(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2021153084
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴー・テックチャン
(72)【発明者】
【氏名】種村 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】戸村 修二
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-103332(JP,A)
【文献】特開2014-230369(JP,A)
【文献】特開2020-028169(JP,A)
【文献】特開2014-176190(JP,A)
【文献】特開2020-010594(JP,A)
【文献】特開2016-140192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマリ巻線に結合するセカンダリ巻線と、
前記セカンダリ巻線の両端が接続されると共に、負荷/電源回路が一対の端子に接続されるスイッチング回路であって、前記プライマリ巻線に印加される電圧に応じてスイッチングを行い、前記セカンダリ巻線に現れる交流電圧を直流電圧に変換し、前記負荷/電源回路に出力するスイッチング回路と、
前記一対の端子に両端が接続されたコンデンサアームであって、直列接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサを備えるコンデンサアームと、
前記セカンダリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に接続されたリアクトルと、を備え、
前記セカンダリ巻線の一端、前記スイッチング回路、前記第1コンデンサおよび前記リアクトルを経て前記セカンダリ巻線のタップに至る第1ループに、前記スイッチングによって電流が流れ、前記第1コンデンサが充放電され、
前記セカンダリ巻線の他端、前記スイッチング回路、前記第2コンデンサおよび前記リアクトルを経て前記セカンダリ巻線のタップに至る第2ループに、前記スイッチングによって電流が流れ、前記第2コンデンサが充放電され、
前記コンデンサアームの端子間の電圧、および前記負荷/電源回路に流れる電流が、前記スイッチングによって制御されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
直列に接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子を備えるU相スイッチングアームと、
直列に接続された第3スイッチング素子および第4スイッチング素子を備えるV相スイッチングアームと、
プライマリ巻線に結合するセカンダリ巻線であって、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の接続点と、前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の接続点との間に設けられたセカンダリ巻線と、
直列に接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサを備えるコンデンサアームと、
前記セカンダリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたリアクトルと、を備え、
前記第1スイッチング素子の一端、前記第3スイッチング素子の一端および前記第1コンデンサの一端が共通に接続され、前記第2スイッチング素子の一端、前記第4スイッチング素子の一端および前記第2コンデンサの一端が共通に接続されるように、前記U相スイッチングアーム、前記V相スイッチングアームおよび前記コンデンサアームが並列接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記プライマリ巻線に印加される電圧が、正、0、負、0の順で変化することに応じて、 前記第1スイッチング素子および前記第4スイッチング素子がオンになり、前記第2スイッチング素子および前記第3スイッチング素子がオフになる第1状態、
前記第1スイッチング素子および前記第3スイッチング素子がオンになり、前記第2スイッチング素子および前記第4スイッチング素子がオフになる第2状態、
前記第1スイッチング素子および前記第4スイッチング素子がオフになり、前記第2スイッチング素子および前記第3スイッチング素子がオンになる第3状態、
前記第1スイッチング素子および前記第3スイッチング素子がオフになり、前記第2スイッチング素子および前記第4スイッチング素子がオンになる第4状態が、順に実現されることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、スイッチングによって電力伝送を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両が広く用いられている。近年では、電動車両に搭載されたバッテリから商用電源システム等の電力系統に電力を供給し、電力系統からバッテリに電力を供給するV2G(Vehicle to Grid)と呼ばれる技術につき研究が行われている。V2Gでは、バッテリから出力された電力を調整して電力系統に供給し、あるいは、電力系統から供給された電力を調整してバッテリに出力する電力変換装置が用いられる。また、電動車両に搭載されたバッテリから一般家庭、オフィス等で用いられる電気機器に電力を供給するV2H(Vehicle to Home)と呼ばれる技術についても研究が行われている。V2Hにおいても、バッテリと電気機器との間の電力経路に電力変換装置が用いられる。電力変換装置には、交流電力を直流電力に変換し、あるいは直流電力を交流電力に変換するAC/DC電力変換装置や、直流電圧のレベルを変換するDC/DC電力変換装置がある。
【0003】
電力変換装置には、特許文献1や非特許文献1および2に記載されているように、2つのスイッチング回路をトランスによって結合したものがある。特許文献1には、絶縁型の電力変換回路システムが記載されている。このシステムでは、スイッチングトランジスタを含む2つの変換回路がトランスによって結合されており、トランスが昇圧または降圧用のリアクトルとして用いられている。すなわち、トランスの巻線に現れるインダクタンスが昇圧や降圧に用いられている。
【0004】
非特許文献1に記載されているDC/DC電力変換装置では、一方のスイッチング回路をスイッチングする位相と、他方のスイッチング回路をスイッチングする位相との差異に応じて、一方から他方に電力が伝送される。非特許文献2に記載されているDC/DC電力変換装置では、2つのスイッチング回路が、同一の位相でスイッチングされる。各スイッチング回路が備えるスイッチング素子のスイッチングデューティ比を調整することで、一方のスイッチング回路に入力される電圧と、他方のスイッチング回路から出力される電圧との比率が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】“B. Cougo,J. W. Kolar” Integration of Leakage Inductance in Tape Wound Core Transformers for Dual Active Bridge Converters, 2012 7th International Conference on Integrated Power Electronics Systems (CIPS)
【文献】宅間春介, 大島涼, 日下佳祐, 伊東淳一: 「インダイレクトマトリックスコンバータを用いた絶縁形DC-ACコンバータのスイッチング損失低減手法」, 電気学会論文誌D, Vol. 140, No. 3, pp. 130-139 (2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献および非特許文献に見られるように、電力変換装置では、ユーザが操作する箇所と高電圧が印加されている箇所との間の絶縁性を高めてユーザの操作を容易にするため、トランスが用いられる。また、リアクトルやトランスの漏れインダクタンスが、昇圧または降圧に用いられる。しかし、リアクトルやトランスは、電力変換装置に用いられる回路素子の中では体積が大きく、装置を大型化とする要因となる。
【0008】
本発明は、電力変換装置に用いられる回路素子を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プライマリ巻線に結合するセカンダリ巻線と、前記セカンダリ巻線の両端が接続されると共に、負荷/電源回路が一対の端子に接続されるスイッチング回路であって、前記プライマリ巻線に印加される電圧に応じてスイッチングを行い、前記セカンダリ巻線に現れる交流電圧を直流電圧に変換し、前記負荷/電源回路に出力するスイッチング回路と、前記一対の端子に両端が接続されたコンデンサアームであって、直列接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサを備えるコンデンサアームと、前記セカンダリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に接続されたリアクトルと、を備え、前記セカンダリ巻線の一端、前記スイッチング回路、前記第1コンデンサおよび前記リアクトルを経て前記セカンダリ巻線のタップに至る第1ループに、前記スイッチングによって電流が流れ、前記第1コンデンサが充放電され、前記セカンダリ巻線の他端、前記スイッチング回路、前記第2コンデンサおよび前記リアクトルを経て前記セカンダリ巻線のタップに至る第2ループに、前記スイッチングによって電流が流れ、前記第2コンデンサが充放電され、前記コンデンサアームの端子間の電圧、および前記負荷/電源回路に流れる電流が、前記スイッチングによって制御されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、直列に接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子を備えるU相スイッチングアームと、直列に接続された第3スイッチング素子および第4スイッチング素子を備えるV相スイッチングアームと、プライマリ巻線に結合するセカンダリ巻線であって、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の接続点と、前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の接続点との間に設けられたセカンダリ巻線と、直列に接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサを備えるコンデンサアームと、前記セカンダリ巻線のタップと、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの接続点との間に設けられたリアクトルと、を備え、前記第1スイッチング素子の一端、前記第3スイッチング素子の一端および前記第1コンデンサの一端が共通に接続され、前記第2スイッチング素子の一端、前記第4スイッチング素子の一端および前記第2コンデンサの一端が共通に接続されるように、前記U相スイッチングアーム、前記V相スイッチングアームおよび前記コンデンサアームが並列接続されていることを特徴とする。
【0011】
望ましくは、前記プライマリ巻線に印加される電圧が、正、0、負、0の順で変化することに応じて、前記第1スイッチング素子および前記第4スイッチング素子がオンになり、前記第2スイッチング素子および前記第3スイッチング素子がオフになる第1状態、前記第1スイッチング素子および前記第3スイッチング素子がオンになり、前記第2スイッチング素子および前記第4スイッチング素子がオフになる第2状態、前記第1スイッチング素子および前記第4スイッチング素子がオフになり、前記第2スイッチング素子および前記第3スイッチング素子がオンになる第3状態、前記第1スイッチング素子および前記第3スイッチング素子がオフになり、前記第2スイッチング素子および前記第4スイッチング素子がオンになる第4状態が、順に実現されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力変換装置に用いられる回路素子を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換システムを示す図である。
【
図2】プライマリ巻線電圧Vpの時間波形を示す図である。
【
図3A】第1状態のコンデンサ分割型電力変換装置に流れる電流を示す図である。
【
図3B】第2状態のコンデンサ分割型電力変換装置に流れる電流を示す図である。
【
図3C】第3状態のコンデンサ分割型電力変換装置に流れる電流を示す図である。
【
図3D】第4状態のコンデンサ分割型電力変換装置に流れる電流を示す図である。
【
図4】各スイッチング素子の状態、リアクトルの端子間電圧VL、および各コンデンサの状態を示す図である。
【
図5】セカンダリ巻線電圧Vs、リアクトル電圧VL、リアクトルLに流れる電流iL、上コンデンサCuに流れる電流ic1および下コンデンサCdに流れる電流ic2の時間波形の概形を示す図である。
【
図6】プライマリ巻線側からセカンダリ巻線側に電力が伝送される場合の等価回路を示す図である。
【
図7】セカンダリ巻線側からプライマリ巻線側に電力が伝送される場合の等価回路を示す図である。
【
図8】コンデンサ分割型電力変換装置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】コンデンサ分割型電力変換装置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】コンデンサ分割型電力変換装置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】コンデンサ分割型電力変換装置の実験結果を示す図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る3ポート電力変換システムを示す図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る3ポート/2ポート電力変換システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。本明細書における上下左右等の方向を示す用語は、図面における方向を示す。方向を示すこれらの用語は各構成要素を配置する際の姿勢を限定するものではない。
【0015】
図1には、本発明の第1実施形態に係る電力変換システム100が示されている。電力変換システム100は、電力変換装置10およびコンデンサ分割型電力変換装置20を備えている。電力変換装置10は、X相スイッチングアーム12X、Y相スイッチングアーム12Y、コンデンサC0、プライマリ巻線18、正極端子14pおよび負極端子14nを備えている。
【0016】
X相スイッチングアーム12Xは、直列に接続されたスイッチング素子S5およびS6を備え、スイッチングアーム12Yは、直列に接続されたスイッチング素子S7およびS8を備えている。各スイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられてよい。スイッチング素子としてIGBTが用いられる場合、2つのIGBTが直列接続されるとは、一方のIGBTのエミッタ端子に他方のIGBTのコレクタ端子が接続されることをいう。スイッチング素子としてMOSFETが用いられる場合、2つのMOSFETが直列接続されるとは、一方のMOSFETのソース端子に他方のMOSFETのドレイン端子が接続されることをいう。また、各スイッチング素子にはダイオードが含まれている。スイッチング素子にIGBTが用いられる場合、エミッタ端子にアノード端子が接続され、コレクタ端子にカソード端子が接続されている。スイッチング素子にMOSFETが用いられる場合、ソース端子にアノード端子が接続され、ドレイン端子にカソード端子が接続されている。
【0017】
以下の説明では、X相スイッチングアーム12XおよびY相スイッチングアーム12Yを、それぞれ、スイッチングアーム12Xおよび12Yという。スイッチングアーム12Xおよび12Yは並列に接続されている。すなわち、スイッチング素子S5のスイッチング素子S6とは反対側の端子(上側の端子)と、スイッチング素子S7のスイッチング素子S8とは反対側の端子(上側の端子)とが接続されている。また、スイッチング素子S6のスイッチング素子S5とは反対側の端子(下側の端子)と、スイッチング素子S8のスイッチング素子S7とは反対側の端子(下側の端子)とが接続されている。
【0018】
スイッチングアーム12Xおよび12Yには、コンデンサC0が並列に接続されている。すなわち、スイッチングアーム12Xおよび12Yの2つの並列接続点の間には、コンデンサC0が接続されている。スイッチングアーム12X、12YおよびコンデンサC0の上側の並列接続点は正極端子14pに接続され、スイッチングアーム12X、12YおよびコンデンサC0の下側の並列接続点は負極端子14nに接続されている。スイッチング素子S5およびS6の接続点と、スイッチング素子S7およびS8の接続点との間には、プライマリ巻線18が接続されている。
【0019】
各スイッチング素子にIGBT、MOSFET等が用いられる点、各スイッチング素子がダイオードを含む点、スイッチング素子の直列接続の定義およびスイッチングアームの並列接続の定義については、以下のスイッチング素子についても同様である。
【0020】
コンデンサ分割型電力変換装置20は、U相スイッチングアーム26U、V相スイッチングアーム26V、コンデンサアームC、セカンダリ巻線22、リアクトルL、正極端子32pおよび負極端子32nを備えている。U相スイッチングアーム26Uは、直列に接続されたスイッチング素子S1およびS2(第1スイッチング素子および第2スイッチング素子)を備えている。V相スイッチングアーム26Vは、直列に接続されたスイッチング素子S3およびS4(第3スイッチング素子および第4スイッチング素子)を備えている。コンデンサアームCは、直列接続された上コンデンサCuおよび下コンデンサCd(第1コンデンサおよび第2コンデンサ)を備えている。U相スイッチングアーム26U、V相スイッチングアーム26VおよびコンデンサアームCは並列接続されている。U相スイッチングアーム26U、V相スイッチングアーム26VおよびコンデンサアームCの上側の並列接続点および下側の並列接続点は、それぞれ、正極端子32pおよび負極端子32nに接続されている。
【0021】
スイッチング素子S1およびS2の接続点と、スイッチング素子S3およびS4の接続点との間には、セカンダリ巻線22が接続されている。セカンダリ巻線22は、プライマリ巻線18に結合し、プライマリ巻線18と共にトランスを構成する。セカンダリ巻線22を構成する導線の中途の点にあるタップと、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの接続点との間には、リアクトルLが接続されている。タップは、セカンダリ巻線22を構成する導線の中点にあるセンタータップであってよい。
【0022】
電力変換装置10の正極端子14pと負極端子14nとの間には直流電圧Vdcinが印加される。電力変換装置10の状態は時間経過と共に順に、スイッチング素子S5およびS8がオンでありスイッチング素子S6およびS7がオフであるA状態、スイッチング素子S5およびS7がオンでありスイッチング素子S6およびS8がオフであるB状態、スイッチング素子S6およびS7がオンでありスイッチング素子S5およびS8がオフであるC状態、スイッチング素子S5およびS7がオフでありスイッチング素子S6およびS8がオンであるD状態となる。電力変換装置10の状態は順にA状態~D状態となり、順にA状態~D状態となる過程が繰り返される。
【0023】
図2には、プライマリ巻線18に現れる電圧Vp(プライマリ巻線電圧Vp)の時間波形が示されている。時間帯t1~t4において電力変換装置10は、それぞれA状態~D状態となる。時間帯t1においてプライマリ巻線電圧VpはVinとなり、時間帯t2においてプライマリ巻線電圧Vpは0となる。時間帯t3においてプライマリ巻線電圧Vpは-Vinとなり、時間帯t4においてプライマリ巻線電圧Vpは0となる。プライマリ巻線18の巻き数に対するセカンダリ巻線22の巻き数の比率である巻線比をNとした場合、セカンダリ巻線22に現れる電圧Vs(セカンダリ巻線電圧Vs)は、はプライマリ巻線18に現れる電圧のN倍となる。
【0024】
コンデンサ分割型電力変換装置20が備えるスイッチング素子S1~S4は、それぞれ、電力変換装置10が備えるスイッチング素子S5~S8と同期してスイッチングを行う。すなわち、コンデンサ分割型電力変換装置20の状態は、時間経過と共に順に、スイッチング素子S1およびS4がオンでありスイッチング素子S2およびS3がオフである第1状態、スイッチング素子S1およびS3がオンでありスイッチング素子S2およびS4がオフである第2状態、スイッチング素子S2およびS3がオンでありスイッチング素子S1およびS4がオフである第3状態、スイッチング素子S1およびS3がオフでありスイッチング素子S2およびS4がオンである第4状態となる。コンデンサ分割型電力変換装置20の状態は順に第1状態~第4状態となり、順に第1状態~第4状態となる過程が繰り返される。すなわち、コンデンサ分割型電力変換装置20では、プライマリ巻線18に印加される電圧が、正(Vin)、0、負(-Vin)、0の順で変化することに応じて、第1状態~第4状態が順に実現され、順に第1状態~第4状態が実現される過程が繰り返される。
【0025】
図3Aには、第1状態のコンデンサ分割型電力変換装置20に流れる各電流が示されている。第1状態では、セカンダリ巻線22の上端からスイッチング素子S1、上コンデンサCu、およびリアクトルLを経て、セカンダリ巻線22のタップに至る電流ic1が流れる。電流ic1によって上コンデンサCuが充電される。また、セカンダリ巻線22の下端からスイッチング素子S4、下コンデンサCd、およびリアクトルLを経てセカンダリ巻線22のタップに至る電流ic2が流れる。電流ic2は下コンデンサCdの放電による電流である。
【0026】
第1状態では、さらに、セカンダリ巻線22の上端からスイッチング素子S1を流れ、正極端子32pから流出し、正極端子32pと負極端子32nとの間に接続された負荷/電源回路(図示せず)を流れた後に負極端子32nから流入し、スイッチング素子S4を経てセカンダリ巻線22の下端に至る電流iRが流れる。ここで、負荷/電源回路は、動作状況に応じて負荷回路または電源回路として動作する回路であってよい。また、負荷/電源回路は、専ら負荷回路として動作する回路であってもよいし、専ら電源回路として動作する回路であってもよい。負荷/電源回路はバッテリであってもよい。
【0027】
図3Bには、第2状態のコンデンサ分割型電力変換装置20に流れる電流が示されている。第2状態では、セカンダリ巻線22のタップから、リアクトルL、上コンデンサCu、およびスイッチング素子S1を経て、セカンダリ巻線22の上端に至る電流ic1が流れる。電流ic1は上コンデンサCuの放電による電流である。
【0028】
図3Cには、第3状態のコンデンサ分割型電力変換装置20に流れる各電流が示されている。第3状態では、セカンダリ巻線22のタップからリアクトルL、上コンデンサCu、およびスイッチング素子S3を経て、セカンダリ巻線22の下端に至る電流ic1が流れる。電流ic1は上コンデンサCuの放電による電流である。また、セカンダリ巻線22のタップからリアクトルL、下コンデンサCd、およびスイッチング素子S2を経て、セカンダリ巻線22の上端に至る電流ic2が流れる。電流ic2によって下コンデンサCdが充電される。
【0029】
第3状態では、さらに、セカンダリ巻線22の下端からスイッチング素子S3を流れ、正極端子32pから流出し、正極端子32pと負極端子32nとの間に接続された負荷/電源回路を流れた後に負極端子32nから流入し、スイッチング素子S2を流れてセカンダリ巻線22の上端に至る電流iRが流れる。
【0030】
図3Dには、第4状態のコンデンサ分割型電力変換装置20に流れる電流が示されている。第4状態では、セカンダリ巻線22の上端からスイッチング素子S2、下コンデンサCdおよびリアクトルLを経て、セカンダリ巻線22のタップに至る電流ic2が流れる。電流ic2は下コンデンサCdの放電による電流である。
【0031】
図4には、時間帯t1~t4、すなわち、第1状態~第4状態における、スイッチング素子S1~S4の状態と、リアクトルLの端子間電圧VL(リアクトル電圧VL)が示され、さらには、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの状態が示されている。
図4における「1」の表記はスイッチング素子がオンであることを示し、「0」の表記はスイッチング素子がオフであることを示す。第1状態~第4状態のそれぞれにおける各スイッチング素子の状態は上述の通りである。
【0032】
時間帯t1では、リアクトル電圧VLは0となる。時間帯t2では、リアクトル電圧VLは、上コンデンサCuの端子間電圧Vc1と同一となる。時間帯t3では、リアクトル電圧VLは0となる。時間帯t4では、リアクトル電圧VLは、下コンデンサCdの端子間電圧Vc2と同一となる。ただし、時間帯t4におけるリアクトル電圧VLは、時間帯t2におけるリアクトル電圧VLとは極性が逆となる。
【0033】
図4における「充電」の表記はコンデンサが充電される状態であることを示し、「放電」の表記はコンデンサが放電する状態であることを示す。「なし」の表記は、コンデンサが、充電されず放電もしないことを示す。時間帯t1において上コンデンサCuは充電され、下コンデンサCdは放電する。時間帯t2において上コンデンサCuは放電し、下コンデンサCdは充電されず放電もしない。時間帯t3において、上コンデンサCuは放電し、下コンデンサCdは充電される。時間帯t4において上コンデンサCuは充電されず放電もせず、下コンデンサCdは放電する。
【0034】
コンデンサ分割型電力変換装置20の構成および動作は、U相スイッチングアーム26UとV相スイッチングアーム26Vとから構成されるスイッチング回路を含む回路構成によって説明することができる。このスイッチング回路は、セカンダリ巻線22の両端が接続されると共に、負荷/電源回路が各スイッチングアームの両端(一対の端子)に接続される回路である。スイッチング回路は、プライマリ巻線18に印加される電圧に応じてスイッチングを行い、セカンダリ巻線22に現れる交流電圧を直流電圧に変換し、負荷/電源回路に出力する。
【0035】
セカンダリ巻線22の一端、スイッチング回路、上コンデンサCuおよびリアクトルLを経てセカンダリ巻線22のタップに至る第1ループに、スイッチング回路のスイッチングによって電流が流れ、上コンデンサCuが充放電される。また、セカンダリ巻線22の他端、スイッチング回路、下コンデンサCdおよびリアクトルLを経てセカンダリ巻線22のタップに至る第2ループに、スイッチング回路のスイッチングによって電流が流れ、下コンデンサCdが充放電される。さらに、スイッチング回路のスイッチングによって、コンデンサアームCの端子間の電圧、および負荷/電源回路に流れる電流が制御される。
【0036】
図5には、上から順に、セカンダリ巻線電圧Vs、リアクトル電圧VL、リアクトルLに流れる電流iL、上コンデンサCuに流れる電流ic1および下コンデンサCdに流れる電流ic2の時間波形の概形が示されている。横軸は時間を示し、縦軸は電圧または電流の値を示す。
【0037】
セカンダリ巻線電圧Vsは、セカンダリ巻線22の下端を電位の基準とする。リアクトル電圧VLは、リアクトルLの右端を電位の基準とする。リアクトルLに流れる電流iLは、リアクトルLの右端から流入する向きを正とする。上コンデンサCuに流れる電流ic1は、上コンデンサCuの上端から流入する向きを正とする。下コンデンサCdに流れる電流ic2は、下コンデンサCdの上端から流入する向きを正とする。
【0038】
セカンダリ巻線電圧Vsは、
図2に示されたプライマリ巻線電圧Vpの巻線比N倍である。時間帯t1においてセカンダリ巻線電圧VsはVtとなり、時間帯t2においてセカンダリ巻線電圧Vsは0となる。時間帯t3においてセカンダリ巻線電圧Vsは-Vtとなり、時間帯t4においてセカンダリ巻線電圧Vsは0となる。ただし、セカンダリ巻線電圧Vsの波高値Vtは、プライマリ巻線電圧Vpの波高値Vinの巻線比N倍である。
【0039】
時間帯t1においてリアクトル電圧VLは0となり、時間帯t2においてリアクトル電圧VLはVc1(上コンデンサCuの端子間電圧)となる。時間帯t3においてリアクトル電圧VLは0となり、時間帯t4においてリアクトル電圧VLは-Vc2(下コンデンサCdの端子間電圧)となる。
【0040】
リアクトルLに流れる電流iL(リアクトル電流iL)は、上コンデンサCuに流れる電流ic1から下コンデンサCdに流れる電流ic2を減算したものである。上コンデンサCuに流れる電流ic1は、時間帯t1において正方向に増加する。時間帯t2においては、上コンデンサCuに流れる電流ic1は減少して0となり、さらには負の値となって負方向に増加する。時間帯t3において、負の値である上コンデンサCuに流れる電流ic1は正方向に増加して0に達する。時間帯t4において、上コンデンサCuに流れる電流ic1は0となる。
【0041】
下コンデンサCdに流れる電流ic2は、時間帯t1において負の値であり、正方向に増加して0に達する。時間帯t2において、下コンデンサCdに流れる電流ic2は0となる。時間帯t3において、下コンデンサCdに流れる電流ic2は正の値となって正方向に増加する。時間帯t4においては、下コンデンサCdに流れる電流ic2は減少して0となり、さらには負の値となって負方向に増加する。
【0042】
時間帯t1では、上コンデンサCuに流れる電流ic1の傾きと、下コンデンサCdに流れる電流ic2の傾きは同一であり、電流ic1および電流ic2は極性が逆である。そのため、リアクトル電流iL=ic1-ic2は一定となる。
【0043】
時間帯t2では、下コンデンサCdに流れる電流ic2が0であることから、リアクトル電流iLは、上コンデンサCuに流れる電流ic1と一致する。
【0044】
時間帯t3では、時間帯t1と同様、上コンデンサCuに流れる電流ic1の傾きと、下コンデンサCdに流れる電流ic2の傾きは同一であり、電流ic1および電流ic2は極性が逆である。そのため、リアクトル電流iL=ic1-ic2は一定である。
【0045】
時間帯t4では、上コンデンサCuに流れる電流ic1が0であることから、リアクトル電流iLは、下コンデンサCdに流れる電流ic2の極性を反転したものと一致する。
【0046】
リアクトル電圧VLは、リアクトル電流iLを時間微分した値の極性を反転したものである。時間帯t1ではリアクトル電流iLは一定であるためリアクトル電圧VLは0となる。時間帯t2ではリアクトル電流iLは減少しているため、リアクトル電圧VLは正の値Vc1となる。時間帯t3ではリアクトル電流iLは一定であるためリアクトル電圧VLは0となる。時間帯t4ではリアクトル電流iLは増加しているため、リアクトル電圧VLは負の値-Vc2となる。
【0047】
以上説明した動作を踏まえて、コンデンサ分割型電力変換装置20の動作原理について説明する。以下の説明では、U相スイッチングアーム26UおよびV相スイッチングアーム26Vを、それぞれ、スイッチングアーム26Uおよび26Uという。コンデンサ分割型電力変換装置20では、スイッチングアーム26Uおよび26Vのスイッチングによって、リアクトルLに誘導起電力が発生する。この誘導起電力によって電流ic1およびic2が流れ、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdのそれぞれは、充電および放電を交互に繰り返す。上コンデンサCuおよび下コンデンサCdのうち一方が放電しているときは、他方は充電しているか、充放電をしない状態にある。また、上コンデンサCuおよびCdのうち一方が充電されているときは、他方は放電している。
【0048】
このような動作によってコンデンサアームCの両端には一定の電圧が現れ、負荷/電源回路に電流iRが流れて直流電力が供給され、または負荷/電源回路からコンデンサ分割型電力変換装置20に直流電力が供給される。プライマリ巻線側からセカンダリ巻線側へ供給された電力は負荷/電源回路に供給される。あるいは、負荷/電源回路から供給された電力がセカンダリ巻線側からプライマリ巻線側へ伝送される。
【0049】
コンデンサ分割型電力変換装置20から負荷/電源回路に供給される電力は、スイッチング素子S1およびS3のオン時比率を小さくし、スイッチング素子S2およびS4のオン時比率を大きくする程大きくなる。ここで、オン時比率とは、スイッチング周期に対する、スイッチング素子がオンとなる時間の比率をいう。
【0050】
図6(a)にはプライマリ巻線側からセカンダリ巻線側に電力が伝送される場合の等価回路が示されている。
図6(b)には、この場合におけるセカンダリ巻線電圧Vs、電流iR、リアクトル電流iL、セカンダリ巻線22のタップより上側(セカンダリ巻線上部)に流れる電流it1(セカンダリ巻線上部電流it1)の時間波形が示されている。ここで、
図6(b)に示されている各横軸は時間を示し、縦軸は電圧または電流の値を示す。
【0051】
図6(a)に示されているように、上コンデンサCu、リアクトルL、およびセカンダリ巻線上部によって形成されるループには電流ic1が流れる。下コンデンサCd、セカンダリ巻線22のタップより下側(セカンダリ巻線下部)およびリアクトルLによって形成されるループには電流ic2が流れる。リアクトル電流iLは、電流ic1から電流ic2を減算したものであり、iL=ic1-ic2が成立する。
【0052】
正極端子32pと負極端子32nに接続された負荷/電源回路には直流電流iRが流れる。これに対応して
図6(a)には、直流電流iRを流す電流源iRが示されている。セカンダリ巻線22の上端からは、セカンダリ巻線上部電流it1=ic1+iRが流出する。これに対応して
図6(a)には、セカンダリ巻線上部電流it1を流す電流源it1が示されている。セカンダリ巻線22の下端には、セカンダリ巻線下部電流it2=ic2+iRが流入する。これに対応して
図6(a)には、セカンダリ巻線下部電流it2を流す電流源it2が示されている。
【0053】
図7(a)には、
図6(b)と同様の定義により、セカンダリ巻線側からプライマリ巻線側に電力が伝送される場合の等価回路が示されている。
図7(b)には、この場合におけるセカンダリ巻線電圧Vs、電流iR、リアクトル電流iL、セカンダリ巻線上部電流it1の時間波形が示されている。ここで、
図7(b)に示されている各横軸は時間を示し、縦軸は電圧または電流の値を示す。
【0054】
図6および
図7に示されているように、正極端子32pと負極端子32nに接続された負荷/電源回路に流れる電流iRは、電流ic1およびic2から独立しており、電流iRが電流ic1およびic2の変化によって受ける影響は小さい。リアクトルL、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdの素子定数を変更した場合には、電流ic1およびic2が変化するものの、理論的には負荷/電源回路に流れる電流iRは変化しない。これによって、リアクトルL、上コンデンサCuおよび下コンデンサCdには、素子定数の小さいものを用いることができ、コンデンサ分割型電力変換装置20が小型化される。
【0055】
図8~
図10には、コンデンサ分割型電力変換装置20のシミュレーション結果が示されている。
図8~
図10のそれぞれには、上から順にセカンダリ巻線電圧Vs、リアクトル電圧VL、スイッチング素子S1~S4の制御信号GS1~GS4、電流ic1およびic2、リアクトル電流iL、正極端子32pと負極端子32nとの間の電圧Vdcoutが示されている。横軸は時間を示し、縦軸は電圧または電流の値を示す。制御信号GS1~GS4は、ハイであるときにスイッチング素子がオンになり、ローであるときにスイッチング素子がオフになる信号である。
【0056】
図9で示される動作では、
図8に示される動作よりもスイッチング素子S1およびS3のオン時比率が小さく、スイッチング素子S2およびS4のオン時比率が大きい。また、
図10で示される動作では、
図9に示される動作よりもスイッチング素子S1およびS3のオン時比率が小さく、スイッチング素子S2およびS4のオン時比率が大きい。したがって、
図9で示される動作では,
図8に示される動作に比べて電圧Vdcoutが大きくなり、
図10で示される動作では、
図9に示される動作に比べて電圧Vdcoutが大きくなる。
【0057】
図11には、コンデンサ分割型電力変換装置20の実験結果が示されている。
図11(a)には、負荷/電源回路に流れる電流iR(以下、負荷電流iRという)を0としたときの直流電圧Vdcin、入力電流idcin、負荷電圧Vdcout、セカンダリ巻線電圧Vs、セカンダリ巻線上部電流it1、リアクトル電圧VLおよびリアクトル電流iLが示されている。ここで、入力電流idcinは、正極端子14pから電力変換装置10に流入する電流である。
【0058】
図11(b)には、負荷電流iRを増加させたときの直流電圧Vdcin、入力電流idcin、負荷電圧Vdcout、セカンダリ巻線電圧Vs、セカンダリ巻線上部電流it1、リアクトル電圧VLおよびリアクトル電流iLが示されている。負荷電流iRが増加することで、入力電流idcinが増加し、セカンダリ巻線上部電流it1の波高値が増加することが示されている。また、負荷電流iRが増加したとしても、リアクトル電圧VL、リアクトル電流iLおよび負荷電圧Vdcoutは大きく変化しないことが示されている。
【0059】
図12には、本発明の第2実施形態に係る3ポート電力変換システム102が示されている。3ポート電力変換システム102は、コンデンサ分割型電力変換装置20および2ポート電力変換装置40を備えている。2ポート電力変換装置40は、
図1に示された電力変換装置10に、リアクトルL1、第2ポートコンデンサC2、第2ポート正極端子42pおよび第2ポート負極端子42nを追加したものである。
【0060】
スイッチングアーム12X、スイッチングアーム12YおよびコンデンサC0の下側の並列接続点は、負極端子14nの他、第2ポート負極端子42nにも接続されている。プライマリ巻線18のタップにはリアクトルL1の一端が接続され、リアクトルL1の他端は第2ポート正極端子42pに接続されている。第2ポート正極端子42pと第2ポート負極端子42nとの間には、第2ポートコンデンサC2が接続されている。
【0061】
スイッチングアーム12Xのスイッチングによって、リアクトルL1と、プライマリ巻線18のうちタップよりも上側の部分(プライマリ巻線18の上部)に流れる電流が変化し、リアクトルL1と、プライマリ巻線18の上部に誘導起電力が発生する。コンデンサC0の端子間電圧と、この誘導起電力とを併せた電圧によって、第2ポートコンデンサC2がスイッチング素子S5を介して充電される。あるいは、第2ポートコンデンサC2の端子間電圧と、この誘導起電力とを併せた電圧によって、コンデンサC0がスイッチング素子S5を介して充電される。
【0062】
同様に、スイッチングアーム12Yのスイッチングによって、リアクトルL1と、プライマリ巻線18のうちタップよりも下側の部分(プライマリ巻線18の下部)に流れる電流が変化し、リアクトルL1と、プライマリ巻線18の下部には誘導起電力が発生する。コンデンサC0の端子間電圧と、この誘導起電力とを併せた電圧によって、第2ポートコンデンサC2がスイッチング素子S7を介して充電される。あるいは、第2ポートコンデンサC2の端子間電圧と、この誘導起電力とを併せた電圧によって、コンデンサC0がスイッチング素子S7を介して充電される。
【0063】
このような構成によって、正極端子32pおよび負極端子32nによる第1ポートと、第2ポート正極端子42pおよび第2ポート負極端子42nによる第2ポートと、正極端子14pおよび負極端子14nによる第3ポートとの相互間で、直流電力の伝送が行われる。
【0064】
第2ポート正極端子42pと第2ポート負極端子42nとの間の電圧は、スイッチング素子S5およびS7のオン時比率が大きく、スイッチング素子S6およびS8のオン時比率が小さい程大きくなる。
【0065】
図13には、本発明の第3実施形態に係る3ポート/2ポート電力変換システム104が示されている。3ポート/2ポート電力変換システム104は、電力変換器20a~20cと、3相電力変換装置60とを備えている。電力変換器20a~20cのそれぞれは、
図1に示されたコンデンサ分割型電力変換装置20と同様の構成を有し、同様のスイッチング動作を実行する。
【0066】
3相電力変換装置60は、スイッチングアーム62A~62C、プライマリ巻線18a~18c、リアクトルLa~Lc、コンデンサC3,C4、正極端子66p,68p、および負極端子66n,68nを備えている。スイッチングアーム62Aは、直列接続されたスイッチング素子SapおよびSanを備えている。スイッチングアーム62Bは、直列接続されたスイッチング素子SbpおよびSbnを備えており、スイッチングアーム62Cは、直列接続されたスイッチング素子ScpおよびScnを備えている。
【0067】
スイッチングアーム62A~62CおよびコンデンサC3は並列接続されている。スイッチングアーム62A~62CおよびコンデンサC3の上側の並列接続点は、正極端子66pに接続され、スイッチングアーム62A~62CおよびコンデンサC3の下側の並列接続点は、負極端子66nに接続されている。スイッチング素子SapおよびSanの接続点と、スイッチング素子SbpおよびSbnの接続点との間には、プライマリ巻線18aが接続されている。スイッチング素子SbpおよびSbnの接続点と、スイッチング素子ScpおよびScnの接続点との間には、プライマリ巻線18bが接続されている。スイッチング素子ScpおよびScnの接続点と、スイッチング素子SapおよびSanの接続点との間には、プライマリ巻線18cが接続されている。
【0068】
プライマリ巻線18aのタップには、リアクトルLaの一端が接続されている。プライマリ巻線18bのタップ、およびプライマリ巻線18cのタップには、それぞれ、リアクトルLbの一端、およびリアクトルLcの一端が接続されている。リアクトルLa~Lcの各他端は正極端子68pに接続されている。スイッチングアーム62A~62CおよびコンデンサC3の下側の並列接続点は、負極端子66nの他、負極端子68nにも接続されている。正極端子68pと負極端子68nとの間には、コンデンサC4が接続されている。
【0069】
以下に説明するスイッチング動作によって、正極端子66pおよび負極端子66nによるポートと、正極端子68pおよび負極端子68nによるポートと、各電力変換器における正極端子32pおよび32nによるポートとの間では、相互に直流電力の伝送が行われる。
【0070】
スイッチングアーム62Aおよび62Bは、それぞれ、
図1に示されたスイッチングアーム12Xおよび12Yと同様のスイッチングを行ってよい。スイッチングアーム62Bおよび62Cは、それぞれ、
図1に示されたスイッチングアーム12Xおよび12Yと同様のスイッチングを行ってよい。また、スイッチングアーム62Cおよび62Aは、それぞれ、
図1に示されたスイッチングアーム12Xおよび12Yと同様のスイッチングを行ってよい。
【0071】
スイッチングアーム62Bがスイッチングする位相は、スイッチングアーム62Aがスイッチングする位相に対して120°だけ遅れてよい。スイッチングアーム62Cがスイッチングする位相は、スイッチングアーム62Bがスイッチングする位相に対して120°だけ遅れてよい。スイッチングアーム62Aがスイッチングする位相は、スイッチングアーム62Cがスイッチングする位相に対して120°だけ遅れてよい。
【0072】
このように、相互に120°の位相差を持たせて各スイッチングアームをスイッチングすることで、セカンダリ巻線電圧Vbは、セカンダリ巻線電圧Vaに対して位相が120°だけ遅れる。また、セカンダリ巻線電圧Vcはセカンダリ巻線電圧Vbに対して位相が120°だけ遅れ、セカンダリ巻線電圧Vaは、セカンダリ巻線電圧Vcに対して位相が120°だけ遅れる。これによって、電力変換器20a~20cに現れる電圧および電流の大きさが均一化され、電力変換器20a~20cで伝送される電力が均一化されるため、3ポート/2ポート電力変換システム104全体で伝送可能な電力が増加する。電力変換器20a~20cで伝送される電力が均一化されるため、特定の電力変換器で電力損失が大きくなることが回避される。
【0073】
上記の電力変換装置10、コンデンサ分割型電力変換装置20、2ポート電力変換装置40、および3相電力変換装置は、V2G、V2H等における電力伝送設備に用いられてよい。また、ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 電力変換装置、12X X相スイッチングアーム、12Y Y相スイッチングアーム、14p,32p,42p,66p 正極端子、14n,32n,42n,66n 負極端子、18 プライマリ巻線、20 コンデンサ分割型電力変換装置、20a,20b,20c 電力変換器、22 セカンダリ巻線、26U U相スイッチングアーム、26V V相スイッチングアーム、40 2ポート電力変換装置、60 3相電力変換装置、62A,62B,62C スイッチングアーム、100 電力変換システム、102 3ポート電力変換システム、104 3ポート/2ポート電力変換システム、S1~S8,Sap,San,Sbp,Sbn,Scp,Scn スイッチング素子、C コンデンサアーム、C0,C2,C3,C4 コンデンサ、Cu 上コンデンサ、Cd 下コンデンサ、L,L1,La,Lb,Lc リアクトル。