(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】フットカバー
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
A41B11/00 D
A41B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2022079121
(22)【出願日】2022-05-13
(62)【分割の表示】P 2019226440の分割
【原出願日】2012-08-07
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507109206
【氏名又は名称】株式会社JKトレーディング
(73)【特許権者】
【識別番号】512205991
【氏名又は名称】イノテックス コリア カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INNOTEX KOREA Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】251-19,MANGWOD-DONG,JUNGLANG-GU,SEOUL,KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】河合 孝
(72)【発明者】
【氏名】金 正一
(72)【発明者】
【氏名】ジョン インジック
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3162440(JP,U)
【文献】特開2009-235654(JP,A)
【文献】登録実用新案第3151046(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、
前記フットカバーは、前記爪先部を形成する1枚の伸縮性爪先生地と、前記足底部を形成する1枚の伸縮性足底生地と、前記側辺部および前記踵部を形成する1枚の伸縮性側辺踵生地とが縫製されて形成され、
前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、
前記爪先部において爪先が挿入される開口断面における前記足底部側に、前記伸縮性爪先生地と前記伸縮性足底生地と前記伸縮性側辺踵生地との3枚の伸縮性生地の接合部分を備え
、
前記開口部を形成する爪先部の後縁に伸縮性細幅生地を設けておらず、かつ、前記開口部を形成する側辺部の上縁は1種類の伸縮性生地で構成されることを特徴とするフットカバー。
【請求項2】
前記接合部分において、前記伸縮性爪先生地と前記伸縮性側辺踵生地とは所定の幅が重ね合わせられて縫製されるとともに、その重ね合わせられて縫製された部分と前記伸縮性足底生地とが縫製されていることを特徴とする、請求項1に記載のフットカバー。
【請求項3】
着用時の側方視で、前記側辺部の上縁の長手方向と前記開口断面とで形成される角度が略直角であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のフットカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用するとパンプス(履き口である甲部分が大きく開いている主として婦人用の靴)等の靴の内側に隠れて見えなくなるフットカバーに関し、特に、歩行等の動作によっても脱げたり位置ずれすることが少ないフットカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
素足にパンプス等の靴を履くことが、ファッションとして定着している。この場合、パンプスと足裏とが直接接していると、足に発生した汗により靴の中が蒸れてしまい不快感がある。
そこで、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、着用時にパンプスから露出することのないよう履き口が大きくカットされた薄手のフットカバーが提案されている。このフットカバーを着用してパンプスを履けば、外観上、素足にパンプスを履いているように見え、足裏とパンプスとの間にはフットカバーが介しているため、汗によって靴の中が蒸れてしまうことを防止することができる。
【0003】
なお、このような足装着具を、本明細書ではフットカバーと記載するが、ソックスカバー、インナーソックス、ヌードソックス、カバーソックス等と記載される場合もある。
このようなフットカバーはパンプスから露出しないよう履き口が大きくカットされているため、歩行中の摩擦等によって履き位置がずれたり、脱げたりすすることがある。一方、履き口を小さくしてしまうとパンプスから露出してしまう。このような問題点に鑑みて開発されたフットカバーが、以下の先行技術文献に開示されている。
【0004】
特開平10-292206号公報(特許文献1)は、歩行時におけるパンプスとフットカバーとの摩擦によってフットカバーが素足から脱げてしまったり、パンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止するために、踵当接部内面に摩擦付与体を取り付けたフットカバーを開示する。
実用新案登録第3165733号公報(特許文献2)は、特許文献1に開示されたフットカバーの開口部の周縁に沿ってゴム紐を設けたのでは、ゴム紐が足に食い込むため、足にゴム紐の型が付いてしまったり、痛みを感じたり、履き心地が良くないという問題があったことに鑑み、開口部の周縁に沿って平ゴムを設けて一面が足に接するようにした帯状伸縮部を形成したフットカバーを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-292206号公報
【文献】実用新案登録第3165733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたフットカバーの摩擦付与体だけでは十分でない場合があり、この場合には、歩行時、パンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりする。特許文献2に開示された平ゴムでは、開口部の周縁の全体に亘って平ゴムを設けているため(平ゴムの伸縮性にもよるが)、フットカバーを履くときに開口部が十分に開かないで履きにくい場合があることに加えて、特許文献1に開示されたフットカバーと同じく、パンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりする問題もある。
【0007】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、フットカバーを履くときに開口部が十分に開いて履きやすく、かつ、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがないフットカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るフットカバーは以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のある態様に係るフットカバーは、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出する。このフットカバーは、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う筒状の爪先部で形成されている。このフットカバーは、前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、前記開口部を形成する側辺部の上縁に伸縮性細幅生地を設け、着用時の側方視で、前記伸縮性細幅生地の長手方向と前記爪先部の上側の後縁とで形成される角度が略直角であることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記開口部を形成する爪先部の上側の後縁に伸縮性細幅生地を設け、着用時の側方視で、前記側辺部の上縁に設けられた伸縮性細幅生地の長手方向と前記爪先部の後縁に設けられた伸縮性細幅生地とで形成される角度が略直角に構成することができる。
さらに好ましくは、前記伸縮性細幅生地は、爪先部、足底部、側辺部および踵部を形成する生地のいずれかと同じ生地で形成することができる。
【0010】
さらに好ましくは、前記伸縮性細幅生地は、爪先部、足底部、側辺部および踵部を形成する生地のいずれとも異なる生地で形成することができる。
また、本発明の別の態様に係るフットカバーは、爪先を被覆する。このフットカバーは、前記爪先を覆う筒状の爪先部と、前記爪先部の左右側にそれぞれ接合されて着用時に踵に係止されるループ状の伸縮性部材とで形成されている。このフットカバーは、着用時の側方視で、前記伸縮性部材の長手方向と前記爪先部の上側の後縁とで形成される角度が略直角であることを特徴とする。
【0011】
さらに好ましくは、前記伸縮性部材は、細帯状または紐状であるように構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフットカバーによれば、フットカバーを履くときに開口部が十分に開いて履きやすく、かつ、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るフットカバー(その1)の全体斜視図である。
【
図2】
図1のフットカバーを裏返した斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係るフットカバー(その2)の全体斜視図である。
【
図4】
図3のフットカバーを裏返した斜視図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係るフットカバー(その3)の全体斜視図である。
【
図6】
図5のフットカバーを裏返した斜視図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係るフットカバーの踵部内面の部分拡大図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係るフットカバーの足底部の裏面図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係るフットカバーの着用時における側方視の断面図である。
【
図10】ヒール高さが異なるパンプスを履いたときの側方視の断面図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態に係るフットカバーの全体斜視図である。
【
図13】本発明の第2の実施の形態に係るフットカバーの着用時における側方視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るフットカバーを、図面に基づき詳しく説明する。なお、フットカバーの構造には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する特徴を備えたものであれば、どのようなフットカバーの構造であっても、フットカバーを構成する生地の種類、生地の型紙およびその縫製がどのようなものであっても構わない。そのため、以下に示すフットカバーの構造自体は単なる例示でしかない。なお、いずれのフットカバーを形成する生地も伸縮性生地である。
【0015】
<第1の実施の形態>
図1および
図2に本発明の第1の実施の形態に係るフットカバー100を、
図3および
図4に本発明の第1の実施の形態に係る別のフットカバー200を、
図5および
図6に本発明の第1の実施の形態に係るさらに別のフットカバー300を、それぞれ示す。
図1、
図3および
図5は、フットカバーの全体斜視図であって、
図2、
図4および
図6はフットカバーを裏返した斜視図であって、
図1-
図6のいずれの図も着用者の足Fにフットカバーを着用している状態を想定している。すなわち、本発明の実施の形態に係るフットカバーは、パンティストッキング等の伸縮性生地で形成されているために、このように想定して図示しない場合には縮んだ状態となり、形状を理解することが困難なため、上述のように想定している。
【0016】
いずれのフットカバー100、200、300も、着用者の足Fの爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーである。いずれのフットカバー100、200、300も、着用時にパンプスから露出することのないよう履き口である開口部が大きくカットされた薄手の伸縮性生地(パンティストッキング等の生地)で形成されている。
【0017】
フットカバー100、200、300は、それぞれ、爪先部102、202、302、足底部104、204、304、側辺部106、206、306および踵部108、208、308で形成されている。そして、足底部104、204、304に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部が設けられている。この開口部を形成する側辺部106、206、306の上縁に、それぞれ伸縮性細幅生地116、216、316が設けられている。
【0018】
さらに、
図7に示すように、踵部108、208、308において伸縮性細幅生地116、216、316の足F側(内側)には、シリコン樹脂等の薄いシートで形成された踵部滑り止め118、218、318が設けられている。これにより、足Fの踵との密着性を高めてフットカバー100、200、300が足Fからずれることを防止できる。
さらに、
図8に示すように、足底部104、204、304において、足Fが接する側と反対側(パンプスを履いたときにパンプスの内底に接する側)には、シリコン樹脂等の薄いシートで形成され、足底部滑り止め114、214、314が設けられている。これにより、パンプスの内底との密着性を高めてパンプス内におけるフットカバー100、200、300の位置がずれることを防止できる。なお、この足底部滑り止め114、214、314は、花柄模様を形成している。
【0019】
さらに、フットカバー100とフットカバー200との相違点は、以下の通りである。
フットカバー100においては、このフットカバー100を形成する、爪先部102、足底部104、側辺部106および踵部108が同じ生地で形成されており、伸縮性細幅生地116がこの生地と同じ共生地である。すなわち、このフットカバー100は、全て同じ伸縮性生地で形成されている。
【0020】
これに対して、フットカバー200においては、爪先部202、足底部204、側辺部206および踵部208が全て同じ生地とは限らず、伸縮性細幅生地216がこれらのいずれの生地とも異なるか、または、これらのいずれかの生地と同じである。なお、このフットカバー200は、フットカバー200の爪先部202、側辺部206および踵部208は同じレース状またはメッシュ状の伸縮性生地であって、足底部204および伸縮性細幅生地216は伸縮性生地であるがレース状でもなくメッシュ状でもなく、足底部204と伸縮性細幅生地216とは同じ生地ではない(同じ生地であってもよい)。すなわち、このフットカバー200は、異なる2種類以上の伸縮性生地で形成されており、伸縮性細幅生地216は、爪先部202、足底部204、側辺部206および踵部208の生地と同じ生地であっても異なる生地であっても構わない。
【0021】
なお、フットカバー300は、他のフットカバー100、200と異なり、
図5および
図6に示すように、開口部を形成する爪先部302の上側の後縁に伸縮性細幅生地312が設けられている。
図5および
図6に示すフットカバー300は、フットカバー100と同じく全て同じ伸縮性生地で形成されているとしたが、図示しないが、開口部を形成する爪先部の上側の後縁に伸縮性細幅生地312を設け、かつ、フットカバー200と同じく、異なる2種類以上の伸縮性生地で形成されていても構わない。さらに、伸縮性細幅生地312および伸縮性細幅生地316は、爪先部302、足底部304、側辺部306および踵部308の生地と同じ生地であっても異なる生地であっても構わない。
【0022】
以上をまとめると、本実施の形態に係るフットカバーは、
(1)開口部を形成する側辺部の上縁に設けられる伸縮性細幅生地116が共生地で、かつ、爪先部102の上側の後縁に伸縮性細幅生地が設けられていないフットカバー100(
図1、
図2)、
(2)開口部を形成する側辺部206の上縁に設けられる伸縮性細幅生地216が共生地でなく、かつ、爪先部202の上側の後縁に伸縮性細幅生地が設けられていないフットカバー200(
図3、
図4)、
(3)開口部を形成する側辺部306の上縁に設けられる伸縮性細幅生地316が共生地で、かつ、爪先部302の上側の後縁に伸縮性細幅生地312が設けられているフットカバー300(
図5、
図6)、
(4)開口部を形成する側辺部の上縁に設けられる伸縮性細幅生地が共生地でなく、かつ、爪先部の上側の後縁に伸縮性細幅生地が設けられているフットカバー(図示しない)である。
【0023】
これらのフットカバー100、200、300に共通する特徴について、
図9(この
図9では伸縮性細幅生地312を記載していない)を参照して、以下に詳しく説明する。
図9に示すように、フットカバー100、200、300については、フットカバー100、200、300の着用時の側方視で、側辺部106、206、306の上縁に設けられた伸縮性細幅生地116、216、316の長手方向と爪先が挿入される開口断面(L-Lでその断面を記載)とで形成される角度αが略直角であることを特徴とする。また、このことは、伸縮性細幅生地116、216、316の長手方向と爪先部102、202、302の上側の後縁(L-Lで記載された断面と同じ)とで形成される角度αが略直角であるともいえる。また、特に、フットカバー300については、フットカバー300
の着用時の側方視で、側辺部306の上縁に設けられた伸縮性細幅生地316の長手方向と爪先部302の後縁に設けられた伸縮性細幅生地312とで形成される角度αが略直角である。
【0024】
このように、フットカバー100、200、300においては、上述した角度αが略直角であることにより、
図9に矢示するように、L-Lで示される面に対して垂直方向に、爪先部を後方へ引っ張る力が大きく作用する。
一方、特許文献2のように開口部の周縁の全周に沿って平ゴムを設けた場合には、平ゴムが足の甲から足首にかけて回り込んでフットカバーがずれることを防止する。しかしながら、この場合には、平ゴムが足首を絞り込むように作用するために、平ゴムにより作用する力は、爪先部を後方へ引っ張る力と、上方へ引き上げる力とに分けられて作用する。このため、平ゴムと伸縮性細幅生地316とが同じ程度の伸縮性を備える場合、爪先部を後方へ引っ張る力は平ゴムの方が小さくなり、爪先部を後方へ引っ張る力が小さくなる。
【0025】
これに対して本実施の形態に係るフットカバーにおいては、角度αが略直角であるために、伸縮性細幅生地116、216、316により作用する力は、(分力により爪先部を後方へ引っ張る力として作用するのではなく)全てが爪先部を後方へ引っ張る力として作用する。このため、爪先部102、202、302が強力に後方へ引っ張られる。このため、歩行時およびパンプスPの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがない。
【0026】
また、フットカバー100、200については、爪先部102、202の上側の後縁に伸縮性細幅生地が設けられていない。このため、開口部の全周に沿って1つの平ゴムを設けたフットカバー(特許文献2に開示されたフットカバー)に比較して、フットカバー100、200を履くときに開口部が十分に開いて履きやすい。
また、フットカバー300については、爪先部302の上側の後縁に伸縮性細幅生地312が設けられているものの、開口部の全周に沿って1つの平ゴムを設けたフットカバー(特許文献2に開示されたフットカバー)に比較して、フットカバー300を履くときに開口部が十分に開いて履きやすい。
【0027】
このような特徴を備えた本実施の形態に係るフットカバーは、さらに以下のような作用効果を発現する。
図10(A)、
図10(B)に、ヒール高さが異なる靴(パンプスP(1)、P(2))を履いたときの側方視の断面図をそれぞれ示す。
図10(B)のパンプスP(2)の方が、
図10(A)のパンプスP(1)のよりも、ヒール高さが高い。
【0028】
どのような靴(パンプス)であっても、先端(少なくとも足指の付け根付近)から土踏まず手前付近までは平坦(パンプスの平坦部として図示)である。このようなパンプスの平坦部が形成されていないと、パンプスの内面全体が斜め形状となり安定性を欠くことになり、安定して歩行することができない。このため、どのような靴(ヒールの有無にかかわらず)であっても、この平坦部を備える。
【0029】
一方、本実施の形態に係るフットカバー100、200、300の爪先部102、202、302の開口断面(爪先部の上側の後縁)は、パンプスの履き口が大きく開いているので、パンプスを履いたときにフットカバーが見えないように、パンプスの平坦部の前半分程度までの長さ(足指の根元程度までの長さ)しかない。このため、水平面に対するL-Lで示される開口断面(爪先部の上側の後縁)の角度は、どのようなパンプスであっても同じ角度となり、さらに、このL-Lで示される開口断面(爪先部の上側の後縁)と伸縮性細幅生地116、216、316とで形成される角度αは、どのようなパンプスPであっても略直角を実現することになる。
【0030】
このように、
図10(A)に示すようにパンプスP(1)を履いた場合であっても
図10(B)に示すようにパンプスP(2)を履いた場合であっても、角度αが略直角であることにより、L-Lで示される開口断面(爪先部の上側の後縁)に対して垂直方向に、爪先部102、202、302を後方へ引っ張る力が大きく作用することになる。
このため、本実施の形態に係るフットカバー100、200、300においては、異なるヒール高さの靴であっても、爪先部102、202、302が強力に後方へ引っ張られる。このため、どのようなパンプスを履いても、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがない。
【0031】
なお、特許文献2のように開口部の周縁の全周に沿って平ゴムを設けた場合には、パンプスのヒール高さにより、平ゴムが足の甲から足首にかけて回り込む形態が変化する。このため、いろいろなヒール高さのパンプスに対応して、フットカバーがずれることを防止することができない。すなわち、この平ゴムは一本物であるために(開口部の周縁の全体に亘って1本物の平ゴムを設けているために)、側辺部から爪先部への至る部分のRが大きくなっており、パンプスのヒール高さによってはこの部分にしわが発生して、十分な引っ張り力を発現させることができない。
【0032】
このように、特許文献2に開示されたフットカバーでは、いろいろなヒール高さのパンプスに対応できなかったり、爪先部を後方へ引っ張る力が小さくなったりして、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止することができない。
なお、いずれのフットカバーにおいても、伸縮性細幅生地は、フットカバー生地に、熱プレス装置により接合されている。
【0033】
以上のようにして、本実施の形態に係るフットカバーによると、フットカバーの着用時の側方視で、側辺部の上縁に設けられた伸縮性細幅生地の長手方向と爪先部の上側の後縁(爪先が挿入される開口断面)とで形成される角度αが略直角になるように形成した。このため、爪先部を後方へ引っ張る力が大きく、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止することができる。また、開口部の全周に沿って1つの伸縮性細幅生地を設けていないので、フットカバーを履くときに、開口部が十分に開いて履きやすい。さらに、ヒール高さが異なるパンプスであっても、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止することができる。
【0034】
<第2の実施の形態>
以下に、本発明の第2の実施の形態に係るフットカバー400について説明する。なお、本実施の形態に係るフットカバー400は、上述した第1の実施の形態に係るフットカバー100、200、300の足底部104、204、304、側辺部106、206、306および踵部108、208、308を備えない点が異なる。それ以外は、第1の実施の形態と同じであるので、上述した説明と重複する部分についてはここでは繰り返さない。
【0035】
図11および
図12に本発明の第2の実施の形態に係るフットカバー400を示す。
図11は、フットカバー400の全体斜視図であって、
図12はフットカバー400を裏返した斜視図であって、
図11および
図12のいずれの図も着用者の足Fにフットカバー400を着用している状態を想定している。
これらの図に示すように、このフットカバー400は、爪先を被覆するフットカバーであって、爪先を覆う筒状の爪先部402と、爪先部402の左右側にそれぞれ接合されて着用時に踵に係止されるループ状の伸縮性部材416とで形成される。伸縮性部材416
の踵に当接する部分には、シリコン樹脂等の薄いシートで形成された踵部滑り止め418が設けられている。これにより、足Fの踵との密着性を高めてフットカバー400が足Fからずれることを防止できる。また、爪先部402には、足Fが接する側と反対側(パンプスを履いたときにパンプスの内底に接する側)には、シリコン樹脂等の薄いシートで形成され、足底部滑り止めを設けることも好ましい。これにより、パンプスの内底との密着性を高めてパンプス内におけるフットカバー400の位置がずれることを防止できる。
【0036】
なお、伸縮性部材416の生地は、爪先部402と同じパンティストッキング等の伸縮性生地であっても、異なる生地であっても構わない。さらに、伸縮性部材416は、細帯状としているが、紐状であっても構わない。この場合において、踵部滑り止め418を設けることが困難であると、紐状の伸縮性部材416をシリコン樹脂コーティングしたゴム部材(ゴム紐)等で形成することが好ましい。
【0037】
このようなフットカバー400において、
図13に示すように、フットカバー100、200、300の着用時の側方視で、伸縮性部材416の長手方向と爪先部402の上側の後縁とで形成される角度αが略直角である。これは、足底部、側辺部および踵部を備えない点を除けば、上述した
図9と同じである。そして、
図10を用いて説明したように、このフットカバー400も、ヒール高さが異なるパンプスであっても、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止することができる。
【0038】
以上のようにして、本実施の形態に係るフットカバー400も、上述した第1の実施の形態に係るフットカバー100、200、300と同様の作用効果を発現することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、素足で履くフットカバーに好適であり、フットカバーを履くときに開口部が十分に開いて履きやすく、かつ、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがない点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0040】
100、200、300 第1の実施の形態に係るフットカバー
102、202、302 爪先部
312 (爪先部の後縁に設けられた)伸縮性細幅生地
104、204、304 足底部
114、214、314 足底部滑り止め
106、206、306 側辺部
116、216、316 (側辺部の上縁に設けられた)伸縮性細幅生地
108、208、308 踵部
118、218、318 踵部滑り止め
400 第2の実施の形態に係るフットカバー
402 爪先部
416 伸縮性部材
F 足
P(1)、P(2) パンプス