(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】検査装置および導電率計
(51)【国際特許分類】
G01N 27/06 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
G01N27/06 A
(21)【出願番号】P 2022543279
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 JP2021017326
(87)【国際公開番号】W WO2022038839
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2020139350
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 達哉
(72)【発明者】
【氏名】山内 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】矢幡 雅人
(72)【発明者】
【氏名】増田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】並河 信寛
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-281189(JP,A)
【文献】特開2008-139312(JP,A)
【文献】実開昭63-96455(JP,U)
【文献】特表2000-505888(JP,A)
【文献】特開2019-55404(JP,A)
【文献】特開2020-63916(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0304743(US,A1)
【文献】米国特許第6444474(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
G01N 31/00 - G01N 33/46
G01R 27/00 - G01R 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水を検査するための検査装置であって、
筐体と、
前記筐体内を第1区画と第2区画とに隔てる、開口部が設けられた壁部と、
試料水の導電性を測定する導電率計と、
前記導電率計に試料水を流入させる流入管とを備え、
前記導電率計は、
試料水に接触するように配置された電極部を有する測定部と、
前記測定部から出力された情報を処理する回路が実装された基板とを含み、
前記測定部と前記基板とは、前記壁部を挟んで接続され、
前記測定部は、前記電極部が前記開口部に位置するように、前記第1区画側の前記壁部の第1面に配置され、
前記基板は、前記電極部と前記回路とを電気的に接続する接点が前記開口部に位置するように、前記第2区画側の前記壁部の第2面に配置される、検査装置。
【請求項2】
前記第1面の前記開口部の外周であって、前記壁部と前記測定部との間に配置されたシールをさらに備える、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記基板の接点と接触する前記電極部の接点には、金めっきが施されている、請求項1または請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記測定部は、試料水の温度を測定する温度センサをさらに備え、
前記温度センサの接点は、前記測定部を前記第1面に配置したときに前記開口部に位置するように配置され、
前記温度センサの接点と前記回路とを電気的に接続する前記基板の接点は、前記基板を前記第2面に配置したときに前記開口部に位置するように配置される、請求項1~請求項3のうちいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記導電率計は、前記測定部と前記基板とを接続する接続部をさらに含む、請求項1~請求項4のうちいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
試料水の導電性を測定する導電率計であって、
試料水に接触するように配置された電極部を含む測定部と、
前記測定部から出力された情報を処理する回路が実装された基板とを備え、
前記測定部と前記基板とは、筐体内を第1区画と第2区画とに隔てる壁部を挟んで接続され、
前記測定部は、前記電極部が前記壁部に設けられた開口部に位置するように、前記第1区画側の前記壁部の第1面に配置され、
前記基板は、前記電極部と前記回路とを電気的に接続する接点が前記開口部に位置するように、前記第2区画側の前記壁部の第2面に配置される、導電率計。
【請求項7】
前記測定部は、前記第1面の前記開口部の外周に配置されたシールを介して前記壁部の前記第1面に配置される、請求項6に記載の導電率計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料水の導電性を測定する導電率計および、導電率計を備えた検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料水の性質を示す指標として、試料水の導電性を測定することがある。試料水の導電性は、試料水中に溶解している電解質の割合を示す指標であって、たとえば、試料水中のTOC(Total Organic Carbon:全有機体炭素)量を測定するために利用される。具体的には、試料水中の有機物を酸化させて得られる分解産物によって試料水中の導電性が変わるため、試料水中の導電性を測定することで分解産物を検出でき、分解産物を検出することでTOC量を測定できる。
【0003】
特許第6556699号公報(特許文献1)には、UV光線で照射しようとするサンプル体積を収納するための測定チャンバと、測定チャンバとUV光線源の間に位置して、測定チャンバの第1の側を密封して閉止するUV透過性窓とを含む、液体の導電性を測定するための装置が開示されている。特許文献1には、測定チャンバ内に存在する液体と接触するように2つの測定電極がエッチングされていることが開示されている。また、特許文献1には、測定電極である電極がケーブルを介してコンピュータに接続されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極の検出値を処理する回路は、液体に接触されないように保護されている必要がある。回路を液体から保護する方法として、たとえば、電極とコンピュータとをケーブルで繋ぐ特許文献1に記載の装置のように、電極と回路とをケーブルで接続し、試料水のような液体を扱うエリアから回路を引き離す方法がある。しかし、電極と回路とを繋ぐケーブルが長くなることで、寄生容量の影響を受けて検出値にノイズがのっかってしまう。そのため、電極と回路とをケーブルで接続すると、導電率計の精度が下がってしまう。
【0006】
一方、電極と回路との距離を近づけると、導電率計の精度を上げることができるものの、回路が液体に接触する可能性が上がってしまう。
【0007】
本開示は、試料水を検査する検査装置が備える導電率計の精度を上げるとともに、検査装置の電気系統を保護することを一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の検査装置は、試料水を検査するための検査装置であって、筐体と、筐体内を第1区画と第2区画とに隔てる、開口部が設けられた壁部と、試料水の導電性を測定する導電率計と、導電率計に試料水を流入させる流入管とを含む。導電率計は、試料水に接触するように配置された電極部を有する測定部と、測定部から出力された情報を処理する回路が実装された基板とを含む。測定部と基板とは、壁部を挟んで接続される。測定部は、電極部が開口部に位置するように、第1区画側の壁部の第1面に配置される。基板は、電極部と回路とを電気的に接続する接点が開口部に位置するように、第2区画側の壁部の第2面に配置される。
【0009】
本開示の導電率計は、試料水の導電性を測定する導電率計であって、試料水に接触するように配置された電極部を含む測定部と、測定部から出力された情報を処理する回路が実装された基板とを含む。測定部と基板とは、筐体内を第1区画と第2区画とに隔てる壁部を挟んで接続される。測定部は、電極部が壁部に設けられた開口部に位置するように、第1区画側の壁部の第1面に配置される。基板は、電極部と回路とを電気的に接続する接点が開口部に位置するように、第2区画側の壁部の第2面に配置される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、試料水に接触するように配置された電極部を有する測定部が配置された第1区画と壁部で隔てられた第2区画に基板が配置されるため、基板を試料水から保護できる。さらに、壁部の開口部を介して電極部と、基板の接点とが接続されるため、電極部から回路までの距離を短くすることができ、その結果、測定部から出力された情報をノイズがのらないように回路に送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】検査装置1の全体構成を説明するための模式図である。
【
図2】検査装置1の筐体10の全体構造を示す模式図である。
【
図3】水区画A1側の壁部14の第1面142を示す模式図である。
【
図4】電気区画A2側の壁部14の第2面144を示す模式図である。
【
図6】
図5中のVI-VI線に沿う概略断面図である。
【
図7】測定部32を取り外した状態の第1面142を示す模式図である。
【
図8】測定部32と基板34との接続方法を説明するための図である。
【
図9】測定部32と基板34とを接続したときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
<検査装置1の全体構成>
図1は、検査装置1の全体構成を説明するための模式図である。検査装置1は、試料水中のTOC量(TOCの濃度)を測定するための装置である。検査装置1は、試料水に紫外線を照射することで試料水中の有機物を酸化させる、いわゆる湿式酸化式の検査装置である。
【0014】
図1を参照して、検査装置1は、バイアルビン12内の試料水SをポンプPで流路F内に引き込む。流路F上には、UV光源20および導電率計30が配置されている。
【0015】
図示していないものの、UV光源20は、試料水Sが内部空間を通過する内管と、内管の外周に間隔をあけて配置された外管とを備え、外管と内管との間の放電空間内に封入された放電ガスからの紫外線を内管の内部空間に照射する、二重筒型のエキシマランプである。UV光源20の内部空間内を通る試料水Sに紫外線を照射することで、試料水S中の有機物が酸化される。
【0016】
バイアルビン12とUV光源20の内管(上流側)とは、流路Fを構成するチューブT1によって接続されている。また、UV光源20の内管の下流側には、チューブT2が接続されている。なお、内管は、流路Fの一部ともいえる。
【0017】
導電率計30は、チューブT2と接続可能な流路を備える。導電率計30が備える流路の下流側にはチューブT3が接続されており、導電率計30を通過した試料水Sは、チューブT3を通って排出される。
【0018】
試料水S中の有機物は、紫外線により酸化されると、最終的に水と二酸化炭素に分解される。分解産物である二酸化炭素が水に溶解するとイオンを生じ、試料水Sの導電率が変化する。導電率計30は、分解産物である二酸化炭素により変化する導電率を測定することで、試料水Sの分解産物を検出できる。
【0019】
図2は、検査装置1の筐体10の全体構造を示す模式図である。検査装置1の筐体10からはバイアルビン12と接続するためのチューブT1が伸びている。筐体10内には、
図1を参照して説明した、UV光源20と、導電率計30と、ポンプPとが配置されている。配置の仕方については、後述する。
【0020】
筐体10内は、壁部14によって、試料水Sを扱う水区画A1と、試料水Sを扱わない電気区画A2とに隔てられる。水区画A1には、たとえば、流路Fが配置される。一方、電気区画A2には、水からの保護を受けるべき装置が配置される。たとえば、電気区画A2には、回路が実装された基板、電力系統などが配置される。
【0021】
図2に示すように、本実施の形態にかかる検査装置1の筐体10内は、壁部14によって水区画A1と電気区画A2とに隔てられるため、回路が実装された基板を水から保護でき、データを保護できる。
【0022】
なお、壁部14の面をY-Z面とし、Y軸およびZ軸のそれぞれに直交する軸をX軸とする。
【0023】
<水区画A1>
水区画A1内に配置された装置を説明する。
図3は、水区画A1側の壁部14の第1面142を示す模式図である。筐体10内の第1面142には、UV光源20、ポンプP、導電率計30の測定部32が取り付けられている。第1面142に取り付けられた各装置は、チューブを介して互いに接続されている。
【0024】
UV光源20の上流側にはチューブT1が接続されている。図示していないものの、チューブT1は、バイアルビン12に接続されている。
【0025】
UV光源20の上流側にはチューブT2が接続されている。チューブT2は、冷却部の機能をはたしている。具体的には、チューブT2の少なくとも一部は、他のチューブよりも熱伝導率の高い素材から構成されている。
【0026】
試料水S中の有機物が酸化されると酸化熱が発生する。導電率は、温度が変化することで変化する。そのため、導電率計30で試料水Sを測定するまでに発生した酸化熱を放出しておく必要がある。上述のように、チューブT2に冷却部の機能を持たせることで、精度の高い導電率測定ができる。
【0027】
チューブT2の下流側には、導電率計30の測定部32が接続されている。導電率計30は、試料水Sと接触する一対の電極324(
図6参照)を有する測定部32と、測定部32から出力された情報を処理する回路342が実装された基板34(
図4参照)とを備える。回路342は、たとえば、測定部から出力されるアナログ情報をデジタル情報に変換する処理(A/D変換処理)を行う。なお、回路342は、デジタル情報に基づいて測定値を演算する処理を行う演算回路などを含み得る。測定部32は、筐体10内の水区画A1側に配置されている。一方、基板34は、筐体10内の電気区画A2側に配置されている。
【0028】
測定部32の内部には流路が形成されており、測定部32内部の流路がチューブT2とチューブT3とに接続されている。以上のように、水区画A1には、試料水Sが通過する部品が配置される。
【0029】
なお、導電率計30は、試料水の導電性を示す指標を測定するものであればよく、導電率を測定するものに限られない。たとえば、導電率計30は、抵抗率を測定するものであってもよい。また、本実施の形態においては、導電率計30は、一対の電極324を有し二端子法で試料水の導電率を測定するものとしたが、四探針法、四端子法など他の方法で試料水の導電率を測定してもよい。すなわち、導電率計30は、試料水と接触するように配置された、試料水の導電性を示す指標を測定するための電極部を備えていればよく、電極部は、2つの電極で構成されていても、4つの電極で構成されていてもよい。
【0030】
<電気区画A2>
電気区画A2内に配置された装置を説明する。
図4は、電気区画A2側の壁部14の第2面144を示す模式図である。なお、筐体10の背面にはカバー102が取り付けられており、カバー102と壁部14との間にさらに壁部が配置されている。
【0031】
図4を参照して、第2面144には、回路342が実装された基板34が取り付けられている。また、電気区画A2には、電源装置50が配置されている。
【0032】
回路342および電源装置50が水に濡れると故障の原因となる。検査装置1において、試料水Sを扱う水区画A1と試料水Sを扱わない電気区画A2とに筐体10内を壁部14で隔て、回路342および電源装置50といった水に濡れると故障してしまう装置を電気区画A2に配置することで、故障しにくい検査装置1を提供できる。
【0033】
<導電率計30>
上述したように、導電率計30は、水区画A1側に配置された測定部32と、電気区画A2側に配置された基板34(
図9参照)とを備える。以下では、測定部32の構成および測定部32と基板34との電気的な接続方法について説明する。
【0034】
図5および
図6を参照して、測定部32の構成について説明する。
図5は、測定部32の正面図である。
図6は、
図5中のVI-VI線に沿う概略断面図である。
図5に示した測定部32の正面図は、第1面142に測定部32を取り付けたときに第1面142と対向する面を正面としたものである。なお、
図6において、ネジ、連結部327,328など、一部の構成については、記載を省略している。
【0035】
図5を参照して、測定部32は、2つの開口部323、2つの電極接点324a、2つのサーミスタ接点326a、および連結部327,328を備える。
【0036】
開口部323は、基板34が備える円柱状の接続部343を挿入可能な形状をしている(
図8参照)。2つの開口部323は、それぞれ、測定部32の筐体に形成されており、基板34が備える2つの接続部343と対応する位置に設けられている。
【0037】
電極接点324aは、
図6に示す電極324の接点である。電極324は、
図6に示すように、測定部32内に形成された流路Fを貫通するように形成されている。その結果、流路Fに試料水Sが流れたときに、電極324の少なくとも一部に試料水Sが触れる構成となっている。なお、
図6においては、片側の電極324についてのみ示しているものの、もう一方の電極324も同様に測定部32内に形成された流路Fを貫通するように形成されている。
【0038】
2つのサーミスタ接点326aは、図示していないものの、それぞれ、測定部32内に形成された流路F上に配置された、
図6に示すサーミスタ326に電気的に接続されている。サーミスタ326は、測定部32内に形成された流路Fを通過する試料水Sの温度を測定する。導電率は、温度の影響を受ける。導電率計30は、サーミスタ326を備えることで、試料水Sの温度を測定することができるため、正確に導電率の測定を行うことができる。
【0039】
連結部327,328は、それぞれ、チューブT2、チューブT3と接続可能に構成されている。連結部327,328に、チューブT2、チューブT3を接続することで、測定部32内の流路Fに試料水Sが流れることとなる。
【0040】
次に、測定部32と基板34との接続方法について説明する。
図7は、測定部32を取り外した状態の第1面142を示す模式図である。
図8は、測定部32と基板34との接続方法を説明するための図である。
図9は、測定部32と基板34とを接続したときの状態を示す図である。
【0041】
図7を参照して、壁部14には、開口部146が形成されている。開口部146の外周であって、第1面142には、パッキン148が設けられている。また、開口部146は、測定部32および基板34よりも小さく、測定部32および基板34は、壁部14を挟んで、開口部146を介して電気的に接続されている。
【0042】
基板34は、上述したように、電気区画A2側に配置されている。
図7および
図8を参照して、基板34は、電極324と回路342とを電気的に接続するための1対の電極接点344と、サーミスタ326と回路342とを電気的に接続するための1対のサーミスタ接点346と、2つの接続部343とを備える。
【0043】
基板34は、開口部146に電極接点344およびサーミスタ接点346が位置するように、第2面144に配置される。
【0044】
2つの接続部343は、円柱形状をした突起物である。2つの接続部343は、基板34を第2面144に配置したときに、開口部146を介して水区画A1側に突出されるように電極接点344が配置された面に形成されている。
【0045】
図8を参照して、接続部343は、測定部32を第1面142に配置したときに、測定部32の開口部323内に挿入され、測定部32と基板34とを接続する。すなわち、測定部32の開口部323と、基板34の接続部343とが、測定部32と基板34とを接続する接続部として機能する。
【0046】
図9を参照して、接続部343を開口部323に挿入して測定部32と基板34とを接続すると、測定部32の電極接点324aと、基板34の電極接点344とが接触し、その結果、電極324と回路342とが電気的に接続される。図示していないものの、接続部343を開口部323に挿入して測定部32と基板34とを接続すると、測定部32のサーミスタ接点326aと基板34のサーミスタ接点346とが接触し、その結果、サーミスタ326と回路342とが電気的に接続される。なお、
図9において、接続部343および開口部323などの構成については記載を省略している。
【0047】
ここで、測定部32の電極接点324aおよび基板34の電極接点344には、接触抵抗を低減させるために金めっきが施されていることが好ましい。同様に、測定部32のサーミスタ接点326aおよび基板34のサーミスタ接点346には、接触抵抗を低減させるために金めっきが施されていることが好ましい。
【0048】
以上のように、導電率計30の測定部32と基板34とは、壁部14を間に挟んで接続されており、電極324の電極接点324aと、基板34の電極接点344とが壁部14の開口部146に位置するように配置されている。
【0049】
そのため、電極324(より正確には電極接点324a)と基板34の電極接点344とを直接接触させることができ、測定部32から出力された情報(たとえば、検出値であるアナログ情報)を、ノイズがのらないように基板34の回路342に送ることができる。さらに、基板34等の電子機器類は、壁部14で水区画A1とは区切られた電気区画A2に配置されるため、試料水Sから保護できる。
【0050】
また、測定部32と第1面142との間にパッキン148が配置されるため、測定部32と第1面142との間の隙間から電気区画A2側への水の侵入を防止できるため、電気区画A2側の防水性を高めることができる。なお、パッキン148は、測定部32と第1面142との間の隙間から電気区画A2側への水の侵入を防止できるシールであればよく、ガスケットなどでもよい。また、パッキン148の材質は、検査装置1が測定対象とする試料に対して耐性のある材質であればよく、測定対象に応じて適宜選択され得る。また、パッキン148は、第1面142に配置されているとしたが、測定部32に配置されていてもよい。
【0051】
上記実施の形態において、検査装置1は、試料水中のTOC量を測定するための装置であるとした。なお、本実施の形態に記載の導電率計30は、試料水(液体試料)が流れる流路上に配置する構成を有する検査装置であれば上記実施の形態に示した検査装置1とは異なる構成の検査装置にも適用可能である。たとえば、導電率計30は、UV光源20を備えていない検査装置にも適用可能である。
【0052】
上記実施の形態において、測定部32と基板34との間に壁部14を挟んだ状態で、接続部343を開口部323に挿入することで、測定部32と基板34とを接続させるとともに、導電率計30を壁部14に固定させた。なお、導電率計30は、測定部32と基板34とを個々に壁部14に固定させてもよい。なお、測定部32と基板34とを接続させることで導電率計30を壁部14に固定する構成の場合、部品点数を減らせるという利点がある。
【0053】
[態様]
上述した実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0054】
(第1項)一態様に係る試料水を検査するための検査装置は、筐体と、筐体内を第1区画と第2区画とに隔てる、開口部が設けられた壁部と、第1区画に配置された、試料水の導電性を測定する導電率計と、導電率計に試料水を流入させる流入管とを備える。導電率計は、試料水に接触するように配置された電極部を有する測定部と、測定部から出力された情報を処理する回路が実装された基板とを含む。測定部と基板とは、壁部を挟んで接続される。測定部は、電極部が開口部に位置するように、第1区画側の壁部の第1面に配置される。基板は、電極部と回路とを電気的に接続する接点が開口部に位置するように、第2区画側の壁部の第2面に配置される。
【0055】
第1項に記載の検査装置によれば、試料水に接触するように配置された電極部を有する測定部が配置された第1区画と壁部で隔てられた第2区画に基板が配置されるため、基板を試料水から保護できる。さらに、壁部の開口部を介して電極部と、基板の接点とが接続されるため、電極部から回路までの距離を短くすることができ、その結果、測定部から出力された情報をノイズがのらないように回路に送ることができる。
【0056】
(第2項)第1項に記載の検査装置は、第1面の開口部の外周であって、壁部と測定部との間に配置されたシールをさらに備える。
【0057】
第2項に記載の検査装置によれば、壁部と測定部との間から第2区画側への水の侵入を防止できるため、基板が配置された第2区画側の防水性を高めることができる。
【0058】
(第3項)第1項または第2項に記載の検査装置において、基板の接点と接触する電極部の接点には、金めっきが施されている。
【0059】
第3項に記載の検査装置によれば、基板の接点と電極部の接点との接触抵抗を下げることができるため、測定部から出力される情報にノイズがのらないようにすることができる。
【0060】
(第4項)第1項~第3項のうちいずれか1項に記載の検査装置において、測定部は、試料水の温度を測定する温度センサをさらに含む。温度センサの接点は、測定部を第1面に配置したときに開口部に位置するように配置される。温度センサの接点と回路とを電気的に接続する基板の接点は、基板を第2面に配置したときに開口部に位置するように配置される。
【0061】
第4項に記載の検査装置によれば、試料水の温度を測定できるため、温度の影響を受ける導電性をより正確に測定できる。また、壁部の開口部を介して温度センサの接点と、基板の接点とが接続されるため、温度センサから回路までの距離を短くすることができ、その結果、温度センサから出力された情報をノイズがのらないように回路に送ることができる。
【0062】
(第5項)第1項~第4項のうちいずれか1項に記載の検査装置において、導電率計は、測定部と基板とを接続する接続部をさらに含む。
【0063】
第5項に記載の検査装置によれば、接続部により、測定部と基板との接続をより強固なものにすることで、壁部と測定部との間から第2区画側に水が入ってしまうことを防止できるため、基板が配置された第2区画側の防水性を高めることができる。また、測定部と基板とを接続することで、導電率計を壁部に固定することができ、壁部に導電率計を固定するために必要な部品点数を減らすことができる。
【0064】
(第6項)一態様に係る試料水の導電性を測定する導電率計は、試料水に接触するように配置された電極部を含む測定部と、測定部から出力された情報を処理する回路が実装された基板とを備える。測定部と基板とは、筐体内を第1区画と第2区画とに隔てる壁部を挟んで接続される。測定部は、電極部が壁部に設けられた開口部に位置するように、第1区画側の壁部の第1面に配置される。基板は、電極部と回路とを電気的に接続する接点が開口部に位置するように、第2区画側の壁部の第2面に配置される。
【0065】
第6項に記載の導電率計によれば、試料水に接触するように配置された電極部を有する測定部が配置された第1区画と壁部で隔てられた第2区画に基板が配置されるため、基板を試料水から保護できる。さらに、壁部の開口部を介して電極部と、基板の接点とが接続されるため、電極部から回路までの距離を短くすることができ、その結果、測定部から出力された情報をノイズがのらないように回路に送ることができる。
【0066】
(第7項)第6項に記載の導電率計によれば、測定部は、第1面の開口部の外周に配置されたシールを介して壁部の第1面に配置される。
【0067】
第7項に記載の導電率計によれば、壁部と測定部との間から第2区画側への水の侵入を防止できるため、基板が配置された第2区画側の防水性を高めることができる。
【0068】
今回開示された各実施の形態は、技術的に矛盾しない範囲で適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 検査装置、10 筐体、12 バイアルビン、14 壁部、20 UV光源、30 導電率計、32 測定部、34 基板、50 電源装置、102 カバー、142 第1面、144 第2面、146,323 開口部、148 パッキン、324 電極、324a,344 電極接点、326 サーミスタ、326a,346 サーミスタ接点、327,328 連結部、342 回路、343 接続部、A1 水区画、A2 電気区画、F 流路、P ポンプ、S 試料水。