IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニューファーマ, インコーポレイテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】がんを処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/585 20060101AFI20231024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
A61K31/585 ZMD
A61P35/00
A61P35/04
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020551792
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 US2018065812
(87)【国際公開番号】W WO2019118907
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】62/599,643
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514048154
【氏名又は名称】ニューファーマ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャン, シャンピン
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/085641(WO,A1)
【文献】Steroids,2016年,Vol.108,p.56-60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体のがんを処置するための組成物であって、前記個体がヒトであり、前記組成物が化合物5


またはその薬学的に許容される塩を含み、
前記組成物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与されることを特徴とし、かつ0.1mg/m ~1.2mg/m の用量で投与されることを特徴とする、
組成物。
【請求項2】
前記組成物が、少なくとも週2回投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、少なくとも週3回投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、1週間の間で少なくとも3日間連続で投与されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、1週間の間で2日毎に1回投与されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、週3回投与されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、各週の1日目、2日目および3日目に投与されることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、各週の1日目、3日目および5日目に投与されることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、少なくとも2週間、毎日投与されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、少なくとも週1回、少なくとも3週間投与されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、21日の投薬サイクルで、少なくとも週1回、2週間投与され、1週間休薬されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、28日の投薬サイクルで、少なくとも週1回、3週間投与され、1週間休薬されることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記個体に投与される前記化合物の総用量が、1週間当たり少なくとも約0.4mg/mであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、および口腔がんからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記がんが、結腸直腸がん、乳がん、肝臓がん、胃がん、および非小細胞肺がんからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記がんが、局所進行性または転移性がんである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、静脈内投与されることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、各投与時に少なくとも30分間の注入によって投与されることを特徴とする、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、各投与時に少なくとも2時間の注入によって投与されることを特徴とする、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、各投与時に少なくとも24時間の注入によって連続的に投与されることを特徴とする、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記個体が、高レベルのPI3Kおよび/またはpAKTを有している、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記個体が、過去に全身治療を少なくとも1回受けたことがあるか、または失敗したことがある、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記化合物が、約0.002mg/mL~約0.01mg/mLの濃度で投与されることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記化合物が、前記化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に存在する、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記薬学的に許容される担体が、酢酸塩または酢酸を含む、請求項24に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月15日出願の米国特許仮出願第62/599,643号の優先権の利益を主張する。その出願の内容全体は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ブファリン(bufalin)誘導体化合物を投与することによってがんを処置するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
がん処置のための初期検出および多様な様式の治療が著しく進歩しているにもかかわらず、進行性がんを有する患者の処置については、まだ満たされていない医学的必要性が存在する。
【0004】
伝統的な漢方薬Huachansu(chansuの注射可能な形態)は、中国で、肝臓、肺、膵臓および結腸直腸がんを含む様々ながんの処置に使用されている。その抗がん活性は、3つの主なステロイド系強心配糖体であるブファリン、レジブフォゲニンおよびシノブファギンに起因する。ブファリンを試験すると、がん細胞系および動物モデルにおいて強力な活性があることが実証された。国際公開第2011/085641号は、がん処置に特に有効であることが示された様々なブファリン誘導体を開示している。これらの化合物は、がん患者にとって有効な治療選択肢を提供する潜在な可能性が非常に高いことが見出されている。
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、特許出願、および公開特許出願の開示は、それらの全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2011/085641号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、個体のがんを処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される塩[式中、Zは、-ORまたは-NRであり、Rは、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、Rは、水素、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、Rは、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであるか、またはRおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルを形成する]を投与するステップを含み、化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法を提供する。
【0007】
一部の実施形態では、化合物は、例えば、少なくとも週3回を含む少なくとも週2回投与される。一部の実施形態では、化合物は、週3回投与される。
【0008】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、化合物は、例えば、各週の1日目、2日目および3日目を含む、1週間の間で少なくとも3日間連続で投与される。一部の実施形態では、化合物は、例えば、各週の1日目、3日目および5日目を含む、1週間の間で2日毎に1回投与される。一部の実施形態では、化合物は、少なくとも2週間、毎日投与される。
【0009】
一部の実施形態では、化合物は、例えば21日の投薬サイクルで、2週間にわたり少なくとも週1回、1週間休薬を含む、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される。
【0010】
一部の実施形態では、化合物は、例えば28日の投薬サイクルで、3週間にわたり少なくとも週1回、1週間休薬を含む、少なくとも週1回、少なくとも3週間投与される。
【0011】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、化合物は、約0.01mg/m~約2mg/mの投薬量範囲で投与される。
【0012】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、化合物は、約0.2mg/m~約2mg/mの投薬量範囲で投与される。
【0013】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、個体に投与される化合物の総用量は、1週間当たり少なくとも約0.4mg/mである。
【0014】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、がんは、結腸直腸がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、および口腔がんからなる群から選択される。一部の実施形態では、がんは、転移性がんである。
【0015】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、化合物は、例えば、各投与時に少なくとも2時間の注入または各投与時に少なくとも24時間の連続注入を含む、静脈内投与される。
【0016】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、個体は、PI3Kおよび/またはpAKTを発現している(例えば、高度に発現している)。
【0017】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、個体は、過去に治療(例えば、全身治療)を少なくとも1回受けたことがあるか、または失敗したことがある。
【0018】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、化合物は、約0.002mg/mL~約0.01mg/mLの濃度で投与される。
【0019】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、化合物は、化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に存在する。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、酢酸塩または酢酸を含む。
【0020】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、個体は、ヒトである。
【0021】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、化合物は、Zが、-ORまたは-NRである式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩である。一部の実施形態では、Zは、-ORであり、Rは、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、または必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルである。一部の実施形態では、Zは、-NRであり、Rは、水素、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、もしくは必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルであり、Rは、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、もしくは必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルであるか、またはRおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、4~8員のヘテロシクロアルキルを形成する。一態様では、Rは、水素であり、Rは、必要に応じて置換されているアルキルである。
【0022】
前述の任意の方法による一部の実施形態では、化合物は、化合物番号1~7、またはその薬学的に許容される塩から選択される。
【化2】
【0023】
本明細書に記載される方法は、以下の目的の任意の1つまたは複数のために使用することができる。がんの1つまたは複数の症状の軽減、がんの進行の遅延、がん患者における腫瘍サイズの縮小、がんの成長の阻害、全生存期間の延長、無病生存の延長、腫瘍進行までの時間の延長、転移の防止または遅延、既存の転移の低減(例えば根絶)、既存の転移の発生または負荷の低減、およびがん再発の防止。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、がん処置に特に有効な特別な投薬レジメンに基づく、がんを処置する方法を提供する。方法は、式Iの化合物
【化3】
またはその薬学的に許容される塩[式中、
Zは、-ORまたは-NRであり、
は、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、Rは、水素、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、Rは、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであるか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルを形成する]
を投与するステップを含む。
【0025】
投薬レジメンは、一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、少なくとも週1回、少なくとも2週間または少なくとも3週間投与するステップを含む。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、1週間の間で少なくとも3日間(例えば、少なくとも2週間または少なくとも3週間)投与される。理論に拘泥するものではないが、投薬頻度を増大することは(例えば、化合物を、1週間の間で少なくとも3日間、毎日投与することによって)、がん処置に非常に有効であると考えられる。方法は、例えば肝臓がん、結腸直腸がん、および肺がんを含む固形腫瘍などのがんを処置するのに特に適している。
【0026】
したがって本発明は、本発明の投薬レジメンに従うことによってがんを処置する様々な方法を提供する。また、本明細書に記載される方法に有用な組成物(例えば、医薬組成物)、キット、および単位投薬量が提供される。
定義
【0027】
本明細書で使用される場合、化学式に任意の可変要素が1回より多く出現する場合、その定義は、出現する毎に、他のすべての出現におけるその定義とは独立である。
【0028】
本明細書で使用される場合、2つの文字または記号の間にないダッシュ(「-」)は、置換基の結合点を示すために使用される。例えば、-CONHは、炭素原子を介して結合する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「必要に応じた」または「必要に応じて」は、その後に記載される事象または状況が、生じても生じなくてもよいこと、およびその記載が、事象または状況が生じる場合と、生じない場合とを含むことを意味する。例えば、「必要に応じて置換されているアルキル」は、以下に定義される通りの「アルキル」および「置換アルキル」の両方を包含する。1つまたは複数の置換基を含有する任意の基に関して、このような基は、立体的に不可能な、合成的に実現不可能な、および/または本来的に不安定な任意の置換または置換パターンを導入することを企図されないことが、当業者には理解されよう。
【0030】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、指示数の炭素原子、通常1~20個の炭素原子、例えば1~8個の炭素原子、例えば1~6個の炭素原子を有する、直鎖および分岐鎖を指す。例えば、C~Cアルキルは、1~6個の炭素原子の直鎖および分岐鎖アルキルの両方を包含する。具体的な数の炭素を有するアルキル残基が命名される場合、その数の炭素を有するすべての分岐鎖および直鎖のものが包含されることが企図される。したがって、例えば、「ブチル」は、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチルおよびt-ブチルを含むことを意味し、「プロピル」は、n-プロピルおよびイソプロピルを含む。「低級アルキル」は、1~6個の炭素を有するアルキル基を指す。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、3-メチルペンチル等が挙げられる。アルキレンは、2つの結合点を有すること以外はアルキルと同じ残基を指す、アルキルのサブセットである。アルキレン基は、通常2~20個の炭素原子、例えば2~8個の炭素原子、例えば2~6個の炭素原子を有する。例えば、Cアルキレンは、共有結合を示し、Cアルキレンは、メチレン基である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」は、親アルキルの隣接する炭素原子から1分子の水素を除去することによって誘導された少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、不飽和の分岐鎖または直鎖アルキル基を指す。この基は、二重結合(単数または複数)の周りでシスまたはトランス立体配置のいずれかであり得る。典型的なアルケニル基には、これに限定されるものではないが、エテニル;プロペニル、例えばプロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、プロパ-2-エン-1-イル(アリル)、プロパ-2-エン-2-イル;ブテニル、例えばブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ-1-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル等が含まれる。ある特定の実施形態では、アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有し、他の実施形態では2~6個の炭素原子を有する。「低級アルケニル」は、2~6個の炭素を有するアルケニル基を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」は、親アルキルの隣接する炭素原子から2分子の水素を除去することによって誘導された少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する、不飽和の分岐鎖または直鎖アルキル基を指す。典型的なアルキニル基には、これに限定されるものではないが、エチニル;プロピニル、例えばプロパ-1-イン-1-イル、プロパ-2-イン-1-イル;ブチニル、例えばブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-3-イル、ブタ-3-イン-1-イル等が含まれる。ある特定の実施形態では、アルキニル基は、2~20個の炭素原子を有し、他の実施形態では3~6個の炭素原子を有する。「低級アルキニル」は、2~6個の炭素を有するアルキニル基を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」は、通常3~7個の環炭素原子を有する非芳香族炭素環式環を指す。環は、飽和していてもよく、または1つもしくは複数の炭素-炭素二重結合を有してもよい。シクロアルキル基の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、およびシクロヘキセニル、ならびに架橋およびかご形環基、例えばノルボルナンが挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、酸素架橋を介して結合している指示数の炭素原子のアルキル基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、2-ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、2-ヘキシルオキシ、3-ヘキシルオキシ、3-メチルペンチルオキシ等を指す。アルコキシ基は、通常、酸素架橋を介して結合している1~7個の炭素原子を有する。「低級アルコキシ」は、1~6個の炭素を有するアルコキシ基を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「アシル」は、H-C(O)-、(アルキル)-C(O)-、(シクロアルキル)-C(O)-、(アリール)-C(O)-、(ヘテロアリール)-C(O)-、および(ヘテロシクロアルキル)-C(O)-基を指し、ここで基は、カルボニル官能基を介して親構造に結合しており、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクロアルキルは、本明細書に記載される通りである。アシル基は、指示数の炭素原子を有し、その数の炭素原子には、ケト基の炭素が含まれる。例えば、Cアシル基は、式CH(C=O)-を有するアセチル基である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「ホルミル」は、-C(O)H基を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「アルコキシカルボニル」は、カルボニル炭素を介して結合している式(アルコキシ)(C=O)-の基を指し、ここでアルコキシ基は、指示数の炭素原子を有する。したがって、C~Cアルコキシカルボニル基は、その酸素を介してカルボニルリンカーに結合している、1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「アジド」は、-N基を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「アミノ」は、-NH基を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「モノおよびジ(アルキル)アミノ」は、第二級および第三級アルキルアミノ基を指し、ここでアルキル基は、先に定義される通りであり、指示数の炭素原子を有する。アルキルアミノ基の結合点は、窒素上にある。モノおよびジアルキルアミノ基の例として、エチルアミノ、ジメチルアミノ、およびメチル-プロピル-アミノが挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「アミノカルボニル」は、-CONR基を指し、ここで、
は、H、必要に応じて置換されているC~Cアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、必要に応じて置換されているヘテロアリール、もしくは必要に応じて置換されているアルコキシであり、
は、水素もしくは必要に応じて置換されているC~Cアルキルであるか、または
およびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、必要に応じて置換されている4~8員の窒素含有ヘテロシクロアルキルを形成し、これは必要に応じて、ヘテロシクロアルキル環中にO、N、およびSから選択される1個または2個の追加のヘテロ原子を含み、
置換されている各基は、独立にC~Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C~Cアルキル-、ヘテロアリール-C~Cアルキル-、C~Cハロアルキル、-OC~Cアルキル、-OC~Cアルキルフェニル、-C~Cアルキル-OH、-OC~Cハロアルキル、ハロ、-OH、-NH、-C~Cアルキル-NH、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキルフェニル)、-NH(C~Cアルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールのための置換基として)、-COH、-C(O)OC~Cアルキル、-CON(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-CONH(C~Cアルキル)、-CONH、-NHC(O)(C~Cアルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C~Cアルキル、-C(O)C~Cアルキルフェニル、-C(O)C~Cハロアルキル、-OC(O)C~Cアルキル、-SO(C~Cアルキル)、-SO(フェニル)、-SO(C~Cハロアルキル)、-SONH、-SONH(C~Cアルキル)、-SONH(フェニル)、-NHSO(C~Cアルキル)、-NHSO(フェニル)、または-NHSO(C~Cハロアルキル)である1つまたは複数の置換基で独立に置換されている。
【0042】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、6員の炭素環式芳香環、例えばベンゼン;少なくとも1つの環が炭素環式かつ芳香族である二環式環系、例えばナフタレン、インダンおよびテトラリン;ならびに少なくとも1つの環が炭素環式かつ芳香族である三環式環系、例えばフルオレンを指す。
【0043】
例えば、アリールは、N、O、およびSから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含有する4~8員のヘテロシクロアルキル環に縮合した6員の炭素環式芳香環を含む。環の1個だけが炭素環式芳香族である、このような縮合した二環式環系では、結合点は、炭素環式芳香環またはヘテロシクロアルキル環に存在し得る。置換ベンゼン誘導体から形成され、環原子に自由価数を有する二価のラジカルは、置換フェニレンラジカルと命名される。自由原子価を有する炭素原子から1個の水素原子を除去することによって、名称が「-イル」で終わる一価の多環式炭化水素ラジカルから誘導された二価のラジカルは、対応する一価のラジカルの名称に「-イデン」を加えることによって命名され、例えば、2つの結合点を有するナフチル基は、ナフチリデンと呼ばれる。しかし、アリールは、以下に別個に定義されるヘテロアリールを、いかなる方式でも包含せず、またはそれと重複しない。したがって、1つまたは複数の炭素環式芳香環がヘテロアリール環と縮合する場合、得られる環系は、本明細書で定義される通り、アリールではなく、ヘテロアリールである。
【0044】
本明細書で使用される場合、「アリールオキシ」は、-O-アリール基を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「アラルキル」は、-アルキル-アリール基を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「カルバミミドイル」は、-C(=NH)-NH2基を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「置換カルバミミドイル」は、-C(=NR)-NR基を指し、ここで、
は、水素、シアノ、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、必要に応じて置換されているヘテロアリール、または必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルであり、
およびRは、独立に、水素 必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、必要に応じて置換されているヘテロアリール、または必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルであり、
ただし、R、R、およびRの少なくとも1つは、水素ではなく、置換アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロアリールは、それぞれ、1つまたは複数(例えば5個まで、例えば3個まで)の水素原子が、独立に-R、-OR、必要に応じて置換されているアミノ(-NRCOR、-NRCO、-NRCONR、-NRC(NR)NR、-NRC(NCN)NR、および-NRSOを含む)、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロアリールのための置換基として)、必要に応じて置換されているアシル(例えば、-COR)、必要に応じて置換されているアルコキシカルボニル(例えば、-CO)、アミノカルボニル(例えば、-CONR)、-OCOR、-OCO、-OCONR、-OP(O)(OR)OR、スルファニル(例えば、SR)、スルフィニル(例えば、-SOR)、またはスルホニル(例えば、-SOおよび-SONR)である置換基によって置き換えられている、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロアリールを指し、
は、必要に応じて置換されているC1~C6アルキル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、
は、H、必要に応じて置換されているC1~C6アルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、
は、水素もしくは必要に応じて置換されているC1~C4アルキルであるか、または
およびR、ならびにそれらが結合している窒素は、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル基を形成し、
必要に応じて置換されている各基は、非置換であるか、または独立にC~Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C~Cアルキル-、ヘテロアリール-C~Cアルキル-、C~Cハロアルキル、-OC~Cアルキル、-OC~Cアルキルフェニル、-C~Cアルキル-OH、-OC~Cハロアルキル、ハロ、-OH、-NH、-C~Cアルキル-NH、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキルフェニル)、-NH(C~Cアルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、もしくはヘテロアリールのための置換基として)、-COH、-C(O)OC~Cアルキル、-CON(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-CONH(C~Cアルキル)、-CONH、-NHC(O)(C~Cアルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C~Cアルキル、-C(O)C~Cフェニル、-C(O)C~Cハロアルキル、-OC(O)C~Cアルキル、-SO2(C~Cアルキル)、-SO(フェニル)、-SO(C~Cハロアルキル)、-SONH、-SONH(C~Cアルキル)、-SONH(フェニル)、-NHSO(C~Cアルキル)、-NHSO(フェニル)、または-NHSO(C~Cハロアルキル)である1つまたは複数の、例えば1つ、2つ、または3つの置換基で独立に置換されている。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを指し、用語「ハロゲン」には、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が含まれる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」は、1つまたは複数のハロゲン原子で、最大可能数までのハロゲン原子で置換されている、特定数の炭素原子を有する、先に定義される通りのアルキルを指す。ハロアルキルの例として、これに限定されるものではないが、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2-フルオロエチル、およびペンタ-フルオロエチルが挙げられる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、以下を指す。
N、O、およびSから選択される1つまたは複数の、例えば1~4個の、またはある特定の実施形態では1~3個のヘテロ原子を含有しており、残りの環原子が炭素である、5~7員の芳香族単環式環、
N、O、およびSから選択される1つまたは複数の、例えば1~4個の、またはある特定の実施形態では1~3個のヘテロ原子を含有しており、残りの環原子が炭素であり、少なくとも1つのヘテロ原子が芳香環に存在する、二環式環、ならびに
N、O、およびSから選択される1つまたは複数の、例えば1~5個の、またはある特定の実施形態では1~4個のヘテロ原子を含有しており、残りの環原子が炭素であり、少なくとも1つのヘテロ原子が芳香環に存在する、三環式環。
【0051】
例えば、ヘテロアリールには、4~8員のシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル環に縮合した5~7員のヘテロシクロアルキル芳香環が含まれる。環の1個だけが1つまたは複数のヘテロ原子を含有している、このような縮合した二環式ヘテロアリール環系では、結合点は、いずれの環に存在してもよい。ヘテロアリール基中のSおよびO原子の総数が1を超える場合、それらのヘテロ原子は、互いに隣接していない。ある特定の実施形態では、ヘテロアリール基中のSおよびO原子の総数は、2以下である。ある特定の実施形態では、芳香族複素環中のSおよびO原子の総数は、1以下である。ヘテロアリール基の例として、これに限定されるものではないが、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピラゾリニル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、チエニル、ベンゾチオフェニル、フラニル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、ピリダジニル、トリアゾリル、キノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、および5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリニルが挙げられる。自由原子価を有する原子から1個の水素原子を除去することによって、名称が「-イル」で終わる一価のヘテロアリールラジカルから誘導された二価のラジカルは、対応する一価のラジカルの名称に「-イデン」を加えることによって命名され、例えば、2つの結合点を有するピリジル基は、ピリジリデンである。ヘテロアリールは、本明細書で定義される通りのアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルを包含せず、またはそれらと重複しない。
【0052】
置換ヘテロアリールには、1つまたは複数のオキシド(-O)置換基で置換されている環系、例えばピリジニルN-オキシドも含まれる。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」は、酸素、硫黄および窒素、ならびに先のヘテロ原子の少なくとも1つを含む組合せから独立に選択される1~3個のヘテロ原子に加えて、少なくとも2個の炭素原子を含有する、通常3~8個の環原子を有する単一非芳香環を指す。環は、飽和していてもよく、または1つもしくは複数の炭素-炭素二重結合を有していてもよい。適切なヘテロシクロアルキル基として、これに限定されるものではないが、例えば、ピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、アゼチジニル、ジアゼパニル、ジアゾカニル、ピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ジヒドロフラニル、およびテトラヒドロフラニルが挙げられる。置換ヘテロシクロアルキルには、1つまたは複数のオキソ(=O)またはオキシド(-O)置換基で置換されている環系、例えばピペリジニルN-オキシド、モルホリニル-N-オキシド、1-オキソ-1-チオモルホリニルおよび1,1-ジオキソ-1-チオモルホリニルも含まれ得る。
【0054】
「ヘテロシクロアルキル」には、通常3~7個の環原子を有する一方の非芳香環が、酸素、硫黄および窒素、ならびに先のヘテロ原子の少なくとも1つを含む組合せから独立に選択される1~3個のヘテロ原子に加えて、少なくとも2個の炭素原子を含有し、通常3~7個の環原子を有する他方の環が、必要に応じて、酸素、硫黄および窒素から独立に選択される1~3個のヘテロ原子(heteratoms)を含有し、芳香族ではない、二環式環系も含まれる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「スルファニル」は、-S-(必要に応じて置換されている(C~C)アルキル)、-S-(必要に応じて置換されているシクロアルキル)、-S-(必要に応じて置換されているアリール)、-S-(必要に応じて置換されているヘテロアリール)、および-S-(必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル)基を指す。したがって、スルファニルには、C~Cアルキルスルファニル基が含まれる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「スルフィニル」は、-S(O)-(必要に応じて置換されている(C~C)アルキル)、-S(O)-(必要に応じて置換されているシクロアルキル)、-S(O)-(必要に応じて置換されているアリール)、-S(O)-必要に応じて置換されているヘテロアリール)、-S(O)-(必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル)、および-S(O)-(必要に応じて置換されているアミノ)基を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「スルホニル」は、-S(O)-(必要に応じて置換されている(C~C)アルキル)、-S(O)-(必要に応じて置換されているシクロアルキル)、-S(O)-(必要に応じて置換されているアリール)、-S(O)-(必要に応じて置換されているヘテロアリール)、-S(O)-(必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル)、および-S(O)-(必要に応じて置換されているアミノ)基を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「置換されている」は、指定の原子の通常の原子価を超えないという条件で、指定の原子または基上の任意の1つまたは複数の水素が、指示された基から選択されるもので置き換えられることを指す。置換基がオキソ(すなわち=O)である場合、原子上の2個の水素が置き換えられる。置換基および/または可変要素の組合せは、このような組合せが安定な化合物または有用な合成中間体をもたらす場合にだけ許容できる。安定な化合物または安定な構造とは、反応混合物からの単離、および少なくとも実用的な有用性を有する薬剤としてのその後の製剤化を切り抜けるのに十分に強固な化合物を暗示することを意味する。別段特定されない限り、置換基は、コア構造に入れて命名される。例えば、可能な置換基として(シクロアルキル)アルキルが列挙される場合、コア構造とのこの置換基の結合点は、アルキル部分内にあると理解されたい。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「置換されている」アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロアリールは、別段明確に定義されない限り、それぞれ、1つまたは複数(例えば5個まで、例えば3個まで)の水素原子が、独立に-R、-OR、必要に応じて置換されているアミノ(-NRCOR、-NRCO、-NRCONR、-NRC(NR)NR、-NRC(NCN)NR、および-NRSOを含む)、ハロ、シアノ、アジド、ニトロ、オキソ(シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルのための置換基として)、必要に応じて置換されているアシル(例えば、-COR)、必要に応じて置換されているアルコキシカルボニル(例えば、-CO)、アミノカルボニル(例えば、-CONR)、-OCOR、-OCO、-OCONR、-OP(O)(OR)OR、スルファニル(例えば、SR)、スルフィニル(例えば、-SOR)、またはスルホニル(例えば、-SOおよび-SONR)である置換基によって置き換えられている、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロアリールを指し、
は、必要に応じて置換されているC~Cアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアルケニル、必要に応じて置換されているアルキニル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、Rは、水素、必要に応じて置換されているC~Cアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、
は、水素もしくは必要に応じて置換されているC~Cアルキルであるか、または
およびR、ならびにそれらが結合している窒素は、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル基を形成し、
必要に応じて置換されている各基は、非置換であるか、または独立にC~Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C~Cアルキル-、ヘテロアリール-C~Cアルキル-、C~Cハロアルキル、-OC~Cアルキル、-OC~Cアルキルフェニル、-C~Cアルキル-OH、-OC~Cハロアルキル、ハロ、-OH、-NH、-C~Cアルキル-NH、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキルフェニル)、-NH(C~Cアルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルのための置換基として)、-COH、-C(O)OC~Cアルキル、-CON(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-CONH(C~Cアルキル)、-CONH、-NHC(O)(C~Cアルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C~Cアルキル、-C(O)C~Cアルキルフェニル、-C(O)C~Cハロアルキル、-OC(O)C~Cアルキル、-SO(C~Cアルキル)、-SO(フェニル)、-SO(C~Cハロアルキル)、-SONH、-SONH(C~Cアルキル)、-SONH(フェニル)、-NHSO(C~Cアルキル)、-NHSO(フェニル)、または-NHSO(C~Cハロアルキル)である1つもしくは複数の、例えば1つ、2つ、もしくは3つの置換基で独立に置換されている。
【0060】
本明細書で使用される場合、「置換アシル」は、(置換アルキル)-C(O)-、(置換シクロアルキル)-C(O)-、(置換アリール)-C(O)-、(置換ヘテロアリール)-C(O)-、および(置換ヘテロシクロアルキル)-C(O)-基を指し、ここで基は、カルボニル官能基を介して親構造に結合しており、置換アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクロアルキルは、それぞれ、1つまたは複数(例えば5個まで、例えば3個まで)の水素原子が、独立に-R、-OR、必要に応じて置換されているアミノ(-NRCOR、-NRCO、-NRCONR、-NRC(NR)NR、-NRC(NCN)NR、および-NRSOを含む)、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルのための置換基として)、必要に応じて置換されているアシル(例えば、-COR)、必要に応じて置換されているアルコキシカルボニル(例えば、-CO)、アミノカルボニル(例えば、-CONR)、-OCOR、-OCO、-OCONR、-OP(O)(OR)OR、スルファニル(例えば、SR)、スルフィニル(例えば、-SOR)、またはスルホニル(例えば、-SOおよび-SONR)である置換基によって置き換えられている、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクロアルキルを指し、
は、必要に応じて置換されているC~Cアルキル、必要に応じて置換されているアルケニル、必要に応じて置換されているアルキニル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、
は、H、必要に応じて置換されているC~Cアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、
は、水素もしくは必要に応じて置換されているC~Cアルキルであるか、または
およびR、ならびにそれらが結合している窒素は、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル基を形成し、
必要に応じて置換されている各基は、非置換であるか、または独立にC~Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C~Cアルキル-、ヘテロアリール-C~Cアルキル-、C~Cハロアルキル、-OC~Cアルキル、-OC~Cアルキルフェニル、-C~Cアルキル-OH、-OC~Cハロアルキル、ハロ、-OH、-NH、-C~Cアルキル-NH、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキルフェニル)、-NH(C~Cアルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルのための置換基として)、-COH、-C(O)OC~Cアルキル、-CON(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-CONH(C~Cアルキル)、-CONH、-NHC(O)(C~Cアルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C~Cアルキル、-C(O)C~Cアルキルフェニル、-C(O)C~Cハロアルキル、-OC(O)C~Cアルキル、-SO(C~Cアルキル)、-SO(フェニル)、-SO(C~Cハロアルキル)、-SONH、-SONH(C~Cアルキル)、-SONH(フェニル)、-NHSO(C~Cアルキル)、-NHSO(フェニル)、または-NHSO(C~Cハロアルキル)である1つもしくは複数の、例えば1つ、2つ、もしくは3つの置換基で独立に置換されている。
【0061】
本明細書で使用される場合、「置換アルコキシ」は、アルキル成分が置換されているアルコキシ(すなわち-O-(置換アルキル))を指し、ここで「置換アルキル」は、1つまたは複数(例えば5個まで、例えば3個まで)の水素原子が、-R、-OR、必要に応じて置換されているアミノ(-NRCOR、-NRCO、-NRCONR、-NRC(NR)NR、-NRC(NCN)NR、および-NRSOを含む)、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルのための置換基として)、必要に応じて置換されているアシル(例えば、-COR)、必要に応じて置換されているアルコキシカルボニル(例えば、-CO)、アミノカルボニル(例えば、-CONR)、-OCOR、-OCO、-OCONR、-OP(O)(OR)OR、スルファニル(例えば、SR)、スルフィニル(例えば、-SOR)、およびスルホニル(例えば、-SOおよび-SONR)から独立に選択される置換基によって置き換えられている、アルキルを指し、
は、必要に応じて置換されているC~Cアルキル、必要に応じて置換されているアルケニル、必要に応じて置換されているアルキニル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、
は、H、必要に応じて置換されているC~Cアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、
は、水素もしくは必要に応じて置換されているC~Cアルキルであるか、または
およびR、ならびにそれらが結合している窒素は、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル基を形成し、
必要に応じて置換されている各基は、非置換であるか、または独立にC~Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C~Cアルキル-、ヘテロアリール-C~Cアルキル-、C~Cハロアルキル、-OC~Cアルキル、-OC~Cアルキルフェニル、-C~Cアルキル-OH、-OC~Cハロアルキル、ハロ、-OH、-NH、-C~Cアルキル-NH、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキルフェニル)、-NH(C~Cアルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルのための置換基として)、-COH、-C(O)OC~Cアルキル、-CON(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-CONH(C~Cアルキル)、-CONH、-NHC(O)(C~Cアルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C~Cアルキル、-C(O)C~Cアルキルフェニル、-C(O)C~Cハロアルキル、-OC(O)C~Cアルキル、-SO(C~Cアルキル)、-SO(フェニル)、-SO(C~Cハロアルキル)、-SONH、-SONH(C~Cアルキル)、-SONH(フェニル)、-NHSO(C~Cアルキル)、-NHSO(フェニル)、または-NHSO(C~Cハロアルキル)である1つもしくは複数の、例えば1つ、2つ、もしくは3つの置換基で独立に置換されている。
【0062】
一部の実施形態では、置換アルコキシ基は、「ポリアルコキシ」、すなわち-O-(必要に応じて置換されているアルキレン)-(必要に応じて置換されているアルコキシ)であり、それには、-OCHCHOCHなどの基、およびグリコールエーテル残基、例えばポリエチレングリコール、および-O(CHCHO)CH(式中、xは、2~20、例えば2~10、例えば2~5の整数である)が含まれる。別の置換アルコキシ基は、ヒドロキシアルコキシ、すなわち-OCH(CHOH(式中、yは、1~10、例えば1~4の整数である)である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「置換アルコキシカルボニル」は、(置換アルキル)-O-C(O)-基を指し、ここで基は、カルボニル官能基を介して親構造に結合しており、置換は、1つまたは複数(例えば5個まで、例えば3個まで)の水素原子が、独立に-R、-OR、必要に応じて置換されているアミノ(-NRCOR、-NRCO、-NRCONR、-NRC(NR)NR、-NRC(NCN)NR、および-NRSOを含む)、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルのための置換基として)、必要に応じて置換されているアシル(例えば、-COR)、必要に応じて置換されているアルコキシカルボニル(例えば、-CO)、アミノカルボニル(例えば、-CONR)、-OCOR、-OCO、-OCONR、-OP(O)(OR)OR、スルファニル(例えば、SR)、スルフィニル(例えば、-SOR)、およびスルホニル(例えば、-SOおよび-SONR)である置換基によって置き換えられている、アルキルを指し、
は、必要に応じて置換されているC~Cアルキル、必要に応じて置換されているアルケニル、必要に応じて置換されているアルキニル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、
は、H、必要に応じて置換されているC~Cアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、
は、水素もしくは必要に応じて置換されているC~Cアルキルであるか、または
およびR、ならびにそれらが結合している窒素は、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル基を形成し、
必要に応じて置換されている各基は、非置換であるか、または独立にC~Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C~Cアルキル-、ヘテロアリール-C~Cアルキル-、C~Cハロアルキル、-OC~Cアルキル、-OC~Cアルキルフェニル、-C~Cアルキル-OH、-OC~Cハロアルキル、ハロ、-OH、-NH、-C~Cアルキル-NH、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキルフェニル)、-NH(C~Cアルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルのための置換基として)、-COH、-C(O)OC~Cアルキル、-CON(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-CONH(C~Cアルキル)、-CONH、-NHC(O)(C~Cアルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C~Cアルキル、-C(O)C~Cアルキルフェニル、-C(O)C~Cハロアルキル、-OC(O)C~Cアルキル、-SO(C~Cアルキル)、-SO(フェニル)、-SO(C~Cハロアルキル)、-SONH、-SONH(C~Cアルキル)、-SONH(フェニル)、-NHSO(C~Cアルキル)、-NHSO(フェニル)、または-NHSO(C~Cハロアルキル)である1つもしくは複数の、例えば1つ、2つ、もしくは3つの置換基で独立に置換されている。
【0064】
本明細書で使用される場合、「置換アミノ」は、-NHRまたは-NR基を指し、ここでRは、ヒドロキシル、ホルミル、必要に応じて置換されているアルコキシ、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているアシル、必要に応じて置換されているカルバミミドイル、アミノカルボニル、必要に応じて置換されているアリール、必要に応じて置換されているヘテロアリール、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアルコキシカルボニル、スルフィニルおよびスルホニルであり、Rは、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、必要に応じて置換されているヘテロアリール、または必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルから選択され、置換アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロアリールはそれぞれ、1つまたは複数(例えば5個まで、例えば3個まで)の水素原子が、独立に-R、-OR、必要に応じて置換されているアミノ(-NRCOR、-NRCO、-NRCONR、-NRC(NR)NR、-NRC(NCN)NR、および-NRSOを含む)、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルのための置換基として)、必要に応じて置換されているアシル(例えば、-COR)、必要に応じて置換されているアルコキシカルボニル(例えば、-CO)、アミノカルボニル(例えば、-CONR)、-OCOR、-OCO、-OCONR、-OP(O)(OR)OR、スルファニル(例えば、SR)、スルフィニル(例えば、-SOR)、またはスルホニル(例えば、-SOおよび-SONR)である置換基によって置き換えられている、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロアリールを指し、
は、必要に応じて置換されているC~Cアルキル、必要に応じて置換されているアルケニル、必要に応じて置換されているアルキニル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、
は、H、必要に応じて置換されているC~Cアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、
は、水素もしくは必要に応じて置換されているC~Cアルキルであるか、または
およびR、ならびにそれらが結合している窒素は、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル基を形成し、必要に応じて置換されている各基は、非置換であるか、またはC~Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C~Cアルキル-、ヘテロアリール-C~Cアルキル-、C~Cハロアルキル、-OC~Cアルキル、-OC~Cアルキルフェニル、-C~Cアルキル-OH、-OC~Cハロアルキル、ハロ、-OH、-NH、-C~Cアルキル-NH、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)(C~Cアルキルフェニル)、-NH(C~Cアルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルのための置換基として)、-COH、-C(O)OC~Cアルキル、-CON(C~Cアルキル)(C~Cアルキル)、-CONH(C~Cアルキル)、-CONH、-NHC(O)(C~Cアルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C~Cアルキル、-C(O)C~Cアルキルフェニル、-C(O)C~Cハロアルキル、-OC(O)C~Cアルキル、-SO(C~Cアルキル)、-SO(フェニル)、-SO(C~Cハロアルキル)、-SONH、-SONH(C~Cアルキル)、-SONH(フェニル)、-NHSO(C~Cアルキル)、-NHSO(フェニル)、または-NHSO(C~Cハロアルキル)から独立に選択される1つもしくは複数の、例えば1つ、2つ、もしくは3つの置換基で独立に置換されており、
必要に応じて置換されているアシル、必要に応じて置換されているアルコキシカルボニル、スルフィニルおよびスルホニルは、本明細書で定義される通りである。
【0065】
用語「置換アミノ」はまた、それぞれ前述の通りの-NHR基およびNR基のN-オキシドを指す。N-オキシドは、例えば、過酸化水素またはm-クロロペルオキシ安息香酸を用いて対応するアミノ基を処理することによって調製することができる。当業者には、N-酸化を行うための反応条件がよく知られている。
【0066】
本明細書に記載される化合物には、これに限定されるものではないが、それらの光学異性体、ラセミ体、および他のそれらの混合物が含まれる。それらの状況では、単一のエナンチオマーまたはジアステレオマー、すなわち光学的に活性な形態は、不斉合成によって、またはラセミ体の分割によって得ることができる。ラセミ体の分割は、例えば、従来の方法によって、例えば分割剤の存在下での結晶化、または例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムを使用するクロマトグラフィーによって達成することができる。さらに、化合物には、炭素-炭素二重結合を有する化合物のZ-およびE-形態(またはシス-およびトランス-形態)が含まれる。本明細書に記載される化合物が、様々な互変異性体の形態で存在する場合、用語「化合物」は、化合物のすべての互変異性体の形態を含むことが企図される。
【0067】
式Iの化合物はまた、例えば、化合物の多形、疑似多形、溶媒和物(水和物を含む)、非溶媒和多形(無水物を含む)、立体構造多形および非晶質形態、ならびにそれらの混合物を含む、それらの化合物の結晶形態および非晶質形態を含む。「結晶形態」、「多形」および「新規な形態」は、本明細書では交換可能に使用することができ、特定の結晶形態または非晶質形態に言及されない限り、例えば、多形、疑似多形、溶媒和物(水和物を含む)、非溶媒和多形(無水物を含む)、立体構造多形および非晶質形態、ならびにそれらの混合物を含む、化合物のすべての結晶形態および非晶質形態を含むことを意味する。同様に、式Iの化合物の「薬学的に許容される形態」はまた、例えば、薬学的に許容される塩の多形、疑似多形、溶媒和物(水和物を含む)、非溶媒和多形(無水物を含む)、立体構造多形および非晶質形態、ならびにそれらの混合物を含む、それらの化合物の結晶形態および非晶質形態を含む。
【0068】
「溶媒和物」は、溶媒と化合物の相互作用によって形成される。用語「化合物」は、化合物の溶媒和物を含むことが企図される。同様に、「薬学的に許容される塩」には、薬学的に許容される塩の溶媒和物が含まれる。適切な溶媒和物は、薬学的に許容される溶媒和物、例えば一水和物および半水和物を含む水和物である。
【0069】
式Iの化合物はまた、キレート、非共有結合性複合体、プロドラッグ、およびそれらの混合物を含む、記載される化合物の他の薬学的に許容される形態を含む。
【0070】
「キレート」は、化合物が、2つ(またはそれよりも多い)点で金属イオンに配位されることによって形成される。用語「化合物」は、化合物のキレートを含むことが企図される。同様に、「薬学的に許容される塩」には、薬学的に許容される塩のキレートが含まれる。
【0071】
「非共有結合性複合体」は、化合物および別の分子の相互作用によって形成され、ここで、化合物と分子との間に共有結合は形成されない。例えば、複合体化は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、および静電相互作用(イオン結合とも呼ばれる)によって生じることができる。このような非共有結合性複合体は、用語「化合物」に含まれる。同様に、薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される塩の「非共有結合性複合体」を含む。
【0072】
用語「水素結合」は、電気陰性の原子(水素結合アクセプターとしても公知)と、第2の相対的に電気陰性の原子に結合した水素原子(水素結合ドナーとしても公知)との間の会合の形態を指す。適切な水素結合ドナーおよびアクセプターは、医薬品化学において十分に理解されている。
【0073】
「水素結合アクセプター」は、酸素または窒素、例えばsp混成である酸素もしくは窒素、エーテル酸素、またはスルホキシドもしくはN-オキシドの酸素を含む基を指す。
【0074】
用語「水素結合ドナー」は、環の窒素を含有する水素基または環の窒素を含有するヘテロアリール基を担持している、酸素、窒素、または複素芳香族炭素を指す。
【0075】
本明細書に開示される化合物は、例えば、H、H、11C、13Cおよび/または14C含量が豊富な、様々な濃縮同位体形態で使用することができる。特定の一実施形態では、化合物は、少なくとも1つの位置で重水素化されている。このような重水素化形態は、米国特許第5,846,514号および同第6,334,997号に記載される手順によって作製することができる。米国特許第5,846,514号および同第6,334,997号に記載される通り、重水素化は、有効性を改善し、薬物の作用期間を増大することができる。
【0076】
重水素置換化合物は、Dean, Dennis C.; Editor. Recent Advances in the Synthesis and Applications of Radiolabeled Compounds for Drug Discovery and Development. [In: Curr., Pharm. Des., 2000; 6(10)] 2000, 110 pp、George W.; Varma, Rajender S. The Synthesis of Radiolabeled Compounds via Organometallic Intermediates, Tetrahedron, 1989, 45(21), 6601-21、およびEvans, E. Anthony. Synthesis of radiolabeled compounds, J. Radioanal. Chem., 1981, 64(1-2), 9-32に記載されているものなどの様々な方法を使用して合成することができる。
【0077】
「薬学的に許容される塩」には、これに限定されるものではないが、無機酸との塩、例えば塩酸塩(hydrochlorate)、炭酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルフィン酸塩、および硝酸塩などの塩、ならびに有機酸との塩、例えばリンゴ酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル-アミノメタン)、p-トルエンスルホン酸塩、プロピオン酸塩(priopionate)、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、およびアルカン酸塩、例えば酢酸塩、HOOC-(CH-COOH(式中、nは0~4である)などの塩が含まれる。他の塩には、硫酸塩、メタスルホン酸塩(methasulfonate)、臭化物塩、トリフルオロ酢酸塩(trifluoracetate)、ピクリン酸塩、ソルビン酸塩、ベンジル酸塩、サリチル酸塩(salicilate)、硝酸塩、フタル酸塩またはモルホリンが含まれる。薬学的に許容されるカチオンには、これに限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、およびアンモニウムが含まれる。
【0078】
さらに、本明細書に記載される化合物が酸付加塩として得られる場合、酸塩の溶液を塩基性化することによって、遊離塩基を得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、塩基化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順に従って、遊離塩基を適切な有機溶媒に溶解させ、溶液を酸で処理することによって、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩を生成することができる。当業者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩を調製するために使用することができる様々な合成法を認識されよう。
【0079】
本明細書に記載される「プロドラッグ」は、対象に投与されると、例えばプロドラッグの代謝処理の際に式Iの化合物になる、任意の化合物を含む。同様に、「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される塩の「プロドラッグ」を含む。プロドラッグの例として、式Iの化合物における官能基、例えばカルボン酸基の誘導体が挙げられる。カルボン酸基の例示的なプロドラッグとして、これに限定されるものではないが、カルボン酸エステル、例えば、アルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、アリールアルキルエステル、およびアリールオキシアルキルエステルが挙げられる。他の例示的なプロドラッグとして、低級アルキルエステル、例えばエチルエステル、アシルオキシアルキルエステル、例えばピバロイルオキシメチル(POM)、グリコシド、およびアスコルビン酸誘導体が挙げられる。
【0080】
他の例示的なプロドラッグとして、カルボン酸のアミドが挙げられる。例示的なアミドプロドラッグとして、例えば、アミンおよびカルボン酸を用いて形成される、代謝的に不安定なアミドが挙げられる。例示的なアミンとして、NH、第一級および第二級アミン、例えばNHRおよびNRが挙げられ、ここで、Rは、水素、(C~C18)-アルキル、(C~C)-シクロアルキル、(C~C)-シクロアルキル-(C~C)-アルキル-、(C~C14)-アリール(非置換であるか、または残基である(C~C)-アルキル、(C~C)-アルコキシ、フルオロもしくはクロロによって置換されている)、ヘテロアリール-、(C~C14)-アリール-(C~C)-アルキル-(式中、アリールは、非置換であるか、または残基である(C~C)-アルキル、(C~C)-アルコキシ、フルオロもしくはクロロによって置換されている)、またはヘテロアリール-(C~C)-アルキル-であり、Rは、水素を除いてRについて示される意味を有し、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素と一緒になって、窒素、酸素および硫黄から選択される1個または2個の追加のヘテロ原子を必要に応じて含む、必要に応じて置換されている4~7員のヘテロシクロアルキル環を形成する。プロドラッグの議論は、T. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series、Edward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987、およびDesign of Prodrugs, ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に提示されている。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「基」、「ラジカル」または「断片」は、同義であり、分子の結合または他の断片に結合可能な、分子の官能基または断片を示すことが企図される。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「脱離基」は、有機合成化学において従来それと関連する意味を指し、すなわち、求核置換条件下で置換え可能な原子または基を指す。脱離基の例として、これに限定されるものではないが、ジメチルヒドロキシルアミノ(例えば、ワインレブアミド)、ハロゲン、アルカンスルホニルオキシまたはアリールスルホニルオキシ、例えばメタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、チオメチル、ベンゼンスルホニルオキシ、トシルオキシ、およびチエニルオキシ、ジハロホスフィノイルオキシ、必要に応じて置換されているベンジルオキシ、イソプロピルオキシ、アシルオキシ等が挙げられる。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「保護基」または「保護する基」は、合成化学においてそれと従来関連する意味で、化学反応が、保護されていない別の反応性部位において選択的に行われ得るように、多官能性化合物における1つの反応性部位を選択的に遮断する基を指す。本発明のある特定の過程は、反応物に存在するある特定の反応性部位を遮断するための保護基に頼る。保護基の例は、Wuts et al., Green's Protective Groups in Organic Synthesis, (J. Wiley, 4th ed. 2006)に見出すことができる。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「脱保護」または「脱保護する」は、選択的反応が完了した後に、保護基が除去される過程を指す。ある特定の保護基は、それらの利便性またはそれらを比較的容易に除去できることにより、他のものよりも好ましい場合がある。保護アミノまたはアニリノ基のための脱保護試薬には、これに限定されるものではないが、強酸、例えばトリフルオロ酢酸(TFA)、濃HCl、HSO、またはHBr等が含まれる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「モジュレーション」は、本明細書に記載される通りの化学的実体の存在に対する直接的または間接的な応答として、化学的実体が存在しない場合の活性と比較して、活性が変化することを指す。変化は、活性の増大または活性の低減であってよく、化合物と標的の直接的な相互作用に起因し得るか、または標的の活性に影響を及ぼすようになる、化合物と他の1つもしくは複数の因子の相互作用に起因し得る。例えば、化学的実体の存在は、例えば、標的との直接的な結合によって、別の因子に標的活性を増大もしくは低減させることによって(直接的または間接的に)、または細胞もしくは生物中に存在する標的の量を増大もしくは低減することによって(直接的または間接的に)、標的活性を増大または低減することができる。
【0086】
本明細書で使用される場合、「活性剤」は、生物活性を有する化学的実体を示すために使用される。ある特定の実施形態では、「活性剤」は、薬学的有用性を有する化合物である。例えば、活性剤は、抗がん治療薬であってよい。
【0087】
本明細書で使用される場合、「有意」は、統計的有意性の標準的なパラメトリック試験、例えばp<0.05でのスチューデントT検定において統計的に有意な、任意の検出可能な変化を指す。
【0088】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」構成成分は、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激、およびアレルギー応答)なしにヒトおよび/または動物に使用するのに適した、妥当な利益/リスク比に見合うものである。
【0089】
本明細書で使用される場合、本明細書に記載される化学的実体の「治療有効量」は、ヒトまたは非ヒト対象に投与されると、治療利益、例えば症状の緩和、疾患進行の緩徐、または疾患の防止をもたらすのに有効な量を指す。
【0090】
「処置する」または「処置」は、少なくとも1つの式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、このような投与を必要とする哺乳動物対象、特にヒト対象に投与することを包含し、(i)がんなどの疾患の臨床症候の発症を抑止すること、(ii)がんなどの疾患の臨床症候の退行をもたらすこと、および/または(iii)がんなどの疾患の開始を防止するための予防処置を含む。
【0091】
本明細書で使用される場合、「がん」は、哺乳動物に見出される、癌腫および肉腫を含むあらゆるタイプのがんまたは新生物または悪性腫瘍を指す。がんの例は、脳がん、乳がん、頸部がん、結腸がん、頭頸部がん、腎臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、中皮腫、卵巣がん、肉腫、胃がん、子宮がんおよび髄芽腫である。
【0092】
本明細書で使用される場合、「対象」は、処置、観察または実験の対象となっているか、または対象になるであろう哺乳動物を指す。本明細書に記載される方法は、ヒトの治療および獣医学的適用の両方において有用となり得る。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0093】
用語「哺乳動物」は、その標準的な意味を有することが企図され、例えばヒト、イヌ、ネコ、ヒツジ、およびウシを包含する。
【0094】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、「からなる」実施形態および/または「から本質的になる」実施形態を含むと理解される。
【0095】
本明細書における「約」が付いた値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体を対象とする変動を含む(かつ記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0096】
本明細書で使用される場合、値またはパラメーター「ではない」への言及は、一般に、値またはパラメーター「以外の」を意味し、記載する。例えば、方法が、タイプXのがんを処置するために使用されないとは、その方法が、X以外のタイプのがんを処置するために使用されることを意味する。
【0097】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「または(or)」、および「その(the)」は、状況によって別段明示されない限り、複数の指示対象を含む。
がんを処置する方法
【0098】
本発明は、個体(例えば、ヒト個体)のがんを処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物
【化4】
またはその薬学的に許容される塩[式中、
Zは、-ORまたは-NRであり、
は、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、Rは、水素、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、Rは、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであるか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルを形成する]を投与するステップを含み、
化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間(例えば、少なくとも3、4、5、または6週間のいずれかを含む)にわたり投与される、方法を提供する。
【0099】
一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、3週サイクルで、少なくとも週1回、2週間投与され、その後1週間休薬される。一部の実施形態では、化合物は、4週サイクルで、少なくとも週1回、3週間投与され、その後1週間休薬される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、例えば注入によって、少なくとも約30分間(例えば、少なくとも約1、2、4、6、8、10、12、または24時間のいずれか)、静脈内投与される。
【0100】
一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)のがんを処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩が、1週間の間で少なくとも2日間、毎日投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)のがんを処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、化合物が、1週間の間で少なくとも3日間、毎日投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)のがんを処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、化合物が、少なくとも2週間、1週間の間で少なくとも3日間、毎日投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)のがんを処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、化合物が、少なくとも3週間、1週間の間で少なくとも3日間、毎日投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、週の少なくとも3日間連続で投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、1週間の間で2日毎に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも2週間(例えば、3週サイクル中2週間または4週サイクル中3週間)、週の1日目、2日目、3日目に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも2週間(例えば、3週サイクル中2週間または4週サイクル中3週間)、週の2日目、3日目、4日目に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも2週間(例えば、3週サイクル中2週間または4週サイクル中3週間)、週の3日目、4日目、5日目に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも2週間(例えば、3週サイクル中2週間または4週サイクル中3週間)、週の4日目、5日目、6日目に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも2週間(例えば、3週サイクル中2週間または4週サイクル中3週間)、週の5日目、6日目、7日目に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも2週間(例えば、3週サイクル中2週間または4週サイクル中3週間)、週の1日目、3日目、5日目に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも2週間(例えば、3週サイクル中2週間または4週サイクル中3週間)、週の2日目、4日目、6日目に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも2週間(例えば、3週サイクル中2週間または4週サイクル中3週間)、週の3日目、5日目、7日目に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、3週サイクルの1~14日目に毎日投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、例えば注入によって、少なくとも約30分間(例えば、少なくとも約1、2、4、6、8、10、12、または24時間のいずれか)、静脈内投与される。
【0101】
他の投薬レジメンには、これに限定されるものではないが、2日連続および非連続の1日、例えば、週の間の1日目、2日目および4日目;1日目、2日目および5日目;1日目、2日目および6日目;1日目、3日目および4日目;1日目、4日目および5日目;1日目、5日目および6日目;または1日目、6日目および7日目が含まれる。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、4週のうち少なくとも1週間、少なくとも週1回、28日サイクル当たり1日目、2日目および3日目に;4週のうち少なくとも2週間、28日サイクル当たり1日目、2日目、3日目、8日目、9日目および10日目、もしくは1日目、2日目、3日目、15日目、16日目および17日目に;または4週のうち少なくとも3週間、28日サイクル当たり1日目、2日目、3日目、8日目、9日目、10日目、15日目、16日目および17日目に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、4週のうち少なくとも1週間、少なくとも週2回、28日サイクル当たり1日目、2日目および3日目に;4週のうち少なくとも2週間、28日サイクル当たり1日目、2日目、3日目、8日目、9日目および10日目、もしくは1日目、2日目、3日目、15日目、16日目および17日目に;または4週のうち少なくとも3週間、28日サイクル当たり1日目、2日目、3日目、8日目、9日目、10日目、15日目、16日目および17日目に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも週3回、4週のうち少なくとも1週間、28日サイクル当たり1日目、2日目および3日目に;4週のうち少なくとも2週間、28日サイクル当たり1日目、2日目、3日目、8日目、9日目および10日目、もしくは1日目、2日目、3日目、15日目、16日目および17日目に;または4週のうち少なくとも3週間、28日サイクル当たり1日目、2日目、3日目、8日目、9日目、10日目、15日目、16日目および17日目に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも週3回、4週のうち少なくとも3週間、28日サイクル当たり1日目、2日目、3日目、8日目、9日目、10日目、15日目、16日目および17日目に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、週3回で3週間(1日目、2日目、3日目、8日目、9日目、10日目、15日目、16日目および17日目に)投与され、その後1週間休薬される。
【0102】
一部の実施形態では、組成物は、1日当たり少なくとも1回、少なくとも2回、または少なくとも3回投与される。一部の実施形態では、各投与の間の間隔は、約7日以下、約6日以下、約5日以下、約4日以下、約3日以下、約2日以下、または約1日以下である。一部の実施形態では、投薬スケジュールは中断されない。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日間連続的に(例えば、注入により)投与される。
【0103】
処置方法は、長期間にわたって、例えば約1カ月から約7年まで行うことができる。一部の実施形態では、処置方法は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、36、48、60、72、または84カ月のいずれかの期間にわたって行われる。一部の実施形態では、処置方法は、少なくとも約1、2、4、6、8、10回、またはそれよりも多い投薬サイクルの間行われる。
【0104】
一部の実施形態では、処置方法は、1つまたは複数の処置サイクルの期間にわたって行われ、ここで処置サイクルは、21日の処置および7日の休薬から構成される28日と定義される。一部の実施形態では、処置方法は、1回の処置サイクル、2回の処置サイクル、3回の処置サイクル、または4回の処置サイクルの期間にわたって行われる。
【0105】
前述の方法のいずれかによる一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、例えば、約0.2mg/m~約1.2mg/m、約0.4mg/m~約1.2mg/m、または約0.4mg/m~約1mg/mのいずれかを含む約0.2mg/m~約2mg/mの用量範囲で投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、約0.1mg/m~約5mg/m(例えば、約0.15mg/m~約3mg/mまたは約0.2mg/m~約2mg/mを含む)の投薬量範囲で投与される。投与される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の例示的な量として、これに限定されるものではないが、少なくとも(これらを含む)約0.1mg/m、0.2mg/m、0.3mg/m、0.4mg/m、0.5mg/m、0.6mg/m、0.7mg/m、0.8mg/m、0.9mg/m、1mg/m、1.1mg/m、1.2mg/m、1.3mg/m、1.4mg/m、1.5mg/m、1.6mg/m、1.7mg/m、1.8mg/m、1.9mg/m、2mg/m、2.2mg/m、2.5mg/m、3mg/m、4mg/m、および5mg/mのいずれかが挙げられる。一部の実施形態では、投与される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の量は、約5mg/m以下、約4mg/m以下、約3mg/m以下、約2.5mg/m以下、約2.2mg/m以下、約2mg/m以下、約1.9mg/m以下、約1.8mg/m以下、約1.7mg/m以下、約1.6mg/m以下、約1.5mg/m以下、約1.4mg/m以下、約1.3mg/m以下、約1.2mg/m以下、約1.1mg/m以下、約1mg/m以下、約0.9mg/m以下、約0.8mg/m以下、約0.7mg/m以下、約0.6mg/m以下、約0.5mg/m以下、約0.4mg/m以下、約0.3mg/m以下、約0.2mg/m以下、または約0.1mg/m以下である。一部の実施形態では、投与される化合物の量は、約0.1mg/m~約5mg/m、約0.15mg/m~約3mg/m、約0.2mg/m~約2mg/m、約0.6mg/m~約1.6mg/m、または約0.8mg/m~約1.2mg/mである。
【0106】
前述の方法のいずれかによる一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、例えば、約0.02mg/m~約1.2mg/m、約0.04mg/m~約1.2mg/m、または約0.08mg/m~約1mg/mのいずれかを含む約0.02mg/m~約2mg/mの用量範囲で投与される。投与される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の例示的な量として、これに限定されるものではないが、少なくとも(これらを含む)約0.1mg/m、0.15mg/m、0.25mg/m、0.35mg/m、0.55mg/m、0.8mg/m、および1mg/mのいずれかが挙げられる。
【0107】
一部の実施形態では、1週間当たり個体に投与される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の総用量は、少なくとも約0.1mg/m、約0.2mg/m、約0.3mg/m、約0.4mg/m、約0.5mg/m、約0.6mg/m、約0.7mg/m、約0.8mg/m、約0.9mg/m、または約1mg/mである。一部の実施形態では、1週間当たり個体に投与される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の総用量は、約1mg/m以下、約0.9mg/m以下、約0.8mg/m以下、約0.7mg/m以下、約0.6mg/m以下、約0.5mg/m以下、約0.4mg/m以下、約0.3mg/m以下、約0.2mg/m以下、または約0.1mg/m以下である。一部の実施形態では、1週間当たり個体に投与される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の総用量は、約0.1mg/m~約1mg/m、約0.2mg/m~約0.7mg/m、または約0.3mg/m~約0.5mg/mである。一部の実施形態では、投与サイクル当たりの総用量は、少なくとも約2mg/m~約6mg/mである。
【0108】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも約0.01mg/mL、少なくとも約0.05mg/mL、少なくとも約0.06mg/mL、少なくとも約0.07mg/mL、少なくとも約0.08mg/mL、少なくとも約0.09mg/mL、少なくとも約0.1mg/mL、少なくとも約0.11mg/mL、少なくとも約0.12mg/mL、少なくとも約0.13mg/mL、少なくとも約0.14mg/mL、少なくとも約0.15mg/mL、少なくとも約0.2mg/mL、少なくとも約0.3mg/mL、少なくとも約0.4mg/mL、少なくとも約0.5mg/mL、少なくとも約0.6mg/mL、少なくとも約0.7mg/mL、少なくとも約0.8mg/mL、少なくとも約0.9mg/mL、少なくとも約1mg/mL、少なくとも約2.5mg/mL、または少なくとも約5mg/mLの濃度で、バイアルで提供することができる。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、約5mg/mL以下、約2.5mg/mL以下、約1mg/mL以下、約0.9mg/mL以下、約0.8mg/mL以下、約0.7mg/mL以下、約0.6mg/mL以下、約0.5mg/mL以下、約0.4mg/mL以下、約0.3mg/mL以下、約0.2mg/mL以下、約0.1mg/mL以下、約0.09mg/mL以下、約0.08mg/mL以下、約0.07mg/mL以下、約0.06mg/mL以下、約0.05mg/mL以下、または約0.01mg/mL以下の濃度で、バイアルで提供することができる。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、約0.01mg/mL~約5mg/mL、約0.05mg/mL~約2.5mg/mL、約0.06mg/mL~約1mg/mL、約0.07mg/mL~約0.9mg/mL、約0.08mg/mL~約0.5mg/mL、または約0.09mg/mL~約0.11mg/mLの濃度で、バイアルで提供することができる。
【0109】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、投与前に、例えば、少なくとも約0.0001mg/mL、少なくとも約0.0005mg/mL、少なくとも約0.001mg/mL、少なくとも約0.0015mg/mL、少なくとも約0.0017mg/mL、少なくとも約0.0018mg/mL、少なくとも約0.0019mg/mL、少なくとも約0.002mg/mL、少なくとも約0.0021mg/mL、少なくとも約0.0022mg/mL、少なくとも約0.0023mg/mL、少なくとも約0.0025mg/mL、少なくとも約0.003mg/mL、少なくとも約0.004mg/mL、少なくとも約0.005mg/mL、少なくとも約0.006mg/mL、少なくとも約0.007mg/mL、少なくとも約0.008mg/mL、少なくとも約0.009mg/mL、少なくとも約0.01mg/mL、少なくとも約0.011mg/mL、少なくとも約0.012mg/mL、少なくとも約0.013mg/mL、少なくとも約0.015mg/mL、少なくとも約0.02mg/mL、少なくとも約0.05mg/mL、または少なくとも約0.1mg/mLの濃度に希釈することができる。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、投与前に、例えば、約0.1mg/mL以下、約0.05mg/mL以下、約0.02mg/mL以下、約0.015mg/mL以下、約0.013mg/mL以下、約0.012mg/mL以下、約0.011mg/mL以下、約0.01mg/mL以下、約0.009mg/mL以下、約0.008mg/mL以下、約0.007mg/mL以下、約0.006mg/mL以下、約0.005mg/mL以下、約0.004mg/mL以下、約0.003mg/mL以下、約0.0025mg/mL以下、約0.0023mg/mL以下、約0.0022mg/mL以下、約0.0021mg/mL以下、約0.002mg/mL以下、約0.0019mg/mL以下、約0.0018mg/mL以下、約0.0017mg/mL以下、約0.0015mg/mL以下、約0.001mg/mL以下、約0.0005mg/mL以下、または約0.0001mg/mL以下の濃度に希釈することができる。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、投与前に、例えば、約0.0001mg/mL~約0.1mg/mL、約0.001mg/mL~約0.05mg/mL、約0.0015mg/mL~約0.02mg/mL、または約0.002mg/mL~約0.01mg/mLの濃度に希釈することができる。
【0110】
本明細書に記載される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、個体(例えば、ヒト)に、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、経口、吸入、小胞内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、髄腔内、経粘膜、および経皮を含む様々な経路を介して投与することができる。一部の実施形態では、組成物の連続徐放製剤を使用することができる。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、静脈内投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、注入を介して、例えば少なくとも約(これらを含む)20分、30分、40分、50分、または60分間のいずれかにわたる注入によって、投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、注入を介して、少なくとも約(これらを含む)1、2、4、6、8、10、12、または24時間のいずれかで投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも約15分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約5時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、または少なくとも約24時間の注入期間にわたって注入される。一部の実施形態では、組成物は、約24時間以下、約12時間以下、約8時間以下、約5時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約30分以下、または約10分以下の注入期間にわたって投与される。
がん処置
【0111】
本明細書に記載される方法は、一般に、個体のがんを処置するために有用である。一部の実施形態では、処置されるがんは、固形腫瘍である。一部の実施形態では、処置されるがんは、液性腫瘍である。一部の実施形態では、固形腫瘍は、初期ステージがん、非転移性がん、原発性がん、進行性がん、局所進行性がん、転移性がん、寛解状態のがん、アジュバント設定におけるがん、またはネオアジュバント設定におけるがんのいずれかである。一部の実施形態では、固形腫瘍は、限局性の切除可能な、限局性の切除不能な、または切除不能なものである。一部の実施形態では、固形腫瘍は、限局性の切除可能なまたは境界性の切除可能なものである。一部の実施形態では、がんは、過去の治療に対して難治性であった。一部の実施形態では、がんは、本化合物以外の化学療法剤を用いる処置に対して抵抗性である。
【0112】
本明細書で提供される方法は、アジュバント設定で実施することができる。一部の実施形態では、方法は、ネオアジュバント設定で実施され、すなわち方法は、一次/根治治療の前に行うことができる。一部の実施形態では、方法は、以前に処置を受けたことがある個体を処置するために使用される。一部の実施形態では、個体は、過去に全身治療を少なくとも1回受けたことがあるか、または失敗したことがある。本明細書で提供される処置方法は、まだ処置を受けたことがない個体を処置するために使用することもできる。一部の実施形態では、方法は、第1選択治療として使用される。一部の実施形態では、方法は、第2選択治療として使用される。
【0113】
一部の実施形態では、がんには、これに限定されるものではないが、結腸癌、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、甲状腺がん、口腔がん、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、軟骨腫、血管肉腫、内皮腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄質癌、気管支癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺がん、膀胱癌、上皮癌、黒色腫、白血病、急性リンパ性白血病および急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病)、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)、ならびに真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、および重鎖病が含まれる。一部の実施形態では、がんは、結腸直腸がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、および口腔がんからなる群から選択される。一部の実施形態では、がんは、肝臓がん、結腸直腸がん、および肺がんからなる群から選択される。
【0114】
一部の実施形態では、がんは、結腸直腸がん、乳がん、肝臓がん、胃がん、および非小細胞肺がんからなる群から選択される。
【0115】
一部の実施形態では、処置されるがんは、肺がんである。一部の実施形態では、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。NSCLCの例として、これに限定されるものではないが、大細胞癌(例えば、大細胞神経内分泌癌、複合型大細胞神経内分泌癌、類基底癌、リンパ上皮腫様癌、明細胞癌、およびラブドイド表現型を伴う大細胞癌)、腺癌(例えば、腺房、乳頭(例えば、細気管支肺胞癌、粘液非産生性、粘液性、混合型粘液性および粘液非産生性および未定細胞型)、ムチン型固形腺癌、混合型サブタイプの腺癌、高分化型胎児腺癌、粘液性(コロイド)腺癌、粘液性嚢胞腺癌、印環腺癌、および明細胞腺癌)、神経内分泌肺腫瘍、および扁平上皮癌(例えば、乳頭、明細胞、小細胞、および類基底)が挙げられる。一部の実施形態では、NSCLCは、TNM分類によれば、ステージTの腫瘍(原発腫瘍)、ステージNの腫瘍(局所リンパ節)、またはステージMの腫瘍(遠隔転移)である。一部の実施形態では、肺がんは、カルチノイド(定型または非定型)、腺扁平上皮癌、円柱腫、または唾液腺癌(例えば、腺様嚢胞癌または粘液性類表皮癌)である。一部の実施形態では、肺がんは、多形性、肉腫様、または肉腫性要素を伴う癌腫(例えば、紡錘細胞および/もしくは巨細胞を伴う癌腫、紡錘細胞癌、巨細胞癌、癌肉腫、または肺芽細胞腫)である。一部の実施形態では、がんは、小細胞肺がん(SCLC、燕麦細胞癌とも呼ばれる)である。小細胞肺がんは、限局期、進行期または再発性の小細胞肺がんであり得る。一部の実施形態では、個体は、肺がんと関連することが疑われるもしくは示される遺伝子、遺伝的突然変異もしくは多型(例えば、SASH1、LATS1、IGF2R、PARK2、KRAS、PTEN、Kras2、Krag、Pas1、ERCC1、XPD、IL8RA、EGFR、Ot1-AD、EPHX、MMP1、MMP2、MMP3、MMP12、IL1β、RAS、および/またはAKT)を有しているか、または肺がんと関連する遺伝子の1つもしくは複数の余分なコピーを有しているヒトであり得る。
【0116】
一部の実施形態では、処置されるがんは、結腸直腸がんである。一部の実施形態では、個体は、結腸直腸がんと関連する遺伝子、遺伝的突然変異もしくは多型(例えば、RAS、AKT、PTEN、POK、および/またはEGFR)を有しているか、または結腸直腸がんと関連する遺伝子の1つもしくは複数の余分なコピーを有しているヒトであり得る。
【0117】
一部の実施形態では、処置されるがんは、肝臓がん、例えば肝細胞癌(HCC)である。一部の実施形態では、HCCは、初期ステージのHCC、非転移性HCC、原発性HCC、進行性HCC、局所進行性HCC、転移性HCC、寛解状態のHCC、または再発性HCCである。一部の実施形態では、HCCは、限局性の切除可能なもの(すなわち、手術による完全な除去が可能な、肝臓の一部に限局される腫瘍)、限局性の切除不能なもの(すなわち限局性腫瘍が、重大な血管構造が関与しているか、または肝臓が障害を受けているため、切除不能であるおそれがある)、または切除不能なもの(すなわち、腫瘍が、肝臓のすべての葉に関与している、かつ/または他の臓器(例えば、肺、リンパ節、骨)に関与するように広がっている)である。一部の実施形態では、HCCは、TNM分類によれば、ステージIの腫瘍(血管侵襲がない単一腫瘍)、ステージIIの腫瘍(血管侵襲がある単一腫瘍、または複数の腫瘍、5cmを超えるものなし)、ステージIIIの腫瘍(複数の腫瘍、いずれも5cmを超える、または門脈の主要分岐もしくは肝臓静脈に関与する腫瘍)、ステージIVの腫瘍(胆嚢以外の隣接臓器の直接的侵襲、または内臓腹膜の穿孔を伴う腫瘍)、N1腫瘍(局所的リンパ節転移)、またはM1腫瘍(遠隔転移)である。一部の実施形態では、HCCは、AJCC(米国がん合同委員会(American Joint Commission on Cancer))ステージ分類基準によれば、ステージT1、T2、T3、またはT4のHCCである。一部の実施形態では、HCCは、肝細胞癌、HCCの線維層板型変異体、または混合型肝細胞胆管細胞癌のいずれか1つである。一部の実施形態では、個体は、肝細胞癌と関連する遺伝子、遺伝的突然変異もしくは多型(例えば、CCND2、RAD23B、GRP78、CEP164、MDM2、および/またはALDH2)を有しているか、または肝細胞癌と関連する遺伝子の1つもしくは複数の余分なコピーを有しているヒトであり得る。
【0118】
一部の実施形態では、処置されるがんは、乳がんである。一部の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、静脈内投与される。本明細書に記載される乳がんには、初期ステージの乳がん、非転移性乳がん、ステージIVの乳がん、局所進行性乳がん、転移性乳がん、ホルモン受容体陽性転移性乳がん、寛解状態の乳がん、アジュバント設定における乳がん、非浸潤性乳管癌(DCIS)、侵襲性腺管癌(IDC)、およびネオアジュバント設定における乳がんが含まれ得る。一部の実施形態では、乳がんは、ホルモン受容体陽性転移性乳がんである。一部の実施形態では、乳がん(HER2陽性またはHER2陰性であり得る)は、進行性乳がんである。一部の実施形態では、乳がんは、非浸潤性乳管癌である。一部の実施形態では、個体は、乳がんと関連する遺伝子、遺伝的突然変異もしくは多型(例えば、BRCA1、BRCA2、ATM、CHEK2、RAD51、AR、DIRAS3、ERBB2、TP53、AKT、PTEN、および/またはPI3K)を有しているか、または乳がんと関連する遺伝子の1つもしくは複数の余分なコピー(例えば、HER2遺伝子の1つまたは複数の余分なコピー)を有しているヒトであり得る。
【0119】
一部の実施形態では、処置されるがんは、膵臓がんである。処置され得る膵臓がんには、これに限定されるものではないが、外分泌膵臓がんおよび内分泌膵臓がんが含まれる。外分泌膵臓がんには、これに限定されるものではないが、腺癌、膵腺房細胞癌、腺扁平上皮癌、膠様癌、破骨細胞様の巨細胞を伴う未分化癌、肝様癌腫、膵管内乳頭粘液性新生物、粘液性嚢胞性新生物、膵芽腫、漿液性嚢胞腺腫、印環細胞癌、固形偽乳頭状腫瘍(solid and pseuodpapillary tumor)、膵管癌、および未分化癌が含まれる。一部の実施形態では、外分泌膵臓がんは、膵管癌である。内分泌膵臓がんには、これに限定されるものではないが、インスリノーマおよびグルカゴノーマが含まれる。
【0120】
一部の実施形態では、処置されるがんは、前立腺がんである。一部の実施形態では、前立腺がんは、腺癌である。一部の実施形態では、前立腺がんは、肉腫、神経内分泌腫瘍、小細胞がん、腺管がん、またはリンパ腫である。一部の実施形態では、前立腺がんは、Jewettステージ分類系による4つのステージA、B、C、またはDのいずれかである。一部の実施形態では、前立腺がんは、ステージAの前立腺がんである(例えば、がんは、直腸診中に触知できない)。一部の実施形態では、前立腺がんは、ステージBの前立腺がんである(例えば、腫瘍は、前立腺内の多くの組織に関与しており、直腸診中に触知できるか、または高PSAレベルが原因で行われる生検で見出される)。一部の実施形態では、前立腺がんは、ステージCの前立腺がんである(例えば、がんは、前立腺外側の近傍組織まで広がっている)。一部の実施形態では、前立腺がんは、ステージDの前立腺がんである。一部の実施形態では、前立腺がんは、アンドロゲン独立性前立腺がん(AIPC)である。一部の実施形態では、前立腺がんは、アンドロゲン依存性前立腺がんである。一部の実施形態では、前立腺がんは、ホルモン治療に難治性である。
【0121】
本明細書に記載される方法は、がん処置の様々な態様に有用である。例えば、一部の実施形態では、個体のがん(例えば、肝臓がん、肺がん、または結腸直腸がん)を処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、化合物は、3週サイクルで、少なくとも週1回、2週間投与され、その後1週間休薬される。一部の実施形態では、化合物は、4週サイクルで、少なくとも週1回、3週間投与され、その後1週間休薬される。一部の実施形態では、化合物は、1週間の間で少なくとも3日間毎日、少なくとも2週間(例えば、3週間)、投与される。一部の実施形態では、化合物は、週の少なくとも3日間連続で投与される。一部の実施形態では、化合物は、1週間の間で2日毎に投与される。一部の実施形態では、化合物は、3週サイクルの1~14日目に毎日投与される。一部の実施形態では、化合物は、例えば注入によって、少なくとも約30分間(例えば、少なくとも約1、2、4、6、8、10、12、または24時間のいずれか)、静脈内投与される。
【0122】
一部の実施形態では、個体のがん細胞増殖(例えば、腫瘍成長)を阻害する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)の細胞増殖が阻害される。
【0123】
一部の実施形態では、個体の腫瘍転移を阻害する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)の転移が阻害される。一部の実施形態では、リンパ節への転移を阻害する方法が提供される。一部の実施形態では、肺への転移を阻害する方法が提供される。
【0124】
一部の実施形態では、個体の既存の腫瘍転移(例えば、肺転移またはリンパ節への転移)を低減する(例えば、根絶する)方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)の転移が低減される。一部の実施形態では、リンパ節への転移を低減する方法が提供される。
【0125】
一部の実施形態では、個体の既存の腫瘍転移(例えば、肺転移またはリンパ節への転移)の発生または負荷を低減する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。
【0126】
一部の実施形態では、個体の腫瘍サイズを低減する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、腫瘍サイズは、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)低減される。
【0127】
一部の実施形態では、個体のがんの疾患進行までの時間を延長する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、疾患進行までの時間を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週間の少なくともいずれか、延長する。
【0128】
一部の実施形態では、がんを有する個体の生存期間を延長する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、生存期間を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、または24カ月の少なくともいずれか、延長する。
【0129】
一部の実施形態では、がんを有する個体の1つまたは複数の症状を軽減する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。
【0130】
一部の実施形態では、個体のがん(例えば、肝臓がん、肺がん、または結腸直腸がん)を処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与する(例えば、注入により)ステップを含み、化合物が、3週間、毎週1日目、2日目、3日目に投与され、その後1週間休薬される、方法が提供される。一部の実施形態では、組成物は、約0.2~約1.2mg/m(例えば、約0.2、0.4、0.6、0.8、1、または1.2mg/mのいずれか)の投薬量で投与される。一部の実施形態では、化合物は、約0.001~約0.05mg/mL(例えば、約0.002~約0.01mg/mL)の濃度で投与される。一部の実施形態では、化合物は、約0.1Mの酢酸ナトリウム/酢酸を含む医薬組成物として投与される。一部の実施形態では、個体は、過去に全身治療を少なくとも1回受けたことがあるか、または失敗したことがある。一部の実施形態では、がんは、局所進行性または転移性である。
【0131】
一部の実施形態では、個体のがん(例えば、肝臓がん、肺がん、または結腸直腸がん)を処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与する(例えば、注入により)ステップを含み、化合物が、3週間、毎週1日目、2日目、3日目に投与され、その後1週間休薬される、方法が提供される。一部の実施形態では、組成物は、約0.02~約1.2mg/m(例えば、約0.02、0.08、0.2、0.4、0.6、0.8、1、または1.2mg/mのいずれか)の投薬量で投与される。一部の実施形態では、化合物は、約0.001~約0.05mg/mL(例えば、約0.002~約0.01mg/mL)の濃度で投与される。一部の実施形態では、化合物は、約0.1Mの酢酸ナトリウム/酢酸を含む医薬組成物として投与される。一部の実施形態では、個体は、過去に全身治療を少なくとも1回受けたことがあるか、または失敗したことがある。一部の実施形態では、がんは、局所進行性または転移性である。
【0132】
一部の実施形態では、個体のがん(例えば、肝臓がん、肺がん、または結腸直腸がん)を処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与する(例えば、注入により)ステップを含み、化合物が、3週間、毎週1日目に投与され、その後1週間休薬される、方法が提供される。一部の実施形態では、組成物は、約0.2~約1.2mg/m(例えば、約0.2、0.4、0.6、0.8、1、または1.2mg/mのいずれか)の投薬量で投与される。一部の実施形態では、化合物は、約0.001~約0.05mg/mL(例えば、約0.002~約0.01mg/mL)の濃度で投与される。一部の実施形態では、化合物は、0.1Mの酢酸ナトリウム/酢酸を含む医薬組成物として投与される。一部の実施形態では、個体は、過去に全身治療を少なくとも1回受けたことがあるか、または失敗したことがある。一部の実施形態では、がんは、局所進行性または転移性である。
【0133】
一部の実施形態では、個体のがん(例えば、肝臓がん、肺がん、または結腸直腸がん)を処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与する(例えば、注入により)ステップを含み、化合物が、3週間、毎週1日目に投与され、その後1週間休薬される、方法が提供される。一部の実施形態では、組成物は、約0.02~約1.2mg/m(例えば、約0.02、0.08、0.2、0.4、0.6、0.8、1、または1.2mg/mのいずれか)の投薬量で投与される。一部の実施形態では、化合物は、約0.001~約0.05mg/mL(例えば、約0.002~約0.01mg/mL)の濃度で投与される。一部の実施形態では、化合物は、0.1Mの酢酸ナトリウム/酢酸を含む医薬組成物として投与される。一部の実施形態では、個体は、過去に全身治療を少なくとも1回受けたことがあるか、または失敗したことがある。一部の実施形態では、がんは、局所進行性または転移性である。
【0134】
一部の実施形態では、個体のがん(例えば、肝臓がん、肺がん、または結腸直腸がん)を処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与する(例えば、注入により)ステップを含み、化合物が、2週間連続的に投与され、その後1週間休薬される、方法が提供される。一部の実施形態では、組成物は、約0.4~約1.2mg/m(例えば、約0.4、0.6、0.8、1、または1.2mg/mのいずれか)の投薬量で投与される。一部の実施形態では、化合物は、約0.001~約0.05mg/mL(例えば、約0.002~約0.01mg/mL)の濃度で投与される。一部の実施形態では、化合物は、0.1Mの酢酸ナトリウム/酢酸を含む医薬組成物として投与される。一部の実施形態では、個体は、過去に全身治療を少なくとも1回受けたことがあるか、または失敗したことがある。一部の実施形態では、がんは、局所進行性または転移性である。
【0135】
一部の実施形態では、個体のがん(例えば、肝臓がん、肺がん、または結腸直腸がん)を処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物(例えば、以下の表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩を投与する(例えば、注入により)ステップを含み、化合物が、2週間連続的に投与され、その後1週間休薬される、方法が提供される。一部の実施形態では、組成物は、約0.04~約1.2mg/m(例えば、約0.04、0.08、0.4、0.6、0.8、1、または1.2mg/mのいずれか)の投薬量で投与される。一部の実施形態では、化合物は、約0.001~約0.05mg/mL(例えば、約0.002~約0.01mg/mL)の濃度で投与される。一部の実施形態では、化合物は、0.1Mの酢酸ナトリウム/酢酸を含む医薬組成物として投与される。一部の実施形態では、個体は、過去に全身治療を少なくとも1回受けたことがあるか、または失敗したことがある。一部の実施形態では、がんは、局所進行性または転移性である。
バイオマーカー
【0136】
一部の実施形態では、PI3Kおよび/またはpAKTのレベルは、処置のための患者を選択するための基礎として使用することができる。PI3Kおよび/またはpAKTのレベルは、例えば、以下のいずれか1つまたは複数を決定する(およびアセスメントの一助にする)ために使用することができる。a)個体が処置を最初に受けることが適切である可能性があるまたは可能性が高い、b)個体が処置(単数または複数)を最初に受けることが不適切である可能性があるまたは可能性が高い、c)処置に対する応答性、d)個体が処置を受けることを継続することが適切である可能性があるまたは可能性が高い、e)個体が処置(単数または複数)を受けることが不適切である可能性があるまたは可能性が高い、f)投薬量の調整、およびg)臨床利益の可能性の予測。本出願は、これらの方法のいずれかを包含する。
【0137】
一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト個体)のがんを処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物を投与する(例えば、静脈内に投与する)ステップを含み、個体が、高レベルのPI3Kを有しており、必要に応じて化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト個体)のがんを処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物を投与する(例えば、静脈内に投与する)ステップを含み、PI3Kのレベルが、処置のための個体を選択するための基礎として使用され、必要に応じて化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、個体は、高レベルのPI3Kを有している場合、処置のために選択される。一部の実施形態では、PI3Kのレベルは、免疫組織化学的検査法によって決定される。一部の実施形態では、PI3Kのレベルは、タンパク質の発現レベルに基づいて決まる。一部の実施形態では、PI3Kのレベルは、mRNAレベルに基づいて決まる。一部の実施形態では、方法は、処置の前にPI3Kのレベルを決定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、PI3Kに基づいて処置のための個体を選択するステップをさらに含む。
【0138】
一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト個体)のがんを処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物を投与する(例えば、静脈内に投与する)ステップを含み、個体が、高レベルのpAKTを有しており、必要に応じて化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト個体)のがんを処置する方法であって、個体に、有効量の式Iの化合物を投与する(例えば、静脈内に投与する)ステップを含み、pAKTのレベルが、処置のための個体を選択するための基礎として使用され、必要に応じて化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、方法が提供される。一部の実施形態では、個体は、高レベルのpAKTを有している場合、処置のために選択される。一部の実施形態では、PI3Kのレベルは、免疫組織化学的検査法によって決定される。一部の実施形態では、方法は、処置の前にpAKTのレベルを決定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、PI3Kに基づいて処置のための個体を選択するステップをさらに含む。
式(I)の化合物
【0139】
本明細書に記載される方法において使用される化合物は、式Iの化合物
【化5】
またはその薬学的に許容される塩である[式中、
Zは、-ORまたは-NRであり、
は、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、Rは、水素、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、Rは、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであるか、またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルを形成する]。
【0140】
一部の実施形態では、Zは、-ORである。一部の実施形態では、Zは、-ORであり、Rは、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、または必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルである。一部の実施形態では、Rは、必要に応じて置換されているアルキルである。一部の実施形態では、Rは、必要に応じて置換されているエチルである。一部の実施形態では、Rは、ヘテロシクロアルキルによって置換されているエチルである。一部の実施形態では、Rは、ピロリジニル(例えば、ピロリジン-1-イル)またはモルホリニル(例えば、モルホリン-4-イル)によって置換されているエチルである。
【0141】
一部の実施形態では、Zは、-NRである。一部の実施形態では、Rは、水素、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、または必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルである。一部の実施形態では、Rは、水素である。一部の実施形態では、Rは、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、または必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルである。一部の実施形態では、Rは、必要に応じて置換されているアルキルである。一部の実施形態では、Rは、必要に応じて置換されているエチルまたは必要に応じて置換されているプロピル(例えば、n-プロピル)である。一部の実施形態では、Rは、ヘテロシクロアルキルによって置換されているエチルである。一部の実施形態では、Rは、ピロリジニル(例えば、ピロリジン-1-イル)またはモルホリニル(例えば、モルホリン-4-イル)によって置換されているエチルである。一部の実施形態では、Rは、カルボン酸によって置換されているn-プロピルである。一部の実施形態では、Rは、水素、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、または必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルであり、Rは、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、または必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルである。一部の実施形態では、Rは、水素であり、Rは、必要に応じて置換されているアルキルである。一部の実施形態では、Rは、水素であり、Rは、必要に応じて置換されているエチルまたは必要に応じて置換されているプロピル(例えば、n-プロピル)である。一部の実施形態では、Rは、水素であり、Rは、ヘテロシクロアルキルによって置換されているエチルである。一部の実施形態では、Rは、水素であり、Rは、ピロリジニル(例えば、ピロリジン-1-イル)またはモルホリニル(例えば、モルホリン-4-イル)によって置換されているエチルである。一部の実施形態では、Rは、水素であり、Rは、カルボン酸によって置換されているn-プロピルである。
【0142】
一部の実施形態では、Zは、-NRであり、RおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキルを形成する。一部の実施形態では、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、0個または1個の追加の環ヘテロ原子を含む4~8員のヘテロシクロアルキルを形成する。一部の実施形態では、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、1個の追加の環窒素または酸素原子を含有する6員のヘテロシクロアルキルを形成する。一部の実施形態では、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ピペラジニル(例えば、ピペラジン-1-イル)またはモルホリニル(例えば、モルホリン-4-イル)を形成する。
【0143】
代表的な化合物は、表1に列挙される。
【表1-1】
【表1-2】
1化学名は、ChemBioDraw(登録商標)Ultra version 16.0.0.82 (68)ソフトウェアを使用して生成される。
医薬組成物
【0144】
本明細書に記載される化合物は、化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物で提供することができる。一部の実施形態では、医薬組成物は、ヒトに投与するのに適している。一部の実施形態では、医薬組成物は、獣医学的状況における家庭用ペットおよび農業用動物などの哺乳動物に投与するのに適している。
【0145】
組成物の多種多様な適切な製剤が存在する。以下の製剤および方法は、単に例示的なものであり、いかなる方式でも制限するものではない。例えば、非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を所期のレシピエントの血液と適合性があるものにする溶質を含有することができる水性および非水性の等張無菌注射溶液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤および防腐剤を含むことができる水性および非水性の無菌懸濁液が含まれる。製剤は、単回用量または多回用量の封止容器、例えばアンプルおよびバイアルで提示することができ、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができ、使用直前に注射用の無菌液体賦形剤(例えば、水)を添加するだけでよい。即時注射溶液および懸濁液は、上記の種類の滅菌粉末、顆粒、または錠剤から調製することができる。
【0146】
本明細書に記載される化合物は、一部の実施形態では、酢酸ナトリウム、酢酸、エタノール、グリセリナム(glycerinum)、ポロキサマー、ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール、グリシン、L-システイン塩酸塩、ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン、および水から選択される添加剤を用いて製剤化することができる。一部の実施形態では、製剤は、酢酸ナトリウム、酢酸、および水から選択される添加剤を含む。例えば一部の実施形態では、製剤は、式Iの化合物および酢酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、製剤は、式Iの化合物および酢酸を含む。一部の実施形態では、製剤は、式Iの化合物および水を含む。一部の実施形態では、製剤は、式Iの化合物、酢酸ナトリウム、および酢酸を含む。一部の実施形態では、製剤は、式Iの化合物、酢酸ナトリウム、および水を含む。一部の実施形態では、製剤は、式Iの化合物、酢酸、および水を含む。一部の実施形態では、製剤は、式Iの化合物、酢酸ナトリウム、酢酸、および水を含む。
【0147】
一部の実施形態では、化合物は、約0.01M、0.05M、0.1M、0.12M、0.15M、または0.2Mのいずれかの酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液を含む医薬組成物に存在する。一部の実施形態では、組成物は、約0.1Mの酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液を含む。
製造品およびキット
【0148】
本開示は、さらに、本明細書に記載される1つもしくは複数の化合物、または本明細書に記載される化合物を含む組成物を含む、本発明の方法を行うためのキットを提供する。キットは、本明細書に開示される化合物のいずれかを用いることができる。一変形形態では、キットは、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を用いる。キットは、本明細書に記載される使用のいずれか1つまたは複数のために使用することができ、したがって、本明細書に記載される任意の疾患を処置するため、例えばがんを処置するための説明書を含有することができる。
【0149】
本発明のキットは、式Iの化合物を含む1つまたは複数の容器を含み、一部の実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかによる使用のための説明書をさらに含む。キットは、処置に適した個体の選択についての説明をさらに含むことができる。本発明のキットで提供される説明書は、典型的に、ラベルまたはパッケージ添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)上に記載された説明書であるが、機械可読説明書(例えば、磁気または光学的保存ディスクに書き込まれた説明書)も許容される。
【0150】
本発明のキットは、適切なパッケージング中にある。適切なパッケージングには、これに限定されるものではないが、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性パッケージング(例えば、封止Mylarバッグまたはプラスチックバッグ)等が含まれる。キットは、必要に応じて追加の構成成分、例えば緩衝液および説明情報を提供することができる。したがって本出願はまた、バイアル(例えば、封止バイアル)、ボトル、ジャー、可撓性パッケージング等を含む製造品を提供する。
【0151】
組成物の使用に関する説明書は、一般に、所期の処置のための投薬量、投薬スケジュール、および投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、多回用量パッケージ)または部分単位用量であってよい。例えば、長期間、例えば1週、2週、3週、4週、6週、8週、3カ月、4カ月、5カ月、7カ月、8カ月、9カ月の間、またはそれよりも長い期間のいずれかにわたり、個体に有効な治療を提供するのに十分な投薬量の本明細書に開示される通りの式Iの化合物を含有するキットを提供することができる。キットはまた、薬局、例えば院内薬局および調剤薬局で保存し、使用するのに十分な量でパッケージされた、複数の単位用量の式Iの化合物および医薬組成物、ならびに使用のための使用説明書を含むことができる。
【0152】
一部の実施形態では、キットは、式Iの化合物、およびがんの有効な処置のために式Iの化合物を投与するための説明書を含む。
【0153】
本発明のキット、薬、および組成物は、本明細書に記載される任意の1つまたは複数の態様またはパラメーターを含むことができる。
【0154】
当業者は、本発明の範囲および趣旨内でいくつかの実施形態が可能であることを認識されよう。ここで本発明を、以下の非限定的な実施例を参照することによって、より詳細に説明する。以下の実施例によって本発明をさらに例示するが、当然のことながら、本発明の範囲をいかなる方式でも制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0155】
(実施例1)
例示的化合物の第I相研究
例示的な式Iの化合物(例えば、表1に列挙される化合物のいずれか1つ)またはその薬学的に許容される塩の第I相研究を、局所進行性または転移性固形腫瘍で実施する。
【0156】
研究の第1の目的は、局所進行性または転移性固形腫瘍を有する患者に静脈内(IV)注入によって週3回投与した(1日目、2日目および3日目に3週間投与した後、1週間の休薬)、例示的な式Iの化合物の安全性および耐用性を評価すること、ならびに例示的な式Iの化合物の最大耐性用量(MTD)を決定することである。MTDに達しない場合、安全審理委員会(SRC)の後に最適な生物学的用量(OBD)が決定され、研究者によって、最適バランスの毒性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)、および臨床応答シグナルが議論される。
【0157】
研究の第2の目的は、局所進行性または転移性固形腫瘍を有する患者にIV反復注入によって投与した例示的な式Iの化合物のPKを特徴付けること、例示的な式Iの化合物の作用について潜在的なバイオマーカー(例えば、PI3KおよびpAKT)を調査すること、ならびに固形腫瘍の応答評価基準(RECIST)1.1基準による客観的奏功率および応答期間を含む例示的な式Iの化合物の予備的有効性を評価することである。
【0158】
第I相の非盲検研究を、標準治療が存在しないか、または無効であるもしくは耐えられないことが証明されている局所進行性または転移性固形腫瘍を有する患者に、IV注入によって週3回、3週間投与される(各週の1日目、2日目および3日目に投与した後、1週間の休薬)、例示的な式Iの化合物で実施する。
【0159】
研究の第1部は、標準の3+3設計を使用する用量漸増である。週3回投与すべき出発用量を、初期臨床研究からのPKおよび安全性知見に基づいて決定する。出発用量は、1日当たり0.4mg/mの例示的な式Iの化合物であり、その後の用量漸増は、コホート間で20~100%の用量増大で進行する。用量は、初期コホートでは100%増大することができるが、用量漸増の増分は、安全性データに基づいて決定される。具体的には、処置に関係するグレード2またはそれよりも高い毒性または用量制限毒性(DLT)が生じたら、コホート間の用量増分は、50%以下とする。MTDに達するまで投薬を継続して、推奨される第II相用量(RP2D)を提供する。中間用量レベルおよび代替投薬スケジュールを、初期投薬コホートから新しく得られた安全性、PK、および有効性データに基づいて調査することができる。患者は、サイクル1の1日目、2日目および3日目に、注入開始後6時間まで、処置室内で研究スタッフによって安全性についてモニタリングされる。その後の注入については、患者の退院は、臨床的観察に基づいて行われ、患者は、心電図(ECG)変化、または他の徴候もしくは症候が観察されなければ、注入の終了時に退院して帰宅することができる。各処置サイクルは28日であり、1週間当たり3回(各週の1日目、2日目および3日目)の投薬を3週間、次に休薬1週間から構成される。用量漸増および次のコホートのオープンは、サイクル1全体および28日のDLTウィンドウ期を通して耐性の許容が実証された後に初めて行われる。決定は、SRCによって承認される。
【0160】
研究の第2部は、用量拡大である。拡大部は、RP2Dでそれぞれ処置した患者20人の具体的な腫瘍型(単数または複数)に基づく、すべての固形腫瘍および追加の3つまでのコホートからなる。このコホート拡大の目標は、選択された腫瘍型のそれぞれにおけるRP2D用量での毒性およびPKプロファイルを確認すること、ならびに拡大バイオマーカーデータを得ることである。最終的な試料サイズは、各コホートで評価された用量レベルの数および観察されたDLTの数に応じて変わり得る。すべての患者が、研究処置中、および研究薬物の最終投薬後30日間の間、有害事象(AE)について注意深く追跡される。AEは、アメリカ国立がん研究所の有害事象一般用語基準(NCI CTCAE)、バージョン4.03に従って類別される。例示的な式Iの化合物の投薬は、疾患進行、禁制的毒性、または患者離脱がない限り、継続される。研究完了時の来院は、すべての患者について、例示的な式Iの化合物の最終投薬後4週間以内に実施される。
【0161】
この研究の調査生成物は、例示的な式Iの化合物である。例示的な式Iの化合物の注射は、5mLバイアル(0.1mg/mL)として提供され、0.9%塩化ナトリウムで所望の濃度に希釈され、2時間(±10分)の緩徐定速静脈内注入として投与される。
【0162】
研究のための適格患者は、以下の基準を満たさなければならない。1.インフォームドコンセント用紙に署名すること、2.>18歳であること、3.組織学的または細胞学的に実証されたがんを示していること、4.過去に全身治療を少なくとも1回受けたことがあるか、または失敗したことがあるか、または拒否を示したことがある、局所進行性または転移性固形悪性腫瘍を示していること、5.米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータス0または1を示していること、ならびに6.潜在的な生殖能力を有する男性または女性患者は、研究中、および処置の最終日後90日間の間、コンドーム、スポンジ、フォーム、ゼリー、ペッサリーもしくは子宮内デバイス(IUD)、避妊薬(経口、移植または注射可能な)、または他の妊娠回避対策の二重バリア避妊を使用することに同意しなければならない。
【0163】
各患者についての平均研究期間は、およそ7カ月までになると推定される。全研究期間は、およそ12~24カ月である。
【0164】
研究についての安全性パラメーターには、身体検査、ECOGパフォーマンスステータス、バイタルサイン、12誘導心電図(ECG)、AE、および臨床検査試験が含まれる。
【0165】
腫瘍応答は、すべての患者についてベースラインで、および最初の6サイクルについては2サイクル毎に、次にその後は3サイクル毎に、イメージング(コンピュータ断層撮影法(CT)または磁気共鳴画像法(MRI))によって決定される。応答は、固形腫瘍応答評価基準(RECIST-バージョン1.1)を使用してアセスメントされる。適用できる場合、血清腫瘍マーカーの測定を含む応答アセスメントの他の方法も、適用できる場合には使用される。腫瘍組織は、バイオマーカー(例えば、PI3KおよびpAKT)の存在について分析される。
【0166】
完全なPKプロファイルを、サイクル1で、1日目および3日目の投薬について、ならびに任意の用量低減の第1のサイクルについて収集する。スパースPKプロファイルを、サイクル1~3で収集する。
(実施例2)
例示的化合物の連続投薬
【0167】
提案されたこの研究では、化合物を1~14日目に連続的に24時間投与し、その後1週間休薬することを除いて、実施例1に論じられるものと類似の臨床試験を例示的な式Iの化合物で実施する。化合物の安全性および有効性を、実施例1で論じられる通り評価する。
(実施例3)
例示的化合物の臨床試験
【0168】
この実施例は、様々な腫瘍型に対する例示的な式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の有効性を研究した臨床試験の結果を提供する。例示的な式Iの化合物を、2時間の静脈内(IV)注入によって、週1回、3週間、患者に投与した。処置サイクルは、21日の処置および7日の休薬から構成された28日と定義した。完全な処置サイクルの数は、1~4の範囲であった。例示的な式Iの化合物の用量は、0.08~1.0mg/mの範囲であった。研究のための患者には、男性および女性の両方が含まれていた。この臨床研究で調査した腫瘍型には、結腸直腸、乳房、肝臓、胃、および非小細胞肺がんが含まれていた。研究最後の患者の来院時に、有効性アセスメントを決定した。結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0169】
表2の略語:SD、安定疾患;およびPD、進行性疾患。
【0170】
利用可能な安全性データの分析では、例示的な式Iの化合物は、一般に、緩徐定速IV注入によって週1回投与される場合、十分に認容性があった。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
個体のがんを処置する方法であって、前記個体に、有効量の式Iの化合物
【化6】

またはその薬学的に許容される塩[式中、
Zは、-OR または-NR であり、
は、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、R は、水素、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、R は、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、もしくは必要に応じて置換されているヘテロアリールであるか、またはR およびR は、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルを形成する]
を投与するステップを含み、
前記化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、
方法。
(項目2)
前記化合物が、少なくとも週2回投与される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記化合物が、少なくとも週3回投与される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記化合物が、1週間の間で少なくとも3日間連続で投与される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記化合物が、1週間の間で2日毎に1回投与される、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記化合物が、週3回投与される、項目3に記載の方法。
(項目7)
前記化合物が、各週の1日目、2日目および3日目に投与される、項目4に記載の方法。
(項目8)
前記化合物が、各週の1日目、3日目および5日目に投与される、項目5に記載の方法。
(項目9)
前記化合物が、少なくとも2週間、毎日投与される、項目3に記載の方法。
(項目10)
前記化合物が、少なくとも週1回、少なくとも2週間投与される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記化合物が、少なくとも週1回、少なくとも3週間投与される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記化合物が、21日の投薬サイクルで、少なくとも週1回、2週間投与され、1週間休薬される、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記化合物が、28日の投薬サイクルで、少なくとも週1回、3週間投与され、1週間休薬される、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記化合物が、約0.02mg/m ~約2mg/m の投薬量範囲で投与される、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記化合物が、約0.2mg/m ~約2mg/m の投薬量範囲で投与される、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記個体に投与される前記化合物の総用量が、1週間当たり少なくとも約0.4mg/m である、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、および口腔がんからなる群から選択される、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記がんが、結腸直腸がん、乳がん、肝臓がん、胃がん、および非小細胞肺がんからなる群から選択される、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記がんが、局所進行性または転移性がんである、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記化合物が、静脈内投与される、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記化合物が、各投与時に少なくとも30分間の注入によって投与される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記化合物が、各投与時に少なくとも2時間の注入によって投与される、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記化合物が、各投与時に少なくとも24時間の注入によって連続的に投与される、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記個体が、高レベルのPI3Kおよび/またはpAKTを有している、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記個体が、過去に全身治療を少なくとも1回受けたことがあるか、または失敗したことがある、項目1~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記化合物が、約0.002mg/mL~約0.01mg/mLの濃度で投与される、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記化合物が、前記化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に存在する、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記薬学的に許容される担体が、酢酸塩または酢酸を含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記個体が、ヒトである、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記化合物が、Zが-OR である式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩である、項目1~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
が、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、または必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルである、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記化合物が、Zが-NR である式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩である、項目1~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
が、水素、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、または必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルであり、R が、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、または必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルである、項目32に記載の方法。
(項目34)
が、水素であり、R が、必要に応じて置換されているアルキルである、項目33に記載の方法。
(項目35)
およびR が、それらが結合している原子と一緒になって、4~8員のヘテロシクロアルキルを形成する、項目32に記載の方法。
(項目36)
前記化合物が、化合物番号1~7、またはその薬学的に許容される塩から選択される、項目1~29のいずれか一項に記載の方法。
【化7】

【化8】