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特許7371883粉粒体移送装置、粉粒体移送方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】粉粒体移送装置、粉粒体移送方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65G 53/16 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
B65G53/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019082244
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020179950
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(72)【発明者】
【氏名】福原 稔
(72)【発明者】
【氏名】高松 皆光
(72)【発明者】
【氏名】石原田 秀一
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-206723(JP,A)
【文献】特開平11-303585(JP,A)
【文献】特開2016-023002(JP,A)
【文献】実開平04-056130(JP,U)
【文献】実開昭59-140226(JP,U)
【文献】実開昭54-005656(JP,U)
【文献】特開平05-160466(JP,A)
【文献】特開平07-109018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 53/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の外管と、前記外管の内面との間に隙間を確保した状態で前記外管の内部に挿通されている中空の内管とによって構成された2重管を有し、前記2重管の先端部が、移送の対象である粉粒体と対向する位置に配置されるノズル部材と、
前記内管によって構成される内部流路と、前記外管と前記内管との間の前記隙間によって構成される外部流路との一方の流路への移送ガス吹込みと、他方の流路から前記移送ガス吸込みとを行うガス流形成装置であって、前記移送ガスの吹込みを吹出し用送風機によって行うガス流形成装置と、
前記他方の流路又は前記他方の流路と連通した箇所において、前記移送ガスと共に流れている前記粉粒体の密度を計測する密度計測装置と、
前記密度計測装置によって計測された前記密度が予め定められた下限値よりも小さい場合に、前記吹出し用送風機によって前記一方の流路に吹込まれる前記移送ガスの流量が減少し、前記密度計測装置によって計測された前記密度が予め定められた上限値よりも大きい場合には、前記吹出し用送風機によって前記一方の流路に吹込まれる前記移送ガスの流量が増大するように、前記吹出し用送風機を制御する制御装置と、
を備える、粉粒体移送装置。
【請求項2】
前記密度計測装置が、
前記他方の流路又は前記他方の流路と連通した箇所において、前記移送ガスと共に流れている前記粉粒体を撮影するカメラと、
前記カメラによって撮影されて得られた画像を解析することにより、前記粉粒体の前記密度を求める画像解析部と、
を有する、請求項1に記載の粉粒体移送装置。
【請求項3】
前記ガス流形成装置が、前記外部流路への前記移送ガス吹込みと、前記内部流路から前記移送ガス吸込みとを行い
前記内部流路の、前記移送ガスの流れに垂直な断面積をA、前記外部流路の、前記移送ガスの流れに垂直な断面積をBとしたとき、B/Aで定義される断面積比が0.6を超える、
請求項1又は2に記載の粉粒体移送装置。
【請求項4】
前記ノズル部材が、
前記2重管の前記外管の外面を取り囲む筒状に形成され、前記粉粒体に対向する先端部と、前記先端部と反対の後端部とが開口している粉粒体供給調整器、
を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の粉粒体移送装置。
【請求項5】
中空の外管と、前記外管の内面との間に隙間を確保した状態で前記外管の内部に挿通されている中空の内管とによって構成された2重管を有し、前記2重管の先端部が、移送の対象である粉粒体と対向する位置に配置されるノズル部材、
を用いる粉粒体移送方法であって、
前記内管によって構成される内部流路と、前記外管と前記内管との間の前記隙間によって構成される外部流路との一方の流路への移送ガスの吹込みと、他方の流路からの前記移送ガスの吸込みとを開始する開始ステップであって、前記移送ガスの吹込みを吹出し用送風機によって行う開始ステップと、
前記他方の流路又は前記他方の流路と連通した箇所において、前記移送ガスと共に流れている前記粉粒体の密度を計測し、計測した前記密度が予め定められた下限値よりも小さい場合に、前記一方の流路に吹込む前記移送ガスの流量を前記吹出し用送風機に減少させ、計測した前記密度が予め定められた上限値よりも大きい場合には、前記一方の流路に吹込む前記移送ガスの流量を前記吹出し用送風機に増大させる吹込みガス流量制御ステップと、
を含む、粉粒体移送方法。
【請求項6】
中空の外管と、前記外管の内面との間に隙間を確保した状態で前記外管の内部に挿通されている中空の内管とによって構成された2重管を有し、前記2重管の先端部が、移送の対象である粉粒体と対向する位置に配置されるノズル部材と、
前記内管によって構成される内部流路と、前記外管と前記内管との間の前記隙間によって構成される外部流路との一方の流路への移送ガス吹込みと、他方の流路から前記移送ガス吸込みとを行うガス流形成装置であって、前記移送ガスの吹込みを吹出し用送風機によって行うガス流形成装置と、
前記他方の流路又は前記他方の流路と連通した箇所において、前記移送ガスと共に流れている前記粉粒体の密度を計測する密度計測装置と、
を備える粉粒体移送装置における、前記ガス流形成装置を制御するコンピュータに、
前記密度計測装置によって計測された前記密度が予め定められた下限値よりも小さい場合に、前記吹出し用送風機によって前記一方の流路に吹込まれる前記移送ガスの流量が減少し、前記密度計測装置によって計測された前記密度が予め定められた上限値よりも大きい場合には、前記吹出し用送風機によって前記一方の流路に吹込まれる前記移送ガスの流量が増大するように、前記吹出し用送風機を制御する制御機能、
を実現させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体移送装置、粉粒体移送方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、空気の流れを利用して粉粒体を移送する粉粒体移送装置が知られている。この粉粒体移送装置は、中空の外管と、外管の内面との間に隙間を確保した状態で外管の内部に挿通されている中空の内管とで構成された2重管を備える。2重管の先端部は、粉粒体と対向する位置に配置される。
【0003】
外管と内管との間の隙間によって構成される外部流路に空気が吹込まれ、内管によって構成される内部流路から、空気が吸込まれる。これにより、外部流路に吹込まれた空気が2重管の先端部から粉粒体に当てられ、空気が当てられた粉粒体及びその空気が、2重管の先端部から内部流路に吸込まれる。内部流路に吸込まれた粉粒体は、空気によって移送先まで移送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平04-56130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記粉粒体移送装置においては、内部流路を流れる粉粒体の密度が大きすぎると、内部流路に閉塞又は脈流が生じることがある。一方、内部流路を流れる粉粒体の密度が小さすぎると、閉塞及び脈流は生じにくいが、粉粒体を効率的に移送することができない。
【0006】
本発明の目的は、粉粒体を効率的に移送することができ、かつ粉粒体を移送する流路に閉塞又は脈流が生じにくい粉粒体移送装置、粉粒体移送方法、及び制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る粉粒体移送装置は、
中空の外管と、前記外管の内面との間に隙間を確保した状態で前記外管の内部に挿通されている中空の内管とによって構成された2重管を有し、前記2重管の先端部が、移送の対象である粉粒体と対向する位置に配置されるノズル部材と、
前記内管によって構成される内部流路と、前記外管と前記内管との間の前記隙間によって構成される外部流路との一方の流路への移送ガス吹込みと、他方の流路から前記移送ガス吸込みとを行うガス流形成装置であって、前記移送ガスの吹込みを吹出し用送風機によって行うガス流形成装置と、
前記他方の流路又は前記他方の流路と連通した箇所において、前記移送ガスと共に流れている前記粉粒体の密度を計測する密度計測装置と、
前記密度計測装置によって計測された前記密度が予め定められた下限値よりも小さい場合に、前記吹出し用送風機によって前記一方の流路に吹込まれる前記移送ガスの流量が減少し、前記密度計測装置によって計測された前記密度が予め定められた上限値よりも大きい場合には、前記吹出し用送風機によって前記一方の流路に吹込まれる前記移送ガスの流量が増大するように、前記吹出し用送風機を制御する制御装置と、
を備える。
【0008】
前記密度計測装置が、
前記他方の流路又は前記他方の流路と連通した箇所において、前記移送ガスと共に流れている前記粉粒体を撮影するカメラと、
前記カメラによって撮影されて得られた画像を解析することにより、前記粉粒体の前記密度を求める画像解析部と、
を有していてもよい。
【0009】
前記ガス流形成装置が、前記外部流路への前記移送ガス吹込みと、前記内部流路から前記移送ガス吸込みとを行い
前記内部流路の、前記移送ガスの流れに垂直な断面積をA、前記外部流路の、前記移送ガスの流れに垂直な断面積をBとしたとき、B/Aで定義される断面積比が0.6を超えていてもよい。
前記ノズル部材が、
前記2重管の前記外管の外面を取り囲む筒状に形成され、前記粉粒体に対向する先端部と、前記先端部と反対の後端部とが開口している粉粒体供給調整器、
を有していてもよい。
【0010】
本発明に係る粉粒体移送方法は、
中空の外管と、前記外管の内面との間に隙間を確保した状態で前記外管の内部に挿通されている中空の内管とによって構成された2重管を有し、前記2重管の先端部が、移送の対象である粉粒体と対向する位置に配置されるノズル部材、
を用いる粉粒体移送方法であって、
前記内管によって構成される内部流路と、前記外管と前記内管との間の前記隙間によって構成される外部流路との一方の流路への移送ガスの吹込みと、他方の流路からの前記移送ガスの吸込みとを開始する開始ステップであって、前記移送ガスの吹込みを吹出し用送風機によって行う開始ステップと、
前記他方の流路又は前記他方の流路と連通した箇所において、前記移送ガスと共に流れている前記粉粒体の密度を計測し、計測した前記密度が予め定められた下限値よりも小さい場合に、前記一方の流路に吹込む前記移送ガスの流量を前記吹出し用送風機に減少させ、計測した前記密度が予め定められた上限値よりも大きい場合には、前記一方の流路に吹込む前記移送ガスの流量を前記吹出し用送風機に増大させる吹込みガス流量制御ステップと、
を含む。
【0011】
本発明に係る制御プログラムは、
中空の外管と、前記外管の内面との間に隙間を確保した状態で前記外管の内部に挿通されている中空の内管とによって構成された2重管を有し、前記2重管の先端部が、移送の対象である粉粒体と対向する位置に配置されるノズル部材と、
前記内管によって構成される内部流路と、前記外管と前記内管との間の前記隙間によって構成される外部流路との一方の流路への移送ガス吹込みと、他方の流路から前記移送ガス吸込みとを行うガス流形成装置であって、前記移送ガスの吹込みを吹出し用送風機によって行うガス流形成装置と、
前記他方の流路又は前記他方の流路と連通した箇所において、前記移送ガスと共に流れている前記粉粒体の密度を計測する密度計測装置と、
を備える粉粒体移送装置における、前記ガス流形成装置を制御するコンピュータに、
前記密度計測装置によって計測された前記密度が予め定められた下限値よりも小さい場合に、前記吹出し用送風機によって前記一方の流路に吹込まれる前記移送ガスの流量が減少し、前記密度計測装置によって計測された前記密度が予め定められた上限値よりも大きい場合には、前記吹出し用送風機によって前記一方の流路に吹込まれる前記移送ガスの流量が増大するように、前記吹出し用送風機を制御する制御機能、
を実現させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、他方の流路又は他方の流路と連通した箇所における粉粒体の密度が、予め定められた下限値よりも小さい場合に、一方の流路に吹込まれる移送ガスの流量が減少する。これに伴い、一方の流路から吹出されて他方の流路に吸込まれる移送ガスの量も減少するので、他方の流路を流れる粉粒体の密度が高められる。この結果、粉粒体を効率的に移送することができる。
【0013】
一方、他方の流路又は他方の流路と連通した箇所における粉粒体の密度が、予め定められた上限値よりも大きい場合には、一方の流路に吹込まれる移送ガスの流量が増大する。これに伴い、一方の流路から吹出されて他方の流路に吸込まれる移送ガスの量も増大するので、他方の流路を流れる粉粒体の密度が低減される。このため、粉粒体を移送する流路である他方の流路に、閉塞又は脈流が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る粉粒体移送装置の構成を示す概念図。
図2】実施形態に係るノズル部材の構成を示す断面図。
図3】実施形態に係る密度計測装置の構成を示す概念図。
図4】実施形態に係る移送制御のフローチャート。
図5】ノズル効率と流量比との関係を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、実施形態に係る粉粒体移送装置について説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る粉粒体移送装置700は、容器610に収容されている粉粒体PMを、回収タンク620へと移送するものである。粉粒体PMの移送には、移送ガスとしての空気が用いられる。
【0017】
粉粒体移送装置700は、容器610から粉粒体PMを空気と一緒に吸込むノズル部材100と、ノズル部材100を通して吸込まれた粉粒体PM及び空気から、粉粒体PMを分離させるサイクロンセパレータ630と、サイクロンセパレータ630によって分離された粉粒体PMを回収タンク620に案内するホッパー640とを備える。
【0018】
また、粉粒体移送装置700は、ノズル部材100から粉粒体PM及び空気を吸込むための気流を形成する吸込み用送風機210と、ノズル部材100から空気を噴出させるための気流を形成する吹出し用送風機220とを備える。吸込み用送風機210は、サイクロンセパレータ630に接続されており、吹出し用送風機220は、ノズル部材100に接続されている。
【0019】
また、粉粒体移送装置700は、吸込み用送風機210とサイクロンセパレータ630との間の空気の流路に配置された吸込み用バルブ651と、吹出し用送風機220とノズル部材100との間の空気の流路に配置された吹出し用バルブ652とを備える。吸込み用バルブ651と吹出し用バルブ652の各々は、空気の流れを許容する開状態と、空気の流れを阻止する閉状態とに切り換えが可能である。
【0020】
図2を参照し、ノズル部材100の構成及び作用について説明する。図2に示すように、ノズル部材100は、2重管130を有する。2重管130は、中空の外管110と、外管110の内面との間に隙間GPを確保した状態で外管110の内部に挿通されている中空の内管120とによって構成される。
【0021】
外管110と内管120の各々は、長さ方向に直交する断面が円形に形成されている。2重管130は、上下方向に延在しており、2重管130の先端部、具体的には下端部は、粉粒体PMと対向する位置に配置されている。
【0022】
吹出し用送風機220は、外管110と内管120との間の隙間GPによって構成される外部流路OPに、移送ガスである空気を吹込む。吸込み用送風機210は、内管120によって構成される内部流路IFから、図1に示したサイクロンセパレータ630を介して、移送ガスである空気を吸込む。
【0023】
吸込み用送風機210及び吹出し用送風機220は、内部流路IFと外部流路OFの一方の流路に移送ガスを吹込み、かつ他方の流路から移送ガスを吸込むガス流形成装置の一例である。
【0024】
上記構成によれば、外部流路OFに吹込まれた空気が、2重管130の先端部から粉粒体PMに当てられる。空気が当てられた粉粒体PM及びその空気は、2重管130の先端部から内部流路IFに吸込まれる。外部流路OFから粉粒体PMへの空気の噴出が、内部流路IFへの粉粒体PM及び空気の吸込みを促進する。このため、粉粒体PMの移送の能率を高めることができる。
【0025】
なお、内部流路IFに吸込まれた粉粒体PM及び空気は、図1に示したサイクロンセパレータ630に流入し、サイクロンセパレータ630において粉粒体PMと空気とが分離される。そして、粉粒体PMは、図1に示した回収タンク620に流下する一方、空気は、吸込み用送風機210によって外部に排出される。
【0026】
また、ノズル部材100は、2重管130の先端部への粉粒体PMの供給を調整する粉粒体供給調整器140を有する。粉粒体供給調整器140は、2重管130と同心状に外管110の外面を取り囲む筒状に形成されており、2重管130と同様、上下方向に延在している。粉粒体供給調整器140の、粉粒体PMに対面する先端部は開口している。また、粉粒体供給調整器140の先端部とは反対の後端部も、空気の流通が可能なように開口している。
【0027】
粉粒体供給調整器140の先端部は、2重管130の先端部よりも上方に位置する。つまり、2重管130は、粉粒体供給調整器140よりも下方に突出している。粉粒体供給調整器140の先端部の位置は、その粉粒体供給調整器140の先端部と、2重管130の先端部とを結ぶ線分が、水平面に対して粉粒体PMの安息角と等しい角度θだけ傾斜するように、調整されている。
【0028】
なお、2重管130においては、内管120が外管110よりも下方に突出している。そして、外管110の先端部と、内管120の先端部とを結ぶ線分も、水平面に対して角度θだけ傾斜している。
【0029】
以上のように、粉粒体供給調整器140及び外管110によって、安息角と等しい角度θの傾斜が粉粒体PMに形成される。これにより、粉粒体PMが重力によって安息角に沿って内管120に向かって流れ込む。このため、内管120の先端部に向けて粉粒体PMが連続的に供給され、粉粒体PMの移送の能率を高めることができる。
【0030】
図1に戻って、説明を続ける。粉粒体移送装置700は、吸込み用送風機210によって吸込まれる空気の流量(以下、吸込み空気流量という。)を計測する流量計測装置300を備える。流量計測装置300は、サイクロンセパレータ630と吸込み用送風機210との間の、空気の流路に配置されている。
【0031】
ノズル部材100の先端からサイクロンセパレータ630までの流路に粉粒体PMが詰まった場合には、たとえ吸込み用送風機210が作動していても、吸込み用送風機210によって吸込まれる吸込み空気流量が著しく低下する。そこで、流量計測装置300によって計測された吸込み空気流量の値によって、粉粒体PMの詰まりが発生しているか否かを検知することができる。
【0032】
また、粉粒体移送装置700は、図2に示した内部流路IFと連通した箇所において、空気と共に流れている粉粒体PMの密度を計測する密度計測装置400を備える。密度計測装置400は、ノズル部材100からサイクロンセパレータ630に至る流路、具体的には、図2に示した内部流路IFと、サイクロンセパレータ630とを接続する接続管660の脇に配置されている。
【0033】
図3に示すように、密度計測装置400は、撮像素子を有するカメラ410と、カメラ410によって撮影されて得られた画像を解析する画像解析部420とを備える。接続管660の一部は、カメラ410の撮像素子が捉える光、具体的には、可視光に対して透明な透明部材661によって構成されている。
【0034】
カメラ410は、接続管660を空気と共に流れている粉粒体PMを、透明部材661を通して撮影する。カメラ410による撮影は、予め定められたサンプリング周波数で繰り返し行われる。画像解析部420は、カメラによって撮影されて得られた画像を解析することにより、粉粒体PMの密度、具体的には、単位体積あたりの粒子の数を表す物理量を求める。なお、画像解析部420が行う画像の解析には、画像濃度を求める処理、2値化、背景差分といったデジタル画像処理が含まれる。
【0035】
図1に戻って、説明を続ける。粉粒体移送装置700は、容器610から回収タンク620へと粉粒体PMを移送するために、吸込み用送風機210、吸込み用バルブ651、吹出し用送風機220、及び吹出し用バルブ652を制御する移送制御を行う制御装置500を備える。
【0036】
制御装置500は、移送制御において、吸込み用送風機210の回転数を一定に保ったまま、流量計測装置300及び密度計測装置400の計測結果を用いて、吹出し用送風機220の回転数を制御する。
【0037】
制御装置500は、制御プログラム510を記憶している。以下、制御装置500が制御プログラム510を実行することで実現される移送制御について、具体的に説明する。
【0038】
図4に示すように、まず、制御装置500は、粉粒体PMの移送を開始する旨のユーザの指示を受けて、吸込み用バルブ651及び吹出し用バルブ652を開き、かつ吸込み用送風機210及び吹出し用送風機220の作動を開始させる(ステップS11)。
【0039】
これにより、吹出し用送風機220によって外部流路OFに吹込まれた空気が、2重管130の先端部から粉粒体PMに当てられ、空気が当てられた粉粒体PM及びその空気が、2重管130の先端部から内部流路IFに吸込まれる。
【0040】
内部流路IFに吸込まれた粉粒体PM及び空気は、サイクロンセパレータ630に流入し、サイクロンセパレータ630において粉粒体PMと空気とが分離される。そして、粉粒体PMは、回収タンク620に流下する一方、空気は、吸込み用送風機210によって外部に排出される。このようにして、粉粒体PMの移送が開始する。つまり、ステップS11は、粉粒体PMの移送を開始する開始ステップの一例である。
【0041】
次に、制御装置500は、粉粒体PMの流れが定常化するのに要する時間として予め定められた一定時間だけ待機する(ステップS12)。
【0042】
次に、制御装置500は、密度計測装置400によって計測された粉粒体PMの密度が、効率的な移送を保証するために予め定められた下限値以上であり、かつ、閉塞及び脈流を抑制するために予め定められた上限値以下であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0043】
制御装置500は、ステップS13で粉粒体PMの密度が下限値よりも小さい場合は(ステップS13;粉粒体の密度<下限値)、吸込み用送風機210の回転数を一定に保ったまま、吹出し用送風機220の回転数を低下させることにより、吹出し用送風機220によって外部流路OFに吹込まれる空気の量(以下、吹込み空気流量という。)を減少させる(ステップS14)。
【0044】
これにより、外部流路OFから吹出されて内部流路IFに吸込まれる空気の量も減少するので、内部流路IFを流れる粉粒体PMの密度が高められる。この結果、粉粒体PMを効率的に移送することができるようになる。
【0045】
一方、制御装置500は、ステップS13で粉粒体PMの密度が上限値よりも大きい場合は(ステップS13;粉粒体の密度>上限値)、吸込み用送風機210の回転数を一定に保ったまま、吹出し用送風機220の回転数を高めることにより、吹出し用送風機220によって外部流路OFに吹込まれる吹込み空気流量を増大させる(ステップS15)。
【0046】
これにより、外部流路OFから吹出されて内部流路IFに吸込まれる空気の量も増大するので、内部流路IFを流れる粉粒体PMの密度が低減される。このため、内部流路IFを含む、ノズル部材100から回収タンク620までの粉粒体PMの流路に、閉塞又は脈流が生じにくい。
【0047】
なお、上述したステップS14及びステップS15は、外部流路OFに吹込む移送ガスの流量を制御する吹込みガス流量制御ステップの一例である。
【0048】
一方、制御装置500は、ステップS13で粉粒体PMの密度が下限値以上かつ上限値以下である場合(ステップS13;YES)、又はステップS14若しくはステップS15を経た後は、流量計測装置300によって計測された、吸込み用送風機210によって吸込まれる吸込み空気流量が、正常に空気が流れていることを表す閾値以上であるか否かを判定する(ステップS16)。
【0049】
制御装置500は、ステップS16で吸込み空気流量が閾値未満である場合は(ステップS16;NO)、ノズル部材100の先端からサイクロンセパレータ630までの流路に粉粒体PMが詰まっていることを表すので、移送制御を終了する。この場合、ユーザによって粉粒体PMの詰まりが除去された後に、移送制御を再び開始することができる。
【0050】
制御装置500は、ステップS16で吸込み空気流量が閾値以上である場合は(ステップS16;YES)、ノズル部材100の先端からサイクロンセパレータ630までの流路において粉粒体PMが正常に流れていることを表すので、粉粒体PMの移送を終了する旨のユーザの指示の有無を判定する(ステップS17)。
【0051】
そして、制御装置500は、粉粒体PMの移送をまだ終了しない場合は(ステップS17;NO)、ステップS13に戻る。一方、制御装置500は、粉粒体PMの移送を終了する旨のユーザの指示が有った場合は(ステップS17;YES)、移送制御を終了する。
【実施例
【0052】
以下、2重管130の最適な形状を模索するために行った実験結果について述べる。
【0053】
内部流路IFの、空気の流れに垂直な断面積をAとし、外部流路OFの、空気の流れに垂直な断面積をBとしたとき、B/Aで定義される断面積比と、粉粒体PMの移送のエネルギー効率との関係を調べるために、実施例1及び2に係る2種類の2重管130を作成した。
【0054】
実施例1に係る2重管130は、直径が40[mm]の内管120と、直径が50.6[mm]の外管110とによって構成され、断面積比B/A=0.6である。実施例2に係る2重管130は、直径が40[mm]の内管120と、直径が55[mm]の外管110とによって構成され、断面積比B/A=0.9である。
【0055】
粉粒体PMの移送のエネルギー効率を表す評価指標としては、ノズル効率を採用した。ノズル効率は、粉粒体PMが特定の高さ位置まで移送されることで得た位置エネルギーをX、空気が上記特定の高さ位置まで流れる過程で失ったエネルギーをYとしたとき、X/Yで定義される。
【0056】
分母Yは、内部流路IFを流れる吸込み流が、内管120の先端部から上記特定の高さの位置(以下、第1測定点という。)まで流れる間に行った第1仕事W1と、外部流路OFを流れる吹出し流が、上記第1測定点と同じ高さの位置(以下、第2測定点という。)から外管110の先端部まで流れる過程で行った第2仕事W2との和である。
【0057】
第1仕事W1は、上記第1測定点の圧力と大気圧との差に、吸込み流の、ノズル効率を測定する期間(以下、単に測定期間という。)にわたる体積流量Q1をかけ算することで求まる。第2仕事W2は、上記第2測定点の圧力と大気圧との差に、吹出し流の、測定期間にわたる体積流量Q2をかけ算することで求まる。
【0058】
分子Xは、粉粒体PMの測定期間にわたる質量流量に、内管120の先端部から上記第1測定点までの高さをかけ算することで求まる。なお、ノズル効率X/Yは、計測時間にわたる平均値を指す。
【0059】
ノズル効率X/Yは、吸込み用送風機210及び吹出し用送風機220が出力したエネルギーのうちのどの程度が粉粒体PMの移送に利用されたかを表す。ノズル効率X/Yが大きい程、エネルギー効率がよい。換言すると、吸込み用送風機210及び吹出し用送風機220における消費電力が同じ場合、ノズル効率X/Yが大きい程、より多くの粉粒体PMを移送できる。
【0060】
以上説明したノズル効率X/Yは、流量比Q2/Q1を異ならせた複数の条件下の各々において測定した。流量比Q2/Q1とは、上述した吹出し流の測定期間にわたる体積流量Q2を、上述した吸込み流の測定期間にわたる体積流量Q1で割り算した値である。流量比Q2/Q1は、Q1を固定し、Q2を調整することにより、変化させた。
【0061】
図5に、測定結果のグラフを示す。横軸は、流量比Q2/Q1を示し、縦軸は、ノズル効率X/Yを示す。いずれの流量比Q2/Q1においても、四角印でプロットした実施例2の方が、三角印でプロットした実施例1よりも、ノズル効率X/Yが概ね3倍程度大きいことが分かる。
【0062】
つまり、内部流路IFの断面積Aと、外部流路OFの断面積Bとの比である断面積比B/Aが大きい程、エネルギー効率が高い。以上の結果より、2重管130の断面積比B/Aは、0.6を超えることが好ましく、0.9以上であることがより好ましいと言える。
【0063】
また、既述のように、流量比Q2/Q1の調整においては、吸込み流の体積流量Q1を固定したにも関わらず、図5に示すように、ノズル効率X/Yが流量比Q2/Q1に依存する。具体的には、流量比Q2/Q1が大きい程、ノズル効率X/Yが小さい。
【0064】
これは、吹出し流の体積流量Q2が大きい程、その吹出し流によって、多くの粉粒体PMが2重管130の径方向外方に吹き飛ばされるため、内部流路IFに吸込まれる粉粒体PMの密度が減少したことによる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明した。本発明はこれに限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0066】
上記実施形態では、内部流路IFから空気を吸込み、外部流路OFに空気を吹込む構成を例示したが、外部流路OFから空気を吸込み、内部流路IFに空気を吹込んでもよい。また、移送ガスは空気に限られず、アルゴン、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスであってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、2重管130を構成する外管110及び内管120として、それぞれ断面が円形のものを用いたが、外管110及び内管120は、断面が円形のものに限られない。外管110及び内管120の断面は、三角形、四角形等の多角形であってもよい。
【0068】
上記実施形態において、図2には、2重管130の先端部が粉粒体PMから離れている様子を例示したが、2重管130の先端部は、粉粒体PMに挿入されていてもよいし、粉粒体PMに接していてもよい。
【0069】
また、本明細書において、粉粒体PMとは、土、砂、砂利、セメント、小麦粉といった、粒状の物質の集合体のみならず、塵埃、煤塵、火山灰といった、塵状の物質の集合体も含む概念とする。
【0070】
また、図1に示した制御プログラム510をコンピュータにインストールすることで、そのコンピュータを制御装置500として機能させることができる。制御プログラム510は、通信回線を通じて配布することもできるし、光ディスク、磁気ディスク、フラッシュメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布することもできる。
【符号の説明】
【0071】
100…ノズル部材、
110…外管、
120…内管、
130…2重管、
140…粉粒体供給調整器、
210…吸込み用送風機(ガス流形成装置)、
220…吹出し用送風機(ガス流形成装置)、
300…流量計測装置、
400…密度計測装置、
410…カメラ、
420…画像解析部、
500…制御装置、
510…制御プログラム、
610…容器、
620…回収タンク、
630…サイクロンセパレータ、
640…ホッパー、
651…吸込み用バルブ、
652…吹出し用バルブ、
660…接続管、
661…透明部材、
700…粉粒体移送装置、
GP…隙間、
IF…内部流路、
OF…外部流路、
PM…粉粒体。
図1
図2
図3
図4
図5