(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】装着体、認証方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06V 40/13 20220101AFI20231024BHJP
A61B 5/1172 20160101ALI20231024BHJP
G06F 21/32 20130101ALI20231024BHJP
【FI】
G06V40/13
A61B5/1172
G06F21/32
(21)【出願番号】P 2022061919
(22)【出願日】2022-04-01
(62)【分割の表示】P 2021079831の分割
【原出願日】2016-08-08
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2015158540
(32)【優先日】2015-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】福田 浩司
【審査官】佐田 宏史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-011614(JP,A)
【文献】特開2000-200315(JP,A)
【文献】特開2015-076877(JP,A)
【文献】特開2005-242907(JP,A)
【文献】特開2003-093368(JP,A)
【文献】特開2010-240215(JP,A)
【文献】特開2002-083298(JP,A)
【文献】国際公開第2008/044697(WO,A1)
【文献】藤川 真樹,“ユーザビリティとセキュリティを考慮した新しい出入管理システムの設計”,日本セキュリティ・マネジメント学会誌,日本,日本セキュリティ・マネジメント学会,2006年12月31日,Vol.20, No.3,pp.50-59
【文献】開田 翔一、外3名,“手首血管の光透視による個人認証のための基礎的検討”,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2015年03月09日,Vol.114, No.515,pp.29-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 40/13
G06T 1/00
A61B 5/1171-5/1172
G06F 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの生体が挿入される領域を囲う環状の筐体と、
前記領域に生体が存在する状態を検知するセンサと、
前記領域に存在する前記生体から生体情報を取得するスキャナと、
前記領域に前記生体が存在する状態を検知する前記センサ及び前記スキャナに給電するバッテリと、
予め記憶部に記憶された生体情報と前記スキャナが取得した生体情報とに基づき前記ユーザを認証する認証回路と、
前記ユーザが認証された場合に、前記領域に前記生体が存在する状態において、前記バッテリからの前記スキャナへの給電を停止する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記センサの検知信号により前記筐体に生体が存在しない状態から、存在する状態への変化した場合に、前記バッテリから前記スキャナの光源、TFTセンサ、および認証を行う演算装置への電力供給を開始し、認証が完了すると電力供給を停止
し、
前記生体が存在する状態を検知するセンサは、生体に対する筐体の回転方向の位置を検出する、
装着体。
【請求項2】
前記生体情報は指紋を示す、請求項1に記載の装着体。
【請求項3】
前記認証回路の認証結果に応じて無線通信を可能にする通信部、
をさらに備える、請求項1又は請求項2の何れか1項に記載の装着体。
【請求項4】
前記筐体は、前記認証回路の認証結果に応じて、決済サービスを利用可能にする、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の装着体。
【請求項5】
前記筐体は、前記認証回路の認証結果に応じて、交通機関の乗降を可能にする
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の装着体。
【請求項6】
センサが、環状の筐体によって囲まれ且つユーザの生体が挿入される領域において、当該領域に生体が存在する状態を検知するステップと、
スキャナが、前記領域に存在する前記生体から生体情報を取得するステップと、
バッテリが、前記領域に前記生体が存在する状態を検知する前記センサ及び前記スキャナに給電するステップと、
認証回路が、予め記憶部に記憶された生体情報と前記スキャナが取得した生体情報とに基づき前記ユーザを認証するステップと、
制御回路が、前記ユーザが認証された場合に、前記領域に前記生体が存在する状態において、前記スキャナおよび認証回路への給電を停止するステップと、
を有し、
前記制御回路は、前記センサの検知信号に基づいて前記筐体に生体が存在しない状態から、存在する状態へ変化した場合に、前記バッテリから前記スキャナおよび認証回路への電力供給を開始し、認証が完了すると電力供給を停止することにより、生体に筐体を装着して外すまでの間に一度だけ認証を行
い、
前記生体が存在する状態を検知するセンサは、生体に対する筐体の回転方向の位置を検出する、
認証方法。
【請求項7】
前記生体情報は指紋を示す、請求項6に記載の認証方法。
【請求項8】
環状の筐体によって囲まれ且つユーザの生体が挿入される領域において、センサを用いて当該領域に生体が存在する状態を検知し、
スキャナにより前記領域に存在する前記生体から生体情報を取得して、
前記領域に前記生体が存在する状態を検知する前記センサ及び前記スキャナに給電し、
予め記憶部に記憶された生体情報と前記スキャナが取得した生体情報とに基づき前記ユーザを認証する、
前記ユーザが認証された場合に、前記領域に前記生体が存在する状態において、前記スキャナおよび認証回路への給電を停止する、
各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記センサの検知信号に基づいて前記筐体に生体が存在しない状態から、存在する状態へ変化した場合に、バッテリから前記スキャナおよび認証回路への電力供給を開始し、認証が完了すると電力供給を停止することにより、生体に筐体を装着して外すまでの間に一度だけ認証を行
い、
前記生体が存在する状態を検知するセンサは、生体に対する筐体の回転方向の位置を検出する、
認証方法
プログラム。
【請求項9】
前記生体情報は指紋を示す、請求項8に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着体、認証装置、認証方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
指紋認証や静脈認証などの生体認証技術では、認証対象者の指紋や静脈パターンが、予め登録された認証データと照合可能となるように、指を載せる載置面に認証対象者の指が適切に置かれる必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、指の腹の先端を載せる先端載置部の先端載置面に、指の配置位置のずれを検出する指先端センサを設けて指の腹先端の位置のずれを検出し、指の配置位置のずれをユーザに教示する生体認証方法が記載されている。
【0004】
また、近年では、腕時計、メガネ、リストバンド、指輪(リング)などの身に着ける器具に情報端末を搭載したいわゆるウェアラブル端末が提供されている。ウェアラブル端末には、その端末を装着する個人に関する情報が記憶されていることも多く、セキュリティの観点から持ち主によって装着されているかどうかを認証する仕組みが求められる。
【0005】
ウェアラブル端末に生体認証技術を用いる場合の例を考える。例えば、腕時計型のウェアラブル端末の場合、ウェアラブル端末に指紋認証用のユニットを搭載し、例えばユーザが腕時計の表示部に指を載せると指紋認証を行うといった認証方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この腕時計型のウェアラブル端末は、常に身に着けておくには大きく煩わしく感じるユーザも多い。そのため、ユーザからはより小型化された認証機能付きのウェアラブル端末(例えば、リング型のウェアラブル端末)の提供が望まれていた。
【0008】
この発明の目的の一例は、上述の課題のいずれかを解決することのできる装着体、認証装置、認証方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、装着体は、ユーザの生体が挿入される領域を囲う環状の筐体と、前記筐体に設けられ、前記領域へ向けて光を発する発光素子と、前記筐体に設けられ、前記発光素子が光を発したときに前記領域を撮像して画像を得る撮像素子と、予め取得された静脈パターンと、前記画像とに基づいて前記ユーザを認証する認証回路とを備える。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、認証装置は、ユーザの生体が挿入される領域を囲う環状の筐体に設けられ、発光素子に前記領域へ向けて光を発させる発光制御回路と、予め取得された静脈パターンと、前記発光素子が光を発したときに撮像することにより得られた画像とに基づいて前記ユーザの認証を行う認証部とを備える。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、認証方法は、環状の筐体によって囲われかつユーザの生体が挿入される領域へ向けて、発光素子に光を発させ、予め取得された静脈パターンと、前記発光素子が光を発したときに撮像することにより得られた画像とに基づいて前記ユーザの認証を行うことを有する。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、プログラムは、環状の筐体によって囲われかつユーザの生体が挿入される領域へ向けて、発光素子に光を発させ、予め取得された静脈パターンと、前記発光素子が光を発したときに撮像することにより得られた画像とに基づいて前記ユーザの認証を行うことをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、装着体を身に着けた者がその装着体の所有者であるかどうかを認証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一の実施形態による装着体の構成を示す図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態による認証装置を示す図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態における装着体の具体的な構成図の一例である。
【
図4】本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第一の図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第二の図である。
【
図6A】本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第三の図である。
【
図6B】本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第三の図である。
【
図7A】本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第四の図である。
【
図7B】本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第四の図である。
【
図8A】本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第五の図である。
【
図8B】本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第五の図である。
【
図9】本発明の第一の実施形態における認証方法の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第二の実施形態による認証システムの一例を示す図である。
【
図11】本発明の第二の実施形態による認証システムにおける表示例を示す図である。
【
図12】本発明の第二の実施形態における認証用画像の登録方法の一例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の第三の実施形態による認証システムの一例を示す図である。
【
図14】本発明の第四の実施形態における認証用画像の登録方法の一例を示すフローチャートである。
【
図15】本発明の第四の実施形態における認証方法の一例を示すフローチャートである。
【
図16】本発明の第五の実施形態における認証用画像の登録方法の一例を示すフローチャートである。
【
図17】本発明の第五の実施形態における認証方法の一例を示すフローチャートである。
【
図18】本発明の第六の実施形態による認証システム一例を示す図である。
【
図19】本発明の第六の実施形態における認証用画像の登録方法の一例を示すフローチャートである。
【
図20】本発明の第六の実施形態における認証方法の一例を示すフローチャートである。
【
図21】本発明の第七の実施形態による装着体の一例を示す図である。
【
図22】本発明の第七の実施形態における認証方法の一例を示すフローチャートである。
【
図23A】本発明の第七の実施形態による位置合わせの目印図形の一例を示す図である。
【
図23B】本発明の第七の実施形態による位置合わせの目印図形の一例を示す図である。
【
図23C】本発明の第七の実施形態による位置合わせの目印図形の一例を示す図である。
【
図24】本発明の第七の実施形態による位置判定を説明する図である。
【
図25】本発明の第八の実施形態における虹彩画像の登録方法の一例を示すフローチャートである。
【
図26】本発明の第九の実施形態における虹彩画像の登録方法の一例を示すフローチャートである。
【
図27】本発明の第十の実施形態による認証システム一例を示す図である。
【
図28】本発明の第十の実施形態における認証方法の一例を示すフローチャートである。
【
図29】本発明の第十一の実施形態による装着体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第一の実施形態>
以下、本発明の第一の実施形態による認証装置を
図1~
図9を参照して説明する。
図1は、第一の実施形態による装着体の構成を示す図である。
図1に示す通り、装着体10Lは、環状の筐体300Lと、発光素子320Lと、撮像素子321Lと、認証回路40Lとを少なくとも備えている。
発光素子320Lは、筐体300Lの内周面に設けられる。発光素子320Lは、筐体300Lの径内へ向けて光を発する。すなわち、発光素子320Lは、筐体300L(筐体300Lの内周面)に囲まれかつユーザの生体が挿入される領域へ向けて光を発する。
撮像素子321Lは、筐体300Lの内周面のうち発光素子320Lと対向しない位置に設けられる。撮像素子321Lは、筐体300Lの径内の画像を撮像する。すなわち、撮像素子321Lは、筐体300Lの内周面に囲まれた領域の画像を撮像する。
認証回路40Lは、記憶部に予め記録された、ユーザの生体のうち筐体300Lが装着される装着部位の静脈パターンと、発光素子320Lが光を発したときに撮像素子321Lが撮像した画像とに基づいてユーザの認証を行う。その記憶部は、装着体10Lに備えられていても良く、装着体10Lの外部に設けられていても良い。
【0016】
図2は、本発明の第一の実施形態による認証装置を示す図である。
図2において、装着体10は、記憶部11と、通信部12と、バッテリ部13と、電源制御部14と、制御部15と、認証装置30Aとを含む。認証装置30Aは、位置検出部31と、撮像部32と、装着検出部33と、装着位置判定部34と、認証部35と、表示制御部36と、表示部37と、記憶部38と、を備えている。
装着体10とは、例えば、腕時計、リストバンド、指輪(リング)、メガネ、コンタクトレンズ、ネックレス、衣服、靴、靴下など、ユーザの身体に装着される装飾具である。
装着体10には、装着体10を所有するユーザの個人情報が記録されておいる。
ユーザは、ICカードの代わりに身に着けた装着体10を使用して、各種サービスを利用することができる。例えば、ユーザは、装着体10を用いて、決済サービス、公共交通機関の乗降、セキュリティが掛かった部屋や建物への出入り、イベント等への参加における本人確認などを行うことができる。従って、装着体10が他人によって装着され、使用されるようなことがあると、真のユーザは、プライバシーの侵害、経済的および社会的な損害を被ることになる可能性がある。そこで、装着体10に認証装置30Aを設け、装着体10を装着した者が真のユーザであるかどうかの判定を行う。認証装置30Aによる認証の結果、装着した者が真のユーザでない場合、装着体10は、決済サービス等に用いる機能を停止する。
第一の実施形態では、装着体10がリング型ウェアラブル端末である場合を例に説明を行う。また、第一の実施形態では認証装置30Aが静脈認証によって真のユーザかどうかの認証を行う。
【0017】
記憶部11は、真のユーザの暗号化された個人情報を記憶している。個人情報とは、例えば、真のユーザに紐づけられた識別情報である。ここでいう識別情報とは、例えばICカードに記録された情報と同様、各種決済サービスなどでユーザの識別に用いる情報である。記憶部11は、耐タンパ性を有する。例えば、記憶部11は、個人情報を暗号化して記憶しても良い。また、記憶部11は、不正な手段でのアクセスを検知した時に、個人情報を削除しても良い。また、筐体300をこじ開けたときに記憶部11が実装されたチップが破壊されるように構成されても良い。具体的な構造の例は、記憶部11が実装されたチップの全面が筐体300と接着され、筐体300がこじ開けられるときにチップが分断されるような構造である。別の具体的な構造の例は、記憶部11が実装されたチップが、空気に触れることで記憶するデータが消滅する構造である。
通信部12は、NFC(Near Field Communications)などの近距離無線通信によって、例えばNFCカードリーダとの通信を行う。
バッテリ部13は、装着体10と認証装置30に電力を供給する2次電池である。
電源制御部14は、受電用コイルなどの受電回路とバッテリ部13の充放電を制御する制御回路とを備える。電源制御部14は、例えば非接触型充電器の送電用コイルから電力の供給を受け、バッテリ部13に蓄電する。また電源制御部14は、バッテリ部13に充電された電力に基づいて、光源320およびTFTセンサ321への電力の供給を制御する。電源制御部14は、電源供給回路および充電制御回路の一例である。
制御部15は、装着体10の動作を制御する。具体例として、ユーザが装着体10をNFCカードリーダにかざした場合について説明する。この場合、制御部15は、認証装置30が装着体10を装着したユーザが真のユーザであると判定すれば、記憶部11が記憶する真のユーザの個人情報の通信部12を介した送信を許可し、決済サービス等を可能にする。
【0018】
位置検出部31は、装着体10の生体に対する装着位置を検出する。位置検出部31は、例えば、静電容量センサ、圧力センサ、温度センサ、加速度センサ、画像センサ、超音波センサなどである。
撮像部32は、装着体10を装着した装着位置に関するユーザの生体情報を含む画像を撮像する。撮像部32は、装着位置判定部34の判定に基づいて画像の撮像を行う。
装着検出部33は、装着体10のユーザによる装着動作の開始を検出する。
装着位置判定部34は、位置検出部31による装着動作開始の検出を契機として、装着体10の装着位置が、装着体10を装着したユーザが真のユーザかどうかの認証を行うための生体情報を含んだ画像を撮像するのに適した位置かどうかを判定する。
認証部35は、装着位置判定部34が判定した画像を撮像するのに適した位置で撮像部32が撮像した画像と予め暗号化されて登録された真のユーザの生体情報を含んだ画像との照合を行って、装着体10を装着したユーザが真のユーザかどうかを認証する。
表示制御部36は、装着位置判定部34による判定結果や認証部35による認証結果に基づいて、表示部37に表示する情報を制御する。
表示部37は、ユーザへ提示する情報を表示する。表示部37は、例えば、LED(light emitting diode)である。
記憶部38は、真のユーザの静脈パターン画像や認証処理に必要な各種情報を記憶している。記憶部38は、耐タンパ性を有する。例えば、記憶部38は、静脈パターンを暗号化して記憶しても良い。記憶部38は、不正な手段でのアクセスを検知した時に、静脈パターンを削除しても良い。筐体300をこじ開けたときに記憶部38が実装されたチップが破壊されるように構成されても良い。具体的な構造の例は、記憶部38が実装されたチップの全面が筐体300と接着され、筐体300がこじ開けられるときにチップが分断されるような構造である。具体的な構造の別の例は、記憶部38が実装されたチップが、空気に触れることで記憶するデータが消滅する構造である。
【0019】
図3は、本発明の第一の実施形態における装着体の具体的な構成図の一例である。
図3は、リング型ウェアラブル端末である装着体10A(装着体10Lの一例であり、リング10Aと呼ぶ)の断面図である。リング10Aは、筐体300(筐体300Lの一例)、加速度センサ310、静電容量センサ311A~311D、光源320(発光素子320Lの一例)、TFTセンサ321(撮像素子321Lの一例)、LEDランプ370A~370C、演算装置40(認証回路40Lの一例)を備えている。この他にもリング10Aは、通信部12やバッテリ部13などに対応する構成を備えているが、これらの図示は省略する。
図3に示す通り、静電容量センサ311A~311Dは、リング10Aの断面の円周上に等間隔に配置されている。静電容量センサ311Aおよび静電容量センサ311Cは、
図3における垂直方向の対向する位置に配置されている。静電容量センサ311Bおよび静電容量センサ311Dは、
図3における水平方向の対向する位置に配置されている。リング10Aの筐体の内周面のうち、TFTセンサ321が設けられる部分には、カバーガラスG(透過部の一例)が設けられている。カバーガラスGは、赤外光を通過させる。静電容量センサ311Cは、TFTセンサ321で受光する赤外光の進行経路と交わらない位置に配置されている。すなわち、静電容量センサ311Cは、リング10Aの、TFTセンサ321が設けられた位置よりも中心軸方向の紙面手前側又は奥側の位置に配置されている。他のTFTセンサ321についても、中心軸方向にTFTセンサ321Cと同じ位置に配置されている。
【0020】
筐体300は、中空の環状に形成され、リング10Aの外殻をなす。加速度センサ310は、リング10Aに加わる加速度を検出する。加速度センサ310は、リング10Aに加わる加速度を検出する。加速度センサ310は、例えば、3軸の加速度センサである。
静電容量センサ311Aは、筐体300の穴(筐体300の内周面に囲まれた領域)に挿通される指の皮膚の表面と静電容量センサ311Aとの距離を検出する。静電容量センサ311B~311Dについても静電容量センサ311Aと同様である。つまり、静電容量センサ311A~311Dは、筐体300と生体との位置関係に応じたセンサ値を出力するセンサである。光源320は筐体300の内周面に設けられる。光源320は、筐体300に囲まれた領域へ向けて赤外光を照射する。TFTセンサ321は筐体300の内周面のうち、光源320と対向しない位置に設けられ、筐体300に囲まれた領域の画像を撮像する。具体的には、光源320の照射方向とTFTセンサ321の撮像方向とのなす角が120度以上かつ130度以下であることが好ましい。これの理由は、光源320とTFTセンサ321との距離を離すことで光源320の直接光がTFTセンサ321に写らないようにし、かつ透過光でなく散乱光にもとづいて撮像を行うためである。
TFTセンサ321は、光源320から照射され、指の中を散乱して通過した散乱光をカバーガラスGを介して受光する。TFTセンサ321は、受光した散乱光を電気信号に変換し画像を生成する。TFTセンサ321が生成した画像には、ユーザの生体のうち筐体300が装着される装着部位における静脈パターンが写し出される。TFTセンサ321が光源320と対向しない位置に設けられることで、TFTセンサ321と光源320との間に指骨が存在することによる光量の低下を防ぐことができる。光源320およびTFTセンサ321は撮像部32の一例である。
【0021】
他の実施形態では、TFTセンサ321は透過光に基づいて撮像を行っても良い。この場合、光源320とTFTセンサ321とは対向するように設けられていても良い。この理由は、少なくとも一部の透過光が、散乱により指骨に遮られることなく光源320に対向する位置まで到達するためである。光源320とTFTセンサ321とを対向するように設ける場合、光源320として、指向性の低いLEDや、指向性の高いLEDと散乱板や導光板を組み合わせた光源など、照射される光の指向性が低い光源が選択される。例えば、光源320が、レーザー装置や±20度以内の高指向性LEDによって実現される場合において、光源320とTFTセンサ321とが対向すると、光源320から照射される光のほとんどが指骨によって遮られ、透過光が指骨まで到達しない可能性がある。したがって、光源320の指向性が高い場合、TFTセンサ321は、光源320と対向しない位置に設けられる。
【0022】
LEDランプ370A~370Cは、ユーザに装着位置の判定結果や静脈認証による認証結果を提示する。例えば、LEDランプ370A~370Cは、表示制御部36の指示信号に基づいて、例えば、認証が成功すると点灯し、認証に失敗すると点滅する。別法として、LEDランプ370A~370Cは、例えば、赤色、緑色の2色に発光するLEDであって、認証が成功すると緑色、失敗すると赤色に点灯するようにしてもよい。LEDランプ370A~370Cは表示部37の一例である。演算装置40は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備えたコンピュータ装置である。演算装置40は、記憶部を備えており、記憶部が記憶するプログラムを読み出して実行することにより、装着検出部33、装着位置判定部34、認証部35、表示制御部36の機能を実現する。具体的には、演算装置40は、記憶部に予め記録されたユーザの装着部位の静脈パターンと、光源320が光を発したときにTFTセンサ321が撮像した画像とに基づいて、ユーザの認証を行う。また、演算装置40は、静電容量センサ311A~331Dのセンサ値に基づいて筐体300の穴に生体が存在するか否かを判定する装着判定回路の一例である。
【0023】
図4は、本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第一の図である。
図4は、ユーザがリング10Aを指3に装着した様子を示している。本実施形態では、リング10Aを所定の位置に装着した状態で検出することができる静脈パターンが含まれた画像を用いて静脈認証を行う。所定の位置とは、例えば、リング10Aを常時装着する位置である。従って、例えば、リング10Aが破線で図示した位置で認証を行っても認証は成功しない可能性がある。
そこで、本実施形態では、装着位置判定部34が、例えば、加速度センサ310の検出結果を用いて、認証を行うべき位置にリング10Aが装着されているかどうかを判定する。具体的には、装着位置判定部34は、リング10Aの装着動作の開始を検出した位置からリング10Aの装着動作の完了を検出した位置までの距離を算出し、この算出された距離を用いて判定を行う。このリング10Aの挿入方向の位置を横方向の位置と呼ぶ。次に、
図5を参照して横方向の位置の算出について説明を行う。
【0024】
図5は、本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第二の図である。
ユーザは、リング10Aを矢印Rの方向に移動させて指3に装着する。このとき、リング10AのLEDランプ370A~370Cが設けられた側を上に向け、手の甲を上に向けた状態でリング10Aを装着すると決められていることを前提とする。静電容量センサ311A~311D各々は、センサ自身と対象物との距離を検出し、その検出した距離を示す情報を装着検出部33へ出力する。例えば、リング10Aが位置Aにあるとき、静電容量センサ311A~311Dは、リング10Aの指3への装着を示す有意な値を検出しない。次に、リング10Aが位置Bへ移動するとき、静電容量センサ311Aは、静電容量センサ311Aと指の表面との距離を検出する。静電容量センサ311Aは、検出した距離の情報を装着検出部33へ出力する。同様に静電容量センサ311B~311D各々は、検出した自センサと指の表面との距離の情報を装着検出部33へ出力する。装着検出部33は、静電容量センサ311A~311Dから取得した情報に基づいて、リング10Aが、指3の所定の位置(例えば、指3の先端付近)に到達したかどうかを判定する。例えば、装着検出部33は、静電容量センサ311A~311Dから取得した距離の情報のそれぞれが、リング10Aの指3への装着を示す所定の範囲の値となった場合に、装着位置判定部34にリング10Aの挿入が開始されたことを示す検知信号を出力する。
【0025】
装着位置判定部34は、検知信号を取得すると、加速度センサ310によるリング10Aの移動距離の測定を開始する。具体的には、装着位置判定部34は、所定の時間間隔で、加速度センサ310から加速度の情報を取得し、移動距離を算出する。
ユーザによる装着動作が停止し、加速度センサ310が検出した加速度が「0」になると、装着位置判定部34は、リング10Aの横方向の位置が、所定の横方向の位置であるかどうかを判定する。具体的には、装着位置判定部34は、ユーザがリング10Aを認証位置に装着したことに対応する所定の距離の情報(判定基準値)を記憶部38から読み出して、読み出した情報が示す距離と算出した移動距離と比較する。算出した移動距離が読み出した所定の距離と等しい場合(あるいは算出した移動距離が所定の距離を含むある範囲内の値である場合)、装着位置判定部34は、リング10Aが所定の横方向の位置にあると判定する。算出した移動距離が読み出した所定の距離と等しくない場合(算出した移動距離が所定の距離を含むある範囲内の値ではない場合)、装着位置判定部34は、リング10Aが所定の横方向の位置に無いと判定する。また、装着位置判定部34は、算出した移動距離と読み出した所定の距離との差分を計算する。装着位置判定部34は、判定結果と計算した距離の差分の情報を、表示制御部36へ出力する。
【0026】
表示制御部36は、取得した判定結果に対応する表示を、LEDランプ370A~370Cを用いて行う。例えば、リング10Aが所定の横方向の位置にある場合、表示制御部36は、横方向の位置が適切であることを示すためにLEDランプ370Bを1回点滅させる。例えば、リング10Aが所定の横方向の位置になく、算出した移動距離が読み出した所定の距離に満たない場合、表示制御部36は、LEDランプ370Aを1回点滅させる。例えば算出した移動距離が読み出した所定の距離を上回る場合、表示制御部36は、LEDランプ370Cを1回点滅させる。これにより、ユーザは、リング10Aの移動距離が適切かどうか、適切でない場合は、移動量が足りないか多いかを把握することができる。ユーザは、この表示を参考にしてリング10Aの横方向の位置を認証に適した位置に調整する。ユーザがリング10Aの横方向の位置を調整すると、例えば、加速度センサ310が検出した加速度のベクトル和の大きさが重力加速度と等しいことを契機として、装着位置判定部34は、再び、横方向の位置判定を行う。このような調整を繰り返すことで、リング10Aの横方向の位置のずれを認証に適した位置とすることができる。
【0027】
図6Aおよび6Bは、本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第三の図である。
図6Aと
図6Bは、ユーザがリング10Aを装着した状態で指先方向から見た断面図である。
図6Aの例では、ユーザは、リング10AのLEDランプ370A~370Cが設けられた側を上に向け、手の甲を上に向けた状態でリング10Aを装着している。
図6Bの例では、ユーザは、LEDランプ370A~370Cが斜め上に向き、手の甲が上に向いた状態でリング10Aを装着している。ここで、
図6Aが示す指3とリング10Aの位置関係で撮像された認証用画像(予め記憶部38に登録された真のユーザの静脈パターンを含む画像)を用いて静脈認証を行う場合について説明する。この場合、例えば、認証用画像と
図6Bが示す指3とリング10Aの位置関係で撮像部32が撮像した画像とを照合して静脈認証を行っても認証は成功しない可能性がある。
そこで、本実施形態では、装着位置判定部34は、リング10Aの横方向の位置に加え、静脈パターンを含む画像を撮像する方向を検出する。装着位置判定部34は、リング10Aが装着されている状態でのリング10Aの中心軸周りの回転方向の位置が、認証を行うべき位置かどうかを判定する。次に、
図7A~
図8Bを参照して回転方向の位置の算出について説明を行う。
【0028】
図7Aおよび7Bは、本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第四の図である。
図7Aと
図7Bは、ユーザがリング10Aを装着した状態で指先方向から見た断面図である。
図7Aと
図7Bの例において、ユーザの手の甲は上向きの状態である。
図7Aの例では、ユーザは、リング10AのLEDランプ370A等が設けられた側が上を向いている。
図7Bの例では、ユーザは、LEDランプ370A等が斜め上を向く(例えば、斜め45度)位置でリング10Aを指3に装着している。
一般にユーザの指3の断面は、略楕円を形成する場合が多い。従って、リング10Aを装着した状態では、
図7Aに示すように指の横の部分がリング10Aの内周面に接し、指の上下面とリング10Aの内周面との間には隙間ができる。静電容量センサ311Aと指との距離をL1a、静電容量センサ311Bと指との距離をL1bと表記する。また、静電容量センサ311Cと指との距離をL1c、静電容量センサ311Dと指との距離をL1dと表記する。この場合、
図7Aの状況では、距離L1aおよびL1cは、距離L1bおよびL1dよりも大きな値となる。一方、
図7Bの状況では、距離L1a、L1b、L1c、L1dはそれぞれ、ほぼ同じとなる。よって、断面が楕円を形成する指3と内周が真円を形成するリング10Aとの間には隙間ができる部分と密着した部分ができることを利用することにより、リング10Aの回転方向の位置を検出することができる。装着位置判定部34は、指3とリング10Aに設けられた静電容量センサ311A~311Dとの距離に基づいて、リング10Aの回転方向の位置が認証に適した位置であるかどうかを判定する。
【0029】
図8Aおよび8Bは、本発明の第一の実施形態における認証方法を説明する第五の図である。
図8Aは、リング10Aを、
図7Aに示す場合を基準として、
図7Bの場合とは逆方向に45度傾けて(回転させて)装着した場合の図である。
図8Aの場合、
図7Bの場合と同様に、距離L1a、L1b、L1c、L1dは、ほぼ同じとなる。また、
図8Aにおける距離L1a~L1dと、
図7Bにおける距離L1a~L1dは、ほぼ同じとなる。従って、静電容量センサ311A~311Dが検出する指3との距離だけでは、装着位置判定部34は、リング10Aの回転方向の位置が、右に傾いているのか(
図7B)、左に傾いているのか(
図8A)を判別することができない可能性がある。そこで、装着位置判定部34は、記憶部38が記憶する認証を行う回転方向の位置(
図7Aの状態)で加速度センサ310が検出する加速度方向を基準として、リング10Aの傾き方向を判定する。例えば、記憶部38には、
図7Aの状態で加速度センサ310が検出した加速度方向の座標情報(座標情報1)が記録されている。装着位置判定部34は、例えば、
図8Aの状態で加速度センサ310が検出した加速度方向の座標情報(座標情報2)を加速度センサ310から取得する。装着位置判定部34は、座標情報1と座標情報2を用いて、座標情報1が示すベクトルに対する座標情報2が示すベクトルの角度を計算する。これにより、装着位置判定部34は、
図8Aの状態でのリング10Aが、認証を行う回転方向の位置からどの方向にどれだけ傾いているかを判定することができる。
リング10Aの傾きの検出にジャイロセンサを用いてもよい。
【0030】
静脈認証を行う回転方向の位置を、リング10AのLEDランプ370A等が設けられた側が上を向き、手の甲を上に向けた状態と定めておく。この場合において、ユーザがリング10Aを傾いた状態で装着した場合について説明する。この場合、まず、装着位置判定部34は、静脈認証を行う回転方向の位置にあるときの静電容量センサ311A~311Dと指3との距離(判定基準値)を記憶部38から読み出す。記憶部38が記憶するこれらの値は、例えば、静電容量センサ311Aと指3との距離および静電容量センサ311Cと指3との距離がLy、静電容量センサ311Bと指3との距離および静電容量センサ311Dと指3との距離がLx(例えば、Lx=0)と設定されている。装着位置判定部34は、読み出したこれらの値と、静電容量センサ311A~311Dが検出したL1a、L1b、L1c、L1dとを比較する。装着位置判定部34は、例えばL1aおよびL1cがLyとみなせる所定の範囲内の値ではない場合、リング10Aの回転方向の位置は認証を行う位置でないと判定する。また例えば、装着位置判定部34は、L1aおよびL1cとLyとの差が所定値以下であり、かつL1bおよびL1dとLxとの差が所定値以下であれば、リング10Aの回転方向の位置は認証を行う位置であると判定する。次に装着位置判定部34は、加速度センサ310が検出する値によって、認証を行う回転方向の位置を基準としてリング10Aがどちら側に傾いているかを判定する。装着位置判定部34は、判定結果を表示制御部36へ出力する。
【0031】
表示制御部36は、取得した判定結果に対応する表示を、LEDランプ370A~370Cを用いて行う。例えば、リング10Aが認証を行う位置にある場合、表示制御部36は、LEDランプ370Bを2回点滅させる。例えば、リング10Aが紙面向かって右側に傾いていれば、表示制御部36は、LEDランプ370Aを2回点滅させ、傾きを修正する方向を示す。逆に、リング10Aが紙面向かって左側に傾いていれば、表示制御部36は、LEDランプ370Cを2回点滅させる。ユーザは、この表示に応じてリング10Aの回転方向の位置を認証に適した位置に調整することができる。
【0032】
図8Bは、
図7Bの状態からさらにリング10Aを紙面向かって右に傾けて装着した場合の図である。このような場合、上述の処理により、表示制御部36は、LEDランプ370Aを2回点滅させる。ユーザは、この表示に応じてリング10Aを紙面向かって左回りに回転させて回転方向の位置を調整する。
例えば、
図7B状態でのL1aの値と
図8Bの状態でのL1aの値を比較すると、
図7BでのL1aの値は、
図8BでのL1aの値に比べ大きい。つまり、ユーザが
図8Bの状態から紙面向かって左回りに回転させると、静電容量センサ311Aが、認証を行う位置に至るまでの間は、L1aの値は徐々に大きくなる。同様にL1dの値に関しては、静電容量センサ311Dが、認証を行う位置に至るまでの間は、L1dの値は徐々に小さくなる。このように、認証を行う回転方向の位置を基準とした回転角度90度の範囲で静電容量センサ311A~311Dと指3との距離の変化を監視すると、装着位置判定部34は、ユーザによるリング10Aの回転方向を判定することができる。
例えば、装着位置判定部34は、リング10Aが紙面向かって右に傾いた状態であると判定してからL1aの値を監視し続け、L1aの値が徐々に大きくなり、且つ、Ly未満であれば、リング10Aはまだ右に傾いた状態であると判定する。この場合、表示制御部36は、LEDランプ370Aを2回点滅させる。また、L1aの値が徐々に大きくなり、Lyに至った後、徐々に小さくなった場合、装着位置判定部34は、ユーザが認証を行う位置を超えてリング10Aを回転させたと判定する。この場合、表示制御部36は、LEDランプ370Cを2回点滅させる。このようにして、装着位置判定部34がリング10Aの回転方向の位置を判定し、表示部がその結果を表示することで、ユーザは、リング10Aの回転向の位置のずれを認証に適した位置とすることができる。
【0033】
図9は、本発明の第一の実施形態における認証方法のフローチャートの一例である。
図9を参照して、リング10Aを静脈認証に適した位置に合わせる処理の流れを中心に説明を行う。
前提として、リング10Aのマニュアルなどにリング10Aの装着方法が記載されていて、ユーザは、その装着方法に従ってリング10A装着する。例えば、リング10Aのマニュアルには、リング10AをLEDランプ370A等が設けられた側を上に向けた状態で、移動方向を水平に保って装着するようにとの指示が記載されている。また、リング10Aのマニュアルには、ユーザは、手の甲を上に向けた状態でリング10Aを装着するようにとの指示が記載されている。
まず、ユーザがリング10Aの指3への装着を開始する。静電容量センサ311A~311Dの各々は、リング10Aの指3への装着が開始されると、指3との距離を検出し、その距離情報を装着検出部33へ出力する。装着検出部33は、静電容量センサ311A~311Dから取得した距離情報に基づいて、リング10Aの指3への装着動作の開始を検出する(ステップS11)。例えば、装着検出部33は、取得した距離情報の全てが所定の範囲の値となったときに、装着動作の開始を検出する。すると、装着検出部33は、装着動作が開始されたことを示す信号を、装着位置判定部34に出力する。装着検出部33が装着動作の開始を検出したときのリング10Aの水平方向の位置は、上述の「指3の所定の位置」である。装着動作が開始されたことを示す信号を取得すると、装着位置判定部34は、加速度センサ310から加速度の情報を取得開始する。ユーザは、リング10Aを所定の装着位置まで移動させ、装着動作を一旦停止する。
【0034】
リング10Aの移動が停止すると、装着位置判定部34は、所定の時間間隔で取得した加速度の情報を用いて、水平方向の移動距離を算出する(ステップS12)。
また、装着位置判定部34は、回転方向の位置情報を取得する(ステップS13)。具体的には、装着位置判定部34は、静電容量センサ311A~311Dと指3との距離の情報を各静電容量センサ311A~311Dの各々から取得する。また、装着位置判定部34は、加速度センサ310からリング10Aの傾きを示す情報を取得する。
【0035】
次に、装着位置判定部34は、リング10Aの装着位置が正しいかどうかを判定する(ステップS14)。装着位置判定部34は、記憶部38からリング10Aの移動距離の判定基準値を読み出し、読み出した判定基準値とステップS12で算出した水平方向の移動距離とを比較する。また、装着位置判定部34は、記憶部38から各静電容量センサ311A~311Dと指3との距離の判定基準値を読み出し、読み出した判定基準値とステップS13で各静電容量センサ311A~311Dから取得した距離の情報とを比較する。
水平方向の移動距離および各静電容量センサ311A~311Dと指3との距離の全てがそれぞれについて設定されている判定基準値と等しい場合(あるいは、等しいとみなせる範囲内にある場合)、装着位置判定部34は、リング10Aの装着位置が正しい(認証を行う位置である)と判定する。そうでない場合、装着位置判定部34は、リング10Aの装着位置は正しくないと判定する。すなわち、水平方向の移動距離および各静電容量センサ311A~311Dと指3との距離のうち少なくとも一つが設定されている判定基準値と等しくない場合、装着位置判定部34は、リング10Aの装着位置は正しくないと判定する。装着位置判定部34がリング10Aの装着位置は正しくないと判定した場合(ステップS14:No)、装着位置判定部34は、判定基準値とリング10Aの装着位置を示す値との差の情報を表示制御部36に出力する。表示制御部36は、表示部37に装着位置を改善するための位置合わせ情報を表示する(ステップS15)。例えば、水平方向の移動距離にずれがある場合、装着位置判定部34は、移動距離の判定基準値から算出した移動距離を減じることにより得られた値を表示制御部36に出力する。
表示制御部36は、取得した値が正の値であれば、LEDランプ370Aを1回点滅させる。回転位置にずれがある場合も同様である。ユーザは、この位置合わせ情報を参照してリング10Aの位置を調整する。装着位置判定部34は、位置調整後のリング10Aの装着位置が認証に適した正しい位置であるかどうかを判定するステップS14からの処理を繰り返す。
【0036】
一方、装着位置判定部34が装着位置は正しいと判定した場合(ステップS14:Yes)、装着位置判定部34は、認証処理を指示する信号を認証部35に出力する。次に、認証部35は、認証処理を実行する(ステップS16)。認証部35は、撮像部32(光源320、TFTセンサ321)に撮像を指示する。すなわち、認証部35は、光源320に発光を要求する指示を出力し、TFTセンサ321に撮像を要求する指示を出力する。認証部35は、撮像部32が撮像した画像を取得する。認証部35は、記憶部38から真のユーザの静脈パターンを含む画像(認証用画像)を読み出す。認証部35は、読み出した画像と、撮像部32が今回撮像した画像とを照合する。2つの画像の類似度が所定の閾値よりも高い場合、認証部35は、認証は成功したと判定する。認証が成功した場合(ステップS17:Yes)、処理フローは終了する。さらに、認証部35は、認証結果を制御部15へ出力する。制御部15は、認証結果に基づいて記憶部11が記憶する個人情報を利用した各種サービスに用いる機能を動作可能に設定する。ユーザは、リング10Aを用いた決済サービス等を利用することができる。
【0037】
認証が失敗した場合(ステップS17:No)、制御部15は、認証結果を、表示制御部36へ出力する。表示制御部36は、表示部37にエラーメッセージを表示する。具体的には、表示制御部36は、LEDランプ370A等を認証の失敗を示す所定の方法で点灯させる。このとき、表示制御部36は、失敗の理由に応じてLEDランプ370の点灯方法を変えても良い。次に、認証部35は、認証処理のリトライを行うか否かを判定する。例えば、認証部35は、予め定められたリトライ回数を記憶部38から読み出して、読み出したリトライ回数と今回ユーザがリング10Aを装着してから認証処理を行った回数とを比較する。認証処理を行った回数が所定のリトライ回数以上であれば、認証部35は、これ以上リトライしないと判定し(ステップS19:No)、処理フローは終了する。
認証部35は、認証結果を制御部15へ出力する。制御部15は、認証結果に基づいて、記憶部11が記憶する個人情報を利用した各種サービスに用いる機能が動作しないよう制御を行う。ユーザは、リング10Aを利用した決済サービス等を利用することができなくなる。
【0038】
認証処理を行った回数が所定のリトライ回数以内であれば、認証部35は、リトライすると判定し(ステップS19:Yes)、リトライを装着位置判定部34に指示する。装着位置判定部34は、ステップS14からの処理を繰り返す。リトライ時にリング10Aの装着位置が正しいかどうかの判定を行う場合、装着位置判定部34は、装着位置の判定を初回の判定よりもより厳密に行うようにしても良い。例えば、初回の判定で用いた移動距離および回転位置の判定基準値からのずれの許容範囲よりも2回目の判定における許容範囲を狭くし、3回目のリトライではさらに許容範囲を狭めて判定を行うようにしてもよい。これにより、正確な位置でユーザの静脈パターンを含む画像を撮像し、その画像によって認証を行うことができるようになる。
【0039】
認証装置30による静脈認証処理は、ユーザがリング10Aを指に装着したときに1度だけ行い、ユーザがリング10Aを指から外すまでは実行しない。つまり、認証装置30は、筐体300の穴に指が存在しない状態から筐体300の穴に指が存在する状態に変化した場合に、静脈認証処理を行う。そのため、電源制御部14は、ユーザがリング10Aを指に装着したときに、光源320、TFTセンサ321および演算装置40への電力供給を開始し、静脈認証処理の完了後に光源320、TFTセンサ321および演算装置40への電力供給を停止する。具体的には、電源制御部14は、静電容量センサ311A~311Dのセンサ値に基づいて筐体300の穴に指が存在しない状態から筐体300の穴に指が存在する状態に変化したか否かを判定する。そして、電源制御部14は、筐体300の穴に指が存在しない状態から筐体300の穴に指が存在する状態に変化した場合に、光源320、TFTセンサ321および演算装置40への電力供給を開始する。これにより、リング10Aは、バッテリ部13の電力を節約することができる。
他の実施形態に係る電源制御部14は、ユーザがリング10Aを指に装着したときに、光源320、TFTセンサ321もしくは演算装置40、またはこれらの組み合わせへの電力供給を開始し、静脈認証処理の完了後に光源320、TFTセンサ321もしくは演算装置40、またはこれらの組み合わせへの電力供給を停止しても良い。
【0040】
これまで、リング10Aの装着位置を所定の横方向の位置、所定の回転方向の位置(装着部位)に合わせて静脈認証を行う場合(認証方法1)の説明を行った。本実施形態においては、1方向から撮像した静脈パターンの認証用画像を暗号化して予め登録しておき、その認証用画像と照合し認証を行えば良い。この方法の場合、ユーザがリング10Aの使用を開始するときに、ユーザがリング10Aを普段身に着ける位置に装着した状態で、撮像部32によって撮像した認証用画像を記憶部38に登録しておく。また初回の認証用画像の撮像時には、手の甲を上に向け、リング10Aの所定の面が上を向く状態でリング10Aを装着するようにし、装着位置判定部34が、その装着位置での静電容量センサ311A~311Dと指3との距離を記憶部38に記録する。また、装着検出部33が、装着動作の開始を検出してから普段身につける装着位置までの距離を、装着位置判定部34が加速度センサ310の検出結果を用いて算出し、記憶部38に記録する。
【0041】
また他の認証方法(認証方法2)として次のような方法を採用してもよい。すなわち、認証用画像や認証する位置の情報を記憶部38に登録する初期設定時に、ユーザがリング10Aを普段身に着ける横方向の位置に装着した状態で、リング10Aを1周させつつ、撮像部32が連続的に認証用画像を撮像する。360度の全周方向から撮像した認証用画像を登録する場合に限られず、例えば、10度ごとにリング10Aを回転させて複数の角度から認証用画像を撮像してもよい。記憶部38は、所定の横方向の位置における1周分の(または複数の角度から撮像した)暗号化済みの認証用画像(装着部位となり得る範囲に係る静脈パターン)を記憶する。また、装着位置判定部34は、ユーザがリング10Aを普段身につける所定の横方向の位置までの距離を加速度センサ310の検出結果を用いて算出し、記憶部38に記録する。1周分の認証用画像が得られた場合、
図9のステップS14において、装着位置判定部34は、横方向の位置の判定だけを行って、装着位置が正しいかどうかを判定する。また、認証部35は、撮像部32が撮像した画像と記憶部38が記憶する1周分の認証用画像のそれぞれ(装着部位となり得る範囲に係る静脈パターンの一部)とを照合し、認証処理を行う。初期設定時に撮像部32が撮像した画像を、その画像を撮像したときの加速度センサ310の検出結果および静電容量センサ311A~311Dのそれぞれと指3との距離と対応付けて記憶部38に記録するようにしてもよい。この場合、
図9のステップS14において、装着位置判定部34は、横方向の位置の判定だけを行って、装着位置が正しいかどうかを判定する。また、ステップS16において、認証部35は、加速度センサ310の検出結果および静電容量センサ311A~311Dの検出結果を用いて、それらの値と対応付けて登録された認証用画像、あるいはそれらの検出結果から所定の範囲内にある検出結果と対応付けられた認証用画像、を記憶部38から読み出してそれらの認証用画像とユーザの指3を撮像した画像とを照合する。これにより、照合処理の処理負担を軽減することができる。また、1周分ではない複数の角度からの認証用画像を登録した場合にも認証処理を行うことができる。この認証方法2であれば、ユーザがリング10Aを装着したときの回転方向の位置がどの位置であっても、あるいは、複数の位置において、認証部35は、認証処理を行うことができる。
【0042】
他の認証方法(認証方法3)として次のような方法を採用してもよい。この方法では、初期設定時にリング10Aを普段身に着ける横方向の位置を含む、所定の横方向の範囲にわたって、指3の全周囲方向から撮像した暗号化済みの認証用画像(装着部位となり得る範囲に係る静脈パターン)を記憶部38に登録する。この方法の場合、
図9のステップS14において、装着位置判定部34は、横方向の位置が認証用画像を撮像した所定の横方向の範囲に含まれるかどうかの判定を行って、装着位置が正しいかどうかを判定する。また、認証部35は、撮像部32が撮像した画像と記憶部38が記憶する認証用画像のそれぞれ(装着部位となり得る範囲に係る静脈パターンの一部)とを照合し、認証処理を行う。初期設定時に撮像した認証用画像を、その認証用画像に対応するリング10Aの装着時の横方向の位置、回転方向の位置の情報と対応付けて記憶部38に登録するようにしてもよい。この場合、
図9のステップS16において、認証部35は、加速度センサ310の検出結果および静電容量センサ311A~311Dの検出結果を用いて、横方向の位置、回転方向の位置を算出し、横方向および回転方向の位置と対応付けて登録された認証用画像、あるいはそれら横方向および回転方向の位置から所定の範囲にある位置と対応付けて登録された認証用画像を記憶部38から読み出して、それらの認証用画像とユーザの指3を撮像した画像とを照合する。これにより照合処理の処理負担を軽減することができる。
この認証方法3であれば、リング10Aの装着位置の制約を受けることなく、認証部35は、認証処理を行うことができる。この認証方法3においても、全周囲方向から撮影した1周分の認証用画像を得る場合に限定されず、複数の角度から撮像した認証用画像を登録するようにしてもよい。
【0043】
<装着位置の判定の他の例>
これまでに、加速度センサ310による横方向の位置、静電容量センサ311A~311Dと指3との距離、加速度センサ310によるリング10Aの傾きによって、リング10Aの装着位置を判定する場合を例に説明を行ってきた。別法として、次のような方法で装着位置を判定してもよい。
【0044】
<指の表面画像による位置判定>
指の表面画像による位置判定では、指の皮膚のしわ模様(皮膚模様)を利用して、静脈認証を行う位置を判定する。この方法の場合、筐体300の内周面のうち、
図3におけるTFTセンサ321と対向する面に可視光の光源を設け、TFTセンサ321がリング10A装着時の指3の表面の様子を撮像する。記憶部38は、予めリング10A装着時の指3の表面を撮像した位置判定用画像を記憶している。装着位置判定部34は、位置判定用画像と撮像部32が撮像した皮膚模様の画像との照合を行って、リング10Aが認証を行う適切な位置に装着されたかどうかを判定する。この場合における、TFTセンサ321は、筐体300と生体との位置関係に応じたセンサ値を出力するセンサの一例である。
【0045】
<脈波センサを用いた位置判定>
脈波センサを用いた位置判定では、リング10Aの内周側に脈波センサを設け、脈拍を検出する。記憶部38は、脈波センサが脈拍を検出できる位置で撮像した認証用画像を記憶している。装着位置判定部34は、脈波センサが脈拍を検出できると、リング10Aが認証を行う適切な位置に装着されたと判定する。別法として、脈波センサによって脈拍強度を検出し、装着位置判定部34は、脈拍強度が所定の値である場合にリング10Aが適切な位置に装着されたと判定してもよい。脈波センサが脈拍を検出できる位置とユーザがリング10Aを普段装着する位置とは異なっていてもよい。このようにリング10Aを普段装着する位置に関係なく認証を行う例として、次のような方法を採用してもよい。爪の生え際の位置は変化しない。そこで、リング10Aのどちらかの端面を、爪の生え際の位置(装着位置)に合わせたときに撮像できる静脈パターンを含む認証用画像を記憶部38に登録しておき、認証を行う時には、リング10Aの爪の生え際の位置に合わせて静脈認証を行う。脈波センサは、筐体300と生体との位置関係に応じたセンサ値を出力するセンサの一例である。
【0046】
<圧力センサを用いた位置判定>
圧力センサを用いた位置判定では、リング10Aの内周側に圧力センサを設ける。記憶部38は、リング10Aを認証を行う位置に装着したときに圧力センサが検出する圧力値(基準判定値)を記憶している。装着位置判定部34は、圧力センサが検出する圧力値が、基準判定値から所定の範囲内にある場合に、リング10Aが認証を行う適切な位置に装着されたと判定する。圧力センサは、筐体300と生体との位置関係に応じたセンサ値を出力するセンサの一例である。
【0047】
<温度センサを用いた位置判定>
同様に、リング10Aの内周側に温度センサを設け、温度によって位置判定を行ってもよい。記憶部38は、ユーザがリング10Aを装着したときの指3の表面温度を判定基準温度として記憶している。装着位置判定部34は、温度センサが検出する温度が、判定基準温度から所定の範囲内の値である場合に、リング10Aが認証を行う適切な位置に装着されたと判定する。温度センサは、筐体300と生体との位置関係に応じたセンサ値を出力するセンサの一例である。
【0048】
<超音波センサを用いた位置判定>
超音波センサを用いた位置判定では、リング10Aに超音波センサを設ける。超音波センサを用いると、超音波を指3に対し照射したときのエコーによって、例えば、指3の表面と骨の距離を検出することができる。装着位置判定部34は、超音波センサが検出する指3の表面と骨の距離によって、リング10Aの回転方向の位置を判定する。超音波センサは、筐体300と生体との位置関係に応じたセンサ値を出力するセンサの一例である。
【0049】
<他の例>
指の関節の位置では赤外線が透過しやすい。この性質を利用して、装着位置判定部34は、ユーザがリング10Aを横方向に移動させる間のTFTセンサ321が受光する光の量に応じて指の関節位置を検出する。そして、装着位置判定部34は、指の関節位置からの移動距離を加速度センサ310の検出結果を用いて算出し、リング10Aの横方向の位置を判定する方法してもよい。
【0050】
ここで列挙した位置判定のための各種センサによる検出結果は、認証にも用いることができる。例えば、静脈認証に代えて、皮膚模様による認証を行ってもよし、これらを組み合わせてもよい。
【0051】
本実施形態によれば、常に身に着けていても邪魔にならない程度に小型化されたリング型ウェアラブル端末(リング10A)を利用することができる。また、本実施形態の認証装置によれば、静脈認証によってリング10Aを装着したユーザが真のユーザかどうかを認証することができる。また、静脈認証を行うにあたりリング10Aを、認証を行う位置に装着する必要がある。本実施形態の認証装置30Aによれば、リング10Aの装着位置が認証を行う位置かどうかを判定し、適切な装着位置を示すガイド表示を行うことによって、ユーザがリング10Aを適切な位置に装着することをサポートすることができる。
【0052】
<バッテリ部13の充電>
電源制御部14は、非接触給電によりバッテリ部13への充電を行う。電源制御部14は、加速度センサ310からの出力を監視し、加速度センサ310のセンサ値が重力加速度を示す状態が一定時間継続したときに、リング10Aが静置されていると判定する。電源制御部14は、静電容量センサ311が生体を検出せず、かつリング10Aが静置されている場合に、非接触給電装置から受電した電力によりバッテリ部13を充電する。
【0053】
<第二の実施形態>
以下、本発明の第二の実施形態による認証システムを
図10~
図11を参照して説明する。
図10は、本発明の第二の実施形態による認証システムの一例を示す図である。
図10で示すように、本実施形態による認証システムは、装着体10B、表示装置20Bを含む。装着体10Bと表示装置20Bとは、互いに通信可能に接続されている。
図10に示す例において、装着体10Bは、記憶部11と、通信部12と、バッテリ部13と、電源制御部14と、制御部15と、認証装置30Bとを含む。認証装置30Bは、位置検出部31と、撮像部32と、装着検出部33と、装着位置判定部34と、認証部35と、記憶部38と、を備えている。第二の実施形態による認証システムの機能部は、第一の実施形態と同じ場合には同じ符号を付して説明する。装着体10Bは、例えばリング型のウェアラブル端末である。装着体10Bの具体的な構成は、
図3で例示した装着体10Aと同様である。
【0054】
表示装置20Bは、表示制御部21と、表示部22と、通信部23と、記憶部24とを備えている。表示制御部21は、通信部23が受信した情報に基づいて、ユーザに提示する情報を、表示部22に表示させる。表示部22は、タッチパネルなどの入力機能を備えた部材と一体的に組み合わされたディスプレイである。通信部23は、装着体10Bとの通信を行う。記憶部24は、種々の情報を記憶する。表示装置20Bは、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの電子端末である。第二の実施形態では、表示装置20Bが、装着体10Bにおける認証結果や位置判定結果を表示する。ユーザは、表示装置20Bが表示する情報を参考にして装着体10Bの装着位置の調整を行うことができる。
【0055】
第二実施形態の動作について説明する。ユーザが、装着体10Bを装着すると、認証装置30Bは、装着体10Bを装着したユーザが真のユーザか否かを判定する。認証装置30Bの処理は、第一の実施形態と同様である。具体的には、位置検出部31が、装着位置に関する情報を検出し、装着位置判定部34が、装着体10Bの装着位置が認証を行う位置かどうかを判定する。認証を行う位置と判定した場合は、認証部35が撮像部32が撮像した画像を用いて静脈認証により装着体10Bを装着したユーザが真のユーザかどうか認証する。
【0056】
本実施形態においては、装着位置判定部34は、装着位置の判定結果を通信部12へ出力する。また、認証部35は、認証結果を、通信部12に出力する。通信部12は、これらの情報を表示装置20Bに送信する。表示装置20Bでは、通信部23が、装着体10Bからこれらの情報を受信し、表示制御部21へ出力する。表示制御部21は、装着体10Bから受信した情報に基づいて、表示部22に表示させる表示画像を生成する。
また、装着体10Bがリングの場合を例にとると、初回設定時に、通信部12は、認証用画像、認証を行う位置に関する情報(所定の横方向の位置、回転方向の位置の情報など)を装着位置判定部34から取得し、表示装置20Bへ送信する。表示装置20Bでは、通信部23が、これらの認証位置に関する情報を受信し、記憶部24に書き込んで記憶させる。
【0057】
図11は、本発明の第二の実施形態による認証システムにおける表示例を示す図である。
装着位置判定部34は、
図9のステップS14にて装着位置は正しくないと判定すると、算出した横方向の位置と回転方向の位置の情報や、装着位置の判定に失敗したことを示す情報を、通信部12を介して表示装置20Bへ送信する。表示装置20Bでは、表示制御部21が、装着体10Bから受信した横方向および回転方向の位置の情報と、記憶部24が記憶する認証位置の横方向および回転方向の位置の情報とに基づいて、
図11で例示したような画像Iを生成し、表示部22へ表示させる。
図11に示す破線で記した位置P1は、記憶部24が記憶する認証位置を示す。実線で記した位置P2は、装着体10Bから受信した情報に基づく現在の装着位置での認証位置を示している。表示制御部21は、装着体10Bの装着位置が認証を行う位置となるように改善するための情報(
図11の矢印R1、R2)を表示させる。ユーザは、この表示を参考に装着体10Bの装着位置を調整することができる。
【0058】
表示制御部21は、認証部35による認証が失敗した場合は、「認証に失敗しました」等のメッセージを表示部22に表示させる。表示制御部21は、認証部35による認証処理中であれば「認証中です」等のメッセージを表示部22に表示させる。表示制御部21は、認証処理のリトライ中であれば「リトライ中です」等のメッセージを表示部22に表示させる。表示制御部21は、装着検出部33が装着動作の開始を検出した場合は「装着開始を検出しました」等のメッセージを表示部22に表示させる。このように、本実施形態では、認証装置30Bにおける処理状況と表示装置20Bが表示する情報とを連携させる。これにより、ユーザが装着体10Bを装着してから認証を行うまでの利便性を向上させることができる。
【0059】
次に静脈パターンの認証用画像の登録処理について説明を行う。
図12は、本発明の第二の実施形態における認証用画像の登録方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ユーザが表示部22に対して所定の操作を行って認証用画像の登録指示を受け付ける画面を表示部22に表示させる。また、ユーザは、装着体10Bを普段身に着ける位置に装着する。次にユーザが表示部22に対して認証用画像登録の開始を指示する操作を行う。すると、表示部22は、その認証用画像の登録の開始を指示する操作を受け付けて通信部23を介して、装着体10Bに認証用画像の登録を指示する信号を送信する。装着体10Bでは、通信部12が認証用画像の登録指示信号を受信する(ステップS21)。
通信部12は、登録指示信号を撮像部32に出力する。次に撮像部32は、認証用画像の撮像を実行する(ステップS22)。具体的には、認証用画像とは、ユーザが装着体10Bを装着した位置での静脈パターンを含んだ画像である。次に装着位置判定部34が装着体10Bの装着位置の位置情報を取得する(ステップS23)。例えば、装着位置判定部34は、加速度センサ310の検出結果を用いて、装着検出部33が装着動作の開始を検出してから普段身につける装着位置までの距離を算出する。また、装着位置判定部34は、静電容量センサ311A~311Dが検出した指3との距離を取得する。また、装着位置判定部34は、加速度センサ310の検出結果の座標情報を取得する。このようにして装着位置判定部34は、装着体10Bの横方向の位置と回転方向の位置を取得する。装着位置判定部34は、取得したこれらの位置情報を記憶部38に記録する。次に撮像部32は、撮像した認証用画像を暗号化して、暗号化された画像を先に記録した位置情報と対応付けて記憶部38に記録する(ステップS24)。これにより、一方向から撮像した認証用画像を登録し、装着体10Bを装着したユーザの認証処理を行うことができるようになる。
【0060】
<第三の実施形態>
以下、本発明の第三の実施形態による認証システムを
図13を参照して説明する。
図13は、本発明の第三の実施形態による認証システムの一例を示す図である。
図13で示すように、本実施形態による認証システムは、装着体10C、情報処理装置20Cを含む。装着体10Cと情報処理装置20Cとは、通信可能に接続されている。第三の実施形態による認証システムの機能部は、第一の実施形態と同じ場合には同じ符号を付して説明する。
図13において、装着体10Cは、記憶部11と、通信部12と、バッテリ部13と、電源制御部14と、制御部15と、位置検出部31と、撮像部32と、を備えている。
【0061】
情報処理装置20Cは、表示制御部21と、表示部22と、通信部23と、記憶部24と、装着検出部33と、装着位置判定部34と、認証部35と、を備えている。情報処理装置20Cは、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの電子端末である。第三の実施形態では、情報処理装置20Cが、装着体10Cから認証処理に用いる画像や位置判定に用いる装着位置に関する情報を受信する。情報処理装置20Cは、受信した情報を用いて、装着体10Cの装着位置の判定や、ユーザが真のユーザかどうか認証するための処理を行う。また、第三の実施形態では、情報処理装置20Cの記憶部24が、ユーザの生体情報を含んだ暗号化された画像や認証処理に必要な各種情報を記憶している。
【0062】
第三実施形態の動作について説明する。ユーザが、装着体10Cを装着すると、位置検出部31が、装着位置に関する情報を検出し、通信部12を介して装着位置に関する情報を情報処理装置20Cに送信する。情報処理装置20Cでは、通信部23が装着位置に関する情報を受信し、装着検出部33に出力する。装着検出部33は、ユーザによる装着体10Cの装着動作の開始を検出する。装着検出部33が装着動作の開始を検出すると、通信部23は、装着体10Cから受信した装着位置に関する情報を装着位置判定部34に出力する。装着位置判定部34は、位置検出部31が検出した装着位置に関する情報に基づいて、装着体10Cの装着位置が認証を行う位置かどうかを判定する。装着位置が認証を行う位置では無いと判定すると、装着位置判定部34は、装着位置の判定結果を表示制御部21へ出力する。表示制御部21は、装着位置の調整を促す画像を生成し、その画像を表示部22に表示させる。装着位置が認証を行う位置であると判定すると、装着位置判定部34は、通信部23を介して、認証位置が正しいことを装着体10Cに通知する。装着体10Cは、この通知を受信し、撮像部32が静脈パターンを含む画像の撮像を行う。通信部12は、撮像部32が撮像した画像を情報処理装置20Cに送信する。情報処理装置20Cでは、通信部23が画像を取得し、認証部35に出力する。認証部35は、認証処理を行う。認証部35は、認証処理の結果を表示制御部21へ出力する。表示制御部21は、認証結果を表示部22に表示させる。
【0063】
本実施形態によれば、装着体10Cに搭載する機能を低減し、装着体10Cにおける処理負荷を低減することができる。また、装着位置の判定や認証処理など、負荷の高い処理を情報処理装置20Cで行うことができるので、例えば、処理負荷の高い上述の認証方法2や認証方法3の実装にも適している。
【0064】
第三の実施形態を、第一の実施形態や第二の実施形態と組み合わせることも可能である。例えば、第一の実施形態のリング10Aと第三の実施形態の情報処理装置20Cを組み合わせた場合を例に説明を行う。まず、リング10Aにて認証方法1で認証処理を行う。
所定の回数リトライを行っても認証に失敗した場合は、撮像部32が撮像した画像を情報処理装置20Cへ送信し、情報処理装置20Cにおいて、認証方法2や認証方法3のようなリング10Aを装着する指の所定の位置において複数の方向から検出した静脈パターンを含む画像のそれぞれと、リング10Aを装着した位置において撮像部32が撮像した画像を照合して、認証処理を行う。
【0065】
<第四の実施形態>
以下、本発明の第四の実施形態による認証システムを
図14~
図15を参照して説明する。
第四の実施形態に係る認証システムの構成は、第二の実施形態または第三の実施形態と同様の構成である。以下、第二の実施形態の構成を参照して説明を行う。また、具体的な構成例として、装着体10Bは、
図3と同様の構成を有しているとする。
第四の実施形態に係る認証システムは、ユーザが装着体10Bを装着するにあたり位置合わせを行う負担を軽減する。装着体10Bがリング型ウェアラブル端末である場合、この第四の実施形態によれば、ユーザは、装着体10Bの横方向の位置だけを合わせることによって認証を行うことができるようになる。まず、本実施形態の認証用画像の登録方法について説明する。
【0066】
図14は、本発明の第四の実施形態における認証用画像の登録方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ユーザが表示部22に対して所定の操作を行って認証用画像の登録の指示を受け付ける画面を表示部22に表示させる。また、ユーザは、装着体10Bを普段身に着ける位置に装着する。次にユーザが表示部22に対して認証用画像の登録の開始を指示する操作を行う。すると、表示部22は、認証用画像の登録の開始を指示する操作を受け付けて通信部23を介して、装着体10Bに認証用画像の登録を指示する信号を送信する。また、表示部22は、ユーザに装着体10Bの回転を促す表示を行う。装着体10Bでは、通信部12が認証用画像の登録指示信号を受信する(ステップS31)。通信部12は、登録指示信号を撮像部32に出力する。次に撮像部32は、認証用画像の撮像を実行する(ステップS32)。具体的には、認証用画像とは、ユーザが装着体10Bを装着した位置での静脈パターンを含んだ画像である。また、ユーザは、撮像部32が認証用画像の撮像を実行する間、装着体10Bを指の周方向に回転させる。次に、装着位置判定部34が、撮像部32が装着体10Bの装着位置において全周方向から撮像したか否かを判定する(ステップS33)。例えば、装着位置判定部34は、加速度センサ310の検出値に基づいて装着体10Bが1回転したかどうかを判定する。全周方向から撮像した画像とは360度の全周方向から撮像された画像に限られず、例えば10度ごとに回転させた複数の角度から撮像された画像であってもよい。全周方向から画像の撮像を完了していない場合(ステップS33:No)、装着位置判定部34は、通信部12を介して表示装置20Bに、全周方向から撮像していないことを通知する。表示装置20Bでは、表示制御部21がその通知に基づいて、装着体10Bを指の周方向に回転させるよう促すメッセージを表示部22に表示する(ステップS34)。次に、装着位置判定部34は、加速度センサ310の出力に基づいて、装着体10Bの回転方向の位置が認証用画像の撮像が完了していない位置にあるか否かを判定する(ステップS35)。装着体10Bの回転位置が画像の撮像が完了していない位置にない場合(ステップS35:No)、処理がステップS34に戻り、再度回転を促す。他方、装着体10Bの回転位置が画像の撮像が完了していない位置にある場合(ステップS35:Yes)、ステップS32からの処理を繰り返す。具体的には、装着位置判定部34は、撮像部32に撮像を指示する。撮像部32は、認証用画像の撮像を実行する。
【0067】
他方、ステップS33において全周方向から認証用画像の撮像を完了したと判定した場合(ステップS33:Yes)、装着位置判定部34が、加速度センサ310の検出結果を用いて、装着検出部33が装着動作の開始を検出してから装着体10の装着位置に達するまでの移動距離を算出する(ステップS36)。装着位置判定部34は、算出した位置情報を記憶部38に記録する。次に撮像部32は、撮像した認証用画像を暗号化して、暗号化された画像を算出した移動距離と対応付けて記憶部38に記録する(ステップS37)。このとき、撮像部32は、各方向から撮像した認証用画像各々を記録してもよい。別法として、撮像部32は、各方向から撮像した認証用画像を再構成した3次元画像を記録してもよい。上記の説明では、認証用画像を全周方向から撮像する場合について説明を行ったが、本実施形態はこのような例に限定されない。例えば、回転角度180°の範囲(回転角度が0°から180°までの範囲)で指の腹側または指の甲側から撮像を行うように構成してもよい。これにより、装着体10Bを装着した位置における指の全周方向から撮像した一列分の認証用画像を登録することができる。
【0068】
次に
図15を参照して、装着体10Bを静脈認証に適した位置に合わせる処理の流れを中心に第四の実施形態の認証処理の説明を行う。
図15は、本発明の第四の実施形態における認証方法の一例を示すフローチャートである。
前提として、ユーザは、手の甲を上に向けた状態で、装着体10Bの移動方向を水平に保って装着する。
まず、ユーザが装着体10Bの指への装着を開始する。静電容量センサ311A~311Dの各々は、装着体10Bの指への装着が開始されると、指までの距離を検出し、その距離情報を装着検出部33へ出力する。装着検出部33は、静電容量センサ311A~311Dから取得した距離情報に基づいて、装着体10Bの指3への装着動作の開始を検出する(ステップS311)。例えば、装着検出部33は、取得した距離情報の全てが所定の範囲の値となったときに、装着動作の開始を検出する。すると、装着検出部33は、装着動作が開始されたことを示す信号を、装着位置判定部34に出力する。装着動作が開始されたことを示す信号を取得すると、装着位置判定部34は、加速度センサ310から加速度の情報を取得開始する。ユーザは、装着体10Bを所定の装着位置まで移動させ、装着動作を一旦停止する。
【0069】
装着体10Bの移動が停止すると、装着位置判定部34は、所定の時間間隔で取得した加速度の情報を用いて、水平方向の移動距離を算出する(ステップS312)。
次に、装着位置判定部34は、装着体10Bの装着位置は正しいかどうかを判定する(ステップS313)。装着位置判定部34は、認証用画像の登録時に認証用画像と対応付けて記録した装着体10Bの移動距離(判定基準値)を記憶部38から読み出す。装着位置判定部34は、読み出した移動距離とステップS312で算出した水平方向の移動距離とを比較する。水平方向の移動距離が判定基準値と等しい場合、あるいは、等しいとみなせる範囲内にある場合、装着位置判定部34は、装着体10Bの装着位置は正しい(認証を行う位置である)と判定する。そうでない場合、装着位置判定部34は、装着体10Bの装着位置は正しくないと判定する。装着体10Bの装着位置は正しくないと判定した場合(ステップS313:No)、装着位置判定部34は、判定基準値と装着体10Bの装着位置を示す値との差の情報を表示制御部36に出力する。表示制御部36は、表示部37に装着位置を改善するための位置合わせ情報を表示する(ステップS314)。具体的には装着位置判定部34は、算出した水平方向の移動距離の情報を、通信部12を介して表示装置20Bへ送信する。表示装置20Bでは、表示制御部21が、装着体10Bの装着位置のずれを示す画像(位置合わせ情報)を生成し、その画像を表示部22へ表示させる。ユーザは、この位置合わせ情報を参照して装着体10Bの位置を調整する。装着位置判定部34は、位置調整後の装着体10Bの装着位置が認証に適した正しい位置であるかどうかを判定するステップS313からの処理を繰り返す。
【0070】
一方、装着位置は正しいと判定した場合(ステップS313:Yes)、装着位置判定部34は、認証処理を指示する信号を認証部35に出力する。次に、認証部35は、認証処理を実行する(ステップS315)。認証部35は、撮像部32(光源320、TFTセンサ321)に撮像を指示する。認証部35は、撮像部32が撮像した認証用画像を取得する。認証部35は、記憶部38から真のユーザの静脈パターンを全周方向から撮像することにより得られた複数の認証用画像を読み出して、それぞれの認証用画像と今回撮像部32が撮像した画像との照合を行う。認証用画像のうち何れかの画像と今回撮像した画像の類似度が所定の閾値よりも高い場合、認証部35は、認証は成功したと判定する。認証が成功した場合(ステップS316:Yes)、処理フローは終了する。認証部35は、認証結果を制御部15へ出力する。制御部15は、認証結果に基づいて記憶部11が記憶する個人情報を利用した各種サービスに用いる機能を動作可能に設定する。ユーザは、装着体10Bを用いた決済サービス等を利用することができる。
【0071】
認証が失敗した場合(ステップS316:No)、認証部35は、認証失敗を示す情報を、通信部12を介して表示装置20Bへ送信する。表示装置20Bでは、表示制御部21が、「認証に失敗しました。リトライします。」等のエラーメッセージを表示部22に表示する(ステップS317)。次に、認証部35は、認証処理のリトライを行うか否かを判定する。例えば、認証部35は、予め定められたリトライ回数を記憶部38から読み出して、読み出したリトライ回数と今回ユーザが装着体10Bを装着してから認証処理を行った回数とを比較する。認証処理を行った回数が所定のリトライ回数以上であれば、認証部35は、これ以上リトライしないと判定し(ステップS318:No)、処理フローは終了する。認証部35は、認証結果を制御部15へ出力する。制御部15は、認証結果に基づいて、記憶部11が記憶する個人情報を利用した各種サービスに用いる機能が動作しないよう制御を行う。ユーザは、装着体10Bを利用した決済サービス等を利用することができなくなる。また、認証部35は、認証結果を、通信部12を介して表示装置20Bへ送信する。表示装置20Bでは、表示制御部21が、「認証に失敗しました。」等のエラーメッセージを表示部22に表示する。
【0072】
認証処理を行った回数が所定のリトライ回数以内であれば、認証部35はリトライすると判定し(ステップS318:Yes)、認証部35は、リトライを装着位置判定部34に指示する。装着位置判定部34は、ステップS313からの処理を繰り返す。
【0073】
このように、第四の実施形態によれば、撮像部32は、ユーザが装着体10を装着する位置における全周方向に対応する認証用画像を記憶する。これにより、認証部35は、装着体10の回転方向の位置合わせを行うことなく、静脈認証を実施することができる。例えば、本実施形態によれば、装着体10Bの回転方向の位置を合わせる必要ないので装着体10Bに回転方向を合わせる目印を設ける必要が無い。
【0074】
<第五の実施形態>
以下、本発明の第五の実施形態による認証システムを
図16~
図17を参照して説明する。
第五の実施形態に係る認証システムの構成は、第二の実施形態または第三の実施形態と同様の構成である。以下、第二の実施形態の構成を参照して説明を行う。また、具体的な構成例として、装着体10Bは、
図3と同様の構成を有しているとする。
第五の実施形態に係る認証システムは、ユーザが装着体10Bを装着するにあたり位置合わせを行う負担を軽減した実施形態である。装着体10Bがリング型ウェアラブル端末である場合、この第五の実施形態によれば、ユーザは、装着体10Bの回転方向の位置だけを合わせることによって認証を行うことができるようになる。まず、本実施形態の認証用画像の登録方法について説明する。
【0075】
図16は、本発明の第五の実施形態における認証用画像の登録方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ユーザが表示部22に対して所定の操作を行って認証用画像の登録の指示を受け付ける画面を表示部22に表示させる。また、ユーザは、装着体10Bを普段身に着ける位置より指先側に装着する。次にユーザが表示部(受付部)22に対して認証用画像の登録の開始を指示する操作を行う。すると、表示部22は、その認証用画像の登録の開始を指示する操作を受け付けて通信部23を介して、装着体10Bに認証用画像の登録を指示する信号を送信する。また、表示部22は、ユーザに装着体10Bを本来の装着位置の方向への移動を促す表示を行う。装着体10Bでは、通信部12が認証用画像の登録指示信号を受信する(ステップS41)。通信部12は、登録指示信号を撮像部32に出力する。次に撮像部32は、認証用画像の撮像を実行する(ステップS42)。具体的には、認証用画像とは、ユーザが装着体10Bを装着した位置での静脈パターンを含んだ画像である。また、ユーザは、撮像部32が認証用画像の撮像を実行する間、装着体10Bを指の付け根の方向にゆっくりと移動させる。次に、装着位置判定部34は、撮像部32が装着体10Bの装着位置において所定の範囲を撮像したか否かを判定する(ステップS43)。例えば、装着位置判定部34は、加速度センサ310の検出結果を用いて認証用画像の撮像を開始したときの装着体10Bの装着位置から現在の装着体10Bの装着位置までの距離を算出する。そして、装着位置判定部34は、算出した距離と記憶部38に記録された所定の範囲を示す値(例えば1.5cm)とを比較する。所定の範囲の撮像を完了していない場合(ステップS43:No)、装着位置判定部34は、通信部12を介して表示装置20Bに、所定の範囲を撮像していないことを通知する。表示装置20Bでは、表示制御部21がその通知に基づいて、装着体10Bを指の付け根の方向に移動させるよう促すメッセージを表示部22に表示する(ステップS44)。次に、装着位置判定部34は、加速度センサ310の検出値に基づいて、装着体10Bの横方向の位置が認証用画像の撮像が完了していない位置にあるか否かを判定する(ステップS45)。装着体10Bの横方向の位置が認証用画像の撮像が完了していない位置にない場合(ステップS45:No)、処理がステップS44に戻り、装着位置判定部34は再度移動を促す。他方、装着体10Bの横方向の位置が画像の撮像が完了していない位置にある場合(ステップS45:Yes)、ステップS42からの処理を繰り返す。具体的には、装着位置判定部34は、撮像部32に撮像を指示する。撮像部32は、認証用画像の撮像を実行する。
【0076】
他方、ステップS43において所定の範囲の撮像を完了したと判定した場合(ステップS43;Yes)、装着位置判定部34は静電容量センサ311A~311Dが検出した指との距離を取得する。また、装着位置判定部34は、加速度センサ310の検出結果の座標情報を取得する。装着位置判定部34は、これらの回転方向の位置情報を記憶部38に記録する。次に撮像部32は、撮像した認証用画像を暗号化して、暗号化された認証用画像を先に記録した回転方向の位置情報と対応付けて記憶部38に記録する(ステップS47)。これにより、ある1方向から撮像した装着体10Bの挿入方向の一列分の認証用画像を登録することができる。
【0077】
次に
図17を参照して、装着体10Bを静脈認証に適した位置に合わせる処理の流れを中心に第五の実施形態の認証処理の説明を行う。
図17は、本発明の第五の実施形態における認証方法の一例を示すフローチャートである。
前提として、ユーザは、手の甲を上に向けた状態で、装着体10Bの移動方向を水平に保って装着する。また、装着体10Bには、目印が付されていて、例えばその目印を上に向けた状態で、ユーザが装着体10Bを装着する。
まず、ユーザが装着体10Bの指への装着を開始する。静電容量センサ311A~311Dの各々は、装着体10Bの指への装着が開始されると、指までの距離を検出し、その距離情報を装着検出部33へ出力する。装着検出部33は、静電容量センサ311A~311Dから取得した距離情報に基づいて、装着体10Bの指への装着動作の開始を検出する(ステップS411)。例えば、装着検出部33は、取得した距離情報が全て所定の範囲の値となったときに、装着動作の開始を検出する。すると、装着検出部33は、装着動作が開始されたことを示す信号を、装着位置判定部34に出力する。装着動作が開始されたことを示す信号を取得すると、装着位置判定部34は、加速度センサ310から加速度の情報を取得開始する。ユーザは、装着体10Bを装着位置まで移動させ、装着動作を一旦停止する。
【0078】
装着体10Bの移動が停止すると、装着位置判定部34は、回転方向の位置情報を取得する(ステップS412)。例えば、静電容量センサ311A~311Dが検出した指3までの距離を取得する。また、装着位置判定部34は、加速度センサ310の検出結果の座標情報を取得する。
次に、装着位置判定部34は、装着体10Bの装着位置は正しいかどうかを判定する(ステップS413)。装着位置判定部34は、認証用画像の登録時に認証用画像と対応付けて記録した装着体10Bの回転方向の位置情報(判定基準値)を記憶部38から読み出す。装着位置判定部34は、読み出した判定基準値とステップS412で取得した回転方向の位置情報とを比較する。例えば、装着位置判定部34は、記憶部38から各静電容量センサ311A~311Dと指3との距離の判定基準値を読み出し、読み出した判定基準値とステップS412で各静電容量センサ311A~311Dから取得した距離の情報とを比較する。水平方向の移動距離および各静電容量センサ311A~311Dと指との距離の全てがそれぞれについて設定されている判定基準値と等しい場合、あるいは、等しいとみなせる範囲内にある場合、装着位置判定部34は、装着体10Bの装着位置が正しいと判定する。そうでない場合、装着位置判定部34は、装着体10Bの装着位置は正しくないと判定する。装着体10Bの装着位置は正しくないと判定した場合(ステップS413:No)、装着位置判定部34は、判定基準値と装着体10Bの装着位置を示す値との差の情報を表示制御部36に出力する。表示制御部36は、表示部37に装着位置を改善するための位置合わせ情報を表示する(ステップS414)。具体的には、装着位置判定部34は、回転方向の位置情報を、通信部12を介して表示装置20Bへ送信する。表示装置20Bでは、表示制御部21が、装着体10Bの装着位置のずれを示す画像(位置合わせ情報)を生成し、その画像を表示部22へ表示させる。ユーザは、この表示を参考に装着体10Bの装着位置を調整する。装着位置判定部34は、位置調整後の装着体10Bの装着位置が認証に適した正しい位置であるかどうかを判定するステップS413からの処理を繰り返す。
【0079】
一方、装着位置が正しいと判定した場合(ステップS413:Yes)、装着位置判定部34は、認証処理を指示する信号を認証部35に出力する。次に、認証部35は、認証処理を実行する(ステップS415)。認証部35は、撮像部32(光源320、TFTセンサ321)に撮像を指示する。認証部35は、撮像部32が撮像した認証用画像を取得する。認証部35は、記憶部38から真のユーザの所定の範囲にわたって撮像することにより得られた静脈パターンを含む挿入方向の一列分の認証用画像のそれぞれを読み出す。認証部35は、それぞれの認証用画像と今回撮像部32が撮像した画像との照合を行う。認証用画像のうち何れかの画像と今回撮像した画像の類似度が所定の閾値よりも高い場合、認証部35は、認証は成功したと判定する。認証が成功した場合(ステップS416:Yes)、処理フローは終了する。認証部35は、認証結果を制御部15へ出力する。
制御部15は、認証結果に基づいて記憶部11が記憶する個人情報を利用した各種サービスに用いる機能を動作可能に設定する。ユーザは、装着体10Bを用いた決済サービス等を利用することができる。
【0080】
認証が失敗した場合(ステップS416:No)、認証部35は、認証失敗を示す情報を、通信部12を介して表示装置20Bへ送信する。表示装置20Bでは、表示制御部21が、「認証に失敗しました。リトライします。」等のエラーメッセージを表示部22に表示する(ステップS417)。次に、認証部35は、認証処理のリトライを行うか否かを判定する。例えば、認証部35は、予め定められたリトライ回数を記憶部38から読み出して、読み出したリトライ回数と今回ユーザが装着体10Bを装着してから認証処理を行った回数とを比較する。認証処理を行った回数が所定のリトライ回数以上であれば、認証部35は、これ以上リトライしないと判定し(ステップS418:No)、処理フローは終了する。認証部35は、認証結果を制御部15へ出力する。制御部15は、認証結果に基づいて、記憶部11が記憶する個人情報を利用した各種サービスに用いる機能が動作しないよう制御を行う。ユーザは、装着体10Bを利用した決済サービス等を利用することができなくなる。また、認証部35は、認証結果を、通信部12を介して表示装置20Bへ送信する。表示装置20Bでは、表示制御部21が、「認証に失敗しました。」等のエラーメッセージを表示部22に表示する。
【0081】
認証処理を行った回数が所定のリトライ回数以内であれば、認証部35は、リトライすると判定し(ステップS418:Yes)、リトライを装着位置判定部34に指示する。
装着位置判定部34は、ステップS413からの処理を繰り返す。
【0082】
このように、第五の実施形態によれば、撮像部32は、ユーザが装着体10を装着する位置における全周方向に対応する認証用画像を記憶する。これにより、認証部35は、装着体10の回転方向の位置合わせを行うことなく、静脈認証を実施することができる。
【0083】
<第六の実施形態>
以下、本発明の第六の実施形態による認証システムを
図18~
図20を参照して説明する。
図18は、本発明の第六の実施形態による認証システムの一例を示す図である。
図18で示すように本実施形態による認証システムは、装着体10F、表示装置20Fを含む。装着体10Fと表示装置20Fとは互いに、通信可能に接続されている。
図18に示す例において、装着体10Fは、記憶部11と、通信部12と、バッテリ部13と、電源制御部14と、制御部15と、認証装置30Fとを含む。認証装置30Fは、撮像部32と、認証部35と、記憶部38と、を備えている。第六の実施形態による認証システムの機能部は、第一の実施形態と同じ場合には同じ符号を付して説明する。装着体10Fは、例えばリング型のウェアラブル端末である。第六の実施形態の認証装置30Fは、第一~五の実施形態と異なり、装着位置の検出に用いるセンサ等を備えない構成を有している。
【0084】
表示装置20Fは、表示制御部21と、表示部22と、通信部23と、記憶部24とを備えている。表示制御部21は、通信部23が受信した情報に基づいて、ユーザに提示する情報を、表示部22に表示させる。表示部22は、タッチパネルなどの入力機能を備えた部材と一体的に組み合わされたディスプレイである。通信部23は、装着体10Fとの通信を行う。記憶部24は、種々の情報を記憶する。表示装置20Fは、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの電子端末である。表示装置20Fは、装着体10Fにおける認証結果や位置判定結果を表示する。ユーザは、表示装置20Fが表示する情報を参考にして装着体10Fの装着位置の調整を行うことができる。
【0085】
図19は、本発明の第六の実施形態における認証用画像の登録方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ユーザが表示部22に対して所定の操作を行って認証用画像の登録の指示を受け付ける画面を表示部22に表示させる。また、ユーザは、装着体10Fを普段身に着ける位置より指先側に装着する。次にユーザが表示部22に対して認証用画像の登録の開始を指示する操作を行う。すると、表示部22は、その認証用画像の登録の開始を指示する操作を受け付けて通信部23を介して、装着体10Fに認証用画像の登録を指示する信号を送信する。また、表示部22は、ユーザに装着体10Fの回転を促す表示を行う。装着体10Fでは、通信部12が認証用画像の登録指示信号を受信する(ステップS51)。通信部12は、登録指示信号を撮像部32に出力する。次に撮像部32は、認証用画像の撮像を実行する(ステップS52)。認証用画像とは、ユーザが装着体10Fを装着した位置での静脈パターンを含んだ画像である。また、ユーザは、撮像部32が認証用画像の撮像を実行する間、装着体10Fを指の周方向に回転させる。次に、撮像部32は、装着体10Fの装着位置において全周方向から撮像したか否かを判定する(ステップS53)。
例えば、撮像部32は、撮像の開始直後に撮像した画像と同一とみなせる類似度を持つ画像を撮像すると全周方向から撮像したと判定する。全周方向から撮像した画像とは360度の全周方向から撮像された画像に限られず、例えば10度ごとに回転させた複数の角度から撮像された画像であってもよい。全周方向から画像の撮像を完了していない場合(ステップS53:No)、撮像部32は、通信部12を介して表示装置20Fに、全周方向から撮像していないことを通知する。表示装置20Fでは、表示制御部21がその通知に基づいて、装着体10Fを指の周方向に回転させるよう促すメッセージを表示部22に表示する(ステップS54)。そして、ステップS52からの処理を繰り返す。
【0086】
他方、ステップS53において全周方向から認証用画像の撮像を完了した場合(ステップS53:Yes)、撮像部32は、通信部12を介して表示装置20Fに、全周方向から撮像が完了したことを通知する。表示装置20Fでは、表示制御部21がその通知に基づいて、次の動作の選択肢を表示部22に表示する(ステップS56)。具体的には、表示部22は認証用画像の登録処理の継続または終了を選択する促す表示を行う。表示部22がユーザから登録処理の継続を選択する動作を受け付けた場合(ステップS57:No)、表示制御部21は、装着体10Fを横方向(指の付け根の方向)に移動させるよう促すメッセージを表示部22に表示する(ステップS571)。また、表示制御部21は、撮像の再開指示の入力操作を受け付ける画像を表示部22に併せて表示する。ユーザは、この表示を見て装着体10Fを指の付け根の方向に移動させる。次にユーザは、装着体10Fを横方向に移動させると撮像の再開を指示する入力操作を行う。表示部22は、撮像の再開を指示する入力操作を受け付けて、通信部23を介して装着体10Fへ撮像の再開指示信号を送信する(ステップS572)。装着体10Fでは、通信部12が再開指示信号を受信し、その信号を撮像部32へ出力する。認証システムは、ステップS52からの処理を繰り返す。
【0087】
表示部22が登録処理の終了を指示する入力操作を受け付けた場合、すなわち、表示部22がユーザから登録処理の終了を選択する動作を受け付けた場合(ステップS57;Yes)、表示部22は、通信部23を介して装着体10Fへ撮像の終了指示信号を送信する(ステップS58)。装着体10Fでは、通信部12が終了指示信号を受信し、その信号を撮像部32へ出力する。撮像部32は、撮像した認証用画像を暗号化して記憶部38に記録する(ステップS59)。このとき、撮像部32は、各方向から撮像することにより得られた認証用画像各々を記録してもよい。別法として、撮像部32は、各方向から撮像した認証用画像を再構成することにより得られた3次元画像を記録してもよい。
上記の説明では、撮像部32が認証用画像を全周方向から撮像する場合について説明を行ったが、本実施形態はこのような場合に限定されない。例えば、撮像部32が回転角度180°の範囲で指の腹側または指の甲側から撮像を行ってもよい。
これにより、撮像部32は、ユーザが装着体10を装着し得る範囲に係る認証用画像を記憶する。
【0088】
次に
図20を参照して、第六の実施形態の認証処理の説明を行う。
図20は、本発明の第六の実施形態における認証方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ユーザが装着体10Fの指への装着を行う。また、ユーザが表示部22に対して所定の操作を行って認証処理の開始指示を受け付ける画面を表示部22に表示させる。次にユーザが表示部22に対して認証処理の開始を指示する操作を行う。すると、表示部22は、その認証処理の開始を指示する操作を受け付けて通信部23を介して、装着体10Fに認証処理の開始を指示する信号を送信する。装着体10Fでは、通信部12が認証処理の開始を指示する信号を受信する。通信部12は、受信した信号を認証部35に出力する。次に、認証部35は、認証処理を実行する(ステップS512)。認証部35は、撮像部32(光源320、TFTセンサ321)に撮像を指示する。認証部35は、撮像部32が撮像した認証用画像を取得する。認証部35は、記憶部38から、ユーザが装着体10を装着し得る範囲に係る認証用画像を読み出して、それぞれの認証用画像と今回撮像部32が撮像した画像との照合を行う。認証用画像のうち何れかの画像と今回撮像した画像の類似度が所定の閾値よりも高い場合、認証部35は、認証は成功したと判定する。認証が成功した場合(ステップS513:Yes)、処理フローは終了する。認証部35は、認証結果を制御部15へ出力する。制御部15は、認証結果に基づいて記憶部11が記憶する個人情報を利用した各種サービスに用いる機能を動作可能に設定する。ユーザは、装着体10Fを用いた決済サービス等を利用することができる。
【0089】
認証が失敗した場合(ステップS513:No)、認証部35は、認証失敗を示す情報を、通信部12を介して表示装置20Fへ送信する。表示装置20Fでは、表示制御部21が、「認証に失敗しました。リトライします。」等のエラーメッセージを表示部22に表示する(ステップS514)。次に、認証部35は、認証処理のリトライを行うか否かを判定する。例えば、認証部35は、予め定められたリトライ回数を記憶部38から読み出して、読み出したリトライ回数と今回ユーザが装着体10Fを装着してから認証処理を行った回数とを比較する。認証処理を行った回数が所定のリトライ回数以上であれば、認証部35は、これ以上リトライしないと判定し(ステップS515:No)、処理フローは終了する。認証部35は、認証結果を制御部15へ出力する。制御部15は、認証結果に基づいて、記憶部11が記憶する個人情報を利用した各種サービスに用いる機能が動作しないよう制御を行う。ユーザは、装着体10Fを利用した決済サービス等を利用することができなくなる。また、認証部35は、認証結果を、通信部12を介して表示装置20Fへ送信する。表示装置20Fでは、表示制御部21が、「認証に失敗しました。」等のエラーメッセージを表示部22に表示する。
認証処理を行った回数が所定のリトライ回数以内であれば、認証部35は、リトライすると判定し(ステップS515:Yes)、ステップS512からの処理を繰り返す。
【0090】
このように、第六の実施形態によれば、認証部35は、装着体10Fの位置合わせを行うことなく、認証を実施することができる。
【0091】
<第七の実施形態>
以下、本発明の第七の実施形態による認証システムを
図21~
図24を参照して説明する。
図21は、本発明の第七の実施形態による装着体の一例を示す図である。
図21は、コンタクトレンズ型ウェアラブル端末である装着体10D(以下、コンタクトレンズ10Dと呼ぶ)を示している。コンタクトレンズ10Dは、認証装置30D、健康状態判定装置50Dを備えている。ユーザが、コンタクトレンズ10Dを装着すると、健康状態判定装置50Dは、ユーザの涙の成分を検出し、ユーザの健康状態や病の状態を判定する。健康状態判定装置50Dは、通信部を備えており、判定の結果をユーザの健康状態や病の状態を記録する情報処理装置(図示せず)に送信し、情報処理装置が判定結果を受信し記憶部に記録する。ユーザは、この情報処理装置が記憶する判定結果の記録から、健康状態や病の状態の変化を把握し、健康管理に役立てることができる。この場合、真のユーザ以外の者が、コンタクトレンズ10Dを装着してしまうと、情報処理装置の記録に他人の健康状態を示す情報が混ざってしまう可能性がある。そこで、認証装置30Dは、コンタクトレンズ10Dを装着したのが真のユーザかどうかを、虹彩認証によって判定する。
認証装置30Dは、第一の実施形態の場合と同様に、位置検出部31と、撮像部32と、装着検出部33と、装着位置判定部34と、認証部35と、表示制御部36と、表示部37と、記憶部38と、を備えている。撮像部32は光源を備えている。コンタクトレンズ10Dの表面には、目印図形が所定の位置に形成されている。その目印図形は光源からの光が当たることで発光する。目印図形は、例えば、蛍光塗料、導光板、LCD(liquid crystal display)、LEDなどにより形成される。目印図形が導光板で形成される場合、目印図形の少なくとも一部に光源からの光を当てることで、目印図形全体を発光させることができる。目印図形がLEDで形成される場合、光源からの光を当てなくても、目印図形を発光させることができる。
【0092】
第七の実施形態の動作について説明する。
図22は、本発明の第七の実施形態における認証方法の一例を示すフローチャートである。ユーザが、コンタクトレンズ10Dを眼に装着すると、位置検出部31は、健康状態判定装置50Dからコンタクトレンズ10Dを装着したことを検出する信号を受信することにより、コンタクトレンズ10Dの装着動作の開始を検出する(ステップS61)。健康状態判定装置50Dは、例えば、ユーザの操作(例えば、図示しない装着開始ボタンの押下)により情報処理装置から装着動作の開始を示す信号を受信することにより、装着動作の開始を検出することができる。位置検出部31は、装着動作の開始を検出すると、撮像部32が備える光源を所定の時間(例えば、数秒)だけ点灯させる(ステップS62)。これにより、コンタクトレンズ10Dの表面に塗布された目印図形が発光し、ユーザは発光した位置を目視により目印図形を確認することができるようになる。ユーザは、この発光した位置を目印にして、コンタクトレンズ10Dの位置合わせを行う。位置合わせが完了すると、情報処理装置は、ユーザの操作(例えば、図示しない装着完了ボタンの押下)により、装着動作の完了を示す信号を健康状態判定装置50Dに送信する。これにより健康状態判定装置50Dは、装着動作の完了を検出することができる。装着位置判定部34は、健康状態判定装置50Dからコンタクトレンズ10Dの装着が完了したことを示す信号を受信することにより、コンタクトレンズ10Dの装着動作の完了を検出する(ステップS63)。装着位置判定部34は、装着動作の完了を検出すると、撮像部32に撮像を指示する(ステップS64)。撮像部32は、ユーザの眼の画像を撮像する。装着位置判定部34は、この画像を用いて、コンタクトレンズ10Dの装着位置の判定を行う(ステップS65)。例えば、撮像した画像の全面に虹彩が写し出されている場合、装着位置判定部34は、コンタクトレンズ10Dは認証を行う位置に装着されていると判定する。例えば、画像に虹彩以外の箇所が写し出されている場合、装着位置判定部34は、コンタクトレンズ10Dの装着位置は認証を行う位置ではないと判定する。認証を行う位置ではないと判定した場合(ステップS65:No)、装着位置判定部34は、撮像部32が備える光源を所定の時間だけ点灯させ、ユーザに位置合わせを促す(ステップS66)。装着位置判定部34が認証を行う位置であると判定するまで、この処理を繰り返す。
装着位置が認証を行う位置であると判定した場合(ステップS65:Yes)、装着位置判定部34は、認証部35に認証処理の開始を指示する。認証部35は、撮像部32が撮像した画像と記憶部38が予め記憶する真のユーザの虹彩画像とを照合し、虹彩認証を行う(ステップS67)。認証部35は、認証の結果を、健康状態判定装置50Dへ出力する。健康状態判定装置50Dは、認証に成功したか否かを判定する(ステップS68)。健康状態判定装置50Dは、認証に成功した場合(ステップS68:Yes)、ユーザの健康状態の判定処理などを行う(ステップS69)。認証に失敗した場合(ステップS68:No)、健康状態判定装置50Dは、認証失敗を上述の情報処理装置に通知する(ステップS70)。情報処理装置は、認証失敗を表示部に表示し、ユーザは認証失敗を把握する。
【0093】
図23A~23Cは、本発明の第七の実施形態による位置合わせの目印図形の一例を示す図である。
図23Aは、コンタクトレンズ10Dの中心付近に十字型の目印図形を付した場合の例である。
図23Bは、コンタクトレンズ10Dの中心付近に2等辺三角形の目印図形を付した場合の例である。
図23Cは、コンタクトレンズ10Dを四分割した各領域に目印図形として数字を配した場合の例である。コンタクトレンズ10Dの表面には、蛍光塗料、導光板、LCD(liquid crystal display)、LEDなどにより、例示した形状、数字状の目印図形が形成される。目印図形が光源からの光を受けて発光することにより、ユーザが視認できるようになる。ユーザは、これらの目印図形を目印にしてコンタクトレンズ10Dの位置合わせを行う。
【0094】
図24は、本発明の第七の実施形態による位置判定を説明する図である。
図24は、ユーザがコンタクトレンズ10Dを装着した状態の一例である。撮像部32が、認証装置30Dが配置された位置範囲に対応するユーザの眼の一部分の画像を撮像する場合ついて説明する。この場合、コンタクトレンズ10Dが
図24で例示するような位置に装着されると、撮像部32の撮像する画像には、虹彩以外の箇所が多く写り込むことになる。装着位置判定部34は、このような位置関係で撮像された画像と、例えば予め登録された真のユーザの虹彩の認証用画像とを比較することにより、撮影された画像には虹彩ではない箇所が含まれていることを検出する。装着位置判定部34は、この検出結果に基づいて、コンタクトレンズ10Dの位置が認証を行う位置では無いと判定する。
【0095】
本実施形態によれば、認証装置30Dは、コンタクトレンズ10Dの装着位置が虹彩認証を行う位置に装着されているかどうかを判定することができる。また、認証装置30Dは、コンタクトレンズ10Dの装着位置を、ユーザの虹彩の位置(認証を行う位置)に合わせるよう促すことができる。これにより、認証装置30Dは、コンタクトレンズ10Dを装着したユーザが真のユーザかどうか虹彩認証により認証することができる。
【0096】
<第八の実施形態>
以下、本発明の第八の実施形態による認証システムについて説明する。
第八の実施形態に係る認証システムの構成は、第七の実施形態と同様の構成である。
第八の実施形態に係る認証システムは、コンタクトレンズ10Dの位置合わせを行うことなく、虹彩認証を実施する。具体的には、第八の実施形態に係る記憶部38は、撮像部32が撮像し得る範囲の画像(例えば、眼球の全周に亘る虹彩の画像)を記憶する。第八の実施形態に係る認証部35は、撮像部32が撮像した画像と、記憶部38が記憶する画像の一部との類似度を計算することで、虹彩認証を行う。
【0097】
図25は、本発明の第八の実施形態における虹彩画像の登録方法の一例を示すフローチャートである。この方法では、初期設定時に瞳孔を中心とした周囲方向の範囲にわたって、眼球の全周囲方向から撮像することにより得られた認証用画像を記憶部38に登録する。
ユーザが、コンタクトレンズ10Dを装着すると、位置検出部31は、健康状態判定装置50Dからコンタクトレンズ10Dを装着したことを検出する信号を受信することにより、コンタクトレンズ10Dの装着動作の開始を検出する(ステップS101)。位置検出部31は、装着動作の開始を検出すると、撮像部32に撮像を指示する(ステップS102)。撮像部32は、ユーザの眼の一部が写る画像を撮像する。次に、装着位置判定部34は、撮像部32がユーザの瞳孔を中心とした全周に係る画像の撮像を完了したか否かを判定する(ステップS103)。全周に係る画像とは360度の全周方向から撮像することにより得られた画像に限られず、例えば10度ごとに回転させた複数の角度から撮像することにより得られた画像であってもよい。全周に係る画像の撮像を完了していない場合(ステップS103:No)、装着位置判定部34は、撮像部32が備える光源を所定の時間だけ点灯させ、ユーザにコンタクトレンズ10Dの回転を促す(ステップS104)。次に、装着位置判定部34は、図示しない加速度センサまたはジャイロセンサの出力に基づいて、コンタクトレンズ10Dの回転位置が画像の撮像が完了していない位置にあるか否かを判定する(ステップS105)。コンタクトレンズ10Dの回転位置が画像の撮像が完了していない位置にない場合(ステップS105:No)、ステップS104に戻り、装着位置判定部34は再度回転を促す。他方、コンタクトレンズ10Dの回転位置が画像の撮像が完了していない位置にある場合(ステップS105:Yes)、ステップS102に戻り、撮像部32に撮像を指示する。
他方、ステップS103において全周に係る画像の撮像を完了した場合(ステップS103:Yes)、記憶部38は、ステップS103で撮像された画像を合成して得られる認証用画像を記憶する(ステップS106)。
【0098】
このように、第八の実施形態によれば、撮像部32は、撮像し得る範囲に係る認証用画像を記憶する。これにより、認証部35は、コンタクトレンズ10Dの位置合わせを行うことなく、虹彩認証を実施することができる。
他の実施形態において、記憶部38は、全周に係る画像合成せず、ステップS103で撮像された各画像をそのまま認証用画像として記憶しても良い。
【0099】
<第九の実施形態>
以下、本発明の第九の実施形態による認証システムについて説明する。
第九の実施形態に係る認証システムの構成は、第八の実施形態と同様の構成である。
第九の実施形態に係る認証システムは、第八の実施形態と同様に、コンタクトレンズ10Dの位置合わせを行うことなく、虹彩認証を実施する。具体的には、第九の実施形態に係る記憶部38は、撮像部32が撮像し得る範囲の画像(例えば、眼球の全周に亘る虹彩の画像)を記憶する。第八の実施形態に係る認証部35は、撮像部32が撮像した画像と、記憶部38が記憶する画像の一部との類似度を計算することで、虹彩認証を行う。
【0100】
図26は、本発明の第九の実施形態における虹彩画像の登録方法の一例を示すフローチャートである。この方法では、情報処理装置によって撮像された認証用画像を記憶部38に登録する。
ユーザは、情報処理装置を操作し、所定のアプリケーションプログラムを起動させる(ステップS111)。このときユーザは、コンタクトレンズ10Dを装着している。次に、情報処理装置は、情報処理装置に備えられる撮像部によりユーザの眼が写る画像を撮像する(ステップS112)。次に、情報処理装置は、撮像した画像をコンタクトレンズ10Dに送信する(ステップS113)。
コンタクトレンズ10Dが情報処理装置から画像を受信すると、撮像部32は、ユーザの眼の一部が写る画像を撮像する(ステップS114)。次に、認証部35は、撮像部32が撮像した画像と情報処理装置から受信した画像とを照合し、虹彩認証を行う(ステップS115)。認証部35は、認証に成功したか否かを判定する(ステップS116)。
撮像部32が撮像した画像と情報処理装置から受信した画像との照合に成功するということは、情報処理装置から受信した画像を認証用画像として用いることができることを示す。他方、撮像部32が撮像した画像と情報処理装置から受信した画像との照合に失敗するということは、情報処理装置から受信した画像を認証用画像として用いることができないことを示す。
認証部35は、認証に失敗した場合(ステップS116:No)、認証失敗を上述の情報処理装置に通知する。これにより、情報処理装置は、再度の撮像指示を表示し(ステップS117)、ステップS112に戻り、再度ユーザの眼が写る画像を撮像する。
認証部35は、認証に成功した場合(ステップS116:Yes)、情報処理装置から受信した認証用画像を記憶部38に記録する(ステップS118)。
【0101】
このように、第九の実施形態によれば、撮像部32は、撮像し得る範囲に係る認証用画像を記憶する。これにより、認証部35は、コンタクトレンズ10Dの位置合わせを行うことなく、虹彩認証を実施することができる。
本実施形態では、認証部35による認証が成功したか否かの判定によって、情報処理装置が撮像した画像が認証用画像に相応しいか否かを判定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態では、情報処理装置が撮像した画像のコントラストや空間周波数の判定等に基づいて、その画像が認証用画像に相応しいか否かを判定しても良い。
他の実施形態においては、情報処理装置による画像の撮像の際に、コンタクトレンズ10Dが装着されていなくてもよい。この場合、コンタクトレンズ10Dは、装着後に、ステップS114以降の処理を行い、情報処理装置が撮像した画像が認証用画像に相応しいか否かを判定する。
【0102】
<第十の実施形態>
以下、本発明の第十の実施形態による認証システムについて説明する。
図27は、本発明の第十の実施形態による認証システムの一例を示す図である。
図27で示すように、本実施形態による認証システムは、装着体10E、情報処理装置20Eを含む。装着体10E(コンタクトレンズ10E)は、第七の実施形態と同様に、記憶部11と、通信部12と、バッテリ部13と、電源制御部14と、制御部15と、位置検出部31と、撮像部32と、を備えている。
情報処理装置20Eは、第七の実施形態と同様に、表示制御部21と、表示部22と、通信部23と、記憶部24と、装着検出部33と、装着位置判定部34と、認証部35と、を備えている。また、情報処理装置20Eは、さらに撮像部41および健康状態判定部42を備える。撮像部41は、情報処理装置20Eの筐体の面のうち、表示部22が設けられている面と同じ面に設けられ、表示部22に対向するユーザの画像を撮像する。健康状態判定部42は、第七の実施形態に係る健康状態判定装置50Dと同様の処理を行う処理部である。
【0103】
第十の実施形態に係る認証システムは、情報処理装置10Eによりコンタクトレンズ10Eの位置合わせを補助する。第十の実施形態によるコンタクトレンズ10Eは、目印図形を有しない。
【0104】
第十の実施形態の動作について説明する。
図28は、本発明の第十の実施形態における認証方法の一例を示すフローチャートである。ユーザが、コンタクトレンズ10Eを装着すると、情報処理装置20Eは、例えば、ユーザの操作(例えば、図示しない装着開始ボタンの押下)により、装着動作の開始を検出する(ステップS71)。このとき、ユーザは、顔が表示部22が設けられる面に対向するように情報処理装置20Eを持つ。情報処理装置20Eが装着動作の開始を検出すると、撮像部41は、画像の撮像を開始する(ステップS72)。撮像部41は、表示部22と同じ面に設けられるため、撮像部41が撮像する画像には、ユーザの目およびコンタクトレンズ10Eが写る。
装着位置判定部34は、撮像部41が撮像した画像に写る、コンタクトレンズ10Eの所定の回路(例えば、記憶部11、通信部12、バッテリ部13、電源制御部14、制御部15、位置検出部31、または撮像部32など)の位置に基づいて、コンタクトレンズ10Eが認証を行う位置に装着されているか否かを判定する(ステップS73)。例えば、撮像した画像において、コンタクトレンズ10Eの所定の回路が所定の位置に写っている場合、装着位置判定部34は、コンタクトレンズ10Eが認証を行う位置に装着されていると判定する。また、例えば、撮像した画像において、コンタクトレンズ10Eの所定の回路が所定の位置から所定の距離以上離れて写っている場合、装着位置判定部34は、コンタクトレンズ10Eの装着位置が認証を行う位置ではないと判定する。認証を行う位置ではないと判定した場合(ステップS73:No)、装着位置判定部34は、表示部22に位置合わせを促す画面を表示させる(ステップS74)。装着位置判定部34が認証を行う位置であると判定するまで、この処理を繰り返す。位置合わせを促す画面の例は、コンタクトレンズ10Eの回転方向を示す矢印の表示を含む。
認証を行う位置であると判定した場合(ステップS73:Yes)、装着位置判定部34は、通信部23を介して、コンタクトレンズ10Eに撮像指示情報および撮像された画像の送信指示情報を送信する(ステップS75)。これにより、コンタクトレンズ10Eの撮像部32は、ユーザの目の画像を撮像し、撮像した画像を情報処理装置20Eに送信する。
装着位置判定部34は、認証部35に認証処理の開始を指示する。認証部35は、撮像部32が撮像した画像と記憶部38が予め記憶する真のユーザの虹彩画像とを照合し、虹彩認証を行う(ステップS76)。認証部35は、認証の結果を、健康状態判定部42へ出力する。健康状態判定部42は、認証に成功したか否かを判定する(ステップS77)。健康状態判定部42は、認証に成功した場合(ステップS77:Yes)、ユーザの健康状態の判定処理などを行う(ステップS78)。認証に失敗した場合(ステップS77:No)、健康状態判定部42は、認証失敗を表示部22に表示させる(ステップS79)。これにより、ユーザは認証失敗を把握する。
【0105】
本実施形態によれば、情報処理装置20Eは、コンタクトレンズ10Eの装着位置が虹彩認証を行う位置に装着されているかどうかを判定することができる。また、情報処理装置20Eは、コンタクトレンズ10Eの装着位置を、ユーザの虹彩の位置(認証を行う位置)に合わせるよう促すことができる。これにより、情報処理装置20Eは、コンタクトレンズ10Eを装着したユーザが真のユーザかどうか虹彩認証により認証することができる。
【0106】
本実施形態によるコンタクトレンズ10Eは目印図形を有しないが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、コンタクトレンズ10Eは目印図形を有していてもよい。この場合、情報処理装置20Eは、撮像部41が撮像する画像に写る目的図形の角度に基づいて、装着位置の判定を行う。
また、本実施形態によれば、情報処理装置20Eが、認証処理および健康状態判定処理を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、第二の実施形態と同様に、認証処理または健康状態判定処理の少なくとも一方をコンタクトレンズ10Eにおいて実行し、情報処理装置20Eがその処理結果を表示するものであっても良い。
本実施形態によれば、情報処理装置20Eが、撮像部41が撮像した画像に基づいてコンタクトレンズ10Eの装着位置の判定を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態においてコンタクトレンズ10Eが加速度センサを備える場合、情報処理装置20Eは、その加速度センサの出力に基づいて装着位置の判定を行っても良い。この場合、情報処理装置20Eは、加速度センサが検出する重力の方向に基づいてコンタクトレンズ10Eの装着位置を特定する。
【0107】
<第十一の実施形態>
以下、本発明の第十一の実施形態による認証システムについて説明する。
図29は、本発明の第十一の実施形態による装着体の一例を示す断面図である。
図29は、コンタクトレンズ型ウェアラブル端末である装着体10G(コンタクトレンズ10Gと呼ぶ)を示している。コンタクトレンズ10Gは、第1層レンズ300Aと第2層レンズ300Bの積層構造を有する。第1層レンズ300Aは、ユーザの眼に装着される側の層をなす。第2層レンズ300Bは、外気に触れる側の層をなす。コンタクトレンズ10Gはさらに、認証装置30G、健康状態判定装置50Gを備えている。認証装置30Gおよび健康状態判定装置50Gは、第1層レンズ300Aと第2層レンズ300Bとの間に設けられる。
【0108】
コンタクトレンズ10Gは、全体として重力または瞬きにより正立を保つ形状を有する。重力または瞬きにより正立を保つ形状の例は、プリズムバラスト形状またはダブルスラブオフ形状など、コンタクトレンズ10Gの一部に肉厚部301を有する形状を含む。重力または瞬きにより正立を保つ形状は、一般に乱視用コンタクトレンズに用いられ、回転位置をそろえる必要がない通常のコンタクトレンズにおいては、通常採用されない。
プリズムバラスト形状とは、コンタクトレンズ10Gの厚みが、上から下に向かって徐々に厚くなる形状である。これにより、厚い側面が、瞬きのたびに押し出されるとともに、その重みで下側に移動することで、コンタクトレンズ10Gの回転位置を一定にすることができる。ダブルスラブオフ形状とは、コンタクトレンズ10Gの上下が相対的に薄く、左右が相対的に厚い形状である。これにより、上下の薄い部分が瞬きにより挟み込まれることで、コンタクトレンズ10Gの回転位置を一定にすることができる。
【0109】
認証装置30Gは、第1層レンズ300Aを介して画像を撮像する。そのため、撮像される画像に歪みが生じないよう、第1層レンズ300Aは、同心円状に厚みが均一になるように形成される。したがって、肉厚部301は、第2層レンズ300Bに含まれる。認証装置30Gおよび健康状態判定装置50Gは、
図29に示すようにコンタクトレンズ10Gの肉厚部301の内側に設けられる。これにより、コンタクトレンズ10Gの全体の厚みを薄くし、角膜への酸素供給量を増大させることができる。
【0110】
認証部35は、ユーザが瞬きを行った後に認証処理を開始する。これにより、認証部35は、瞬きによりコンタクトレンズ10Gの位置がコンタクトレンズ10Eの装着位置が認証を行う位置に存在する蓋然性が高いときに認証処理を開始することができる。したがって、第十の実施形態による認証システムは、位置検出部31および装着位置判定部34を備えなくてもよい。
【0111】
上述の認証装置30は内部にコンピュータを有している。そして、上述した認証装置30の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータがそのプログラムを実行するようにしてもよい。
【0112】
上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0113】
上述した認証装置30の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0114】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0115】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0116】
(付記1)
ユーザの生体が挿入される領域を囲う環状の筐体と、
前記筐体に設けられ、前記領域へ向けて光を発する発光素子と、
前記筐体に設けられ、前記発光素子が光を発したときに前記領域を撮像して画像を得る撮像素子と、
予め取得された静脈パターンと、前記画像とに基づいて前記ユーザを認証する認証回路と
を備える装着体。
【0117】
(付記2)
前記筐体と前記生体との位置関係に応じたセンサ値を出力するセンサと、
前記センサ値に基づいて前記領域に生体が存在するか否かを判定する装着判定回路と
をさらに備え、
前記領域に前記生体が存在すると判定された場合に、前記認証回路が前記ユーザの認証を行う
付記1に記載の装着体。
【0118】
(付記3)
前記領域に前記生体が存在しない状態から前記領域に前記生体が存在する状態に変化した場合に、前記認証回路が前記ユーザの認証を行う
付記2に記載の装着体。
【0119】
(付記4)
前記領域に前記生体が存在しない状態から前記領域に前記生体が存在する状態に変化した場合に、前記発光素子、前記撮像素子および前記認証回路の少なくとも1つへの電力の供給を開始する電源供給回路をさらに備える
付記2または付記3に記載の装着体。
【0120】
(付記5)
前記認証回路が前記ユーザの認証を完了した場合に、前記電源供給回路が、前記発光素子、前記撮像素子および前記認証回路の少なくとも1つへの電力の供給を停止する
付記4に記載の装着体。
【0121】
(付記6)
電気を蓄える蓄電デバイスと、
前記領域に前記生体が存在せず、かつ前記筐体が静置されている場合に、前記蓄電デバイスへの充電を開始する充電制御回路と
をさらに備え、
前記電源供給回路が前記蓄電デバイスを電源として電力を供給する
付記4または付記5に記載の装着体。
【0122】
(付記7)
前記装着判定回路は、前記筐体が前記生体の装着部位に装着されているか否かを判定し、
前記装着判定回路によって前記筐体が前記装着部位に装着されていると判定された場合、前記認証回路が前記ユーザの認証を行う
付記2から付記6の何れか1項に記載の装着体。
【0123】
(付記8)
前記筐体は、光を透過する透過部を有する内周面を有し、
前記撮像素子は、前記透過部を介して前記領域を撮像する
付記1から付記7の何れか1項に記載の装着体。
【0124】
(付記9)
前記静脈パターンが、前記装着部位となり得る範囲に係る静脈パターンであって、
前記認証回路は、前記画像と、前記装着部位となり得る範囲に係る静脈パターンの一部とに基づいて前記ユーザの認証を行う
付記1から付記8の何れか1項に記載の装着体。
【0125】
(付記10)
前記静脈パターンを予め記録する記憶部をさらに備え、
前記記憶部が耐タンパ性を有する
付記1から付記9の何れか1項に記載の装着体。
【0126】
(付記11)
前記発光素子の照射方向と前記撮像素子の撮像方向とのなす角が120度以上でありかつ130度以下である
付記1から付記10の何れか1項に記載の装着体。
【0127】
(付記12)
前記認証回路による認証の結果を表示する表示部をさらに備える
付記1から付記11の何れか1項に記載の装着体。
【0128】
(付記13)
前記認証回路が前記ユーザの認証に失敗した場合に、前記表示部が前記失敗の理由に関する情報を表示する
付記12に記載の装着体。
【0129】
(付記14)
ユーザの生体が挿入される領域を囲う環状の筐体に設けられ、発光素子に前記領域へ向けて光を発させる発光制御回路と、
予め取得された静脈パターンと、前記発光素子が光を発したときに撮像することにより得られた画像とに基づいて前記ユーザの認証を行う認証部と
を備える認証装置。
【0130】
(付記15)
環状の筐体によって囲われかつユーザの生体が挿入される領域へ向けて、発光素子に光を発させ、
予め取得された静脈パターンと、前記発光素子が光を発したときに撮像することにより得られた画像とに基づいて前記ユーザの認証を行う
ことを有する認証方法。
【0131】
(付記16)
環状の筐体によって囲われかつユーザの生体が挿入される領域へ向けて、発光素子に光を発させ、
予め取得された静脈パターンと、前記発光素子が光を発したときに撮像することにより得られた画像とに基づいて前記ユーザの認証を行う
ことをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0132】
この出願は、2015年8月10日に出願された日本国特願2015-158540を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、装着体、認証装置、認証方法およびプログラムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0134】
10、10B、10C・・・装着体
10A・・・リング
11・・・記憶部
12・・・通信部
13・・・バッテリ部
14・・・電源制御部
15・・・制御部
20B・・・表示装置
20C・・・情報処理装置
30、30B、30C・・・認証装置
31・・・位置検出部
32・・・撮像部
33・・・装着検出部
34・・・装着位置判定部
35・・・認証部
36・・・表示制御部
37・・・表示部
38・・・記憶部
300・・・筐体
310・・・加速度センサ
311A、311B、311C、311D・・・静電容量センサ
320・・・光源
321・・・TFTセンサ
370A、370B、370C・・・LEDランプ
40・・・演算装置
50D・・・健康状態判定装置