(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】車両のドア
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20231024BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B60J5/04 N
B60J1/17 B
(21)【出願番号】P 2022556709
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2020038564
(87)【国際公開番号】W WO2022079785
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井関 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】宇都口 卓耶
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-002110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能なドアガラスを収納できるドア本体部と、そのドア本体部の上側に設けられた窓枠フレームと、上端が前記窓枠フレームに連結されており、前記ドアガラスを昇降可能にガイドするガイドレールと、前記ドア本体部の上側で前記ガイドレールと前記窓枠フレームとに囲まれた範囲内に設けられたドアミラー取付け用パネルとを備える車両のドアであって、
前記ドアミラー取付け用パネルと前記ガイドレール間に形成されたドア表側とドア内側との隙間が前記閉鎖部材によって塞がれており、
前記ドアミラー取付け用パネルは、ドア外側のプレートアウターと
ドア内側のプレートインナーとから構成されており、
前記閉鎖部材は、前記プレートアウターの端縁と前記プレートインナーの端縁間で上下方向に延びるように形成された縦長開口部に嵌め込まれて、その縦長開口部を塞ぐ縦長蓋状部と、前記縦長蓋状部の外側に形成されており、前記ガイドレールが幅方向両側から拘束された状態で嵌合するレール位置決め部とを備えている車両のドア。
【請求項3】
請求項1に記載された車両のドアであって、
前記閉鎖部材は、前記ドアミラー取付け用パネルのプレートインナーをドア内側から覆う被覆部と、前記縦長蓋状部とレール位置決め部とからなる縦長ブロック部とを備えており、
前記被覆部と縦長ブロック部とがインテグラルヒンジで結合されている車両のドア。
【請求項4】
請求項1又は請求項3のいずれかに記載された車両のドアであって、
前記閉鎖部材の被覆部には、ドアミラーのワイヤーハーネスを支持する支持部が設けられている車両のドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降可能なドアガラスを収納できるドア本体部と、そのドア本体部の上側に設けられた窓枠フレームと、前記ドアガラスを昇降可能にガイドするガイドレールと、前記ドア本体部の上側で前記ガイドレールと前記窓枠フレームとに囲まれた範囲内に設けられたドアミラー取付け用パネルとを備える車両のドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来車両のドアに関する技術が種々提案されている。例えば、特開2004-230939号公報に記載されている車両のドア100は、
図9、
図10(
図9のX-X平断面図)に示すように、昇降可能なドアガラス120を収納できるドア本体部103と、そのドア本体部103の上側に設けられた窓枠フレーム105とを備えている。また、ドア100の前側には、ドアガラス120を昇降可能にガイドするガイドレール107が設けられている。そして、ドア本体部103の上側には、ガイドレール107と窓枠フレーム105とに囲まれた範囲内にドアミラー取付け用パネル110が設けられている。
【0003】
ドアミラー取付け用パネル110は、
図10に示すように、ドア外側のプレートアウター112と、ドア内側のプレートインナー113とから構成されている。前記プレートアウター112はガイドレール107と一体成形されており、前記プレートインナー113は窓枠フレーム105と一体成形されている。そして、前記プレートインナー113には、ガイドレール107との隙間を塞ぐ平面角形の閉鎖部113pが折り曲げ成形されている。このように、ドアミラー取付け用パネル110のプレートアウター112がガイドレール107と一体成形されており、前記プレートインナー113が窓枠フレーム105と一体成形されているため、ドアミラー取付け用パネル110、プレートアウター112等の製作に手間が掛かる。また、プレートインナー113の一部を折り曲げた閉鎖部113pによって、プレートインナー113とガイドレール107間の隙間を塞ぐ構成のため、前記隙間を確実に塞ぐのは難しい。
【0004】
上記問題点を解決するため、
図11に示すように、窓枠フレーム105と、ドアミラー取付け用パネル110と、ガイドレール107とを個別に製作し、組立てることで製作の容易化を図ることが考えられる。この場合、窓枠フレーム105とドアミラー取付け用パネル110間の隙間S1と、前記ドアミラー取付け用パネル110とガイドレール107間の隙間S2とをプレートインナー113の被覆材115によって室内側から塞ぐことが一般的に行われる。
【発明の概要】
【0005】
しかし、
図11に示す構成では、ドアミラー取付け用パネル110のプレートアウター112とガイドレール107間の隙間S3を塞ぐことができない。このため、車両走行時にドアミラー123(
図11ではドアミラーのベース座を表示)に沿って流れ、ドアミラー123の後方のドアガラス120の位置で渦巻く風が前記隙間S3からドアミラー取付け用パネル110内に入り込み、風切り音が発生する。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両走行時のドアミラーの部分における風切り音を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のひとつの態様は、昇降可能なドアガラスを収納できるドア本体部と、そのドア本体部の上側に設けられた窓枠フレームと、上端が前記窓枠フレームに連結されており、前記ドアガラスを昇降可能にガイドするガイドレールと、前記ドア本体部の上側で前記ガイドレールと前記窓枠フレームとに囲まれた範囲内に設けられたドアミラー取付け用パネルとを備える車両のドアであって、前記ドアミラー取付け用パネルと前記ガイドレール間に形成されたドア表側とドア内側との隙間が閉鎖部材によって塞がれている。
【0008】
本発明によると、ドアミラー取付け用パネルとガイドレール間に形成されたドア表側とドア内側との隙間が閉鎖部材によって塞がれている。このため、車両走行時にドアミラーに沿って流れる空気が前記ドアミラー後方のドアガラスの外側で渦を巻き、その空気がドアミラー取付け用パネルとガイドレール間の隙間からドアミラー取付け用パネル内に入り込むことがない。これにより、車両走行時のドアミラーの部分の風切り音を抑制できる。
【0009】
実施形態によっては、ドアミラー取付け用パネルは、ドア外側のプレートアウターと、ドア内側のプレートインナーとから構成されており、閉鎖部材は、前記プレートアウターの端縁と前記プレートインナーの端縁間で上下方向に延びるように形成された縦長開口部に嵌め込まれて、その縦長開口部を塞ぐ縦長蓋状部と、前記縦長蓋状部の外側に形成されており、前記ガイドレールが幅方向両側から拘束された状態で嵌合するレール位置決め部とを備えている。このため、閉鎖部材の縦長蓋状部がドアミラー取付け用パネルの縦長開口部を塞ぎ、ガイドレールが閉鎖部材のレール位置決め部と嵌合した状態で、前記ドアミラー取付け用パネルと前記ガイドレール間に形成されたドア表側とドア内側との隙間が塞がれる。さらに、閉鎖部材のレール位置決め部でガイドレールを位置決めできるため、ガイドレールの上端を窓枠フレームに取付ける作業、及びガイドレールをドア本体部に取付ける作業の効率が向上する。
【0010】
実施形態によっては、閉鎖部材は、ドアミラー取付け用パネルのプレートインナーをドア内側から覆う被覆部と、縦長蓋状部とレール位置決め部とからなる縦長ブロック部とを備えており、前記被覆部と縦長ブロック部とがインテグラルヒンジで結合されている。このため、ドアミラー取付け用パネルのプレートインナーを閉鎖部材の被覆部で覆った後、インテグラルヒンジを中心に縦長ブロック部を回動させて、ドアミラー取付け用パネルの縦長開口部を縦長ブロック部の縦長蓋状部で塞ぐことが可能になる。このため、閉鎖部材を平面状に展開した状態で成形できるようになり、例えば、閉鎖部材を型成形する際の成形型の構成が簡単になる。
【0011】
実施形態によっては、閉鎖部材の被覆部には、ドアミラーのワイヤーハーネスを支持する支持部が設けられている。即ち、ドアミラーのワイヤーハーネスを閉鎖部材の被覆部の支持部で支持できるため、ワイヤーハーネスがドア本体部のパネルに擦れて生じる損傷、及び騒音を防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、車両走行時のドアミラーの部分における風切り音を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係る車両のフロントドアを車両内側から見た模式図である。
【
図2】前記フロントドアの窓枠部の前部を車両内側後方から見た斜視図(
図1のII矢視拡大斜視図)である。
【
図5】ドアミラー取付け用パネルのプレートインナーを表す斜視図である。
【
図6】前記フロントドアの窓枠部の前部を車両外側後方から見た斜視図(ドアミラー取付け用パネルのプレートアウターの斜視図)である。
【
図7】プロテクタを車両内側上方から見た全体斜視図である。
【
図9】従来のフロントドアの窓枠部の前部を車両内側前方から見た斜視図である。
【
図11】従来の別のフロントドアの窓枠部の前部における平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、
図1から
図8に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両のドアの説明を行う。本実施形態に係るドアは、車両の右側のフロントドアである。ここで、図中における前後左右及び上下は、前記フロントドアを備える車両の前後左右及び上下に対応している。
【0015】
<フロントドア10の概要ついて>
フロントドア10は、
図1に示すように、昇降可能なドアガラス31を収納するドア本体部20と、そのドア本体部20の上側に設けられた窓枠部30とから構成されている。ドア本体部20は、
図3(
図2のIII-III縦断面図)に示すように、フロントドア10の意匠面を構成するアウターパネル22と車室側のインナーパネル23とが表裏から合わせられて互いの周縁部分で接合されることで、内部空間を有する浅い角箱状に構成されている。ドア本体部20の上端面にはドアガラス31を出し入れするための上端開口部(図示省略)が形成されており、ドア本体部20の内部空間にはドアガラス31を上下動させる機構やドア補強部材等が収納されている。
【0016】
前記ドア本体部20の前端位置には、上下一対のヒンジ機構(図示省略)が設けられており、それらのヒンジ機構を介してドア本体部20は車両ボディ(図示省略)のドア開口部の前端縁に取付けられている。これにより、フロントドア10は、ドア開口部を閉じる全閉位置と乗降口を全開にする全開位置との間で水平回動が可能になる。また、ドア本体部20の後端位置には、フロントドア10が前記ドア開口部を閉じた状態で車体のストライカと係合するドアロック機構(図示省略)が設けられている。
【0017】
<フロントドア10の窓枠部30について>
フロントドア10の窓枠部30は、
図1に示すように、その窓枠部30の縁部を構成して、上限位置まで上昇したドアガラス31の端縁を受けるドアフレーム33と、ドアガラス31の昇降を前側でガイドする前部ガイドレール35と、同じくドアガラス31の昇降を後側でガイドする支柱状フレーム37とを備えている。
【0018】
<ドアフレーム33について>
ドアフレーム33は、
図1に示すように、ドア本体部20の前端位置で立ち上がり、斜め後上方に延びる立ち上がり部33kと、立ち上がり部33kの後端につながる曲がり部33wと、曲がり部33wの後端から後方に延びて支柱状フレーム37の上端につながる直線部33uとから構成されている。ドアフレーム33は、
図4(
図2のIV-IV平断面図)に示すように、鋼板を、例えば、ロールフォーミング成形により連続して折り曲げることで断面略T字形に成形されており、立ち上がり部33k、曲がり部33w、及び直線部33uの断面形状が等しくなるように構成されている。ドアフレーム33の外周側には、外周溝部335がドアフレーム33に沿って形成されており、その外周溝部335にフロントドア10と車両ボディのドア開口部(図示省略)の周縁間をシールするウエザーストリップ45が嵌め込まれている。また、ドアフレーム33の内周側には、内周溝部336が形成されており、その内周溝部336にドアガラス31の端縁を挟んで受けるガラスラン(図示省略)が嵌め込まれている。
【0019】
<前部ガイドレール35等について>
前部ガイドレール35は、上記したように、ドアガラス31の昇降を前側でガイドするレールであり、
図4に示すように、断面略U字形に成形されている。前部ガイドレール35は、
図1、
図2に示すように、若干後傾した状態で立てられており、下端部がドア本体部20の内部に固定されている。前部ガイドレール35の上部は、ドア本体部20から上方に突出しており、その前部ガイドレール35の上端部がドアフレーム33の立ち上がり部33kの下側面に連結されている。
【0020】
前部ガイドレール35は、
図4に示すように、後側で開放する溝部35mを備える断面略U字形のレールであり、その溝部35mがドアフレーム33の内周溝部336に接続されている。そして、前部ガイドレール35の溝部35mには、ドアフレーム33の内周溝部336に嵌め込まれたガラスラン43の延長部分が嵌め込まれている。また、窓枠部30の後側に設けられた支柱状フレーム37にも前側で開放する溝部(図示省略)が設けられており、その溝部がドアフレーム33の内周溝部336に接続されている。そして、支柱状フレーム37の溝部にガラスラン43が嵌め込まれている。
【0021】
前記ドア本体部20の上側でドアフレーム33の立ち上がり部33kと前部ガイドレール35とに囲まれた範囲の下半分には、
図1、
図2に示すように、ドアミラー60が取付けられるミラーブラケット50が設けられている。また、ミラーブラケット50の上側には、ドアフレーム33の立ち上がり部33kと前部ガイドレール35とに囲まれた範囲を塞ぐ固定ガラス32が設けられている。
【0022】
<ミラーブラケット50について>
ミラーブラケット50は、ドアミラー60が取付けられるブラケットであり、
図2~
図4に示すように、ドアミラー取付け用パネル500とプロテクタ520とから構成されている。ドアミラー取付け用パネル500は、
図3、
図4に示すように、ドア外側のプレートアウター501とドア内側のプレートインナー503とから略箱形に構成されている。プレートアウター501には、
図3の縦断面図、及び
図6の斜視図に示すように、上端部に縦フランジ部501fが設けられており、縦フランジ部501fの下側に棚状の段部501dが設けられている。そして、プレートアウター501の段部501d上に、
図3に示すように、固定ガラス32を支持するシール部材32sが固定されている。
【0023】
プレートアウター501の段部501dの下側には、
図6に示すように、縦壁部501wが設けられている。そして、縦壁部501wには、ドアミラー60を取付けるためのボルト孔(図番省略)及びドアミラー60のワイヤーハーネス65(
図3参照)を通す開口部501hが形成されている。また、プレートアウター501の縦壁部501wの下部外側面には、
図3、及び
図6に示すように、ドア本体部20のアウターパネル22の縦フランジ部22fとアウターリインフォース25の縦フランジ部25fとが溶接等により接合されている。プレートアウター501の縦壁部501wの下側は、
図3に示すように、車幅方向に内側(左側)に折り曲げられることで横壁部501yが形成されており、その横壁部501yの左端が下方に折り曲げられることで左側縦壁部501xが形成されている。そして、プレートアウター501の左側縦壁部501xの下部501zには、ドア本体部20のインナーパネル23とインナーリインフォース26の下部とが溶接等により接合されている。
【0024】
ドアミラー取付け用パネル500のプレートインナー503は、
図3、及び
図5に示すように、上端部に縦フランジ部503fが設けられており、その縦フランジ部503fの下側に縦壁部503wが設けられている。プレートインナー503の縦フランジ部503fは、プレートアウター501の縦フランジ部501fと溶接等により接合されている。また、プレートインナー503の縦壁部503wには、
図5に示すように、ドアミラー60のワイヤーハーネス65(
図3参照)を通す開口部503hと、ボルト締め用の作業孔(図番省略)が設けられている。さらに、プレートインナー503の縦壁部503wの下側には、
図3に示すように、下側フランジ部503xが形成されている。そして、プレートインナー503の下側フランジ部503xには、プレートアウター501の左側縦壁部501xの上部側面が溶接等により接合されている。また、プレートインナー503の下側フランジ部503xには、ドア本体部20のインナーパネル23の縦フランジ部23fとインナーリインフォース26の縦フランジ26fとが溶接等により接合されている。
【0025】
ドアミラー取付け用パネル500の前端縁、即ち、プレートアウター501の前端縁501mとプレートインナー503の前端縁503mとの間には、
図4に示すように、縦長開口部Sfが形成されている。そして、ドアミラー取付け用パネル500の前端縁の縦長開口部Sfに対してドアフレーム33が嵌合している。また、ドアミラー取付け用パネル500の後端縁、即ち、プレートアウター501の後端縁501bとプレートインナー503の後端縁503bとの間には、上下方向に直線状に延びる縦長開口部Sbが形成されている。ドアミラー取付け用パネル500の後端縁の縦長開口部Sbは、プロテクタ520(後記する)の縦長ブロック部524によって塞がれ、その縦長ブロック部524に対して前部ガイドレール35がセットされる。
【0026】
<ミラーブラケット50のプロテクタ520について>
プロテクタ520は、
図2~
図4に示すように、ドアミラー取付け用パネル500のプレートインナー503を室内側から覆うとともに、ドアミラー取付け用パネル500と前部ガイドレール35間に形成されたドア表側とドア内側との隙間を塞ぐ部材である。プロテクタ520は、樹脂の射出成形品であり、
図4、及び
図7に示すように、ドアミラー取付け用パネル500のプレートインナー503を室内側から覆う被覆部521と、ドアミラー取付け用パネル500の後端縁の縦長開口部Sbを塞ぐ縦長ブロック部524とを備えている。そして、プロテクタ520の被覆部521と縦長ブロック部524とが、
図7、
図8に示すように、インテグラルヒンジ523で結合されている。
【0027】
プロテクタ520の被覆部521には、
図3に示すように、プレートインナー503の上端部の縦フランジ部503fから縦壁部503wの下端部までを覆う縦壁部521mが設けられている。被覆部521の縦壁部521mには、プレートインナー503の開口部503hに対応する位置にドアミラー60のワイヤーハーネス65を通すケーブル用開口部521hが形成されている。また、被覆部521の縦壁部521mの下側には、
図2、
図3に示すように、その縦壁部521mよりも室内側に若干張り出した状態で、ドア本体部20のインナーパネル23の縦フランジ部23fとインナーリインフォース26の縦フランジ26fとを覆う段差状縦壁部521xが設けられている。そして、被覆部521の段差状縦壁部521xの下側には、ドアミラー60のワイヤーハーネス65を支持する支持部521yが設けられている。
【0028】
プロテクタ520の被覆部521の前端縁には、
図4に示すように、ドアミラー取付け用パネル500のプレートインナー503の前端縁503mとドアフレーム33間の隙間を塞ぐシール部521sが形成されている。また、プロテクタ520の被覆部521の後端縁には、
図8に示すように、インテグラルヒンジ523を介して縦長ブロック部524が連結されている。即ち、プロテクタ520の被覆部521の後端縁には、縦長ブロック部524がインテグラルヒンジ523を中心に水平回動可能な状態で連結されている。
【0029】
プロテクタ520の縦長ブロック部524は、縦に長い柱状のブロックであり、
図4、及び
図8に示すように、裏面側にドアミラー取付け用パネル500の後端縁の縦長開口部Sbを塞ぐ縦長蓋状部524kが形成されている。また、縦長ブロック部524の裏面側には、縦長蓋状部524kの両側にプレートインナー503の後端縁503bが嵌合する縦溝524vとプレートアウター501の後端縁501bが嵌合する段部524dとが形成されている。また、縦長ブロック部524の表面側には、前部ガイドレール35が幅方向両側から拘束された状態で嵌合するレール位置決め部524sが設けられている。プロテクタ520は、
図8に示すように、被覆部521と縦長ブロック部524とが展開した状態、即ち、被覆部521の表裏と縦長ブロック部524の表裏とが同一方向となるように並んだ状態で成形型により成形される。これにより、成形型の構成を簡単にできる。
【0030】
<ドアミラー取付け用パネル500の取付けについて>
図3に示すように、ドアミラー取付け用パネル500におけるプレートアウター501の上端部の縦フランジ部501fとプレートインナー503の上端部の縦フランジ部503fとが互いに溶接等により接合される。また、プレートインナー503の下側フランジ部503xとプレートアウター501の左側縦壁部501xの上部側面とが同じく溶接等により接合される。これにより、ドアミラー取付け用パネル500は、プレートアウター501とプレートインナー503とにより、略箱形に構成される。次に、ドアミラー取付け用パネル500は、
図3に示すように、プレートアウター501等の縦壁部501wの下部よりも下側部分がドア本体部20の上端開口部(図番省略)からドア本体部20の内部空間の前端部に収納される。さらに、ドアミラー取付け用パネル500は、
図4、
図5等に示すように、前端部分の縦長開口部Sfがドアフレーム33と嵌合する位置に位置決めされる。
【0031】
この状態で、
図3に示すように、ドアミラー取付け用パネル500のプレートインナー503の下側フランジ部503x等がドア本体部20のインナーパネル23の縦フランジ部23f、及びインナーリインフォース26の縦フランジ26fに溶接等により接合される。さらに、プレートアウター501の左側縦壁部501xの下部501zがドア本体部20のインナーパネル23、及びインナーリインフォース26の下部に溶接等により接合される。また、プレートアウター501の縦壁部501wの下部外側面が、
図3、
図6に示すように、ドア本体部20のアウターパネル22の縦フランジ部22f、及びアウターリインフォース25の縦フランジ部25fに溶接等により接合される。この状態で、ドアミラー取付け用パネル500の取付けが完了する。
【0032】
<プロテクタ520の取付けについて>
次に、プロテクタ520の被覆部521が、
図3、及び
図8等に示すように、ドアミラー取付け用パネル500のプレートインナー503の縦フランジ部503f、縦壁部503w、及びドア本体部20のインナーパネル23の上部を覆うように定位置に取付けられる。これにより、ドアミラー取付け用パネル500のプレートインナー503とドアフレーム33間の隙間が被覆部521のシール部521sによって塞がれる。次に、
図8において、プロテクタ520の縦長ブロック部524がインテグラルヒンジ523を中心にして約90°左回動させられることで、
図4に示すように、縦長ブロック部524の縦長蓋状部524kがドアミラー取付け用パネル500の後端縁の縦長開口部Sbに嵌め込まれる。
【0033】
即ち、ドアミラー取付け用パネル500のプレートインナー503の後端縁503bとプレートアウター501の後端縁501b間の縦長開口部Sbに縦長ブロック部524の縦長蓋状部524kが嵌め込まれることで、前記縦長開口部Sbが塞がれる。次に、
図4等に示すように、プロテクタ520の縦長ブロック部524のレール位置決め部524sに前部ガイドレール35が嵌合して位置決めされる。この状態で、前部ガイドレール35の下部がドア本体部20の内部に連結され、前部ガイドレール35の上端部がドアフレーム33の立ち上がり部33kの下側面に連結されて、前部ガイドレール35の取付けが完了する。このように、ドアミラー取付け用パネル500の縦長開口部Sbを塞ぐ縦長ブロック部524のレール位置決め部524sに前部ガイドレール35が嵌合することで、ドアミラー取付け用パネル500と前部ガイドレール35間のドア表側とドア内側との隙間が塞がれるようになる。これにより、車両走行時にドアミラー取付け用パネル500と前部ガイドレール35間からドアミラー取付け用パネル500の内側に外気が入り込むことがなくなり、ドアミラー60の部分における風切り音を抑制できる。
【0034】
<ドアミラー60の取付けについて>
ドアミラー60は、そのドアミラー60のワイヤーハーネス65がドアミラー取付け用パネル500の開口部501h,503h、及びプロテクタ520のケーブル用開口部521hに通された状態で、
図4等に示すように、プレートアウター501に対してボルト止めされる。そして、ドアミラー60のワイヤーハーネス65が、
図3に示すように、プロテクタ520の被覆部521の支持部521yに、例えば、結束等により支持される。これにより、ワイヤーハーネス65がドアミラー取付け用パネル500、及びドア本体部20のインナーパネル23に擦れることによる損傷、及び騒音を防止できる。ここで、ドアミラー取付け用パネル500、プロテクタ520、ワイヤーハーネス65、及びドア本体部20のインナーパネル23は、
図3に示すように、内装材であるドアトリム68によって覆われる。
【0035】
<本実施形態における用語と本発明における用語との対応について>
本実施形態におけるフロントドア10が本発明の車両のドアに相当し、窓枠部30のドアフレーム33が本発明における窓枠フレームに相当する。また、プロテクタ520が本発明の閉鎖部材に相当する。また、前部ガイドレール35が本発明のガイドレールに相当する。
【0036】
<本実施形態に係るフロントドア10の長所について>
本実施形態に係るフロントドア10によると、ドアミラー取付け用パネル500と前部ガイドレール35(ガイドレール)間に形成されたドア表側とドア内側との隙間がプロテクタ520(閉鎖部材)によって塞がれている。このため、車両走行時にドアミラー60に沿って流れる空気がドアミラー後方のドアガラス31の外側で渦を巻き、その空気がドアミラー取付け用パネル500と前部ガイドレール35間の隙間からドアミラー取付け用パネル500内に入り込むことがない。これにより、車両走行時のドアミラー60の部分の風切り音を抑制できる。
【0037】
また、プロテクタ520(閉鎖部材)の縦長ブロック部524の表側には、
図4等に示すように、前部ガイドレール35を幅方向両側から挟んで位置決めするレール位置決め部524sが設けられている。このため、前部ガイドレール35の上端をドアフレーム33(窓枠フレーム)に取付ける作業、及び前部ガイドレール35をドア本体部20に取付ける作業の効率が向上する。また、プロテクタ520の被覆部521と縦長ブロック部524とがインテグラルヒンジ523により結合されているため、プロテクタ520を平面状に展開した状態で成形できるようになり、例えば、プロテクタ520を型成形する際の成形型の構成が簡単になる。さらに、プロテクタ520の被覆部521には、ドアミラー60のワイヤーハーネス65を支持する支持部521yが設けられている。このため、ワイヤーハーネス65をプロテクタ520の支持部521yに結束することで、ワイヤーハーネス65がドア本体部20のプレートインナー503等に擦れて生じる損傷、及び騒音を防止できる。
【0038】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、プロテクタ520の被覆部521と縦長ブロック部524とをインテグラルヒンジ523で結合する例を示した。しかし、プロテクタ520の被覆部521と縦長ブロック部524と個別に製作することも可能である。また、本実施形態では、ミラーブラケット50のドアミラー取付け用パネル500の上側に固定ガラス32を備えるフロントドア10について例示した。しかし、ミラーブラケット50のドアミラー取付け用パネル500がドアフレーム33と前部ガイドレール35で囲われた範囲の全体を塞ぐ構成のフロントドアについて本発明を適用することも可能である。さらに、フロントドア10以外のドアについて本発明を適用することも可能である。