IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アクアインテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-夾雑物除去スクリーン装置 図1
  • 特許-夾雑物除去スクリーン装置 図2
  • 特許-夾雑物除去スクリーン装置 図3
  • 特許-夾雑物除去スクリーン装置 図4
  • 特許-夾雑物除去スクリーン装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】夾雑物除去スクリーン装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
E02B5/08 101Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019233948
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102864
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
(72)【発明者】
【氏名】松村 学
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/08
B01D 23/00-35/04
B01D 35/08-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて設けられた複数の固定スクリーン部材と、
前記複数の固定スクリーン部材の間で、上方および下方に繰り返し移動することによって夾雑物を上方に向けて移送する、第1稼働スクリーン部材および第2稼働スクリーン部材と、
前記第1稼働スクリーン部材および前記第2稼働スクリーン部材を上方に移動させる駆動装置とを備え、
前記駆動装置は、前記第1稼働スクリーン部材を複数保持する第1フレームと、前記第2稼働スクリーン部材を複数保持する第2フレームと、該第1フレームおよび該第2フレームそれぞれに駆動力を伝達する駆動軸と、該駆動軸を駆動するアクチュエータとを備え、該第1フレームと該第2フレームを駆動することで複数の前記第1稼働スクリーン部材と複数の前記第2稼働スクリーン部材とをタイミングをずらして上方に移動させるものであることを特徴とする夾雑物除去スクリーン装置。
【請求項2】
前記第1フレームは、幅方向に間隔をあけて配置された左右一対の第1フレーム部と、該第1フレーム部の間に掛け渡されて該第1フレーム部を連結する第1横材とを有するものであり、
複数の前記第1稼働スクリーン部材は、前記第1横材に固定されたものであり、
前記第2フレームは、前記幅方向に間隔をあけて配置された左右一対の第2フレーム部と、該第2フレーム部の間に掛け渡されて該第2フレーム部を連結する第2横材とを有するものであり、
複数の前記第2稼働スクリーン部材は、前記第2横材に固定されたものであることを特徴とする請求項1に記載の夾雑物除去スクリーン装置。
【請求項3】
前記固定スクリーン部材は、前記幅方向に並んで複数配置されたものであり、
前記第1フレームと前記第2フレームは、前記幅方向に隙間をあけて配置されたものであることを特徴とする請求項2に記載の夾雑物除去スクリーン装置。
【請求項4】
受け入れた汚水のうち前記隙間に向かって流れてくる汚水を前記第1稼働スクリーン部材が配置された側と前記第2稼働スクリーン部材が配置された側に分流させる分流部材を備えていることを特徴とする請求項3に記載の夾雑物除去スクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受け入れた汚水の上流側と下流側をつなぐ間隔を有し、該間隔を通過できずに捕捉された夾雑物を上方に向けて移送する夾雑物除去スクリーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理システムでは、一般的に、沈砂池、最初沈殿池、反応タンクおよび最終沈殿池の記載順に、下水からなる汚水が流れて浄化されていく。この中で、例えば、最初沈殿池では、池底部に沈殿した汚泥を含んだ汚水(生汚泥)が、汚泥ポンプ等によって最初沈殿池の外部に移送され、濃縮、脱水されたのち焼却される。ここで、生汚泥には、し渣等の夾雑物が含まれているため、一般的に、濃縮、脱水される前に、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置によって生汚泥から夾雑物が除去される。また、最初沈殿池の水面付近に浮いている夾雑物のスカムを含んだ汚水(スカム水)は、スカムピットに集められ、その後、スカムピットからスカムポンプによって最初沈殿池の外部に移送される。最初沈殿地の外部に移送されたスカム水は、スカム用夾雑物除去スクリーン装置によってスカムが除去されたのち下水処理場内に返水される。これらの夾雑物除去スクリーン装置は、最初沈殿池から生汚泥やスカム水を受け入れた水槽に配置される(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1および特許文献2に記載された夾雑物除去スクリーン装置は、複数の固定スクリーン部材と、これら複数の固定スクリーン部材の間に配置された稼働スクリーン部材とを備えている。固定スクリーン部材は、斜め上方に向かってそれぞれ延在し、最上部が水槽等の水面から突出している。また、固定スクリーン部材は、複数の固定段部が延在方向に並んで設けられた階段状をしている。稼働スクリーン部材も、斜め上方に向かって延在し、複数の稼働段部が延在方向に並んで設けられた階段状をしている。稼働スクリーン部材は、固定スクリーン部材に対して上方および下方に繰り返し移動することによって固定スクリーン部材の最上部に向けて夾雑物を移送するものである。固定スクリーン部材の最上部まで移送された夾雑物は、固定スクリーン部材の下流側に設けられたシュートに向かって落下し、夾雑物除去スクリーン装置の外部に排出される。特許文献1および特許文献2に記載された夾雑物除去スクリーン装置では、固定スクリーン部材と稼働スクリーン部材の間隔を通過できずに捕捉された夾雑物によって、その間隔が埋まって目詰まりしても、稼働スクリーン部材を移動させるとすぐに捕捉された全ての夾雑物が移送され始めるので、目詰まりを素早く解消することができる。従って、例え水槽に大量の汚水或いは大量の夾雑物が流れ込んだ場合であっても、稼働スクリーン部材を移動させることですぐに水槽の水位の上昇を抑えられ、汚水が水槽の外に溢れ出してしまうことを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-114574号公報
【文献】特開2015-017462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された夾雑物除去スクリーン装置では、重い稼働スクリーン部材を上方および下方に繰り返し移動させるため、大量の電力を消費してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、消費電力を抑制した夾雑物除去スクリーン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の夾雑物除去スクリーン装置は、間隔をあけて設けられた複数の固定スクリーン部材と、
前記複数の固定スクリーン部材の間で、上方および下方に繰り返し移動することによって夾雑物を上方に向けて移送する、第1稼働スクリーン部材および第2稼働スクリーン部材と、
前記第1稼働スクリーン部材および前記第2稼働スクリーン部材を上方に移動させる駆動装置とを備え、
前記駆動装置は、複数の前記第1稼働スクリーン部材を保持する第1フレームと、複数の前記第2稼働スクリーン部材を保持する第2フレームと、該第1フレームおよび該第2フレームそれぞれに駆動力を伝達する駆動軸と、該駆動軸を駆動するアクチュエータとを備え、該第1フレームと該第2フレームを駆動することで複数の前記第1稼働スクリーン部材と複数の前記第2稼働スクリーン部材とをタイミングをずらして上方に移動させるものであることを特徴とする。
この夾雑物除去スクリーン装置において、前記第1フレームは、幅方向に間隔をあけて配置された左右一対の第1フレーム部と、該第1フレーム部を連結する第1横材とを有するものであり、
複数の前記第1稼働スクリーン部材は、前記第1横材に固定されたものであり、
前記第2フレームは、前記幅方向に間隔をあけて配置された左右一対の第2フレーム部と、該第2フレーム部を連結する第2横材とを有するものであり、
複数の前記第2稼働スクリーン部材は、前記第2横材に固定されたものであってもよい。
また、間隔をあけて設けられた複数の固定スクリーン部材と、
前記複数の固定スクリーン部材の間で、上方および下方に繰り返し移動することによって夾雑物を上方に向けて移送する、第1稼働スクリーン部材および第2稼働スクリーン部材と、
前記第1稼働スクリーン部材および前記第2稼働スクリーン部材を上方に移動させる駆動装置とを備え、
前記駆動装置は、前記第1稼働スクリーン部材と前記第2稼働スクリーン部材とをタイミングをずらして上方に移動させるものであることを特徴としてもよい
【0008】
本発明の夾雑物除去スクリーン装置によれば、前記駆動装置の駆動における負荷が減少し、少ない電力で夾雑物除去スクリーン装置を駆動できる。
【0009】
ここで、前記駆動装置は、前記第1稼働スクリーン部材を上方に移動させているときに前記第2稼働スクリーン部材を下方に移動させ、該第1稼働スクリーン部材を下方に移動させているときに該第2稼働スクリーン部材を上方に移動させるものであってもよい。また、前記駆動装置は、前記第1稼働スクリーン部材および前記第2スクリーン部材を円軌道で移動させるものであってもよい。
【0010】
また、本発明の夾雑物除去スクリーン装置において、前記駆動装置は、前記第1稼働スクリーン部材を保持する第1フレームと、前記第2稼働スクリーン部材を保持する第2フレームと、該第1フレームおよび該第2フレームそれぞれに駆動力を伝達する駆動軸と、該駆動軸を駆動するアクチュエータとを備えた態様であってもよい。
【0011】
この態様によれば、簡素な構成で前記第1フレームと前記第2フレームに前記アクチュエータの駆動力を伝達し、前記第1スクリーン部材と前記第2稼働スクリーン部材それぞれを移動させることができる。
【0012】
さらに、本発明の夾雑物除去スクリーン装置において、前記固定スクリーン部材は、幅方向に並んで複数配置されたものであり、
前記第1フレームと前記第2フレームは、前記幅方向に隙間をあけて配置されたものであってもよい。
【0013】
こうすることで、前記駆動装置の構成を簡素にすることができる。
【0014】
加えて、本発明の夾雑物除去スクリーン装置において、受け入れた汚水のうち前記隙間に向かって流れてくる汚水を前記第1稼働スクリーン部材が配置された側と前記第2稼働スクリーン部材が配置された側に分流させる分流部材を備えていてもよい。
【0015】
分流部材により、前記隙間に夾雑物が入り込んでこの夾雑物除去スクリーン装置を通り抜けてしまうことを阻止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、消費電力を抑制した夾雑物除去スクリーン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】下水処理場の中の一部の施設を模式的に示す図である。
図2】本実施形態の生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置が設けられた生汚泥用スクリーンユニットの正面図である。
図3図2に示す生汚泥用スクリーンユニットのA-A断面図である。
図4】生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置の正面図である。
図5】第1稼働スクリーン部材と第2稼働スクリーン部材の動作を段階的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、下水処理場の中の一部の施設を模式的に示す図である。
【0020】
この図1には、沈殿池1と、生汚泥用スクリーンユニット2と、スカムピット3と、スカム用スクリーンユニット4が示されている。
【0021】
図1に示す沈殿池1は、長手方向の一端側(図1では左側)から、汚水(下水)を受け入れ、受け入れた汚水に含まれる汚泥を池底部に沈殿させ、他端側(図1では右側)から排水する。以下、図1における左方向を上流と称し、図1における右方向を下流と称する。この沈殿池1の上流側の池底部には、汚泥ピット11が設けられており、下流側の水面付近には排水樋12が設置されている。沈殿池1では、池底部に沈殿した汚泥を、不図示の汚泥掻寄機によって汚泥ピット11に集める。汚泥ピット11に集められた汚泥は、汚泥ポンプ13によって沈殿池1の外部に設置された生汚泥用スクリーンユニット2に送られる。汚泥ピット11に集められた汚泥には、し渣等の夾雑物が含まれている。以下、汚泥ピット11から生汚泥用スクリーンユニット2に送られる、汚泥を含んだ汚水を、生汚泥と称する。生汚泥用スクリーンユニット2には、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6が設けられている。詳しくは後述するように、この生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6によって、生汚泥に含まれている夾雑物が除去される。生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6によって夾雑物が除去された生汚泥は、その後、汚泥濃縮処理設備や汚泥脱水処理設備に送られる。また、沈殿池1では、水面付近に浮いているスカムを、不図示のスカム掻寄機によって排水樋12まで掻き寄せる。排水樋12は、スカムピット3に接続しており、スカムを含んだ汚水(スカム水)は、スカムピット3に集められ、その後、スカムピット3からスカムポンプ31によって沈殿池1の外部に設置されたスカム用スクリーンユニット4に送られる。スカムピット3に集められたスカム水にも、し渣等の夾雑物が含まれている。スカム用スクリーンユニット4にはスカム用夾雑物除去スクリーン装置7が設けられている。このスカム用夾雑物除去スクリーン装置7によって、スカム水に含まれている夾雑物であるスカムが除去される。このスカム用夾雑物除去スクリーン装置7によってスカムが除去された汚水は、下水処理場内に返水される。
【0022】
続いて、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6が設けられた生汚泥用スクリーンユニット2を例にあげて説明するが、スカム用夾雑物除去スクリーン装置7が設けられたスカム用スクリーンユニット4についても同様である。これら生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6およびスカム用夾雑物除去スクリーン装置7は、何れも夾雑物除去スクリーン装置の一例に相当する。
【0023】
図2は、本実施形態の生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置が設けられた生汚泥用スクリーンユニットの正面図である。
【0024】
図2示すように、生汚泥用スクリーンユニット2は、水槽5と、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6とを備えている。図2に示す生汚泥用スクリーンユニット2は、図の左側から生汚泥を受け入れる(図中の太い矢印参照)。以下、図2における左側を上流側と称し、右側を下流側と称する。また、図2において紙面に直交する方向を幅方向と称する。生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6は、詳しくは後述するスクリーン体60を備えている。図2では、スクリーン体60の上流側面のみを太い破線で示している。
【0025】
図2に示す水槽5の上流側の側壁の下半分位には、底部5aに向かうほど下流側に傾斜した傾斜部51が設けられており、下流側の側壁の下半分位には、底部5aに向かうほど上流側に傾斜した傾斜部52が設けられている。したがって、水槽5は、底部5a側が狭くなった形状のものである。この水槽5は、図1に示す汚泥ピット11に集められた汚泥を、生汚泥として受け入れるものである。水槽5の上流側には、流入管53が設けられている。生汚泥は、汚泥ポンプ13を駆動することによって流入管53に供給され、この流入管53の先端部531から水槽5内に流入し、下流側に向けて流れていく(図中の多数の細い矢印参照)。なお、流入管53の先端部531は、上方から見ると下流側に向かうに従って拡がった扇状に形成されている。また、生汚泥に含まれている、し渣等の夾雑物Xは、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6が備えているスクリーン体60に遮られ、スクリーン体60の上流側における水面付近に溜まった状態になっている。
【0026】
生汚泥用スクリーンユニット2には、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6におけるスクリーン体60よりも上流側に非常用オーバーフローユニット54が設けられている。また、スクリーン体60よりも下流側に排水用オーバーフローユニット55が設けられている。非常用オーバーフローユニット54も排水用オーバーフローユニット55も、排水枡541,551と、堰板542,552を有している。これらの排水枡541,551は、いずれも水槽5の幅方向外側に張り出すように設けられている。排水用オーバーフローユニット55の堰板552は、水槽5内と排水枡551内との境界部分に設けられ、水槽5内と排水枡551内は、堰板552よりも上の部分でつながっており、堰板552よりも下の部分ではつながっていない。水槽5の水位が、堰板552の上端の高さ位置を越えると、水槽5内の汚水は、堰板552を越えて、排水枡551内に流れ込む。ここにいう水槽5内の汚水は、スクリーン体60を通過した生汚泥、すなわち、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6によって夾雑物が除去された汚泥を含んだ汚水であり、この汚水は、後処理工程の設備である汚泥濃縮処理設備や汚泥脱水処理設備に送られる。このように、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6に設けられたスクリーン体60を通過した生汚泥は、排水用オーバーフローユニット55によって、生汚泥用スクリーンユニット2の外に排水される。
【0027】
非常用オーバーフローユニット54の構造も、排水用オーバーフローユニット55の構造と同じであるが、非常用オーバーフローユニット54は排水用オーバーフローユニット55よりも高い位置に設けられている。生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6が故障した場合など、水槽5の水位が通常の水位から上昇し、非常用オーバーフローユニット54の堰板542を越えると、非常用オーバーフローユニット54の排水枡541内に流れ込む。ここにいう水槽5内の生汚泥は、スクリーン体60を通過する前の生汚泥、すなわち、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6によって夾雑物が除去される前の汚泥を含んだ汚水であり、この汚水は、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の上流端に返水される。
【0028】
続いて、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6について説明する。生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6は、スクリーン体60と、ベースフレーム64と、駆動装置65とを有する。ベースフレーム64は、水槽5の縁に固定された一対の支持脚69に取り付けられている。なお、図2には一対の支持脚69のうちの一方が示されているが、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6を幅方向に挟んで他方の支持脚69が水槽5の反対側の縁に固定されている。ベースフレーム64と支持脚69は、回転軸69aによって回転可能に連結されており、不図示のボルトにより図2に示した角度で固定されている。
【0029】
スクリーン体60は、下部が水槽5の上流側に位置し、上部が下流側に位置するように、傾斜した姿勢で水槽5内に配置されている。このスクリーン体60の最上部は、非常用オーバーフローユニット54の堰板542よりも上方に位置している。
【0030】
図3は、図2に示す生汚泥用スクリーンユニットのA-A断面図である。また、図4は、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置の正面図である。図4では、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の幅方向端部に装着されたカバー648を図示省略している。
【0031】
図3に示すように、スクリーン体60は、複数の固定スクリーン部材61と、複数の第1稼働スクリーン部材62と、複数の第2稼働スクリーン部材63とから構成されている。なお、図3では、図面を簡略化するために、固定スクリーン部材61、第1稼働スクリーン部材62、および複数の第2稼働スクリーン部材63の一部を省略している。本実施形態では、第1稼働スクリーン部材62の数と第2稼働スクリーン部材63の数は同数である。固定スクリーン部材61、第1稼働スクリーン部材62、および複数の第2稼働スクリーン部材63それぞれは、上方に向かうに従って下流側に位置するように傾斜して配置された長尺状のステンレス製の部材である。ただし、固定スクリーン部材61、第1稼働スクリーン部材62、および複数の第2稼働スクリーン部材63は、生汚泥に対する耐食性と耐久性に優れていれば、他の金属や樹脂などで構成されていてもよく、それぞれ異なる材質で構成されていてもよい。複数の固定スクリーン部材61は、互いに間隔をあけて幅方向中央部分を除いて幅方向全体に並んで配置されている。第1稼働スクリーン部材62は、水槽5の上流側から見て右側半分に幅方向に並んで配置され、第2稼働スクリーン部材63は、水槽5の上流側から見て左側半分に幅方向に並んで配置されている。以下、上流側から見て水槽5の右側を槽右側と称し、水槽5の上流側から見て水槽5の左側を槽左側と称する。複数の第1稼働スクリーン部材62それぞれは、2つの固定スクリーン部材61の間に配置されている。すなわち、固定スクリーン部材61と第1稼働スクリーン部材62とが交互に、槽右側半分のほぼ全体にわたって幅方向に所定間隔W(たとえば、2mm以上6mm以下)をあけて配置されている。同様に、複数の第2稼働スクリーン部材63それぞれは、2つの固定スクリーン部材61の間に配置されている。すなわち、固定スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材63とが交互に、槽左側半分のほぼ全体にわたって幅方向に所定間隔Wをあけて配置されている。所定間隔Wは、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6を通過する生汚泥の流量と装置の大きさのバランスから設定された、上流側と下流側をつなぐ間隔である。生汚泥に含まれている夾雑物のうち、この所定間隔Wを通過できなかった夾雑物は、スクリーン体60の上流側でこの所定間隔Wを塞ぐようにしてスクリーン体60に捕捉される。なお、図3では、固定スクリーン部材61と第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63の幅方向の厚み、固定スクリーン部材61と第1稼働スクリーン部材62の間隔、および固定スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材63の間隔が誇張して示されている。
【0032】
固定スクリーン部材61の上流側には、長手方向に沿って固定段部611が複数設けられている。また、第1稼働スクリーン部材62の上流側には、長手方向に沿って第1稼働段部621が複数設けられ、第2稼働スクリーン部材63の上流側には、長手方向に沿って第2稼働段部631が複数設けられている。ここで、固定スクリーン部材61の長手方向、第1稼働スクリーン部材62の長手方向、および第2稼働スクリーン部材63の長手方向は、後述するように、夾雑物を移送する方向になる。すなわち、固定スクリーン部材61、第1稼働スクリーン部材62、および第2稼働スクリーン部材63は、いずれも夾雑物の移送方向に並んだ階段状のステップが設けられたものである。また、複数の固定スクリーン部材61の最上部には、固定最上段部612それぞれが設けられている。この固定最上段部612は、固定段部611よりも幅広に形成された別部材から構成されている。固定最上段部612は、固定スクリーン部材61と第1稼働スクリーン部材62との間隔または固定スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材63との間隔を所定間隔Wに維持するものである。また、固定最上段部612は、生汚泥(汚水)の水面よりも上方に位置している。
【0033】
ベースフレーム64は、一対の端部ベースプレート641と、一対の中央ベースプレート642と、2本の固定スクリーン用横材643と、駆動軸受644と、従動軸受645と、分流板646と、クロスプレート647(図4参照)と、一対のカバー648とを備えている。一対の端部ベースプレート641は、水槽5の幅方向の両端部それぞれに水槽5の側壁面に沿って水槽5の底部5aから水槽5の上端よりも上方まで延在している。また、一対の中央ベースプレート642は、水槽5の幅方向の中央部分に配置され、水槽5の底部5aから水槽5の上端よりも上方まで延在している。駆動軸受644および従動軸受645は、一対の中央ベースプレート642の間に配置されている。一対の端部ベースプレート641と、一対の中央ベースプレート642は、幅方向から見るとほぼ同一の形状をしている。なお、図3では、内部構造を示すためクロスプレート647は図示省略しているが、クロスプレート647は、槽右側と槽左側それぞれで幅方向に延在して端部ベースプレート641と中央ベースプレート642とを連結した板状の部材である。駆動軸受644および従動軸受645は、水槽5の池幅方向中央部分に配置され、クロスプレート647に固定されている。
【0034】
一対の端部ベースプレート641の間には、2本の固定スクリーン用横材643が掛け渡されている。2本の固定スクリーン用横材643それぞれは、幅方向の両端部が端部ベースプレート641に固定されている。従って、2本の固定スクリーン用横材643は、一対の端部ベースプレート641を連結している。なお、固定スクリーン用横材643は、幅方向の中央部分で分割された構成であってもよい。分割された構成にした場合、分割された一方の固定スクリーン用横材643の両端部を槽右側の端部ベースプレート641および槽右側の中央ベースプレート642に固定し、分割された他方の固定スクリーン用横材643の両端部を槽左側の端部ベースプレート641および槽左側の中央ベースプレート642に固定してもよい。固定スクリーン部材61は、この固定スクリーン用横材643の上流側面に固定されている。従って、固定スクリーン部材61は、水槽5の所定位置に固定されている。
【0035】
分流板646は、水槽5の幅方向中央付近で中央ベースプレート642に固定されている。この分流板646は、分流部材の一例に相当する。分流板646は、下流側部分が一対の中央ベースプレート642それぞれに固定されたステンレス製の板材で構成されている。分流板646の上流側端面は、スクリーン体60よりも上流側で一対の中央ベースプレート642間を覆うように上流側に向かって突出したへの字状に折り曲げられ、分流板646の下流側端は、スクリーン体60に達している。この分流板646は、上流側から分流板646に向かって流れてきた生汚泥を、第1稼働スクリーン部材62が配置された槽右側と、第2稼働スクリーン部材63が配置された層左側に分流させるものである。この分流板646は、一対の中央ベースプレート642の間に、スクリーン体60よりも上流側から生汚泥がし渣等の夾雑物とともに直接流れ込んでしまうことを阻止するものである。分流板646により、幅方向中央付近にある、第1従動偏心カム6541、第2従動偏心カム6542、従動軸受645、並びに後述する第1フレーム651および第2フレーム652に夾雑物が絡みついてしまうことや、中央ベースプレート642の間を夾雑物が通り抜けてしまうことを防止している。
【0036】
一対のカバー648は、一対の端部ベースプレート641よりも外側に配置されて、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の幅方向両端面それぞれを覆っている。カバー648の上流側端面には、水槽5の側壁に向かって突出して底部5aから水槽5の上端まで延在したゴムシール6481が取り付けられている。このゴムシール6481は、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の幅方向端面と水槽5の側壁との隙間から生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の下流に夾雑物がすり抜けてしまうことを防止するためのものである。
【0037】
駆動装置65は、第1フレーム651と、第2フレーム652と、駆動軸653と、従動軸654と、アクチュエータ655とを備えている。第1フレーム651は、槽右側に配置されている。第1フレーム651は、第1右フレーム651Rと、第1左フレーム651Lと、2本の第1稼働スクリーン用横材6511とを備えている。第1右フレーム651Rは、水槽5の槽右側の側壁と槽右側の端部ベースプレート641の間に配置されている。また、第1左フレーム651Lは、一対の中央ベースプレート642の間に配置されている。図4には第1右フレーム651Rが示されている。第1左フレーム651Lは、幅方向に直交する面を基準として第1右フレーム651Rと面対称に構成されている。図4に示すように、第1右フレーム651Rは、幅方向から見て中抜きされた略三角形状をした三角状部分と、その三角状部分から駆動軸653に向かって延びたアーム部分とが一体に結合した板状の部材で構成されている。また図3に示すように、2本の第1稼働スクリーン用横材6511は、第1右フレーム651Rと第1左フレーム651Lの間に掛け渡されている。2本の第1稼働スクリーン用横材6511それぞれは、幅方向の両端部が第1右フレーム651Rと第1左フレーム651Lに固定されている。従って、2本の第1稼働スクリーン用横材6511は、第1右フレーム651Rと第1左フレーム651Lとを連結している。第1稼働スクリーン部材62は、2本の第1稼働スクリーン用横材6511の上流側面に固定されている。
【0038】
第2フレーム652は、槽左側に配置されている。第2フレーム652は、第2右フレーム652Rと、第2左フレーム652Lと、2本の第2稼働スクリーン用横材6521とを備えている。第2左フレーム652Lは、水槽5の槽左側の側壁と槽左側の端部ベースプレート641の間に配置されている。また、第2右フレーム652Rは、一対の中央ベースプレート642の間に配置されている。従って、第1フレーム651と第2フレーム652とは、幅方向に隙間をあけて配置されている。この第2フレーム652は、後述する第2駆動位置652aと第2従動位置652bに関連する部分を除いて第1フレーム651と同一形状をしている。また図3に示すように、2本の第2稼働スクリーン用横材6521は、第2右フレーム652Rと第2左フレーム652Lの間に掛け渡されている。2本の第2稼働スクリーン用横材6521それぞれは、幅方向の両端部が第2右フレーム652Rと第2左フレーム652Lに固定されている。従って、2本の第2稼働スクリーン用横材6521は、第2右フレーム652Rと第2左フレーム652Lとを連結している。第2稼働スクリーン部材63は、2本の第2稼働スクリーン用横材6521の上流側面に固定されている。
【0039】
駆動軸653と従動軸654は、スクリーン体60よりも上流側で、幅方向に延在した軸である。駆動軸653と従動軸654の両端部は、一対の端部ベースプレート641それぞれを貫通している。そして、駆動軸653は、端部ベースプレート641に固定された不図示の軸受と駆動軸受644によってベースフレーム64に回転自在に支持されている。駆動軸653の幅方向両端部近傍であって一対の端部ベースプレート641の内側部分には、駆動軸吊下具6533が取り付けられている。また、従動軸654は、端部ベースプレート641に固定された不図示の軸受と従動軸受645によってベースフレーム64に回転自在に支持されている。この従動軸654の幅方向両端部近傍であって一対の端部ベースプレート641の内側部分には、従動軸吊下具6543が取り付けられている。駆動軸吊下具6533および従動軸吊下具6543は、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6を、メンテナンス等で水槽5から持ち上げる際にフックが取り付けられる部分である。なお、駆動軸653および従動軸654のうち、第1右フレーム651Rと第1左フレーム651Lの間にある部分、および第2右フレーム652Rと第2左フレーム652Lの間にある部分は、不図示の保護パイプで覆われている。駆動軸吊下具6533および従動軸吊下具6543は、その保護パイプと一体に結合している。
【0040】
第1フレーム651および第2フレーム652は、共通のアクチュエータ655によって駆動される。このアクチュエータ655は、モータ6551とギヤボックス6552とを備えている。ギヤボックス6552は、モータ6551で発生した駆動力(回転力)と駆動方向(回転方向)を変換するものである。ギヤボックス6552には駆動軸653が連結されている。モータ6551で発生した駆動力は、ギヤボックス6552を介して駆動軸653に伝達され、駆動軸653を回転させる力として作用する。ただし、出力軸の軸方向が幅方向と一致するようにモータ6551を端部ベースプレート641に固定し、ギヤボックス6552を省略して出力軸と駆動軸653を直接を連結してもよい。この場合、モータ6551のみがアクチュエータの一例に相当する。また、同様に出力軸の軸方向が幅方向と一致するようにモータ6551を端部ベースプレート641に固定し、出力軸と駆動軸653をチェーンなどの駆動方向を変更しない伝動用機械要素により連結してもよい。この場合、モータ6551とその伝動用機械要素がアクチュエータの一例に相当する。
【0041】
第1フレーム651は、駆動軸653に固定された2つの第1駆動偏心カム6531と、従動軸654に固定された2つの第1従動偏心カム6541よって支持されている。第1右フレーム651Rと第1左フレーム651Lそれぞれは、駆動軸653の軸心である駆動軸心653aに対して偏心した第1駆動位置651a(図4参照)で回転自在に第1駆動偏心カム6531に連結されている。具体的には、第1駆動偏心カム6531から幅方向に突出した不図示の軸が、第1右フレーム651Rに形成された不図示の孔に挿入されることで、第1右フレーム651Rと第1駆動偏心カム6531とが連結されている。第1左フレーム651Lも、同様の構成で第1駆動偏心カム6531と連結されている。また、第1右フレーム651Rと第1左フレーム651Lそれぞれは、従動軸654の軸心である従動軸心654aに対して偏心した第1従動位置651b(図4参照)で回転自在に、第1従動偏心カム6541に連結されている。具体的には、第1従動偏心カム6541から幅方向に突出した不図示の軸が、第1右フレーム651Rに形成された不図示の孔に挿入されることで、第1右フレーム651Rと第1従動偏心カム6541とが連結されている。第1左フレーム651Lも、同様の構成で第1従動偏心カム6541と連結されている。ここで、駆動軸心653aと第1駆動位置651aとの相対位置と、従動軸心654aと第1従動位置651bとの相対位置は同一の位置関係にある。
【0042】
アクチュエータ655を駆動させると、駆動軸653から第1駆動偏心カム6531を介して駆動力が第1フレーム651に伝達される。これにより、第1フレーム651は、幅方向から見て、駆動軸心653aと第1駆動位置651aの距離および従動軸心654aと第1従動位置651bの距離を半径とした円軌道で姿勢を維持したまま回動する。このとき、第1稼働スクリーン部材62も、第1フレーム651とともに回動する。
【0043】
第2フレーム652は、駆動軸653に固定された2つの第2駆動偏心カム6532と、従動軸654に固定された2つの第2従動偏心カム6542よって支持されている。第2右フレーム652Rと第2左フレーム652Lそれぞれは、駆動軸心653aに対して偏心した第2駆動位置652a(図4参照)で回転自在に第2駆動偏心カム6532に連結されている。具体的には、第2駆動偏心カム6532から幅方向に突出した不図示の軸が、第2右フレーム652Rに形成された不図示の孔に挿入されることで、第2右フレーム652Rと第2駆動偏心カム6532とが連結されている。第2左フレーム652Lも、同様の構成で第2駆動偏心カム6532と連結されている。この第2駆動位置652aは、上述の第1駆動位置651aに対して、駆動軸心653aを中心にして180度回転させた位置である。また、第2右フレーム652Rと第2左フレーム652Lそれぞれは、従動軸心654aに対して偏心した第2従動位置652b(図4参照)で回転自在に、第2従動偏心カム6542に連結されている。具体的には、第2従動偏心カム6542から幅方向に突出した不図示の軸が、第2右フレーム652Rに形成された不図示の孔に挿入されることで、第2右フレーム652Rと第2従動偏心カム6542とが連結されている。第2左フレーム652Lも、同様の構成で第2従動偏心カム6542と連結されている。ここで、駆動軸心653aと第2駆動位置652aとの相対位置と、従動軸心654aと第2従動位置652bとの相対位置は同一の位置関係にある。
【0044】
アクチュエータ655を駆動させると、駆動軸653から第2駆動偏心カム6532を介して駆動力が第2フレーム652に伝達される。これにより、第2フレーム652は、
幅方向から見て、駆動軸心653aと第2駆動位置652aの距離および従動軸心654aと第2従動位置652bの距離を半径とした円軌道で姿勢を維持したまま回動する。このとき、第2稼働スクリーン部材63も、第2フレーム652とともに回動する。
【0045】
次に、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6における第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63の動作について説明する。
【0046】
図5は、第1稼働スクリーン部材と第2稼働スクリーン部材の動作を段階的に示す図である。この図5では、固定スクリーン部材61、第1稼働スクリーン部材62、および第2稼働スクリーン部材63の形状を簡略化し、固定段部611、第1稼働段部621、および第2稼働段部631の数を減らして示している。また、第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63それぞれの動作が分かりやすいように、上下2段に分けて示している。図5において、上段の(a1)~(a5)と下段の(b1)~(b5)の数字部分の一致は、同じタイミングにおける状態であることを示している。図5の上段には、固定スクリーン部材61と、第1稼働スクリーン部材62と、駆動軸心653aと、第1駆動位置651aが示されている。図5の下段には、固定スクリーン部材61と、第2稼働スクリーン部材63と、駆動軸心653aと、第2駆動位置652aが示されている。なお、図5では、図の左側が上流側になり、図の右側が下流側になる。
【0047】
(a1)および(b1)には、第1稼働スクリーン部材62が第1初期位置にあり、第2稼働スクリーン部材63が第2搬送位置にある様子が示されている。なお、図3は、(a1)および(b1)のときの状態を上流側から見た断面図である。(a1)に示すように、固定スクリーン部材61の下部は底部5aの極近傍に位置しており、初期位置にある第1稼働スクリーン部材62の下部も底部5aの極近傍に位置にしている。そして、幅方向から見ると、固定スクリーン部材61の固定最上段部612を除き、固定スクリーン部材61と第1稼働スクリーン部材62は重なっている。また、(a1)に示す第1稼働スクリーン部材62における下から9段目の第1稼働段部621から隣の固定スクリーン部材61の同じく下から9段目になる固定段部611にかけて夾雑物X1が引っ掛かっている。(a1)に示す第1稼働スクリーン部材62の下から9段目になる第1稼働段部621の高さ位置と、固定スクリーン部材61の同じく下から9段目になる固定段部611の高さ位置は一致している。
【0048】
このとき、(b1)に示すように、第2稼働スクリーン部材63は、固定スクリーン部材61に対してちょうど一段分上方へ移動した状態で、幅方向から見ると、上端部分と下端部分を除き、固定スクリーン部材61に重なっている。また、(b1)に示す第2稼働スクリーン部材63における下から8段目の第2稼働段部631から隣の固定スクリーン部材61の下から9段目になる固定段部611にかけて夾雑物X2が引っ掛かっている。(b1)に示す第2稼働スクリーン部材63の下から8段目になる第2稼働段部631の高さ位置は、固定スクリーン部材61の下から9段目になる固定段部611の高さ位置に一致している。
【0049】
上述したように、図3に示したアクチュエータ655を駆動すると、駆動軸653、第1駆動偏心カム6531、および第2駆動偏心カム6532が回転して第1フレーム651と第2フレーム652が回動する。なお、その回動に従動して、従動軸654、第1従動偏心カム6541、および第2従動偏心カム6542も同様に回転する。第1フレーム651と第2フレーム652が回動することにより、第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63は、固定スクリーン部材61の間で幅方向から見て円軌道で移動する。すなわち、第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63は、固定スクリーン部材61に対して、上流側と下流側への移動を伴いつつ、上方および下方へ繰り返し移動する。
【0050】
(a2)および(b2)には、(a1)および(b1)の状態から駆動軸653が90度回転したときの様子が示されている。(a2)に示すように、駆動軸心653aに対して第1駆動位置651aが回動し、第1稼働スクリーン部材62は、固定スクリーン部材61に対して上方へ移動している。第1稼働スクリーン部材62とともに夾雑物X1も下から9段目の固定段部611に対して上方へ移動している。また、(b2)に示すように、駆動軸心653aに対して第2駆動位置652aが回動し、第2稼働スクリーン部材63は、固定スクリーン部材61に対して下方へ移動している。夾雑物X2は下から9段目の固定段部611に取り残されている。すなわち、駆動装置65は、第1稼働スクリーン部材62を上方に移動させているときに第2稼働スクリーン部材63を下方に移動させている。
【0051】
(a3)および(b3)には、(a2)および(b2)の状態から駆動軸653がさらに90度回転したときの様子が示されている。(a3)に示すように、第1稼働スクリーン部材62は、固定スクリーン部材61に対して下流側へ移動し、固定スクリーン部材61に対してちょうど一段分上方へ移動した状態で、幅方向から見ると、上端部分と下端部分を除き、固定スクリーン部材61に重なった第1搬送位置にある。すなわち、(a3)に示す第1稼働スクリーン部材62の下から9段目になる第1稼働段部621の高さ位置は、固定スクリーン部材61の下から10段目になる固定段部611の高さ位置に一致している。そして、夾雑物X1は、第1稼働スクリーン部材62によって一段持ち上げられて、固定スクリーン部材61の下から10段目になる固定段部611に引っ掛かっている。このように、9段目の第1稼働段部621に引っ掛かった夾雑物X1は、第1稼働スクリーン部材62が移動することで、10段目の固定段部611に移送される。また、(b3)に示すように、第2稼働スクリーン部材63は、固定スクリーン部材61に対して上流側へ移動し、幅方向から見ると、固定スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材63が重なった第2初期位置にある。すなわち、駆動装置65は、第1稼働スクリーン部材62が下流側に移動しているときに第2稼働スクリーン部材63を上流側に移動させている。また、(a1)および(b1)から(a3)および(b3)に示すように、駆動装置65は、第1稼働スクリーン部材62を第1搬送位置に向けて移動させているときに第2稼働スクリーン部材63を第2初期位置に向けて復帰させている。
【0052】
(a4)および(b4)には、(a3)および(b3)の状態から駆動軸653がさらに90度回転したときの様子が示されている。(a4)に示すように、第1稼働スクリーン部材62は、固定スクリーン部材61に対して下方へ移動している。夾雑物X1は、下から10段目の固定段部611に取り残されている。また、(b4)に示すように、第2稼働スクリーン部材63は、固定スクリーン部材61に対して上方へ移動している。第2稼働スクリーン部材63とともに夾雑物X2も下から9段目の固定段部611に対して上方へ移動している。すなわち、駆動装置65は、第1稼働スクリーン部材62を下方に移動させているときに第2稼働スクリーン部材63を上方に移動させている。
【0053】
(a5)および(b5)には、(a4)および(b4)の状態から駆動軸653がさらに90度回転したときの様子が示されている。(a5)に示すように、第1稼働スクリーン部材62は、固定スクリーン部材61に対して上流側へ移動し、幅方向から見ると、固定スクリーン部材61と第1稼働スクリーン部材62は重なっている。すなわち、(a5)に示す第1稼働スクリーン部材62は(a1)と同じ第1初期位置に戻っている。また、(b5)に示すように、第2稼働スクリーン部材63は、固定スクリーン部材61に対して下流側へ移動し、固定スクリーン部材61に対してちょうど一段分上方へ移動した状態で、幅方向から見ると、上端部分と下端部分を除き、固定スクリーン部材61に重なっている。すなわち、(b5)に示す第1稼働スクリーン部材62は(b1)と同じ第2搬送位置に戻っている。また、(a3)および(b3)から(a5)および(b5)に示すように、駆動装置65は、第1稼働スクリーン部材62が第1初期位置に向けて復帰させているときに第2稼働スクリーン部材63を第2搬送位置に向けて移動させている。
【0054】
図5に示す、(a1)から(a5)までの第1稼働スクリーン部材62の1サイクルの駆動、および(b1)から(b5)までの第2稼働スクリーン部材63の1サイクルの駆動は、例えば、1分間に13サイクル程度の速さで、固定スクリーン部材61の固定段部611の段数等に応じた所定の稼働期間中、繰り返し実施される。
【0055】
以上説明したようにして、稼働期間中、夾雑物X1,X2は、スクリーン体60の上流側で、固定段部611を一段一段上方へ移送され、最終的には、最上段部612から下流側の不図示のシュートに向かって滑り落ち、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の外に排出される。
【0056】
この実施形態によれば、第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63を、タイミングをずらして、それぞれ異なるタイミングで上方および下方に移動させる構成にしているので、駆動装置65の駆動における負荷が減少する。その結果、少ない電力で生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6を駆動できる。また、第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63の回転移動が滑らかになるので、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の振動を抑制できる。しかも、この実施形態では、駆動装置65は、第1稼働スクリーン部材62を上方に移動させているときに第2稼働スクリーン部材63を下方に移動させ、第2稼働スクリーン部材63を上方に移動させているときに第1稼働スクリーン部材62を下方に移動させている。これにより、第1稼働スクリーン部材62の重量と第2稼働スクリーン部材63の重量とを相殺させることができ、駆動装置65の駆動における負荷はより減少する。換言すれば、第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63の一方が上方に移動しているときに、他方の重量を駆動装置65の駆動を補助する力として働いているので、駆動装置65の駆動における負荷をさらに減少させることができる。これにより、より少ない電力で生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6を駆動できる。また、第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63の重量による駆動装置65への荷重のバランスがほぼ均一になるので駆動装置65における回転運動が滑らかになり、駆動による振動がより減少する。さらに、第1フレーム651と前記第2フレーム652は、幅方向に隙間をあけて配置され、第1稼働スクリーン部材62の稼働領域と第2稼働スクリーン部材63の稼働領域とが重複していないので、駆動装置65の構成を簡素にすることができる。
【0057】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、上述の実施形態では、生汚泥用スクリーンユニット2に設けられた生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6およびスカム用夾雑物除去スクリーン装置7を例にあげて説明したが、本発明は、下水処理施設に限らず、工業用水や農業用水等の水を処理する施設でも適用することができる。また、上述の実施形態では、水槽5に設置した夾雑物除去スクリーン装置を例にあげて説明したが、夾雑物除去スクリーン装置は、流路を流れる汚水中に設置するものであってもよい。さらに、駆動装置65は、第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63を幅方向から見て円軌道で移動させる例で説明したが、リンク機構等を用いて矩形移動などの多角形移動をするように構成してもよい。またさらに、本実施形態では、稼働スクリーン部材を、第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63の2つに分けて上方へ移動させるタイミングをずらして駆動したが、3つ以上に分けて上方へ移動させるタイミングを各々ずらして駆動してもよい。すなわち、複数の稼働スクリーン部材のうちの少なくとも1つの稼働スクリーン部材の上方への移動タイミングを他の稼働スクリーン部材の上方への移動タイミングと異ならせれば、稼働スクリーン部材が全て同一のタイミングで上下方向に移動する場合と比較して駆動負荷を減少させることができる。ただし、各稼働スクリーン部材を上方へ移動させるタイミングは、各駆動スクリーン部材と駆動スクリーン部材を駆動するフレームの総重量を考慮して駆動装置65の駆動負荷が1サイクルの中で均一になるように設定すれば、消費電力削減効果および振動抑制効果がより高まるため望ましい。加えて、本実施形態では、第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63を、槽右側と槽左側に分けて配置したが、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の上方と下方に分けて配置してもよい。また、固定スクリーン部材61、第1稼働スクリーン部材62、第2稼働スクリーン部材63の並び順はどのようなものであってもよく、例えば第1稼働スクリーン部材62、固定スクリーン部材61、第2稼働スクリーン部材63、固定スクリーン部材61の順に幅方向に並んだ組を複数配置してもよい。さらに、本実施形態では、駆動装置65は、第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63を上方および下方へ移動させるものであったが、下方へは第1稼働スクリーン部材62と第2稼働スクリーン部材63などの自重で移動させ、駆動装置65は上方へのみ移動させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
2 生汚泥用スクリーンユニット
4 スカム用スクリーンユニット
5 水槽
6 生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置
7 スカム用夾雑物除去スクリーン装置
61 固定スクリーン部材
62 第1稼働スクリーン部材
63 第2稼働スクリーン部材63
65 駆動装置
図1
図2
図3
図4
図5