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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
F04D19/04 D
F04D19/04 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019131945
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021017810
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091225
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 均
(74)【代理人】
【識別番号】100096655
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 隆
(72)【発明者】
【氏名】武田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】坂口 祐幸
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137840(JP,A)
【文献】特開2015-143513(JP,A)
【文献】特開平09-310696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16;17/00-19/02;21/00-25/16;29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口または排気口が形成された外装体と、
前記外装体に内包され、各種電装品を包囲するステータコラムと、
前記外装体内部に、回転自在に支持された回転軸と、
前記回転軸に固定され、且つ前記ステータコラムの外側に配置されて、前記回転軸と共に回転する回転体と、
前記回転体と所定の隙間で対向し、ネジ溝が形成された固定部と、
を備え、
回転する前記回転体と前記固定部に形成された前記ネジ溝との相互作用によりガスを排気するネジ溝ポンプ部を備えた真空ポンプであって、
前記ネジ溝は谷部と山部を備え、
前記山部の少なくとも一つが前記ステータコラムを固定するための固定部材の軸方向の上側に配置されていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記山部の少なくとも一つの前記軸方向の下側に配置された前記固定部材は、前記排気口に最も近接した前記固定部材であることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記ネジ溝は複数の谷部と複数の山部を備え、前記複数の山部が前記固定部材の軸方向の上側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ溝ポンプ部(円筒ネジ部)、特にネジ溝ポンプ部とシグバーンポンプ部を有する真空ポンプであって、ネジ溝ポンプ部の出口が、ステータコラムの固定部付近に位置する構造において、強度を維持しながら、排気性能の低下を抑制する真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より使用されているホルベック型ネジ溝排気要素を有するホルベック型分子ポンプは、回転円筒部と、当該回転円筒部と径方向に隙間(クリアランス)をもって設置された固定円筒部と、を備え、当該回転円筒部もしくは固定円筒部の少なくともいずれか一方の隙間対向表面にらせん状溝流路が刻設されている。
そして、この回転円筒部が、高速回転すると、圧縮された排気ガスが、らせん状溝流路内に流入し、このらせん状溝流路にガイドされながら排気口から排出されるようになっている。
図5に示すように、このようなホルベック型分子ポンプ部を有する真空ポンプ1001では、各種電装品を収容するステータコラム80の固定部(固定ボルト800)は、ロータ円筒部10の内側に存在している。
ところで、近年、真空ポンプの更なる性能の向上が要求され、ロータの回転速度が、27000回転/分~30000回転/分程度から36000回転/分~37000回転/分程度まで上昇している。
このようにロータの回転速度を上昇させると、それに伴いロータに遠心力による高い応力が生じる。同時に、ロータ円筒部にも高い応力が生じるため、なるべく高い応力に耐えうる材料で構成されることが要求される。また、耐応力の観点から、ロータ円筒部の半径方向の径を小さくする必要も生じる。
この図5に示す例では、ロータ円筒部10の外周にロータ円筒部10が高速回転による遠心力に耐え得るために、補強用リング300を設けてある。
【0003】
ここで、ロータ円筒部10の半径方向の径を小さくすると、設計上らせん状溝であるネジ溝の出口位置を、ステータコラム80の固定部付近にせざる得なくなる。そのため、ガスの排気に対して干渉が生じて排気流路が狭くなり(排気流路のコンダクタンスの低下)、結果として真空ポンプの排気性能に悪影響を与える恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-106365号公報
【0005】
特許文献1には、ネジ溝ポンプ部の排気性能を維持しつつ小型化を実現する連結型ネジ溝スペーサ、および、当該連結型ネジ溝スペーサが配設された真空ポンプが開示されている。すなわち、記載されている連結型ネジ溝スペーサは、シグバーンポンプ部とネジ溝ポンプ部とを連結させる構造を備え、排気要素部であるネジ溝ポンプ部の構造を、円筒状ネジの上にシグバーン型の構造が取り付けられた構造にし、当該取り付け部分において各部品が連結する構成にする。つまり、シグバーン部と円筒状ネジ(ネジ溝ポンプ部)の流路の境目を、真空ポンプの軸線方向から見て略直角になるように繋ぎ、シグバーン部とネジ溝ポンプ部の流路を繋いでいる。この構成により、ネジ溝ポンプ部の圧縮流路長を、連結されたシグバーン部によって径方向に伸ばしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1には、ロータ円筒部の半径方向の径を小さくして、ネジ溝の出口位置が、ステータコラムの固定部付近になった場合、排気流路のコンダクタンスが低下することについては、考慮されていなかった。
この排気流路のコンダクタンス低下に対して、ネジ溝の出口位置とステータコラムの固定部とのクリアランスを広く取ろうとすると、真空ポンプの高さ方向の寸法が大きくなり、真空ポンプのコンパクト化の要請に反することとなってしまう。
また、ステータコラムの固定部の肉厚を薄くしたり、座繰り形状を用いたり、固定部で用いるボルトの本数を減らすことで、クリアランスを広く取り、排気流路のコンダクタンスを確保する方法も考えられる。しかしながら、ステータコラムの固定部の強度の問題が不可避的に発生してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、ロータ円筒部の半径方向の径を小さくしても、高さ方向のサイズを大きくせず、且つステータコラムの固定部の固定強度を低下させず、排気流路のコンダクタンスを維持して、排気性能を低下させない真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本願発明では、吸気口または排気口が形成された外装体と、前記外装体に内包され、各種電装品を包囲するステータコラムと、前記外装体内部に、回転自在に支持された回転軸と、前記回転軸に固定され、且つ前記ステータコラムの外側に配置されて、前記回転軸と共に回転する回転体と、前記回転体と所定の隙間で対向し、ネジ溝が形成された固定部と、を備え、回転する前記回転体と前記固定部に形成された前記ネジ溝との相互作用によりガスを排気するネジ溝ポンプ部を備えた真空ポンプであって、前記ネジ溝は谷部と山部を備え、前記山部の少なくとも一つが前記ステータコラムを固定するための固定部材の軸方向の上側に配置されていることを特徴とする真空ポンプを提供する。
請求項2記載の本願発明では、前記山部の少なくとも一つの前記軸方向の下側に配置された前記固定部材は、前記排気口に最も近接した前記固定部材であることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプを提供する。
請求項3記載の本願発明では、前記ネジ溝は複数の谷部と複数の山部を備え、前記複数の山部が前記固定部材の軸方向の上側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロータ円筒部の半径方向の径を小さくしても、排気流路が狭くなることにより、真空ポンプの排気性能が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る真空ポンプの概略構成例を示した図である。
図2図1のA-A断面図であり、本発明の実施形態に係る連結型ネジ溝スペーサを説明するための図である。
図3図2の側面図であり、本発明の実施形態に係る連結型ネジ溝スペーサを説明するための図である。
図4図1のB-B断面図であり、本発明の実施形態に係る連結型ネジ溝スペーサと固定ボルトとの位置関係を説明するための図である。
図5】従来技術におけるロータ円筒部と固定ボルトを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(i)実施形態の概要
本発明の実施形態に係る真空ポンプでは、シグバーンポンプ部とネジ溝ポンプ部とを連結させる構造である連結型ネジ溝スペーサを備えている。この連結型ネジ溝スペーサの排気流路部(ネジ排気流路)であるネジ溝の出口位置が、ステータコラムの固定部(固定ボルト)付近になった場合、排気流路のコンダクタンスが低下する。
そこで、連結型ネジ溝スペーサのネジ山とステータコラムの固定部(固定ボルト)の設置位置の周方向の位相を可能な限り揃える。別言すれば、排気流路である連結型ネジ溝スペーサのネジ溝をステータコラムの固定部(固定ボルト)の設置位置の周方向の間に設けるようにする。こうすることで、排気流路のコンダクタンスの低下を抑制出来る。
【0012】
(ii)実施形態の詳細
本発明の実施形態の真空ポンプは、配設される固定円筒部または配設される回転円筒部の少なくともいずれか一方に、山部と谷部を有するらせん(スパイラル)状溝が刻設(配設)されるシグバーンポンプ部と、さらに、回転円筒との対向面にらせん状溝が形成され、所定のクリアランスを隔てて回転円筒の外周面に対向するネジ溝スペーサが備えられ、回転円筒が高速回転することでガスが回転円筒の回転に伴ってネジ溝(らせん溝)にガイドされながら排気口側へ送り出される気体移送機構であるネジ溝ポンプ部を有する。
そして、シグバーンポンプ部とネジ溝ポンプ部とは、連結型ネジ溝スペーサで連結されている。
ところで、真空ポンプの排気性能を更に向上させる要請から、真空ポンプのロータの回転速度をあげる必要が生じる。このとき、前述の回転速度による遠心力で生じる高い応力と、ロータの材料の耐応力(一般的には引張強度)を考慮する必要があり、ロータ円筒部の半径方向の径を小さくする場合には、ステータコラムの固定部の位置を、らせん状溝であるネジ溝の出口に近接せざるを得なくなることがある。
このとき、ステータコラムの固定部(固定ボルト)が、ガスの排気に対しての障害となり、排気流路が狭くなり、真空ポンプの排気性能に悪影響を与える恐れがある。そこで、ステータコラムの固定部(固定ボルト)の設置位置を、連結型ネジ溝スペーサの出口側のネジ山と設置位置の周方向の位相を可能な限り合わせるようにする。
こうすることで、真空ポンプの排気流路が狭くなることにより、真空ポンプの排気性能が低下することを防止できる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図4を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態に係る真空ポンプ1の概略構成例を示した図であり、真空ポンプ1の軸線方向の断面図を示している。
なお、本発明の実施形態では、便宜上、回転翼の直径方向を「径(直径・半径)方向」、回転翼の直径方向と垂直な方向を「軸線方向(または軸方向)」として説明する。
真空ポンプ1の外装体を形成するケーシング(外筒)2は、略円筒状の形状をしており、ケーシング2の下部(排気口6側)に設けられたベース3と共に真空ポンプ1の筐体を構成している。そして、この筐体の内部には、真空ポンプ1に排気機能を発揮させる構造物である気体移送機構が収納されている。
本実施形態では、この気体移送機構は、大きく分けて、回転自在に支持された回転部(ロータ部/シグバーン部)と筐体に対して固定された固定部(ネジ溝ポンプ部)から構成されている。
また、図示しないが、真空ポンプ1の外装体の外部には、真空ポンプ1の動作を制御する制御装置が専用線を介して接続されている。
【0014】
ケーシング2の端部には、当該真空ポンプ1へ気体を導入するための吸気口4が形成されている。また、ケーシング2の吸気口4側の端面には、外周側へ張り出したフランジ部5が形成されている。
また、ベース3には、当該真空ポンプ1から気体を排気するための排気口6が形成されている。
【0015】
回転部(回転体)は、回転軸であるシャフト7、このシャフト7に配設されたロータ8、ロータ8に設けられた複数枚の回転翼9、排気口6側(ネジ溝ポンプ部)に設けられたロータ円筒部10で構成される。なお、シャフト7およびロータ8によりロータ部が構成される。
各回転翼9は、シャフト7の軸線に対して垂直に放射状に伸びたブレードにより構成される。なお、本実施形態では、回転翼9の最下段(排気口6側)は円盤にし、
シグバーン部の圧縮を行う構成にする。
また、ロータ円筒部10は、ロータ8の回転軸線と同心の円筒形状をした円筒部材により構成される。
【0016】
シャフト7の軸線方向中程には、シャフト7を高速回転させるためのモータ部が設けられ、ステータコラム80に内包されている。
さらに、ステータコラム80内には、シャフト7のモータ部に対して吸気口4側と排気口6側に、シャフト7をラジアル方向(径方向)に非接触で支持するための径方向磁気軸受装置が設けられている。また、シャフト7の下端には、シャフト7を軸線方向(アキシャル方向)に非接触で支持するための軸方向磁気軸受装置が設けられている。
【0017】
筐体(ケーシング2)の内周側には、固定部(固定部品)が形成されている。この固定部は、固定翼50などから構成され、シャフト7の軸線に対し垂直な平面から所定の角度だけ傾斜してケーシング2の内周面からシャフト7に向かって伸びたブレードから構成されている。そして、固定翼50は円筒形状をしたスペーサ(固定部品)により互いに隔てられて固定され、ターボ分子ポンプ部(ターボ分子ポンプ段)として構成される。
なお、上述のターボ分子ポンプ部は、回転翼9と固定翼50は互い違いに配置され、軸線方向に複数段形成されるが、真空ポンプに要求される排出性能を満たすために、必要に応じて任意の数のロータ部品およびステータ部品を設けることができる。
【0018】
さらに、本実施形態では、上述したターボ分子ポンプ部よりも排気口6側に、ネジ溝ポンプ部を有する連結型ネジ溝スペーサ20が配設される。
連結型ネジ溝スペーサ20には、従来のネジ溝スペーサと同様に、ロータ円筒部10との対向面にはネジ溝(らせん溝)が形成されている。
連結型ネジ溝スペーサ20におけるロータ円筒部10との対向面側(すなわち、真空ポンプ1の軸線に平行な内周面)は、所定のクリアランスを隔ててロータ円筒部10の外周面に対面しており、ロータ円筒部10が高速回転すると、真空ポンプ1で圧縮されたガスがロータ円筒部10の回転に伴ってネジ溝にガイドされながら排気口6側へ送出されるようになっている。すなわち、ネジ溝は、ガスを輸送する流路となっている。
このように、連結型ネジ溝スペーサ20におけるロータ円筒部10との対向面と、ロータ円筒部10とが、所定のクリアランスを隔てて対向することにより、連結型ネジ溝スペーサ20の軸線方向側内周面に形成されたネジ溝でガスを移送する気体移送機構を構成している。
なお、ガスが吸気口4側へ逆流する力を低減させるために、このクリアランスは小さければ小さいほど好ましい。
【0019】
また、連結型ネジ溝スペーサ20に形成されたらせん溝の方向は、らせん溝内をロータ8の回転方向にガスが輸送された場合、排気口6に向かう方向である。
また、らせん溝の深さは、排気口6に近づくにつれて浅くなるようになっており、らせん溝を輸送されるガスは排気口6に近づくにつれて圧縮されるようになっている。
上述した構成により、真空ポンプ1では、吸気口4から吸引されたガスは、シグバーン部で圧縮された後、ネジ溝ポンプ部でさらに圧縮されて排気口6から排出されるので、真空ポンプ1は、当該真空ポンプ1に配設される真空室(図示しない)内の真空排気処理を行うことができる。
【0020】
ここで、ステータコラム80は、ベース3に固定ボルト800により固定されている。この固定ボルト800の位置は、図5に示す位置とは相違している。これは、ロータ8およびロータ円筒部10の回転速度をあげると、ステータコラム80の半径方向の径を小さくする必要が生じ、図5に示す位置には固定ボルト800を設計上設置ができなくなるためである。
また、図5に示す位置に固定ボルト800を設置すると、設計上十分な強度を維持することも困難となる。
【0021】
この図1から明らかなように、図1に示す位置に固定ボルト800を設置すると、図中Xで示した箇所で、連結型ネジ溝スペーサの排気ガスの出口と近接することとなる。この固定ボルト800は、周方向に複数箇所(例えば、6箇所、8箇所、10箇所)設置される。また、連結型ネジ溝スペーサ20の排気ガスの出口も、設けられた溝の山と谷(谷の部分が排気ガスの出口となる)の関係から周方向に複数箇所存在する。
【0022】
図2は、図1のA-A断面図であり、連結型ネジ溝スペーサ20を説明するための図であり、図3は、図2の側面図である。なお、図2の矢印は、ロータ円筒部10の回転方向を示している。
図1に示したように、本実施形態に係る連結型ネジ溝スペーサ20は、ネジ溝スペーサ軸垂直部201とネジ溝スペーサ軸平行部202とを有する。
ネジ溝スペーサ軸垂直部201は、真空ポンプ1の軸線方向に対して略垂直(水平)に構成される。そして、当該ネジ溝スペーサ軸垂直部201の吸気口4側の面は、シグバーン部の回転翼9と所定のクリアランスを隔てて対向(対面)し、且つ、山部と谷部を有するらせん状溝が刻設されている。一方、当該ネジ溝スペーサ軸垂直部201の吸気口4側とは反対側の面は、ベース3側に配設される。
ネジ溝スペーサ軸平行部202は、真空ポンプ1の軸線方向に対して略平行に構成される。そして、図2に示すように、当該ネジ溝スペーサ軸平行部202には、所定のクリアランスを隔ててロータ円筒部10と対向する面である内周面に、ネジ溝が形成されている。
【0023】
ネジ溝スペーサ軸垂直部201には、垂直部山部と垂直部谷部を有するらせん状溝が刻設され、一方、ネジ溝スペーサ軸平行部202には、図3に示すように、平行部山部と平行部谷部を有するネジ溝が形成されている。このネジ溝スペーサ軸平行部202の出口が、図1に示すように、固定ボルト800と位置的に干渉することとなる。
本実施形態に係る真空ポンプ1では、連結型ネジ溝スペーサ20を配設することで、ネジ溝スペーサ軸垂直部201と回転翼9(シグバーン部)により軸方向に対して垂直な流路でガスを圧縮する。続けて、ネジ溝スペーサ軸平行部202とロータ円筒部10(ネジ溝ポンプ部)により軸方向と平行な流路でさらにガスを圧縮する。
このように、本実施形態に係る真空ポンプ1では、連結型ネジ溝スペーサ20が、ガスの流路を、軸方向に対して垂直方向から平行方向へと繋ぐ役割を担っているので、ケーシング2の軸線方向の長さやベース3の軸線方向の長さを長くすることなく(すなわち、真空ポンプ1の全体の高さが高くなるのを抑えつつ)、ガスを圧縮する流路を長くすることができる。なお、垂直方向から平行方向へと繋がれた流路は、軸線方向断面で見ると、アルファベットの「L」の逆形をした流路となる。
【0024】
なお、本実施形態では、連結型ネジ溝スペーサ20のネジ溝スペーサ軸垂直部201とネジ溝スペーサ軸平行部202を一体型で形成する構成にしたが、これに限られることはない。例えば、ネジ溝スペーサ軸垂直部201とネジ溝スペーサ軸平行部202が別部品で構成されていても、上述したように、軸方向に対して垂直方向から平行方向へと逆L字型に構成されてあれば性能上は問題ない。
【0025】
図4は、図1のB-B断面図であり、本発明の実施形態に係る連結型ネジ溝スペーサ20の排気ガスの出口と固定ボルト800との位置関係を説明するための図である。
この図4に示した実施形態では、固定ボルト800が8本、連結型ネジ溝スペーサ20の排気ガスの出口(すなわち、ネジ溝の谷部分)が8箇所であり、ネジ溝の山部分と固定ボルト800の周方向の位相を完全に合わせることができる。
よって、連結型ネジ溝スペーサ20の排気ガスの出口(ネジ溝の谷部)と、固定ボルト800とが干渉せず、真空ポンプ1の排気性能に悪影響を及ぼさない。すなわち、固定ボルト800を連結型ネジ溝スペーサ20の排気ガスの出口(ネジ溝の谷部)と非干渉の位置に設置している。
【0026】
図4に示した例では、連結型ネジ溝スペーサ20の排気ガスの出口の数(ネジ溝の谷部の数)と固定ボルト800の数が一致していたが、実際には、真空ポンプ1の設計上、この数が一致しない場合がある。
例えば、連結型ネジ溝スペーサ20の排気ガスの出口の数(ネジ溝の谷部の数)が8箇所、固定ボルト800の数が10本といったケースが存在する。この場合は、少なくとも1箇所でネジ溝の山部と固定ボルト800の位置を合わせるようにする。こうすることで、少なくともその箇所で連結型ネジ溝スペーサ20の排気ガスの出口(ネジ溝の谷部)と、固定ボルト800とが干渉せず、真空ポンプ1の排気性能への影響を低減できる。
また、この例で少なくとも1箇所でネジ溝の山部と固定ボルト800の位置を合わせる場合、真空ポンプ1の排気性能を考慮して、排気ガスが周方向に滞留することを抑制するため、排気口6に最も近い位置に設置する固定ボルト800の位置をネジ溝の山部と合わせる(谷部に固定ボルト800を配置しない)ようにしてもよい。
【0027】
なお、連結型ネジ溝スペーサ20の排気ガスの出口の数(ネジ溝の谷部の数)が、固定ボルト800の数の乗数になっている場合、固定ボルト800は、全て排気ガスの出口(ネジ溝の谷部)と非干渉の位置に設置できる。具体的には、排気ガスの出口の数(ネジ溝の谷部の数)が8箇所、固定ボルト800の数が4本の場合である。
【0028】
上記した例では、連結型ネジ溝スペーサ20を用いた場合を説明したが、本願発明はこれに限られない。ロータ円筒部10に対向する固定側にネジ溝を設けて、軸方向に排気ガスを圧縮するタイプの真空ポンプに適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 真空ポンプ
2 ケーシング
3 ベース
4 吸気口
5 フランジ部
6 排気口
7 シャフト
8 ロータ
9 回転翼
10 ロータ円筒部
20 連結型ネジ溝スペーサ
50 固定翼
80 ステータコラム
201 ネジ溝スペーサ軸垂直部
202 ネジ溝スペーサ軸平行部
300 補強用リング
800 固定ボルト(固定部材)
X 連結型ネジ溝スペーサにおけるネジ溝からの排気ガスの出口部分
1001 従来の真空ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5