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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ヒートシール紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/38 20060101AFI20231024BHJP
   D21H 19/58 20060101ALI20231024BHJP
   D21H 21/16 20060101ALI20231024BHJP
   D21H 21/52 20060101ALI20231024BHJP
   D21H 27/10 20060101ALI20231024BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
D21H19/38
D21H19/58
D21H21/16
D21H21/52
D21H27/10
B65D65/42 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021081130
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022175023
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 美咲
(72)【発明者】
【氏名】野一色 泰友
(72)【発明者】
【氏名】社本 裕太
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-013095(JP,A)
【文献】特開昭56-058096(JP,A)
【文献】特開2015-155582(JP,A)
【文献】特開2019-108633(JP,A)
【文献】特開2021-046234(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102717969(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0146699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
B65D 65/00 - 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層のヒートシール層を有し、
前記ヒートシール層が、アスペクト比20以上であり、かつ平均粒径が3μm以上10μm以下の顔料およびヒートシール性樹脂を含み、
前記ヒートシール性樹脂が、オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体を含み、
前記ヒートシール層中、前記顔料の配合量が、15質量%以上50質量%以下であり、
前記ヒートシール層が、ワックスをさらに含有し、前記ワックスが、パラフィンワックスおよびカルナバワックスよりなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記ヒートシール層同士をシール圧力0.2MPa、シール温度140℃、シール時間1秒間の条件でヒートシールしたときの剥離強度が3N/15mm以上であり、王研式透気抵抗度が2000秒以上であり、両面の撥水度がR6以上である、ヒートシール紙。
【請求項2】
前記ヒートシール層中、前記ヒートシール性樹脂の配合量が40質量%以上85質量%以下である、請求項1に記載のヒートシール紙。
【請求項3】
前記ヒートシール層が、シリコーン系レベリング剤をさらに含有する、請求項1または2に記載のヒートシール紙。
【請求項4】
前記ヒートシール層の塗工量が2g/m以上15g/m以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のヒートシール紙。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のヒートシール紙を用いた包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール紙に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシール方式を利用した包装体は、一般の工業製品の包装の他、食品、医薬、医療器具の包装などに広く利用されている。
【0003】
近年、プラスチックゴミ問題が深刻化している。世界のプラスチックの生産量のうち、包装容器セクターでのプラスチック生産量が多く、プラスチックごみの原因となっている。プラスチックは半永久的に分解されず、そのゴミは自然環境下でマイクロプラスチック化し、生態系に深刻な悪影響を与えている。その対策として、プラスチックを紙に代替することが提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、紙基材の少なくとも片面に耐油性およびヒートシール性を有するアクリル系樹脂エマルションを主成分とする塗液に、ヒートシール性は有さないが撥水性を有するアクリル系エマルションを添加し、前記塗液を塗布・乾燥して塗布層を形成したことを特徴とするヒートシール性を有する撥水耐油紙が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-155582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒートシール方式の包装体は、用途拡大が図られており、保管時等における耐ブロッキング性に優れ、内容物の保護の観点で、包装袋としたときに空気密封性に優れ、種々の用途に好適なヒートシール紙の実現が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、ヒートシール性および耐ブロッキング性に優れ、包装袋としたときに空気密封性に優れ、撥水性を有するヒートシール紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の構成によって解決することができる。
<1> 紙基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層のヒートシール層を有し、前記ヒートシール層が、アスペクト比20以上の顔料およびヒートシール性樹脂を含み、前記ヒートシール層同士をシール圧力0.2MPa、シール温度140℃、シール時間1秒間の条件でヒートシールしたときの剥離強度が3N/15mm以上であり、王研式透気抵抗度が2000秒以上であり、両面の撥水度がR6以上である、ヒートシール紙。
<2> 前記ヒートシール性樹脂が、スチレン/ブタジエン共重合体、ポリオレフィン樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体、オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体、および生分解性樹脂よりなる群から選ばれる1種以上の水分散性樹脂バインダーである、<1>に記載のヒートシール紙。
<3> 前記ヒートシール層中、前記ヒートシール性樹脂の配合量が40質量%以上85質量%以下である、<1>または<2>に記載のヒートシール紙。
<4> 前記ヒートシール層中、前記顔料の配合量が、15質量%以上60質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<5> 前記ヒートシール層が、シリコーン系レベリング剤をさらに含有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<6> 前記ヒートシール層が、ワックスをさらに含有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<7> 前記ワックスが、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、およびカルナバワックスよりなる群から選択される少なくとも1種である、<6>に記載のヒートシール紙。
<8> 前記ヒートシール層の塗工量が2g/m以上15g/m以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載のヒートシール紙を用いた包装袋。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒートシール性および耐ブロッキング性に優れ、包装袋としたときに空気密封性に優れ、撥水性を有するヒートシール紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20~25℃)/相対湿度40~50%の条件で行う。また、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの両方を含む総称である。
【0011】
[ヒートシール紙]
本実施形態のヒートシール紙(以下、単に「ヒートシール紙」ともいう)は、紙基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層のヒートシール層を有し、前記ヒートシール層が、アスペクト比20以上の顔料およびヒートシール性樹脂を含み、前記ヒートシール層同士をシール圧力0.2MPa、シール温度140℃、シール時間1秒間の条件でヒートシールしたときの剥離強度が3N/15mm以上であり、王研式透気抵抗度が2000秒以上であり、両面の撥水度がR6以上である。
【0012】
本実施形態のヒートシール紙は、紙基材の片面にヒートシール層を有していてもよく、紙基材の両面にヒートシール層を有していてもよいが、生産効率の観点からは、紙基材の片面にヒートシール層を有することが好ましい。
【0013】
<紙基材>
(原料パルプ)
紙基材を構成するパルプとしては、針葉樹、広葉樹等から得られる木材パルプ;古紙パルプ;ケナフ、バガス、竹、コットン等の非木材繊維パルプ;合成パルプ等が挙げられる。これらのパルプは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
これらの中でも、木材パルプを原料とする紙基材が好ましく、針葉樹パルプを主成分とする原料パルプからなることがより好ましい。「針葉樹パルプを主成分とする原料パルプ」とは、原料パルプ中、針葉樹パルプの含有量が50質量%超のものをいい、針葉樹パルプの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。針葉樹パルプは、平均繊維長が長く、針葉樹パルプを原料パルプとして用いた紙基材は、優れた加工性を有する傾向にある。
紙基材を構成する原料パルプは、晒クラフトパルプおよび未晒クラフトパルプよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、晒クラフトパルプであることがより好ましい。
【0014】
(カナダ標準ろ水度(CSF))
パルプの叩解度は、特に限定するものではないが、透気抵抗度を高める観点から、カナダ標準ろ水度(CSF)として、好ましくは80mL以上、より好ましくは100mLであり、そして、好ましくは300mL以下、より好ましくは280mL以下、さらに好ましくは250mLである。
CSFは、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定される。
【0015】
(坪量)
紙基材の坪量は、特に限定されないが、優れた加工性および強度を得る観点から、好ましくは30g/m以上、より好ましくは40g/m以上、さらに好ましくは50g/m以上であり、そして、好ましくは250g/m以下、より好ましくは230g/m以下、さらに好ましくは210g/m以下である。
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0016】
(厚さ)
紙基材の厚さは、特に限定されないが、優れた加工性および強度を得る観点から、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上であり、そして、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、さらに好ましくは300μm以下である。
紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0017】
(密度)
紙基材の密度は、透気抵抗度を高める観点から、好ましくは0.70g/cm以上、より好ましくは0.75g/cm以上であり、そして、好ましくは1.2g/cm以下、より好ましくは1.1g/cm以下である。紙基材の密度は、上述した測定方法により得られた、紙基材の坪量および厚さから算出される。
【0018】
(撥水剤)
紙基材には、必要に応じて、撥水剤を添加することができる。撥水剤としては、ワックス、金属石けん(ナトリウム、カリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウム等のアルカリ塩)、脂肪酸クロム錯塩(ミリスチン錯塩、ステアリン酸クロミッククロライド錯塩等)、ジルコニウム撥水剤、シリコーン化合物等が例示される。ワックスとしては、特に限定されないが、例えば後述の<ヒートシール層>の項に記載のワックスが挙げられる。撥水剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは5.0質量%以下である。
【0019】
(湿潤紙力増強剤)
紙基材には、必要に応じて、湿潤紙力増強剤を添加することができる。湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、一般的に耐水化剤と呼ばれるものも含む。湿潤紙力増強剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
【0020】
(任意成分)
紙基材には、さらに必要に応じて、たとえば、アニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、填料等の内添助剤、染料、蛍光増白剤等の任意成分を含んでいてもよい。
乾燥紙力増強剤としては、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。乾燥紙力増強剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
サイズ剤としては、ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤等の内添サイズ剤、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体等の表面サイズ剤が挙げられる。サイズ剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
定着剤としては、硫酸バンド、ポリエチレンイミン等が挙げられる。定着剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
填料としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機填料、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の有機填料が挙げられる。
【0021】
紙基材としては、片面、好ましくは両面の撥水度がR6以上の撥水紙等を用いることができる。
【0022】
(紙基材の製造方法)
紙基材を製造する方法としては、パルプを含有する紙料を抄紙する方法が挙げられる。なお、紙料は、添加剤をさらに含有してもよい。添加剤としては、たとえば前記で挙げた添加剤が挙げられる。
紙料は、パルプスラリーに必要に応じて添加剤を添加することにより調製できる。
パルプスラリーは、パルプを水の存在下で叩解することにより得られる。パルプの叩解方法、叩解装置は特に限定されず、公知の叩解方法、叩解装置と同様であってよい。
紙料におけるパルプの含有量は、特に限定されず、通常用いられている範囲であってよい。たとえば、紙料の総質量に対して、60質量%以上100質量%未満である。
【0023】
紙料の抄紙は定法により実施できる。たとえば、紙料をワイヤ等に流延させ、脱水して湿紙を得て、必要に応じて複数の湿紙を重ね、この単層または多層の湿紙をプレスし、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、複数の湿紙を重ねない場合は単層抄きの紙が得られ、複数の湿紙を重ねる場合は多層抄きの紙が得られる。複数の湿紙を重ねる際に、湿紙の表面(他の湿紙を重ねる面)に接着剤を塗布してもよい。
【0024】
紙基材を製造する方法は、紙基材に撥水性を付与する撥水処理工程を含んでいてもよい。撥水処理方法としては、紙基材の片面、好ましくは両面に撥水性塗料を塗工する方法が挙げられる。
撥水性塗料としては、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等のワックス類のエマルジョン、SBRラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス等のラテックス類、アクリルエマルジョン類、自己乳化型ポリオレフィン類、ポリエチレン系共重合樹脂エマルジョン等の各種合成樹脂エマルジョンが挙げられる。
これら撥水性塗料の塗工設備としては、通常用いられるバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ゲートロール、サイズプレス等のいずれでもよく、特に限定されるものではない。また、これらの塗工量は全体で1.0g/m以上20.0g/m以下程度が好適である。
【0025】
<ヒートシール層>
本実施形態のヒートシール紙は、紙基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層のヒートシール層を有し、2層以上のヒートシール層を有していてもよい。2層以上のヒートシール層を有する場合、2層以上のヒートシール層の組成は同じであっても、異なっていてもよい。なお、ヒートシール性を付与する観点から、紙基材の少なくとも一面の最上層にヒートシール層を有する。
ヒートシール層は、加熱、超音波等で溶融し、接着する層である。本実施形態において、ヒートシール層は、アスペクト比20以上の顔料およびヒートシール性樹脂を含む。
【0026】
(ヒートシール性樹脂)
ヒートシール層は、ヒートシール性樹脂を含む。ヒートシール性樹脂は、水分散性樹脂バインダーであることが好ましい。水分散性樹脂バインダーとは、水溶性ではない(具体的には、25℃の水に対する溶解度が10g/L以下である)が、エマルションやサスペンションのように水中で微分散された状態となる樹脂バインダーをいう。水分散性樹脂バインダーを用いてヒートシール層を水系塗工することで、再離解性に優れ、紙として再生利用可能なヒートシール紙を得ることができる。なお、水分散性樹脂バインダーが下記のワックスにも該当する場合は、ワックスに分類するものとする。
【0027】
ヒートシール性樹脂の骨格となるポリマーとしては、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/ブタジエン系共重合体、スチレン/不飽和カルボン酸系共重合体(たとえば、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体)、スチレン/アクリル系共重合体(たとえば、スチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1つの単量体から得られるアクリル系樹脂、アクリロニトリル/スチレン系共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン系共重合体、ABS系樹脂、AAS系樹脂、AES系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ-4-メチルペンテン-1樹脂、ポリブテン-1樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、フッ化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アセタール系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体(エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等)、生分解性樹脂(ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、3-ヒドロキシブタン酸/3-ヒドロキシヘキサン酸共重合体)、およびこれらの変性物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
これらの中でも、高いヒートシール強度を得る観点から、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体および生分解性樹脂よりなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体およびオレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体よりなる群から選択される少なくとも1つであることがより好ましく、オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体がさらに好ましい。
【0028】
オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体としては、塗工時の装置の汚れを抑制し、操業性を向上させる観点では、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体が好ましく、エチレン/アクリル酸共重合体がより好ましい。なお、オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体は、アイオノマーであってもよい。
【0029】
エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体としては、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、マイケルマンジャパン合同会社製の商品名「MP498345N」、「MP4983R」、「MP4990R」、住友精化株式会社製の商品名「ザイクセンA」、「ザイクセンAC」、三井化学株式会社製の商品名「ケミパールSシリーズ」等が挙げられる。
【0030】
エチレン/酢酸ビニル共重合体としては、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、住化ケムテックス株式会社製の商品名「スミカフレックスS-201HQ」、「同S-305」、「同S-305HQ」、「同S-400HQ」、「同S-401HQ」、「同S-408HQE」、「同S-450HQ」、「同S-455HQ」、「同S-456HQ」、「同S-460HQ」、「同S-467HQ」、「同S-470HQ」、「同S-480HQ」、「同S-510HQ」、「同S-520HQ」、「同S-752」、「同S-755」、昭和電工株式会社製の商品名「ポリゾールAD-2」、「同AD-5」、「同AD-6」、「同AD-10」、「同AD-11」、「同AD-14」、「同AD-56」、「同AD-70」、「同AD-92」、ジャパンコーティングレジン株式会社製の商品名「アクアテックスEC1200」、「同EC1400」、「同EC1700」、「同EC1800」、「同MC3800」等が挙げられる。
【0031】
ヒートシール層中、ヒートシール性樹脂の配合量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。上記範囲内であれば、ヒートシール性および耐ブロッキング性に優れるヒートシール紙を得ることができる。
【0032】
(顔料)
本実施形態のヒートシール層は、上記のヒートシール性樹脂に加えて、アスペクト比20以上の顔料を含む。ヒートシール層がアスペクト比20以上の平板状顔料であると、顔料が紙基材の平面(表面)とほぼ平行に積層した状態に配列するため、平面方向では平板状顔料が存在していない面積が小さくなることから、透気抵抗度が向上する。また、厚さ方向では、平板状顔料が紙基材平面に対して平行に配列して存在するため、空気は、層中の平板状顔料を迂回しながら透過することとなり、迷路効果によって高い透気抵抗度が得られる。
【0033】
顔料のアスペクト比は、耐ブロッキング性および透気抵抗度の観点から、20以上であり、好ましくは40以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは70以上、よりさらに好ましくは80以上であり、そして、入手容易性およびヒートシール層表面の平滑性の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは1,000以下、さらに好ましくは300以下である。
【0034】
顔料は、アスペクト比が上記範囲のものであれば特に限定されず、カオリン、焼成カオリン、構造化カオリン、デラミネーテッドカオリン等の各種カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、中空もしくは密実である有機顔料のプラスチックピグメント、バインダーピグメント、プラスチックビーズ、マイクロカプセルなどが例示される。これらの中でも、ブロッキング抑制効果に優れることから、好ましくはカオリンである。顔料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0035】
顔料の平均粒径は特に限定されないが、耐ブロッキング性およびヒートシール性の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上であり、そして、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。なお、顔料の平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒径分布測定装置によって測定される顔料の長径の数平均値である。
【0036】
ヒートシール層中の顔料の配合量は、耐ブロッキング性およびヒートシール性の観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下、よりさらに好ましくは40質量%以下、よりさらに好ましくは35質量%以下である。
【0037】
(レベリング剤)
本実施形態のヒートシール層は、レベリング剤を含有することが好ましい。例えば、撥水性を有する紙基材に、レベリング剤を配合したヒートシール剤を塗工すると、塗工時のハジキが抑制され、ヒートシール層の表面被覆性が向上する。これにより、ヒートシール紙の透気抵抗度を高めることができ、包装袋としたときに空気密封性に優れる。
レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤等が挙げられる。レベリング剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。これらの中でも、レベリング剤は、シリコーン系レベリング剤およびフッ素系レベリング剤よりなる群から選択される1種以上が好ましく、シリコーン系レベリング剤がより好ましい。
【0038】
シリコーン系レベリング剤は、シロキサン骨格を有する化合物であり、シロキサン骨格と有機官能基とを有する化合物、シロキサン骨格と有機変性基とを有する化合物等が挙げられる。なお、有機変性基には、有機官能基の一部が他の基で置換された基を含む。
シリコーン系レベリング剤として、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、楠本化成株式会社製の商品名「ディスパロンLS-050」、「同LS-280」、「同LS-460」や共栄社化学株式会社製の商品名「ポリフローKL-401」等が挙げられる。
【0039】
ヒートシール層がレベリング剤を含有する場合、ヒートシール層中のレベリング剤の配合量は、ヒートシール層表面の被覆性向上の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。
【0040】
(ワックス)
本実施形態のヒートシール層は、ヒートシール紙への撥水性付与の観点から、ワックスをさらに含有することが好ましい。ワックスを含有することで、滑り性や耐ブロッキング性も向上しうる。
【0041】
ワックスとしては、たとえば、動物または植物由来のワックス(たとえば、ミツロウ、カルナバワックスなど)、鉱物ワックス(たとえば、マイクロクリスタリンワックスなど)、石油ワックス等の天然ワックス;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、ポリエステルワックス等の合成ワックス等が挙げられる。ワックスは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ワックスの中でも、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、およびカルナバワックスよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリエチレンワックスおよびカルナバワックスよりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、カルナバワックスであることがさらに好ましい。
パラフィンワックスとしては、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、中京油脂株式会社製の商品名「ハイドリンL-700」等が挙げられる。ポリエチレンワックスとしても、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、三井化学株式会社製の商品名「ケミパールW-310」等が挙げられる。カルナバワックスとしても、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、中京油脂株式会社製の商品名「セロゾール524」等が挙げられる。
【0042】
ヒートシール層がワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、ヒートシール層中、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、さらに好ましくは0.6質量%以上、よりさらに好ましくは0.8質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
ヒートシール層は、上記のヒートシール性樹脂、顔料、レベリング剤、ワックスに加えて、他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、例えば、滑剤;シランカップリング剤;消泡剤;粘度調整剤;着色染料等の着色剤などが例示される。滑剤としては、金属石鹸、脂肪酸エステル等が挙げられる。金属石鹸としては、たとえば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、脂肪酸ナトリウム石鹸、オレイン酸カリ石鹸、ヒマシ油カリ石鹸、およびそれらの複合体等が挙げられる。
【0043】
[ヒートシール紙の製造方法]
本実施形態のヒートシール紙の製造方法は、特に限定されない。たとえば、前記のように得られた紙基材の少なくとも一方の面上に、少なくとも1層のヒートシール層を塗工する塗工工程を含む製造方法が好ましい。
【0044】
ヒートシール層塗工液(ヒートシール層塗料)を紙基材に塗工するための塗工設備には、特に限定はなく、公知の設備を用いればよい。塗工設備としては、たとえば、ワイヤーバー、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロールコーター、サイズプレス、ゲートロールコーター、シムサイザー等が挙げられる。なお、ヒートシール層塗工液は、二度以上塗工してもよい。
【0045】
ヒートシール層を乾燥するための乾燥設備には、特に限定されず、公知の設備を用いることができる。乾燥設備としては、たとえば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ガスバーナー、熱板、自動手塗り乾燥機等が挙げられる。また、乾燥温度は、乾燥時間等を考慮して、適宜設定すればよい。
【0046】
ヒートシール層塗工液の溶媒としては、特に限定されず、水またはエタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶媒を用いることができる。これらの中でも、揮発性有機溶媒の問題を生じない観点から、ヒートシール層塗工液の分散媒としては、水が好ましい。すなわち、ヒートシール層塗工液は、ヒートシール層用水系組成物であることが好ましい。
【0047】
ヒートシール層塗工液の固形分量は、特に限定されず、塗工性および乾燥容易性の観点から適宜選択すればよいが、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0048】
ヒートシール層の塗工量(乾燥後)は、好ましくは1g/m以上、より好ましくは2g/m以上、さらに好ましくは3g/m以上、よりさらに好ましくは4g/m以上であり、そして、好ましくは30g/m以下、より好ましくは15g/m以下、さらに好ましくは10g/m以下、よりさらに好ましくは8g/m以下である。ヒートシール層を2層以上有する場合、上記の塗工量は合計塗工量を表す。
【0049】
なお、紙基材に複数のヒートシール層を形成する場合、逐次的にヒートシール層を形成する上記の方法が好ましいが、これに限定されるものではなく、同時多層塗工法を採用してもよい。同時多層塗工法とは、複数種の塗工液をそれぞれ別個にスリット状ノズルから吐出させて、液体状の積層体を形成し、それを紙基材上に塗工することにより、多層のヒートシール層を同時に形成する方法である。
【0050】
<ヒートシール紙の物性>
(撥水度)
本実施形態のヒートシール紙は、両面の撥水度が、R6以上であり、好ましくはR8以上である。
撥水度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.68:2000に準拠して測定される。
【0051】
(剥離強度)
本実施形態のヒートシール紙は、ヒートシール層の剥離強度が、3.0N/15mm以上であり、好ましくは3.3N/15mm以上であり、そして、好ましくは10N/15mm以下、より好ましくは9.5N/mm以下、さらに好ましくは9.0N/15mm以下、よりさらに好ましくは8.5N/15mm以下、よりさらに好ましくは8.0N/15mm以下である。ヒートシール層の剥離強度が上記範囲であると、ヒートシール性に優れる。また、ヒートシール紙を、たとえば包装袋としたときに空気密封性に優れるため、内容物の保護に優れた包装袋となりうる。
ヒートシール層の剥離強度は、ヒートシール層同士を圧力0.2MPa、シール温度140℃、シール時間1秒間の条件でヒートシールしたときの剥離強度であり、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される値である。
【0052】
(透気抵抗度)
本実施形態のヒートシール紙は、王研式透気抵抗度が、2,000秒以上であり、好ましくは2,200秒以上、より好ましくは2,400秒以上である。その上限は特に限定されず、数値が大きいほど透気抵抗度が高いため、ヒートシール紙を、たとえば包装袋としたときに空気密封性に優れるため、内容物の保護に優れた包装袋となりうる。
王研式透気抵抗度は、JIS P 8117:2009に準拠して測定される。
【0053】
(湿潤引張強さ)
本実施形態のヒートシール紙は、湿潤引張強さが、好ましくは0.5kN/m以上、より好ましくは1kN/m以上、さらに好ましくは1.5kN/m以上、よりさらに好ましくは1.8kN/m以上であり、そして、好ましくは10kN/m以下、より好ましくは5kN/m以下である。本実施形態のヒートシール紙は、撥水性を有するため、湿潤引張強さにも優れる。上記下限値以上の湿潤引張強さを有するヒートシール紙は、水分が付着する環境での耐久性に優れるため、たとえば冷凍食品の包装材として好適に使用することができる。
湿潤引張強さは、JIS P 8135:1998に準拠して測定される。
【0054】
本実施形態のヒートシール紙の耐ブロッキング性は、後述の実施例に記載の方法により評価した。
【0055】
<用途>
本実施形態のヒートシール紙は、ヒートシール性および耐ブロッキング性に優れ、包装袋としたときに空気密封性に優れるので、食品(特に、冷凍食品)、生活雑貨、日用品(石鹸、おむつ)などの包装袋として好適に使用できる。
【実施例
【0056】
以下に、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、以下の操作は23℃、50%RHの条件で行った。また、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0057】
[分析および評価]
実施例および比較例のヒートシール紙について、以下の分析および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
<撥水度>
ヒートシール紙の両面の撥水度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.68:2000に準拠して測定した。
【0059】
<ヒートシール剥離強度>
2枚のヒートシール紙をヒートシール層が向き合うように重ね、ヒートシールテスター(テスター産業株式会社製、TP-701-B)を用いて、シール圧力0.2MPa、シール温度140℃、シール時間1秒間の条件でヒートシールした。続いて、JIS Z 0238:1999に準拠し、ヒートシール剥離強度を測定した。具体的には、ヒートシールされた試験片を15mm幅にカットし、引張試験機を用いて引張速度300mm/minでT字剥離し、記録された最大荷重をヒートシール剥離強度とした。
【0060】
<透気抵抗度>
ヒートシール紙の王研式透気抵抗度は、JIS P 8117:2009に準拠して測定した。
【0061】
<湿潤引張強さ>
ヒートシール紙の湿潤引張強さは、JIS P 8135:1998に準拠して測定した。
【0062】
<表面被覆性>
ヒートシール層塗料を紙基材に塗工し、140℃で15秒乾燥させて作製したヒートシール紙の塗工面を目視で観察し、表面塗工性について、以下の基準で評価した。
A:塗料のはじきがない
B:4mm未満の塗料のはじきがある
C:4mm以上の塗料のはじきがある
【0063】
<空気密封性>
ヒートシール紙を富士インパルス株式会社製の「ポリシーラーP―300」でシールし、縦20cm、横12cmのピロー袋を作製した。作製したピロー袋を秤の上に置き、秤が示す重さが3kgとなるように手で圧力をかけ、中に封入された空気の漏れを以下の基準で評価した。
A:空気の漏れを感じない
B:空気が漏れる
C:ヒートシール性がなく製袋不可
【0064】
<耐ブロッキング性>
9cm角に切ったヒートシール紙を、ヒートシール層塗料の塗工面と非塗工面とが接するように6枚重ね、プレス機を用いてプレス温度40℃、圧力20kgf/cmの条件で15時間プレス処理した。処理後のヒートシール紙を手で剥離してブロッキングの様子を以下の基準で評価した。
A:剥離後のヒートシール紙に紙剥けや毛羽立ちがない
B:剥離後のヒートシール紙に紙剥けや毛羽立ちがある
【0065】
実施例1
<ヒートシール層塗料の調製>
エチレン/アクリル酸共重合体(固形分42%)164部、カルナバワックス(固形分30%)3.8部、カオリンA(平均粒径8μm、アスペクト比100)の濃度50%水分散液60部、レベリング剤として有機変性ポリシロキサン(共栄社化学株式会社製の商品名「ポリフローKL-401」、固形分10%)10部を混合し、固形分濃度が30%になるよう水を加えて撹拌しヒートシール層塗料(濃度30%)を得た。
<ヒートシール紙の製造>
得られたヒートシール層塗料を、坪量64g/m、厚さ70μmのOKレインガード(王子エフテックス株式会社製)に、ヒートシール層の乾燥後の塗工量が5g/mとなるようにワイヤーバーで塗工し、自動手塗り乾燥機(株式会社カワサキ工業製)を用いて乾燥し、ヒートシール層を形成した。
【0066】
実施例2
ヒートシール層塗料のエチレン/アクリル酸共重合体(固形分42%)の配合量を161部、カルナバワックス(固形分30%)の配合量を7.5部に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0067】
実施例3
ヒートシール層塗料のエチレン/アクリル酸共重合体(固形分42%)の配合量を143部、カルナバワックス(固形分30%)の配合量を33部に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0068】
実施例4
ヒートシール層塗料のエチレン/アクリル酸共重合体(固形分42%)の配合量を125部、カルナバワックス(固形分30%)の配合量を58部に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0069】
実施例5
ヒートシール層塗料のレベリング剤(固形分10%)の配合量を5部に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0070】
実施例6
ヒートシール層塗料のレベリング剤(固形分10%)の配合量を5部に変更した以外は、実施例2と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0071】
実施例7
ヒートシール層塗料のレベリング剤(固形分10%)の配合量を5部に変更した以外は、実施例3と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0072】
実施例8
ヒートシール層塗料のレベリング剤(固形分10%)の配合量を5部に変更した以外は、実施例4と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0073】
実施例9
ヒートシール層塗料のレベリング剤(固形分10%)の配合量を2部に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0074】
実施例10
ヒートシール層塗料のレベリング剤(固形分10%)の配合量を2部に変更した以外は、実施例2と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0075】
実施例11
ヒートシール層塗料のレベリング剤(固形分10%)の配合量を2部に変更した以外は、実施例3と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0076】
実施例12
ヒートシール層塗料のレベリング剤(固形分10%)の配合量を2部に変更した以外は、実施例4と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0077】
比較例1
ヒートシール層塗料にレベリング剤を配合しなかった以外は、実施例3と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0078】
比較例2
紙基材を厚さ90μmの片艶紙に変更し、片つや付け加工が施されていない面にヒートシール層塗料を塗工した以外は、実施例3と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0079】
比較例3
紙基材を坪量70g/m、厚さ90μmの片艶紙に変更し、ヒートシール層塗料にレベリング剤を配合しなかった以外は比較例2と同様にして、ヒートシール紙を得た。
【0080】
比較例4
紙基材にヒートシール層塗料を塗工しなかった以外は、実施例1と同様にして、ヒートシール紙を得た。
【0081】
比較例5
ヒートシール層塗料にカオリンAを配合しなかった以外は、実施例3と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0082】
比較例6
カオリンAをカオリンB(平均粒径0.4μm、アスペクト比12)に変更した以外は、実施例3と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0083】
【表1-1】
【0084】
【表1-2】
【0085】
表1からわかるように、実施例のヒートシール紙は、ヒートシール性および耐ブロッキング性に優れ、透気抵抗度が高く、撥水性を有する。
一方、比較例1のヒートシール紙は、レベリング剤が配合されていないため、表面被覆性に劣り、製袋できたが、部分的にヒートシールしなかった。比較例2および3のヒートシール紙は、片面の撥水度がR6以下であり、撥水性に劣るため、湿潤引張強さが低かった。比較例4のヒートシール紙は、ヒートシール層塗料を塗工しなかったため、ヒートシールせず、製袋できなかった。比較例5のヒートシール紙は、顔料が配合されていないため、耐ブロッキング性が劣っていた。比較例6のヒートシール紙は、アスペクト比20未満のカオリンを配合したため、透気抵抗度が低く、空気密封性にも劣っていた。
【0086】
本実施形態のヒートシール紙は、ヒートシール性および耐ブロッキング性に優れ、透気抵抗度が高く、撥水性を有するので、食品、生活雑貨や日用品(石鹸、おむつ)などの包装袋として好適に使用できる。