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特許7371732車両の制御装置およびそれを備えた車両ならびに車両の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】車両の制御装置およびそれを備えた車両ならびに車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/66 20190101AFI20231024BHJP
   H02J 7/00 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
B60L53/66
H02J7/00 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022113196
(22)【出願日】2022-07-14
(62)【分割の表示】P 2019018612の分割
【原出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2022137222
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 大輝
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-296824(JP,A)
【文献】特開2014-124033(JP,A)
【文献】特開2020-127295(JP,A)
【文献】特表2013-504831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0214737(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/66
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部に設けられた充電器から供給される電力により車載の蓄電装置を充電することが可能に構成された車両の制御装置であって、
前記車両と前記充電器との間で送受信される信号の入出力を行うように構成された入出力部と、
前記蓄電装置を充電するための規定の通信シーケンスに従って前記入出力部を介した信号の送受信を制御する制御部とを備え、
前記通信シーケンスでは、前記車両が前記充電器から受信した信号が表す内容を参照することが規定され、
前記制御部は、前記充電器から受信した信号が予め定められた特定信号である場合には、前記特定信号が表す内容を参照しない、車両の制御装置。
【請求項2】
前記特定信号は、第1~第4の信号のうちの少なくとも1つを含み、
前記第1の信号は、前記車両と前記充電器とのハンドシェイクを行うための信号であり、
前記第2の信号は、前記充電器の供給電圧および供給電流に関する情報を含む信号であり、
前記第3の信号は、前記充電器が電力供給を中止する原因に関する情報を含む信号であり、
前記第4の信号は、前記充電器から前記車両への充電実績に関する情報を含む信号である、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記充電器から受信した信号が前記特定信号である場合には、前記特定信号が表す内容に拘わらずに前記通信シーケンスを進める一方で、
前記充電器から受信した信号が前記特定信号以外の他の信号の場合には、前記他の信号が表す内容に応じて前記通信シーケンスを進めるか否かを判断する、請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記他の信号は、第5~第7の信号のうちの少なくとも1つを含み、
前記第5の信号は、前記充電器が前記車両を識別したかどうかを表す信号であり、
前記第6の信号は、前記充電器から供給可能な最大電力を算出するための信号であり、
前記第7の信号は、前記充電器の電力供給の準備が完了したかどうかを表す信号である、請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記蓄電装置と、
請求項1~4のいずれか1項に記載の制御装置とを備える、車両。
【請求項6】
車両外部に設けられた充電器から供給される電力により車載の蓄電装置を充電することが可能に構成された車両の制御方法であって、
前記車両は、前記蓄電装置を充電するための規定の通信シーケンスに従って前記充電器との間で信号を送受信するように構成され、
前記通信シーケンスでは、前記車両が前記充電器から受信した信号が表す内容を参照することが規定され、
前記車両の制御方法は、
前記充電器から受信した信号が予め定められた特定信号であるか否かを判定するステップと、
前記充電器から受信した信号が前記特定信号である場合には、前記特定信号が表す内容を参照しないステップとを含む、車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の制御装置およびそれを備えた車両ならびに車両の制御方法に関し、より特定的には、車両外部に設けられた充電器から供給される電力により車載の蓄電装置を充電する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラグインハイブリッド車および電気自動車等の車両が市販されている。これらの車両は、車両外部に設けられた充電器から供給される電力により車載の蓄電装置を充電する「外部充電」が可能に構成されている。
【0003】
今後、車載の蓄電装置の容量が増大することが予想されている。これにより、車両のEV走行距離(蓄電装置に蓄えられた電力により車両が走行可能な距離)を延ばすことができる。その一方で、蓄電装置の容量増大に伴い充電時間が過度に長くなると、ユーザの利便性が低下し得る。よって、充電時間を短縮すべく、従来の充電電力(たとえば数十kW)よりも大電力(たとえば数百kW)での外部充電が検討されている。以下、このような充電を「急速充電」とも称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2013-504831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
急速充電は、充電規格に定められた一連の処理を車両と充電器とが協働して実行することにより進められる。急速充電では、充電規格に規定された通信シーケンスに従って車両と充電器との間で各種信号が送受信される。車両と充電器とは、当該通信シーケンスを実行することで、通信リンクを確立したり充電条件を決定したり充電準備の成否を相互に確認したりすることができる(詳細は後述)。
【0006】
急速充電では、従来とは異なる充電規格(以下、「新規格」とも呼ぶ)が採用される。たとえば急速充電の普及初期には様々な充電器が市場に出回り得るが、全ての充電器が新規格に完全に準拠(適合)しているとは必ずしも限らない。充電器の中には、新規格に規定された内容とは異なる内容を表す信号(新規格に規定されていない内容を表す信号)を送信するものが存在する可能性がある。そうすると、通信シーケンスを先に進めることができず、蓄電装置を適切に充電することができない。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、充電器が通信シーケンスに準拠していない場合でもあっても蓄電装置を充電できる可能性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示のある局面に従う車両の制御装置は、車両外部に設けられた充電器から供給される電力により車載の蓄電装置を充電することが可能に構成された車両の制御装置である。車両の制御装置は、車両と充電器との間で送受信される信号の入出力を行うように構成された入出力部と、蓄電装置を充電するための規定の通信シーケンスに従って入出力部を介した信号の送受信を制御する制御部とを備える。通信シーケンスでは、車両が充電器から受信した信号が表す内容に基づいて車両が通信シーケンスを進めることが規定される。制御部は、充電器から受信した信号が予め定められた特定信号である場合には、特定信号が表す内容に拘わらず通信シーケンスを進める。
【0009】
(2)特定信号は、第1~第4の信号のうちの少なくとも1つを含む。第1の信号は、車両と充電器とのハンドシェイクを行うための信号である。第2の信号は、充電器の供給電圧および供給電流に関する情報を含む信号である。第3の信号は、充電器が電力供給を中止する原因に関する情報を含む信号である。第4の信号は、充電器から車両への充電実績に関する情報を含む信号である。
【0010】
車両と充電器との間の電力授受に必須の内容を表すものではない特定信号(第1~第4の信号)については、制御部は、特定信号が表す内容に拘わらず通信シーケンスを先に進める。これにより、特定信号の内容の誤りに起因する通信シーケンスの中断を防止することができる。その結果、充電器側が新規格の通信シーケンスに完全には準拠していない場合であっても蓄電装置を充電できる可能性を高めることができる。
【0011】
(3)制御部は、充電器から受信した信号が特定信号である場合には、特定信号が表す内容に拘わらずに通信シーケンスを進める一方で、充電器から受信した信号が特定信号以外の他の信号の場合には、他の信号が表す内容に応じて通信シーケンスを進めるか否かを判断する。
【0012】
(4)他の信号は、第5~第7の信号のうちの少なくとも1つを含む。第5の信号は、充電器が車両を識別したかどうかを表す信号である。第6の信号は、充電器から供給可能な最大電力を算出するための信号である。第7の信号は、充電器の電力供給の準備が完了したかどうかを表す信号である。
【0013】
車両と充電器との間の電力授受に必須の内容を表す他の信号(第5~第7の信号)については、制御部は、当該信号の内容を参照し、その内容に応じて通信シーケンスを先に進めるかどうかを判断する。これにより、通信リンクの確立を確認したり(第5の信号)、電力授受の安全性を確保したり(第5または第6の信号)することができる。
【0014】
(5)本開示の他の局面に従う車両は、蓄電装置と、上記制御装置とを備える。
【0015】
上記(5)の構成によれば、充電器が通信シーケンスに準拠していない場合でもあっても蓄電装置を充電できる可能性を高めること可能な車両を提供することができる。
【0016】
(6)本開示のさらの他の局面に従う車両の制御装置において、車両は、車両外部に設けられた充電器から供給される電力により車載の蓄電装置を充電することが可能に構成される。車両は、蓄電装置を充電するための規定の通信シーケンスに従って充電器との間で信号を送受信するように構成される。通信シーケンスでは、車両が充電器から受信した信号が表す内容に基づいて車両が通信シーケンスを進めることが規定される。車両の制御方法は、充電器から受信した信号が予め定められた特定信号であるか否かを判定するステップと、充電器から受信した信号が特定信号である場合には、特定信号が表す内容に拘わらず通信シーケンスを進めるステップとを含む。
【0017】
上記(6)の方法によれば、上記(1)の構成と同様に、充電器が通信シーケンスに準拠していない場合でもあっても蓄電装置を充電できる可能性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、充電器が充電規格に規定された通信シーケンスに準拠していない場合でもあっても外部充電を行える可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の実施の形態に係る充電システムの全体構成を概略的に示す図である。
図2】車両および充電器の構成を概略的に示すブロック図である。
図3】充電規格に規定された外部充電制御の通信シーケンス図である。
図4】充電中止メッセージのデータフィールドの構造の一例を示す図である。
図5】充電中止メッセージを急速充電の充電規格の通信シーケンスに規定された通りに受信した場合(正常受信時)の処理を説明するための概念図である。
図6】比較例における充電中止メッセージの受信時の処理を説明するための概念図である。
図7】本実施の形態における充電中止メッセージの受信時の処理を説明するための概念図である。
図8】メッセージ毎の処理内容の概要をまとめた図である。
図9】本実施の形態における充電器識別メッセージの受信時の処理を説明するための概念図である。
図10】本実施の形態における最大出力能力メッセージの受信時の処理を説明するための概念図である。
図11】本実施の形態における外部充電制御の通信シーケンスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0021】
[実施の形態]
<充電システムの全体構成>
図1は、本開示の実施の形態に係る充電システムの全体構成を概略的に示す図である。図1を参照して、充電システム100は、車両1と、充電器2と、充電ケーブル3とを備える。図1には、車両1と充電器2とが充電ケーブル3により電気的に接続され、充電器2から車両1への外部充電時の状況が示されている。
【0022】
車両1は、たとえば電気自動車である。ただし、車両1は、外部充電が可能に構成された車両であれば、たとえばプラグインハイブリッド車であってもよい。充電器2は、たとえば公共の充電スタンド(充電ステーションとも呼ばれる)に設けられた急速充電器である。
【0023】
図2は、車両1および充電器2の構成を概略的に示すブロック図である。図2を参照して、充電器2は、直流(DC:Direct Current)充電器であって、系統電源4からの供
給電力(交流電力)を、車両1に搭載されたバッテリ14の充電電力(直流電力)に変換する。充電器2は、電力線ACLと、AC/DC変換器21と、電圧センサ22と、給電線PL0,NL0と、制御回路20とを含む。
【0024】
電力線ACLは、系統電源4に電気的に接続されている。電力線ACLは、系統電源4からの交流電力をAC/DC変換器21へ伝送する。
【0025】
AC/DC変換器21は、電力線ACL上の交流電力を、車両1に搭載されたバッテリ14を充電するための直流電力に変換する。AC/DC変換器21による電力変換は、力率改善のためのAC/DC変換と、電圧レベル調整のためのDC/DC変換との組み合わせによって実行されてもよい。AC/DC変換器21から出力された直流電力は、正極側の給電線PL0および負極側の給電線NL0によって供給される。
【0026】
電圧センサ22は、給電線PL0と給電線NL0との間に電気的に接続されている。電圧センサ22は、給電線PL0と給電線NL0との間の電圧を検出し、その検出結果を制御回路20に出力する。
【0027】
制御回路20は、CPUと、メモリと、入出力ポート(いずれも図示せず)とを含んで構成されている。制御回路20は、電圧センサ22により検出された電圧、車両1からの信号、ならびに、メモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、AC/DC変換器21による電力変換動作を制御する。
【0028】
車両1は、インレット11と、充電線PL1,NL1と、電圧センサ121と、電流センサ122と、充電リレー131,132と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)133,134と、バッテリ14と、電力線PL2,NL2と、PCU(Power Control Unit)16と、モータジェネレータ17と、動力伝達ギヤ181と、駆動輪182と、ECU(Electronic Control Unit)10とを備える。
【0029】
インレット(充電ポート)11は、嵌合等の機械的な連結を伴って充電ケーブル3のコネクタ31を挿入することが可能に構成されている。コネクタ31の挿入に伴い、給電線PL0とインレット11の正極側の接点との間の電気的な接続が確保されるとともに、給電線NL0とインレット11の負極側の接点との間の電気的な接続が確保される。また、インレット11とコネクタ31とが充電ケーブル3により接続されることで、車両1のECU10と充電器2の制御回路20とがCAN(Controller Area Network)等の通信規格に従う通信により、信号、指令、メッセージまたはデータ等の各種情報を相互に送受信することが可能になる。
【0030】
電圧センサ121は、充電リレー131,132よりもインレット11側において、充電線PL1と充電線NL1との間に電気的に接続されている。電圧センサ121は、充電線PL1と充電線NL1との間の直流電圧を検出し、その検出結果をECU10に出力する。電流センサ122は、充電線PL1に設けられている。電流センサ122は、充電線PL1を流れる電流を検出し、その検出結果をECU10に出力する。ECU10は、電圧センサ121および電流センサ122による検出結果に基づき、充電器2からの供給電力(バッテリ14の充電量)を算出することもできる。
【0031】
充電リレー131は充電線PL1に接続され、充電リレー132は充電線NL1に接続されている。充電リレー131,132の閉成/開放は、ECU10からの指令に応じて制御される。充電リレー131,132が閉成され、かつSMR133,134が閉成されると、インレット11とバッテリ14との間での電力伝送が可能な状態となる。
【0032】
バッテリ14は、車両1の駆動力を発生させるための電力を供給する。また、バッテリ14は、モータジェネレータ17により発電された電力を蓄える。バッテリ14は、複数のセル140を含んで構成された組電池である。各セル140は、リチウムイオン二次電池またはニッケル水素電池等の二次電池である。なお、バッテリ14は、本開示に係る「蓄電装置」に相当する。バッテリ14に代えて、電気二重層キャパシタなどのキャパシタを用いてもよい。
【0033】
バッテリ14の正極は、SMR133を経由してノードND1に電気的に接続されている。ノードND1は、充電線PL1および電力線PL2に電気的に接続されている。同様に、バッテリ14の負極は、SMR134を経由してノードND2に電気的に接続されている。ノードND2は、充電線NL1および電力線NL2に電気的に接続されている。SMR133,134の閉成/開放は、ECU10からの指令に応じて制御される。
【0034】
バッテリ14には、電圧センサ141と、電流センサ142と、電池温度センサ143とが設けられている。電圧センサ141は、バッテリ14の電圧VBを検出する。電流センサ142は、バッテリ14に入出力される電流IBを検出する。電池温度センサ143は、バッテリ14の温度TBを検出する。各センサは、その検出結果をECU10に出力する。ECU10は、電圧センサ141および/または電流センサ142による検出結果に基づいて、バッテリ14のSOC(State Of Charge)を算出することができる。
【0035】
PCU16は、電力線PL2,NL2とモータジェネレータ17との間に電気的に接続されている。PCU16は、コンバータおよびインバータ(いずれも図示せず)を含んで構成され、ECU10からの指令に従ってモータジェネレータ17を駆動する。
【0036】
モータジェネレータ17は、交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。モータジェネレータ17の出力トルクは、動力伝達ギヤ181を通じて駆動輪182に伝達され、車両1を走行させる。また、モータジェネレータ17は、車両1の制動動作時には、駆動輪182の回転力によって発電することができる。モータジェネレータ17による発電電力は、PCU16によってバッテリ14の充電電力に変換される。
【0037】
ECU10は、制御回路20と同様に、CPU101と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリ102と、入出力ポート103とを含んで構成されている。ECU10は、各センサ等からの信号に応じて、車両1が所望の状態となるように機器類を制御する。ECU10は、機能毎に複数のECUに分割して構成されていてもよい。なお、CPU101は本開示に係る「制御部」に相当し、入出力ポート103は本開示に係る「入出力部」に相当する。
【0038】
ECU10により実行される主要な制御として、充電器2から供給される電力により車載のバッテリ14を充電する外部充電制御が挙げられる。外部充電制御は、車両1のECU10と充電器2の制御回路20との間で充電ケーブル3を介して各種メッセージを相互に送受信することにより進められる。このメッセージの送受信について、以下、詳細に説明する。
【0039】
<標準通信シーケンス>
外部充電制御では、車両1と充電器2との間でのメッセージの授受に関する通信シーケンスが進められるとともに、車両1と充電器2との間で電力の授受に関する充電シーケンスが進められる。通信シーケンスおよび充電シーケンスは、いずれも急速充電の充電規格(新規格)に規定されている。以下では通信シーケンスの一例を概略的に説明する。
【0040】
図3は、外部充電制御の通信シーケンスの一例を示すシーケンス図である。図3および後述する図4図11では、図中左側に充電器2の制御回路20により実行されるシーケンス処理が示され、図中右側に車両1のECU10により実行されるシーケンス処理が示されている。なお、以下では簡単のため、ECU10により実行される処理の実行主体を車両1と記載し、制御回路20により実行される処理の実行主体を充電器2と記載する場合がある。
【0041】
図3を参照して、この通信シーケンスは、車両1と充電器2とが充電ケーブル3により物理的に接続され、さらに、車両1と充電器2との間のCAN等の通信を実現するための低圧電源が投入された場合に開始される。なお、図3に示す通信シーケンスを「標準通信シーケンス」と呼ぶ場合がある。
【0042】
標準通信シーケンスに含まれる処理は、充電準備段階(充電ハンドシェイク段階および充電パラメータ配置段階)、充電段階および充電終了段階に分類される。充電準備段階では、車両1と充電器2との間の通信リンク確立、充電条件の決定、充電準備の成否の確認などが行われる。充電段階では、図示しない充電シーケンスに従って充電器2から車両1への実際の電力供給が行われる。充電終了段階では、電力供給後に車両1と充電器2との間で今回の充電に関する統計データの授受が行われる。
【0043】
まず、充電準備段階において、車両1と充電器2とのハンドシェイクが行われる。具体的に、充電器2は、充電器ハンドシェイクメッセージCHMを車両1に送信する(SQ1)。充電器ハンドシェイクメッセージCHMは、充電器2が準拠する通信シーケンス(通信プロトコル)のバージョン番号に関する情報を含んでもよい。車両1は、充電器ハンドシェイクメッセージCHMに応答して、車両ハンドシェイクメッセージBHMを充電器2に送信する(SQ2)。車両ハンドシェイクメッセージBHMは、車両1の最高許容電圧に関する情報を含んでもよい。
【0044】
さらに、車両1と充電器2との間の通信リンクを確立するための処理が実行される。具体的には、充電器2は、充電器2が車両1をまだ識別していないことを示す第1充電器識別メッセージCRM(0x00)を車両1に送信する(SQ3)。車両1は、第1充電器識別メッセージCRM(0x00)に応答して、充電器2が車両1を識別するための車両識別メッセージBRMを充電器2に送信する(SQ4)。車両識別メッセージBRMは、車両1が準拠する通信シーケンスのバージョン番号、バッテリ14の種類(リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池など)、車両1の定格容量および定格電圧に関する情報を含んでもよい。充電器2は、車両識別メッセージBRMに応答して、充電器2が車両1を識別したことを示す第2充電器識別メッセージCRM(0xAA)を車両1に送信する(SQ5)。
【0045】
次に、車両1は、車両1に搭載されたバッテリ14の仕様に関する充電諸元メッセージBCPを充電器2に送信する(SQ6)。充電諸元メッセージBCPは、バッテリ14およびセル140の最高許容電圧、ならびに、バッテリ14の最高許容電流、最高許容温度、SOCおよび電圧VBに関する情報などを含み得る。充電器2は、充電諸元メッセージBCPに応答して、充電器2から出力可能な最大電力を算出するための最大出力能力メッセージCMLを車両1に送信する(SQ7)。最大出力能力メッセージCMLは、最高出力電圧および最大出力電流に加えて、最低出力電圧および最小出力電流に関する情報を含み得る。
【0046】
続いて、車両1は、車両1の充電準備がまだ完了していないことを示す第1充電準備完了メッセージBRO(0x00)を充電器2に送信する(SQ8)。さらに、車両1は、車両1の充電準備が完了したことを示す第2充電準備完了メッセージBRO(0xAA)を充電器2に送信する(SQ9)。充電器2は、第2充電準備完了メッセージBRO(0xAA)に応答して、充電器2からの出力(電力供給)準備がまだ完了していないことを示す第1出力準備完了メッセージCRO(0x00)を車両1に送信する(SQ10)。さらに、充電器2は、充電器2からの出力準備が完了したことを示す第2出力準備完了メッセージCRO(0xAA)を車両1に送信する(SQ11)。これにより充電準備段階が終了し、処理が充電段階へと進められる。
【0047】
充電段階において、車両1は、充電要求メッセージBCLを充電器2に送信するとともに、電池充電状態メッセージBCSを充電器2に送信する(SQ12)。充電要求メッセージBCLは、車両1から充電器2への要求電圧および要求電流ならびに充電モード(定電圧充電モードまたは定電流充電モード)に関する情報を含み得る。電池充電状態メッセージBCSは、バッテリ14の充電電圧VB、充電電流IBおよびSOCならびに残り充電時間の推定値に関する情報等を含み得る。一方、充電器2は、充電開始(継続)を通知するための充電器充電状態メッセージCCSを車両1に送信する(SQ13)。充電器充電状態メッセージCCSは、充電器2の出力電圧(供給電圧)および出力電流(供給電流)に関する情報を含み得る。
【0048】
その後、車両1は、車両1が充電を中止することを示す充電中止メッセージBSTを充電器2に送信する(SQ14)。充電中止メッセージBSTは、車両1が充電を中止する原因等に関する情報を含み得る。充電器2は、充電器2が充電を中止することを示す充電中止メッセージCSTを車両1に送信する(SQ15)。充電器2が充電を中止する原因等に関する情報を含み得る。これにより充電段階が終了し、処理が充電終了段階へと進められる。
【0049】
充電終了段階において、車両1は、今回の充電過程における車両1の統計データを示す統計データメッセージBSDを充電器2に送信する(SQ16)。統計データメッセージBSDは、充電中止時のバッテリ14のSOC、ならびに、バッテリ14の最低電圧、最高電圧、最低温度および最高温度に関する情報を含み得る。一方、充電器2は、今回の充電過程における充電器2の統計データを示す統計データメッセージCSDを車両1に送信する(SQ17)。統計データメッセージCSDは、今回の充電実績(たとえば、充電時間および今回の充電での充電器2からの出力電力量)に関する情報を含み得る。これにより、車両1と充電器2との間の一連の通信シーケンスが終了する。
【0050】
このように、急速充電の充電規格(新規格)に規定された標準通信シーケンスは、車両1と充電器2との間で基本的に交互にメッセージ(信号)のやり取りを行いながら、充電準備段階、充電段階、充電終了段階の順に進められる。以下では、これらの段階におけるメッセージ受信時の車両1側の処理について、充電中止メッセージCSTの受信時を例に説明する。
【0051】
<正常受信時>
図4は、充電中止メッセージCSTのデータフィールドの構造(フォーマット)の一例を示す図である。図4を参照して、充電中止メッセージCSTのデータフィールド(いわばメッセージの中身)は、たとえば4バイトのバイト長を有し、以下のような内容を表す。
【0052】
充電中止メッセージCSTの1バイト目(CST1で示す)のフィールドは、バイト長1バイトであり、充電器が充電を中止する原因(事前に設定された終了条件が成立したことによる中止、ユーザ操作による中止、充電器の故障による中止など)を表す。充電中止メッセージCSTの2バイト目(CST2で示す)のフィールドは、バイト長2バイトであり、充電器が充電を中止する故障原因(充電器の過熱故障、充電器のコネクタ故障など)を表す。充電中止メッセージCSTの4バイト目(CST4で示す)のフィールドは、バイト長1バイトであり、充電器が充電を中止するエラー原因(電流異常、電圧異常など)を表す。
【0053】
フィールドCST1に含まれる各ビットが表す内容は、新規格の通信シーケンスに定義されている。たとえば、第1ビットおよび第2ビットの両方が0であること<00>は、正常な充電中止を表す。第1ビットが0であり、第2ビットが1であること<01>は、充電器側が設定条件に達したことによる中止を表す。第1ビットが1であり、第2ビットが0であること<10>は、車両1または充電器2が信頼できない状態であることを表す。一方で、第1ビットおよび第2ビットの両方が1であること<11>は、通信シーケンスに定義されていない。他のフィールドCST2,CST4についても同様の定義が行われている。
【0054】
図5は、充電中止メッセージCSTを急速充電の充電規格(新規格)の通信シーケンスに規定された通りに受信した場合(正常受信時)の処理を説明するための概念図である。図5を参照して、車両1は、充電中止メッセージCSTを受信すると、充電中止メッセージCSTに含まれるデータフィールドを参照する。より詳細には、車両1は、充電中止メッセージCSTに含まれるデータフィールドが図4にて説明した内容(通信シーケンスに規定された内容)を表すものであるか否かを解析する。そして、車両1は、その解析結果に応じて、当該充電中止メッセージCSTを受け取るか否かを判断する。車両1は、充電中止メッセージCSTを受け取ると判断した場合に肯定応答(図5ではACKと示す)を充電器2に返すとともに、次のメッセージを充電器2に送信すべく通信シーケンスを先に進める。ただし、肯定応答ACKの返信は本開示に必須ではない。
【0055】
正常な充電器2から送信された充電中止メッセージCSTには、通信シーケンスに規定通りの内容を表すデータフィールドが含まれるため、車両1は、通信シーケンスを進めることができる。しかしながら、新規格に完全に準拠(適合)していない一部の充電器は、以下の比較例に示すように、通信シーケンスに規定された内容とは異なる内容を表すデータフィールド(言い換えると、規定されていない内容を表す、あるいは規定された内容を表さないデータフィールド)を車両1に送信する可能性がある。
【0056】
以下では、新規格に準拠した充電器2に対して、新規格に完全に準拠していない充電器を「充電器8」と記載するとともに、比較例における車両を「車両9」と記載する。充電器8および車両9の基本的な構成は、図1および図2に示した構成と同様である。
【0057】
<比較例における受信時>
図6は、比較例における充電中止メッセージCSTの受信時の処理を説明するための概念図である。図6を参照して、比較例における充電器8は、通信シーケンスに規定された内容とは異なる内容を表すデータフィールドを含む充電中止メッセージCSTを車両9に送信する。たとえば図4に示した例では、第1ビットおよび第2ビットの両方が1であって未定義のフィールドCST1を含む充電中止メッセージCSTが送信される。
【0058】
車両9は、受信した充電中止メッセージCSTの内容を参照し、その充電中止メッセージCSTに含まれるデータフィールドが通信シーケンスに規定された内容を表すものではないことが判明すると、充電中止メッセージCSTを受け取らない。そうすると、通信シーケンスに規定された通りの別の充電中止メッセージCSTが充電器8から送信されない限り、車両1では通信シーケンスを先に進められない。その結果、タイムアウト処理(後述)に至り、外部充電制御が終了してしまう。
【0059】
<本実施の形態における受信時>
図7は、本実施の形態における充電中止メッセージCSTの受信時の処理を説明するための概念図である。図7を参照して、本実施の形態においても比較例と同様に、充電器8は、通信シーケンスに規定された内容とは異なる内容を表すデータフィールドを車両1に送信する。
【0060】
本実施の形態において、車両1は、受信した充電中止メッセージCSTの内容を参照しない。つまり、車両1は、受信したメッセージが充電中止メッセージCSTであることが分かると、その充電中止メッセージCSTに含まれるデータフィールドが通信シーケンスに規定された内容を表すものであるか否かを解析することなく充電中止メッセージCSTを受け取り、通信シーケンスを先に進める。これにより、充電中止メッセージCSTの送信元の充電器8が通信シーケンスに準拠していない場合に、充電中止メッセージCSTのデータフィールドに起因する通信シーケンスの中断を防止することができる。
【0061】
図4図7では充電中止メッセージCSTを例に説明したが、他のメッセージについても同様の処理を行うことができる。その一方で、全てのメッセージに対して同様の処理を行うことは望ましくない。
【0062】
図8は、メッセージ毎の処理内容の概要をまとめた図である。図8を参照して、充電器ハンドシェイクメッセージCHMのデータフィールドに含まれる通信シーケンスのバージョン番号等の情報は、電力供給に必須の情報ではない。また、充電器充電状態メッセージCCSに含まれる充電器2の出力電圧および出力電流に関する情報も必ずしも必要ではない。さらに、統計データメッセージCSDのデータフィールドに含まれる情報も、充電実績(充電時間や充電器2からの出力電力量)に関する情報を充電終了段階で伝達するものであり、電力供給に必須の情報ではない。したがって、車両1は、充電器ハンドシェイクメッセージCHM、充電器充電状態メッセージCCSおよび充電器統計データメッセージCSDについても、車両1が充電器8からメッセージを受信したことをもって、メッセージのデータフィールド(内容または中身)については参照することなく、通信シーケンスの後続する処理を進めることができる。
【0063】
これに対し、充電器識別メッセージCRM(第1充電器識別メッセージCRM(0x00)および第2充電器識別メッセージCRM(0xAA))、最大出力能力メッセージCML、ならびに、出力準備完了メッセージCRO(第1出力準備完了メッセージCRO(0x00)および第2出力準備完了メッセージCRO(0xAA))については、車両1は、メッセージのデータフィールドを参照し、通信シーケンスの処理を先に進めるかどうかを判断する。
【0064】
図9は、本実施の形態における充電器識別メッセージCRMの受信時の処理を説明するための概念図である。図9を参照して、受信したメッセージが充電器識別メッセージCRMであることが分かると、本実施の形態においても、車両1は、充電器識別メッセージCRMのデータフィールドを参照する。具体的には、車両1は、まず、充電器8が車両1を未識別であることを示す第1充電器識別メッセージCRM(0x00)を充電器8から受信する。その後、メッセージのデータフィールドが充電器8により変更され、車両1は、充電器8が車両1を識別済みであることを示す第2充電器識別メッセージCRM(0xAA)を充電器8から受信する。そうすると、車両1は、充電器識別メッセージCRMを受け取ったとして通信シーケンスを先に進める。
【0065】
図3にて説明した通信シーケンスによれば、車両1は、第1充電器識別メッセージCRM(0x00)に応答して車両識別メッセージBRMを充電器8に送信する(SQ4)。しかし、本実施の形態では、車両1が車両識別メッセージBRMを充電器8に送信することなく充電器8から第2充電器識別メッセージCRM(0xAA)を受信した場合にも、通信シーケンスが先に進められる。
【0066】
一方、充電器8が車両1を識別済みであることが第2充電器識別メッセージCRM(0xAA)の受信により確認されてまま通信シーケンスを進めることは望ましくない。したがって、車両1は、充電器識別メッセージCRMが第1充電器識別メッセージCRM(0x00)から第2充電器識別メッセージCRM(0xAA)へと切り替えられていない場合には、通信シーケンスを先に進めず、タイムアウト処理の発生を許容する。
【0067】
なお、図9では充電器識別メッセージCRMを例に説明したが、出力準備完了メッセージCROについても同様の処理が実行される。
【0068】
図10は、本実施の形態における最大出力能力メッセージCMLの受信時の処理を説明するための概念図である。図10を参照して、受信したメッセージが最大出力能力メッセージCMLであることが分かると、車両1は、最大出力能力メッセージCMLのデータフィールドを参照する。具体的には、車両1は、最大出力能力メッセージCMLのデータフィールドに含まれる、充電器8から出力可能な最大電力を算出するための情報が通信シーケンスに規定されたものであるかどうかを解析する。
【0069】
最大出力能力メッセージCMLに含まれる情報は、具体的には充電器8の最大最高出力電圧および最大出力電流ならびに最低出力電圧および最小出力電流に関する情報であり、車両1と充電器8との間での安全な電力授受のための充電条件の決定に必要不可欠である。したがって、車両1は、充電器8から受信した最大出力能力メッセージCMLのデータフィールドに含まれる情報が通信シーケンスに規定されたものである場合には通信シーケンスを先に進める一方で、上記情報が通信シーケンスに規定されたものでない場合には通信シーケンスを先に進めない。
【0070】
なお、充電器ハンドシェイクメッセージCHMは本開示に係る「第1の信号」に相当し、充電器充電状態メッセージCCSは本開示に係る「第2の信号」に相当し、充電中止メッセージCSTは本開示に係る「第3の信号」に相当し、出力準備完了メッセージCROは本開示に係る「第4の信号」に相当する。本実施の形態では、上記4つの信号の全てに対して、その内容を参照することなく通信シーケンスを進めるが、上記4つの信号のうちのいずれか1つ~3つのみに対して当該処理を適用してもよい。つまり、上記4つの信号のうちの少なくとも1つに当該処理を適用すればよい。
【0071】
また、充電器識別メッセージCRMは本開示に係る「第5の信号」に相当し、最大出力能力メッセージCMLは本開示に係る「第6の信号」に相当し、出力準備完了メッセージCROは本開示に係る「第7の信号」に相当する。
【0072】
<外部充電制御フロー>
図11は、本実施の形態における外部充電制御の通信シーケンスを示すフローチャートである。図11を参照して、このフローチャートは、車両1と充電器8(充電器2であってもよい)とが充電ケーブル3により接続された状態で低圧電源が投入され、車両1と充電器8との間のCAN通信等が可能となった場合に実行される。各ステップ(以下、ステップをSと略す)は、ECU10によるソフトウェア処理により実現されるが、ECU10内に作製されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。
【0073】
図11を参照して、S1において、ECU10は、充電器8からメッセージを受信したか否かを判定する。メッセージを受信すると(S1においてYES)、ECU10は、そのメッセージが特定のメッセージであるか否かを判定する(S2)。
【0074】
受信したメッセージが特定のメッセージ、すなわち、充電中止メッセージCST、充電器ハンドシェイクメッセージCHM、充電器充電状態メッセージCCS、および、充電器統計データメッセージCSDのうちのいずれかである場合(S2においてNO)には、ECU10は、そのメッセージのデータフィールドに含まれる情報が必須のものではないとして、データフィールドを参照することなく通信シーケンスを進める(S3)。その後、処理がS1に戻される。
【0075】
これに対し、受信したメッセージが特定のメッセージ以外の他のメッセージ、すなわち、充電器識別メッセージCRM、最大出力能力メッセージCML、および、出力準備完了メッセージCROのうちのいずれかである場合(S2においてYES)には、ECU10は、そのメッセージのデータフィールドに含まれる情報を取得するためにデータフィールドを参照する(S4)。そして、ECU10は、データフィールドが通信シーケンスに規定された内容を表すものであるか否かを解析する(S5)。データフィールドの内容が規定された内容であるか否かについては図9または図10にて詳細に説明したので、詳細な説明は繰り返さない。
【0076】
受信したメッセージのデータフィールドが通信シーケンスに規定された内容を表すものである場合(S5においてYES)、ECU10は、処理をS3に進め、後続する通信シーケンスを実行する。これに対し、受信したメッセージのデータフィールドが通信シーケンスに規定された内容を表すものでない場合(S5においてNO)、ECU10は、外部充電制御がタイムアウトに至ったかどうか判定する(S6)。
【0077】
図11に示すフローの開始時からの経過時間が予め定められたタイムアウト時間(たとえば数十秒)に達すると(S6においてYES)、ECU10は、外部充電制御を正常には実行できなかったとして処理を終了する。外部充電制御がタイムアウトに至っていない場合(S6においてNO)には、処理がS1に戻される。
【0078】
以上のように、本実施の形態によれば、データフィールドが電力授受に必須の内容を表すものではない特定のメッセージ(CHM,CCS,CST,CSD)については、車両1は、当該メッセージのデータフィールド(メッセージの中身または内容)に拘わらず、通信シーケンスを先に進める。これにより、充電器8側が新規格の通信シーケンスに完全には準拠していない場合であっても、データフィールドの誤りに起因する通信シーケンスの中断を防止することができる。一方、データフィールドが電力授受に必須の内容を表す他のメッセージ(CRM,CML,CRO)については、車両1は、当該メッセージのデータフィールドを参照し、通信シーケンスを先に進めるかどうかを判断する。これにより、通信リンクの確立を確認したり(CRM)、電力授受の安全性を確保したり(CML,CRO)することができる。
【0079】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
100 充電システム、1,9 車両、11 インレット、121 電圧センサ、122 電流センサ、131,132 充電リレー、133,134 SMR、14 バッテリ、140 セル、141 電圧センサ、142 電流センサ、143 電池温度センサ、16 PCU、17 モータジェネレータ、181 動力伝達ギヤ、182 駆動輪、10 ECU、101 CPU、102 メモリ、103 入出力ポート、2,8 充電器、20 制御回路、21 AC/DC変換器、22 電圧センサ、3 充電ケーブル、31 コネクタ、4 系統電源、ACL,NL2,PL2 電力線、NL0,PL0 給電線,NL1,PL1 充電線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11