(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】高圧容器
(51)【国際特許分類】
F17C 1/16 20060101AFI20231024BHJP
F17C 1/06 20060101ALI20231024BHJP
F17C 1/00 20060101ALI20231024BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F17C1/16
F17C1/06
F17C1/00 B
F16J12/00 A
F16J12/00 D
(21)【出願番号】P 2022006635
(22)【出願日】2022-01-19
(62)【分割の表示】P 2017155785の分割
【原出願日】2017-08-10
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】澤井 統
(72)【発明者】
【氏名】岸田 知之
(72)【発明者】
【氏名】堀 啓介
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0226607(US,A1)
【文献】特開2008-032088(JP,A)
【文献】米国特許第05850934(US,A)
【文献】実開平02-091264(JP,U)
【文献】特開平10-016072(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0189053(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/916(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
F16J 12/00
F16J 15/00-15/12
F16J 15/46-15/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状を成し、樹脂で形成されたライナと、
前記ライナの外周面に接着されて当該ライナと一体化され、前記ライナの樹脂よりも線膨張係数が小さい樹脂で形成された外層と、
前記ライナの内周面側に挿入される挿入部が形成され、当該ライナの内部と外部を連通させる金属製の口金と、
前記外層の径方向外側かつ前記ライナの軸方向の両端部に設けられた一対の前記口金の外周面に設けられ、当該ライナの軸方向の伸長を抑制する補強層と、
前記口金に形成された前記挿入部において当該挿入部の外周面よりも小径とされ、前記ライナの内部側に開放された収容部と、
前記ライナの内周面に対して圧接された状態で前記収容部内に収容され、当該ライナの内周面と前記口金の前記挿入部との間をシールする単一部材からなるシール部材と、
前記シール部材が前記収容部内に収容された状態で前記挿入部の先端面に当接されて前記口金に固定され、
前記ライナの内周面との間に前記収容部と連通する隙間が設けられた状態で当該収容部における前記ライナの内部側を閉止する保持板と、
を有する高圧容器。
【請求項2】
前記外層は、前記ライナと接触する接触部の全体に亘って当該ライナに接着されている請求項1に記載の高圧容器。
【請求項3】
前記口金の外周面と前記外層の外周面が前記ライナの軸方向に沿って略面一の状態となっている請求項1又は請求項2に記載の高圧容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧容器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ガスバリア性を有する樹脂製ライナの外側に繊維強化樹脂から成る外層部が設けられた圧力容器に関する技術が開示されている。この圧力容器では、ライナの先端部が、内側へ折り返されており、この内側へ折り返された部位に口金が挿入されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、上記先行技術では、ライナの先端部が内側へ折り返されるように形成されているため、ライナを押出し成形等、簡易な方法で製造することができず、ライナの製造コストが上がってしまう。その一方で、ライナの先端部の折り返し構造を変更する場合には、ライナと口金とのシール性が確保されるように配慮しなければならない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シール性を担保した上で、簡単な形状でライナを形成することが可能な高圧容器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る高圧容器は、円筒状を成し、樹脂で形成されたライナと、前記ライナの外周面に接着されて当該ライナと一体化され、前記ライナの樹脂よりも線膨張係数が小さい樹脂で形成された外層と、前記ライナの内周面側に挿入される挿入部が形成され、当該ライナの内部と外部を連通させる金属製の口金と、前記外層の径方向外側かつ前記ライナの軸方向の両端部に設けられた一対の前記口金の外周面に設けられ、当該ライナの軸方向の伸長を抑制する補強層と、前記口金に形成された前記挿入部において当該挿入部の外周面よりも小径とされ、前記ライナの内部側に開放された収容部と、前記ライナの内周面に対して圧接された状態で前記収容部内に収容され、当該ライナの内周面と前記口金の前記挿入部との間をシールする単一部材からなるシール部材と、前記シール部材が前記収容部内に収容された状態で前記挿入部の先端面に当接されて前記口金に固定され、前記ライナの内周面との間に前記収容部と連通する隙間が設けられた状態で当該収容部における前記ライナの内部側を閉止する保持板と、を有している。
【0007】
請求項1に記載の発明に係る高圧容器では、円筒状を成し樹脂で形成されたライナの外周面には外層が接着されている。この外層は、ライナの樹脂よりも線膨張係数が小さい樹脂で形成されている。本発明では、ライナは、円筒状を成しており、簡単な形状で形成されている。このため、押出し成形等、簡易な方法でライナを製造することができ、コストの削減を図ることができる。
【0008】
また、外層は、ライナの樹脂よりも線膨張係数が小さい樹脂で形成されており、ライナと外層とは接着により一体化されている。一方、ライナの内周面側には、金属製の口金に形成された挿入部が挿入されており、当該ライナの内部と外部とを連通可能としている。また、ライナの内周面と口金の挿入部との間には単一部材からなるシール部材が設けられており、当該ライナの内周面と口金の挿入部(口金の外周面)との間をシールしている。
【0009】
ここで、線膨張係数が異なる二つの樹脂を用いた場合、温度変化による伸縮率が個々に異なるため、当該二つの樹脂の間で伸縮差(寸法差)が生じる。
【0010】
このため、例えば、ライナと、当該ライナよりも線膨張係数が小さい樹脂で形成された外層とが一体化されていない場合、外層に対してライナは軸方向に沿って伸縮することとなる。これに対して、本発明では、外層とライナが接着され一体化されている。このため、外層を介してライナの軸方向の伸縮は抑制されることとなる。
【0011】
また、本発明では、ライナの内周面と口金の外周面との間には、シール部材が設けられている。このため、例えば、ライナが軸方向に沿って伸縮すると、当該ライナの伸縮に伴って、シール部材は摺動し、当該シール部材が摩耗することとなる。しかし、本発明では、前述のように、ライナと外層とが接着により一体化され、当該外層を介してライナの軸方向に沿った伸縮が抑制されるため、シール部材の摺動は抑制される。
【0012】
さらに、本発明では、外層の径方向外側かつライナの軸方向の両端部に設けられた一対の口金の外周面には補強層が設けられており、当該ライナの軸方向の伸長を抑制するように設定されている。
【0013】
また、本発明では、口金の外周面において当該口金の外周面よりも小径とされライナの内部側に開放された収容部が設けられており、当該収容部内にはシール部材がライナの内周面に対して圧接された状態で収容されている。このシール部材が収容部内に収容された状態で、口金の挿入部の先端面に保持板を当接されて当該保持板が口金に固定される。当該保持板は、ライナの内周面との間に当該収容部と連通する隙間が設けられた状態で収容部におけるライナの内部側を閉止する。
【0014】
その結果、シール部材は抜け止めされる。つまり、本発明では、口金の外周面の径に合わせて大径となるようにシール部材を弾性変形させる必要はなく、口金に保持板を固定することによってシール部材は抜け止めされるため、口金にシール部材を装着しやすく作業性がよくなる。
【0015】
請求項2に記載の発明に係る高圧容器は、請求項1に記載の発明に係る高圧容器において、前記外層は、前記ライナと接触する接触部の全体に亘って当該ライナに接着されている。
【0016】
請求項2に記載の発明に係る高圧容器では、外層はライナの外周面に接着されるため、外層がライナと接触する接触部は、ライナの外周面の略全体に及ぶこととなる。したがって、本発明では、当該接触部の全体に亘って外層がライナに接着されているため、ライナは全体に亘って伸縮が抑制される。
【0017】
請求項3に記載の発明に係る高圧容器は、請求項1又は請求項2に記載の発明に係る高圧容器において、前記口金の外周面と前記外層の外周面が前記ライナの軸方向に沿って略面一の状態となっている。
【0018】
このため、本発明では、口金の外周面及び外層の外周面に補強層を設ける際、高圧容器の軸方向に沿った部位で補強層による強度にばらつきが生じないようにすることが可能性となる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の本発明に係る高圧容器は、シール性を担保した上で、簡単な形状でライナを形成することができる、という優れた効果を有する。
【0020】
請求項2記載の本発明に係る高圧容器は、ライナの全体に亘って伸縮を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0021】
請求項3記載の本発明に係る高圧容器は、高圧容器の軸方向に沿った部位で補強層による強度にばらつきが生じないようにすることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施の形態に係る高圧容器を示す概略側面図である。
【
図2】
図1におけるA-A線に沿って切断した状態を示す拡大断面図である。
【
図3】比較例であり、
図2に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて、本発明の一実施形態について説明する。
【0024】
図示しない車両に設けられたタンクモジュールは、
図1に示される高圧容器としての高圧タンク10を複数組み合わせることで構成されており、一例として、燃料電池車両のフロアパネル(不図示)の車両下方側に複数並べた高圧タンク10同士を連結させた構成とされている。
【0025】
(高圧容器の構成)
まず、本実施の形態に係る高圧容器が適用された高圧タンク10の構成について説明する。
【0026】
図1に示されるように、高圧タンク10は、略円筒状を成しており、一例として車両幅方向又は車両前後方向を軸方向(長手方向)として配置されている。この高圧タンク10は、図示はしないが、フロアパネルの車両下方側の空いているスペース内に収容可能な径寸法とされている。
【0027】
図2に示されるように、高圧タンク10は、略円筒状を成す胴体部12と、胴体部12の軸方向(長手方向)の両端部に設けられた口金14と、を含んで構成されており、胴体部12内には、流体(本実施形態では水素)が収容可能とされている。また、胴体部12は、略円筒状を成すライナ16と、当該ライナ16の外側を覆う外層部18と、を含んで構成されている。
【0028】
本実施形態では、ライナ16は、例えば、ガスバリア性を有するナイロン樹脂によって形成されており、外層部18は、シート状のCFRP(炭素繊維強化樹脂)によって形成されている。つまり、ライナ16は、外層部18よりも線膨張係数が大きい樹脂で形成されている。さらに、本実施形態では、この外層部18が、ライナ16の外周面16Aを覆った状態で、溶着や接着等によりライナ16の外周面16Aに接合され、ライナ16と一体化されている。
【0029】
一方、口金14は、略円柱状を成しており、挿入部20と、連通流路22と、突出部24と、を含んで構成されている。
【0030】
挿入部20は、口金14の長手方向の一端部14Aに設けられており、口金14の長手方向の中央部14Bの外径寸法よりも小径とされ、挿入部20が胴体部12に挿入可能とされる。当該挿入部20は、胴体部12(ライナ16)の内部26側に向かって開口される凹部28が形成されている。
【0031】
凹部28は、奥側に略円柱状を成す円柱凹部30と、胴体部12の内部26側に形成されテーパ状を成すテーパ部32と、を含んで構成されている。テーパ部32は、円柱凹部30から胴体部12の内部26側へ向かうにつれて内径寸法が徐々に大きくなるように形成されている。
【0032】
このように、口金14において、凹部28が形成されることにより、当該凹部28が形成されない場合と比較して、高圧タンク10の内部26の容量を増やすことができる。
【0033】
また、口金14の挿入部20の端部20Aには、当該挿入部20の外径寸法よりも小径とされ、
図2に示す口金14の上側において、断面視で略L字状を成す収容部34が形成されている。この収容部34内には、例えば、バックアップリング36及びOリング(シール部材)38が収容されている。
【0034】
当該収容部34内にバックアップリング36及びOリング38が収容された状態で、挿入部20の端面20A1には、環状の保持板40が当接している。当該挿入部20の端部20Aには、締結孔42(本実施形態では一例として4つ)が形成されており、ボルト44がねじ込み可能とされる。このボルト44を介して、保持板40は、挿入部20の端面20A1に当接した状態で、口金14に固定される。
【0035】
このように、保持板40が口金14に固定された状態で、バックアップリング36及びOリング38は抜け止めされる。なお、保持板40の内側に形成された孔部40Aは、凹部28のテーパ部32の最大内径寸法に合わせて、その内径寸法が設定されている。
【0036】
そして、口金14の挿入部20が胴体部12内(ライナ16の内周面16B側)へ挿入された状態で、バックアップリング36及びOリング38は、ライナ16の内周面16Bに圧接される(嵌め込まれる)。つまり、当該Oリング38は、口金14とライナ16の内周面16Bの間をシールして、ライナ16内の流体が漏出しないようにしている。
【0037】
また、前述のように、口金14の挿入部20は、当該口金14の中央部14Bの外径寸法よりも小径とされているが、口金14の中央部14Bと挿入部20の間には、段差部46が設けられている。そして、口金14の挿入部20がライナ16内へ嵌め込まれた状態で、当該段差部46には、ライナ16及び外層部18の長手方向の一端がそれぞれ当接している。なお、この状態で、口金14の中央部14Bの外周面14B1と外層部18の外周面18Aとが略面一の状態となっている。
【0038】
一方、連通流路22は、口金14の長手方向の中央部14Bに設けられており、当該口金14の軸芯Pに沿って貫通している。この連通流路22によって、ライナ16の内部26と外部27が連通可能とされる。
【0039】
また、突出部24は、口金14の長手方向の他端部14Cに設けられており、口金14の軸芯Pに沿って突出している。この突出部24は、連通流路22と連通し、略円筒状を成している。そして、突出部24の内周面24Aには、雌ネジ部48が形成されている。
【0040】
当該突出部24には、図示はしないが、他の複数の高圧タンクの連通流路と連結された連結パイプが接続可能とされる。当該突出部24に図示しない連結パイプが連結されると、複数の高圧タンクの胴体部の内部が、互いに連通されることとなる。また、当該連結パイプには、図示しないバルブが設けられており、これにより、連結パイプ内を流れる流体の量がコントロール可能とされる。なお、連結パイプは、図示しない燃料電池スタック等に接続されている。
【0041】
ところで、
図1に示されるように、外層部18の径方向外側かつ一対の口金14の外側面には、補強層50が設けられている。この補強層50は、内部に複数の繊維52を有するCFRP(炭素繊維強化樹脂)により構成されている。なお、
図1では、繊維52を分かり易く示すため、実際より太さを誇張して図示すると共に、繊維52の繊維方向を分かり易く示すため本数を少なく図示している。
【0042】
当該補強層50の繊維52は、口金14の突出部24の根元部24Bに近接して直線的に巻き付けられている。具体的に説明すると、口金14の根元部24Bの近傍に巻き付けられた繊維52は、胴体部12の軸方向に対して所定の角度θ傾けて他方の口金14へ向かって、胴体部12の外層部18上(
図2参照)に巻き付けられている(所謂ヘリカル巻き)。
【0043】
この補強層50によって、高圧タンク10自体の軸方向の耐圧性を向上させている。また、繊維52が、軸方向に対して所定の角度θ傾いた状態で胴体部12に巻き付けられることにより、補強層50が胴体部12から脱落するのを抑制している。なお、この補強層50の巻き方は一例であり、これに限るものではない。
【0044】
(高圧容器の作用及び効果)
次に、本実施の形態に係る高圧容器が適用された高圧タンク10の作用及び効果について説明する。
【0045】
まず、比較例として、例えば、
図3に示される高圧タンク100では、ライナ102の先端部102Aに、内側へ折り返された折り返し部104が設けられており、当該折り返し部104に口金106が挿入されるようになっている。この折り返し部104と口金106の間には、Oリング108が設けられており、当該Oリング108によってライナ102内の流体が漏出しないようにしている。
【0046】
しかしながら、この比較例では、ライナ102の先端部102Aに折り返し部104が形成されており、ライナ102自体の形状が複雑化している。
【0047】
これに対して、本実施形態では、
図2に示されるように、ライナ16が円筒状を成している。つまり、ライナ16は、簡単な形状で形成されている。このため、当該ライナ16を押出し成形等、簡易な方法で製造することができ、製造コストを削減することができる。また、ライナ16を押出し成形で形成することで、当該ライナ16を薄肉で形成することができる。したがって、高圧タンク10の軽量化を図ることができる。
【0048】
一方、本実施形態では、ライナ16の外周面16Aには、外層部18が接合されており、ライナ16と外層部18とは一体化されている。さらに、ライナ16の内周面16B側には、口金14の挿入部20が挿入されている。そして、ライナ16の内周面16Bと口金14の挿入部20との間には、Oリング38が設けられている。
【0049】
ここで、ライナ16は、外層部18(繊維強化樹脂)よりも線膨張係数が大きい樹脂で形成されている。一般的な樹脂(ここではナイロン樹脂)と繊維強化樹脂とでは、線膨張係数が大きく異なる。繊維強化樹脂は、線膨張係数が小さいため、温度変化による伸縮は殆ど見られないが、一般的な樹脂では、温度変化により伸縮してしまう。
【0050】
例えば、図示はしないが、当該ライナ16と、繊維強化樹脂で形成された外層部18とが一体化されていない場合、外層部18に対してライナ16は軸方向に沿って伸縮することとなる。高温時は、補強層50によってライナ16の伸長が抑制され得るが、低温時においては、ライナ16は軸方向に沿って収縮する。これに対して、本実施形態では、外層部18がライナ16に接合され一体化されている。そのため、外層部18によりライナ16の軸方向の収縮を抑制することができる。よって、当該外層部18によりライナ16の軸方向の伸縮が抑制されることとなる。
【0051】
ところで、本実施形態では、前述のように、ライナ16の内周面16Bと口金14の挿入部20との間には、Oリング38が設けられている。このため、例えば、ライナ16が伸縮すると、当該ライナ16の伸縮に伴って、Oリング38が摺動し、Oリング38が摩耗することとなる。しかし、本実施形態では、ライナ16と外層部18とが一体化され、外層部18を介して、ライナ16の収縮が抑制されるため、Oリング38の摺動は抑制される。これにより、ライナ16の内周面16Bと口金14の挿入部20との間のシール性能を維持することができる。つまり、本実施形態によれば、シール性を担保した上で、簡単な形状でライナ16を形成することができる。
【0052】
また、本実施形態では、外層部18はライナ16の外周面16Aを覆っているため、外層部18がライナ16と接触する接触部54は、ライナ16の外周面16Aの略全体に及ぶこととなる。したがって、本実施形態では、当該接触部54の全体に亘って外層部18がライナ16に接合されているため、ライナ16は全体に亘って伸縮が抑制される。なお、当該接触部54は、必ずしもライナ16の外周面16Aの略全体に及ばなければならないということはない。
【0053】
また、本実施形態では、ライナ16はナイロン樹脂によって形成されているが、胴体部12内に収容されるガスの透過を抑制する材料であればよいため、必ずしもナイロン樹脂である必要はない。
【0054】
さらに、本実施形態では、外層部18は繊維強化樹脂で形成されているが、ライナ16よりも線膨張係数が小さい樹脂で形成されていればよい。このため、必ずしも繊維強化樹脂である必要はない。
【0055】
さらに、本実施形態における高圧タンク10は、内部26に水素が収容された構成とされているが、これに限らず、その他の気体やLPG等の液体等が収容されてもよい。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
10 高圧タンク(高圧容器)
14 口金
14B1 外周面(口金の外周面)
16 ライナ
16A 外周面(ライナの外周面)
16B 内周面(ライナの内周面)
18 外層部(外層)
18A 外周面(外層の外周面)
26 内部(ライナの内部)
27 外部(ライナの外部)
34 収容部
38 Oリング(シール部材)
40 保持板
54 接触部