(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ワイヤロープ検査装置およびワイヤロープ検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/82 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
G01N27/82
(21)【出願番号】P 2022547385
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2021009980
(87)【国際公開番号】W WO2022054315
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2020152289
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】高見 芳夫
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-149926(JP,A)
【文献】特開昭59-200956(JP,A)
【文献】特開昭63-274859(JP,A)
【文献】特開2003-215108(JP,A)
【文献】特開2018-031768(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171667(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/022764(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0206830(US,A1)
【文献】米国特許第4480225(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72-27/9093
B66B 7/12
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープが延びる方向に沿って相対的に移動するとともに、前記ワイヤロープの磁束を検知する複数の検知コイルと、
前記複数の検知コイルにより検知された検知信号を取得して処理する処理部と、を備え、
前記複数の検知コイルは、前記ワイヤロープの周方向に沿って設けられる第1検知コイルと、前記ワイヤロープの周方向に沿って設けられ、前記第1検知コイルが前記ワイヤロープに対して相対移動する第1方向に直交する方向から見て、前記第1検知コイルに対して傾斜するように配置される第2検知コイルとを含み、
前記処理部は、前記第1検知コイルが検知した検知信号に基づいて、前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置を取得し、かつ、前記第2検知コイルが検知した検知信号に基づいて、取得された前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置の領域を取得するように構成されている、ワイヤロープ検査装置。
【請求項2】
前記第1検知コイルは、前記ワイヤロープの前記第1方向における検知位置に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されており、
前記第2検知コイルは、前記ワイヤロープの前記第1方向と交差する方向における複数の検知位置を含む領域に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されており、
前記処理部は、前記第1検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置を取得し、かつ、前記第2検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、取得された前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置を取得するように構成されている、請求項1に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記第1検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間に対する前記第2検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間のずれの大きさに基づいて、取得された前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置を取得するように構成されている、請求項2に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項4】
前記第2検知コイルは、前記第1方向としてのZ方向に直交する第2方向としてのX方向から見て、前記第1検知コイルに対して傾斜するように配置されており、
前記複数の検知コイルは、前記ワイヤロープの周方向に沿って設けられ、前記Z方向および前記X方向に直交する第3方向としてのY方向から見て、前記第1検知コイルに対して傾斜するように配置される第3検知コイルをさらに含み、
前記処理部は、前記第1検知コイルが検知した検知信号に基づいて、前記Z方向における前記ワイヤロープの異常位置を取得し、かつ、前記第2検知コイルおよび前記第3検知コイルが検知した検知信号に基づいて、取得された前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置を取得するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項5】
前記第2検知コイルは、前記X方向から見て、前記第1検知コイルおよび前記第3検知コイルに対して傾斜するように配置されており、
前記第3検知コイルは、前記Y方向から見て、前記第1検知コイルおよび前記第2検知コイルに対して傾斜するように配置されている、請求項4に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項6】
前記第1検知コイルは、前記ワイヤロープの前記Z方向における検知位置に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されており、
前記第2検知コイルは、前記ワイヤロープの前記Y方向における複数の検知位置を含む領域に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されており、
前記第3検知コイルは、前記ワイヤロープの前記X方向における複数の検知位置を含む領域に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されており、
前記処理部は、前記第1検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、前記ワイヤロープの異常位置の前記Z方向における位置を取得し、かつ、前記第2検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、取得された前記Z方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置の前記Y方向における位置を取得し、かつ、前記第3検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、取得された前記Z方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置の前記X方向における位置を取得するように構成されている、請求項5に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項7】
前記ワイヤロープは、複数設けられており、
前記処理部は、前記第1検知コイル、前記第2検知コイルおよび前記第3検知コイルの各々が検知した検知信号のピークに基づいて、前記Z方向と交差する方向の複数の前記ワイヤロープの各々の断面における異常位置を取得するように構成されている、請求項
4に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項8】
前記第1検知コイル、前記第2検知コイルおよび前記第3検知コイルは、複数の前記ワイヤロープの各々に設けられている、請求項7に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項9】
前記第1検知コイル、前記第2検知コイルおよび前記第3検知コイルの各々は、前記Z方向と直交する方向に配置されている第1部分と、前記ワイヤロープに対して前記第1部分が配置される側とは反対側において前記第1部分とともに前記ワイヤロープを挟むように配置されている第2部分とを含む、請求項8に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項10】
前記ワイヤロープに対して相対的に移動するとともに、前記ワイヤロープに磁束を印加する励磁部をさらに備え、
前記励磁部は、前記複数の検知コイルに対して共通に設けられている、請求項
1~3のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項11】
前記ワイヤロープに対して予め磁界を印加し、磁性体である前記ワイヤロープの磁界の大きさおよび方向を整える磁界印加部をさらに備え、
前記励磁部は、交流電流を流すことにより発生させた磁界を前記ワイヤロープに対して印加するように構成されている、請求項10に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項12】
ワイヤロープが延びる方向に沿って相対的に移動するとともに、前記ワイヤロープの磁束を検知する複数の検知コイルを備えるワイヤロープ検査装置と、
前記複数の検知コイルが検知した検知信号を取得して処理する処理装置と、を備え、
前記複数の検知コイルは、前記ワイヤロープの周方向に沿って設けられる第1検知コイルと、前記ワイヤロープの周方向に沿って設けられ、前記第1検知コイルが前記ワイヤロープに対して相対移動する第1方向に直交する方向から見て、前記第1検知コイルに対して傾斜するように配置される第2検知コイルとを含み、
前記処理装置は、前記第1検知コイルが検知した検知信号に基づいて、前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置を取得し、かつ、前記第2検知コイルが検知した検知信号に基づいて、取得された前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置の領域を取得するように構成されている、ワイヤロープ検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープ検査装置およびワイヤロープ検査システムに関し、特に、ワイヤロープの磁束を検知する検知コイルを備えるワイヤロープ検査装置およびワイヤロープ検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検知コイルによりワイヤロープの磁束の変化を検知するワイヤロープ検査装置が知られている。このようなワイヤロープ検査装置は、国際公開第2019/171667号に開示されている。
【0003】
上記国際公開第2019/171667号には、ワイヤロープ(磁性体)に対して設けられた励磁部と、ワイヤロープの磁束(磁界)を検知する検知コイルとを備えるワイヤロープ検査装置(磁性体検査装置)が開示されている。上記国際公開第2019/171667号に記載のワイヤロープ検査装置では、検知コイルをワイヤロープに対して相対的に移動させながら、励磁部により磁束が印加されることにより生じるワイヤロープの磁束の変化を検知コイルにより検知することにより、検知コイルがワイヤロープに対して相対移動する方向におけるワイヤロープの傷みが生じている位置(異常位置)を取得するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記国際公開第2019/171667号に記載のワイヤロープ検査装置では、検知コイルがワイヤロープに対して相対移動する方向におけるワイヤロープの傷みが生じている位置(異常位置)を取得することは可能である一方、ワイヤロープの断面内において、いずれの位置に傷みが生じているのかを取得することはできない。すなわち、ワイヤロープの断面において、内部側および外部側のどの領域に異常が存在するか判別することができない。そのため、上記国際公開第2019/171667号には明記されていないが、従来では、ワイヤロープの内部側の異常であるか、または、ワイヤロープの外部側の異常であるかの確認は、目視によって行う必要がある。ワイヤロープの点検作業は照明の設置されていない暗所で行われることが多く、たとえば素線断線の異常は素線径Φ1mm以下で断線幅も1mm以下と非常に細かい異常である。したがって、ワイヤロープの内部側の異常であるか、または、ワイヤロープの外部側の異常であるか、つまり、ワイヤロープの断面内における異常の領域をあらかじめ取得できることは、ワイヤロープの点検の実務作業において非常に有益な情報となる。そのため、検知コイルがワイヤロープに対して相対移動する方向における異常位置に加えて、ワイヤロープの断面内における異常の領域を取得することが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、検知コイルがワイヤロープに対して相対移動する方向における異常位置に加えて、ワイヤロープの断面内における異常の領域を取得することが可能なワイヤロープ検査装置およびワイヤロープ検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるワイヤロープ検査装置は、ワイヤロープが延びる方向に沿って相対的に移動するとともに、ワイヤロープの磁束を検知する複数の検知コイルと、複数の検知コイルにより検知された検知信号を取得して処理する処理部と、を備え、複数の検知コイルは、ワイヤロープの周方向に沿って設けられる第1検知コイルと、ワイヤロープの周方向に沿って設けられ、第1検知コイルがワイヤロープに対して相対移動する第1方向に直交する方向から見て、第1検知コイルに対して傾斜するように配置される第2検知コイルとを含み、処理部は、第1検知コイルが検知した検知信号に基づいて、第1方向におけるワイヤロープの異常位置を取得し、かつ、第2検知コイルが検知した検知信号に基づいて、取得された第1方向におけるワイヤロープの異常位置の断面内におけるワイヤロープの異常位置の領域を取得するように構成されている。
【0008】
この発明の第2の局面におけるワイヤロープ検査システムは、ワイヤロープが延びる方向に沿って相対的に移動するとともに、ワイヤロープの磁束を検知する複数の検知コイルを備えるワイヤロープ検査装置と、複数の検知コイルが検知した検知信号を取得して処理する処理装置と、を備え、複数の検知コイルは、ワイヤロープの周方向に沿って設けられる第1検知コイルと、ワイヤロープの周方向に沿って設けられ、第1検知コイルがワイヤロープに対して相対移動する第1方向に直交する方向から見て、第1検知コイルに対して傾斜するように配置される第2検知コイルとを含み、処理装置は、第1検知コイルが検知した検知信号に基づいて、第1方向におけるワイヤロープの異常位置を取得し、かつ、第2検知コイルが検知した検知信号に基づいて、取得された第1方向におけるワイヤロープの異常位置の断面内におけるワイヤロープの異常位置の領域を取得するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
上記第1の局面におけるワイヤロープ検査装置および上記第2の局面におけるワイヤロープ検査システムでは、上記のように、複数の検知コイルは、ワイヤロープの周方向に沿って設けられる第1検知コイルと、ワイヤロープの周方向に沿って設けられ、第1検知コイルがワイヤロープに対して相対移動する第1方向に直交する方向から見て、第1検知コイルに対して傾斜するように配置される第2検知コイルとを含む。ここで、第2検知コイルは、第1方向に直交する方向から見て、第1検知コイルに対して傾斜するように配置されるので、第1検知コイルおよび第2検知コイルの各々がワイヤロープの断面における異常の領域を横切る時間は、ワイヤロープの異常の領域の断面上の位置によって異なる。これにより、第1検知コイルによって検知される異常な検知信号と、第2検知コイルによって検知される異常な検知信号とを、ワイヤロープの断面における異常の領域の断面上の位置に応じて異なった時間に検知することになる。そして、第2検知コイルの幾何学的な傾斜配置はあらかじめ判っているので、第1検知コイルによって検知される異常な検知信号と、第2検知コイルによって検知される異常な検知信号との検知時間のずれに基づいて、ワイヤロープの断面における異常の領域を特定することができる。その結果、検知コイルがワイヤロープに対して相対移動する方向における異常位置に加えて、ワイヤロープの断面内における異常の領域を取得することが可能なワイヤロープ検査装置およびワイヤロープ検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態によるワイヤロープ検査装置が設けられているエレベータを示した図である。
【
図2】第1実施形態によるワイヤロープ検査装置の構成を示したブロックである。
【
図5】第1実施形態によるワイヤロープ検査装置の断面図である。
【
図6】第1実施形態による励振コイルの構成を示す図である。
【
図7】第1実施形態によるワイヤロープ検査装置の側面図である。
【
図8】第1実施形態によるワイヤロープ検査装置の磁界印加部の構成を示した側面図である。
【
図9】第1実施形態による検知コイルの配置を示す図である。
【
図10】第1実施形態による検知コイルの側面図(1)である。
【
図11】第1実施形態による検知コイルの側面図(2)である。
【
図12】ワイヤロープの断面位置の一例を示す図である。
【
図13】第1検知コイルが検知する検知信号の一例を示す図である。
【
図14】第2検知コイルが検知する検知信号の一例を示す図である。
【
図15】第3検知コイルが検知する検知信号の一例を示す図である。
【
図16】第2実施形態によるワイヤロープ検査装置が設けられている昇降路およびエレベータを示した図である。
【
図17】第3実施形態のワイヤロープ検査装置による検知コイルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1~
図15を参照して、第1実施形態によるワイヤロープ検査システム300の構成について説明する。なお、以下の説明において、「直交」とは、90°および90°近傍の角度をなして交差することを意味する。
【0013】
(ワイヤロープ検査システムの構成)
図1に示すように、ワイヤロープ検査システム300は、検査対象物であり磁性体であるワイヤロープWの異常(素線断線など)を検査するためのシステムである。ワイヤロープ検査システム300は、ワイヤロープWの磁束を計測するワイヤロープ検査装置100と、ワイヤロープ検査装置100によるワイヤロープWの磁束の計測結果の表示、および、ワイヤロープ検査装置100によるワイヤロープWの磁束の計測結果に基づく解析などを行う処理装置200とを備えている。ワイヤロープ検査システム300によりワイヤロープWの異常を検査することにより、目視により確認しにくいワイヤロープWの異常を確認可能である。
【0014】
図1では、ワイヤロープ検査装置100が、エレベータ110のかご111の移動に用いられるワイヤロープWを検査する例を示している。エレベータ110は、かご111と、ワイヤロープWを駆動するための巻き上げ機112とを備えている。エレベータ110は、巻き上げ機112によりワイヤロープWを移動させることにより、かご111を上下方向(Z方向)に移動させるように構成されている。ワイヤロープ検査装置100は、ワイヤロープWに対して移動しないように固定された状態で、巻き上げ機112により移動されるワイヤロープWの傷みを検査する。
【0015】
ワイヤロープWは、ワイヤロープ検査装置100の位置において、Z方向に延びるように配置されている。ワイヤロープ検査装置100は、ワイヤロープWの表面に沿って、ワイヤロープWに対して相対的にZ方向に移動しながら、ワイヤロープWの磁束を計測する。エレベータ110に使用されるワイヤロープWのように、ワイヤロープW自体が移動する場合には、ワイヤロープWをZ方向に移動させながら、ワイヤロープ検査装置100によるワイヤロープWの磁束の計測が行われる。これにより、ワイヤロープWのZ方向の各位置における磁束を計測することができるので、ワイヤロープWのZ方向の各位置における傷みを検査可能である。
【0016】
(処理装置の構成)
処理装置200(
図1参照)は、たとえばパーソナルコンピュータである。処理装置200は、ワイヤロープ検査装置100が配置される空間とは違う空間に配置されている。処理装置200は、
図1に示すように、通信部201と、処理部202と、記憶部203と、表示部204とを備えている。通信部201は、通信用のインターフェースであり、ワイヤロープ検査装置100と処理装置200とを通信可能に接続する。処理装置200は、通信部201を介して、ワイヤロープ検査装置100によるワイヤロープWの計測結果(計測データ)を受信する。処理部202は、処理装置200の各部を制御する。処理部202は、CPUなどのプロセッサ、メモリなどを含んでいる。処理部202は、通信部201を介して受信したワイヤロープWの計測結果に基づいて、素線断線などのワイヤロープWの傷みを解析する。記憶部203は、たとえばフラッシュメモリを含む記憶媒体であり、ワイヤロープWの計測結果、処理部202によるワイヤロープWの計測結果の解析結果などの情報を記憶(保存)する。表示部204は、たとえば液晶モニタであり、ワイヤロープWの計測結果、処理部202によるワイヤロープWの計測結果の解析結果などの情報を表示する。
【0017】
(ワイヤロープ検査装置の構成)
図2に示すように、ワイヤロープ検査装置100は、検知部1と、電子回路部2とを備えている。検知部1は、ワイヤロープWの磁束を検知(計測)する。具体的には、検知部1は、励振コイル10と、検知コイル20とを含んでいる。励振コイル10は、ワイヤロープWに対して相対的に移動するとともに、ワイヤロープWに磁束を印加するように構成されている。励振コイル10は、励振交流電流が流れることにより、Z方向に沿った磁界を内部(輪の内側)に発生させるとともに、発生させた磁界を内部に配置されたワイヤロープWに印加する。なお、励振コイル10は、請求の範囲の「励磁部」の一例である。
【0018】
検知コイル20は、ワイヤロープWに対して相対的に移動するとともに、励振コイル10により磁界が印加されたワイヤロープWの磁束を検知(計測)する。検知コイル20は、検知したワイヤロープWの磁束に応じた検知信号(差動信号)を送信する。また、検知コイル20は、第1検知コイル30、第2検知コイル40、第3検知コイル50を含む。なお、検知コイル20の詳細な説明は、後述する。
【0019】
なお、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50は、請求の範囲の「複数の検知コイル」の一例である。
【0020】
電子回路部2は、処理部61と、受信I/F(インターフェース)62と、励振I/F63と、電源回路64と、記憶部65と、通信部66とを含んでいる。処理部61は、ワイヤロープ検査装置100の各部を制御するように構成されている。処理部61は、CPU(中央処理装置)などのプロセッサ、メモリ、AD変換器などを含んでいる。受信I/F62は、検知コイル20の検知信号(差動信号)を受信(取得)して、処理部61に送信する。受信I/F62は、増幅器を含んでいる。受信I/F62は、増幅器により検知コイル20の検知信号を増幅して、処理部61に送信する。励振I/F63は、処理部61からの制御信号を受信する。励振I/F63は、受信した制御信号に基づいて、励振コイル10に対する電力の供給を制御する。電源回路64は、外部から電力を受け取って、励振コイル10などのワイヤロープ検査装置100の各部に電力を供給する。記憶部65は、たとえばフラッシュメモリを含む記憶媒体であり、ワイヤロープWの計測結果(計測データ)などの情報を記憶(保存)する。通信部66は、通信用のインターフェースであり、ワイヤロープ検査装置100と処理装置200とを通信可能に接続する。
【0021】
また、ワイヤロープWは、
図3および
図4に示すように、磁性を有する素線材料である複数のストランドSをより合わせることにより形成されており、Z方向に沿って延びる長尺材からなる磁性体である。なお、ストランドSは、複数本の素線がより合わさって構成されている。ワイヤロープWは、劣化による切断が生じることを未然に防ぐために、ワイヤロープ検査装置100により状態(傷等の有無)を検査されている。ワイヤロープWの磁束の計測の結果、劣化の程度が決められた基準を超えたと判断されるワイヤロープWは、作業者により交換される。
【0022】
(励振コイルに関する構成)
図5に示すように、エレベータ110(
図1参照)には、複数のワイヤロープWが設けられている。複数のワイヤロープWは、各々の長手方向(Z方向)に直交する方向(X方向)に並ぶように(互いに平行に)設けられている。
図5に示すように、励振コイル10は、複数のワイヤロープWを取り囲むように設けられている。また、励振コイル10は、複数のワイヤロープWの磁化の状態を同時に励振するように構成されている。具体的には、励振コイル10に励振交流電流が流されることにより、励振コイル10の内部において、励振交流電流に基づいて発生する磁界がZ方向に沿って複数のワイヤロープWに印加されるように構成されている。
【0023】
ワイヤロープWは、励振コイル10および検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)の内部(内側)を通過する。また、検知コイル20は、励振コイル10の内側に設けられている。検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)は、Z方向から見て、ワイヤロープWを取り囲むように設けられている。検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)は、たとえば、
図5に示すように、Z方向から見て、環状形状(円形形状)を有する。なお、検知コイル20は、Z方向から見て、長円形状を有してもよいし、トラック形状を有してもよい。また、検知コイル20は、Z方向から見て、矩形形状を有してもよい。
【0024】
また、
図6に示すように、励振コイル10は、第1導線部10aが形成されたプリント基板10bを含む。また、励振コイル10は、第2導線部10cが形成されたプリント基板10dを含む。第1導線部10aと第2導線部10cとは、電気的に接続されている。なお、励振コイル10および検知コイル20の配置はこれに限られない。なお、
図3の検知コイル20と
図3および
図4の励振コイル10とは、概略的に図示したものであり、実際の配置(構成)とは異なっている場合がある。
【0025】
図7に示すように、励振コイル10は、複数の検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)に対して共通に設けられている。
【0026】
また、ワイヤロープ検査装置100は、
図7に示すように、磁界印加部71および72を備えている。磁界印加部71および72は、ワイヤロープWに対して予め磁界を印加し、磁性体であるワイヤロープWの磁界の大きさおよび方向を整える。磁界印加部71および72は、Z方向において、励振コイル10および複数の検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)を挟むように配置されている。
【0027】
(磁界印加部の構成)
図8に示すように、磁界印加部71および72は、検査対象物であるワイヤロープWに対して予めY方向(ワイヤロープWの延びるX方向に交差する方向)に磁界を印加し磁性体であるワイヤロープWの磁化の大きさおよび方向を整えるように構成されている。また、磁界印加部71は、磁石71aおよび71bを含み、磁界印加部72は、磁石72aおよび72bを含んでいる。磁界印加部71(磁石71aおよび71b)は、検知部1(励振コイル10、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)に対して、ワイヤロープWの延びる方向の一方側(Z2方向側)に配置されている。また、磁界印加部72(磁石72aおよび72b)は、検知部1(励振コイル10、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)に対して、ワイヤロープWの延びる方向の他方側(Z1方向側)に配置されている。なお、磁界印加部71および72は、いずれか一方のみが設けられる構成であってもよい。
【0028】
磁界印加部71(磁石71aおよび71b)は、Z方向に交差するXY面に平行かつY方向に磁界を印加するように構成されている。磁界印加部72(磁石72aおよび72b)は、Z方向に交差するXY面に平行かつY方向に磁界を印加するように構成されている。すなわち、磁界印加部71および72は、ワイヤロープWが延びるZ方向(長尺材の長手方向)と略直交するY方向に磁界を印加するように構成されている。
【0029】
(検知コイルに関する構成)
第1実施形態では、
図9に示すように、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50は、複数のワイヤロープWの各々に設けられている。
【0030】
第1実施形態では、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50は、複数のワイヤロープWに対して相対的に移動するとともに、複数のワイヤロープWの磁束を検知するように構成されている。
【0031】
第1検知コイル30は、第1の受信コイル31と、第1の受信コイル31と差動接続されているとともに、第1の受信コイル31のZ方向(Z1方向)に設けられた第2の受信コイル32とを有する。第1の受信コイル31と第2の受信コイル32は、コイルの周回方向が逆になるような向きに直列接続されており、Z1方向の磁束の変化に対し、互いに逆方向に電流が流れるように構成されている。
【0032】
同様に、第2検知コイル40は、第1の受信コイル41と、第1の受信コイル41と差動接続されているとともに、第1の受信コイル41のZ方向(Z1方向)に設けられた第2の受信コイル42とを有する。第1の受信コイル41と第2の受信コイル42は、コイルの周回方向が逆になるような向きに直列接続されており、Z1方向の磁束の変化に対し、互いに逆方向に電流が流れるように構成されている。
【0033】
そして、第3検知コイル50は、第1の受信コイル51と、第1の受信コイル51と差動接続されているとともに、第1の受信コイル51のZ方向(Z1方向)に設けられた第2の受信コイル52とを有する。第1の受信コイル51と第2の受信コイル52は、コイルの周回方向が逆になるような向きに直列接続されており、Z1方向の磁束の変化に対し、互いに逆方向に電流が流れるように構成されている。
【0034】
第1検知コイル30は、第1の受信コイル31により得られた信号と第2の受信コイル32により得られた信号との差動信号を検知信号として出力するように設けられている。第2検知コイル40は、第1の受信コイル41により得られた信号と第2の受信コイル42により得られた信号との差動信号を検知信号として出力するように設けられている。また、第3検知コイル50は、第1の受信コイル51により得られた信号と第2の受信コイル52により得られた信号との差動信号を検知信号として出力するように設けられている。
【0035】
また、第1検知コイル30と、第2検知コイル40と、第3検知コイル50とは、Z方向において、等間隔に配置されている。検知コイル20は、Z2方向側から、第1検知コイル30、第2検知コイル40、第3検知コイル50の順に配置されている。また、複数のワイヤロープWの各々に設けられた複数の第1検知コイル30、複数の第2検知コイル40および複数の第3検知コイル50は、X方向において、それぞれ隣り合う第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50が、X方向から見て、重なるように配置されている。なお、複数のワイヤロープWの各々に設けられた複数の第1検知コイル30、複数の第2検知コイル40および複数の第3検知コイル50は、X方向において、それぞれ隣り合う第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50と、Z方向にずらして配置してもよい。
【0036】
第1実施形態では、第1検知コイル30、第2検知コイル40、第3検知コイル50は、ワイヤロープWの周方向に沿って設けられる。第1検知コイル30は、
図10および
図11に示すように、X方向およびY方向から見て、ワイヤロープWに対して相対移動する第1方向(Z方向)に対して、第1の受信コイル31と、第2の受信コイル32とが直交するように配置されている。
【0037】
第2検知コイル40は、
図10に示すように、第1検知コイル30がワイヤロープWに対して相対移動する第1方向(Z方向)に直交する方向(X方向)から見て、第1検知コイル30に対して傾斜するように配置される。また、第2検知コイル40は、X方向から見て、第3検知コイル50に対して傾斜するように配置される。すなわち、第2検知コイル40は、X方向から見て、第1検知コイル30および第3検知コイル50に対して傾斜するように配置される。第2検知コイル40は、X方向から見て、ワイヤロープWを構成するいずれかのストランドS(
図3参照)に沿うように(ストランドSのよりに沿うように)傾斜して配置されている。
【0038】
そして、第3検知コイル50は、
図11に示すように、Z方向およびX方向に直交する第3方向としてのY方向から見て、第1検知コイル30に対して傾斜するように配置されている。また、第3検知コイル50は、Y方向から見て、第2検知コイル40に対して傾斜するように配置されている。すなわち、第3検知コイル50は、Y方向から見て、第1検知コイル30および第2検知コイル40に対して傾斜するように配置されている。第3検知コイル50は、Y方向から見て、ワイヤロープWを構成するいずれかのストランドS(
図3参照)に沿うように(ストランドSのよりに沿うように)傾斜して配置されている。
【0039】
(検知信号の検知に関する構成)
ワイヤロープWにおいて、Z方向に置ける位置が同じ位置の断面位置A~K(検知位置)のワイヤロープWの断面(XY)面における位置を
図12に示す。なお、断面位置Cは、ワイヤロープWの中心に位置している。断面位置A、B、C、DおよびEは、Y1方向から、断面位置A、B、C、D、Eの順に位置しており、断面位置Aは、ワイヤロープWのY1方向側の端部に位置し、断面位置Eは、ワイヤロープWのY2方向側の端部に位置している。断面位置B、FおよびIは、Y方向において、同じ位置である。また、断面位置C、GおよびJは、Y方向において、同じ位置であり、断面位置D、HおよびKは、Y方向において、同じ位置である。
【0040】
断面位置A~Eは、X方向において、ワイヤロープWの中心に位置している。そして、断面位置Jは、ワイヤロープWのX1方向側の端部に位置しており、断面位置Gは、ワイヤロープWのX2方向側の端部に位置している。また、X方向において、断面位置Jと、断面位置A~Eとの間に断面位置IおよびKが配置されており、断面位置IおよびKは、Y方向において、同じ位置である。X方向において、断面位置Gと、断面位置A~Eとの間に断面位置FおよびHが配置されており、断面位置FおよびHは、Y方向において、同じ位置である。なお、後述する
図13~
図15に示す検知信号の一例は、ワイヤロープWにおいて、Z方向に置ける位置が同じ断面位置A~Kの断面位置の全てに異常が生じている場合の一例である。また、後述する
図13~
図15に示す検知信号の一例では、検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)は、Z2方向にワイヤロープWに対して相対的に移動している。
【0041】
第1検知コイル30は、
図13に示すように、ワイヤロープWのZ方向(第1方向)における検知位置に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されている。具体的には、第1検知コイル30は、時刻t1において、Z方向における位置が同じ位置の断面位置A~Kにおける検知信号に対応するピークを有する検知信号を検知する。第1検知コイル30は、同時刻(時刻t1)に、ワイヤロープWの断面位置A~Kを通過する。これにより、断面位置A~Kの断面位置に異常位置がある場合、
図13に示すように、第1検知コイル30の検知信号では、時刻t1に異常信号(ピーク)が検出される。断面位置A~Kの断面位置の全てに異常が生じている場合、第1検知コイル30の検知信号では、時刻t1において、断面位置A~Kにおける検知信号に対応するピークが重なった(検知信号が加算された)比較的大きな検知信号(ピーク)が検出される。
【0042】
第2検知コイル40は、ワイヤロープWの断面位置A~K(検知位置)をY1方向側の断面位置から順に通過する。すなわち、時刻t4において、断面位置Aを通過し、時刻t5において、断面位置B、FおよびIを通過する。そして、時刻t6において、断面位置C、GおよびJを通過し、時刻t7において、断面位置D、HおよびKを通過する。最後に時刻t8において、断面位置Eを通過する。
【0043】
第1実施形態では、第2検知コイル40は、
図14に示すように、ワイヤロープWのY方向(第1方向と交差する方向)における複数の検知位置を含む領域に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されている。
【0044】
具体的には、第2検知コイル40は、第1検知コイル30が時刻t1において、検知信号を検知した断面位置A~K(検知位置)を含む領域に対応するピークをY方向(第1方向と交差する方向)に分離して検知信号を検知するように構成されている。断面位置A~Kの断面位置の全てに異常が生じている場合において、第2検知コイル40が検知した検知信号は、時刻t4において、断面位置Aにおける検知信号に対応するピークを有する。そして、第2検知コイル40が検知した検知信号は、時刻t5において、断面位置B、FおよびIにおける検知信号に対応するピークが重なったピークを有する。また、第2検知コイル40が検知した検知信号は、時刻t6において、断面位置C、GおよびJにおける検知信号に対応するピークが重なったピークを有する。第2検知コイル40が検知した検知信号は、時刻t7において、断面位置D、HおよびKにおける検知信号に対応するピークが重なったピークを有する。さらに、第2検知コイル40が検知した検知信号は、時刻t8において、断面位置Eにおける検知信号に対応するピークを有する。
【0045】
また、第3検知コイル50は、ワイヤロープWの断面位置A~K(検知位置)をX1方向の断面位置から順に通過する。すなわち、時刻t9において、断面位置Jを通過し、時刻t10において、断面位置IおよびKを通過する。そして、時刻t11において、断面位置A~Eを通過し、時刻t12おいて、断面位置FおよびHを通過する。最後に時刻t13において、断面位置Gを通過する。
【0046】
第1実施形態では、第3検知コイル50は、ワイヤロープWのX方向における複数の検知位置を含む領域に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されている。
【0047】
具体的には、第3検知コイル50は、第1検知コイル30が時刻t1において、検知信号を検知した断面位置A~K(検知位置)を含む領域に対応するピークをX方向に分離して検知信号を検知するように構成されている。断面位置A~Kの断面位置の全てに異常が生じている場合において、第3検知コイル50が検知した検知信号は、時刻t9において、断面位置Jにおける検知信号に対応するピークを有する。そして、第3検知コイル50が検知した検知信号は、時刻t10において、断面位置IおよびKにおける検知信号に対応するピークが重なったピークを有する。また、第3検知コイル50が検知した検知信号は、時刻t11において、断面位置A~Eにおける検知信号に対応するピークが重なったピークを有する。第3検知コイル50が検知した検知信号は、時刻t12において、断面位置FおよびHにおける検知信号に対応するピークが重なったピークを有する。さらに、第2検知コイル40が検知した検知信号は、時刻t13において、断面位置Gにおける検知信号に対応するピークを有する。
【0048】
(処理部の構成)
第1実施形態では、処理部61は、第1検知コイル30が検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、Z方向におけるワイヤロープWの異常位置を取得するように構成されている。また、処理部61は、第2検知コイル40および第3検知コイル50が検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、取得された第1方向(Z方向)におけるワイヤロープWの異常位置の断面(XY面)内におけるワイヤロープWの異常位置を取得するように構成されている。
【0049】
第1実施形態では、処理部61は、第1検知コイル30が検知した検知信号のピークの検知時間に対する第2検知コイル40が検知した検知信号のピークの検知時間のずれの大きさに基づいて、取得された第1方向(Z方向)におけるワイヤロープWの異常位置の断面(XY)内におけるワイヤロープWの異常位置のY方向における位置を取得するように構成されている。また、第1実施形態では、処理部61は、第1検知コイル30が検知した検知信号のピークの検知時間、または、第2検知コイル40が検知した検知信号のピークの検知時間に対する第3検知コイル50が検知した検知信号のピークの検知時間のずれの大きさに基づいて、取得された第1方向(Z方向)におけるワイヤロープWの異常位置の断面(XY)内におけるワイヤロープWの異常位置のX方向における位置を取得するように構成されている。
【0050】
処理部61は、第1検知コイル30が検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、ワイヤロープWの異常位置のZ方向における位置を取得するように構成されている。たとえば、異常信号のピークが時刻t1において、検知された場合、異常位置のZ方向における位置は、断面位置A~KのZ方向における位置である。
【0051】
そして、処理部61は、第2検知コイル40が検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、取得された第1方向(Z方向)におけるワイヤロープWの異常位置の断面(XY面)内におけるワイヤロープWの異常位置のY方向における位置を取得するように構成されている。たとえば、異常信号のピークが時刻t7において、検知された場合、異常位置のX方向における位置は、断面位置D、HおよびKのX方向における位置である。
【0052】
さらに、処理部61は、第3検知コイル50が検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、取得された第1方向(Z方向)におけるワイヤロープWの異常位置の断面(XY面)内におけるワイヤロープWの異常位置のX方向における位置を取得するように構成されている。たとえば、異常信号のピークが時刻t12において、検知された場合、異常位置のY方向における位置は、断面位置FおよびHのY方向における位置である。
【0053】
ここで、断面位置A~Kにおいて、断面位置Hに異常が発生している場合には、第1検知コイル30が検知した検知信号が時刻t1において異常信号のピークを有し、かつ、第2検知コイル40が検知した検知信号が時刻t7において異常信号のピークを有し、かつ、第3検知コイル50が検知した検知信号が時刻t12において異常信号のピークを有する。処理部61は、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50の各々が検知した検知信号のピークに基づいて、異常位置が、Z方向において断面位置A~Kの位置、かつ、Y方向において断面位置D、HおよびKの位置、かつ、X方向において断面位置FおよびHの位置にあることを取得できる。したがって、処理部61は、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50の各々が検知した検知信号のピークに基づいて、異常位置が断面位置Hであることを取得できる。
【0054】
また、断面位置A~Kにおいて、断面位置CおよびHに異常が発生している場合には、第1検知コイル30が検知した検知信号が時刻t1において異常信号のピークを有し、かつ、第2検知コイル40が検知した検知信号が時刻t6および時刻t7において異常信号のピークを有し、かつ、第3検知コイル50が検知した検知信号が時刻t11および時刻t12において異常信号のピークを有する。処理部61は、第1検知コイル30が検知した検知信号のピークに基づいて、異常位置がZ方向において断面位置A~Kの位置にあることが取得できる。また、処理部61は、第2検知コイル40が検知した検知信号のピークに基づいて、異常位置がY方向において断面位置C、GおよびJの位置と、断面位置D、HおよびKの位置とにあることが取得できる。そして、処理部61は、第3検知コイル50の各々が検知した検知信号のピークに基づいて、異常位置がX方向において断面位置A~Eの位置と、断面位置FおよびHの位置とにあることが取得できる。したがって、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50の各々が検知した検知信号のピークに基づいて、処理部61は、異常位置が、断面位置C、DおよびHの3箇所、または、断面位置CおよびHの2箇所のいずれか一方であることを取得できる。そして、処理部61は、時刻t6における異常信号のピークの高さが、時刻t7における異常信号のピークの高さと同程度の場合には、時刻t7において、複数の異常信号のピーク(断面位置DおよびHのピーク)が重なっていないと考えられるので、異常位置が断面位置CおよびHであることを取得できる。これらの結果から、処理部61は、異常位置が断面位置CおよびHであることを取得できる。すなわち、第1実施形態のワイヤロープ検査装置100は、ワイヤロープWの断面内における複数の異常位置を取得することが可能である。
【0055】
そして、処理部61は、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50の各々が検知した検知信号のピークに基づいて、Z方向と交差する方向の複数のワイヤロープWの各々の断面(XY面)における異常位置を取得するように構成されている。
【0056】
なお、処理部61により取得された複数のワイヤロープWの各々の断面(XY面)における異常位置は、たとえば、
図12のように、処理装置200の表示部204に表示される。
【0057】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0058】
第1実施形態では、上記のように、複数の検知コイル20は、ワイヤロープWの周方向に沿って設けられる第1検知コイル30と、ワイヤロープWの周方向に沿って設けられ、第1検知コイル30がワイヤロープWに対して相対移動する第1方向(Z方向)に直交する方向(X方向)から見て、第1検知コイル30に対して傾斜するように配置される第2検知コイル40とを含む。ここで、第2検知コイル40は、Z方向に直交するX方向から見て、第1検知コイル30に対して傾斜するように配置されるので、第1検知コイル30および第2検知コイル40の各々がワイヤロープWの断面における異常の領域を横切る時間は、ワイヤロープWの異常の領域の断面上の位置によって異なる。これにより、第1検知コイル30によって検知される異常な検知信号と、第2検知コイル40によって検知される異常な検知信号とを、ワイヤロープWの断面における異常の領域の断面上の位置に応じて異なった時間に検知することになる。そして、第2検知コイル40の幾何学的な傾斜配置はあらかじめ判っているので、第1検知コイル30によって検知される異常な検知信号と、第2検知コイル40によって検知される異常な検知信号との検知時間のずれに基づいて、ワイヤロープWの断面における異常の領域を特定することができる。その結果、検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)がワイヤロープWに対して相対移動する方向(Z方向)における異常位置に加えて、ワイヤロープWの断面内における異常の領域を取得することができる。
【0059】
また、上記第1実施形態によるワイヤロープ検査装置100では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0060】
また、第1実施形態では、上記のように、処理部61は、第1検知コイル30が検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、検知コイル20がワイヤロープWに対して相対移動する方向である第1方向(Z方向)におけるワイヤロープWの異常位置を取得するように構成されている。これにより、第1検知コイル30が検知した異常な検知信号が検知されるまでの時間から、Z方向におけるワイヤロープWの異常位置を取得することができるので、Z方向におけるワイヤロープWの異常位置をより容易に取得することができる。また、処理部61は、第2検知コイル40が検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、取得されたZ方向におけるワイヤロープWの異常位置の断面(XY面)内におけるワイヤロープWの異常位置を取得するように構成されている。これにより、第2検知コイル40が検知した異常な検知信号が検知されるまでの時間から、ワイヤロープWの断面(XY面)内におけるワイヤロープWの異常位置を取得することができるので、ワイヤロープWの断面(XY面)内における異常位置を容易に取得することができる。
【0061】
また、第1実施形態では、処理部61は、第1検知コイル30が検知した検知信号のピークの検知時間に対する第2検知コイル40が検知した検知信号のピークの検知時間のずれの大きさに基づいて、取得された第1方向(Z方向)におけるワイヤロープWの異常位置の断面(XY)内におけるワイヤロープWの異常位置を取得するように構成されている。これにより、第1検知コイル30が検知した異常な検知信号のピークの検知時間に対する第2検知コイル40が検知した異常な検知信号のピークの検知時間のずれの大きさから、ワイヤロープWの断面(XY面)内におけるワイヤロープWの異常位置を取得することができるので、ワイヤロープWの断面(XY面)内における異常位置をより容易に取得することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の検知コイル20は、Y方向から見て、第1検知コイル30に対して傾斜するように配置される第3検知コイル50を含む。ここで、第3検知コイル50が、Z方向に直交するY方向から見て、第1検知コイル30に対して傾斜するように配置されるので、第1検知コイル30によって検知される異常な検知信号と、第3検知コイル50によって検知される異常な検知信号との検知時間のずれは、ワイヤロープWの断面における異常位置のX方向における位置に応じて異なる。これにより、第1検知コイル30によって検知される異常な検知信号と、第3検知コイル50によって検知される異常な検知信号との検知時間のずれの大きさに基づいて、ワイヤロープWの断面における異常位置のX方向における位置を特定することができる。その結果、検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)がワイヤロープWに対して相対移動する方向(Z方向)における異常位置に加えて、ワイヤロープWの断面内における異常位置のX方向における位置を容易に取得することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、第2検知コイル40は、X方向から見て、第1検知コイル30および第3検知コイル50に対して傾斜するように配置されており、第3検知コイル50は、Y方向から見て、第1検知コイル30および第2検知コイル40に対して傾斜するように配置されている。ここで、第2検知コイル40が、Z方向に直交するX方向から見て、第1検知コイル30および第3検知コイル50に対して傾斜するように配置されるので、第1検知コイル30によって検知される異常な検知信号と、第2検知コイル40によって検知される異常な検知信号と、第3検知コイル50によって検知される異常な検知信号との検知時間のずれは、ワイヤロープWの断面における異常位置のY方向における位置に応じて異なる。これにより、第1検知コイル30によって検知される異常な検知信号と、第2検知コイル40によって検知される異常な検知信号と、第3検知コイル50によって検知される異常な検知信号との検知時間のずれの大きさに基づいて、ワイヤロープWの断面における異常位置のY方向における位置を特定することができる。また、第3検知コイル50が、Z方向に直交するY方向から見て、第1検知コイル30および第2検知コイル40に対して傾斜するように配置されるので、第1検知コイル30によって検知される異常な検知信号と、第2検知コイル40によって検知される異常な検知信号と、第3検知コイル50によって検知される異常な検知信号との検知時間のずれは、ワイヤロープWの断面における異常位置のX方向における位置に応じて異なる。これにより、第1検知コイル30によって検知される異常な検知信号と、第2検知コイル40によって検知される異常な検知信号と、第3検知コイル50によって検知される異常な検知信号との検知時間のずれの大きさに基づいて、ワイヤロープWの断面における異常位置のX方向における位置を特定することができる。これらの結果、検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)がワイヤロープWに対して相対移動する方向(Z方向)における異常位置に加えて、ワイヤロープWの断面内におけるX方向における異常位置とY方向における異常位置を容易に取得することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、処理部61は、第1検知コイル30が検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、ワイヤロープWの異常位置のZ方向における位置を取得する。これにより、第1検知コイル30が検知した異常な検知信号が検知される時間までの時間から、Z方向におけるワイヤロープWの異常位置を取得することができるので、Z方向におけるワイヤロープWの異常位置をより容易に取得することができる。また、第2検知コイル40が検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、取得されたZ方向におけるワイヤロープWの異常位置の断面(XY面)内におけるワイヤロープWの異常位置のY方向における位置を取得する。これにより、第2検知コイル40が検知した異常な検知信号が検知されるまでの時間から、Y方向におけるワイヤロープWの異常位置を取得することができるので、XY面内のY方向におけるワイヤロープWの異常位置をより容易に取得することができる。さらに、処理部61は、第3検知コイル50が検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、取得されたZ方向におけるワイヤロープWの異常位置の断面(XY面)内におけるワイヤロープWの異常位置のX方向における位置を取得するように構成されている。これにより、第3検知コイル50が検知した異常な検知信号が検知されるまでの時間から、X方向におけるワイヤロープWの異常位置を取得することができるので、XY面内におけるX方向のワイヤロープWの異常位置をより容易に取得することができる。これらの結果、ワイヤロープWの異常位置のZ方向における位置、X方向における位置およびY方向における位置をより容易に取得することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、上記のように、処理部61は、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50の各々が検知した検知信号のピークに基づいて、Z方向と交差する方向の複数のワイヤロープWの各々の断面における異常位置を取得するように構成されている。これにより、複数のワイヤロープWの各々の断面における異常位置をまとめて取得することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、上記のように、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50は、複数のワイヤロープWの各々に設けられている。これにより、複数のワイヤロープWに対して、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50を共通に設ける場合に比べて、複数のワイヤロープWの各々の異常位置を精度よく取得することができる。
【0067】
また、第1実施形態では、上記のように、ワイヤロープWに対して相対的に移動するとともに、ワイヤロープWに磁束を印加する励振コイル10(励磁部)を備え、励振コイル10は、複数の検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)に対して共通に設けられている。これにより、複数の検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)の各々に励振コイル10を設ける場合と異なり、複数の検知コイル20は、複数の検知コイル20の各々に対応する励振コイル10以外の励振コイル10によって印加される磁束の影響を受けない。その結果、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50の各々は、検知信号を精度よく検知することができる。
【0068】
また、第1実施形態では、上記のように、ワイヤロープWに対して予め磁界を印加し、磁性体であるワイヤロープWの磁界の大きさおよび方向を整える磁界印加部71および72を備える。そして、励振コイル10(励磁部)は、交流電流を流すことにより発生させた磁界をワイヤロープWに対して印加するように構成されている。これにより、励振コイル10により磁界が印加されたワイヤロープWの磁化の大きさおよび磁化の方向を磁界印加部71および72によって整えることができる。その結果、検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)により検知される検知信号にノイズが生じることを抑制することができる。
【0069】
[第2実施形態]
図16を参照して、第2実施形態によるワイヤロープ検査システム400の構成について説明する。
【0070】
第2実施形態では、ワイヤロープ検査装置100の処理部61ではなく、ワイヤロープ検査システム400の処理装置420が、Z方向におけるワイヤロープWの異常位置を取得し、かつ、取得されたZ方向におけるワイヤロープWの異常位置の断面内におけるワイヤロープWの異常位置の領域を取得するように構成されている。具体的には、ワイヤロープ検査装置410の処理部61(
図2参照)は、通信部56を介して、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50の各々の検知信号を処理装置420に送信する処理を行う。処理装置420の処理部402は、通信部201を介して、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50の各々が検知した検知信号を取得して処理するように構成されている。
【0071】
処理装置420の処理部402は、第1検知コイル30が検知した検知信号に基づいて、Z方向におけるワイヤロープWの異常位置を取得し、かつ、第2検知コイル40および第3検知コイル50が検知した検知信号に基づいて、取得されたZ方向におけるワイヤロープWの異常位置の断面内におけるワイヤロープWの異常位置を取得するように構成されている。
【0072】
なお、第2実施形態のその他の構成、および、効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0073】
[第3実施形態]
図17を参照して、第3実施形態によるワイヤロープ検査システム500の構成について説明する。
【0074】
第3実施形態では、第1検知コイル530、第2検知コイル540および第3検知コイル550は、Z方向と直交するY方向において、分割可能に構成されている。すなわち、第1検知コイル530、第2検知コイル540および第3検知コイル550は、複数のワイヤロープWの長手方向(Z方向)および複数のワイヤロープWが隣り合うX方向に直交するY方向に分割可能に構成されている。
【0075】
第1検知コイル530は、Z方向と直交する方向(Y方向)に配置されている第1の受信コイル531と、ワイヤロープWに対して第1の受信コイル531が配置される側(Y2方向側)とは反対側(Y1方向側)において第1の受信コイル531とともにワイヤロープWを挟むように配置されている第2の受信コイル532とを含む。第1の受信コイル531と第2の受信コイル532とは、差動接続されている。なお、第1の受信コイル531は、請求の範囲の「第1部分」の一例であり、第2の受信コイル532は、請求の範囲の「第2部分」の一例である。
【0076】
第1の受信コイル531と第2の受信コイル532とは、コイルの周回方向が逆になるような向きに直列接続されており、Z1方向の磁束の変化に対し、互いに逆方向に電流が流れるように構成されている。
【0077】
また、第2検知コイル540は、Z方向と直交する方向(Y方向)に配置されている第1の受信コイル541と、ワイヤロープWに対して第1の受信コイル541が配置される側(Y2方向側)とは反対側(Y1方向側)において第1の受信コイル541とともにワイヤロープWを挟むように配置されている第2の受信コイル542とを含む。第1の受信コイル541と第2の受信コイル542は、差動接続されている。なお、第1の受信コイル541は、請求の範囲の「第1部分」の一例であり、第2の受信コイル542は、請求の範囲の「第2部分」の一例である。
【0078】
第1の受信コイル541と第2の受信コイル542とは、コイルの周回方向が逆になるような向きに直列接続されており、Z1方向の磁束の変化に対し、互いに逆方向に電流が流れるように構成されている。
【0079】
そして、第3検知コイル550は、Z方向と直交する方向(Y方向)に配置されている第1の受信コイル551と、ワイヤロープWに対して第1の受信コイル551が配置される側(Y2方向側)とは反対側(Y1方向側)において第1の受信コイル551とともにワイヤロープWを挟むように配置されている第2の受信コイル552とを含む。第1の受信コイル551と第2の受信コイル552とは、差動接続されている。なお、第1の受信コイル551は、請求の範囲の「第1部分」の一例であり、第2の受信コイル552は、請求の範囲の「第2部分」の一例である。
【0080】
第1の受信コイル551と第2の受信コイル552は、コイルの周回方向が逆になるような向きに直列接続されており、Z1方向の磁束の変化に対し、互いに逆方向に電流が流れるように構成されている。
【0081】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0082】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0083】
第3実施形態では、上記のように、第1検知コイル530、第2検知コイル540および第3検知コイル550の各々は、それぞれZ方向と直交する方向(Y方向)に配置されている第1の受信コイル531、541および551(第1部分)と、ワイヤロープWに対して第1の受信コイル531、541および551が配置される側とは反対側において第1の受信コイル531、541および551とともにワイヤロープWを挟むように配置されている第2の受信コイル532、542および552(第2部分)とを含む。これにより、第1検知コイル530は、Z方向と直交する方向(Y方向)において、第1の受信コイル531と、第2の受信コイル532とに分割することができる。また、第2検知コイル540は、Z方向と直交する方向(Y方向)において、第1の受信コイル541と、第2の受信コイル542とに分割することができる。そして、第3検知コイル550は、Z方向と直交する方向(Y方向)において、第1の受信コイル551と、第2の受信コイル552とに分割することができる。その結果、第1検知コイル530、第2検知コイル540および第3検知コイル550のワイヤロープWに対する取り付け、または、取り外しを容易に行うことができる。
【0084】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0085】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0086】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、ワイヤロープ検査システム300および400がエレベータ110に用いられるワイヤロープWを検査するシステムである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ワイヤロープ検査システムがクレーンや、吊り橋、ロボットなどに用いられるワイヤロープを検査するシステムであってもよい。なお、吊り橋に使用されるワイヤロープのように、ワイヤロープ自体が移動しない場合には、ワイヤロープ検査装置をワイヤロープに沿って移動させながら、ワイヤロープ検査装置によるワイヤロープの磁束の計測が行われればよい。
【0087】
また、上記第1実施形態では、処理部61が、検知コイル20が検知した検知信号のピークに基づいて、ワイヤロープWの異常を検出する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の検知コイルが検知した検知信号のピーク以外の基準に基づいて、ワイヤロープの異常を検出してもよい。
【0088】
第1実施形態では、上記のように、第2検知コイル40は、X方向(第1方向に直交する方向)から見て、第1検知コイル30に対して傾斜するように配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2検知コイルは、第1方向に直交するY方向から見て、第1検知コイルに対して傾斜するように配置されてもよい。
【0089】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の検知コイル20は、Y方向から見て、第1検知コイル30に対して傾斜するように配置される第3検知コイル50を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第3検知コイルを含まずに、第1検知コイルおよび第2検知コイルが検知した検知信号に基づいて、ワイヤロープの断面内における第1方向に直交するいずれかの方向において、ワイヤロープの異常位置の領域を取得するように構成してもよい。
【0090】
また、第1実施形態では、上記のように、第2検知コイル40は、X方向から見て、第1検知コイル30および第3検知コイル50に対して傾斜するように配置されており、第3検知コイル50は、Y方向から見て、第1検知コイル30および第2検知コイル40に対して傾斜するように配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2検知コイルは、X方向から見て、第1検知コイルおよび第3検知コイルのうちいずれか一方に対して傾斜するように配置されてもよいし、第3検知コイルは、Y方向から見て、第1検知コイルおよび第2検知コイルのうちいずれか一方に対して傾斜するように配置されてもよい。
【0091】
また、第1実施形態では、上記のように、第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50は、複数のワイヤロープWの各々に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1検知コイル、第2検知コイルおよび第3検知コイルは、複数のワイヤロープの各々に共通に設けられてもよい。また、本発明では、第1検知コイル、第2検知コイルおよび第3検知コイルのうち、いずれか1つが複数のワイヤロープの各々に共通に設けられてもよいし、第1検知コイル、第2検知コイルおよび第3検知コイルのうち、いずれか1つが複数のワイヤロープの各々に設けられてもよい。
【0092】
また、第1実施形態では、励振コイル10(励磁部)は、複数の検知コイル20(第1検知コイル30、第2検知コイル40および第3検知コイル50)に対して共通に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、励磁部は、第1検知コイル、第2検知コイル、第3検知コイルの各々に設けられてもよい。
【0093】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0094】
(項目1)
ワイヤロープが延びる方向に沿って相対的に移動するとともに、前記ワイヤロープの磁束を検知する複数の検知コイルと、
前記複数の検知コイルにより検知された検知信号を取得して処理する処理部と、を備え、
前記複数の検知コイルは、前記ワイヤロープの周方向に沿って設けられる第1検知コイルと、前記ワイヤロープの周方向に沿って設けられ、前記第1検知コイルが前記ワイヤロープに対して相対移動する第1方向に直交する方向から見て、前記第1検知コイルに対して傾斜するように配置される第2検知コイルとを含み、
前記処理部は、前記第1検知コイルが検知した検知信号に基づいて、前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置を取得し、かつ、前記第2検知コイルが検知した検知信号に基づいて、取得された前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置の領域を取得するように構成されている、ワイヤロープ検査装置。
【0095】
(項目2)
前記第1検知コイルは、前記ワイヤロープの前記第1方向における検知位置に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されており、
前記第2検知コイルは、前記ワイヤロープの前記第1方向と交差する方向における複数の検知位置を含む領域に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されており、
前記処理部は、前記第1検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置を取得し、かつ、前記第2検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、取得された前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置を取得するように構成されている、項目1に記載のワイヤロープ検査装置。
【0096】
(項目3)
前記処理部は、前記第1検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間に対する前記第2検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間のずれの大きさに基づいて、取得された前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置を取得するように構成されている、項目2に記載のワイヤロープ検査装置。
【0097】
(項目4)
前記第2検知コイルは、前記第1方向としてのZ方向に直交する第2方向としてのX方向から見て、前記第1検知コイルに対して傾斜するように配置されており、
前記複数の検知コイルは、前記ワイヤロープの周方向に沿って設けられ、前記Z方向および前記X方向に直交する第3方向としてのY方向から見て、前記第1検知コイルに対して傾斜するように配置される第3検知コイルをさらに含み、
前記処理部は、前記第1検知コイルが検知した検知信号に基づいて、前記Z方向における前記ワイヤロープの異常位置を取得し、かつ、前記第2検知コイルおよび前記第3検知コイルが検知した検知信号に基づいて、取得された前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置を取得するように構成されている、項目1~3のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【0098】
(項目5)
前記第2検知コイルは、前記X方向から見て、前記第1検知コイルおよび前記第3検知コイルに対して傾斜するように配置されており、
前記第3検知コイルは、前記Y方向から見て、前記第1検知コイルおよび前記第2検知コイルに対して傾斜するように配置されている、項目4に記載のワイヤロープ検査装置。
【0099】
(項目6)
前記第1検知コイルは、前記ワイヤロープの前記Z方向における検知位置に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されており、
前記第2検知コイルは、前記ワイヤロープの前記Y方向における複数の検知位置を含む領域に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されており、
前記第3検知コイルは、前記ワイヤロープの前記X方向における複数の検知位置を含む領域に対応するピークを有する検知信号を検知するように構成されており、
前記処理部は、前記第1検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、前記ワイヤロープの異常位置の前記Z方向における位置を取得し、かつ、前記第2検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、取得された前記Z方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置の前記Y方向における位置を取得し、かつ、前記第3検知コイルが検知した検知信号のピークの検知時間に基づいて、取得された前記Z方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置の前記X方向における位置を取得するように構成されている、項目5に記載のワイヤロープ検査装置。
【0100】
(項目7)
前記ワイヤロープは、複数設けられており、
前記処理部は、前記第1検知コイル、前記第2検知コイルおよび前記第3検知コイルの各々が検知した検知信号のピークに基づいて、前記Z方向と交差する方向の複数の前記ワイヤロープの各々の断面における異常位置を取得するように構成されている、項目4または5に記載のワイヤロープ検査装置。
【0101】
(項目8)
前記第1検知コイル、前記第2検知コイルおよび前記第3検知コイルは、複数の前記ワイヤロープの各々に設けられている、項目7に記載のワイヤロープ検査装置。
【0102】
(項目9)
前記第1検知コイル、前記第2検知コイルおよび前記第3検知コイルの各々は、前記Z方向と直交する方向に配置されている第1部分と、前記ワイヤロープに対して前記第1部分が配置される側とは反対側において前記第1部分とともに前記ワイヤロープを挟むように配置されている第2部分とを含む、項目8に記載のワイヤロープ検査装置。
【0103】
(項目10)
前記ワイヤロープに対して相対的に移動するとともに、前記ワイヤロープに磁束を印加する励磁部をさらに備え、
前記励磁部は、前記複数の検知コイルに対して共通に設けられている、項目1~9のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【0104】
(項目11)
前記ワイヤロープに対して予め磁界を印加し、磁性体である前記ワイヤロープの磁界の大きさおよび方向を整える磁界印加部をさらに備え、
前記励磁部は、交流電流を流すことにより発生させた磁界を前記ワイヤロープに対して印加するように構成されている、項目10に記載のワイヤロープ検査装置。
【0105】
(項目12)
ワイヤロープが延びる方向に沿って相対的に移動するとともに、前記ワイヤロープの磁束を検知する複数の検知コイルを備えるワイヤロープ検査装置と、
前記複数の検知コイルが検知した検知信号を取得して処理する処理装置と、を備え、
前記複数の検知コイルは、前記ワイヤロープの周方向に沿って設けられる第1検知コイルと、前記ワイヤロープの周方向に沿って設けられ、前記第1検知コイルが前記ワイヤロープに対して相対移動する第1方向に直交する方向から見て、前記第1検知コイルに対して傾斜するように配置される第2検知コイルとを含み、
前記処理装置は、前記第1検知コイルが検知した検知信号に基づいて、前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置を取得し、かつ、前記第2検知コイルが検知した検知信号に基づいて、取得された前記第1方向における前記ワイヤロープの異常位置の断面内における前記ワイヤロープの異常位置の領域を取得するように構成されている、ワイヤロープ検査システム。
【符号の説明】
【0106】
10 励振コイル(励磁部)
20 検知コイル
30、530 第1検知コイル
40、540 第2検知コイル
50、550 第3検知コイル
61 処理部
71、72 磁界印加部
100 ワイヤロープ検査装置
200 処理装置
300 ワイヤロープ検査システム
400 ワイヤロープ検査システム
402 処理部
410 ワイヤロープ検査装置
420 処理装置
531、541、551 コイル(第1部分)
532、542、552 コイル(第2部分)
W ワイヤロープ