることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の[1]~[5]に関する。
[1]
テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有するポリイミド樹脂であって、
構成単位Aが下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)と、下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2)とを含み、
構成単位Bが下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)を含み、
構成単位Aが下記式(a-x)で表される化合物に由来する構成単位(A-X)を含まない、ポリイミド樹脂。
【化1】
【0008】
[2]
構成単位A中における構成単位(A-1)の比率が50~90モル%であり、
構成単位A中における構成単位(A-2)の比率が10~50モル%である、上記[1]に記載のポリイミド樹脂。
[3]
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率が50モル%以上である、上記[1]又は[2]に記載のポリイミド樹脂。
[4]
上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリイミド樹脂が有機溶媒に溶解してなるポリイミドワニス。
[5]
上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリイミド樹脂を含む、ポリイミドフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械的特性、耐熱性、及び無色透明性に優れ、更に残留応力が低いフィルムを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリイミド樹脂]
本発明のポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有し、構成単位Aが下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)と、下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2)とを含み、構成単位Bが下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)を含み、構成単位Aが下記式(a-x)で表される化合物に由来する構成単位(A-X)を含まない。
【化2】
【0011】
<構成単位A>
構成単位Aは、ポリイミド樹脂に占めるテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位であって、下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)と、下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2)とを含み、下記式(a-x)で表される化合物に由来する構成単位(A-X)を含まない。
【化3】
【0012】
式(a-1)で表される化合物は、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物である。
【0013】
式(a-2)で表される化合物は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)であり、その具体例としては、下記式(a-2s)で表される3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、下記式(a-2a)で表される2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)、下記式(a-2i)で表される2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(i-BPDA)が挙げられる。
【化4】
【0014】
構成単位Aが構成単位(A-1)と構成単位(A-2)の両方を含むことによって、フィルムの機械的特性、耐熱性及び無色透明性が向上し、残留応力が低下する。
【0015】
式(a-x)で表される化合物は、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である。
本発明においては、構成単位Aは式(a-x)で表される化合物に由来する構成単位(A-X)を含まない。即ち、本発明のポリイミド樹脂は構成単位(A-X)を含まない。
【0016】
構成単位A中における構成単位(A-1)の比率は、好ましくは50~90モル%であり、より好ましくは55~85モル%であり、更に好ましくは60~80モル%である。
構成単位A中における構成単位(A-2)の比率は、好ましくは10~50モル%であり、より好ましくは15~45モル%であり、更に好ましくは20~40モル%である。
構成単位A中における構成単位(A-1)及び(A-2)の合計の比率は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、特に好ましくは99モル%以上である。構成単位(A-1)及び(A-2)の合計の比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。構成単位Aは構成単位(A-1)と構成単位(A-2)とのみからなっていてもよい。
【0017】
構成単位Aは、構成単位(A-1)及び(A-2)以外の構成単位を含んでもよい(ただし、構成単位(A-X)を除く)。そのような構成単位を与えるテトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物(ただし、式(a-2)で表される化合物を除く);1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物(ただし、式(a-1)で表される化合物及び式(a-x)で表される化合物を除く);並びに1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
なお、本明細書において、芳香族テトラカルボン酸二無水物とは芳香環を1つ以上含むテトラカルボン酸二無水物を意味し、脂環式テトラカルボン酸二無水物とは脂環を1つ以上含み、かつ芳香環を含まないテトラカルボン酸二無水物を意味し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは芳香環も脂環も含まないテトラカルボン酸二無水物を意味する。
構成単位Aに任意に含まれる構成単位(A-1)及び(A-2)以外の構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0018】
<構成単位B>
構成単位Bは、ポリイミド樹脂に占めるジアミンに由来する構成単位であって、下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)を含む。
【化5】
【0019】
式(b-1)で表される化合物は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンである。
構成単位Bが構成単位(B-1)を含むことによって、フィルムの無色透明性及び耐熱性が向上し、残留応力が低下する。
【0020】
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、特に好ましくは99モル%以上である。構成単位(B-1)の比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。構成単位Bは構成単位(B-1)のみからなっていてもよい。
【0021】
構成単位Bは構成単位(B-1)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位を与えるジアミンとしては、特に限定されないが、1,4-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、1,5-ジアミノナフタレン、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-5-アミン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン(ただし、式(b-1)で表される化合物を除く);1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジアミン;並びにエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
なお、本明細書において、芳香族ジアミンとは芳香環を1つ以上含むジアミンを意味し、脂環式ジアミンとは脂環を1つ以上含み、かつ芳香環を含まないジアミンを意味し、脂肪族ジアミンとは芳香環も脂環も含まないジアミンを意味する。
構成単位Bに任意に含まれる構成単位(B-1)以外の構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0022】
本発明のポリイミド樹脂の数平均分子量は、得られるポリイミドフィルムの機械的強度の観点から、好ましくは5,000~100,000である。なお、ポリイミド樹脂の数平均分子量は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。
【0023】
本発明のポリイミド樹脂は、ポリイミド鎖(構成単位Aと構成単位Bとがイミド結合してなる構造)以外の構造を含んでもよい。ポリイミド樹脂中に含まれうるポリイミド鎖以外の構造としては、例えばアミド結合を含む構造等が挙げられる。
本発明のポリイミド樹脂は、ポリイミド鎖(構成単位Aと構成単位Bとがイミド結合してなる構造)を主たる構造として含むことが好ましい。したがって、本発明のポリイミド樹脂中に占めるポリイミド鎖の比率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは99質量%以上である。
【0024】
本発明のポリイミド樹脂を用いることで、機械的特性、耐熱性、及び無色透明性に優れ、更に残留応力が低いフィルムを形成することができ、当該フィルムの有する好適な物性値は以下の通りである。
【0025】
引張弾性率は、好ましくは2.5GPa以上であり、より好ましくは3.0GPa以上であり、更に好ましくは3.5GPa以上である。
引張強度は、好ましくは100MPa以上であり、より好ましくは120MPa以上であり、更に好ましくは150MPa以上である。
ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは320℃以上であり、より好ましくは350℃以上であり、更に好ましくは365℃以上である。
全光線透過率は、厚さ10μmのフィルムとした際に、好ましくは88%以上であり、より好ましくは89%以上であり、更に好ましくは90%以上である。
イエローインデックス(YI)は、厚さ10μmのフィルムとした際に、好ましくは3.5以下であり、より好ましくは3.0以下であり、更に好ましくは2.8以下である。
残留応力は、好ましくは18.0MPa以下であり、より好ましくは17.0MPa以下であり、更に好ましくは15.0MPa以下である。
なお、本発明における上述の物性値は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0026】
[ポリイミド樹脂の製造方法]
本発明のポリイミド樹脂は、上述の構成単位(A-1)を与える化合物及び上述の構成単位(A-2)を与える化合物を含み、上述の構成単位(A-X)を与える化合物を含まないテトラカルボン酸成分と、上述の構成単位(B-1)を与える化合物を含むジアミン成分とを反応させることにより製造することができる。
【0027】
構成単位(A-1)を与える化合物としては、式(a-1)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(a-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対応するテトラカルボン酸(即ち、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸)、及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A-1)を与える化合物としては、式(a-1)で表される化合物(即ち、二無水物)が好ましい。
同様に、構成単位(A-2)を与える化合物としては、式(a-2)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(a-2)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対応するテトラカルボン酸及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A-2)を与える化合物としては、式(a-2)で表される化合物(即ち、二無水物)が好ましい。
本発明において、テトラカルボン酸成分は構成単位(A-X)を与える化合物を含まない。したがって、テトラカルボン酸成分は式(a-x)で表される化合物を含まず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体も含まない。当該誘導体としては、式(a-x)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対応するテトラカルボン酸及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0028】
テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-1)を与える化合物を、好ましくは50~90モル%含み、より好ましくは55~85モル%含み、更に好ましくは60~80モル%含む。
テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-2)を与える化合物を、好ましくは10~50モル%含み、より好ましくは15~45モル%含み、更に好ましくは20~40モル%含む。
テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-1)を与える化合物及び構成単位(A-2)を与える化合物を合計で、好ましくは50モル%以上含み、より好ましくは70モル%以上含み、更に好ましくは90モル%以上含み、特に好ましくは99モル%以上含む。構成単位(A-1)を与える化合物及び構成単位(A-2)を与える化合物の合計の含有量の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。テトラカルボン酸成分は構成単位(A-1)を与える化合物と構成単位(A-2)を与える化合物とのみからなっていてもよい。
【0029】
テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-1)を与える化合物及び構成単位(A-2)を与える化合物以外の化合物を含んでもよく(ただし、構成単位(A-X)を与える化合物を除く)、当該化合物としては、上述の芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物、並びにそれらの誘導体(テトラカルボン酸、テトラカルボン酸のアルキルエステル等)が挙げられる。
テトラカルボン酸成分に任意に含まれる構成単位(A-1)を与える化合物及び構成単位(A-2)を与える化合物以外の化合物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0030】
構成単位(B-1)を与える化合物としては、式(b-1)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(b-1)で表されるジアミンに対応するジイソシアネートが挙げられる。構成単位(B-1)を与える化合物としては、式(b-1)で表される化合物(即ち、ジアミン)が好ましい。
【0031】
ジアミン成分は、構成単位(B-1)を与える化合物を、好ましくは50モル%以上含み、より好ましくは70モル%以上含み、更に好ましくは90モル%以上含み、特に好ましくは99モル%以上含む。構成単位(B-1)を与える化合物の含有量の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。ジアミン成分は構成単位(B-1)を与える化合物のみからなっていてもよい。
【0032】
ジアミン成分は構成単位(B-1)を与える化合物以外の化合物を含んでもよく、当該化合物としては、上述の芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、及び脂肪族ジアミン、並びにそれらの誘導体(ジイソシアネート等)が挙げられる。
ジアミン成分に任意に含まれる構成単位(B-1)を与える化合物以外の化合物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0033】
本発明において、ポリイミド樹脂の製造に用いるテトラカルボン酸成分とジアミン成分の仕込み量比は、テトラカルボン酸成分1モルに対してジアミン成分が0.9~1.1モルであることが好ましい。
【0034】
また、本発明において、ポリイミド樹脂の製造には、前述のテトラカルボン酸成分及びジアミン成分の他に、末端封止剤を用いてもよい。末端封止剤としてはモノアミン類あるいはジカルボン酸類が好ましい。導入される末端封止剤の仕込み量としては、テトラカルボン酸成分1モルに対して0.0001~0.1モルが好ましく、特に0.001~0.06モルが好ましい。モノアミン類末端封止剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、4-メチルベンジルアミン、4-エチルベンジルアミン、4-ドデシルベンジルアミン、3-メチルベンジルアミン、3-エチルベンジルアミン、アニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン等が推奨される。これらのうち、ベンジルアミン、アニリンが好適に使用できる。ジカルボン酸類末端封止剤としては、ジカルボン酸類が好ましく、その一部を閉環していてもよい。例えば、フタル酸、無水フタル酸、4-クロロフタル酸、テトラフルオロフタル酸、2,3-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4-ベンゾフェノンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等が推奨される。これらのうち、フタル酸、無水フタル酸が好適に使用できる。
【0035】
前述のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させる方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体的な反応方法としては、(1)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、室温~80℃で0.5~30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(2)ジアミン成分及び反応溶剤を反応器に仕込んで溶解させた後、テトラカルボン酸成分を仕込み、必要に応じて室温~80℃で0.5~30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(3)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、直ちに昇温してイミド化反応を行う方法等が挙げられる。
【0036】
ポリイミド樹脂の製造に用いられる反応溶剤は、イミド化反応を阻害せず、生成するポリイミドを溶解できるものであればよい。例えば、非プロトン性溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、カーボネート系溶剤等が挙げられる。
【0037】
非プロトン性溶剤の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶剤、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶剤、ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含リン系アミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ピコリン、ピリジン等のアミン系溶剤、酢酸(2-メトキシ-1-メチルエチル)等のエステル系溶剤等が挙げられる。
【0038】
フェノール系溶剤の具体例としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等が挙げられる。
エーテル系溶剤の具体例としては、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2-(2-メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
また、カーボネート系溶剤の具体的な例としては、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
上記反応溶剤の中でも、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤が好ましい。また、上記の反応溶剤は単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
【0039】
イミド化反応では、ディーンスターク装置などを用いて、製造時に生成する水を除去しながら反応を行うことが好ましい。このような操作を行うことで、重合度及びイミド化率をより上昇させることができる。
【0040】
上記のイミド化反応においては、公知のイミド化触媒を用いることができる。イミド化触媒としては、塩基触媒又は酸触媒が挙げられる。
塩基触媒としては、ピリジン、キノリン、イソキノリン、α-ピコリン、β-ピコリン、2,4-ルチジン、2,6-ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、イミダゾール、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の有機塩基触媒、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基触媒が挙げられる。
また、酸触媒としては、クロトン酸、アクリル酸、トランス-3-ヘキセノイック酸、桂皮酸、安息香酸、メチル安息香酸、オキシ安息香酸、テレフタル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。上記のイミド化触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のうち、取り扱い性の観点から、塩基触媒を用いることが好ましく、有機塩基触媒を用いることがより好ましく、トリエチルアミンを用いることが更に好ましく、トリエチルアミンとトリエチレンジアミンを組み合わせて用いること特に好ましい。
【0041】
イミド化反応の温度は、反応率及びゲル化等の抑制の観点から、好ましくは120~250℃、より好ましくは160~200℃である。また、反応時間は、生成水の留出開始後、好ましくは0.5~10時間である。
【0042】
[ポリイミドワニス]
本発明のポリイミドワニスは、本発明のポリイミド樹脂が有機溶媒に溶解してなるものである。即ち、本発明のポリイミドワニスは、本発明のポリイミド樹脂及び有機溶媒を含み、当該ポリイミド樹脂は当該有機溶媒に溶解している。
有機溶媒はポリイミド樹脂が溶解するものであればよく、特に限定されないが、ポリイミド樹脂の製造に用いられる反応溶剤として上述した化合物を、単独又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
本発明のポリイミドワニスは、重合法により得られるポリイミド樹脂が反応溶剤に溶解したポリイミド溶液そのものであってもよいし、又は当該ポリイミド溶液に対して更に希釈溶剤を追加したものであってもよい。
【0043】
本発明のポリイミド樹脂は溶媒溶解性を有しているため、室温で安定な高濃度のワニスとすることができる。本発明のポリイミドワニスは、本発明のポリイミド樹脂を5~40質量%含むことが好ましく、10~30質量%含むことがより好ましい。ポリイミドワニスの粘度は1~200Pa・sが好ましく、5~150Pa・sがより好ましい。ポリイミドワニスの粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定された値である。
また、本発明のポリイミドワニスは、ポリイミドフィルムの要求特性を損なわない範囲で、無機フィラー、接着促進剤、剥離剤、難燃剤、紫外線安定剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、架橋剤、重合開始剤、感光剤等各種添加剤を含んでもよい。
本発明のポリイミドワニスの製造方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
【0044】
[ポリイミドフィルム]
本発明のポリイミドフィルムは、本発明のポリイミド樹脂を含む。したがって、本発明のポリイミドフィルムは、機械的特性、耐熱性、及び無色透明性に優れ、更に残留応力が低い。本発明のポリイミドフィルムが有する好適な物性値は上述の通りである。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、本発明のポリイミドワニスを、ガラス板、金属板、プラスチックなどの平滑な支持体上に塗布、又はフィルム状に成形した後、該ワニス中に含まれる反応溶剤や希釈溶剤等の有機溶媒を加熱により除去する方法等が挙げられる。前記支持体の表面には、必要に応じて、予め離形剤を塗布しておいてもよい。
ワニス中に含まれる有機溶媒を加熱により除去する方法としては、以下の方法が好ましい。即ち、120℃以下の温度で有機溶媒を蒸発させて自己支持性フィルムとした後、該自己支持性フィルムを支持体より剥離し、該自己支持性フィルムの端部を固定し、用いた有機溶媒の沸点以上の温度で乾燥してポリイミドフィルムを製造することが好ましい。また、窒素雰囲気下で乾燥することが好ましい。乾燥雰囲気の圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでもよい。自己支持性フィルムを乾燥してポリイミドフィルムを製造する際の加熱温度は、特に限定されないが、200~400℃が好ましい。
【0045】
また、本発明のポリイミドフィルムは、ポリアミド酸が有機溶媒に溶解してなるポリアミド酸ワニスを用いて製造することもできる。
前記ポリアミド酸ワニスに含まれるポリアミド酸は、本発明のポリイミド樹脂の前駆体であって、上述の構成単位(A-1)を与える化合物及び上述の構成単位(A-2)を与える化合物を含み、上述の構成単位(A-X)を与える化合物を含まないテトラカルボン酸成分と、上述の構成単位(B-1)を与える化合物を含むジアミン成分との重付加反応の生成物である。このポリアミド酸をイミド化(脱水閉環)することで、最終生成物である本発明のポリイミド樹脂が得られる。
前記ポリアミド酸ワニスに含まれる有機溶媒としては、本発明のポリイミドワニスに含まれる有機溶媒を用いることができる。
本発明において、ポリアミド酸ワニスは、上述の構成単位(A-1)を与える化合物及び上述の構成単位(A-2)を与える化合物を含み、上述の構成単位(A-X)を与える化合物を含まないテトラカルボン酸成分と上述の構成単位(B-1)を与える化合物を含むジアミン成分とを反応溶剤中で重付加反応させて得られるポリアミド酸溶液そのものであってもよいし、又は当該ポリアミド酸溶液に対して更に希釈溶剤を追加したものであってもよい。
【0046】
ポリアミド酸ワニスを用いてポリイミドフィルムを製造する方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリアミド酸ワニスを、ガラス板、金属板、プラスチックなどの平滑な支持体上に塗布、又はフィルム状に成形し、該ワニス中に含まれる反応溶剤や希釈溶剤等の有機溶媒を加熱により除去してポリアミド酸フィルムを得て、該ポリアミド酸フィルム中のポリアミド酸を加熱によりイミド化することで、ポリイミドフィルムを製造することができる。
ポリアミド酸ワニスを乾燥させてポリアミド酸フィルムを得る際の加熱温度としては、好ましくは50~120℃である。ポリアミド酸を加熱によりイミド化する際の加熱温度としては好ましくは200~400℃である。
なお、イミド化の方法は熱イミド化に限定されず、化学イミド化を適用することもできる。
【0047】
本発明のポリイミドフィルムの厚みは用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは1~250μm、より好ましくは5~100μm、更に好ましくは10~80μmの範囲である。厚みが1~250μmであることで、自立膜としての実用的な使用が可能となる。
ポリイミドフィルムの厚みは、ポリイミドワニスの固形分濃度や粘度を調整することにより、容易に制御することができる。
【0048】
本発明のポリイミドフィルムは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ、半導体部品、光学部材等の各種部材用のフィルムとして好適に用いられる。本発明のポリイミドフィルムは、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ等の画像表示装置の基板として、特に好適に用いられる。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
実施例及び比較例で得たワニスの固形分濃度及びフィルムの各物性は以下に示す方法によって測定した。
【0050】
(1)固形分濃度
ワニスの固形分濃度の測定は、アズワン株式会社製の小型電気炉「MMF-1」で試料を320℃×120minで加熱し、加熱前後の試料の質量差から算出した。
(2)フィルム厚さ
フィルム厚さは、株式会社ミツトヨ製のマイクロメーターを用いて測定した。
(3)引張弾性率、引張強度
引張弾性率及び引張強度は、JIS K7127に準拠し、東洋精機株式会社製の引張試験機「ストログラフVG-1E」を用いて測定した。チャック間距離は、10mm×50mm、試験速度は20mm/minとした。引張弾性率及び引張強度は、いずれも数値が大きいほど優れる。
(4)ガラス転移温度(Tg)
株式会社日立ハイテクサイエンス製の熱機械的分析装置「TMA/SS6100」を用いて、引張モードで試料サイズ2mm×20mm、荷重0.1N、昇温速度10℃/minの条件で、残留応力を取り除くのに十分な温度まで昇温して残留応力を取り除き、その後室温まで冷却した。その後、前記残留応力を取り除くための処理と同じ条件で試験片伸びの測定の測定を行い、伸びの変曲点が見られたところをガラス転移温度として求めた。Tgは数値が大きいほど優れる。
(5)全光線透過率、イエローインデックス(YI)
全光線透過率及びYIは、JIS K7361-1:1997に準拠し、日本電色工業株式会社製の色彩・濁度同時測定器「COH400」を用いて測定した。全光線透過率は100%に近いほど、YIは数値が小さいほど優れる。
(6)残留応力
ケーエルエー・テンコール社製の残留応力測定装置「FLX-2320」を用いて、予め「反り量」を測定しておいた、厚み525μm±25μmの4インチシリコンウェハ上に、ポリイミドワニスあるいはポリアミド酸ワニスを、スピンコーターを用いて塗布し、プリベークした。その後、熱風乾燥器を用いて、窒素雰囲気下、400℃1時間の加熱硬化処理を施し、硬化後膜厚8~20μmのポリイミドフィルムのついたシリコンウェハを作製した。このウェハの反り量を前述の残留応力測定装置を用いて測定し、シリコンウェハとポリイミドフィルムの間に生じた残留応力を評価した。残留応力は数値が小さいほど優れる。
【0051】
実施例及び比較例にて使用したテトラカルボン酸成分及びジアミン成分、並びにその略号は以下の通りである。
<テトラカルボン酸成分>
CpODA:ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(JXエネルギー株式会社製;式(a-1)で表される化合物)
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学株式会社製;式(a-2)で表される化合物)
<ジアミン>
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(和歌山精化工業株式会社製;式(b-1)で表される化合物)
【0052】
<実施例1>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた1Lの5つ口丸底フラスコに、TFMBを32.024g(0.100モル)とN-メチルピロリドン(三菱化学株式会社製)を82.391g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数150rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODAを30.750g(0.080モル)、BPDAを5.884g(0.020モル)と、N-メチルピロリドン(三菱化学株式会社製)を20.598gとを一括で添加した後、イミド化触媒としてトリエチルアミン(関東化学株式会社製)を0.506g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して3時間還流した。
その後、γ-ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)を482.505g添加して、反応系内温度を120℃まで冷却した後、更に約3時間撹拌して均一化して、固形分濃度10.0質量%のポリイミドワニスを得た。
続いてガラス板上、シリコンウェハへ、得られたポリイミドワニスを塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、窒素雰囲気下、熱風乾燥機中400℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、厚み10μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0053】
<実施例2>
CpODAの量を30.750g(0.080モル)から23.063g(0.060モル)、BPDAの量を5.884g(0.020モル)から11.769g(0.040モル)に変更した以外は、実施例1と同様の方法によりポリイミドワニスを作製し、固形分濃度10.0質量%のポリイミドワニスを得た。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例1と同様の方法によりフィルムを作製し、厚み7μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0054】
<比較例1>
CpODAの量を30.750g(0.080モル)から38.438g(0.100モル)に変更し、BPDAを添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法によりポリイミドワニスを作製し、固形分濃度10.0質量%のポリイミドワニスを得た。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例1と同様の方法によりフィルムを作製し、厚み14μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0055】
<比較例2>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた1Lの5つ口丸底フラスコに、TFMBを32.024g(0.100モル)とN-メチルピロリドン(三菱化学株式会社製)を196.627g投入し、系内温度50℃、窒素雰囲気下、回転数150rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、BPDAを294.22g(0.100モル)と、N-メチルピロリドン(三菱化学株式会社製)を49.157gとを一括で投入し、マントルヒーターで50℃に保持したまま7時間撹拌した。
その後、N-メチルピロリドン(三菱化学株式会社製)を307.230g添加して、更に約3時間撹拌して均一化して、固形分濃度10.0質量%のポリアミド酸ワニスを得た。
続いてガラス板上、シリコンウェハへ、得られたポリアミド酸ワニスを塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、窒素雰囲気下、熱風乾燥機中400℃で30分加熱し溶媒を蒸発、さらに熱イミド化させ、厚み12μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0056】
【0057】
表1に示すように、実施例1及び2のポリイミドフィルムは、機械的特性、耐熱性、及び無色透明性に優れ、更に残留応力が低かった。
一方、テトラカルボン酸成分としてCpODAのみを使用して製造した比較例1のポリイミドフィルムは、実施例1及び2のポリイミドフィルムと対比して、引張弾性率及び耐熱性に劣り、残留応力が高かった。また、テトラカルボン酸成分としてBPDAのみを使用して製造した比較例2のポリイミドフィルムは、実施例1及び2のポリイミドフィルムと対比して、耐熱性及び無色透明性に劣り、残留応力が高かった。