(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】船舶の航行支援システムにおける管理サーバ、船舶の航行支援方法、及び船舶の航行支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 3/00 20060101AFI20231024BHJP
B63B 43/20 20060101ALI20231024BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20231024BHJP
G01S 13/91 20060101ALI20231024BHJP
G01S 13/87 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
G08G3/00 A
B63B43/20
B63B49/00 Z
G01S13/91 210
G01S13/87
(21)【出願番号】P 2019233798
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】519461174
【氏名又は名称】下川部 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100140899
【氏名又は名称】竹本 如洋
(72)【発明者】
【氏名】下川部 知洋
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-182730(JP,A)
【文献】特開2019-184438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 43/20
49/00
G01S 13/87
13/91
G08G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の航行支援システムにおける管理サーバであって、
前記管理サーバは、
物標の探知装置と接続されたユーザ端末との間で、ネットワーク経由でデータの送受信を行う通信手段と、
前記物標の探知結果情報に基づいて抽出した物標の複数の頂点のうち、一群として移動する頂点を同一の物標に属するものとして識別する頂点情報管理手段と、を備え、
前記同一の物標に属するものとして識別した頂点に基づいて、前記通信手段が、前記物標の輪郭の概要を表示させるように前記ユーザ端末に対して指示を送信する
ことを特徴とする管理サーバ。
【請求項2】
請求項1に記載の管理サーバであって、
前記物標の探知装置はレーダーであり、前記物標の探知結果情報はレーダー画像を含み、
前記ユーザ端末が、前記レーダー画像に対して画像処理を行うことで前記複数の頂点を抽出する、管理サーバ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の管理サーバであって、
前記頂点情報管理手段は、相対的位置を保って移動している頂点の組を、前記同一の物標に属する一群として移動する頂点として識別する、管理サーバ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の管理サーバであって、
前記頂点情報管理手段は、
前記複数の頂点の位置座標の相対関係、
前記複数の頂点の間の距離、
前記複数の頂点のなす角度、
前記複数の頂点のなす領域の面積、及び
前記複数の頂点の移動ベクトル、のうち、少なくとも1つが保たれている頂点の組を、前記同一の物標に属する一群として移動する頂点として識別する、管理サーバ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の管理サーバであって、
前記同一の物標に属するものとして識別した頂点を直線でつなげることで、前記物標の輪郭の概要を表示させるように前記ユーザ端末に対して指示を送信する、管理サーバ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の管理サーバであって、
前記同一の物標に属するものとして識別した頂点に対して、共通の物体識別情報を付与する、管理サーバ。
【請求項7】
請求項6に記載の管理サーバであって、前記物標の探知装置はレーダーであり、前記物標の探知結果情報はレーダー画像を含み、
レーダーの方位分解能、
レーダーの距離分解能、
レーダーの最小探知距離、
レーダーの大型船の影響、及び
レーダーの偽像、のうち、少なくとも1つによる影響下で付与された前記物体識別情報を修正する手段を有する、管理サーバ。
【請求項8】
請求項6または7に記載の管理サーバであって、
前記頂点情報管理手段は、前記同一の物標に属するものとして識別された頂点に対して、前記同一の物標が複数の物標に属するものとして識別した場合には、前記複数の物標ごとに、異なる前記物体識別情報を付与する、管理サーバ。
【請求項9】
請求項6または7に記載の管理サーバであって、
前記頂点情報管理手段は、前記同一の物標に属するものとして識別された頂点と、他の同一の物標に属するものとして識別された頂点とが重複して同じ物標に属するものと判定した場合には、それぞれの前記物体識別情報を一つの物体識別情報に統合する、管理サーバ。
【請求項10】
管理サーバにおける船舶の航行支援方法であって、
管理サーバと、物標の探知装置と接続されたユーザ端末とは、ネットワーク経由でデータの送受信を行えるように接続されており、
前記物標の探知結果情報に基づいて抽出した前記物標の複数の頂点を、前記ユーザ端末から受信し、
前記物標の複数の頂点のうち、一群として移動する頂点を同一の物標に属するものとして識別し、
前記同一の物標に属するものとして識別した頂点に基づいて、前記物標の輪郭の概要を表示させるように前記ユーザ端末に対して指示を送信する
ことを特徴とする航行支援方法。
【請求項11】
請求項10に記載の船舶の航行支援方法であって、
前記物標の探知装置はレーダーであり、前記物標の探知結果情報はレーダー画像を含み、
前記ユーザ端末が、前記レーダー画像に対して画像処理を行うことで前記複数の頂点を選出する、船舶の航行支援方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の船舶の航行支援方法であって、
相対的位置を保って移動している頂点の組を、前記同一の物標に属する一群として移動する頂点として識別する、船舶の航行支援方法。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の船舶の航行支援方法であって、
前記複数の頂点の位置座標の相対関係、
前記複数の頂点の間の距離、
前記複数の頂点のなす角度、
前記複数の頂点のなす領域の面積、及び
前記複数の頂点の移動ベクトル、のうち、少なくとも1つが保たれている頂点の組を、前記同一の物標に属する一群として移動する頂点として識別する、船舶の航行支援方法。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の船舶の航行支援方法であって、
前記同一の物標に属するものとして識別した頂点を直線でつなげることで、前記物標の輪郭の概要を表示させるように前記ユーザ端末に対して指示を送信する、船舶の航行支援方法。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項に記載の船舶の航行支援方法であって、
前記同一の物標に属するものとして識別した頂点に対して、共通の物体識別情報を付与する船舶の航行支援方法。
【請求項16】
請求項15に記載の船舶の航行支援方法であって、前記物標の探知装置はレーダーであり、前記物標の探知結果情報はレーダー画像を含み、
レーダーの方位分解能、
レーダーの距離分解能、
レーダーの最小探知距離、
レーダーの大型船の影響、及び
レーダーの偽像、のうち、少なくとも1つによる影響下で付与された前記物体識別情報を修正する、船舶の航行支援方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の船舶の航行支援方法であって、
前記同一の物標に属するものとして識別された頂点に対して、前記同一の物標が複数の物標に属するものとして識別した場合には、前記複数の物標ごとに、異なる前記物体識別情報を付与する、船舶の航行支援方法。
【請求項18】
請求項15または16に記載の船舶の航行支援方法であって、
前記同一の物標に属するものとして識別された頂点と、他の同一の物標に属するものとして識別された頂点とが重複して同じ物標に属するものと判定した場合には、それぞれの前記物体識別情報を一つの物体識別情報に統合する、船舶の航行支援方法。
【請求項19】
船舶の航行支援プログラムであって、
管理サーバに請求項10~18のいずれか1つの方法に記載の各ステップを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の航行支援システムに関し、特に、船舶の航行支援システムにおける管理サーバ、船舶の航行支援方法、及び船舶の航行支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の航行支援のため、各種船舶にはレーダーなどの物標探知装置が搭載されている。
しかし、レーダーは、その性能や、周囲状況等に応じて、必ずしも物標の外部形状を正確に表示することができない場合がある。特に小型船舶の場合、その船体特徴から海からの環境変化を受けやすく、船体に上下左右方向の揺れが生じている。このため、レーダー画像をそのまま表示する場合、画像が不鮮明になることがある。
【0003】
さらに、レーダーのマグネトロンの発振出力は様々あるが、日本国では、出力が低いもの(例えば、5kW未満)には操作資格が不要となる。このため、多くの小型船舶では出力の低いものが搭載されている。
従って、特に小型船舶の場合、搭載したレーダーだけでは十分な航行支援が得られない虞がある。
【0004】
本技術分野の背景技術として、特開2006-65831号公報(特許文献1)がある。この公報には、「レーダーにより探査可能な複数の管理エリア内の夫々に旋回可能なカメラと、GPSと、通信システムを有する移動式レーダー船を配置し、このレーダー船の位置と、上記レーダー船とこれに対応する上記エリア内に位置する対象船間の距離、方位及びカメラの画像情報を上記レーダー船から陸上の管理事務所に無線伝送し、上記レーダー船と対象船間の位置関係を画像上に合成して表示する」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、小型船舶に搭載されているレーダーの性能には限界があるため、十分な船舶の航行支援が得られるとは限らなかった。例えば、特許文献1には、物標の画像情報を無線伝送し、合成表示を行っているが、レーダーから得られた画像情報が鮮明ではないと、物標の輪郭の概要を鮮明に表示することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、船舶と陸上との間をネットワーク経由でデータの送受信を行えるようにするとともに、1艘または複数の小型船舶の物標探知装置によって得られた物標画像に対して画像処理を行い、それらを統合することによって、物標の輪郭の概要を鮮明に表示できるようにした船舶の航行支援システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、船舶の航行支援システムにおける管理サーバであって、前記管理サーバは、物標の探知装置と接続されたユーザ端末との間で、ネットワーク経由でデータの送受信を行う通信手段と、前記物標の探知結果情報に基づいて抽出した物標の複数の頂点のうち、一群として移動する頂点を同一の物標に属するものとして識別する頂点情報管理手段と、を備え、前記同一の物標に属するものとして識別した頂点に基づいて、前記通信手段が、前記物標の輪郭の概要を表示させるように前記ユーザ端末に対して指示を送信することを特徴とする。
さらに、本発明のさらなる態様によれば、船舶の航行支援方法と、船舶の航行支援プログラムとを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、船舶と陸上との間をネットワーク経由でデータの送受信を行えるようにするとともに、1艘または複数の小型船舶の物標探知装置によって得られた物標画像に対して画像処理を行い、それらを統合することによって、物標の輪郭の概要を鮮明に表示できるようにした船舶の航行支援システムを提供する。
好ましくは、小型船舶上で、スマートフォンやタブレット端末などの安価で簡易な持ち運び可能なユーザ端末を活用した、ネットワークの構築を可能にする。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、船舶の航行支援システムを示した概念図の例である。(実施例1)
【
図2】
図2は、物標探知装置の回路構成の概念図の例である。(実施例1)
【
図3】
図3は、ユーザ端末、管理サーバ及び陸上管理端末間のデータの流れの概念図の例である。(実施例1)
【
図4】
図4は、
図3に示したユーザ端末、管理サーバ及び陸上管理端末間のデータの流れの概念図の変更例である。(実施例1)
【
図5】
図5は、画像処理モジュールで行われる作業を(A)、(B)、(C)で分けて示す概念図の例である。(実施例1)
【
図6】
図6は、頂点情報管理モジュールで行われる作業を(A)、(B)、(C)で分けて示す概念図の例である。(実施例1)
【
図7】
図7は、端末のディスプレイ上に表示されるマップを(A)、(B)で分けて示す概念図の例である。(実施例1)
【
図8】
図8は、2つの小型船から1つの小型船をレーダー探知する場合の概念図の例である。(実施例2)
【
図9】
図9は、
図8に示した2つの小型船からの探知結果の例である。(実施例2)
【
図10】
図10は、
図8に示した時点から所定時間経過後の2つの小型船から1つの小型船をレーダー探知する場合の概念図の例である。(実施例2)
【
図11】
図11は、
図10に示した2つの小型船からの探知結果を(A)と(B)で分けて示す概念図の例である。(実施例2)
【
図12】
図12は、3つの小型船から1つの大型船をレーダー探知する場合の概念図の例である。(実施例3)
【
図13】
図13は、1つの船舶から2つの小型船をレーダー探知する場合、レーダーの距離分解能のため2つの小型船を区別できない場合を(A)、(B)で分けて示す概念図の例である。(実施例4)
【
図14】
図14は、1つの船舶から物体をレーダー探知する際、レーダーの最小探知距離のため物体を区別できない場合(A)と、1つの船舶から物体をレーダー探知する際、大型船の影響のため物体を区別できない場合(B)とを分けて示す概念図の例である。(実施例5)
【
図15】
図15は、橋の付近で船舶から物体をレーダー探知する際、偽像の影響を受ける場合を示す概念図の例である。(実施例6)
【
図16】
図16は、
図15に示した2つの船舶によるレーダー探知結果を(A)、(B)で分けて示す概念図の例である。(実施例6)
【
図17】
図17は、本発明に係る船舶の航行支援方法のうち、ユーザ端末側の処理の流れを示す概念図の例である。
【
図18】
図18は、本発明に係る船舶の航行支援方法のうち、管理サーバ側の処理の流れを示す概念図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明に係る船舶の航行支援システムを示した概念図の例である。
本船舶航行支援システム1は、船舶2、4、6で使用されるユーザ端末30と管理サーバ(プラットフォーム)50とをネットワーク70を介して接続している。また、本船舶航行支援システム1は、陸上管理端末40と管理サーバ50とをネットワーク70を介して接続している。ユーザ端末30同士の通信も可能である。
【0013】
船舶2、4、6は、主にプレジャーボート等と呼ばれる個人がスポーツやレジャーに用いるモーターボート・ヨット・水上オートバイ等の小型船舶のことである。ただし、本船舶航行支援システム1をより大型の船舶に適用することは可能である。各船舶2、4、6では、本船舶航行支援システム1に係るプログラムがインストールされたユーザ端末30が使用可能となっている。
ユーザ端末30は、例えば、ユーザが船舶2、4、6等で使用可能なタブレット、スマートフォン等の、携帯型パソコンの機能を有する任意の装置である。
【0014】
陸上管理端末40は、例えば小型船舶や業務用の船舶を所有する海運会社や、工事会社、レジャー会社等の陸上会社が備えるパソコンなどの機器である。陸上会社は、船舶を使用した業務を提供しており、業務管理と合わせて陸上管理端末40により船舶の運航管理を行う。
陸上管理端末40は、例えば、ユーザが陸上で使用可能な通常のパーソナルコンピュータまたはノート型パーソナルコンピュータ等の設置型または携帯型パソコンの機能を有する任意の装置である。
【0015】
管理サーバ50は、本発明に係る船舶航行支援システム1の全体的なデータ管理を統括する。
管理サーバ50は、例えば、ユーザが陸上で使用可能な通常のパーソナルコンピュータまたはノート型パーソナルコンピュータ等の設置型または携帯型パソコンの機能を有する任意の装置である。また管理サーバ50は、クラウド上のサーバで実装されていてもかまわない。
【0016】
本船舶航行支援システム1では、船舶の航行支援のため、陸上と船舶間で海上通信(符号70参照)が構築されるとともに、船舶相互間でも海上通信が構築可能となっている。
例えば、ユーザ端末30の通信手段は、携帯電話通信(SIM(Subscriber Identity Module)カードによるデータ通信)によるデータ通信(符号72参照)を用いて、管理サーバ50、陸上管理端末40、または他のユーザ端末30との間でデータを送受信することができる。ユーザ端末を船内のWi-Fi(登録商標)に接続し、Wi-Fi経由で管理サーバ50と通信を行う構成としてもよい。船内Wi-Fiは衛星通信等を用いて陸上のネットワークと接続されていてもよい。陸上管理端末40と管理サーバ50の間のデータ通信(符号74参照)は、無線ネットワークでも有線ネットワークでもかまわない。それぞれの端末30、40はネットワーク70(72、74)を介して管理サーバ50との間で情報を送受信することができる。
【0017】
ネットワーク70には、AIS(Automatic Identification System:自動船舶識別装置)システム60をさらに結ぶことも可能である。AISシステム60は、船舶に搭載されたAIS装置から、自船の識別符号、船名、位置、針路、船速、行き先などの個別の情報がVHF電波による無線通信により送信され、付近を航行している他船や、陸地にある海上交通センターで受信される仕組みとなっている。
他、GPS(GLOBAL POSITIONING SYSTEM)システム、風向風速計システム、国際VHF(Very High Frequency:超短波)無線システム等がネットワーク70に接続することができる。
【0018】
本船舶航行支援システム1では、従来の小型船舶の主要な電子設備の機能をIoTやAIを用いてクラウド上で実現するとともに、さらにインターネットを介して全ての船舶の情報や天候、周辺情報等のリアルタイムでの共有も可能にする。これらの情報をタブレットやスマートフォンで表示することにより、電子装備の導入・維持・アップデートの費用や免許取得・申請の時間的コスト、操作を習得するための学習コストや有料トレーニングの費用等、これまで個人での電子装備保有の障壁となっていた問題を解決し、安全・快適なマリンライフを実現できる。
【0019】
本船舶航行支援システム1の端末30、40及び管理サーバ50は、上記の例に限定されず、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)等の携帯端末でもよいし、メガネ型や腕時計型、着衣型などのウェアラブル端末でもよいし、据置型コンピュータまたは携帯型のノート型パーソナルコンピュータや、クラウドやネットワーク上に配置されるサーバでもよいし、さらには、これらの複数の端末の組合せであってもよい。例えば、1台のスマートフォンと1台のウェアラブル端末との組合せが論理的に一つの端末として機能し得る。またこれら以外の情報処理端末であってもよい。
【0020】
本船舶航行支援システム1の各端末30、40及び管理サーバ50は、それぞれオペレーティングシステムやアプリケーション、プログラムなどを実行するプロセッサと、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置と、ICカードやハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、ネットワークカードや無線通信モジュール、モバイル通信モジュール等の通信制御部と、タッチパネルやキーボード、マウス、音声入力、カメラ部の撮像による動き検知による入力などの入力装置と、モニタやディスプレイ等の出力装置とを備え得る。なお、出力装置は、外部のモニタやディスプレイ、プリンタ、機器などに、出力するための情報を送信する装置や端子であってもよい。
【0021】
主記憶装置には、各種プログラムやアプリケーションなど(モジュール)が記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサが実行することで全体システムの各機能要素が実現される。なお、これらの各モジュールは集積化する等によりハードウェアで実装してもよい。また、各モジュールはそれぞれ独立したプログラムやアプリケーションでもよいが、1つの統合プログラムやアプリケーションの中の一部のサブプログラムや関数などの形で実装されていてもよい。
本明細書では、各モジュールが、処理を行う主体(主語)として記載をしているが、実際には各種プログラムやアプリケーションなど(モジュール)を処理するプロセッサが処理を実行する。
【0022】
補助記憶装置には、各種データベース(DB)が記憶されている。「データベース」とは、プロセッサまたは外部のコンピュータからの任意のデータ操作(例えば、抽出、追加、削除、上書きなど)に対応できるようにデータ集合を記憶する機能要素(記憶部)である。データベースの実装方法は限定されず、例えばデータベース管理システムでもよいし、表計算ソフトウェアでもよいし、XML、JSONなどのテキストファイルでもよい。
【0023】
「物標の探知装置」
図2は、本発明に係る物標探知装置10の回路構成の概念図の例である。
図2を参照すると、各船舶2、4、6に搭載される物標探知装置10が例示されている。船舶の航行支援のため、船舶には各種の物標探知装置が搭載され得るが、例えば、物標探知装置10はレーダー10である。ただし、物標探知装置10は、物標(ターゲット)の画像を取得可能なカメラ、ライダー(LIDAR)で代用することが可能である。
【0024】
通常、レーダー10のアンテナ部12は、船舶2のマストの頂上付近に設置される。アンテナ部12は、電波(マイクロ波)を発射する羽根部を有し、その下方のモーター部14によって360度回転される。アンテナ部12には、マイクロ波が発射されるスロット(輻射部)が設けられている。
【0025】
通常のレーダー10の回路構成では、変調部16でパルス電圧がつくられて、このパルス電圧によってマグネトロン18を制御する。マグネトロン18は、マイクロ波のパルス信号を発生させる。送受切替部20が送信に切り替えられると、マイクロ波が導波管を伝わってアンテナ部12まで導かれて、アンテナ部12のスロットからマイクロ波が発射される。アンテナ部から発射されたマイクロ波は、海面上を進み、他の船などの物標とあたると、反射して元のアンテナ部12のところまで返ってくる。物標からの反射信号がアンテナ部12でキャッチされて、送受切替部20が受信に切り替えられると、反射信号が周波数変換部22、検波回路24、映像増幅部26等を通過した後、指示部28に送られる。指示部28は、描画回路などにより画像を記憶して、レーダー映像を画面上に表示する。
【0026】
レーダーから発射される送信信号は、繰り返して発射されるパルス波である。この信号を送信している時間であるパルス幅は、探知する距離によって使い分けられている。近距離探知時は短くて先鋭なパルスを送信し、遠距離探知時は長くてパワーのあるパルスを送信している。一般的に、小型レーダーでは、パルス幅は、3段程度の切替えが行われている。
1秒間に発射される送信パルス信号の数を、パルス繰り返し周波数という。レーダーのパルス繰り返し周波数は、探知する距離、使用するパルス幅により決定される。自船近くの海上を探知する場合、パルス繰り返し周波数は高くなる。一方、遠方を探知するときは、電波の往復に時間がよりかかるため、パルス繰り返し周波数はより低くなる。
【0027】
図2に示された指示部28に表示されるレーダー映像は、PPI(Plan Position Indicator Scope)または平面位置表示方式で表示される。その画面上では、自船位置を中心に360度を見渡すことができる。指示部28は、通常、船舶2のブリッジ内に設定される。指示部28には、映像アンプや画像処理のためのプロセッサ部、液晶表示部、電源部、操作部等が組み込まれている。指示部28は、船内のバッテリと配線されていて、この配線によって指示部28に電源が供給されている。アンテナ部12と指示部28とは、アンテナケーブルで結ばれていて、このアンテナケーブルによってアンテナ部12には電源が供給されている。さらに、指示部28には、方位センサ、ジャイロコンパスなど、真方位信号を得るためのデバイスが接続可能となっている。
【0028】
レーダー10の探知結果情報、即ちレーダー10により探知された自船周辺の物標の情報(信号)は、指示部28の画面上にレーダー画像として表示される。レーダー10には物標追尾機能が内蔵されており、レーダー画像中の孤立物標を自動で追尾し、物標の位置(相対距離、方位)及び速度(針路、速力)等に関する物標情報(TT情報ともいう)を得ることができる。
レーダー10により出力可能な物標情報は、例えば、自船から物標までの相対距離、自船から物標までの方位、物標を探知したとき時刻や物標の速度等が検出可能となっている。レーダー10によって探知された物標に対して物標番号を順次自動的に振り付けることができる。これら物標情報は、モーター部14によるアンテナ部12の回転毎(例えば、約3秒)に更新され得る。
【0029】
「船舶航行支援システム1の流れ」
図3は、ユーザ端末30、管理サーバ50及び陸上管理端末40間のデータの流れの概念図の例である。
ユーザ端末30は、レーダー10の指示部28と接続されており(
図2参照)、レーダー探知結果受信モジュール31にて、物標の探知結果情報(物標情報とレーダー画像情報)を得ることができる。レーダー探知結果受信モジュール31にて受信した情報は、そのときの時刻とともにユーザ端末30内に蓄積することができる。
ユーザ端末30は、方位センサ、ジャイロコンパスなど、真方位信号を得るための外部デバイスまたは内部デバイスまたはプログラム等を有している。ユーザ端末30は、自船位置受信モジュール32と自船方位受信モジュール33にて、自船の位置情報(緯度、経度)及び方位情報を得ることができる。なお、方位には、真北方位を基準にするものと自船の船首方位(航行方位)を基準にするものとがあるが、双方に対応できるものとする。自船位置受信モジュール32と自船方位受信モジュール33にて受信した情報は、そのときの時刻とともにユーザ端末30内に蓄積することができる。
【0030】
ユーザ端末30は、画像処理モジュール34をさらに有することができる。この場合、レーダー探知結果受信モジュール31から得られた物標の探知結果情報(特にレーダー画像)に対して、画像処理モジュール34にて画像処理を行って、物標の複数の頂点を抽出し、その複数の頂点の位置情報を求めることができる。さらに、ユーザ端末30は、各頂点について移動速度や移動方位を計算により求めることができる。
ユーザ端末30は、通信モジュール35を有しており、
図1に例示したネットワーク70を介して管理サーバ50の通信モジュール55と接続されている。このため、ユーザ端末30が取得したレーダー探知結果情報、自船位置情報及び自船方位情報、並びにユーザ端末30が処理した物標の複数の頂点の情報(特に、緯度経度、速度、針路等)を管理サーバ50に順次アップロードすることができる。
【0031】
管理サーバ50は、頂点情報管理モジュール56を有しており、ユーザ端末30から受信した上記情報を蓄積できる。さらに、頂点情報管理モジュール56では、上記蓄積された情報に基づいて、複数の頂点のうち、一群として移動する頂点を同一の物体として識別することができる。その際、頂点情報管理モジュール56では、同じ物標(物体)に含まれる頂点の組に対して同一の物体ID(物体識別情報)を付与して、管理サーバ50上で公開してもよい。
【0032】
管理サーバ50は、予め登録されている各地域の海図の情報を統括管理している。海図には、沿岸、内海、港湾、錨泊地、陸地の各種図形が予め登録されている。管理サーバ50は、マップ作成モジュール58を有することができ、任意のマップを呼び出して利用することができる。例えば、ユーザ端末30から得られた船舶の緯度経度を元に、所定の範囲内で周辺地図を任意選択してもよい。選択されたマップ上に、頂点情報管理モジュール56から得られた物体IDに基づく物標を表示可能にする。
管理サーバ50は、マップ作成モジュール58で作成したマップ情報をユーザ端末30及び陸上管理端末40に送信することができる。マップ情報は、少なくとも、同一の物体に属すものとして識別した頂点の情報を含む。それによって、例えば、同一の物体IDを有する各頂点をマップ上で結ぶことで、物標の輪郭の概要を描くことを可能にする。さらに、マップ情報には、該当する物体IDの周辺の地図情報を含み得る。
【0033】
または、ユーザ端末30は、マップ作成モジュール58を有していてもよく、任意のマップを呼び出して利用してもよい。例えば、ユーザ端末30から得られた船舶の緯度経度を元に、所定の範囲内で周辺地図を任意選択してもよい。例えば、各地域の海図の情報を予め登録する。海図には、沿岸、内海、港湾、錨泊地、陸地の各種図形が含まれる。さらに、選択されたマップ上に、頂点情報管理モジュール56から得られた物体IDに基づく物標の輪郭の概要を描くことを可能にする。
ユーザ端末30は、マップ表示モジュール39を有しており、マップ作成モジュール38、58にて作成されたマップをディスプレイまたはスクリーン上に表示する。このマップは、マップ作成モジュール38、58に基づいて適宜更新されてもよい。
【0034】
同様に、陸上管理端末40は、マップ作成モジュール48を有していてもよく、任意のマップを呼び出して利用してもよい。例えば、ユーザ端末30から得られた船舶の緯度経度を元に、所定の範囲内で周辺地図を任意選択してもよい。例えば、各地域の海図の情報を予め登録する。海図には、沿岸、内海、港湾、錨泊地、陸地の各種図形が含まれる。さらに、選択されたマップ上に、頂点情報管理モジュール56から得られた物体IDに基づく物標の輪郭の概要を描くことを可能にする。
陸上管理端末40は、マップ表示モジュール49を有しており、マップ作成モジュール48、58にて作成されたマップをディスプレイまたはスクリーン上に表示する。このマップは、マップ作成モジュール48、58に基づいて適宜更新されてもよい。
さらに、陸上管理端末40は、船舶情報管理モジュール47を有しており、予め登録されている各船舶の船名、大きさ、形状等の情報を統括管理している。船舶情報管理モジュール47から得られた船舶等の情報は、適宜、マップ作成モジュール48、58に送られて、その情報をマップ上に表示することができる。
【0035】
図4は、
図3に示したユーザ端末30、管理サーバ50及び陸上管理端末40間のデータの流れの概念図の変更例である。
図3に例示した構成では、ユーザ端末30側の画像処理モジュール34にて、物標の探知結果情報(特にレーダー画像)に基づいて、ユーザ端末30が画像処理を行って物標の複数の頂点を抽出している。
図4に例示した構成では、ユーザ端末30は、レーダー探知結果受信モジュール31、自船位置受信モジュール32、自船方位受信モジュール33から得た各種情報を、通信モジュール35を介して管理サーバ50に送信する。
管理サーバ50は、画像処理モジュール54を有することで、ユーザ端末30から送信された物標の探知結果情報(特にレーダー画像)に基づいて、管理サーバ50が画像処理を行って物標の複数の頂点を抽出する。
ユーザ端末30の画像処理モジュール34と管理サーバ50の画像処理モジュール54とは実質的に同一に構成することができ、他の構成は、
図3に例示したものと同様であるので、さらなる説明は割愛する。
【0036】
「画像処理モジュール34、54」
図5は、画像処理モジュール34、54で行われる作業を(A)、(B)、(C)で分けて示す概念図の例である。
図5(A)を参照すると、レーダー10から得られる3つの物標Oa、Ob、Ocを含むレーダー画像の概念図が例示されている。レーダーは、その性能や、周囲状況等に応じて、必ずしも物標Oa、Ob、Ocの外部形状を正確に表示することができない場合がある。
例えば、特に小型船舶の場合、その船体特徴から海からの環境変化を受けやすく、上下左右方向の揺れが生じている。また、例えば、気候条件等により海面の揺れの影響を受けて、船体に上下左右方向の揺れが生じている。このため、レーダー10から得られたレーダー画像をそのまま表示する場合、画像が不鮮明になり得る。
図5(B)を参照すると、
図5(A)に示したレーダー画像上の3つの物標Oa、Ob、Ocに対して、ユーザ端末30の画像処理モジュール34または管理サーバ50の画像処理モジュール54にて画像処理を行った結果、複数の頂点K1-K7が抽出されることを例示している。
【0037】
ここで、「頂点」とは、レーダー画像上に表示された物標(物体)の外縁上等の特徴的な点をいう。例えば、ある方向に延在する外縁の一部が別の方向に向きを変えた場合、その箇所を頂点として抽出することができる。または、直線状に延在する外縁の両端を頂点として抽出することができる。好ましくは、頂点とは、物標の外縁の角または端部である。または、物標がほぼ点状に存在する場合、頂点は、一つの点として抽出することができる。
レーダー画像では、物標の輪郭を細密に表現することができないが、特徴的な頂点を表示することは可能である。
例えば、物標がブイなどの特に小さな物体の場合、レーダー画像で移動しない狭い範囲の物標Oaとして描画されるが、この物標Oaの例えば中心に対して1つの頂点K1を得ることができる。他には、例えばOaの画像のX軸方向の長さ中間とY軸方向の長さの中間の交わる点を頂点K1としたり、Oaの画像の重心を頂点K1としてもよい。
また、物標がプレジャーボートなどの小型船の場合、レーダー画像上に棒状に表示される物標Obの船首位置と船尾位置にて、この物標Obの両端に対して2つの頂点K2、K3を求めることができる。
また、物標がバージ船などの大型船の場合、船幅方向を有する船首位置と船尾位置にて、この物標Ocの4つの角に対して4つの頂点K4、K5、K6、K7を求めることができる。
さらに、物標の外部形状に応じて、3つ、5つ、またはそれ以上の数の物標の頂点が求められることもある(図示略)。
【0038】
図5(C)を参照すると、
図5(B)で例示したレーダー画像に対する画像処理の結果、求められたK1-K7だけが示されている。
画像処理は、例えば、以下の作業を含み得る。
ユーザ端末30または管理サーバ50は、レーダー画像を「ピクセル化された画像」として受信する。「ピクセル化された画像」とは、複数のピクセル(パッチ)または複数のピクセル集合(パッチ集合)を含む画像(イメージ)のことである。
ユーザ端末30の画像処理モジュール34または管理サーバ50の画像処理モジュール54は、この取り込まれた「ピクセル化された画像」に対して、トリガ信号に応答して、画像処理を行う。
【0039】
例えば、
図5(A)に示したレーダー画像に対して、セグメント化(分割化)を行って、ピクセル毎またはピクセル集合毎で、分類化する(例えば、海と物体の分類を行う)。この際、ピクセル毎またはピクセル集合毎で、色(色相、彩度、明度)の解析を行ってもよい。物標ごとに図式的(グラフィカル)に輪郭の識別を行ってもよい。
画像処理モジュール34、54は、予め各種レーダー画像に対して画像処理のトレーニングを行う。トレーニングは、例えば、数百、数千、またはそれ以上の異なる物標の画像に対して行われ、各種結果を蓄積する。その際、例えば、海面だけの画像、海面と一艘の小型船舶だけの画像、海面と二艘の小型船舶の画像等、様々な状況での画像処理を行って、その結果について統計データを計算及び生成してもよい。
トレーニングによって、高い識別率、例えば、99%程度の識別率が得られた後で、実際にレーダー画像処理を行って、ピクセル化された画像から物標の頂点を識別し抽出する。
【0040】
上記のトレーニングは、AIによる機械学習により実施することも可能である。複数のレーダー画像と物標の頂点情報とを教師データとして用い、入力をレーダー画像として出力を物標の頂点情報とする判定モデルを機械学習により生成する。この判定モデルに新たなレーダー画像を入力することで、出力として物標の頂点情報を得ることができる。
なお、物標の頂点情報は少なくともそのレーダー画像を撮影した日時情報(または補完等により数秒前後の頂点情報を算出した場合にはその時刻)とその頂点の座標情報とを有しており、その他、レーダー特定情報、ユーザ端末特定情報、速度、方位、移動ベクトル等を含んでいてもよい。
【0041】
「頂点情報管理モジュール56」
図6は、頂点情報管理モジュール56で行われる作業を(A)、(B)、(C)で分けて示す概念図の例である。
管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56は、画像処理モジュール34、54によって抽出された複数の頂点K1-K7(
図5(C)参照)の情報を蓄積する。好ましくは、物標探知装置(レーダー)10が物標探知結果を更新する度(例えば、3秒毎)に、画像処理が繰り返されて、その都度、頂点情報管理モジュール56は、頂点の情報を蓄積する。従って、抽出された各頂点K1-K7の位置座標の経時的な変化は、サーバ50上の頂点情報管理モジュール56で監視・記録される。頂点情報管理モジュール56は、抽出された各頂点の情報(特に、緯度経度)を追跡することで、複数の頂点K1-K7の分割化を行う。
【0042】
図6(A)は
図5(C)から一定時間経過後の頂点の状況を示す。頂点情報管理モジュール56は、
図6(A)と
図5(C)の頂点座標の情報を比較し、例えば、複数の頂点K1-K7のうち、1つの頂点K1が位置座標を変化させないでいるのに対して、2つの頂点K2及びK3が同一方向、同一速度で、同時に位置座標を変化させたことを識別する。また、4つの頂点K4-K7が、K2及びK3とは別の方向、速度で、同時に位置座標を変化させたことを識別する。この場合、頂点情報管理モジュール56は、複数の頂点K1-K7に対して、K1、K2及びK3、並びにK4-K7の各小集団(サブグループ)に分類することができる。
図6(A)を参照すると、頂点情報管理モジュール56は、分類した各小集団ごとに、それぞれ異なる物体IDを付与している。例えば、頂点K1に対しては物体ID1、頂点K2及びK3に対しては物体ID2、頂点K4-K7に対しては物体ID3が付与されている。
【0043】
このように、頂点情報管理モジュール56は、抽出されたすべての頂点に対して情報を蓄積、追跡し、その結果、1つまたは複数の頂点が一塊(一群)として移動していることを識別する作業を行う。好ましくは、この作業は、物標探知装置(レーダー)10が物標探知結果を更新する度(例えば、3秒毎)に繰り返される。その結果、付与される物体IDに対して重み付けをしてもよい。例えば、1回だけある物体IDが付与される場合と、10回連続して同じ物体IDが付与される場合と、100回連続して同じ物体IDが付与される場合とでは、それぞれ、信頼性が相違するからである。
さらに、一度付与された物体IDに対して、新たに別の物体IDを付与することも可能である(例えば、1物体として識別された集団が2つの小集団に分類したことが識別された場合等)。さらに、一度付与された物体IDに対して、キャンセルを行うことも可能である(例えば、1物体として識別された集団が虚像であると識別された場合等)。
【0044】
ここで、「1つまたは複数の頂点が一塊として移動している」とは、移動している各頂点についての情報を統合し、近距離で相対的な位置を保っている頂点の組をいう。その組ごとに、1つの物体IDが付与される。
例えば、1つの頂点(例えば、K1)だけが、その位置座標、移動方位、移動速度等を、他の周辺の頂点とは相違させることが観察される場合、その1つの頂点に対してだけ、1つの物体ID(例えば、ID1)を付与することができる。例えば、海面または海水中には、ブイ(漂流型または係留型)が存在するが、ブイは、海面上に所定の大きさと形状を表すため、レーダー映像上にブイが含まれ得る。1つの頂点に対してだけ1つの物体IDを付与する場合、例えば、使用されるブイの大きさの範囲以内で行う。
【0045】
また、2つの頂点(例えば、K2及びK3)が、その位置座標、移動方位、移動速度等を、他の周辺の頂点とは相違させることが観察される場合、その2つの頂点に対してだけ、1つの物体ID(例えば、ID2)を付与することができる。この際、2つの頂点の間の距離について着目してもよい。2つの頂点の間の距離が一定で保たれる場合、その2つの頂点は同一物体に属していると仮定できる。2つの頂点に対して1つの物体IDを付与する場合、例えば、小型船舶の大きさ(特に、船首と船尾間の長さ)の範囲以内で行う。
【0046】
しかしながら、本発明は、上記分類の仕方に限定されない。例えば、長さが4m以下の水上オートバイについては1つの頂点だけを付与し、長さが6m以上のヨットについては2つの頂点を付与するように、様々な小型船舶の大きさに考慮して、1つまたは2つの頂点を付与してもよい。前者の場合、検出された1点の大きさが、最大値が5m程度で、プラスマイナス1m-0.5m程度の誤差の範囲内で維持される場合、1つの頂点が一塊として移動していると仮定することができる。後者の場合、検出された2点間距離が、最大値が10m程度で、プラスマイナス1-2m程度の誤差の範囲内で維持される場合、2つの頂点が一塊として移動していると仮定することができる。他の分類の仕方も可能である。
【0047】
また、4つの頂点(例えば、K4、K5、K6及びK7)が、その位置座標、移動方位、移動速度等を、他の周辺の頂点とは相違させることが観察される場合、その4つの頂点に対してだけ、1つの物体ID(例えば、ID3)を付与することができる。この際、隣接する2つの頂点の間の距離、4辺を有する多角形(四角形)のうち隣接する2つの辺のなす角度、または4つの頂点によって囲まれる領域の面積について着目してもよい。これら距離、角度または面積が一定で保たれる場合、その4つの頂点は同一物体に属していると仮定できる。4つの頂点に対して1つの物体IDを付与する場合、例えば、中型船舶の大きさ(特に、船首と船尾間の長さ)の範囲以上で行ってもよい。例えば、検出された最大の2点間距離が、最小値が9m程度で、プラスマイナス2m程度の誤差の範囲内で維持される場合、4つの頂点が一塊として移動していると仮定することができる。または、大型船の場合、検出された最大の2点間距離が、最大値が100m程度で、プラスマイナス3m程度の誤差の範囲内で維持される場合、4つの頂点が一塊として移動していると仮定することも可能である。
【0048】
従って、管理サーバ50の頂点情報管理モジュール52は、例えば、複数の頂点の位置座標の相対関係、複数の頂点の間の距離、複数の頂点のなす角度、複数の頂点のなす領域の面積、複数の頂点の移動ベクトルのうちの少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくはそれ以上が、所定の範囲内に保たれる場合、一群として移動する頂点を同一の物体に属すものとして識別する。この際、複数の頂点の相対的な速度、加速度、中心位置等、さらなる情報を組み合わせて、より識別の精度を向上させることは可能である。さらに、この作業を繰り返して実行して、より識別の精度を向上させることは可能である。
【0049】
管理サーバ50の頂点情報管理モジュール52は、物体IDを端末30、40に送信して、この物体IDに基づいて、各頂点をむすぶことで、物標の輪郭の概要を描くことを可能にする。
例えば、
図6(B)を参照すると、物体ID(ID1)が付与された1つの頂点K1に対して、その位置座標が中心となるように小円L1が示されている。物体IDが単一の頂点に付与される場合、その位置座標を点で表す。その点は径方向の大きさを有していてもよい。
また、物体ID(ID2)が付与された2つの頂点K2、K3に対して、各位置座標をむすぶように細長い棒状の形状L2が示されている。他、単にK2、K3の位置座標を直線でつなげてもよい。その直線は太さを有していてもよく、直線の端部では、丸くされてもよい(R処理)。
【0050】
また、物体ID(ID3)が付与された4つの頂点K4-K7に対して、各位置座標をむすぶラインL3が示されている。このラインL3は、4つの頂点K4-K7のうち、互いに隣接する2つの点をむすぶように、一筆書きの仕方で描かれる。即ち、多角形の外縁を順につなげていくように、各頂点をラインで結ぶ。その直線の太さは、様々に設定してもよい。
また、3つまたは5つ以上の頂点に対して共通する物体IDを付与する場合、多角形の点を外縁に沿って一筆書きで結ぶことで、その輪郭の概要を表示する。
従って、従来のレーダーからは必ずしも鮮明な物標の画像が得られなかったが(
図5(A)を参照)、本発明では、一群として移動する物標の頂点に基づいて、物標の輪郭の概要を直線で表示するので、より鮮明な物標の画像が得られる(
図6(B)を参照)。
【0051】
図6(C)を参照すると、本発明の別の態様が例示されている。
レーダー画像は必ずしも物標の輪郭を精密に表示しないため、そこから抽出される頂点の位置座標にはズレが生じ得る。例えば、
図6(C)を参照すると、K4-K7の4つの頂点のうち、頂点K4、K5では実際の位置K8、K9と比べて前後左右に微妙にズレて示されている。
本発明では、抽出されたK4、K5、K6、K7を直線でつなぐ替わりに、各頂点の位置調整を行った後、調整された位置K8、K9、K6、K7を直線L4で結んでもよい。
例えば、管理サーバ50には、既知の船体情報を予め複数登録しておく。そして、抽出された頂点と登録された船体情報とを対比して、近似するものを求めてもよい。この場合、管理サーバ50は、実際の運用を行う前に、トレーニングを行う。トレーニングは、例えば、数百、数千、またはそれ以上の異なる物標の画像に対して行われ、各種結果を蓄積する。その際、例えば、抽出された位置と実際の位置のズレが、前後または左右で、0.1%、1%、または2%の割合で生じた場合等、様々な状況での処理を行って、その結果について統計データを計算及び生成してもよい。トレーニングによって、ある程度高い成功率(識別率)、例えば、99%程度の成功率が得られた後で、実際に抽出された点(例えば、K4、K5、K6、K7)に基づいて、予め登録された船体情報のうちで最もマッチングするものを選び出して、調整された位置(例えば、K8、K9、K6、K7)を直線で結んでもよい。同様に、同一物標のレーダー画像が経時的に微小変化する場合、頂点抽出時には、その微小変化をキャンセルさせて各頂点の相対位置を維持するように調整してもよい。
【0052】
「マップ表示例」
図7は、端末30、40のディスプレイ上に表示されるマップを(A)、(B)で分けて示す概念図の例である。
図7(A)を参照すると、ユーザ端末30または陸上管理端末40のディスプレイ上に表示され得るマップの例が示されている。
複数の頂点K1-K7(
図6(A)参照)のうち、一群として移動する頂点を同一の物体に属すものとして識別することにより、それら複数の頂点K1-K7は、3つのグループに分類されて、それぞれ異なる物体(ID1、ID2、ID3参照)として表されている。
【0053】
物体ID1が付与されたものは小円で表示され、物体ID2が付与されたものは棒状で表示され、物体ID3が付与されたものは4つの頂点が1つのラインによって結ばれた長方形状で表示されている。
各物体を表示する際、該当する海図の情報を重ねて表示することができる。例えば、符号Q13、Q14に例示するように、緯度経度がわかるように海図を表示するとともに、符号Q15に例示するように、付近の陸地(沿岸等)を示す地図を表示してもよい。なお、沿岸等は、時刻によって水位の変化に合わせて輪郭を変化させる場合がある。このため、沿岸等を表示する場合、基準時刻の地図を表示させる。可能であれば、時刻または水位の変化に合わせて予想される沿岸等の地図を表示してもよい。
【0054】
陸上管理端末40は、画面上にマップを表示する際、表示される各小型船のうち、船舶情報管理モジュール47から得られる情報に基づいて、現在陸上会社が管理している船舶に該当するものについては、その船舶の詳細情報を画面上の船舶詳細表示領域に表示してもよい(符号R1参照)。船舶詳細表示領域には船舶の画像(符号R2参照)と、その詳細情報(符号R3参照)を表示してもよい。これらの情報は、陸上管理端末40の船舶情報管理モジュール47から取得することができる。他、陸上管理端末40は、現在陸上会社が管理している船舶の一覧等を表示してもよい(図示略)。
ユーザは各物体IDの振られた物体に対して、物体名を入力することができる。例えば、ユーザは、四角形の物体ID3をタップすることで、入力画面が表示され、「バージ船XX丸」などの入力を行うことができる。
また、予め船舶の位置情報等が取得できている場合には、その位置情報の場所に存在する船舶の名称を物体IDと対応付けて表示するようにしても良い。
【0055】
図7(B)を参照すると、ユーザ端末30または陸上管理端末40のディスプレイ上に表示されるマップの他の例(レーダー映像表示)が示されている。この例では、符号ID1が自船位置を表す。なお、
図7(A)と
図7(B)とは厳密に対応するものではない。
レーダー映像表示では、自船位置ID1は画面中央にあり、上方に向って走行している状態で表示される。自船位置ID1から真上に伸びているラインA12は、船首線に相当し、固定されて動かない。船首線A12と同一直線上に、自船の航行速度を示す速度ベクトルを表示してもよい(図示略)。
図7(B)では、符号G1-G5に示すように、自船位置ID1を中心とした同心円が複数表示されているが、これらは固定距離環であって、一定の距離毎に表示されていて動かない。固定距離環は、他船ID2、ID3等までのおおよその距離を素早く読み取るために役立つ。多重円表示となっている各固定距離環は、画面上での表示が任意にオンオフされてもよい。
固定距離環のうちの一つG3には、自船位置ID1を中心に、360度目盛りが刻まれた方位目盛値が表示されている。方位目盛値は、自船ID1を中心として、他船などの物標の方位を知るときのスケールとして使用される。
【0056】
図面上には示されていないが、固定距離環に加えて可変距離環(VRM:Variable Range Maker)が設けられ得る。可変距離環は自由自在に拡大縮小ができ、物標までのより正確な距離を測るときに使用される。
また、図面上には示されていないが、電子カーソル(EBI:Electronic Bearing Line)が設けられ得る。電子カーソルは、画面中央の自船位置ID1から伸びる可変の方位マークであって、他船などの物標の方位をより正確に測る場合に使用される。
従来技術と同様に、レーダー画像上で、他船や島などの物標までの距離及び方位は、画面上のVRMやEBIを用いて測定することができるが、本明細書では、その詳細な説明を省略する。
図7(B)では、自船位置ID1を中心としたヘディングアップ(HU)表示方式が採用されているが、ノースアップ(NU)表示方式へと変更することは可能である。また、
図7(B)では、各頂点の位置座標を追跡することで、頂点の過去の位置座標に基づいて、各物体の移動状態をエコートレイル状に表示している(符号P13及びP14参照)。エコートレイルは、船が走行中であれば船影を航跡として表示できる機能のことをいう。エコートレイルでは、画面上に表れる各船の軌跡を表示するので、各船の動向が理解容易となる。ただし、エコートレイル状の画像表示を切り替えて、非エコートレイル状に画像表示することは可能である。
【実施例2】
【0057】
図8は、2つの小型船から1つの小型船をレーダー探知する場合の概念図の例である。
図9は、
図8に示した2つの小型船からの探知結果の例である。
実施例1は、単一のレーダー10から得られたレーダー画像の画像処理に基づく。次に、複数のレーダー10を用いる場合を例示する。
図8を参照すると、海上に3艘の小型船O1、O2、O3が存在している。この例では、中央の小型船O3は停止しており、本発明に係るユーザ端末30を有していない。上方の小型船O1は、船首線A1で示されるように、右から左に向って航行しており、本発明に係るユーザ端末30を有している。下方の小型船O2は、船首線A2で示されているように、左下から右上に斜め上方に航行しており、本発明に係るユーザ端末30を有している。これら小型船O1、O2は、それぞれのレーダー10を用いて周囲の物標を探知することができ、特に、中央の小型船O3が探知可能になっている。
例えば、小型船O1-O3は、港湾内等で航行するプレジャーボートである。
【0058】
図9(A)を参照すると、
図8の上方に示した小型船O1のレーダーによる、小型船O3のレーダー探知結果を概略的に示している。レーダーの画像は、真北方向のラインB1で示されるように、ノースアップ表示方式で示されている。ラインA1は、船首方向を示している。なお、説明を容易にするため、陸地や他船O2などの他の情報は割愛して示している。
図9(B)を参照すると、同様に、
図8の下方に示した小型船O2のレーダーによる、小型船O3のレーダー探知結果を概略的に示している。
複数の小型船O1、O2から送信される各レーダー探知結果情報は、それぞれ基準(真北方向を基準にするか、船首方向を基準にする)を明らかにして、管理サーバ50に送信され、頂点情報管理モジュール56では、統一された基準のもと、各位置情報の追跡、対比等が行われる。
【0059】
図9(A)のレーダー画像に対して画像処理を行うことにより、物標O3の船首位置と船尾位置に相当する2つの頂点М1、М2を求めることができる(
図5(A)-(C)参照)。
図9(C)を参照すると、抽出された2つの頂点М1、М2に基づいて、物標O3の輪郭の概要を描く例を示している。例えば、2点М1、М2間を直線でむすぶ際、直線に所定の幅をもたせてもよい。また、各頂点では、角に丸みを付けることができる。他、単に2点М1、М2間を直線でむすぶだけでもよい。
同様に、小型船O2のレーダーによる、小型船O3のレーダー画像の処理によって、物標の船首位置と船尾位置に相当する2つの頂点М3、М4を求めることができる。
ユーザ端末30は、探知結果情報、特にレーダー画像上の物標の画像情報を解析し、その時の物標の位置情報から、特定した物標の位置座標、移動ベクトル、移動速度等を算出する。
算出した物標の位置座標の変化を、例えば、時刻(タイムスタンプ)、端末ID、緯度、経度、速度、方位等の各フィールドを有するフォーマットで管理サーバ50にアップロードする。
送信される数値の単位は、送信側及び受信側で明らかにする。
例えば、速度の単位は(m/s、km/h、またはkn)である。
また、方位は、その基準(真北基準または船首方位基準)と単位(度、Deg)を明らかにする。
例えば、次の頂点情報が送信される。
[M1,20191212090000,O1,35.55345117,139.24523411,1.32,278・・・]
この頂点情報は、先頭から順に、頂点ID(レーダー探知した船舶の識別情報またはレーダーを示す識別情報)、時刻(タイムスタンプ)緯度、端末ID、経度、速度、方位がカンマ区切りで繋げられたものである。
このセンテンスは、レーダー探知結果が更新される度に、端末30から管理サーバ50にアップロードされる。
【0060】
図10は、
図8に示した時点から所定時間経過後の2つの小型船から1つの小型船をレーダー探知する場合の概念図の例である。
図11は、
図10に示した2つの小型船からの探知結果を(A)と(B)で分けて示す概念図の例である。
図10を参照すると、
図8に示した3艘の小型船O1-O3について、所定時間経過後の様子が示されている。中央の小型船O3は停止を続けており、上方の小型船O1は、船首線A1で示されるように、右から左に向ってさらに航行しており、下方の小型船O2は、船首線A2で示されるように、左下から右上に斜め上方にさらに航行している。この場合も同様に、上下の二艘の小型船O1、O2は、中央の小型船O3をそれぞれレーダー探知可能となっている。
【0061】
図11(A)を参照すると、同様に、
図10の上方に示した小型船O1のレーダーによる、小型船O3のレーダー探知結果を概略的に示している。物標のレーダー画像の処理によって、物標の2つの頂点М5、М6を求めることができる。
図11(B)を参照すると、同様に、
図10の下方に示した小型船O2のレーダーによる、小型船O3のレーダー探知結果を概略的に示している。物標のレーダー画像の処理によって、物標の2つの頂点М7、М8を求めることができる。
【0062】
管理サーバ50は、頂点情報管理モジュール56(
図3、4参照)にて、各小型船O1及びO2のユーザ端末30から受信した情報を蓄積していく。その際、予め定められた項目ごとに、情報のデータベース化を行ってもよい。
例えば、まず、小型船O1のレーダーから頂点M1、M2の頂点情報が求められる。
頂点情報には、各頂点の識別番号、レーダー探知を行った船舶の識別番号、頂点の緯度、経度、速度、方位、時刻(タイムスタンプ)が含まれる。頂点情報は、レーダー10から得られるレーダー画像の解析、レーダー10が備える物標追尾機能を利用することで求めることができる。
【0063】
次に、ある時間経過後、小型船O2のレーダーから頂点M3、M4の頂点情報が求められる。
次に、ある時間経過後、小型船O1のレーダーから頂点M5、M6の頂点情報が求められる。
次に、ある時間経過後、小型船O2のレーダーから頂点M7、M8の頂点情報が求められる。
管理サーバ50は、これら情報をデータベース上に集積していき、各頂点М1-М8について、同一の物体に属している組を探し求める。
【0064】
【0065】
表1は、小型船O1、O2から得られる各頂点情報を時系列準に、管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56に蓄積した例である。
管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56では、頂点情報を統括したデータベースを有し、そのデータベース上で、複数の頂点に対して、様々な観点から頂点の組を求めることができる。
表1では、時刻(探知時刻)、緯度、経度、端末ID(船舶番号)、頂点ID(頂点番号)を示しているが、他、速度、方位、方位の基準等も同様にデータベース上に集約される。
例えば、表1の頂点番号M1を参照すると、小型船O1により、2019年12月12日09時00分00秒にレーダー探知された、頂点M1について、緯度(35.55345117)と経度(139.24523411)が例示されている。
【0066】
同様に頂点番号M2を参照すると、小型船O1により、2019年12月12日09時00分00秒にレーダー探知された、頂点M2について、緯度(35.55395227)と経度(139.24528425)が例示されている。
これによって、同一時刻に、同一レーダーにより、緯度経度の異なる2つの頂点が識別されているのが解る。この際、2つの緯度経度を比較するとき、例えば、プラスマイナス1mまたは0.5m程度の誤差の範囲内で、それらの値が一致しているか否かの判定を行ってもよい(例えば、日本では、1mあたり緯度:0.000008983148616、1mあたり経度:0.000010966382364)。緯度経度の値は、船舶の存在する地域を基準とする。
【0067】
次に、表1の頂点番号M5を参照すると、小型船O1により、2019年12月12日09時03分00秒にレーダー探知された、頂点M5について、緯度(35.55345119)と経度(139.24523413)が例示されている。
同様に頂点番号M6を参照すると、小型船O1により、2019年12月12日09時03分00秒にレーダー探知された、頂点M6について、緯度(35.55395229)と経度(139.24528427)が例示されている。
これによって、M1、M2の受信後の所定時間経過後(3分後)の同一時刻、同一レーダーにより、緯度経度の異なる2つの頂点M5、M6が識別されているのが解る。
【0068】
ここで、頂点M1と頂点M5とを比較すると、完全一致はしていないものの、互いにほぼ一致する値を有している。同様に、頂点M2と頂点M6とを比較すると、完全一致はしていないものの、互いにほぼ一致する値を有している。
頂点M1と頂点M5と、頂点M2と頂点M6とが、例えば、99%や99.9%等の予め定められた範囲内で、それぞれ緯度経度が一致すると仮定する。さらに、このとき、各頂点の速度が0であって、特定の方位に移動していないことが得られたとする。この場合、頂点情報管理モジュール56は、各頂点は移動しておらず、頂点M1と頂点M5は一致し、頂点M2と頂点M6は一致すると判定することができる。この結果、頂点情報管理モジュール56は、頂点M1と頂点M2(頂点M5と頂点M6)は同一の物体に属していると推測することができる。この作業を繰り返すことで、頂点情報管理モジュール56は、頂点の組を求める判定の精度を上げることができる。
【0069】
このように、管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56では、複数の頂点に対して、様々な観点から頂点の組を求めることができる。
頂点情報管理モジュール56は、各船舶から得られた頂点情報をすべてデータベース上に蓄積する。
次に、同一の船舶のレーダー10によって求められた各頂点情報のうち、近距離(例えば、小型船舶の長さ等を考慮して、少なくとも数メートル)で相対的位置を保っている頂点の組(例えば、小型船舶の船首と船尾の両端の組)を見つける。
【0070】
この際、頂点情報管理モジュール56は、作業の無駄を省くため、求められた頂点情報のうち、既に組み合わせがわかっているものは、作業の対象から除外する。例えば、
図8を参照すると、小型船舶O1からは、2つの物標O2、O3がレーダー探知でき、各頂点が求められる。このうち、O2については船体情報等が管理サーバ50側に予め登録されているため、O2の位置情報(時刻、緯度経度、速度、方位等)は別途入手可能である。そこで、頂点情報管理モジュール56は、O1から得られたO2、O3の頂点情報のうち、O2の頂点情報に該当する分(時刻、緯度経度、速度、方位等の対比)ついては、作業の対象から除外する。
【0071】
例えば、表1は、O1から得られたO2、O3の頂点情報のうち、O3の頂点情報(M1、M2、M5、M6)だけを取り出して示している。
次に、頂点情報管理モジュール56は、端末30からアップロードされた点の履歴に頂点の複数時刻において、作業対象の頂点の座標を求める(表1参照)。
レーダー画像は、必ずしも物標のすべての輪郭を表示できない場合がある。例えば、物標が大型船の影に隠れると、その物標はレーダー探知範囲内から消えることが起こり得る。そのような場合で、物標の頂点の追跡を行う場合、既知の情報から、所定時間経過後の頂点の情報を計算により求めることができる。
【0072】
例えば、ある離散的に連続する時点で、物標の位置座標、速度、方位が知られている場合、その物標の将来または過去の位置座標を外挿により求めることができる。その際、直後の時刻、座標および平均化した速度、針路から、物標の速度、加速度等を考慮して、将来または過去の位置を算出することができる。
また、ある離散的に連続する時点で、物標の位置座標、速度、方位が知られている場合、その物標の任意の中間時点の位置座標を内挿により求めることができる。その際、直前直後の時刻、座標および平均化した速度、針路から、物標の速度、加速度等を考慮して、任意の中間時点の位置を算出することができる。
【0073】
即ち、管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56では、複数の頂点情報を蓄積していくことにより、その物標の過去または将来の動向を予測することができる。例えば、9時10分00秒、9時13分00秒に、ある頂点の位置座標が得られたとする。このとき、これらの値に基づいて、例えば、9時11分00秒の位置座標(内挿)または9時15分00秒の位置座標(外挿入)を推測することができる。従って、頂点情報管理モジュール56では、物標の頂点を所定時間追跡して得られた蓄積された情報に基づいて、必ずしもレーダー探知がされていなくても、その頂点の位置座標を推測することができる。
【0074】
頂点情報管理モジュール56では、さらに、2つの頂点の間の距離に着目して、各頂点が同一の物標に属しているか否かの判定を行うことができる。
例えば、頂点情報管理モジュール56は、O1から得られたある時刻(表1の2019年12月12日09時00分00秒参照)における2つの頂点M1とM2の間の距離L11を求める。この値は、三平方の定理に基づいて、位置座標(表1の緯度、経度参照)から求められる。M1の緯度と経度をX1とY1、M2の緯度と経度をX2とY2とすると、これら2点の間の距離は、(X1-X2)の2乗と、(Y1-Y2)の2乗とを足した値の平方根からL11を求めることができる。
次に、O1から得られた所定時間経過後の時刻(表1の2019年12月12日09時03分00秒参照)における2つの頂点M5とM6の間の距離L12を求める。M1の緯度と経度をX5とY5、M2の緯度と経度をX6とY6とすると、同様に、(X5-X6)の2乗と、(Y5-Y6)の2乗とを足した値の平方根からL12を求めることができる。
【0075】
次に、頂点情報管理モジュール56は、L11とL12の値が一定の値で維持されているか否かを判定する。即ち、L11とL12の差が、所定の閾値E(例えば、5m)の範囲内に維持されているか否かを判定する。
L11-L12<E1
上記値が、E1を下回るとき(好ましくはゼロであるとき)、2つの頂点M1、M2の組と、2つの頂点M5、M6の組とが同じ物標に属していると仮に判定することができる。この結果、例えば、上記頂点M1、M2、M5、M6に対して、同一の物体IDを付与する。
【0076】
この際、各頂点M1、M2、M5、M6の位置座標を合わせて追跡することで、上記判定の精度を高めることができる。さらに、この判定を経時的に繰り返すことで、判定の精度を高めることができる。
頂点M3、M4、M7、M8についても同じ作業を行って、同様に頂点間の長さL21とL22とを求めてもよい。この結果、例えば、上記頂点M1、M2、M5、M6に対して、同一の物体IDを付与する。
【0077】
2つの頂点が同じ一塊として移動しているとする、座標または長さ等の比較判定では、完全一致する場合(差がゼロの場合)に限らず、不完全一致の場合(差が微小の場合)も含むことができる。後者の場合では、予め定められた閾値(例えば、5m)との比較演算によって行うことができる(閾値E参照)。上記閾値は、気候状況等を考慮して、変化させてもよい。
船舶の場合、船体が揺れて、ローリングやピッチングの影響を受けることがある。特に小型船舶の場合、その船体特徴から海からの環境変化を受けやすく、上下左右方向の揺れが生じている。このため、船舶の頂点座標等の判定では、船首方向(前後方向)または船幅方向(左右方向)での船体の揺れを考慮して、閾値を設定してもよい。
【0078】
また、例えば、気候条件等により海面の揺れが大きく、船体の揺れが大きいと予測可能な場合、閾値を比較的大きめにしてもよい。一方、海面の揺れが小さく、船体の揺れが小さいと予測可能な場合、閾値を比較的小さめにしてもよい。他、海流の流れ等を勘案して、閾値を設定してもよい。
閾値の変更は、手動によって切り替えられてもよく、または、外部から入力される気候情報に基づいて、自動で切り替えられてもよい。
【0079】
なお、上記場合では、同一の物標に対して、別々のレーダーからの物標探知情報が同時に送られているので、頂点M1、M2、M5、M6の属する標的と、頂点M3、M4、M7、M8の属する標的とにそれぞれに別々に物体IDが重複して付与され得る。この場合、物体IDに基づいて画面上に物標を表示する場合、単一の物標に対して2つの物標の画像が重複して表示され得る。そこで、頂点情報管理モジュール56は、同一の物標に対して重複して物体IDが付与されているか否かの判定手段をさらに備えていてもよい。
例えば、頂点情報管理モジュール56は、各頂点情報をデータベース上で管理し、そのデータベース上に各頂点に付与された物体IDを関連付ける。その際、ある時刻間隔(例えば、5分等)、実質的に同一の位置座標(例えば、99.9%の精度等)で、異なる物体IDが存在しているか否かの判定を定期的に行う(例えば、3分毎等)。
【0080】
例えば、表1を再度参照すると、1分の時間差で、O1から得られたM1の位置座標とM3の位置座標と、O2から得られたM2の位置座標とM4の位置座標とが実質的に等しい(表1の緯度、経度参照)。また、1分の時間差で、O1から得られたM5の位置座標とM6の位置座標と、O2から得られたM7の位置座標とM8の位置座標とが実質的に等しい(表1の緯度、経度参照)。この場合、頂点情報管理モジュール56は、O1とO2とは、それぞれ、同一の物体をレーダー探知していると仮定することができる。
かかる場合、頂点情報管理モジュール56は、O1に基づいてM1、M2、M5、M6に付与された物体IDと、O1に基づいてM3、M4、M7、M8に付与された物体IDに対して、それぞれ、重みづけをしてもよい。この作業を繰り返して、所定時間(例えば、30分等)頂点情報に相違が認められなければ、M1、M2、M5、M6に付与された物体IDとM3、M4、M7、M8に付与された物体IDとを一つに集約してもよい。この際、好ましくは、頂点情報管理モジュール56は、既に物体IDが振られている点が存在する場合は、その中で最も小さい(若い)物体IDを有する物体にすべての点を帰属させる。
【0081】
また、管理サーバ50は、本システムを利用する小型船O1及びO2については、それぞれの予め登録された船体情報と、位置座標、方位、速度等を用いることができる。従って、管理サーバ50は、小型船O1及びO2については、他船のレーダー10から得られたレーダー画像に基づいて特定した物体IDに、予め登録された船体情報を関連付けることができる。このため、小型船O1及びO2については、他船のレーダー10からのレーダー探知結果情報と既知の船体情報とを組み合わせて、より正確にマップ上に小型船O1及びO2の外観を表示することができる。
【実施例3】
【0082】
図12は、3つの小型船O21、O22及びO23から1つの大型船O24をレーダー探知する場合の概念図の例である。
図12を参照すると、3艘の小型船O21、O22及びO23と、それらの中央に位置する1隻の大型船O24が示されている。中央の大型船O14は停泊しており、本発明に係るプログラムを含むユーザ端末30を有していない。これに対し、周囲の3艘の小型船O21、O22及びO23は、それぞれ本発明に係るプログラムを含むユーザ端末30を有しており、それぞれのレーダー10を用いて、周囲の物標を探知することができ、特に、中央の大型船O24が探知可能となっている。
例えば、大型船O24は、港湾内等で重い貨物を積んで航行するバージまたはライターである。
【0083】
物標の大きさや形状等によっては、必ずしも物標の外縁のすべてを抽出できない場合がある。
例えば、小型船O21のレーダーでは、大型船O24の4つの頂点D1-D4のうち、手前側の3つの頂点D1、D2、D4は識別できるが、最も遠方の頂点D3を鮮明に識別できない場合が起こり得る。その場合、時刻T21で識別された3つの頂点D1、D2、D4について、それぞれの情報を管理サーバ50に送信する。
また、小型船O22のレーダーでは、大型船O24の4つの頂点D1-D4のうち、手前側の3つの頂点D1-D3は識別できるが、最も遠方の頂点D4を鮮明に識別できない場合が起こり得る。その場合、時刻T22で識別された3つの頂点D1-D3について、それぞれの情報を管理サーバ50に送信する。
【0084】
また、小型船O23のレーダーでは、大型船O14の4つの頂点D1-D4のうち、手前側の2つの頂点D3、D4は識別できるが、最も遠方の頂点D1、D2を鮮明に識別できない場合が起こり得る。その場合、時刻T23で識別された2つの頂点D3、D4について、それぞれの情報を管理サーバ50に送信する。
管理サーバ50は、各小型船O21-O23から受信した頂点情報をデータベース上に蓄積していく。
【0085】
頂点情報管理モジュール56は、各頂点が相対的位置を保って移動しているか否かを探し求める際、位置座標、長さの他、少なくとも3つの頂点の座標が解る場合、これら頂点のなす角度を求めることができる。頂点情報管理モジュール56は、この角度を追跡することで、経時的に一定の値に保たれているならば、それら頂点は同一の物体に属していると判定することができる。
例えば、
図12の状態において、小型船O22から見て、物標O24の4つの頂点のうち、手前側の3つの頂点D1、D2、D3が識別できるが、向こう側の頂点D4が識別できない場合を想定する。
【0086】
この場合、3つの頂点D1-D3の各位置座標から、3点のなす三角形の各辺の長さと、2辺のなす角度を求めることができる。
例えば、上記3点の座標から得られる2辺(例えば、辺AB、辺AC)から、cosθの値を求める。
cosθ = (AB・AC) / (|AB|*|AC|)
アークコサイン関数を用いて、cosθからθ(∠BAC)を求めることができる。
求められた角度の経時的な変化を追跡していくことで、その角度が経時的に一定の範囲内に保たれているか否かの判定をすることができる。
【0087】
管理サーバ50側は、さらに、小型船O21-O23から得られた情報を蓄積することで、ある時刻の範囲で密集している4つの頂点を抽出して(例えば、D1、D2、D3、D4)、これら頂点のなす面積を求めることができる。例えば、4つの頂点が定める四角形の領域に基づいて面積を求めてもよい。
同様に、管理サーバ50側は、ある時刻の範囲で密集している2つ、3つ、または4つの頂点を抽出して(例えば、D1、D2、D3、D4のうちの少なくとも2つ)、これら頂点の間の距離を求めることができる。
【0088】
管理サーバ50側は、複数の頂点の位置座標の相対関係、複数の頂点の間の距離、複数の頂点のなす角度、複数の頂点のなす領域の面積、複数の頂点の移動ベクトル(方位)のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、さらに好ましくは4つをそれぞれ追跡することで、それらの値が経時的に所定の範囲内に保たれている場合には、一群として移動する頂点を同一の物体に属すものとして識別することができる。その際、複数の頂点の相対的な速度、加速度、複数の頂点の中心位置等のさらなる情報を組み合わせてもよい。
【0089】
管理サーバ50側は、例えば、小型船O22からのD1-D3の値に基づいて、これら頂点が同一の物標に属していると判定して、共通の物体IDを付与したと仮定する(例えば、角度に基づく)。
また、管理サーバ50側は、例えば、小型船O21からのD1、D2、D4の値に基づいて、これら頂点が同一の物標に属していると判定して、別の共通の物体IDを付与したと仮定する(例えば、角度に基づく)。
【0090】
また、管理サーバ50側は、例えば、小型船O23からのD3、D4の値に基づいて、これら頂点が同一の物標に属していると判定して、さらに別の共通の物体IDを付与したと仮定する(例えば、長さに基づく)。
この場合、本体一つの物体に対して複数の物体IDが付与されるため、画面上でそれら物体IDに基づいて3つの画像が重ねて表示され得る。
実施例2の場合と同様に、管理サーバ50側は、各頂点の経時的な変化を追跡して、同一の物体に対して複数の物体IDが重複して付与されていると判定した場合、最も若い物体IDに統一化してもよい。
【0091】
なお、管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56は、各頂点情報を経時的に蓄積していくが、どの船舶のレーダーから得られたものか区別させて記憶しても良い。
管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56は、どの船舶のレーダーから得られた頂点情報であるかを用いてより頂点情報をグルーピングして、それぞれのグループ間の相対的な相対的位置を保って移動している頂点であるかどうかを判断することとしてもよい。
例えば、レーダーごとにまとめられた頂点のグループに対して時系列に頂点の軌跡を追って、グループ間で一致する軌跡を示す頂点がある場合には、同一の物体に属しているものと分類する。
【0092】
各船舶O21-O23に搭載されるレーダーの種類は同一とは限らないし、同一のレーダーであっても同一の条件下で作動しているとは限らず、各船舶O21-O23で作動するレーダーが同一時刻、同一更新間隔で探知しているとも限らないため、単に複数のレーダーからの頂点情報を時系列に並べただけでは、取得された頂点情報に誤差が生じている可能性がある。一方、このようにまずはレーダーごと(ユーザ端末ごと)に頂点情報をグルーピングしてから、複数のグループ間で相対的な移動を判定する方が精度が上がる。
【実施例4】
【0093】
レーダーの画像処理は、レーダー固有の問題によって影響を受けることがある。例えば、本本船舶航行支援システム1は、レーダーの方位分解能と距離分解能について着目する。
方位分解能とは、自船から同一距離にある方位の少し異なる2つの物標を、それぞれレーダー画面上で識別できる映像分解能力をいう。方位分解能は、船に使用されるアンテナの水平ビーム幅によって決定され、通常、水平ビーム幅が狭くなるほど、方位分解能は高まる。
水平ビーム幅は、発射する電波の左右方向の角度特性をいう。一般に水平ビーム幅は、アンテナの水平長により決定されている。アンテナの水平長が長くなると、水平ビーム幅が狭くなっている。小型船の場合、一般的に、搭載されているアンテナの水平ビーム幅は広い。
距離分解能とは、自船から同一方向にある距離の異なる2つの物標を、それぞれレーダー画面上で識別できる映像分解能力をいう。距離分解能は、船に使用されるアンテナの送信パルス幅によって決定され、通常、送信パルス幅が短くなるほど、距離分解能は高まる。即ち、パルス幅の設定によって、距離分解能力が左右される。
【0094】
図13は、1つの船舶から2つの小型船をレーダー探知する場合、レーダーの距離分解能のため2つの小型船を区別できない場合を(A)、(B)で分けて示す概念図の例である
図13(A)を参照すると、3艘の小型船O31、O33、O34が示されている。それぞれ、停泊しているものと仮定する。ここで、図の中央の2艘の小型船O33、O34が互いに近づいて停泊しており、それぞれ本発明に係るプログラムを含むユーザ端末30を有していないものとする。図の下方の小型船O31は、本発明に係るプログラムを含むユーザ端末30を有しているものとする。従って、小型船O31は、レーダー10を用いて、周囲の物標を探知することができ、特に、中央の小型船O33、O34が探知可能となっている。
【0095】
図13(B)を参照すると、図の下方に示した小型船O31のレーダーによる、二艘の小型船O33、O34のレーダー探知結果を概略的に示している。二艘の小型船O33、O34は、互いに近接して位置しているため、小型船O31のレーダーからは、二艘の小型船O33、O34があたかも一つの塊として表示されることが起こり得る。この現象は、レーダーの方位分解能と距離分解能の限界(符号A31参照)によってもたらされ得る。この結果、小型船O31からは、符号O35に示すように、レーダー結果が、単一の物標として画像表示されることが起こり得る。
なお、
図13(A)に例示するように、二艘の小型船O33、O34が小型船O31から見て縦に密集して並んでいる場合、レーダーの距離分解能(符号A31参照)が問題になりやすい。また、二艘の小型船O33、O34が小型船O21から見て横に密集して並んでいる場合(図示略)、レーダーの方位分解能が問題になりやすい。
【0096】
この際、画像処理モジュール34、54は、小型船O31のレーダー探知結果情報に基づいて、二艘の小型船O33、O34をあたかも一艘の船O35として表示したレーダー画像に基づいて、その頂点(例えば、船首側と船尾側の2点)U1、U2を抽出する。管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56は、この頂点情報に基づいて、処理を進めるため、O35の頂点U1、U2は、単一の物体に属しているものと識別し得る。
しかしながら、二艘の小型船O33、O34が互いに相対関係を維持しなくなり、例えば、それぞれが別々の方向に向かって移動しはじめると仮定する。その場合、画像処理モジュール34、54は、小型船O31のレーダー探知結果情報に基づいて、新たに二艘の小型船O33、O34を区別して表示したレーダー画像に基づいて、O33、O34の頂点(例えば、船首側と船尾側の2点ずつ、計4点)を抽出する。
【0097】
管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56は、この頂点情報に基づいて、処理を進めて、一度、O35の頂点U1、U2は、単一の物体に属しているものと識別して物体IDを付与したが、その後、新たに検出されたO33、O34の頂点に基づいて、新たに物体IDを付与するとともに、過去の物体IDをキャンセルしてもよい。
このように、管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56は、各頂点情報の経時的な変化を追跡することで、一度付与した物体IDに対して、適宜修正を加えることができる。
即ち、頂点情報管理モジュール56は、送信されてくる頂点情報をデータベース上等に蓄積していくことで、レーダーの方位分解能または距離分解能による影響下で、物標の誤認識が生じた場合であっても、適宜、その修正を加えることができる。このように、物体に対する頂点の更新時、相対的位置を保たなくなった点が存在する場合、物体IDを発行し、以降、別の物体として扱う。
【実施例5】
【0098】
本船舶航行支援システム1は、レーダーの最小探知距離によるレーダー探知への影響と、大型船によるレーダー探知への影響についても着目する。
最小探知距離とは、レーダー画面上で探知識別表示できる自船からもっとも近い距離をいう。換言すると、最小探知距離とは、レーダー画面上で他船などの物標映像を識別できる自船からの最小の距離をいう。通常、最小探知距離より手間にある物標は、レーダー画面上では映像として表示することができない。このため、最小探知距離より手間にある物標は、自船の近くに存在していても、レーダー画面上では映像として表示されない現象が生じ得る。
最小探知距離は、主に送信パルス幅によって決定され、パルス幅が短くなるほど、最小探知距離は小さくなる。最小探知距離は、レーダーの垂直ビーム幅とも関係する。垂直ビーム幅は、レーダーから発射される電波の垂直方向の角度をいう。通常、小型漁船に用いられる小型レーダーでは、垂直ビーム幅は25度前後となっている。これは、船体が揺れて、ローリングやピッチングの影響を受けても、垂直ビームの探知角度が大きく外れないようにするためである。
【0099】
図14は、
図14は、1つの船舶から物体をレーダー探知する際、レーダーの最小探知距離のため物体を区別できない場合(A)と、1つの船舶から物体をレーダー探知する際、大型船の影響のため物体を区別できない場合(B)とを分けて示す概念図の例である。
図14(A)を参照すると、海上にある3つの物体O41、O42、O43の側面図が示されているここで、図の中央の物体(例えば、ブイ)O43が最も小型で、本発明に係るプログラムを含むユーザ端末30を有していない。図の左右の二艘の船O41、O42は、それぞれ本発明に係るプログラムを含むユーザ端末30を有している。
【0100】
図14(A)を参照すると、左方に示した小型船O41のレーダーからは、中央のブイO43は、左方の船O41のレーダーの最小探知距離より短い距離に位置するため、レーダーによって、物標として識別することができないことが起こり得る(V1、V2参照)。この場合、画像処理モジュール34、54は、小型船O41のレーダー探知結果情報に基づいて、ブイO43について表示しないレーダー画像に基づいて、頂点を抽出することができない。管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56は、この頂点情報に基づいて、処理を進めるため、ブイO43は存在しないものと識別し得る。
【0101】
しかしながら、
図14(A)の右方に示した小型船O42のレーダーからは、中央のブイO43は、右方の船O42のレーダーの最小探知距離より長い距離に位置するため、レーダーによって、物標として識別することができると仮定する(V3、V4参照)。その場合、画像処理モジュール34、54は、小型船O42のレーダー探知結果情報に基づいて、中央のブイO43を表示したレーダー画像に基づいて、O43の頂点(例えば、1点)を抽出する。
管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56は、この頂点情報に基づいて、処理を進めて、一度、ブイO43は存在しないものとして物体IDを付与しなかったが、その後、O43の頂点に基づいて、新たに物体IDを付与してもよい。
このように、頂点情報管理モジュール56は、各頂点情報の経時的な変化を追跡することで、レーダーの最小探知距離の影響下で、一度付与しなかった物体IDに対して、適宜修正を加えることができる。
【0102】
同様に、本船舶航行支援システム1は、大型船の影響についても着目する。
図14(B)を参照すると、海上にある3つの物体O51、O52、O53、O54の側面図が示されているここで、図の中央の右側の物体O53が最も小型で、本発明に係るプログラムを含むユーザ端末30を有していない。また、図の中央の左側の船O54が最も大型で、本発明に係るプログラムを含むユーザ端末30を有していない。図の左右の二艘の船O51、O52は、それぞれ本発明に係るプログラムを含むユーザ端末30を有している。
【0103】
図14(B)を参照すると、左方に示した小型船O51のレーダーからは、中央の大型船O54は物標として識別することができるが、大型船O54の向こう側にある小型船O53は、大型船O54の影響によって物標として識別することができない(V11、V12参照)。この場合、画像処理モジュール34、54は、小型船O51のレーダー探知結果情報に基づいて、大型船O54だけを表示したレーダー画像に基づいて、頂点を抽出する。管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56は、この頂点情報に基づいて、処理を進めるため、大型船O54の存在は識別できても、小型船O53は存在しないものと識別し得る。
【0104】
しかしながら、
図14(B)の右方に示した小型船O52のレーダーからは、中央の小型船O53は、大型船O54よりも手前側にあるため、レーダーによって、それぞれ物標として識別することができると仮定する(V13、V14参照)。その場合、画像処理モジュール34、54は、小型船O52のレーダー探知結果情報に基づいて、中央の小型船O53と大型船O54とをそれぞれ表示したレーダー画像に基づいて、各頂点を抽出する。
管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56は、この頂点情報に基づいて、処理を進めて、一度、小型船O53は存在しないものとして物体IDを付与しなかったが、その後、小型船O52によって探知されたO53の頂点に基づいて、新たに物体IDを付与してもよい。
【0105】
このように、頂点情報管理モジュール56は、各頂点情報の経時的な変化を追跡することで、一度付与しなかった物体IDに対して、適宜修正を加えることができる。この修正は、大型船に限らず、島や大きな構造物等によるレーダーの物標に対する影響についても同様である。
従って、従来のレーダー10では、追尾物標が大型船の後方や島影等に入ると、それらの影響下でレーダー映像が消えるため、物標情報を喪失していたが、本船舶航行支援システム1では、複数の船舶上のレーダー10を複合して活用することで、単一のレーダーでは捕捉できなかった物標情報を他のレーダーから捕捉することが可能となる。
【実施例6】
【0106】
本船舶航行支援システム1は、偽像についても着目する。
偽像とは、発射電波の二次反射によって生じる現象である。虚像は、実際には物標が海上には存在していないが、あたかも存在するようにレーダー画面上に現れる映像をいう。虚像は、自船上の構造物だけでなく、自船周辺にある強い反射物標からの信号に起因して生じることがある。従来技術では、内海の海峡大橋など航路帯の真正面に位置する物体からのレーダー反射は強いため、この現象は避けられないといわれている。
【0107】
図15は、2艘の船舶O61、65から物体をレーダー探知する際、偽像の影響を受ける場合と受けない場合とを同時に示す概念図の例である。
図16は、
図15に示した2つの船舶O61、65によるレーダー探知結果を(A)、(B)で分けて示す概念図の例である。
図15を参照すると、2つの陸地の間を結ぶ橋などの構造物O63の近くを3艘の船舶O61、O62、O65が進んでいるものとする。そして、橋O63の付近で船舶O61、65から周囲の他船をレーダー探知するものとする。
【0108】
このとき、船O61が橋O63に最も近くに位置するとき、そのレーダーから発射されたマイクロ波は、一部が直接的に他船O62に対して直進して、その物標O62から反射されて、もとのレーダーの位置に返ってくる通常の場合(ラインH1参照)に加えて、他の一部が橋O63に当たって反射された後、その反射波が他船O62に対して間接的に直進して、その物標O62から反射されて、もとのレーダーの位置に返ってくる場合(ラインH2参照)との2種類が存在し得る。前者の場合、通常のようにレーダー画面上に他船O62の画像が表示されるが、後者の場合、船O61と橋O63との直線の延長上(ラインH3参照)に、存在しないはずの他船の画像O64が表示されることがある(
図16(A)参照)。
【0109】
この場合、画像処理モジュール34、54は、小型船O61のレーダー探知結果情報に基づいて、他船O62のレーダー画像の他、存在しないはずの船の画像(O64)を表示したレーダー画像に基づいて、頂点を抽出する。管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56は、この頂点情報に基づいて、処理を進めるため、他船O62の存在の他、虚像O64についてもあたかも物標が存在するものとして識別し得る。
【0110】
ここで、再度
図15を参照すると、橋O63の付近に位置する船O61の下方に、橋O63から離れて他船O65が存在している。船O61は虚像O64の影響を受ける位置にいるものの、他船O65は虚像の影響を受ける位置にいないため、他船からのレーダー画面上では、虚像O64は発生しないものとする(
図16(B)参照)。
この場合、画像処理モジュール34、54は、小型船O65のレーダー探知結果情報に基づいて、発射電波の二次反射の影響を受けないことにより、レーダー画像に基づいて、虚像O64の頂点を抽出しない。管理サーバ50の頂点情報管理モジュール56は、この頂点情報に基づいて、処理を進めるため、小型船O61からの結果とは異なる結果を出力し得る。
【0111】
係る場合、頂点情報管理モジュール56は、検出された物標の数が相違する場合、互いに相違する物体IDの指示を重畳して端末30、40に送信する。端末30、40は、同一時刻、同一位置座標について互いに矛盾する物体IDの指示を受けた場合には、その物体IDに基づいて物体の輪郭の概要を表示する際、通常の表示態様とは異なる様式で表示してもよい。たとえば、O62を表示する場合と、O64を表示する場合とで(
図16(A)参照)、それぞれマップ上に表示される色、点滅状態、ラインの太さ、ラインの態様(直線状、点線状など)等を変更して表示するようにしてもよい。
このように、頂点情報管理モジュール56は、虚像(発射電波の二次反射)の影響下で、同一の物体に属すものとして識別した頂点の情報を端末30、40に出力する際、矛盾するデータがある場合には、その識別情報をさらに追加して出力してもよい(例えば、物標IDに虚像について重みづけをする)。
さらに、頂点情報管理モジュール56は、各頂点情報の経時的な変化を追跡することで、O64が虚像であると判定した場合には、一度付与した物体IDに対して、例えばキャンセルするように、適宜修正を加えることができる。
なお、レーダーの方位分解能と距離分解能、レーダーの最小探知距離、大型船によるレーダー探知への影響の場合においても、複数の異なるレーダーからの探知結果に矛盾がある場合、同様に表示態様を変化させてもよい。
【0112】
以上、船舶上でレーダー10を用いた場合の、レーダー画像からの物体認識情報に基づく本発明に係る船舶航行支援システム1について説明した。
ただし、船舶上で用いられる物標の探知装置は、レーダーに限定されない。
例えば、船舶上でライダーを用いることができる。この場合、ライダー画像からの物体認識情報を、レーダー画像からの物体認識情報の替わりに用いることができる。
また、船舶上でカメラを用いることができる。この場合、カメラ画像(可視光、赤外)からの物体認識情報を、レーダー画像からの物体認識情報の替わりに用いることができる。
ライダーまたはカメラによって得られた画像に対して、頂点を求める画像処理は、レーダーの場合と同様に行うことができる(
図5、
図6参照)。
【0113】
図17は、本発明に係る船舶の航行支援方法のうち、ユーザ端末30側の処理の流れを示す概念図の例である。
ステップS71では、ユーザ端末30は、所定のトリガ信号に応答して、画像処理を開始する。
ステップS72では、ユーザ端末30は、レーダー10からのレーダー探知結果情報を受信する。レーダー探知結果情報は、特にレーダー画像である(
図5(A)参照)。
ステップS73では、ユーザ端末30は、レーダー画像の画像処理を行い、頂点を抽出する(
図5(B)参照)。
ステップS74では、ユーザ端末30は、抽出した頂点情報を管理サーバ50に送信する(
図5(C)参照)。
ステップS75では、一度フローを終了する。ただし、例えば、レーダー10からのレーダー探知結果情報が更新されると、再度、ステップS71から同じ処理を繰り返す。
【0114】
図18は、本発明に係る船舶の航行支援方法のうち、管理サーバ50側の処理の流れを示す概念図の例である。
ステップS81では、管理サーバ50は、所定のトリガ信号に応答して、頂点情報の識別を開始する。
ステップS82では、管理サーバ50は、データベース等に頂点情報を蓄積する。頂点情報には、頂点番号、船舶番号、緯度経度、速度、方位等が含まれる。
ステップS83では、管理サーバ50は、同一物体に属する頂点の組を抽出し、共通の物体IDを付与する(
図6(A)参照)。
ステップS84では、管理サーバ50は、物体IDを端末30、40に送信する。端末30、40は、受信した物体IDに基づいて、物体IDに相当する物標の輪郭の概要を表示する(
図6(B)参照)。
ステップS85では、一度フローを終了する。ただし、例えば、ユーザ端末30から新しい頂点情報が送付されると、再度、ステップS81から同じ処理を繰り返す。
【0115】
従って、本船舶の航行支援方法では、
管理サーバ50と、物標探知装置10と接続されたユーザ端末30とを、ネットワーク70経由でデータの送受信を行えるように接続し(
図1参照)、
物標の探知結果情報に基づいて抽出した物標の複数の頂点(
図5(C)参照)を、管理サーバ50がユーザ端末30から受信し、
ユーザ端末30が抽出した物標の複数の頂点のうち、一群として移動する頂点を同一の物標に属するものとして管理サーバ50が識別し(
図6(A)参照)、
同一の物標に属するものとして識別した頂点に基づいて、物標の輪郭の概要を表示させるように(
図6(B)参照)ユーザ端末30に対して管理サーバ50が指示を送信する、各ステップを有する。
【0116】
本発明は、管理サーバ50に上記の各ステップを実行させるための、船舶の航行支援プログラムを提供する。このプログラムは、少なくとも、
図18のステップS81-85を実行可能にする。
【0117】
以上、本発明は、船舶と陸上との間をネットワーク経由でデータの送受信を行えるようにするとともに、小型船舶の物標探知装置によって得られた物標画像に対して画像処理を行って、物標の輪郭の概要を鮮明に表示できるようにした船舶の航行支援システム(船舶の航行支援システムにおける管理サーバ、船舶の航行支援方法、及び船舶の航行支援プログラム)を提供する。
例えば、従来のレーダーからは必ずしも鮮明な物標の画像が得られなかった。特に、レーダー画像の特性上、物標の輪郭が不鮮明になることがあった。物標が大型船の影などに入ると、物標を見失う場合もあった。本発明では、レーダー画像に対して画像処理を行って頂点を抽出するため、各頂点により物標の輪郭を鮮明に表示することができる。その際、同一の物標に属する頂点の組を識別し、管理することで、物標の追跡を各頂点に基づいて行うことができる。各頂点の位置座標を蓄積することで、蓄積された情報に基づいて各頂点の将来の動向を推測することも可能になる。
好ましくは、小型船舶上で、スマートフォンやタブレット端末などの安価で簡易な持ち運び可能なユーザ端末を活用した、ネットワークの構築を可能にする。
【0118】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0119】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 船舶の航行支援システム
2、4、6 船舶
10 物標の探知装置(船舶用レーダー)
28 レーダーの指示部
30 ユーザ端末
34、54 画像処理モジュール(画像処理手段)
35、45、55 通信モジュール(通信手段)
40 陸上管理端末
50 管理サーバ
56 頂点情報管理モジュール(頂点情報管理手段)
70、72、74 ネットワーク