(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】電子線硬化型オーバーコートニス、および食品包装材料
(51)【国際特許分類】
C09D 133/04 20060101AFI20231024BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231024BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C09D133/04
B32B27/30 A
B65D65/02 E
(21)【出願番号】P 2023502040
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2021029434
(87)【国際公開番号】W WO2022180887
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2021029359
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】武田 政史
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-298164(JP,A)
【文献】特開2002-309021(JP,A)
【文献】特開平09-131846(JP,A)
【文献】特開平09-316795(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/047780(JP,A1)
【文献】特開2013-208719(JP,A)
【文献】特開平09-302264(JP,A)
【文献】特開昭57-198900(JP,A)
【文献】特開昭62-178542(JP,A)
【文献】特開2007-020454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0301331(US,A1)
【文献】特表2007-519771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00ー 20/70
C08F 290/00-290/14
C09D 133/00-133/26
C09D 4/00- 4/06
B65D 65/00ー 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品包装材料の表面層の形成に用いられる電子線硬化型オーバーコートニスであって、
1以上の(メタ)アクリレート化合物を含有する(メタ)アクリレート成分(A)(但し、シリコーン変性された化合物を除く)を含み、光重合開始剤を実質的に含有
せず、
前記(メタ)アクリレート成分(A)が、分子量が500以上の(メタ)アクリレート化合物(A-1)を含み、
GPCによる分子量分布のグラフから得られる分子量が500以上の面積の割合に基づき算出される前記(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量が、
電子線硬化型オーバーコートニスの全質量を基準として70質量%以上であり、かつ、
前記(メタ)アクリレート成分(A)において、
GPCによる分子量分布のグラフから得られる分子量が500未満の面積の割合に基づき算出される分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量が、
電子線硬化型オーバーコートニスの全質量を基準として25質量%未満であ
り、
25℃における粘度が1,000mPa・s以下である、電子線硬化型
オーバーコートニス。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート化合物(A-1)が、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びエポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の電子線硬化型
オーバーコートニス。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート化合物(A-1)が、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートを、
電子線硬化型オーバーコートニスの全質量を基準として50質量%以上含有する、請求項1又は2に記載の電子線硬化型
オーバーコートニス。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート化合物(A-1)において、
GPCによる分子量分布のグラフから得られる分子量が1,000以上の面積の割合に基づき算出される分子量が1,000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートの含有量が、
電子線硬化型オーバーコートニスの全質量を基準として35質量%未満である、請求項3に記載の電子線硬化型
オーバーコートニス。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート化合物(A-1)が、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びエポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上を、
電子線硬化型オーバーコートニスの全質量を基準として50質量%以上含有する、請求項1又は2に記載の電子線硬化型
オーバーコートニス。
【請求項6】
さらに固体ワックス(B)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の電子線硬化型
オーバーコートニス。
【請求項7】
前記固体ワックス(B)の平均粒子径が、2~8μmである、請求項6に記載の電子線硬化型
オーバーコートニス。
【請求項8】
前記固体ワックス(B)の含有量が、
電子線硬化型オーバーコートニスの全質量を基準として、0.1~3.0質量%である、請求項6又は7に記載の電子線硬化型
オーバーコートニス。
【請求項9】
さらに(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の電子線硬化型
オーバーコートニス。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物の含有量が、
電子線硬化型オーバーコートニスの全質量を基準として、0.1~2.0質量%である、請求項
9に記載の電子線硬化型
オーバーコートニス。
【請求項11】
さらに非反応性シリコーン系化合物を含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の電子線硬化型
オーバーコートニス。
【請求項12】
前記非反応性シリコーン系化合物の含有量が、
電子線硬化型オーバーコートニスの全質量を基準として、0.1~2.0質量%である、請求項
11に記載の電子線硬化型
オーバーコートニス。
【請求項13】
基材と、基材上に設けられた表面層とを含み、前記表面層は請求項
1~12のいずれか1項に記載の電子線硬化型
オーバーコートニスの硬化層である、食品包装材料。
【請求項14】
基材と、基材上に設けられた表面層とを含む食品包装材料であって、
前記表面層
は電子線硬化型
オーバーコートニスの硬化層であり、
前記電子線硬化型
オーバーコートニスは、
1以上の(メタ)アクリレート化合物を含有する(メタ)アクリレート成分(A)(但し、シリコーン変性された化合物を除く)を含み、前記(メタ)アクリレート成分(A)は、分子量が500以上の(メタ)アクリレート化合物(A-1)を含み、
GPCによる分子量分布のグラフから得られる分子量が500以上の面積の割合に基づき算出される前記(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量が、
電子線硬化型オーバーコートニスの全質量を基準として70質量%以上であり、かつ、
前記(メタ)アクリレート成分(A)において、GPCによる分子量分布のグラフから得られる分子量が500未満の面積の割合に基づき算出される分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量が、
電子線硬化型オーバーコートニスの全質量を基準として25質量%未満であ
り、
25℃における粘度が1,000mPa・s以下である、食品包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は電子線硬化型組成物に関し、より詳細には電子線硬化型オーバーコートニスとして好適に使用できる電子線硬化型組成物に関する。本発明の他の実施形態は、電子線硬化型組成物の硬化層を表面に有する食品包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、瞬間乾燥による工程時間の短縮、揮発性成分を含有しないこと(Non-VOC)による環境負荷低減、および架橋反応による強固な塗膜物性といった観点から、印刷産業では活性エネルギー線硬化技術の利用が拡大している。印刷産業における活性エネルギー線硬化の利用としては、紫外線(UV)硬化と電子線(EB)硬化を利用したインキおよびニスが実用化されている。なかでも、設備投資およびランニングコストの観点から、紫外線(UV)硬化型が主流となっている。しかしながら、UV硬化反応に必要となる光重合開始剤は、多くの場合、比較的低分子量であり、硬化後の塗膜中に残存しやすい。そのため、UV硬化型の組成物を食品包装の用途で使用した場合、有害な光重合開始剤が内包食品へ移行すること(マイグレーション)が問題視されている。一方、EB硬化の反応形態は、UV硬化と同様にラジカル反応が主体であるが、高エネルギーの電子線を利用するため光重合開始剤を必要としない。この点において、EB硬化型の組成物は、食品包装等の用途向けた印刷インキ又はニスに対して好ましく利用できる。
【0003】
UV硬化とEB硬化の組成物で使用する原料構成は、光重合開始剤および増感剤の有無以外は、ほぼ同一である。光重合開始剤を必要としないEB硬化において、光重合開始剤のマイグレーションリスクは排除されるが、主成分であるアクリレートモノマーおよびアクリレートオリゴマーと、その他の不活性樹脂および添加剤などの成分はマイグレーション評価の対象物質となる。しかし、分子量1,000を超えるアクリレートオリゴマーおよび不活性樹脂などは、マイグレーション自体のリスクが低いとともに、体内に吸収されるリスクも低いと考えられている。また、添加剤については、その量が極微量であればマイグレーションのリスクは低い。すなわち、UV硬化およびEB硬化を含む活性エネルギー線硬化型組成物を食品包装の用途で使用する場合、アクリレートモノマーがマイグレーション評価の重要な対象となる。
【0004】
食品包装においてインキ又はニスを印刷した印刷面は、直接食品に接触することのない構成(食品非接触)となっている場合が多い。上記食品包装の構成において主要なマイグレーション機構は、塗膜中の成分が基材を透過するペネトレーションと、塗膜が基材の非印刷面(裏面)に接触することによるセットオフであり、両要因の影響を総合的に評価しなければならない。EB硬化方式では表面硬化が良好であるため、前者のペネトレーションが主たる要因となる。ペネトレーションによるマイグレーションの抑制には、基材そのものの膜厚増加、バリア性の高い基材の適用、アルミ箔、シリカ、およびアルミナ蒸着などの完全バリア層の導入などの方法が効果的である。しかし、これらの方法は、近年の環境対策としてのプラスチック使用量削減、およびリサイクル性という観点から実用的ではない。一方、リサイクル性の高いポリオレフィンフィルム(ポリエチレンやポリプロピレンなど)は、比較的ガラス転移温度が低いため、バリア性が低く、マイグレーション抑制効果も低い。そのため、インキ又はニスを印刷した印刷面からのマイグレーションを抑制する技術が必要とされている。
【0005】
プラスチック使用量削減の方策として、先述のポリオレフィンフィルムの利用拡大によるリサイクル性の向上に加え、食品包材の主流となっている裏刷り印刷のラミネーション構成から表刷り構成への代替が検討されている。裏刷り印刷のラミネーション包材は、複数のフィルムを接着剤で張り合わせることによって、内容物が必要とする保護機能を発現させており、印刷面がフィルム層に挟まれているため、インキ塗膜の強度は必要とならない。一方、表刷り印刷では、インキ塗膜が包材の最表面となるため、内容物の充填および搬送工程、並びに使用環境に耐えうる塗膜強度が必要となる。一般的に、表刷り印刷においては、インキ塗膜の保護を目的として、オーバーコートニスが塗布される。しかし、食品包材用途として主流となっている溶剤又は水性タイプの熱乾燥型オーバーコートニスを使用した場合、十分な塗膜強度が得られない。そのため、強固な塗膜物性を有し、様々な印刷システムにインラインおよびオフラインで適応可能なオーバーコートニスが求められている。
【0006】
スイス連邦の条例(Swiss Ordinance RS817.023.21 Annex10)では、食品非接触の印刷インキおよびニスを含む包装材料のポジティブリスト(使用可能な原材料)と、各原材料の許容されるマイグレーション量(SML)に関して、安全性を基準に規定しており、食品包材の世界基準として重要な指標となっている。
しかし、マイグレーションの度合は、基材の材質および厚さ、硬化および乾燥レベル、並びにインキ又はニスの塗膜厚さなどによって異なるため、一元的に評価するのが困難である。このため、欧州印刷用インク協会(EuPIA)は、ガイドラインの中で、印刷方式又は内容物ごとにマイグレーションの試験方法を示しており、統一的な評価方法の指標作りを進めている。
【0007】
活性エネルギー線硬化型のインキ又はニスのマイグレーションの課題を解決するために、特許文献1、2、3をはじめ、種々の観点から研究が行われている。すなわち、特許文献1では、光重合開始剤または増感剤とポリエステル樹脂とを化学結合させることにより、光重合開始剤または増感剤の使用量を減量し、硬化反応後の光重合開始剤または増感剤のマイグレーションや揮発を低減させている。また特許文献2については、活性エネルギー線硬化型インキ中の光重合開始剤の選定によって、臭気、マイグレーションの低減を狙っている。さらに特許文献3については、増感剤として用いられるチオキサントン骨格をベースとした新規な光重合開始剤を用いることで、硬化性の向上と低マイグレーションの両方を達成している。また、特許文献1、2、3は、いずれもUV硬化組成物として評価しており、マイグレーションの評価対象が主に光重合開始剤または増感剤に関するものであり、主成分であるアクリレートモノマーについての評価が十分なされていない。
【0008】
特許文献4では、アルコキシル化度の高いアクリレートモノマーを添加することで、その他の低分子量アクリレートモノマーのマイグレーションを抑制する技術が示されている。しかしながら、該発明では、光重合開始剤およびアルコキシル化度の高いアクリレートモノマー自体のマイグレーションに関して評価されていない。また、実用性の判断をする上で重要なインキ又はニスの硬化塗膜物性の評価について記述されていない。
【0009】
特許文献5では、ポリオールを添加することで、EB硬化を促進し、低分子量アクリレートモノマーのマイグレーションを抑制する技術が示されている。しかしながら、該発明では、ポリオールおよび全アクリレートモノマーのマイグレーションに関して評価されていない。また、実用性の判断をする上で重要なインキ又はニスの硬化塗膜物性の評価について記述されていない。
【0010】
特許文献6では、アクリレートモノマーを、アクリロイル基を有さないアルコキシル化化合物に置換することで、低分子量アクリレートモノマーのマイグレーションを抑制する技術が示されている。しかしながら、該発明では、アルコキシル化化合物および全アクリレートモノマーのマイグレーションに関して評価されていない。また、実用性の判断をする上で重要なインキ又はニスの硬化塗膜物性の評価について記述されていない。
【0011】
特許文献7では、EB硬化型オーバーコートニスにジメチルポリシロキサンを添加することで、硬化性、密着性、耐スクラッチ性等の塗膜特性を向上させる技術が示されている。しかしながら、該発明では、アクリレートモノマーのマイグレーションに関して評価されていない。
【0012】
特許文献8では、EB照射することで成分の一部が架橋され、耐熱性が向上する技術が示されている。しかしながら、該発明では、高線量のEB照射が必要であり、実用上、現実的ではない。また、実用性の判断をする上で重要なインキ又はニスの硬化塗膜物性の評価について、耐熱性以外の記述がされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2005-154748号公報
【文献】特開2007-204543号公報
【文献】特開2009-221441号公報
【文献】国際公開第2015/148094号
【文献】国際公開第2020/012157号
【文献】国際公開第2020/012160号
【文献】特開2020-147730号公報
【文献】特表2019-509196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のように、従来の活性エネルギー線硬化型の印刷インキ又はニスについては、食品包材用途のオーバーコートに要求される各種特性において十分に満足できるものではなく、さらなる改善が望まれている。なかでも、ペネトレーションによるマイグレーションの改善に向けて、アクリレートモノマーのマイグレーションを抑制することについては検討の余地がある。
【0015】
したがって、上述の状況に鑑み、本発明の一実施形態は、光重合開始剤によるマイグレーションを排除でき、かつ(メタ)アクリレート化合物によるマイグレーションを低減できる電子線硬化型組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下に記載の電子線硬化型組成物を使用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の実施形態は以下に関する。但し、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、様々な実施形態を含む。
【0017】
本発明の一実施形態は、1以上の(メタ)アクリレート化合物を含有する(メタ)アクリレート成分(A)(但し、シリコーン変性された化合物を除く)を含む電子線硬化型組成物であって、
上記(メタ)アクリレート成分(A)が、分子量が500以上の(メタ)アクリレート化合物(A-1)を含み、上記(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量が、組成物の全質量を基準として70質量%以上であり、かつ、
前記(メタ)アクリレート成分(A)において、分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量が、組成物の全質量を基準として25質量%未満である、電子線硬化型組成物に関する。
【0018】
上記実施形態において、上記(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びエポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0019】
上記実施形態において、上記(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートを、組成物の全質量を基準として50質量%以上含有することが好ましい。
【0020】
上記(メタ)アクリレート化合物(A-1)において、分子量が1,000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートの含有量は、組成物の全質量を基準として35質量%未満であることが好ましい。
【0021】
上記実施形態において、上記(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びエポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上を、組成物の全質量を基準として50質量%以上含有することが好ましい。
【0022】
一実施形態において、上記実施形態の電子線硬化型組成物は、さらに固体ワックス(B)を含むことが好ましい。
【0023】
上記固体ワックス(B)の平均粒子径は、2~8μmであることが好ましい。
上記固体ワックス(B)の含有量は、組成物の全質量を基準として、0.1~3.0質量%であることが好ましい。
【0024】
一実施形態において、電子線硬化型組成物の25℃における粘度は1,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0025】
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、さらに(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物を含むことが好ましい。上記(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として、0.1~2.0質量%であることが好ましい。
【0026】
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、さらに非反応性シリコーン系化合物を含有するレベリング剤(C)を含むことが好ましい。上記非反応性シリコーン系化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として、0.1~2.0質量%であることが好ましい。
【0027】
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、光重合開始剤を実質的に含有しないことが好ましい。
【0028】
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、電子線硬化型オーバーコートニスとして用いられることが好ましい。
【0029】
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、食品包装材料の表面層の形成に用いられることが好ましい。
【0030】
他の実施形態は、基材と、基材上に設けられた表面層とを含み、上記表面層は上記実施形態の電子線硬化型組成物の硬化層である、食品包装材料に関する。
本願の開示は、2021年2月26日に出願された特願2021-029359号に記載の主題と関連しており、その全ての開示内容は引用によりここに援用される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、光重合開始剤によるマイグレーションを排除でき、かつ(メタ)アクリレート化合物によるマイグレーションを低減できる電子線硬化型組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に記載する構成要件および条件等は、本発明における実施形態の一例である。したがって、本発明は、以下の説明における趣旨を超えず、また発明の効果が得られる限り、これらの内容に限定されない。また、特にことわりのない限り、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」を表す。
【0033】
<電子線硬化型組成物>
本発明の一実施形態は、1以上の(メタ)アクリレート化合物を含有する(メタ)アクリレート成分(A)(但し、シリコーン変性された化合物を除く)を含む電子線硬化型組成物であって、
上記(メタ)アクリレート成分(A)が、分子量が500以上の(メタ)アクリレート化合物(A-1)を含み、上記(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量が、組成物の全質量を基準として70質量%以上であり、かつ、
上記(メタ)アクリレート成分(A)において、分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量が、組成物の全質量を基準として25質量%未満である、電子線硬化型組成物に関する。
【0034】
((メタ)アクリレート成分(A))
本明細書において「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」の併記を表し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の併記を表す。また、「PO」は「プロピレンオキサイド」を、「EO」は「エチレンオキサイド」を表す。
【0035】
本発明の一実施形態である電子線硬化型組成物は、(メタ)アクリレート成分(A)として1以上の(メタ)アクリレート化合物(シリコーン変性である場合を除く)を含有する。本発明において、(メタ)アクリレート化合物(シリコーン変性である場合を除く)は、1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
本明細書において(メタ)アクリレート化合物(シリコーン変性である場合を除く)とは、重合性基である(メタ)アクリロイル基(官能基という場合がある)を1分子中に1つ以上有し、かつシリコーン変性骨格を構造中に有さない化合物である。上記(メタ)アクリレート化合物は、単官能又は多官能の、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートポリマーのいずれの形態であってもよい。以下、上記(メタ)アクリレート化合物ついて具体的に説明する。
【0036】
((メタ)アクリレートモノマー)
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、(メタ)アクリレート化合物として、単官能又は多官能の(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。本発明において、「モノマー」とは、オリゴマー又はポリマーを構成するための最小構成単位の化合物を意味する。
(メタ)アクリレートモノマーの一例として、分子内に(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。具体的には、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノールアクリレート、2-メチル-2-エチル-1、3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、アクリロイルモルフォリンなどが挙げられる。
(メタ)アクリレートモノマーの一例として、2官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。具体例として、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(メタ)アクリレートモノマーの一例として、分子内に(メタ)アクリロイル基を3つ有する3官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
その他、(メタ)アクリレートモノマーの一例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの分子内にアクリロイル基を4つ有する4官能(メタ)アクリレートモノマー、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、PO変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を5つ有する5官能(メタ)アクリレートモノマー、および
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、PO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を6つ有する6官能(メタ)アクリレートモノマー、などが挙げられる。
【0037】
((メタ)アクリレートオリゴマー、ポリマー)
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、(メタ)アクリレート化合物として、(メタ)アクリレートオリゴマー、又は(メタ)アクリレートポリマーを含むことが好ましい。(メタ)アクリレートオリゴマー又は(メタ)アクリレートポリマーは、少なくとも分子内に(メタ)アクリロイル基を有するモノマーから誘導されるオリゴマー又はポリマーを意味する。一実施形態において、(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことが好ましい。本発明において、「オリゴマー」とは、比較的重合度の低い、2個~100個のモノマーに基づく構成単位を有する重合体である。(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリレートモノマーに比べて分子量が高く、マイグレーションのリスクを大きく低減することができる。
(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。オリゴマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0038】
(エポキシ(メタ)アクリレート)
エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、エポキシ樹脂の含有するグリシジル基と、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸などとの反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートであってよい。他の例として、カルボキシル基など酸性基を有する樹脂とグリシジル基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、いずれも不飽和二重結合基を有する。例えば、前者の場合、ビスフェノールA型エポキシ樹脂へ(メタ)アクリル酸を付加したエポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ樹脂へ(メタ)アクリル酸を付加したエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
(ウレタン(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基含有(メタ)アクリレートと反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0040】
上記ポリイソシアネートとしては公知のものを使用でき、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、および脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
例えば、芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、およびトリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、およびリジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、およびダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に変性したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
なかでも、芳香族ジイソシアネートおよび/または脂環族ジイソシアネートが好ましい。上記例示化合物の中で好ましくは、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体等である。
【0041】
(ポリエステル(メタ)アクリレート)
本発明において、ポリエステル(メタ)アクリレートは、多塩基酸及び多価アルコールを公知の方法で重縮合したものが挙げられ、カルボキシル基量と水酸基量の配合比により分子量や水酸基またはカルボキシル基などの末端基の量が調整される。
例えば多塩基酸に含まれるカルボキシル基量が多価アルコールに含まれる水酸基量よりも多い場合、末端官能基はカルボキシル基となり、ここへ水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基を縮合反応させることで目的とするポリエステル(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0042】
上記多塩基酸としては、脂肪族系、脂環族系、及び芳香族系が挙げられ、それぞれ特に制限が無く使用できる。例えば脂肪族系多塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、脂肪酸、脂肪酸由来のダイマー酸等が挙げられ、これらの脂肪族ジカルボン酸及びその無水物が利用できる。なかでもアジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、脂肪酸、変性脂肪酸および脂肪酸由来のダイマー酸から選ばれる少なくとも一種の多塩基酸に由来する構造単位を有するポリエステルアクリレートが好ましい。
【0043】
また、上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3'-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の2官能の脂肪族又は脂環式アルコール類や、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオールおよびそれらのエチレンオキシド付加物(付加モル数10以下)またはプロピレンオキシド付加物(付加モル数10以下)などの3官能の脂肪族又は脂環式アルコール類などが好ましく挙げられる。なかでもエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する構造単位を有することが好ましい。
【0044】
また、上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノ(メタ)アクリレート、
グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有ジ(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の水酸基含有トリ(メタ)アクリレート、および
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有ペンタ(メタ)アクリレート、並びに
上記水酸基含有(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンの開環付加により末端に水酸基を有する(メタ)アクリレート、および上記水酸基含有(メタ)アクリレートに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリレート等の水酸基含有の(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
なかでも、(メタ)アクリレート基を分子中に1~3個有する水酸基含有(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0045】
一実施形態において、(メタ)アクリレート化合物(A-1)として、市販品として入手できるオリゴマーを使用することもできる。例えば、ポリエステル(メタ)アクリレートとして、ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL 820、824、837、及び450(いずれもポリエステルアクリレートである)などが挙げられる。また、ウレタン(メタ)アクリレートとして、ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL 8210、および8409(いずれも脂肪族ウレタンアクリレート)が挙げられる。
【0046】
一実施形態において、上記(メタ)アクリレート成分(A)は、分子量が500以上の(メタ)アクリレート化合物(A-1)を含む。(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、先に例示した(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、及び(メタ)アクリレートポリマーからなる群から選択される1種以上を含んでよい。(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量は、組成物の全質量を基準として70質量%以上であることが好ましい。上記(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量は、より好ましくは75質量%以上であってよく、さらに好ましくは80質量%以上であってよい。
【0047】
一実施形態において、(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、多官能の(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。なかでも、後述するトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を含むことが好ましい。
(トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物)
一実施形態において、(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を含む。その含有量は、組成物の全質量を基準として50質量%以上であることが好ましい。一実施形態において、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物の含有量は、より好ましくは60質量%以上であってよく、さらに好ましくは70質量%以上であってよい。一方、塗膜特性の観点から、上記含有量は好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であってよく、さらに好ましくは75質量%以下であってよい。
【0048】
上記トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物は、下記一般式(I)で表される構造を有する。なお、一般式(I)中、Rは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、およびヘキシレンオキサイド等のアルキレンオキサイド単位の中から選択された1種又は2種以上を示す。l+m+nは、それぞれ付加しているアルキレンオキサイドの平均付加数を示す。また、アルキレンオキサイドの平均付加数は、1分子あたり2~20モルであることが好ましい。
【0049】
トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物
一般式(I)
【化1】
【0050】
トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物は、アルキレンオキサイドの種類および付加数によって、塗膜特性を容易に調整することができる。
例えば、付加数を上げることによって、ペネトレーションによるマイグレーションの抑制が可能である。さらに、反応性のアクリロイル基を1分子中に3つ有していることから、同程度の分子量を有するアクリレートモノマーと比較して、硬化性が良好である。
また、同程度の分子量を有するアクリレートモノマーと比較して、粘度が低く、インキおよびニスの粘度増加を抑制できる。また、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物の含有量を調整することによって、硬化塗膜の強度とマイグレーション抑制との良好なバランスを得ることができる。なかでも、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物として、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレートおよびトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレートが好ましい。これらは市販品として入手することもできる。
【0051】
例えば、市販品として入手可能なトリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート化合物として、EO(3モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(6モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(9モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(15モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びEO(20モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
【0052】
先に例示したトリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレートの市販品について、各メーカーでは、エチレンオキサイド付加数を明示している。しかし、実際のところ、付加数には分布があり、あくまで主要な付加数を明示しているに過ぎない。そのため、正味の付加数を把握するためには、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などによる分子量分布の測定が必要である。
このような観点から、本発明では、(メタ)アクリレート化合物としてトリメチロールアルキレンオキサイド変性トリアクリレートを使用する場合、GPCによる分子量分布を測定し、そのグラフから特定範囲の分子量を有する化合物の含有量を規定する。例えば、GPCのグラフにおいて、分子量が500未満の範囲における成分量がX%である場合、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレートの含有量Aにおいて、分子量が500未満のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレートの含有量はA×X(%)として算出される。オリゴマー及びポリマーについても分子量分布を有するため、一般的に、分子量は重量平均分子量又は数平均分子量として規定されている。しかし、本発明では、上記のようにGPCのグラフから得られる特定範囲の分子量を有する化合物の含有率から、その化合物の含有量を算出する。
【0053】
一実施形態では、上記(メタ)アクリレート化合物(A-1)において、分子量が1,000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として35質量%未満であることが好ましく、0質量%であってもよい。分子量が1,000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物は、未反応成分のペネトレーションによるマイグレーションを抑制する効果が高い。しかし、アクリル当量(アクリロイル基1個あたりの分子量)が低いため、塗膜強度が低下しやすい。したがって、分子量が1,000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物の含有量が上記範囲内である場合、硬化塗膜の強度低下とマイグレーション耐性とのバランスを良好に制御することが可能となる。
【0054】
(メタ)アクリレート化合物(A-1)において、分子量が1,000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として、30質量%未満であることが好ましい。上記含有量は、より好ましくは25質量%未満であってよく、さらに好ましくは20質量%未満であってよい。
【0055】
一実施形態において、(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びエポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上のオリゴマーを、組成物の全質量を基準として50質量%以上含有してよい。オリゴマーの含有量を50質量%以上にした場合、マイグレーションの抑制が容易となる。上記オリゴマーを使用する場合、マイグレーションの抑制の観点から、その含有量は、組成物の全質量を基準として、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。一方、特に光沢などの塗膜特性の観点から、上記含有量は好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0056】
上記電子線硬化型組成物の(メタ)アクリレート成分(A)において、分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物は、硬化性が良好なため、強固な塗膜を形成できる。しかし、分子量が低く、未反応成分のペネトレーションによるマイグレーションが発生しやすくなるため、可能な限り含有量を低減させることが好ましい。したがって、一実施形態において、分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として、25質量%未満であることが好ましい。
【0057】
一実施形態において、上記のように分子量が500未満の成分の含有量が25質量%未満である場合、マイグレーションを許容範囲内に容易に抑制することができる。(メタ)アクリレート成分(A)における、分子量が500未満の(メタ)アクリレート化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として、より好ましくは21質量%未満であり、さらに好ましくは16質量%未満であってよい。一実施形態において、上記含有量は0質量%であってもよい。
【0058】
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、(メタ)アクリレート化合物(A)(シリコーン変性である場合を除く)、および、固体ワックス(B)を含み、(メタ)アクリレート化合物(A)が、以下の(1)~(3)を満たす電子線硬化型組成物に関する。
(1)トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を組成物全量中に50質量%以上含有する。
(2)重量平均分子量が500未満の成分を、組成物全量中に25質量%未満含有する。
(3)重量平均分子量が1000以上のトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリアクリレート化合物を、組成物全量中に35質量%未満含有する。
【0059】
上記実施形態において、(メタ)アクリレート化合物(A)は、さらに(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことが好ましい。なかでも、ポリエステル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。ポリエステル(メタ)アクリレートを使用した場合、強固な硬化皮膜が容易に得られる。また、(メタ)アクリレートモノマーとの相溶性が良好で、低粘度であるため、インキおよびニスの粘度増加を容易に抑制できる。一実施形態において、電子線硬化型組成物におけるポリエステル(メタ)アクリレートの含有量は、組成物の全質量を基準として、5~45質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
【0060】
(固体ワックス(B))
本発明の一実施形態である電子線硬化型組成物は、固体ワックス(B)を含有することが好ましい。固体ワックス(B)を含有することによって、耐摩擦性やスリップ性などの塗膜物性を大きく向上させることが可能となる。本明細書において、「固体ワックス(B)」とは、25℃において固体の状態であるワックスを意味する。
固体ワックス(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0061】
固体ワックス(B)は、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、天然ワックスとして、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木蝋などが挙げられる。また、合成ワックスとして、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッシャー・トロプッシュワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、アマイドワックスなどが挙げられる。なかでも、ポリエチレンワックスおよびポリテトラフルオロエチレンワックスが好ましい。
【0062】
固体ワックスの使用による効果を発現させるためには、固体ワックスの平均粒子径がインキおよびニスの塗膜厚以上となることが好ましい。固体のワックスの平均粒子径がインキおよびニスの塗膜厚より小さい場合、その効果が不十分となりやすく、一方、固体のワックスの平均粒子径がインキおよびニスの塗膜厚より過剰に大きい場合、光沢が大きく低下する傾向にある。
一実施形態において、耐摩擦性と光沢の観点から、固体ワックス(B)の平均粒子径は2~8μmであることが好ましく、3~5μmがより好ましい。
【0063】
上記平均粒子径は、島津製作所(株)製のレーザー回折粒度分布測定装置SALD-2200を用いて、粒度分布曲線において積算値が50%にあたる粒径(体積基準)を測定することにより得た値である。
【0064】
固体ワックス(B)の含有量は、耐摩擦性および光沢の観点から、組成物の全質量に対して、0.1質量%以上であってよく、好ましくは0.2質量%以上であってよい。上記含有量は、3.0質量%以下であることが好ましい。一実施形態において、上記含有量は、組成物の全質量に対して、0.1~3.0質量%であってよく、0.3~2.0質量%であることが好ましく、0.4~1.9質量%であることがより好ましい。
【0065】
(レベリング剤(C))
本発明の一実施形態である電子線硬化型組成物では、さらにレベリング剤(C)を含んでよい。一実施形態において、シリコーン系のレベリング剤を含むことが好ましい。
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、ピンホール性を良化させる観点から、非反応性シリコーン系化合物を含むことが好ましい。非反応性シリコーン系化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として、0.1~2.0質量%であることが好ましく、0.2~1.9質量%であることがより好ましい。
なお、非反応性シリコーン系化合物における非反応性とは、その構造中に(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基などの反応性基を含有しないことをいう。
非反応性シリコーン系化合物は、ポリオルガノシロキサン骨格を有するものが好ましく、以下に示すポリジメチルシロキサン構造(II)を有するものがより好ましい。式中、nは1以上の整数である
【0066】
【0067】
また、上記ポリジメチルシロキサンとしては、アミノ変性ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、アルキル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン樹脂、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、カルビノール変性ポリジメチルシロキサン樹脂、メルカプト変性ポリジメチルシロキサン樹脂、フェノール変性ポリジメチルシロキサン樹脂、異種官能基変性ポリジメチルシロキサン樹脂、メチルスチリル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、高級脂肪酸エステル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、高級アルコキシ変性ポリジメチルシロキサン樹脂、高級脂肪酸含有変性ポリジメチルシロキサン樹脂、フッ素変性ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が好適に挙げられる。
上記、非反応性シリコーン系化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。なかでも、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン樹脂は、ポリエーテル鎖のアルキレンオキサイド種や付加数によって、(メタ)アクリレート化合物(A)との相溶性をコントロールできるという観点から好適である。アルキレンオキサイド種としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体が好ましい。ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン樹脂として市販品を使用することもできる。例えば、エポニック社製のTEGO GLIDE 100を好適に使用することができる。
【0068】
他の実施形態において、電子線硬化型組成物は、表面の滑り性を良化させる観点から、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物を含むことが好ましい。(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物とは、ポリオルガノシロキサン骨格を有し、その構造中に(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を意味する。ポリオルガノシロキサン骨格としては、先に例示したポリジメチルシロキサン構造(II)を有するものが好ましい。(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物は構造中に(メタ)アクリロイル基を含有するため、EB照射により、組成物中の(メタ)アクリレート化合物と反応させることができる。例えば、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物として、エボニック社製のTegorad 2300(アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン樹脂)を好適に使用することができる。
一実施形態において、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物の重量平均分子量は500~10000であってよい。一実施形態において、相溶性の観点から、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物の分子量は、500~2500が好ましい。また、反応性の観点から、1分子中の(メタ)アクリロイル基の数は1~10が好ましい。(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として、0.1~2.0質量%であることが好ましく、0.2~1.9質量%であることがより好ましい。
一実施形態において、電子線硬化型組成物は、非反応性シリコーン系化合物および(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物の双方を含んでもよい。このような実施形態において、化合物の含有量は、それぞれ上述のとおりであってよい。
【0069】
(重合禁止剤)
本発明の一実施形態である電子線硬化型組成物は、保存安定性の向上のため、更に重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤の具体例示として、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、およびシクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。重合禁止剤を使用する場合、その含有量は、組成物の全質量を基準として、0.01~1質量%の範囲であってよい。
【0070】
(不活性樹脂)
本発明の一実施形態である電子線硬化型組成物は、不活性樹脂を含んでもよい。不活性樹脂を含むことで、硬化時に生じる塗膜の硬化収縮を緩和し、基材のカールを抑制し、さらに、基材への密着性が向上する。本発明において、「不活性」とは、反応性基を有しないことを意味し、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
不活性樹脂の具体例として、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル樹脂、スチレン(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂、尿素樹脂、ブタジエン-アクリルニトリル共重合体のような合成ゴムなどが挙げられる。
【0072】
(その他成分)
本発明の一実施形態である電子線硬化型組成物は、必要に応じて、公知の添加剤を含んでもよい。添加剤として、例えば、硬化剤、可塑剤、湿潤剤、接着補助剤、消泡剤、帯電防止剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、シリカ粒子、防腐剤などを使用することができる。また更に、油、難燃剤、充填剤、安定剤、補強剤、艶消し剤、研削剤、有機微粒子、無機微粒子などを使用してもよい。
【0073】
また、本発明の電子線硬化型組成物で使用する各種原材料として、カーボンニュートラルの観点などからは、植物などの再生可能な資源を利用したバイオマス由来の原材料を好ましく用いることができる。
【0074】
本発明の一実施形態である電子線硬化型組成物は、光重合開始剤を実質的に含有しない。ここで、「実質的に含有しない」とは、組成物に意図的に添加することなく、かつ、非意図的添加による含有量が1%未満であることを意味する。非意図的添加には、各原料に微量に含まれている場合や、組成物の製造工程、印刷物作製工程におけるコンタミネーションなどが該当する。
【0075】
<電子線硬化型組成物の製造方法>
本発明の電子線硬化型組成物の製造方法としては、(メタ)アクリレート化合物(A)と、および必要に応じて使用される固体ワックス(B)、非反応性シリコーン系化合物、および(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物とを、ディスパーやミキサーなどを用いて30分~3時間程度混合攪拌することによって製造することができる。なお、あらかじめ(メタ)アクリレート化合物(A)を混合攪拌しておき、その後、更に固体ワックス(B)、非反応性シリコーン系化合物、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物などを添加して製造してもよい。
【0076】
一実施形態において、電子線硬化型組成物の粘度としては、1000mPa・s未満であることが好ましい。粘度が1000mPa・s未満である場合、レベリング性の低下を抑制し、塗膜特性として優れた光沢を得ることが容易となる。上記粘度は、700mPa・s未満であることが好ましく、500mPa・s未満であることがより好ましく、300mPa・s未満であることが更に好ましい。かかる粘度は、JISZ8803:2011による測定値をいい、25℃におけるE型粘度計による測定値である。
【0077】
<印刷方法>
上記実施形態の電子線硬化型組成物を印刷する方法は、特に制限がなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、ロールコーター、ロッドコーター、ブレード、ワイヤーバー、ドクターナイフ、スピンコーター、スクリーンコーター、グラビアコーター、オフセットグラビアコーター、フレキソコーターなどが挙げられる。また、インライン印刷およびオフライン印刷において、UV硬化型、熱乾燥型、蒸発乾燥型、酸価重合型、液体トナー型、粉体トナー型インキなどと組み合わせて使用することもできる。なお、電子線硬化後の組成物の塗工被膜は、2~10μmが好ましく、3~5μmがより好ましい。上記印刷方式にて印刷層が形成された後、直ちに電子線照射機を通って電子線硬化印刷層が形成される。なお電子線の照射線量としては、加速電圧110kVにおいて10~60kGy、好ましくは110kVの加速電圧において20~45kGyで照射すればよい。電子線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の促進を図ることもできる。
【0078】
<電子線硬化型オーバーコートニス>
上記実施形態の電子線硬化型組成物は、電子線硬化型オーバーコートニスとして好適に使用することができる。電子線硬化型オーバーコートニスとは、基材上の印刷面および非印刷面に塗布し、電子線を照射することで硬化塗膜を形成し、基材上の印刷面および非印刷面に必要な表面物性を付与することを目的とした電子線硬化型組成物である。オーバーコートニスの用途で使用する電子線硬化型組成物は、顔料、染料、その他着色成分を含有しない場合が多い。オーバーコートニスの用途で必要とされる表面物性は、その印刷物の最終用途によって異なる。例えば、グロスコートニスの目的は、表面保護と光沢性の付与とを基本としている。その他、オーバーコートニスには、マット性、スリップ性、ノンスリップ性、ソフトフィール性、耐熱性、耐溶剤性、疑似密着性、印字適性、突き刺し性、はじき性、剥離性、バリア性、などが要求されることもある。
電子線硬化型オーバーコートニスの塗工方式としては、印刷面が乾燥しないうちにすぐに続けてオーバーコートニスを塗工するウェット方式と、印刷面が乾燥してからオーバーコートニスを塗工するドライ方式に分かれる。一実施形態において、上記電子線硬化型組成物は、食品包装材料の表面層の形成に用いられるオーバーコートニスとして好適に使用することができる。
【0079】
<食品包装材料>
本発明の一実施形態は、基材と、基材上に設けられた表面層とを含み、上記表面層は上記実施形態の電子線硬化型組成物の硬化層である、食品包装材料に関する。
(基材)
基材は、フィルム状の基材が好ましい。一実施形態において、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル基材、ポリカーボネート基材、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系基材、ナイロン基材、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデン基材、セロハン基材、紙基材、アルミニウム基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状の基材が挙げられる。
また、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの無機化合物を、ポリエチレンテレフタレート基材、ナイロン基材に蒸着した蒸着基材を用いることもできる。更に、蒸着処理面に対し、ポリビニルアルコールなどによるコート処理を施されていてもよい。基材は、印刷される面(印刷層と接する面)が易接着処理されていることが好ましい。易接着処理の具体例として、コロナ放電処理、紫外線/オゾン処理、プラズマ処理、酸素プラズマ処理、プライマー処理等が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレート基材において、十分な密着性が得られない場合は、アクリルコート処理、ポリエステル処理、ポリ塩化ビニリデン処理などの表面処理を施してもよい。
【0080】
基材として、紙基材を用いてもよい。該紙基材としては、通常の紙又は段ボールなどであり、膜厚としては特に指定はない。紙基材の厚さは、例えば、0.2mm~1.0mm、20~150g/m2のものを使用でき、印刷表面が易接着処理されていてもよい。紙基材は、意匠性を付与させる目的で表面がアルミなどの金属で蒸着処理されていてもよい。また、紙基材は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂やその他の樹脂などで表面コート処理が施されていてもよく、さらに、コロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。例えば、表面処理された紙基材の具体例として、コート紙およびアート紙などが挙げられる。
【0081】
上述した基材(第1の基材)は、印刷する面と反対側の面に、第2の基材をさらに積層させた構造で用いることもできる。この場合、積層される第2の基材としては、上述したフィルム状基材と同様であってよい。第2の基材は、第1の基材と同一でも異なっていてもよい。なかでも、第2の基材としては、未延伸ポリエチレン、未延伸ポリプロピレン、ナイロン基材、アルミニウム箔基材、アルミニウム蒸着基材などが好ましい。この場合、第2の基材は、接着剤層によって第1の基材と貼り合わされることが好ましい。
【0082】
接着剤層は、アンカーコート剤、ウレタン系ラミネート接着剤、溶融樹脂等からなる層が挙げられる。アンカーコート剤(AC剤)としては、イミン系AC剤、イソシアネート系AC剤、ポリブタジエン系AC剤、チタン系AC剤が挙げられ、ウレタン系ラミネート接着剤としてはポリエーテルウレタン系ラミネート接着剤、ポリエステル系ラミネート接着剤などが挙げられる。これらの接着剤は、有機溶剤を含むものと、無溶剤のものとがある。また、溶融樹脂としては、溶融ポリエチレン等が挙げられる。
【0083】
(バリア性)
一実施形態において、上記第2の基材において、ガス(酸素、水蒸気、窒素、炭酸ガス等)に対するバリア性を付与することもできる。バリア性を付与する方法としては、積層体としてバリア性基材を導入する方法と、コーティングによってバリア層を形成する方法とがある。導入できるバリア性材料としては、シリカ、アルミナ、アルミ、塩化ビニリデン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール-酢酸ビニル共重合体、メタキシリレンアジパミド、およびMXD6ナイロンなどが挙げられる。また、上記バリア性材料と基材とを組み合わせた共押し出しフィルムも使用できる。一方、このような技法とは異なり、容器の内部に侵入してくる酸素を積極的に取り除くタイプの技法であるアクティブ・パッケージングも適用できる。アクティブ・パッケージングに適用されるアクティブバリヤー材としては、還元鉄/塩化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸などの酸素と反応する物質を樹脂にブレンドした材料が挙げられる。また、MXD6ナイロン/コバルト塩、二重結合系ポリマー/コバルト塩、シクロヘキセン側鎖含有ポリマー/コバルト塩などのコバルト塩を酸化触媒として樹脂にブレンドし、この酸価触媒によって樹脂を酸化させて酸素を吸収する材料なども挙げられる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例として本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。本発明において、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は、「質量%」をそれぞれ表す。
【0085】
(使用原料)
表A1およびA2に記載した各原料の詳細は以下のとおりである。
<(メタ)アクリレート化合物(A)>
Miramer M300:MIWON社製、TMPTA(トリメチルプロパントリアクリレート)
Miramer M3130:MIWON社製、TMP(EO)3TA(EO(3モル)変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
Miramer M3160:MIWON社製、TMP(EO)6TA(EO(6モル)変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
Miramer M3190:MIWON社製、TMP(EO)9TA(EO(9モル)変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
Miramer M3150:MIWON社製、TMP(EO)15TA(EO(15モル)変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
AT-20E:新中村化学社製、TMP(EO)20TA(EO(20モル)変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
EBECRYL11:ダイセル・オルネクス社製、PEG600DA(ポリエチレングリコール600ジアクリレート)
APG-700:新中村化学社製、PPG700DA(ポリプロピレングリコール700ジアクリレート)
EBECRYL820:ダイセル・オルネクス社製、ポリエステルアクリレート
<固体ワックス(B)>
SST-1 MG-RC:シャムロック社製、平均粒子径1μm、ポリテトラフルオロエチレンワックス
Cerfloure 981:ビックケミー社製、平均粒子径3μm、ポリテトラフルオロエチレンワックス
Cerafloure 991:ビックケミー社製、平均粒子径5μm、ポリエチレンワックス
Cerafloure 997:ビックケミー社製、平均粒子径7μm、ポリテトラフルオロエチレンワックス
Cerafloure 970:ビックケミー社製、平均粒子径9μm、ポリプロピレンワックス
<レベリング剤(C)>
TEGO GLIDE 100:エボニック社製、非反応性シリコーン系化合物(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン樹脂)
Tegorad 2300:エボニック社製、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物(アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン樹脂)
<重合禁止剤>
Genorad24:LAHN社製、ジ-t-ブチル-7-フェニルキノンメチド
【0086】
表B1およびB2に記載した各種原料において、先に記載のない原料の詳細は以下のとおりである。
<(メタ)アクリレート化合物(A)>
TPGDA:ダイセル・オルネクス社製、TPGDA(トリプロピレングリコールジアクリレート)
EBECRYL LEO 10501:ダイセル・オルネクス社製、TMP(EO)4TA(EO(4モル)変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
EBECRYL824:ダイセル・オルネクス社製、ポリエステルアクリレート
EBECRYL837:ダイセル・オルネクス社製、ポリエステルアクリレート
EBECRYL450:ダイセル・オルネクス社製、脂肪族ウレタンアクリレート
EBECRYL8210:ダイセル・オルネクス社製、脂肪族ウレタンアクリレート
【0087】
(分子量分布)
以下の実施例および比較例で(メタ)アクリレート成分(A)として使用した化合物の分子量分布は、東ソー(株)製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320)を用いて測定した。検量線は、標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は、流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃の条件下で行った。
上述の条件下で実施したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定のグラフに基づき、分子量が500未満の範囲、分子量が500以上の範囲、および分子量が1000以上の範囲の各面積の割合を求めた、また、重量平均分子量についても測定した。これらの結果を表A1、A2、B1、およびB2において、(I)分子量500未満の割合(%)、(II)分子量500以上の割合(%)、(III)分子量1000以上の割合(%)として示す。
【0088】
<1>電子線硬化型組成物の作製
【0089】
(実施例A1)
MIWON社製Miramer M3160(エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カタログに記載されたエチレンオキサイド付加数は6)を43.0部、MIWON社製Miramer M3190(エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カタログに記載されたエチレンオキサイド付加数は9)を54.6部、平均粒子径5μmのポリエチレンワックスを1.0部、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物を0.2部、非反応性シリコーン系化合物を1.0部、重合禁止剤を0.2部混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌して、実施例A1の電子線硬化型組成物を作製した。
【0090】
(実施例A2~A34)
表A1に記載した材料および比率で使用した以外は、実施例A1と同様の方法によって、実施例A2~A34の電子線硬化型組成物を作製した。
【0091】
(比較例A1~A6)
表A2に記載した材料および比率で使用した以外は、実施例A1と同様の方法によって、比較例A1~A6の電子線硬化型組成物を作製した。
【0092】
(実施例B1)
MIWON社製Miramer M3190(エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カタログに記載されたエチレンオキサイド付加数は9)を97.6部、ポリエチレンワックス(ビックケミー社製のCerafloure991、平均粒子径5μm)を1.0部、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物(エポニック社製のTegorad 2300)を1.0部、非反応性シリコーン系化合物(エポニック社製のTEGO GLIDE 100)を0.2部、重合禁止剤(LAHN社製のGenorad24)を0.2部の比率で混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌して、実施例B1の電子線硬化型組成物を作製した。
【0093】
(実施例B2~B27)
表B1に記載した材料および比率で使用した以外は、実施例B1と同様の方法によって、実施例B2~B27の電子線硬化型組成物を作製した。
【0094】
(比較例B1~B5)
表B2に記載した材料および比率で使用した以外は、実施例B1と同様の方法によって、比較例B1~B5の電子線硬化型組成物を作製した。
【0095】
<2>電子線硬化型オーバーコートニスの評価
実施例A1~A34および比較例A1~A6、実施例B1~B27および比較例B1~B5で作製した各々の電子線硬化型組成物を用いて、印刷物を作製し、電子線硬化型オーバーコートニスとしての評価を行った。
【0096】
<2-1>印刷物の作製方法
(実施例A1の印刷物(i)の作製方法)
実施例A1で得た電子線硬化型組成物を用いて、フレキソ印刷方式にて印刷を行い印刷物(i)を作製した。なお、印刷機は、RK社製のフレキシプルーフ100を使用し、印刷条件は印刷スピード70m/min、アニロックスロール線数100~500Line/inch、アニロックスロールのセル容量8~20cm3/m2、アニロックスロールの彫刻パターンはヘキサゴナル、版材はKodak社製のFlexcel NXH デジタルフレキソプレート、基材は白色ポリエチレンフィルム(厚さ50μm)を用い、硬化後の塗膜が4~5μmとなるように印刷した。印刷後の塗膜は直ちに、岩崎電気社製電子線照射機EC250/15/180Lを使用し、加速電圧110kV、電子線量30kGyにて硬化させた。
【0097】
(実施例A2~A34の印刷物(i)の作製方法)
実施例A1の印刷物と同様の方法で、それぞれ実施例A2~A34で得た電子線硬化型組成物を使用して印刷物(i)を作製した。
【0098】
(比較例A1~A6の印刷物(i)の作製方法)
実施例A1の印刷物と同様の方法で、それぞれ比較例A1~A6で得た電子線硬化型組成物を使用して印刷物(i)を作製した。
【0099】
(実施例B1~B27、比較例B1~B5の印刷物(i)の作製方法)
実施例A1の印刷物と同様の方法で、それぞれ実施例B1~B27、比較例B1~B5で得た電子線硬化型組成物を使用して印刷物を作製した。
【0100】
(実施例B1~B27、比較例B1~B5の印刷物(ii)の作製方法)
実施例A1の印刷物の作製において、基材として使用した白色ポリエチレンフィルム(厚さ50μm)をフタムラ化学株式会社製の製品名「FOR」(二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、厚さ30μm)にかえたことを除き、全て実施例A1と同様にして、実施例B1~B27および比較例B1~B5で得た電子線硬化型組成物を使用して印刷物(ii)を作製した。
【0101】
<2-2>各種評価
上記にて得た印刷物を用いて、以下にしたがって各種評価を行った。評価結果を表A1、A2、B1、およびB2に示す。
【0102】
(マイグレーション耐性評価)
実施例A1~A34および比較例A1~A6の電子線硬化型組成物を用いて作製した印刷物(i)について、以下に記載する方法にしたがって、マイグレーション耐性(1)の評価を実施した。また、実施例B1~B27および比較例B1~B5の電子線硬化型組成物を用いて作製した印刷物(ii)について、以下に記載する方法にしたがってマイグレーション耐性(2)の評価を実施した。
先ず、印刷物を10cm×10cmに切り出したものを3枚作製し、3枚を印刷面と非印刷面が接触するように重ね合わせ、2.0kg/cm2の荷重付加にて25℃、50%環境条件下にて10日間保持した。その後、3枚の内の中央の印刷物を取り出し、その非印刷面の面積0.5dm2に対して、50mlの95%エタノールが接触するように、マイグレーションセルにセットした。
その後、攪拌を加えながら、60℃にて10日間かけて残留モノマーの抽出をした。マイグレーションセルは、器具により完全に密閉されており、上記工程において内容物の損失や、内容物(抽出物)へのその他成分の混入は完全に抑制できる。
Waters製LC-MS(高速液体クロマトグラフ質量分析計)を用いて上記抽出物の分析を行なった。以下に記載する検出濃度に基づく評価基準にしたがい、エタノール中に存在する(メタ)アクリレート化合物(A)のマイグレーション耐性を評価した。なお、評価3~5は、産業上実用可能な範囲である。
(評価基準)
5:10ppb未満
4:10ppb以上25ppb未満
3:25ppb以上50ppb未満
2:50ppb以上100ppb未満
1:100ppb以上
【0103】
(ピンホール性評価)
実施例及び比較例の電子線硬化型組成物を用いて作製した印刷物(i)について、ピンホール性の評価を実施した。評価は、面積1cm2の中に存在するピンホール(インキ被膜にあるクレーター状の小さな穴)の個数を電子顕微鏡で確認し、以下の基準にしたがって評価した。評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
(評価基準)
5:ピンホールの数が平均4個以下である
4:ピンホールの数が平均5個以上9個以下
3:ピンホールの数が平均10個以上14個以下
2:ピンホールの数が平均15個以上19個以下
1:ピンホールの数が平均20個以上
【0104】
(光沢評価)
実施例及び比較例の電子線硬化型組成物を用いて作製した印刷物(i)について、村上色彩研究所製の光沢計GM-26Dを用いて、印刷物に対して60°の反射角で光沢値(JIS Z 8741に準拠)を測定した。光沢値の値から以下の基準にしたがって印刷物の光沢を評価した。評価3~5が産業上実用可能な範囲である
(評価基準)
5:光沢値が90以上である
4:光沢値が85以上90未満である
3:光沢値が80以上85未満である
2:光沢値が75以上80未満である
1:光沢値が75未満である
【0105】
(密着性評価)
実施例および比較例の電子線硬化型組成物を使用して得た印刷物(i)を用いて密着性の評価を実施した。測定は粘着テープ(ニチバン社製セロハンテープ(幅12mm))を用いて、印刷面にテープを貼り、180度の角度で素早く引き剥がした際に、印刷物側に残存した塗膜の面積%で評価を行った。評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
(評価基準)
5:90%以上
4:70%以上90%未満
3:50%以上70%未満
2:25%以上50%未満
1:25%未満
【0106】
(耐摩擦性)
実施例および比較例の電子線硬化型組成物を使用して得た印刷物(i)を用いて、テスター産業(株)製の学振型摩擦堅牢度試験機(荷重500g200回、対紙:上質紙)にて耐摩擦性試験を行い、硬化塗膜面に生じた傷について評価した。評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
(評価基準)
5:全く傷付きがない
4:傷の面積が10%未満である
3:傷の面積が10%以上30%未満である
2:傷の面積が30%以上50%未満である
1:傷の面積が50%以上である
【0107】
(耐溶剤性(1))
実施例および比較例で得られた電子線硬化型組成物を使用して作製した印刷物(i)の表面を、99.5%エタノール溶液に浸漬した綿棒を使用して、1秒あたり1往復で擦り、硬化塗膜表面が削れるまでの往復回数で評価した。評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
(評価基準)
5:200回以上
4:150回以上200回未満
3:100回以上150回未満
2:50回以上100回未満
1:50回未満
【0108】
(耐溶剤性(2))
実施例および比較例で得た電子線硬化型組成物を使用して作製した印刷物(i)の表面を、メチルエチルケトン溶液に浸漬した綿棒を使用して、1秒あたり1往復で擦り、硬化塗膜表面が削れるまでの往復回数で評価した。評価3~5が産業上実用可能な範囲である。
(評価基準)
5:200回以上
4:150回以上200回未満
3:100回以上150回未満
2:50回以上100回未満
1:50回未満
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
以上のように、本発明の実施形態である電子線硬化型組成物(実施例)では、優れたマイグレーション耐性を実現できることが分かる。また、電子線硬化型組成物において使用する(メタ)アクリレートモノマーの種類及びその配合量を調整することによって、ピンホール性、光沢、密着性、耐摩擦性、耐溶剤性といった塗膜特性においても良好な結果が得られることが分かる。したがって、本発明の実施形態である電子線硬化型組成物を用いることによって、硬化塗膜中に残存する未反応成分の外部移行を抑制し、かつ、塗膜物性に優れた印刷物を提供することが可能となる。