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特許7371900マルチコアファイバ用一括モニタ及びモニタリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】マルチコアファイバ用一括モニタ及びモニタリング方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20231024BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20231024BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALN20231024BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/02 461
H01L31/02 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019200036
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021071689
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、総務省、新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501392361
【氏名又は名称】株式会社 オプトクエスト
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高畠 武敏
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0323312(US,A1)
【文献】特開2014-222310(JP,A)
【文献】特開2013-065002(JP,A)
【文献】特開2016-057447(JP,A)
【文献】特開2013-020227(JP,A)
【文献】特開2012-058409(JP,A)
【文献】TOTTORI, Y. et al.,Low loss optical connection module for 7-core multi-core fiber and seven single mode fibers,2012 IEEE Photonics Society Summer Topical Meeting Series,2012年07月09日,WC3.4,pp. 232 - 233,DOI: 10.1109/PHOSST.2012.6280812
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
G02B 6/02
G02B 6/12-6/14
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-1/39
H01L 31/02
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチコアファイバの各コアから出射された複数のビームに角度差を与えて各ビーム間の間隔を広げるように一又は複数のレンズが配置されたレンズ系と、
前記レンズ系を通過した各ビームをそれぞれ受光する複数の光検出器を備え、
前記マルチコアファイバの各コアから出射されたビームが前記光検出器の受光面に対して非垂直に入射するように、前記レンズ系に含まれる前記レンズの位置が調整されている
マルチコアファイバ用一括モニタ。
【請求項2】
前記マルチコアファイバの出射面と前記光検出器の受光面は平行である
請求項1に記載のモニタ。
【請求項3】
前記レンズ系は、前記コアから出射されたビームの光軸と前記光検出器に入射する当該ビームの光軸とが非平行となるように構成されている
請求項1又は請求項2に記載のモニタ。
【請求項4】
前記レンズ系は、単一の集光レンズからなる
請求項1から請求項3のいずれかに記載のモニタ。
【請求項5】
前記レンズ系は、前記マルチコアファイバの各コアから出射された複数のビームに角度差を与えて各ビームをコリメートする第1レンズと、前記第1レンズを通過した各ビームを個々の前記光検出器に集光する第2レンズを含む
請求項1から請求項3のいずれかに記載のモニタ。
【請求項6】
前記レンズ系は、前記第2レンズの入力側の焦点位置(P2)が前記第1レンズの出力側の焦点位置(P1)よりも光軸方向の手前側となるように構成されている
請求項5に記載のモニタ。
【請求項7】
レンズ系によりマルチコアファイバの各コアから出射された複数のビームに角度差を与えて各ビーム間の間隔を広げる工程と、
前記レンズ系を通過した各ビームを複数の光検出器によってそれぞれ受光する工程を含み、
前記マルチコアファイバの各コアから出射されたビームが前記光検出器の受光面に対して非垂直に入射するように、前記レンズ系に含まれる前記レンズの位置が調整されている
マルチコアファイバ用一括モニタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバの各コアから出射されたビームの光情報を一括して検出するためのモニタ装置及びモニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のシングルモードファイバ(SMF)伝送系(図3(a))や、SMFを利用したファイバアンプなどの光学機器(図3(b))では、中継地点で光ビームを分岐カプラにより一部の光を分岐させ、光電変換用の光検出器(PD)を用いて光情報のモニタを行っている。これにより、伝送経路中の断線や光強度等の監視を行うとともに、その監視結果に基づいたフィードバックを行うことで伝送経路の品質を確保している。
【0003】
また、従来より、光ファイバネットワークにおけるトラヒック量の増大に対して、その要求に応えるべく空間分割多重伝送(SDM)が提唱されており、その中の1つの方式として、1本のファイバに複数の伝搬コアを有するマルチコアファイバ(MCF)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2014/119270号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、MCFは、結合型4コア、非結合型4コア、非結合型5コア、結合・非結合型7コアなど様々な種類のものが存在するが、いずれの型式のものもコアピッチが15~50μm程度で密接している(図4(a))。このため、MCFは、各コアから空間出射させた際の各ビームの広がりにより個々のビームが重なってしまい、各ビームを分離しにくいという問題がある(図4(b))。
【0006】
また、ビームが重なる前までMCFとPDを近接させて各ビームを分離検出することも考えられ、その場合はMCFのコアピッチ付近までPD素子間隔を狭めなくてはならないが、1つの受光素子サイズ自体が数十μm~数mmであるPDの間隔を狭めることは容易ではない。また、MCFとPDを近接させた場合、受光面で反射した光が再びMCFのコアに戻るという事態が想定される。このような戻り光が伝送経路に発生した場合、雑音の原因となりうるため反射防止のためのデバイス(アイソレータ等)が必要となり、装置構成が複雑になるという問題がある。
【0007】
上記のような事情から、MCFの各コアから出射されたビームを個別にモニタするためには、一度各コアから出射されたビームをファンアウトデバイスで分離してそれぞれSMFに入力し、各SMFを伝送するビームをPDによって検出するという構成をとる必要があった(図5)。特許文献1に記載の光受信装置においても、同様の思想に基づいて、MCFの各コアから出射されたビームを物理的に分離し受光素子へと導入することとしている。
【0008】
しかしながら、MCFの各コアにSMF等を結合して各ビームを物理的に分離する構成を採用する場合、光検出器の他に、コアの数に応じたSMFとカプラを配置する必要がある。このため、モニタ装置の構成が複雑化し、装置全体が比較的大型化するという問題がある。また、MCFの微細なコアにそれぞれSMFを結合する作業が必要になることから、加工コストが高くなるだけでなく、コアとSMFの結合にずれが生じたり、SMF自体に不良が生じるリスクがあり、ビームの伝送や光検出の精度が低下することも懸念される。
【0009】
そこで、本発明は、コンパクトな構成で精度良くMCFの各コアから出射されたビームの光情報を一括してモニタすることのできる装置及び方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは、従来発明の問題を解決する手段について鋭意検討した結果、空間光学系を用いてMCFの密集した各コアからのビームを空間的に分離し、それぞれのビームを光検出器に導入することにより、コンパクトな構成で、精度良く、MCFの各コアから出射されたビームの光情報を一括してモニタすることが可能になるという知見を得た。そして、本発明者らは、上記知見に基づけば従来発明の問題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。具体的に説明すると、本発明は以下の構成又は工程を有する。
【0011】
本発明の第1の側面は、マルチコアファイバ用の一括モニタに関する。本発明に係るモニタは、レンズ系と複数の光検出器を備える。レンズ系は、マルチコアファイバの各コアから出射された複数のビームに角度差を与えて各ビーム間の間隔を広げるように、一又は複数のレンズが配置された構成となっている。光検出器は、レンズ系を通過した各ビームをそれぞれ受光することができるように複数個配置されている。このように、レンズ系を用いてMCFの各コアから出射された複数のビームを空間的に分離することで、MCFの各コアのそれぞれにSMF等を結合して各ビームを物理的に分離する必要がないため、装置全体の構成を簡素化かつ小型化することができる。また、MCFの各コアにSMF等を結合する必要もないため、ビームの伝送や光検出の精度を維持しやすい。このように、本発明によれば、MCFによる伝送をSFMによる伝送に変換することなく、MCFから直接的に各コアのビームの光情報を一括してモニタすることが可能となる。
【0012】
本発明に係るモニタは、MCFの各コアから出射されたビームが光検出器の受光面に対して非垂直に入射するように構成されていることが好ましい。例えば、光検出器に入射するビームの光軸が光検出器の受光面に対して非垂直となるように、レンズ系に含まれるレンズの配置を調整すればよい。あるいは、光検出器の受光面をビームの光軸に対して傾斜させて、当該受光面にビームが非垂直に入射するようにしてもよい。光検出器の受光面にビームが垂直に入射すると、その反射光が再びレンズ系を経由してMCFに戻る可能性がある(本願明細書においてこのような現象を「戻り光」という)。戻り光は雑音の原因となりうるため防止しなければならないが、上記構成のようにビームが光検出器に対して非垂直に入射するようにすることで、反射光が装置外部に向かって発散されるようになるため、戻り光を効果的に防止することができる。
【0013】
本発明に係るモニタにおいて、レンズ系は、コアから出射されたビームの光軸と光検出器に入射する当該ビームの光軸とが非平行となるように構成されていることとしてもよい。このように、コアの出射光の光軸と光検出器への入射光の光軸を非平行とすることにより、上記の戻り光を効果的に防止できる。
【0014】
本発明に係るモニタにおいて、レンズ系は、単一の集光レンズからなるものであってもよい。この場合、MFCの各コアから出射された光は、単一の集光レンズの異なる位置を通過することとなる。これにより、各ビームに角度差が生じてビーム間の間隔が広がる。このように、レンズ系を単一の集光レンズによって構成することも可能であるため、装置全体がコンパクトなものとなる。
【0015】
本発明に係るモニタにおいて、レンズ系は、MCFの各コアから出射された複数のビームに角度差を与えて各ビームをコリメートする第1レンズと、この第1レンズを通過した各ビームを個々の光検出器に集光する第2レンズを含むこととしてもよい。このように、2枚のレンズによってレンズ系を構成することで、レンズ間は平行コリメートビームとなり、例えば第1レンズと第2レンズの間にハーフミラーや光フィルタを配置し、あるMCFから出射されたビームを他のMCFに導入することも可能となる。これにより、ビームの光情報のモニタと伝送を同時に実現できる。
【0016】
本発明に係るモニタにおいて、レンズ系は、第2レンズの入力側の焦点位置P2が第1レンズの出力側の焦点位置P1よりも光軸方向の手前側(つまり第1レンズ寄り)となるように構成されてもよい。このように第2レンズを第1レンズに近づけて配置することで、コアから出射されたビームの光軸と光検出器に入射する当該ビームの光軸とを非平行状態とすることができる。これにより、前述したとおり戻り光を効果的に防止できる。また、集光レンズとPD間距離はレンズの焦点距離(f)よりも短くなることで、更なる短尺化も可能となる。
【0017】
本発明の第2の側面は、マルチコアファイバ用の一括モニタリング方法に関する。本発明に係る方法では、まず、第1の工程にて、レンズ系によりマルチコアファイバの各コアから出射された複数のビームに角度差を与えて各ビーム間の間隔を広げる。次に、第2の工程にて、レンズ系を通過した各ビームを複数の光検出器によってそれぞれ受光する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンパクトな構成で、精度良く、MCFの各コアから出射されたビームの光情報を一括してモニタすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係るモニタの第1の実施形態を示している。
図2図2は、本発明に係るモニタの第2の実施形態の基本形(a)と改良例(b)を示している。
図3図3は、既存のSMF伝送系とSMFを利用したファイバアンプを示している。
図4図4は、既存のMCFのコアピッチと出射ビームの発散状態を模式的に示している。
図5図5は、従来のMCFとSMFを結合したモニタ装置を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0021】
図1は、本発明に係るモニタ10の第1の実施形態を示している。モニタ10は、マルチコアファイバ(MCF)20から出射された複数のビームの光情報(光量、波長、位相、周波数など)を一括して検出するための光学装置である。MCFは、石英ガラスやプラスチックなどで形成された繊維状の部材であり、クラッド21の中に複数の光信号伝搬コア22が形成されている。コア22は、クラッド21と比較して屈折率が高く設計されており、コア22に導入された光は、クラッド層との屈折率差により全反射することによってコア22内に閉じ込められた状態で伝搬する。MCFとしては、例えば、図4(a)に示されるような結合型4コア、非結合型4コア、非結合型5コア、あるいは結合・非結合型7コアなどの公知のものを用いることができるが、本発明は、MCFのコア数やコアピッチなどに依存しない。つまり、本発明において使用するレンズは単レンズである為、コアの数、コアの配列、コア間隔などに制限されない構成が可能である。
【0022】
図1に示されるように、第1の実施形態に係るモニタ10は、1枚の集光レンズ11と、複数の光検出器(PD)12を備えている。光検出器12は、少なくとも測定対象となるMCF20のコア数と同数設けられる。なお、図1に示した例では、測定対象となるMCF20が4つのコア22を持つものであるため光検出器12も4つ設けられているが、図1が側面図であることから、図面上では2つに省略されている。
【0023】
レンズ11は、MCF20の出射面の直後であって、各コア22から出射された複数のビームがすべて入射する位置に配置される。例えば、レンズ11の焦点距離をfとした場合に、MCF20の出射面とレンズ11の間の距離をfとすることが好ましい。ただし、MCF20とレンズ11の距離は、PD受光素子サイズ以下のスポット径が得られる距離で良い。また、MCF20の各コア20から出射されたビームが、それぞれレンズ11の異なる位置を通過するように、レンズ11の位置が調整されている。具体的には、MCF20が4コア型である場合、各ビームはレンズ11の主軸外の異なる位置を通過させればよい。あるいは、MCF20が5コア型や7コア型である場合、中央のコアからのビームはレンズ11の主軸を通過させ、その他の4つのコアからのビームはすべてレンズ11の主軸外を通過させればよい。これにより、レンズ11に入射した各ビームは、レンズ11により集光され、その後各ビームの光軸に角度差が生じながら進んでいく。このため、MFC20の出射面がレンズ11に近づくほど、各ビーム間の角度差が拡大していくこととなる。
【0024】
光検出器12は、光電変換用の受光素子である。光検出器12は、レンズ11の後方であって、各ビーム間の間隔が十分に広く取られた位置に配置される。好ましくは、レンズ11を通過した各ビームの集光点に光検出器12の受光面を合わせると良い。これにより、光検出器12において十分な光量で各ビームを受光することができる。ただし、必ずしも光検出器12をビームの集光点に合わせる必要はなく、レンズ11によって集光されたビーム径が光検出器12の受光面内に収まれば問題はない。レンズ11と光検出器12の間の距離は特に限定されないが、少なくともレンズ11の焦点距離f以下、あるいは焦点距離fの1/2倍以上は離れた位置に光検出器12を配置することが好ましい。
【0025】
図1に示した光学系においては、MCF20の各コア22より空間出射されたビームは発散しながら空間を進んでいく。その後、レンズ11を通過することで各ビームは集光され進んでいく。また、各コア22から出射したビームは、レンズ11の主軸外を通過することで、レンズの前側焦点距離とレンズ主軸を交差する点を通過して斜めに進んでいくこととなる。これにより、各ビームの間隔が広がっていく。また、十分にビーム間隔が得られた集光点付近の位置に、光検出器12が配置されている。これにより、MCFでの伝送をSMFに変換することなく、各コアからの出射光を一括してモニタすることができる。
【0026】
上記のようにモニタ10を構成することにより、MCF20の出射端における各コア22間の間隔d1に対して、光検出器12の受光位置(集光点)における各ビーム間の間隔d2を広げることができる。例えば、コア22の間隔d1に対して、ビームの間隔d2は2倍以上であることが好ましく、5倍以上又は8倍以上であることがより好ましく、10倍以上又は12倍以上であることが特に好ましい。このように、単一の集光レンズ11を利用して各ビームの間隔を拡大することで、光検出器12を十分に離間して配置することができる。
【0027】
また、図1では、MCF20から出射されたビーム(射出光)の光軸を符号L1で示し、光検出器12に入射するビーム(入射光)の光軸を符号L2で示している。第1の実施形態では、各ビームの間隔を広げるための空間光学系を単一の集光レンズ11によって形成しているが、この場合、射出光の光軸L1と入射光の光軸L2は非平行となる。具体的には、光軸L1と光軸L2のなす角をθとした場合、θは1~80度であることが好ましく、3~60度又は5~45度であることが好ましく、10~30度であることが特に好ましい。このように、入射光の光軸L2が、射出光の光軸L1に対して傾斜していることで、MCF20の出射面と光検出器12の受光面が平行である場合に、光検出器12の受光面に対してビームが非垂直状態で入射することとなる。これにより、図1に示されるように、光検出器12の受光面で反射したビームが、空間光学系の外に向かって発散される。このため、反射光がレンズ11を通過してMCF20の各コアに再び導入される事態を回避できる。
【0028】
図2は、本発明に係るモニタ10の第2の実施形態を示している。図2(a)は、第2の実施形態の基本構成を示し、図2(b)はその改良例を示している。第2の実施形態は、第1の実施形態における単一の集光レンズ11の代わりに第1レンズ13と第2レンズ14の2枚のレンズを用いた、テレセントリック光学構成である。
【0029】
図2(a)に示されるように、MCF20の各コア22から出射されたビームは、それぞれ第1レンズ13の異なる位置を通過する。第1レンズ13は、入射光を平行光に変換するコリメートレンズである。第1レンズ13は、MCF20の出射面の直後であって、各コア22から出射された複数のビームがすべて入射する位置に配置される。例えば、第1レンズ13の焦点距離をfとした場合に、MCF20の出射面と第1レンズ13の間の距離をfとすることが好ましい。ただし、MCF20と第1レンズ13の距離は、PD受光素子サイズ以下のスポット径が得られる距離で良い。また、MCF20の各コア22から出射されたビームが、それぞれ第1レンズ13の異なる位置を通過するように、第1レンズ13の位置が調整されている。具体的には、MCF20が4コア型である場合、各ビームは第1レンズ13の主軸外の異なる位置を通過させればよい。あるいは、MCF20が5コア型や7コア型である場合、中央のコアからのビームは第1レンズ13の主軸を通過させ、その他の4つのコアからのビームはすべて第1レンズ13の主軸外を通過させればよい。これにより、第1レンズ13に入射した各ビームは、コリメートされた上で、その後各ビームの光軸に角度差が生じながら進んでいく。このため、第1レンズ13から離れるほど、各ビーム間の間隔が拡大していくこととなる。
【0030】
第1レンズ13を通過した各ビームは、それぞれ第2レンズ14を通過する。第2レンズ14は、コリメートされた各ビームを光検出器12に向かって集光する集光レンズである。第2レンズ14は、第1レンズ13を通過した各ビーム間の間隔が十分広くなる位置に配置すればよい。具体的には、第2レンズ14は、少なくとも第1レンズ13の焦点距離f以上は第1レンズ13から離れた位置に配置することが好ましく、焦点距離fの2倍以上離れた位置に配置することが特に好ましい。また、第2レンズ14の後方には、光検出器12が配置される。好ましくは、第2レンズ14を通過した各ビームの集光点に光検出器12の受光面を合わせると良い。これにより、光検出器12において十分な光量で各ビームを受光することができる。ただし、必ずしも光検出器12をビームの集光点に合わせる必要はなく、第2レンズ14によって集光されたビーム径が光検出器12の受光面内に収まれば問題はない。
【0031】
図2に示した光学系においては、まず、MCF20の端面より空間出射して広がるビームが第1レンズ13によって平行光に変換される。各平行光は、第1レンズ13の前側焦点距離とレンズ主軸が交わる点で交差して斜めに進んでいく。また、各コアのビームが十分に離間した位置に第2レンズ14が配置されており、この第2レンズ14によって平行光が集光される。第2レンズ14の集光位置には、個別に光検出器12が配置されているため、各コアからのビームを一括してモニタすることができる。
【0032】
また、図2(a)に示した基本形態では、第1レンズ13の出力側の焦点位置P1と第2レンズ14の入力側の焦点位置P2とが一致するように、各レンズ13,14の配置が調整されている。この場合、MCF20から出射されたビーム(射出光)の光軸L1と、光検出器12に入射するビーム(入射光)の光軸L2とが、ほぼ平行となり、ビームが光検出器12の受光面にほぼ垂直で入射することとなる。このような場合、光検出器12の反射光が各レンズ13,14を通過してMCF20の各コアに再び導入される事態が懸念される。
【0033】
そこで、図2(b)に示した第2の実施形態の改良例では、上記のような戻り光の対策として、第2レンズ14の位置を、第1レンズ13寄りの位置にずらすこととしている。図2では、基本形(図2(a))における第2レンズ14の位置と改良例(図2(b))における第2レンズ14の位置のズレを符号gで示している。具体的には、図2(b)に示す改良例では、第2レンズ14の入力側の焦点位置P2が第1レンズ13の出力側の焦点位置P1よりも光軸方向の手前側となるように、第2レンズ14を第1レンズ13寄りの位置に配置している。これにより、射出光の光軸L1と入射光の光軸L2は非平行となる。具体的には、光軸L1と光軸L2のなす角をθとした場合、θは1~80度であることが好ましく、3~60度又は5~45度であることが好ましく、10~30度であることが特に好ましい。このように、入射光の光軸L2が、射出光の光軸L1に対して傾斜していることで、MCF20の出射面と光検出器12の受光面が平行である場合に、光検出器12の受光面に対してビームが非垂直状態で入射することとなる。これにより、図2(b)に示されるように、光検出器12の受光面で反射したビームが、空間光学系の外に向かって発散される。このため、戻り光が発生することを回避できる。
【0034】
図2(b)の改良例では、第2レンズ14の光軸方向位置が焦点距離f位置より手前に設定されている。このように、第2レンズ14の光軸方向位置を第1レンズ13に近づけることで、焦点距離は変わらずに光軸角度が外向きに振れるように集光される。そのため、光検出器12への入射角度が垂直ではなくなり、光検出器12の受光面からの反射光が元の光路に戻ることが無くなる。また、各コアからの集光光軸が対称に外側に角度が付くため、所望の光検出器12の間距離を得るための光路長が短くなり、デバイスの小型化が可能となる。
【0035】
また、図2(a)と(b)を比べるとわかるように、第2レンズ14の位置を第1レンズ13寄りの位置にずらすことで、結果として、光検出器12の受光位置(集光点)における各ビーム間の間隔d2をさらに広げることができる。また、第2レンズ14をずらした分(距離gの分)、モニタ10の光軸方向のサイズを小さくすることができる。このため、図2(b)の改良例の方がビームの分離性能及び小型化の観点でも有利であるといえる。
【0036】
なお、図示は省略するが、第2の実施形態においては、第1レンズ13と第2レンズ14の間にハーフミラーや光フィルタを配置して、光検出器12へと向かうビームと装置外部へ向かうビームとに分岐することも可能である。この場合、装置外部へと向かうビームを別のMCFに接続することもできる。これにより、MCFによる光伝送と、このMCFにより伝送されている光の情報のモニタとを同時に実現できる。
【0037】
また、上記した実施形態では、戻り光対策として、レンズを調整することによりビームの光軸を傾斜させ、ビームが光検出器の受光面に垂直に入射しないようにしていた。ただし、戻り光対策はこれに限られず、例えば光検出器の受光面をビームの光軸に対して傾けることにより、ビームが受光面に垂直に入射しないようにすることも可能である。この場合、例えば図2(a)に示した実施形態においても、光検出器12の受光面を傾けることで戻り光対策が可能となる。
【0038】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0039】
10…モニタ 11…レンズ
12…光検出器 13…第1レンズ
14…第2レンズ 20…マルチコアファイバ
21…クラッド 22…コア
図1
図2
図3
図4
図5