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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】抗菌性酸化チタン粉体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/26 20060101AFI20231024BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20231024BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20231024BHJP
   C01G 23/047 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
A01N59/26
A01N59/16 Z
A01P3/00
C01G23/047
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019154384
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2021031450
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 健
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将樹
(72)【発明者】
【氏名】グェン フォン ティ ミン
(72)【発明者】
【氏名】寺部 敦樹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 英人
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-211030(JP,A)
【文献】特開2011-246294(JP,A)
【文献】特開2010-105939(JP,A)
【文献】特開2010-222266(JP,A)
【文献】特開2004-083904(JP,A)
【文献】特開2006-131583(JP,A)
【文献】特開平10-273322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
A01N 59/26
A01N 59/16
A01P 3/00
C01G 23/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナターゼ結晶の酸化チタン(TiO)粉体に、カリウム(K)を含む塩とリン(P)を含む塩の少なくともいずれか一方を添加して混合し、600~800℃の温度で熱処理して、内割りで0.5~5.0原子%のK、0.55~10.8原子%のPの少なくともいずれか一方を含有させること、及び、前記混合の際、前記TiO 粉体に、Pを含む塩が添加・混合され、Pの含有量が1.7~5.5原子%であることを特徴とする抗菌性酸化チタン粉体の製造方法。
【請求項2】
アナターゼ結晶の酸化チタン(TiO )粉体に、カリウム(K)を含む塩とリン(P)を含む塩の少なくともいずれか一方を添加して混合し、600~800℃の温度で熱処理して、内割りで0.5~5.0原子%のK、0.55~10.8原子%のPの少なくともいずれか一方を含有させること、及び、添加される前記K:Pの原子比率が1:2.5~3.5であることを特徴とする抗菌性酸化チタン粉体の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理を酸素中にて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌性酸化チタン粉体の製造方法。
【請求項4】
アナターゼ結晶の酸化チタン(TiO )中にカリウム(K)及びリン(P)が含有された粉末で、当該粉末中のK及びPの割合が、以下のi)~ii):
i)内割りで0.5~5.0原子%のK、
ii)内割りで0.55~10.8原子%のP
の要件を満たし、
含有されたK:Pの原子比率が1:2.25~3.15であることを特徴とする抗菌性酸化チタン粉体
【請求項5】
Pの含有量が1.7~5.5原子%であることを特徴とする請求項4に記載の抗菌性酸化チタン粉体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗所(遮光下)においても優れた抗菌性能を示す酸化チタン粉体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院などの医療保健施設で流行している院内感染の原因のひとつである薬剤耐性菌は抗生物質に耐性があり、遮光下でも効果を発揮する無機の抗菌性物質が求められている。
これまでに、酸化亜鉛(ZnO)の抗菌性は、直接微生物に作用するのではなく、その粉体表面の結晶粒子近傍で発生するスーパーオキシド、ヒドロキシラジカル等の活性酸素種により発現することが示唆されている。例えば下記の特許文献1には、酸化亜鉛の粉末を含有した分散液を、金属物品、ガラス物品等の表面に塗布して表面コート層を形成することによって、物品に抗菌性能を付与できることが開示されている。
更に、出発原料や水熱処理条件、熱処理方法によって抗菌力の強さが異なることも報告されており、例えば下記の特許文献2には、遮光下でも抗菌性能を有する酸化亜鉛粉体を製造する方法として、六角板状酸化亜鉛粉体を硝酸亜鉛水溶液中で水熱処理し、その後、大気中で熱処理することが提案されている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、抗菌性能を発揮させるためには酸化亜鉛に光が照射されていることが必要であり、暗所においては抗菌性能が殆ど得られないか又は全く得られないという問題があった。又、上記特許文献2の技術の場合には、その抗菌特性に限界があり、より強力な暗所抗菌性を有するものが要望されている。
【0004】
ところで、これまでに、酸化チタン(TiO)は白色顔料として産業分野で大量に使用されているが、暗所抗菌特性については現在まで報告例がなく、もし酸化チタンに新たな機能として従来のZnOよりも強い暗所抗菌特性がTiOに付与されれば、さらに多くの分野で用途が拡大すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-37446号公報
【文献】特開2017-141189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、暗所においても優れた抗菌性を示す酸化チタン粉体及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は、処理を行う対象の酸化チタンとして、TiOの低温相であるアナターゼ結晶の高純度粉体を用い、このTiO粉体に、カリウム(K)を含む塩とリン(P)を含む塩の少なくともいずれか一方を、TiOに対して内割りで所定量添加して混合し、その後、アナターゼ相が高温相のルチル結晶に相転移しない600~800℃(特に好ましくは650~750℃)の温度で熱処理することにより、暗所抗菌特性を示す活性酸素を生成する抗菌性TiO粉体が製造できることを見出して、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
優れた抗菌性能を示す酸化チタン粉体を製造することが可能な本発明の製造方法は、アナターゼ結晶の酸化チタン(TiO)粉体に、カリウム(K)を含む塩とリン(P)を含む塩の少なくともいずれか一方を添加して混合し、600~800℃の温度で熱処理して、内割りで0.5~5.0原子%のK、0.55~10.8原子%のPの少なくともいずれか一方を含有させること、及び、前記混合の際、前記TiO 粉体に、Pを含む塩が添加・混合され、Pの含有量が1.7~5.5原子%であることを特徴とする。
【0009】
又、本発明は、アナターゼ結晶の酸化チタン(TiO )粉体に、カリウム(K)を含む塩とリン(P)を含む塩の少なくともいずれか一方を添加して混合し、600~800℃の温度で熱処理して、内割りで0.5~5.0原子%のK、0.55~10.8原子%のPの少なくともいずれか一方を含有させること、及び、添加される前記K:Pの原子比率が1:2.5~3.5であることを特徴とするものである。
【0010】
又、本発明は、上記の特徴を有したアナターゼ結晶の酸化チタン(TiO)粉体の製造方法において、前記熱処理を酸素中にて行うことを特徴とするものでもある。
【0011】
更に、本発明の抗菌性酸化チタン粉体は、アナターゼ結晶の酸化チタン(TiO)中にカリウム(K)及びリン(P)が含有された粉末であって、当該粉末中のK及びPの割合が、以下のi)~ii):
i)内割りで0.5~5.0原子%のK、
ii)内割りで0.55~10.8原子%のP
の要件を満たし、含有されたK:Pの原子比率が1:2.25~3.15であることを特徴とする。
【0012】
又、本発明は、上記の特徴を有した抗菌性酸化チタン粉体においてPの含有量が1.7~5.5原子%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法を用いて得られる抗菌性酸化チタン粉体は、従来の酸化亜鉛粉体よりも低コストで環境負荷が小さく製造でき、かつ10倍以上強力な暗所抗菌性を示す。
そして、本発明の抗菌性酸化チタン粉体は、抗菌性を示すために日射が必要な従来の酸化チタンとは異なり、遮光下においても持続的に抗菌効果があるので、病院、乳幼児、高齢者向け施設等で広範囲に使用でき、良好な生活環境を確保するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の抗菌性酸化チタン粉体を製造する際の、好ましい製造工程の一例を示すフローチャートであり、左下には、実施例にて用いたアナターゼ型酸化チタン(α‐酸化チタン)原料粉体の走査型電子顕微鏡写真と共に、BET法で測定した比表面積S、X線回折で求められた格子定数と分子量から求めた理論密度Dの報告値(PDF #21-1272)3.893 g/cm3、6/(SA・Dx)の式から求めた粒子径Pが示されている。
図2】実施例において用いたルミノール化学発光強度の測定条件及び方法を示す図である。
図3】Kの添加割合を変化させた際、Kを単一添加した酸化チタン粉体と、K:P=1:3の原子比率にて添加した(以下、「1K+3P」と表記),(1K+3P)で表現される複合添加酸化チタン粉体についての蛍光X線(XFS)にて測定した粉体中のKの残存量を示すグラフである。
図4】Pの添加割合を変化させた際、Pを単一添加した酸化チタン粉体と、K:P=1:3の原子比率にて添加した(1K+3P)酸化チタン粉体についての蛍光X線(XFS)にて測定した粉体中のPの残存量を示すグラフである。
図5】Pの添加割合を変化させた際、Pを単一添加した酸化チタン粉体と(1K+3P)添加酸化チタン粉体についての熱処理条件の違いによるルミノール化学発光積算量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の抗菌性酸化チタン粉体の製造方法における各工程について説明する。図1は、本発明の製造方法における好ましい一例の手順を示すフローチャートである。
本発明では、原料粉末として、酸化チタン(TiO)の低温相であるアナターゼ結晶の高純度粉体(純度99.9%以上)が用いられ、市販品を利用することができる。このTiO粉体の粒径としては10~50nm程度のものが一般的であり、20~30nm程度のものが好ましい。
【0017】
そして、本発明では、上記のTiO粉体に、カリウム(K)を含む塩とリン(P)を含む塩の少なくともいずれか一方を添加して混合を行い、その後、600~800℃の温度で熱処理して、内割りで0.5~5.0原子%のK、0.55~10.8原子%のPの少なくともいずれか一方を含有させる。この際、上記の原子%となる量のKとPを一緒に添加しても良い。
尚、本発明において、内割りによる原子%とは、Ti原子、P原子及びK原子の全数に対するP原子又はK原子の数の百分率を意味する。
【0018】
本発明の製造方法において、アナターゼ結晶のTiO中にKやPを含有させる際、Kを含む種々のカリウム塩(例えば、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、シュウ酸カリウム等)や、Pを含むリン酸塩(例えば、リン酸水素アンモニウム)が使用でき、これらの塩を上記のTiO粉体と湿式混合法等により混合し、乾燥を行った後、アナターゼ相が高温相のルチル結晶に相転移しない600~800℃(好ましくは650~750℃)の温度にて熱処理する。この際、熱処理温度が800℃を超えると、低温相であるアナターゼ相が高温相のルチル結晶に相転移して、暗所(遮光下)にて抗菌特性を示す粉体は得られない。
上記の熱処理は、大気中で行っても酸素中で行ってもよいが、酸素中で行うことが好ましく、酸素中での熱処理を行って得られたTiO粉体の方が、高いルミノール化学発光積算値を示し、抗菌特性が優れたものとなる。
【0019】
又、本発明では、前記混合の際に、TiO粉体に、内割りで3.0~10.0原子%のPとなるようにしてPを含む塩を添加・混合し、上記の熱処理を行っても良く、この場合のPの含有量は1.7~5.5原子%となり、高いルミノール化学発光積算値を示す抗菌性TiO粉体が得られる。
尚、本発明では、KとPの両方をTiO粉体に添加・混合する際のK:Pの原子比率を1:2.5~3.5とすることが好ましく、1:3とすることが特に好ましく、このような原子比率の場合、上記の熱処理を大気中で行った際のルミノール化学発光積算値よりも、酸素中で熱処理を行った際のルミノール化学発光積算値が高くなる。
【0020】
上記の製造方法を用いて製造される本発明の抗菌性TiO粉体は、アナターゼ結晶のTiO中にK及び/又はPが含有された粉末であって、当該粉末中のK及び/又はPの割合は、以下のi)~ii):
i)内割りで0.5~5.0原子%のK、
ii)内割りで0.55~10.8原子%のP
の少なくともいずれか一方の要件を満たしており、上記の要件i)、ii)のいずれも満たさない場合には、遮光下での抗菌特性が低下したものとなる。
【0021】
本発明において、特に優れた抗菌特性が発揮されるのは、Pの添加割合が内割りで3.0~10.0原子%、特に5.0~10.0原子%の場合であるが、TiO粉体にKとPの両方が含有された粉体であっても、添加するK:Pの原子比率が1:2.5~3.5(好ましくは1:3)であり、上記の熱処理を酸素中で行った酸化チタン粉体は、高いルミノール化学発光積算値を示す。
Pが含有された、熱処理後の本発明の抗菌性酸化チタン粉体におけるPの含有量は1.7~5.5原子%であることが好ましく、KとPが含有された本発明の抗菌性酸化チタン粉体の場合には、含有されたK:Pの原子比率が1:2.25~3.15であることが好ましい。
本発明のTiO粉体の抗菌特性は、K及び/又はPの含有によって、アナターゼの酸素欠損量を回復することで、Tiの不純物レベルを増やすことによるものと考えられる。
以下、実施例に基づいて本発明の製造方法を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【実施例
【0022】
〔KとPの添加割合を変化させた際の化学発光CL 0~300sec積算量の変化測定〕
原料として、アナターゼ結晶酸化チタン粉体(堺化学工業(株)製、ルチル含有量0%、純度:99.93%)を準備し、このTiO粉体0.1モルに、炭酸水素カリウム及び/又はリン酸水素アンモニウムを、以下の表1に記載される割合(内割りによる原子%)にて添加し、15mLのエタノール中で湿式混合を行い、120℃で12時間乾燥させた後に、700℃で1時間、大気中にて熱処理を行った。
そして、このようにして得られたK及び/又はP含有された各TiO粉体について、化学発光(CL)積算値を測定した。このようにして測定されたCL積算値は、各TiO粉体の表面で発生する活性酸素の量と相関する。
尚、ルミノール化学発光強度の測定条件及び方法は、図2に示されるとおりであり、ルミノール溶液を添加した後の化学発光の積算値(CL0~300sec積算量)を測定した。ルミノール化学発光強度の測定には、化学発光計測装置、東北電子産業製、CLA-FS3を使用した。
以下の表1には、KとPの添加割合を変化させた際の化学発光CL 0~300sec積算量の値が要約されており、水平軸の下段の数値はKの添加仕込量(原子%)を示し、水平軸の上段の数値はKの含有量(原子%)を示す。又、左端の縦軸の数値はPの添加仕込量(原子%)を示し、右端の縦軸の数値はPの含有量(原子%)を示し、右端の縦軸の数値で、( )内の数値はKとPの複合添加の場合のPの含有量を示す。KとPの含有量は、蛍光X線分析(XFS)により測定した。
【0023】
【表1】
【0024】
上記表1の結果から、TiO粉体に、内割りで0.5~5.0原子%のK、1.0~12.0原子%のPの少なくともいずれか一方を添加・混合し、これを熱処理して得られた粉体(Kの含有量:0.5~5.0原子%、Pの含有量:0.55~10.8原子%)はいずれも、無添加のTiO粉体に比べて化学発光積算量が大きく、優れた暗所抗菌性を示すことがわかる。そして、この表1は、Kを添加せずにPを添加する場合、特に大きな化学発光積算量となるPの添加割合が3.0~10.0原子%(Pの含有量:1.7~5.5原子%)、より好ましくは5.0~10.0原子%(Pの含有量:2.8~5.5原子%)であることも示している。
【0025】
〔KとPの添加割合を変化させた際の抗菌性比較試験〕
K及びPの添加割合が、以下の表2に記載される割合である5種類のTiO粉体と、参照用としてのK,P無添加TiO粉体を準備し、各粉体をそれぞれアルミ箔に入れて乾熱滅菌した。そして、Na-Pバッファー液(20mM KHPO pH7.4)10mLに、大腸菌(2.3×10/mL)が入った菌液0.1mLと上記のTiO粉体を入れ、暗室において36℃で24時間静置し、この24時間経過後の菌数(個/mL)をコロニーカウント法により測定した。以下の表2に、上記のバイオテストの結果が要約されている。
尚、表2には、上記の方法により測定された除菌率の他に、スカベンジャーとして、2-プロパノール、2,5-ジメチルフラン、ニトロブルーテトラゾリウム、リボフラビンを用いた吸光度測定により特定された活性酸素種、BET比表面積、粒子径も記載されている。
【0026】
【表2】
【0027】
上記の表2に示された除菌率の値から、5原子%の割合でKが含有されたTiO粉体、5原子%の割合でPが添加されたTiO粉体(Pの含有量:2.8原子%)、0.75原子%の割合でKが含有され、かつ、2.25原子%の割合でPが添加されたTiO粉体(本発明の抗菌性TiO粉体)は、2.3×10個/mLの大腸菌を用いたバイオテストにおいて、暗所下、36℃/24時間静置で、95%以上の大腸菌を死滅させることができ、優れた抗菌性能(除菌率95~98%)を有するものであることが確認された。又、本発明の抗菌性TiO粉体が遮光下においても持続的な抗菌性を示すのは、上記表2に記載される活性酸素種によるものと考えられる。
【0028】
〔蛍光X線分析(X-ray Fluorescence Spectroscopy,XFS)によるアナターゼTiO粉体中のKの残存量測定〕
Kの添加割合を変化させ、Kを単一添加したTiO粉体と、K:P=1:3の原子比率にて添加したTiO粉体(1K+3P)についての粉体中のKの残存量を、蛍光X線分析装置(リガクzsx Primus IV)にて測定した。
図3は、上記XFSにて測定されたKの残存量を示すグラフであり、このグラフは、K:P=1:3の原子比率にて添加したTiO粉体(1K+3P)も、Kが単一添加されたものも、K残存量はほぼ同じであり、ほぼ100%残存していることを示している。尚、100%を超える残存量は仕込み量の秤量誤差であると思われる。
【0029】
〔XFSによるアナターゼTiO粉体中のPの残存量測定〕
図4に示されるように、Pの添加割合を変化させ、Pを単一添加したTiO粉体と、K:P=1:3の原子比率にて添加したTiO粉体(1K+3P)についての粉体中のPの残存量を、蛍光X線分析装置(リガクzsx Primus IV)にて測定した。
図4は、上記XFSにて測定されたPの残存量を示すグラフであり、このグラフは、KとPが1:3の原子比率にて共含有されたTiO粉体(1K+3P)は、Pが単一添加されたものよりも、アナターゼ中のPの残存量が高く、単一添加ではPが仕込み量の約55%しか残存せず、これに対し、1K+3Pでは約90%が残存することを示しており、1K+3Pとして添加すると、Pが残存し易いことが確認された。
【0030】
〔熱処理雰囲気の違いによるルミノール化学発光積算量の変化測定〕
Pを単一添加したTiO粉体(Pの仕込み量:0~5原子%)と、K:P=1:3の原子比率にて添加したTiO粉体(Pの仕込み量:0.15~4.5原子%)を準備し、各TiO粉体について、大気中で熱処理(700℃/1時間)した場合と、酸素中で熱処理(700℃/1時間)した場合のルミノール化学発光積算量を測定した。図5には、その結果が要約されている。
図5の結果から、Pを単一添加したTiO粉体の場合には、大気中で熱処理した場合と、酸素中で熱処理した場合にCL値の大きな違いは見られないが、K:P=1:3の原子比率にて添加したTiO粉体の場合には、大気中で熱処理した場合よりも、酸素中で熱処理した場合の方がCL値が大きく、特に1.5原子%K+4.5原子%P添加されたTiO粉体は、酸素中で熱処理を行うことによってCL値が著しく向上し(1000×103cps以上)、Pを単一添加したTiO粉体よりも高いCL値を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の製造方法を用いて製造されるTiO粉体は、遮光下でも優れた抗菌性能を示すので、例えば病院、乳幼児、高齢者向け施設等での使用に適している。
図1
図2
図3
図4
図5