IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許-遠心圧縮機 図1
  • 特許-遠心圧縮機 図2
  • 特許-遠心圧縮機 図3
  • 特許-遠心圧縮機 図4
  • 特許-遠心圧縮機 図5
  • 特許-遠心圧縮機 図6
  • 特許-遠心圧縮機 図7
  • 特許-遠心圧縮機 図8
  • 特許-遠心圧縮機 図9
  • 特許-遠心圧縮機 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20231024BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F04D29/44 P
F04D29/66 H
F04D29/66 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022503121
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048517
(87)【国際公開番号】W WO2021171772
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2020031838
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米村 淳
(72)【発明者】
【氏名】崎坂 亮太
(72)【発明者】
【氏名】金子 雄大
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆弘
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10502232(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2019/0264710(US,A1)
【文献】米国特許第04122668(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16;17/00-19/02;21/00-25/16;29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気流路を有するハウジングと、
前記吸気流路に配されるコンプレッサインペラと、
前記コンプレッサインペラよりも吸気の上流側に配される可動部材と、
前記可動部材のうち前記吸気の下流側の面以外に形成された溝と、
を備え
前記可動部材は、前記コンプレッサインペラの軸方向または径方向において、互いに対向しかつ前記溝を画定する、一対の面を含む、
遠心圧縮機。
【請求項2】
前記溝は、前記可動部材のうち前記吸気の上流側の面に形成される、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記溝は、前記可動部材のうち径方向外側の面に形成される、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記溝は、前記コンプレッサインペラの周方向に延在する、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機に関する。本出願は2020年2月27日に提出された日本特許出願第2020-31838号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、吸気流路が形成されたコンプレッサハウジングを備える。吸気流路には、コンプレッサインペラが配される。コンプレッサインペラに流入する空気の流量が減少すると、コンプレッサインペラで圧縮された空気が吸気流路を逆流し、サージングと呼ばれる現象が発生する。
【0003】
特許文献1には、コンプレッサハウジングに絞り機構を設ける遠心圧縮機について開示がある。絞り機構は、コンプレッサインペラに対し、吸気の上流側に配される。絞り機構は、可動部材を備える。可動部材は、吸気流路内に突出する突出位置と、吸気流路から退避する退避位置とに移動可能に構成される。絞り機構は、可動部材を吸気流路内に突出させることで、吸気流路の流路断面積を小さくする。可動部材が吸気流路内に突出すると、吸気流路内を逆流する空気は、可動部材により堰き止められる。吸気流路内を逆流する空気が堰き止められることで、サージングが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第3530954号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の可動部材では、コンプレッサインペラと対向する面において、吸気流路内に突出する領域に溝が形成される。この溝には、サージング発生時に吸気流路内を逆流する空気が流入する。逆流する空気が溝に流入すると、圧損が生じ、コンプレッサ効率を低下させる要因となる。
【0006】
本開示の目的は、コンプレッサ効率の低下を抑制することが可能な遠心圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る遠心圧縮機は、吸気流路を有するハウジングと、吸気流路に配されるコンプレッサインペラと、コンプレッサインペラよりも吸気の上流側に配される可動部材と、可動部材のうち吸気の下流側の面以外に形成された溝と、を備え、可動部材は、コンプレッサインペラの軸方向または径方向において、互いに対向しかつ溝を画定する、一対の面を含む
【0008】
溝は、可動部材のうち吸気の上流側の面に形成されてもよい。
【0009】
溝は、可動部材のうち径方向外側の面に形成されてもよい。
【0010】
溝は、コンプレッサインペラの周方向に延在してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、コンプレッサ効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、過給機の概略断面図である。
図2図2は、図1の破線部分の抽出図である。
図3図3は、リンク機構を構成する部材の分解斜視図である。
図4図4は、図2のIV-IV線断面図である。
図5図5は、リンク機構の動作を説明するための第1の図である。
図6図6は、リンク機構の動作を説明するための第2の図である。
図7図7は、リンク機構の動作を説明するための第3の図である。
図8図8は、本実施形態にかかる第2可動部材の概略斜視図である。
図9図9は、突出位置状態における第2可動部材の湾曲部の概略断面図である。
図10図10は、変形例にかかる第2可動部材の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、過給機TCの概略断面図である。図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。過給機TCのうち、後述するコンプレッサハウジング100側は、遠心圧縮機CCとして機能する。以下では、遠心圧縮機CCは、後述するタービンインペラ8により駆動されるものとして説明する。ただし、これに限定されず、遠心圧縮機CCは、不図示のエンジンにより駆動されてもよいし、不図示の電動機(モータ)により駆動されてもよい。このように、遠心圧縮機CCは、過給機TC以外の装置に組み込まれてもよいし、単体であってもよい。
【0015】
図1に示すように、過給機TCは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング2と、タービンハウジング4と、コンプレッサハウジング(ハウジング)100と、リンク機構200とを含む。リンク機構200の詳細については、後述する。ベアリングハウジング2の左側には、締結ボルト3によってタービンハウジング4が連結される。ベアリングハウジング2の右側には、締結ボルト5によってコンプレッサハウジング100が連結される。
【0016】
ベアリングハウジング2には、収容孔2aが形成される。収容孔2aは、ベアリングハウジング2を過給機TCの左右方向に貫通する。収容孔2aには、軸受6が配される。図1では、軸受6の一例としてフルフローティング軸受を示す。ただし、軸受6は、セミフローティング軸受や転がり軸受など、他のラジアル軸受であってもよい。収容孔2aには、シャフト7の一部が配される。シャフト7は、軸受6によって回転可能に支持される。シャフト7の左端部には、タービンインペラ8が設けられる。タービンインペラ8は、タービンハウジング4内に回転可能に収容される。シャフト7の右端部には、コンプレッサインペラ9が設けられる。コンプレッサインペラ9は、コンプレッサハウジング100内に回転可能に収容される。
【0017】
コンプレッサハウジング100には、吸気口10が形成される。吸気口10は、過給機TCの右側に開口する。吸気口10は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング100の間には、ディフューザ流路11が形成される。ディフューザ流路11は、空気を加圧する。ディフューザ流路11は、シャフト7(コンプレッサインペラ9)の径方向(以下、単に径方向という)の内側から外側に向けて環状に形成される。ディフューザ流路11は、径方向の内側において、コンプレッサインペラ9を介して吸気口10に連通している。
【0018】
また、コンプレッサハウジング100には、コンプレッサスクロール流路12が形成される。コンプレッサスクロール流路12は、環状に形成される。コンプレッサスクロール流路12は、例えば、コンプレッサインペラ9よりも径方向の外側に位置する。コンプレッサスクロール流路12は、不図示のエンジンの吸気口、および、ディフューザ流路11と連通している。コンプレッサインペラ9が回転すると、吸気口10からコンプレッサハウジング100内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ9の翼間を流通する過程において、加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路11およびコンプレッサスクロール流路12で加圧される。加圧された空気は、不図示の吐出口から流出し、エンジンの吸気口に導かれる。
【0019】
このように、過給機TCは、遠心圧縮機(コンプレッサ)CCを備える。遠心圧縮機CCは、コンプレッサハウジング100と、コンプレッサインペラ9と、後述するリンク機構200とを含む。
【0020】
タービンハウジング4には、排気口13が形成される。排気口13は、過給機TCの左側に開口する。排気口13は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。タービンハウジング4には、連通流路14と、タービンスクロール流路15とが形成される。タービンスクロール流路15は、タービンインペラ8よりも径方向の外側に位置する。連通流路14は、タービンインペラ8とタービンスクロール流路15との間に位置する。
【0021】
タービンスクロール流路15は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれる。連通流路14は、タービンスクロール流路15と排気口13とを接続する。ガス流入口からタービンスクロール流路15に導かれた排気ガスは、連通流路14およびタービンインペラ8の翼間を介して排気口13に導かれる。排気ガスは、その流通過程においてタービンインペラ8を回転させる。
【0022】
タービンインペラ8の回転力は、シャフト7を介してコンプレッサインペラ9に伝達される。上記のとおりに、空気は、コンプレッサインペラ9の回転力によって加圧されて、エンジンの吸気口に導かれる。
【0023】
図2は、図1の破線部分の抽出図である。図2に示すように、コンプレッサハウジング100は、第1ハウジング部材110と、第2ハウジング部材120とを含む。第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120よりも、図2中、右側(ベアリングハウジング2から離隔する側)に位置する。第2ハウジング部材120は、ベアリングハウジング2に接続される。第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120に接続される。
【0024】
第1ハウジング部材110は、大凡円筒形状である。第1ハウジング部材110には、貫通孔111が形成される。第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120と近接(接続)する側に端面112を有する。また、第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120から離隔する側に端面113を有する。端面113には、吸気口10が形成される。貫通孔111は、シャフト7(コンプレッサインペラ9)の回転軸方向(以下、単に回転軸方向という)に沿って、端面112から端面113(吸気口10)まで延在する。つまり、貫通孔111は、第1ハウジング部材110を回転軸方向に貫通している。貫通孔111は、端面113において吸気口10を有する。
【0025】
貫通孔111は、平行部111aと、縮径部111bとを有する。平行部111aは、縮径部111bよりも端面113側に位置する。平行部111aの内径は、回転軸方向に亘って大凡一定である。縮径部111bは、平行部111aよりも端面112側に位置する。縮径部111bは、平行部111aと連続する。縮径部111bの平行部111aと連続する部位の内径は、平行部111aの内径と大凡等しい。縮径部111bの内径は、平行部111aから離隔するほど(端面112に近づくほど)、小さくなる。
【0026】
端面112には、切り欠き部112aが形成される。切り欠き部112aは、端面112から端面113側に窪む。切り欠き部112aは、端面112の外周部に形成される。切り欠き部112aは、回転軸方向から見たとき、例えば大凡環状である。
【0027】
また、端面112には、収容室ACが形成される。収容室ACは、第1ハウジング部材110のうちコンプレッサインペラ9の羽根の前縁端(リーディングエッジ)LEよりも吸気口10側に形成される。収容室ACは、後述する収容溝112b、軸受穴112d、収容穴115を含む。
【0028】
収容溝112bは、端面112に形成される。収容溝112bは、切り欠き部112aと貫通孔111との間に位置する。収容溝112bは、端面112から端面113側に窪む。収容溝112bは、回転軸方向から見たとき、例えば大凡環状である。収容溝112bは、径方向内側において貫通孔111と連通する。
【0029】
収容溝112bのうち端面113側の壁面(収容室対向面)112cには、軸受穴112dが形成される。軸受穴112dは、壁面112cから端面113側に向かって回転軸方向に延在する。軸受穴112dは、シャフト7(コンプレッサインペラ9)の回転方向(以下、単に回転方向、周方向という)に離隔して2つ設けられる。2つの軸受穴112dは、回転方向に180度ずれた位置に配されている。
【0030】
第2ハウジング部材120には、貫通孔121が形成される。第2ハウジング部材120は、第1ハウジング部材110と近接(接続)する側に端面122を有する。また、第2ハウジング部材120は、第1ハウジング部材110から離隔する側(ベアリングハウジング2と接続する側)に端面123を有する。貫通孔121は、回転軸方向に沿って、端面122から端面123まで延在する。つまり、貫通孔121は、第2ハウジング部材120を回転軸方向に貫通する。
【0031】
貫通孔121のうち端面122側の端部の内径は、貫通孔111のうち端面112側の端部の内径と大凡等しい。貫通孔121の内壁には、シュラウド部121aが形成される。シュラウド部121aは、コンプレッサインペラ9に対して径方向の外側から対向する。コンプレッサインペラ9の外径は、コンプレッサインペラ9の羽根の前縁端(リーディングエッジ)LEから離隔するほど大きくなる。シュラウド部121aの内径は、端面122から離隔するほど(端面123に近接するほど)大きくなる。
【0032】
端面122には、収容溝122aが形成される。収容溝122aは、端面122から端面123側に窪む。収容溝122aは、回転軸方向から見たとき、例えば大凡環状である。収容溝122aには、第1ハウジング部材110が挿入される。収容溝122aのうち端面123側の壁面122bに、第1ハウジング部材110の端面112が当接する。第1ハウジング部材110(壁面112c)と第2ハウジング部材120(壁面122b)との間には、収容室ACが形成される。
【0033】
第1ハウジング部材110の貫通孔111と、第2ハウジング部材120の貫通孔121によって、吸気流路130が形成される。つまり、吸気流路130は、コンプレッサハウジング100に形成される。吸気流路130は、不図示のエアクリーナから吸気口10を介してディフューザ流路11まで延在する。吸気流路130のエアクリーナ側(吸気口10側)を吸気の上流側とし、吸気流路130のディフューザ流路11側を吸気の下流側とする。
【0034】
コンプレッサインペラ9は、吸気流路130に配される。吸気流路130(貫通孔111、121)の回転軸方向に垂直な断面形状は、例えば、コンプレッサインペラ9の回転軸を中心とする円形である。ただし、吸気流路130の断面形状は、これに限定されず、例えば、楕円形状であってもよい。
【0035】
第1ハウジング部材110の切り欠き部112aには、不図示のシール材が配される。シール材により、第1ハウジング部材110と第2ハウジング部材120との隙間を流通する空気の流量が抑制される。ただし、切り欠き部112aおよびシール材の構成は、必須ではない。
【0036】
図3は、リンク機構200を構成する部材の分解斜視図である。図3では、コンプレッサハウジング100のうち、第1ハウジング部材110のみが示される。図3に示すように、リンク機構200は、第1ハウジング部材110、第1可動部材210、第2可動部材220、連結部材230、ロッド240を含む。リンク機構200は、回転軸方向において、コンプレッサインペラ9より吸気流路130の吸気口10側(上流側)に配される。
【0037】
第1可動部材210は、収容溝112b(収容室AC)に配される。具体的には、第1可動部材210は、回転軸方向において、収容溝112bの壁面112cと、収容溝122aの壁面122b(図2参照)との間に配される。
【0038】
第1可動部材210は、吸気上流面S1と、吸気下流面S2と、径方向外面S3と、径方向内面S4とを有する。吸気上流面S1は、第1可動部材210のうち吸気の上流側(吸気流路130の上流側)の面である。吸気下流面S2は、第1可動部材210のうち吸気の下流側(吸気流路130下流側)の面である。径方向外面S3は、第1可動部材210のうちコンプレッサインペラ9(図2参照)の径方向外側の面である。径方向内面S4は、第1可動部材210のうちコンプレッサインペラ9の径方向内側の面である。
【0039】
第1可動部材210は、本体部B1を有する。本体部B1は、湾曲部211と、アーム部212とを含む。湾曲部211は、コンプレッサインペラ9の周方向に延在する。湾曲部211は、大凡半円弧形状である。湾曲部211のうち、周方向の第1端面211aおよび第2端面211bは、径方向および回転軸方向に平行に延在する。ただし、第1端面211aおよび第2端面211bは、径方向および回転軸方向に対し、傾斜していてもよい。
【0040】
湾曲部211の第1端面211a側には、アーム部212が設けられる。アーム部212は、湾曲部211の径方向外面S3から径方向の外側に延在する。また、アーム部212は、径方向に対して傾斜する方向(第2可動部材220側)に延在する。
【0041】
第2可動部材220は、収容溝112b(収容室AC)に配される。具体的には、第2可動部材220は、回転軸方向において、収容溝112bの壁面112cと、収容溝122aの壁面122b(図2参照)との間に配される。
【0042】
第2可動部材220は、吸気上流面S1と、吸気下流面S2と、径方向外面S3と、径方向内面S4とを有する。吸気上流面S1は、第2可動部材220のうち吸気の上流側(吸気流路130の上流側)の面である。吸気下流面S2は、第2可動部材220のうち吸気の下流側(吸気流路130下流側)の面である。径方向外面S3は、第2可動部材220のうちコンプレッサインペラ9(図2参照)の径方向外側の面である。径方向内面S4は、第2可動部材220のうちコンプレッサインペラ9の径方向内側の面である。
【0043】
第2可動部材220は、本体部B2を有する。本体部B2は、湾曲部221と、アーム部222とを含む。湾曲部221は、コンプレッサインペラ9の周方向に延在する。湾曲部221は、大凡半円弧形状である。湾曲部221のうち、周方向の第1端面221aおよび第2端面221bは、径方向および回転軸方向に平行に延在する。ただし、第1端面221aおよび第2端面221bは、径方向および回転軸方向に対し、傾斜していてもよい。
【0044】
湾曲部221の第1端面221a側には、アーム部222が設けられる。アーム部222は、湾曲部221の径方向外面S3から径方向の外側に延在する。また、アーム部222は、径方向に対して傾斜する方向(第1可動部材210側)に延在する。
【0045】
湾曲部211は、湾曲部221とコンプレッサインペラ9の回転中心(吸気流路130)を挟んで対向する。湾曲部211の第1端面211aは、湾曲部221の第2端面221bと周方向に対向する。湾曲部211の第2端面211bは、湾曲部221の第1端面221aと周方向に対向する。第1可動部材210および第2可動部材220は、詳しくは後述するように、湾曲部211、221が径方向に移動可能に構成される。
【0046】
連結部材230は、第1可動部材210および第2可動部材220と連結する。連結部材230は、第1可動部材210、第2可動部材220よりも吸気口10側に位置する。連結部材230は、大凡円弧形状である。連結部材230の周方向における一端側に第1軸受穴231が形成され、他端側に第2軸受穴232が形成される。第1軸受穴231および第2軸受穴232は、連結部材230のうち、第1可動部材210、第2可動部材220側の端面233に開口する。第1軸受穴231および第2軸受穴232は、回転軸方向に延在する。ここでは、第1軸受穴231および第2軸受穴232は、非貫通の穴で構成される。ただし、第1軸受穴231および第2軸受穴232は、連結部材230を回転軸方向に貫通してもよい。
【0047】
連結部材230の第1軸受穴231と第2軸受穴232の間に、ロッド接続部234が形成される。ロッド接続部234は、連結部材230のうち、第1可動部材210、第2可動部材220と反対側の端面235に形成される。ロッド接続部234は、端面235から回転軸方向に突出する。ロッド接続部234は、例えば、大凡円柱形状である。
【0048】
ロッド240は、大凡円柱形状である。ロッド240の一端部に平面部241が形成され、他端部に連結部243が形成される。平面部241は、回転軸方向に大凡垂直な面方向に延在する。平面部241には、軸受穴242が開口する。軸受穴242は、回転軸方向に延在する。連結部243は、連結孔243aを有する。連結部243(連結孔243a)には、後述するアクチュエータが連結される。軸受穴242は、例えば、回転軸方向およびロッド240の軸方向に垂直な方向の長さが、ロッド240の軸方向の長さよりも長い長穴であってもよい。
【0049】
ロッド240の平面部241と連結部243の間に、ロッド大径部244と、2つのロッド小径部245とが形成される。ロッド大径部244は、2つのロッド小径部245の間に配される。2つのロッド小径部245のうち平面部241側のロッド小径部245は、ロッド大径部244と平面部241とを接続する。2つのロッド小径部245のうち連結部243側のロッド小径部245は、ロッド大径部244と連結部243とを接続する。ロッド大径部244の外径は、2つのロッド小径部245の外径よりも大きい。
【0050】
第1ハウジング部材110には、挿通穴114が形成される。挿通穴114の一端114aは、第1ハウジング部材110の外部に開口する。挿通穴114は、例えば、回転軸方向に垂直な方向に延在する。挿通穴114は、貫通孔111(吸気流路130)よりも径方向の外側に位置する。挿通穴114には、ロッド240の平面部241側が挿通される。ロッド大径部244は、挿通穴114の内壁面によってガイドされる。ロッド240は、挿通穴114の中心軸方向(ロッド240の中心軸方向)以外の移動が規制される。
【0051】
第1ハウジング部材110には、収容穴115が形成される。収容穴115は、収容溝112bの壁面112cに開口する。収容穴115は、壁面112cから吸気口10側に窪む。収容穴115は、挿通穴114よりも吸気口10から離隔する側(第2ハウジング部材120側)に位置する。収容穴115は、回転軸方向から見たとき、大凡円弧形状である。収容穴115は、連結部材230よりも周方向に長く延在する。収容穴115は、軸受穴112dから周方向に離隔する。
【0052】
第1ハウジング部材110には、連通孔116が形成される。連通孔116は、挿通穴114と収容穴115とを接続する。連通孔116は、収容穴115のうち、周方向の大凡中間部分に形成される。連通孔116は、例えば、挿通穴114の延在方向に大凡平行に延在する長孔である。連通孔116の長手方向(延在方向)の幅は、短手方向(延在方向と垂直な方向)の幅よりも大きい。挿通穴114の短手方向の幅は、連結部材230のロッド接続部234の外径よりも大きい。
【0053】
連結部材230は、収容穴115(収容室AC)に収容される。このように、第1可動部材210、第2可動部材220、連結部材230は、第1ハウジング部材110に形成された収容室AC内に配される。収容穴115は、連結部材230よりも周方向の長さが長く、径方向の幅も大きい。そのため、連結部材230は、収容穴115の内部で、回転軸方向に垂直な面方向への移動が許容される。
【0054】
ロッド接続部234は、連通孔116から挿通穴114に挿通される。挿通穴114には、ロッド240の平面部241が挿通されている。平面部241の軸受穴242は、連通孔116に対向している。ロッド接続部234は、軸受穴242に挿通される(接続される)。ロッド接続部234は、軸受穴242に支持される。
【0055】
図4は、図2のIV-IV線断面図である。図4に破線で示すように、第1可動部材210は、連結軸部213および回転軸部214を有する。連結軸部213および回転軸部214は、第1可動部材210のうち、壁面112cと対向する吸気上流面S1(図2参照)から、回転軸方向に突出する。連結軸部213および回転軸部214は、図4中、奥側に延在する。回転軸部214は、連結軸部213と平行に延在する。連結軸部213および回転軸部214は、大凡円柱形状である。
【0056】
連結軸部213の外径は、連結部材230の第1軸受穴231の内径よりも小さい。連結軸部213は、第1軸受穴231に挿通される。連結軸部213は、第1軸受穴231に回転可能に支持される。回転軸部214の外径は、第1ハウジング部材110の軸受穴112dの内径よりも小さい。回転軸部214は、2つの軸受穴112dのうち鉛直上側(ロッド240に近接する側)の軸受穴112dに挿通される。回転軸部214は、軸受穴112dに回転可能に支持される。
【0057】
第2可動部材220は、連結軸部223および回転軸部224を有する。連結軸部223および回転軸部224は、第2可動部材220のうち、壁面112cと対向する吸気上流面S1(図2参照)から、回転軸方向に突出する。連結軸部223および回転軸部224は、図4中、奥側に延在する。回転軸部224は、連結軸部223と平行に延在する。連結軸部223および回転軸部224は、大凡円柱形状である。
【0058】
連結軸部223の外径は、連結部材230の第2軸受穴232の内径よりも小さい。連結軸部223は、第2軸受穴232に挿通される。連結軸部223は、第2軸受穴232に回転可能に支持される。回転軸部224の外径は、第1ハウジング部材110の軸受穴112dの内径よりも小さい。回転軸部224は、2つの軸受穴112dのうち鉛直下側(ロッド240から離隔する側)の軸受穴112dに挿通される。回転軸部224は、軸受穴112dに回転可能に支持される。
【0059】
このように、リンク機構200は、4節リンク機構により構成される。4つのリンク(節)は、第1可動部材210、第2可動部材220、第1ハウジング部材110、連結部材230である。リンク機構200が、4節リンク機構により構成されることから、リンク機構200は、限定連鎖となり1自由度であって制御が容易である。
【0060】
図5は、リンク機構200の動作を説明するための第1の図である。以下の図5図6図7では、リンク機構200を吸気口10側から見た図が示される。図5に示すように、ロッド240の連結部243には、アクチュエータ250の駆動シャフト251の端部が連結される。
【0061】
図5に示す配置では、第1可動部材210と第2可動部材220は、互いに当接する。図2および図4に示すように、第1可動部材210のうち、径方向の内側の部位である突出部215は、吸気流路130内に突出(露出)する。第2可動部材220のうち、径方向の内側の部位である突出部225は、吸気流路130内に突出(露出)する。この状態における第1可動部材210、第2可動部材220の位置を、突出位置(あるいは絞り位置)という。
【0062】
図5に示すように、突出位置では、突出部215のうち、周方向の端部215a、215bは、突出部225のうち、周方向の端部225a、225bとそれぞれ当接する。突出部215と突出部225によって環状孔260が形成される。環状孔260の内径は、突出部215、225が突出する位置における吸気流路130の内径よりも小さい。環状孔260の内径は、例えば、吸気流路130のいずれの位置の内径よりも小さい。
【0063】
図6は、リンク機構200の動作を説明するための第2の図である。図7は、リンク機構200の動作を説明するための第3の図である。アクチュエータ250は、回転軸方向と交差する方向(図6図7中、上下方向)にロッド240を直動させる。図6および図7では、ロッド240は、図5に示す位置から上側に移動する。図6の配置よりも図7の配置の方が、図5の配置に対するロッド240の移動量が大きい。
【0064】
ロッド240が移動すると、連結部材230は、ロッド接続部234を介して、図6図7中、上側に移動する。このとき、連結部材230は、ロッド接続部234を回転中心とする回転が許容される。また、ロッド接続部234の外径に対し、ロッド240の軸受穴242の内径は、僅かに遊びを有する。そのため、連結部材230は、回転軸方向に垂直な面方向の移動が僅かに許容される。
【0065】
上述したように、リンク機構200は、4節リンク機構である。連結部材230、第1可動部材210および第2可動部材220は、第1ハウジング部材110に対して、1自由度の挙動を示す。具体的には、連結部材230は、上記の許容範囲内で、図6図7中、反時計回りに僅かに回転しつつ、左右方向に僅かに揺れ動く。
【0066】
第1可動部材210のうち、回転軸部214は、第1ハウジング部材110に支持される。回転軸部214は、回転軸方向に垂直な面方向の移動が規制される。連結軸部213は、連結部材230に支持される。連結部材230の移動が許容されることから、連結軸部213は、回転軸方向に垂直な面方向に移動可能に設けられる。その結果、連結部材230の移動に伴って、第1可動部材210は、回転軸部214を回転中心として、図6図7中、時計回り方向に回転する。
【0067】
同様に、第2可動部材220のうち、回転軸部224は、第1ハウジング部材110に支持される。回転軸部224は、回転軸方向に垂直な面方向の移動が規制される。連結軸部223は、連結部材230に支持される。連結部材230の移動が許容されることから、連結軸部223は、回転軸方向に垂直な面方向へ移動可能に設けられる。その結果、連結部材230の移動に伴って、第2可動部材220は、回転軸部224を回転中心として、図6図7中、時計回り方向に回転する。
【0068】
こうして、第1可動部材210と第2可動部材220は、図6図7の順に、互いに離隔する方向に移動する。突出部215、225は、突出位置よりも径方向の外側に移動する(退避位置)。退避位置では、例えば、突出部215、225は、吸気流路130の内壁面と面一となるか、吸気流路130の内壁面よりも径方向の外側に位置する。退避位置から突出位置に移動するときは、図7図6図5の順に、第1可動部材210と第2可動部材220が互いに近づいて当接する。このように、第1可動部材210、第2可動部材220は、回転軸部214、224を回転中心とする回転角度に応じて、突出位置と退避位置とに切り替わる。
【0069】
このように、第1可動部材210および第2可動部材220は、第1可動部材210および第2可動部材220が吸気流路130内に突出する突出位置と、第1可動部材210および第2可動部材220が吸気流路130内に露出(突出)しない退避位置とに移動可能に構成される。本実施形態では、第1可動部材210および第2可動部材220は、コンプレッサインペラ9の径方向に移動する。ただし、これに限定されず、第1可動部材210および第2可動部材220は、コンプレッサインペラ9の回転軸周り(周方向)に回転してもよい。例えば、第1可動部材210および第2可動部材220は、2以上の羽根を有するシャッター羽根であってもよい。
【0070】
第1可動部材210および第2可動部材220は、退避位置に位置するとき(以下、退避位置状態ともいう)、吸気流路130内に突出しないため、吸気流路130を流れる吸気(空気)の圧損を小さくすることができる。
【0071】
また、図2に示すように、第1可動部材210および第2可動部材220では、突出位置において、突出部215、225が吸気流路130内に配される。第1可動部材210および第2可動部材220が突出位置に位置すると、吸気流路130の流路断面積が小さくなる。
【0072】
コンプレッサインペラ9に流入する空気の流量が減少するに従い、コンプレッサインペラ9で圧縮された空気が吸気流路130を逆流する(すなわち、下流側から上流側に向かって空気が流れる)場合がある。
【0073】
図2に示すように、第1可動部材210および第2可動部材220が突出位置に位置するとき(以下、突出位置状態ともいう)、突出部215、225は、コンプレッサインペラ9の前縁端LEの最外径端よりも径方向内側に位置する。これにより、吸気流路130内を逆流する空気は、突出部215、225に堰き止められる。したがって、第1可動部材210および第2可動部材220は、吸気流路130内の空気の逆流を抑制することができる。
【0074】
また、吸気流路130の流路断面積が小さくなることから、コンプレッサインペラ9に流入する空気の流速が増大する。その結果、遠心圧縮機CCのサージングの発生を抑制することができる。つまり、本実施形態の遠心圧縮機CCは、突出位置状態を形成することにより、遠心圧縮機CCの作動領域を小流量側に拡大することができる。
【0075】
このように、第1可動部材210および第2可動部材220は、吸気流路130を絞る絞り部材として構成される。つまり、本実施形態において、リンク機構200は、吸気流路130を絞る絞り機構として構成される。第1可動部材210および第2可動部材220は、リンク機構200が駆動されることで、吸気流路130の流路断面積を変化させることができる。
【0076】
リンク機構200の軽量化のため、第1可動部材210および第2可動部材220は、樹脂材料で形成される場合がある。第1可動部材210および第2可動部材220は、例えば、射出成型により成型される。第1可動部材210および第2可動部材220を射出成型により成型すると、第1可動部材210および第2可動部材220にヒケ(窪み)や反りが生じる場合がある。第1可動部材210および第2可動部材220にヒケや反りが生じた場合、第1可動部材210および第2可動部材220が他の部材や壁面と干渉して作動不良に繋がるおそれがある。
【0077】
そこで、本実施形態のリンク機構200は、図4中、一点鎖線で示すように第1可動部材210に溝310を備える。また、リンク機構200は、第2可動部材220に溝320を備える。本実施形態では、第1可動部材210および第2可動部材220は、樹脂材料で形成される。溝310、320は、第1可動部材210および第2可動部材220の射出成型時に形成される。
【0078】
図8は、本実施形態にかかる第2可動部材220の概略斜視図である。図8に示すように、第2可動部材220には、溝320が形成される。溝320は、湾曲部221およびアーム部222に形成される。溝320は、連結軸部223および回転軸部224の間にも形成される。なお、本実施形態では、第2可動部材220の溝320について詳細に説明する。本実施形態では、第1可動部材210の溝310は、第2可動部材220の溝320と同様の構成を有する。そのため、以下では、第2可動部材220の溝320について詳細に説明し、第1可動部材210の溝310については説明を省略する。
【0079】
溝320は、吸気上流面S1に形成される。溝320と湾曲部221の第1端面221aとの間には、第1肉厚部330が形成される。溝320と湾曲部221の第2端面221bとの間には、第2肉厚部340が形成される。コンプレッサインペラ9の周方向において、第1肉厚部330の厚さ(幅)と、第2肉厚部340の厚さ(幅)は等しい。
【0080】
この文脈では、等しいとは、完全に等しい場合と、許容誤差(加工精度や組付誤差等)の範囲内で完全に等しい場合からずれている場合とを含む意味である。以下、等しい、または、同じとは、完全に等しい(同じ)場合と、許容誤差(加工精度や組付誤差等)の範囲内で完全に等しい(同じ)場合からずれている場合とを含む意味である。
【0081】
図9は、突出位置状態における第2可動部材220の湾曲部221の概略断面図である。図9に示すように、溝320と吸気下流面S2との間には、第3肉厚部350が形成される。溝320と径方向外面S3との間には、第4肉厚部360が形成される。溝320と径方向内面S4との間には、第5肉厚部370が形成される。
【0082】
第3肉厚部350の回転軸方向の厚さ(幅)と、第4肉厚部360の径方向の厚さ(幅)と、第5肉厚部370の径方向の厚さ(幅)は、等しい。また、第1肉厚部330および第2肉厚部340の周方向の厚さは、第3肉厚部350の回転軸方向の厚さ、第4肉厚部360および第5肉厚部370の径方向の厚さと等しい。つまり、コンプレッサインペラ9の回転軸方向、径方向、および、周方向における第2可動部材220の厚さは、互いに等しい。換言すれば、第2可動部材220は、コンプレッサインペラ9の回転軸方向、径方向、および、周方向において、一定の厚みを有する。
【0083】
このように、溝320を第2可動部材220に設けることで、第2可動部材220が中実である場合に比べ、射出成型時の最大厚さを小さくすることができる。これにより、射出成型時のヒケや反りの発生を抑制することができる。その結果、第2可動部材220を樹脂材料で射出成型した場合でも、作動不良の発生を抑制することができる。
【0084】
また、溝320は、第2可動部材220(突出部225)のうち吸気下流面S2以外に形成される。溝320が突出部225の吸気下流面S2に形成される場合、サージング発生時に吸気流路130内を逆流する空気が、吸気下流面S2の溝320に流入する。逆流する空気が溝320に流入すると、溝320が形成されない突出部225の吸気下流面S2に空気が衝突する場合と比べて圧損が大きくなる。圧損が大きくなると、コンプレッサ効率が低下する。
【0085】
そのため、本実施形態では、溝320は、第2可動部材220(突出部225)のうち吸気上流面S1に形成される。突出位置状態において、突出部225の吸気上流面S1側には、空気が流れずに溜まる淀み領域が形成される。圧損は、空気の流速が速くなるほど大きくなる。サージング発生時は、突出部225の吸気上流面S1側(淀み領域側)よりも吸気下流面S2側(逆流する空気が衝突する側)の空気の流速が速い。そのため、溝320を吸気下流面S2側に形成するよりも、溝320を吸気上流面S1側に形成することで、圧損を小さくすることができる。その結果、コンプレッサ効率の低下を抑制することができる。また、第1可動部材210および第2可動部材220は、突出位置状態において、吸気流路130内を逆流する空気により、吸気の上流側に向かって壁面112c(コンプレッサハウジング100)に押し付けられる。このとき、壁面112cと、第1可動部材210および第2可動部材220との間で摩擦力が増大する。この場合、第1可動部材210および第2可動部材220は、径方向外側に移動し難くなる。本実施形態では、溝320を吸気上流面S1側に形成することで、吸気上流面S1(第2可動部材220)と壁面112cとの間の接触面積を低減することができる。したがって、第2可動部材220と壁面112cとの間の摩擦力を低減することができる。
【0086】
また、第2可動部材220の厚さ方向(回転軸方向)に窪む溝320を形成する場合は、湾曲部221の径方向に窪む溝を形成する場合よりも、成型(射出成型)が容易になる。したがって、第2可動部材220の吸気上流面S1に溝320を形成することで、径方向外面S3または径方向内面S4に溝320を形成する場合よりも、成型が容易になる。
【0087】
また、溝320は、コンプレッサインペラ9の周方向に延在し、湾曲部221およびアーム部222を周方向に延在している。これにより、第3肉厚部350の回転軸方向の厚さ、第4肉厚部360および第5肉厚部370の径方向の厚さを、周方向において一定にすることができる。
【0088】
(変形例)
図10は、変形例にかかる第2可動部材420の概略斜視図である。上記実施形態の遠心圧縮機CCと実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。本変形例の第2可動部材420は、溝520が吸気上流面S1に形成されず、径方向外面S3に形成される点で上記実施形態と異なっている。
【0089】
図10は、突出位置状態における第2可動部材420の湾曲部221の概略断面図を示す。図10に示すように、第2可動部材420には、溝520が形成される。溝520は、径方向外面S3に形成される。溝520と吸気下流面S2との間には、第3肉厚部550が形成される。溝320と吸気上流面S1との間には、第4肉厚部560が形成される。溝520と径方向内面S4との間には、第5肉厚部570が形成される。第3肉厚部550の回転軸方向の厚さ(幅)と、第4肉厚部560の回転軸方向の厚さ(幅)と、第5肉厚部570の径方向の厚さ(幅)は、等しい。
【0090】
また、溝520は、コンプレッサインペラ9の周方向に延在している。溝520と湾曲部221の第1端面221a(図8参照)との間には、第1肉厚部330が形成される。溝520と湾曲部221の第2端面221b(図8参照)との間には、第2肉厚部340が形成される。コンプレッサインペラ9の周方向において、第1肉厚部330の厚さ(幅)と、第2肉厚部340の厚さ(幅)は等しい。第1肉厚部330および第2肉厚部340の周方向の厚さは、第3肉厚部550および第4肉厚部560の回転軸方向の厚さ、第5肉厚部570の径方向の厚さと等しい。つまり、コンプレッサインペラ9の回転軸方向、径方向、および、周方向における第2可動部材420の厚さは、互いに等しい。換言すれば、第2可動部材420は、コンプレッサインペラ9の回転軸方向、径方向、および、周方向において、一定の厚みを有する。
【0091】
本変形例によれば、溝520は、第2可動部材420(突出部225)のうち吸気下流面S2以外に形成される。したがって、上記実施形態と同様の作用および効果を奏することができる。
【0092】
また、本変形例では、溝520は、第2可動部材420の径方向外面S3に形成される。これにより、第2可動部材420の突出部225に溝520が露出しなくなり、上記実施形態よりも溝520に空気が流入し難くなる。その結果、上記実施形態よりも圧損を小さくすることができ、コンプレッサ効率の低下をより抑制することができる。
【0093】
以上、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0094】
上記実施形態および変形例では、第1可動部材210および第2可動部材220、420が樹脂材料で射出成型される例について説明した。しかし、これに限定されず、第1可動部材210および第2可動部材220、420は、例えば、金属で構成され、鋳造により成型されてもよい。
【0095】
上記実施形態および変形例では、溝320、520は、吸気上流面S1あるいは径方向外面S3に形成される例について説明した。しかし、これに限定されず、溝320、520は、径方向内面S4に形成されてもよい。
【0096】
上記実施形態および変形例では、溝320、520が周方向に延在する例について説明した。しかし、これに限定されず、溝320、520は、周方向に離隔して複数形成されてもよい。
【0097】
また、上記実施形態において、第1可動部材210および第2可動部材220のうち一方は、溝320を備え、第1可動部材210および第2可動部材220のうち他方は、溝520を備えてもよい。
【符号の説明】
【0098】
9:コンプレッサインペラ 100:コンプレッサハウジング(ハウジング) 130:吸気流路 210:第1可動部材 220:第2可動部材 310:溝 320:溝 420:第2可動部材 520:溝 CC:遠心圧縮機 S1:吸気上流面 S2:吸気下流面 S3:径方向外面 S4:径方向内面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10