IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -液検知装置 図1
  • -液検知装置 図2
  • -液検知装置 図3
  • -液検知装置 図4
  • -液検知装置 図5
  • -液検知装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】液検知装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20231024BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20231024BHJP
   G01M 3/16 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
A61M5/168 510
H01M12/06 J
G01M3/16 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019164901
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021040907
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 真弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌樹
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-148332(JP,A)
【文献】特開2007-143895(JP,A)
【文献】特開2016-136516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
H01M 12/06
G01M 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと、負極シートとを有し、前記正極シートと前記負極シートとの間に液体が浸透することで発電する金属空気電池と、
前記金属空気電池を収容する筐体と、を具備し、
前記筐体には、外部から前記金属空気電池へ前記液体を導入する液導入手段が設けられており、
前記正極シートと、前記負極シートとの間には、セパレータが介在し、前記セパレータには、前記負極シート及び前記正極シートの外周端部から延出し、前記正極シートの外面或いは前記負極シートの外面と重なるように折り曲げられた液接触領域を有しており、
前記液接触領域と前記液導入手段とが対向している、
ことを特徴とする液検知装置。
【請求項2】
前記液導入手段は、前記筐体の少なくとも一面に設けられた、1つ或いは複数の液導入孔であることを特徴とする請求項1に記載の液検知装置。
【請求項3】
前記金属空気電池の検知信号を、受信部へ無線通信が可能な送信部を有することを特徴とする請求項1又は請求項に記載の液検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池を備えた液検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場や屋内での作業現場等で、液漏れ検知システムが使用される。液漏れ検知システムでは、液漏れ箇所に、液検知装置を配置する。液検知装置では、外部から液体が接触した際の電気的な変化を捉え、液漏れを検知する。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、漏血検知用の液漏れ検知システムに関する発明が開示されている。特許文献1に記載の発明では、漏出した液体により発電する水電池を用いたセンサが開示されている。特許文献2に記載の発明では、正極シート、セパレータ、及び負極シートを有するマグネシウム電池を用いたセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/020507号
【文献】特開2017-148332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献に記載の発明では、センサへの液体の導入場所をコントロールすることができず、また、液体の導入エリアが広範となり、例えば、正極シートが液体に浸されて空気から遮断される等して、金属空気電池として適切に動作させることができない事態が想定される。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、特に、金属空気電池への液導入場所をコントロールでき、金属空気電池を適切に動作させることができ、検知精度を向上させることができる液検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液検知装置は、正極シートと、負極シートとを有し、前記正極シートと前記負極シートとの間に液体が浸透することで発電する金属空気電池と、前記金属空気電池を収容する筐体と、を具備し、前記筐体には、外部から前記金属空気電池へ前記液体を導入する液導入手段が設けられており、前記正極シートと、前記負極シートとの間には、セパレータが介在し、前記セパレータには、前記負極シート及び前記正極シートの外周端部から延出し、前記正極シートの外面或いは前記負極シートの外面と重なるように折り曲げられた液接触領域を有しており、前記液接触領域と前記液導入手段とが対向している、ことを特徴とする。
【0008】
本発明では、前記液導入手段は、前記筐体の少なくとも一面に設けられた、1つ或いは複数の液導入孔であることが好ましい。
【0010】
本発明では、前記金属空気電池の検知信号を、受信部へ無線通信が可能な送信部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液検知装置によれば、金属空気電池への液導入をコントロールでき、金属空気電池を適切に動作させることができる。これにより、検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施の形態における液検知装置の斜視図である。
図2図2は、本実施の形態における液検知装置の縦断面図である。
図3図3は、本実施の形態の液検知装置内に収容される金属空気電池の一例を示す縦断面図である。
図4図4は、本実施の形態の液検知装置内に収容される金属空気電池の一例を示す縦断面図である。
図5図5Aは、本実施の形態の液検知装置内に収容される金属空気電池の一例を示す平面図であり、図5Bは、縦断面図である。
図6図6は、本実施の形態における液検知装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
図1、及び図2に液検知装置1は、金属空気電池2と、金属空気電池2を収容する筐体10と、を有して構成される。
【0015】
限定するものではないが、筐体10は、金属空気電池2を収容可能な大きさの有底空間を備える収容体11と、収容体11の開口を塞ぐことが可能な蓋体12と、を有して構成される。
【0016】
図2に示すように、金属空気電池2を収容体した収容体11と蓋体12とが接着剤等により接合され一体化される。
【0017】
図1図2に示すように、蓋体12には、外部から金属空気電池2へ液体を到達させる液導入手段としての複数の液導入孔13が設けられている。液導入孔13は、蓋体12を貫通しており、液導入孔13を介して、外部から収容体11内に液体を導くことができる。
【0018】
金属空気電池2は、負極シート(金属極シート)と、正極シート(空気極シート)とを有する。金属空気電池2は、負極シートと正極シートの間に液体が浸透することで発電する。
【0019】
金属空気電池2の構造を限定するものではないが、以下に金属空気電池2の一例を示す。
【0020】
図3に示すように、金属空気電池2は、例えば、負極シート3と、セパレータ4と、正極シート5とが、積層されたラミネート構造である。図3に示すように、セパレータ4は、負極シート3と正極シート5との間に介在している。
【0021】
例えば、各シート間は、粘着層を介して固定される。粘着層は、負極シート3及び正極シート5の縁部に部分的に設けられ、セパレータ4の検知領域4´´には設けられないことが好ましい。
【0022】
負極シート3を構成する金属は、マグネシウム(Mg)、Mg合金、亜鉛(Zn)、Zn合金、アルミニウム(Al)、或いは、Al合金のうちいずれかであることが好ましい。このうち、負極シート3を構成する金属は、Mg、或いは、Mg合金であることがより好ましい。
【0023】
セパレータ4は、電気的に絶縁性、イオン透過性、及び、液浸透性を有する材質で形成される。例えば、不織布、織布、多孔性薄膜等である。
【0024】
正極シート5は、集電体と触媒層(反応部)とを有して構成される。集電体に求められる特性は、負極シート3から放出される電子を、触媒層へ伝える導電性と、酸素を透過させる通気性である。集電体の構成を限定するものでないが、例えば、金網や発泡金属等、既存のものを用いることできる。また、触媒層に求められる特性は、液体を外部に放出しない疎水性及び、酸素を透過させる通気性である。触媒層には既存の材質を用いることができる。触媒層は、少なくとも集電体の一方の面に形成されており、触媒層は、セパレータ4に密接している。
【0025】
図1に示すように、セパレータ4は、例えば、負極シート3及び正極シート5より大きく形成される。また、図1に示す構成では、正極シート5と負極シート3とは同じ大きさである。
【0026】
図1に示すように、セパレータ4は、負極シート3及び正極シート5の図示右側の外周端部3a、5aから図示右方向に長く延出している。
【0027】
セパレータ4は、負極シート3及び正極シート5の外周端部3a、5aから延出した液接触領域4´と、負極シート3と正極シート5との間に介在する検知領域4´´と、を有する。液接触領域4´と、検知領域4´´とは、一体的に形成されている。
【0028】
限定されるものではないが、正極シート5の厚み(集電体を含む)は、0.4~2.0mm程度である。また、負極シート3の厚みは、0.05~2.0mm程度である。負極シート3、及び正極シート5の各厚みと、更にセパレータ4の厚みを加えた総厚が金属空気電池2の厚みとなり、収容体11は、金属空気電池2の厚み以上の深さを有する収容空間を備えている。
【0029】
図1に示す液導入孔13と、金属空気電池2の液接触領域4´は、厚み方向で、対向しており、したがって、外部から液導入孔13を通じて液接触領域4´にまで適切に液体を導くことができる。
【0030】
図3に示すように、液導入孔13を通じて矢印a1の方向から、液体が、セパレータ4の液接触領域4´に接触する。これにより、液体は、液接触領域4´から検知領域4´´にまで浸透する。液体が、検知領域4´´に到達すると、例えば、負極シート3を構成する金属が、Mgであるとき、負極シート3側では、下記(1)で示す酸化反応が生じる。また、正極シート5においては、下記(2)で示す還元反応が生じる。したがって、金属空気電池2の全体としては、下記(3)に示す反応が起こり、放電が行われる。
(1)2Mg →2Mg2++4e
(2)O+2HO+4e →4OH
(3)2Mg+O+2HO →2Mg(OH)
【0031】
図3では、正極シート5側を図示上側に向けており、正極シート5の外側に位置する液接触領域4´から液体が接触する構成であるが、例えば、負極シート3側を図示上方向に向けて、負極シート3の外側に位置する液接触領域4´から液体が接触する構成としてもよい。
【0032】
負極シート3及び正極シート5と、図6に示す送信部6とが、電気的に接続されている。ただし、接続構造を限定するものではない。金属空気電池2では、液漏れに基づく電池反応により電圧値(抵抗値)が変化する。この電圧変化に基づく検知信号を送信部6から無線で受信部7に送信する。受信部7では受信した検知信号に基づいて、液漏れが発生したことを検知し、自動的に装置等を停止させたり、人に、液漏れが生じたことを報知することができる。検知信号に対し閾値を用いて、検知信号のレベルが閾値を越えた場合に、液漏れが生じたと判別したり、液漏れのレベルを判断することもできる。
【0033】
図4に示す他の実施の形態では、負極シート3及び正極シート5の外周端部3a、5aから延出するセパレータ4を折り曲げて、負極シート3の外面3d(図2に示す負極シート3の下面)に重ねている。これにより、液接触領域4´を、負極シート3及び正極シート5と重なるように配置することができる。
【0034】
図4に示す実施の形態では、筐体10の液導入孔13を通じて、矢印a2の方向からの液漏れにより、液体が、液接触領域4´に接触する。これにより、液体が、液接触領域4´から、負極シート3と正極シート5に挟まれた検知領域4´´に素早く浸透し、液漏れを精度良く検知することができる。また、図4に示す負極シート3に多数の微細孔を設けることで、液接触領域4´に接触した液体は、微細孔を通って、検知領域4´´にまで到達でき、より素早く液漏れを検知することができる。
【0035】
なお、負極シート3及び正極シート5の外周端部3a、5aから延出するセパレータ4を折り曲げる方向は、負極シート3の外面3d側であっても、正極シート5の外面5d側であってもどちらでもよいが、正極シート5側に折り曲げる場合、正極シート5は空気との接触が必要であるため、空気との接触を可能な構造とする必要がある。このため、セパレータ4を、負極シート3の外面3dと重なるように折り曲げることで、正極シート5側の空気との接触を遮断することなく、構造を容易化でき、好ましい。
【0036】
図5A及び図5Bに示す他の実施の形態では、例えば、円形状の負極シート23と、円形状のセパレータ24と、円形状の中心を切り抜いたリング形状の正極シート25とが、積層されたラミネート構造の金属空気電池である。この実施の形態では、図5A図5Bに示すように、正極シート25には、セパレータ24まで通じる一つの穴25bが形成されており、穴25bを通じて露出するセパレータ24の部分が、液接触領域24´である。
【0037】
また、セパレータ24には、負極シート23と正極シート25とが、セパレータ24を介して重なる検知領域24´´が設けられている。
【0038】
図5Bに示すように、矢印a3の方向から、液体が、セパレータ24の液接触領域24´に接触する。これにより、液体は、液接触領域24´から検知領域24´´にまで浸透し、上記(1)~(3)に示す反応が起こり、放電が行われる。
【0039】
図3図5に示す金属空気電池2は、負極シート3及び正極シート5の間にセパレータ4を有する構成であるが、液接触領域4´を有し、液体を液接触領域4´から検知領域´´に浸透させるセパレータ4は無くてもよい。すなわち、セパレータ4を用いずに負極シート3及び正極シート5の間に液体を浸透させる構成とすることができる。
【0040】
本実施の形態では、金属空気電池2を、筐体10に収容することで、金属空気電池2を外部からの衝撃や、接触等から適切に保護することができる。加えて、本実施の形態では、筐体10に、外部から金属空気電池2へ液体を導入する液導入手段を設けている。
【0041】
本実施の形態では、液導入手段として、図1に示すように、複数の液導入孔13を筐体10に配置した。これにより、外部から液体を、液導入孔13を通じて、金属空気電池2まで適切に導入することができる。したがって、本実施の形態によれば、液体の金属空気電池2への導入場所をコントロールすることができ、金属空気電池2を適切に動作させることができる。これにより、検知精度を向上させることができる。
【0042】
液導入孔13の数は、1つであってもよい。また、液導入孔13の大きさや形状、形成場所を限定するものではない。
【0043】
図1図2では、液導入孔13は、筐体10の上面に形成されるが、上面とともに、或いは上面に代えて、筐体10の下面や側面に形成されてもよい。液導入孔13は、少なくとも1面に形成されるが、複数の面に形成されてもよい。例えば、液導入孔13を、筐体10の上面と下面の両面に形成することができる。これにより、液検知装置1の上面側、或いは下面側の液漏れを適切に検知することができる。
【0044】
本実施の形態では、金属空気電池2には、負極シート3と、正極シート5と、その間に介在するセパレータ4とが積層されたラミネート構造を用いることができる。このとき、セパレータ4には液接触領域4´を設けることができ、液接触領域4´に接触した液体を、負極シート3と正極シート5の間のセパレータ4の検知領域4´´まで浸透させることができる。本実施の形態では、液体が、液導入孔13を通じて、液接触領域4´に到達するように、液導入孔13及び液接触領域4´を配置することができる。すなわち、例えば、液導入孔13と、液接触領域4´を対向して配置することで、液導入孔13を通じて筐体10内に導かれる液体を、液接触領域4´に適切に接触させることが可能である。換言すれば、液体を、金属空気電池2の液接触領域4´にのみ接触させることができ、確実に液漏れ検知を行うことができる。
【0045】
なお、本実施の形態の液検知装置1は、金属空気電池2を備え、漏水や漏血により自己発電する。漏水により自己発電させるには、例えば、セパレータ4に予め塩を含有しておく必要がある。塩を限定するものではないが、例えば、塩化ナトリウムを挙げることができる。このように、本実施の形態では、液検知装置1は、外部電源を必要とせず、無線で、金属空気電池で得られた検知信号を送信部6から受信部7に送ることができる。無線方式を限定するものでなく、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi等、既存の方式を用いることができる。
【0046】
以上により、本実施の形態では、有線を用いる必要がなく、コンパクトな形態の液検知装置1を実現できる。本実施の形態の液検知装置1を取り付けた場所で、コードが邪魔になることがなく、また、設置しにくい場所などにも簡単に取り付けることができる。
【0047】
本実施の形態の液検知装置1の使用用途を限定するものではないが、医療現場や屋内での作業現場等に適用することができる。
【0048】
医療現場では、点滴の漏れや漏血を検知することができる。漏血としては、例えば、人工透析用の漏血センサとして用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の液検知装置によれば、漏血検知センサや漏水検知センサとして、有効に適用することが出来る。特に、本発明では、薄型で小型の液検知装置を実現でき、且つ液検知装置は、外部電源を必要としない。したがって、使い勝手に優れ、対象物や場所を問わず、簡単に使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 :液検知装置
2 :金属空気電池
3、23 :負極シート
4、24 :セパレータ
4´、24´ :液接触領域
4´´、24´´ :検知領域
5、25 :正極シート
6 :送信部
7 :受信部
10 :筐体
11 :収容体
12 :蓋体
13 :液導入孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6