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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】可搬型通信装置、及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   B31F 1/20 20060101AFI20231024BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B31F1/20
G05B19/418 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022152601
(22)【出願日】2022-09-26
【審査請求日】2023-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000139931
【氏名又は名称】株式会社ISOWA
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佳道
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】赤松 誠也
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-109029(JP,A)
【文献】特開2020-135371(JP,A)
【文献】特開2015-148933(JP,A)
【文献】特開2021-192180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31F 1/20
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、
前記電源部から供給される電力に基づいて駆動し、紙工機械を構成する対象機器に対して指令を実行する指令装置との間で通信を実行する通信部と、
前記通信部と接続され、前記紙工機械を構成する前記対象機器と通信ケーブルで接続可能な有線インタフェースを有し、前記電源部から供給される電力に基づいて駆動する処理部と、
を備え、
前記処理部は、
前記通信部を介して前記指令装置から取得した指令情報に基づいて、前記紙工機械に係わる情報である紙工機械情報を、前記有線インタフェースに接続された前記対象機器から取得する、可搬型通信装置であって、
前記対象機器は、
前記紙工機械の生産ラインに沿って複数設けられ、
前記紙工機械は、
段ボールシートを製造するコルゲータであり、
複数の前記対象機器は、
管理装置に接続され、原紙供給装置から供給される段ボール原紙の紙継ぎを実行するスプライサを含み、
前記処理部は、
前記スプライサへ紙継ぎを実行させる紙継ぎ指令を送信した時点から紙継ぎの作業が完了した旨の応答を前記スプライサから取得するまでの時間である応答時間、前記原紙供給装置に取り付けられた原紙ロールの重さ、前記原紙供給装置の前記原紙ロールから前記段ボール原紙を排出する搬送速度を、前記有線インタフェースを介して前記管理装置から取得する、可搬型通信装置。
【請求項2】
電源部と、
前記電源部から供給される電力に基づいて駆動し、紙工機械を構成する対象機器に対して指令を実行する指令装置との間で通信を実行する通信部と、
前記通信部と接続され、前記紙工機械を構成する前記対象機器と通信ケーブルで接続可能な有線インタフェースを有し、前記電源部から供給される電力に基づいて駆動する処理部と、
を備え、
前記処理部は、
前記通信部を介して前記指令装置から取得した指令情報に基づいて、前記紙工機械に係わる情報である紙工機械情報を、前記有線インタフェースに接続された前記対象機器から取得する、可搬型通信装置であって、
前記対象機器は、
前記紙工機械の生産ラインに沿って複数設けられ、
複数の前記対象機器は、
PLCをそれぞれ有するとともに、複数の前記対象機器のうち、少なくとも一つは、作業者からの操作入力を受け付け、前記紙工機械に関わる情報の表示を実行する表示操作部を有し、
前記PLCは、
LANインタフェース及びUSBインタフェースのうち、少なくとも一方を有し、
前記有線インタフェースは、
前記LANインタフェース及び前記USBインタフェースをそれぞれ有し、
前記処理部は、
前記紙工機械情報として前記PLCを制御するラダープログラムに係わる制御情報、前記対象機器で発生したエラーの情報、前記対象機器のログ情報、及び前記表示操作部に表示される表示情報のうち、少なくとも一つの情報を、前記対象機器から取得する、可搬型通信装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記指令装置からリモートデスクトップ機能で接続が可能であり、前記有線インタフェースを介して前記対象機器との間で通信を確立させ、前記指令装置からリモートデスクトップ機能により遠隔操作された操作内容に基づいて前記指令情報を取得し、前記通信部を介して前記指令装置との間で通信を確立した後、確立した通信が切断された場合にも前記対象機器との間の通信を維持し取得した前記指令情報に基づく処理を継続する、請求項1又は請求項2に記載の可搬型通信装置。
【請求項4】
前記電源部、前記通信部、及び前記処理部を収容する収容ケースと、
前記電源部に接続され前記収容ケースの外に排出される電源ケーブルと、
をさらに備え、
前記電源部は、
前記電源ケーブルが外部の電源に接続されることで、前記通信部及び前記処理部への電力供給を開始し、
前記通信部は、
前記電源部から電力を供給されると移動通信が実行可能であり、
前記指令装置は、
前記移動通信を介して前記通信部に接続する、請求項1又は請求項2に記載の可搬型通信装置。
【請求項5】
前記対象機器は、
前記紙工機械の生産ラインに沿って複数設けられ、機種及び前記生産ラインにおける位置の違いに応じて異なるプライベートIPアドレスが設定され、
前記処理部は、
前記指令情報により指定された前記プライベートIPアドレスに基づいて、複数の前記対象機器のうち、接続先の前記対象機器を特定し通信の確立を開始する、請求項1又は請求項2に記載の可搬型通信装置。
【請求項6】
複数の可搬型通信装置と、
令装置と、
工機械と、
前記指令装置に接続される接続用サーバと、
を備え、
前記可搬型通信装置は、
電源部と、
前記電源部から供給される電力に基づいて駆動し、前記紙工機械を構成する対象機器に対して指令を実行する前記指令装置との間で通信を実行する通信部と、
前記通信部と接続され、前記紙工機械を構成する前記対象機器と通信ケーブルで接続可能な有線インタフェースを有し、前記電源部から供給される電力に基づいて駆動する処理部と、
を備え、
前記処理部は、
前記通信部を介して前記指令装置から取得した指令情報に基づいて、前記紙工機械に係わる情報である紙工機械情報を、前記有線インタフェースに接続された前記対象機器から取得し、
数の前記可搬型通信装置の各々は、
異なる生産工場のそれぞれに設置され、前記通信部に異なるグローバルIPアドレスが設定され、移動通信により前記接続用サーバと接続可能であり、
前記接続用サーバは、
前記指令装置により指定されたグローバルIPアドレスにより、複数の前記可搬型通信装置のうち、接続先の前記可搬型通信装置を設定する、通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙工機械と通信を実行する可搬型通信装置、及び通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製造工場等に設置した機械と通信する技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、通信ネットワークを介して保守対象機器を管理する機器管理システムについて記載されている。特許文献1の機器管理システムの携帯端末は、通信装置を介して保守対象機器の機器IDを取得し、取得した機器IDを、通信ネットワークを介してサーバ装置に送信する。サーバ装置は、受信した機器IDに応じたメニュー画面を生成し携帯端末に送信する。携帯端末は、受信したメニュー画面を表示し保守作業者の指示を受け付け、保守対象機器から保守情報を取得しサーバ装置へ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-109029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の機器管理システムでは、LANなどの通信手段により接続された保守対象機器に対して1つの通信装置が設置されている。ここで、例えば、保守対象機器にトラブルが発生した際に、トラブルの原因を確認するためにメーカ側が各保守対象機器の制御情報を取得する。通信手段で接続された機器管理システムをユーザが複数所有する場合、各システムに通信装置を1台ずつ設置する必要が生じる。このため、設備コストが高くなる問題が生じる。
【0005】
また、生産ラインを構成する複数の保守対象機器を通信手段で接続する場合、あるいは異なる生産ラインを構成する保守対象機器を通信手段で接続する場合、生産ラインが長くなればなるほど、1台の通信装置と複数の保守対象機器を接続する通信ケーブルが長くなる、あるいは無線通信距離が長くなる虞がある。特に、紙工機械は、全長が数十m以上と長くなる。このため、確保すべき通信経路が長くなる。長距離の通信を可能とする設備が必要となり、設備コストが高くなるとともに、工場内での作業に支障をきたす虞がある。あるいは、機械管理システムの各保守対象機器を1つのネットワークに接続することが困難となり、各保守対象機器に通信装置を設置する必要が生じる。また、既存の設置済みの保守対象機器の中には、無線通信に対応していない機器も含まれ、古い機器から制御情報を取得できない虞がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、複数の対象機器から紙工機械情報を取得できる可搬型通信装置、及び通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、電源部と、前記電源部から供給される電力に基づいて駆動し、紙工機械を構成する対象機器に対して指令を実行する指令装置との間で通信を実行する通信部と、前記通信部と接続され、前記紙工機械を構成する前記対象機器と通信ケーブルで接続可能な有線インタフェースを有し、前記電源部から供給される電力に基づいて駆動する処理部と、を備え、前記処理部は、前記通信部を介して前記指令装置から取得した指令情報に基づいて、前記紙工機械に係わる情報である紙工機械情報を、前記有線インタフェースに接続された前記対象機器から取得する、可搬型通信装置であって、前記対象機器は、前記紙工機械の生産ラインに沿って複数設けられ、前記紙工機械は、段ボールシートを製造するコルゲータであり、複数の前記対象機器は、管理装置に接続され、原紙供給装置から供給される段ボール原紙の紙継ぎを実行するスプライサを含み、前記処理部は、前記スプライサへ紙継ぎを実行させる紙継ぎ指令を送信した時点から紙継ぎの作業が完了した旨の応答を前記スプライサから取得するまでの時間である応答時間、前記原紙供給装置に取り付けられた原紙ロールの重さ、前記原紙供給装置の前記原紙ロールから前記段ボール原紙を排出する搬送速度を、前記有線インタフェースを介して前記管理装置から取得する、可搬型通信装置を開示する。
また、本明細書は、電源部と、前記電源部から供給される電力に基づいて駆動し、紙工機械を構成する対象機器に対して指令を実行する指令装置との間で通信を実行する通信部と、前記通信部と接続され、前記紙工機械を構成する前記対象機器と通信ケーブルで接続可能な有線インタフェースを有し、前記電源部から供給される電力に基づいて駆動する処理部と、を備え、前記処理部は、前記通信部を介して前記指令装置から取得した指令情報に基づいて、前記紙工機械に係わる情報である紙工機械情報を、前記有線インタフェースに接続された前記対象機器から取得する、可搬型通信装置であって、前記対象機器は、前記紙工機械の生産ラインに沿って複数設けられ、複数の前記対象機器は、PLCをそれぞれ有するとともに、複数の前記対象機器のうち、少なくとも一つは、作業者からの操作入力を受け付け、前記紙工機械に関わる情報の表示を実行する表示操作部を有し、前記PLCは、LANインタフェース及びUSBインタフェースのうち、少なくとも一方を有し、前記有線インタフェースは、前記LANインタフェース及び前記USBインタフェースをそれぞれ有し、前記処理部は、前記紙工機械情報として前記PLCを制御するラダープログラムに係わる制御情報、前記対象機器で発生したエラーの情報、前記対象機器のログ情報、及び前記表示操作部に表示される表示情報のうち、少なくとも一つの情報を、前記対象機器から取得する、可搬型通信装置を開示する。
尚、本発明は、可搬型通信装置としての実施に限らず、例えば、可搬型通信装置を備える通信システムとして実施しても極めて有益である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の可搬型通信装置、通信システムによれば、複数の対象機器から紙工機械情報を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例に係る通信システムの構成を示す図。
図2】コルゲータに可搬型通信装置を接続した通信システムの構成を示す図。
図3】製函機に可搬型通信装置を接続した通信システムの構成を示す図。
図4】可搬型通信装置の斜視図。
図5】可搬型通信装置のブロック図。
図6】紙工機械情報の取得処理のフロー図。
図7】原仕掛け及びスプライサを示す図。
図8】3つの紙継ぎ箇所が切断範囲に収まった場合と、収まってない場合を示す図。
図9】可搬型通信装置が表示するグラフであり、応答時間と搬送速度の関係を示すグラフ。
図10】可搬型通信装置が表示するグラフであり、応答時間と残面積(重さ)の関係を示すグラフ。
図11】比較例のコルゲータと指令装置を備える通信システムの構成を示す図。
図12】別例のコルゲータに可搬型通信装置を接続した通信システムの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の可搬型通信装置及び通信システムを具体化した一実施例について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施例の通信システム10の構成を示している。図1に示すように、通信システム10は、生産工場17に設けられた複数の紙工機械11及び可搬型通信装置12と、メーカ側19に設けられた指令装置13及び接続用サーバ14を備えている。通信システム10は、生産工場17に設置された紙工機械11と、メーカ側19の指令装置13との通信を、可搬型通信装置12を介して実行するシステムである。
【0011】
図1に示すように、通信システム10は、複数の生産工場17と通信可能となっている。複数の生産工場17の各々には、可搬型通信装置12が設置されている。尚、通信システム10は、1つの生産工場17だけを備える構成でも良い。生産工場17には、紙工機械11として、例えば、1つのコルゲータ11Aと、2つの段ボールシート製函機(以下、製函機という)11Bが設置されている。以下の説明では、コルゲータ11Aや製函機11Bを総称する場合は、紙工機械11と称して説明する。また、本発明の紙工機械は、コルゲータ11Aや製函機11Bに限らず、他の紙の加工を実行する機械でも良い。また、上記した生産工場17の構成は、一例である。例えば、生産工場17は、コルゲータ11A又は製函機11Bの一方の装置だけを設置する構成でも良く、コルゲータ11Aを複数台備えた構成でも良く、製函機11Bを1台だけ備えた構成でも良い。
【0012】
(紙工機械11について)
図2は、一例として、コルゲータ11Aに可搬型通信装置12を接続した状態を示している。図1及び図2に示すように、コルゲータ11Aは、生産ライン21と、管理装置22を備えている。生産ライン21は、原紙掛け31、スプライサ32、シングルフェーサ33、カッタ34、スタッカ35等を備え、これらの装置を互いに連結して1つの生産ラインを構成し、原紙ロールに巻かれた段ボール原紙を加工、貼り付け等して段ボールシートを生産する。管理装置22は、例えば、生産ライン21を構成するこれらの装置のログ等を管理する装置である。管理装置22は、例えば、生産ライン21を構成する原紙掛け31等の各装置と、I/Oインタフェース等を介して接続されており、各装置から入力した信号の情報をログデータとして記憶する。また、図2に示す例では、原紙掛け31、スプライサ32、管理装置22等がLANなどのネットワークで接続されていないコルゲータ11Aを示している。後述する図12では、これらの装置をネットワークで接続した別例を説明する。
【0013】
原紙掛け31は、例えば、裏ライナ(裏ライナ原紙)、中芯(中芯原紙)及び表ライナ(表ライナ原紙)のそれぞれについて原紙ロールを一対備え、各原紙ロールから段ボール原紙を供給する。原紙掛け31は、本発明の原紙供給装置の一例である。スプライサ32は、3つの段ボール原紙のそれぞれに対応して設けられ、段ボール原紙に対応する一対の原紙ロールのうち、一方の段ボール原紙の残長が少なくなったタイミング、又は、ロット替えによる段ボール原紙の変更のタイミングなどに応じて、使用中の段ボール原紙ともう一方の原紙ロールの段ボール原紙とを紙継ぎする(スプライスする)装置である。シングルフェーサ33は、上段ロールと下段ロールとにより中芯に波形形状の段を形成し、この波形形状の段が形成された中芯と裏ライナとを、糊ロールにより中芯の段頂に付着させた糊によって貼り合せて片面段ボールシートを製造する。カッタ34は、両面段ボールシートをシートの流れ方向における所定の切断範囲(切断長さ)で切断する。スタッカ35は、カッタ34で切断された各両面段ボールシートを積み重ねる。
【0014】
尚、図2は、図面が煩雑となるのを避けるため、生産ライン21を構成する装置の一部を省略している。例えば、生産ライン21を構成する装置としては、上記した装置以外に、シングルフェーサ33により製造された片面段ボールシートを乾燥させ、生産ライン21の搬送速度の変動に対応して片面段ボールシートを滞留させるコルゲータブリッジ、片面段ボールシートに表ライナを貼り合せて両面段ボールシートを製造するダブルフェーサなどがある。
【0015】
また、図1及び図3に示すように、製函機11Bの各々は、生産ライン23と、管理装置24を備えている。生産ライン23は、給紙装置41、印刷装置42、クリーザ装置43、フォルダグルア装置44、カウンタエジェクタ装置45等を備え、これらの装置を互いに連結して1つの生産ラインを構成し、段ボールシートに対する加工、印刷、折り畳み等を実行し、段ボール箱を生産する。管理装置24は、例えば、製函機11Bを構成するこれらの装置のログ等を管理する装置である。管理装置24は、例えば、生産ライン23を構成する給紙装置41等の各装置と、I/Oインタフェース等を介して接続されており、各装置から入力した信号の情報をログデータとして記憶する。また、図3に示す例では、給紙装置41、管理装置24等がLANなどのネットワークで接続されていない製函機11Bを示している。
【0016】
給紙装置41は、段ボールシートを1枚ずつ印刷装置に送り出す装置である。印刷装置42は、給紙装置41から供給された段ボールシートに印刷を施す装置である。クリーザ装置43は、印刷装置42により印刷が施された段ボールシートに罫線加工を施す装置である。フォルダグルア装置44は、段ボールシートに接着剤を塗布して折り畳み箱状に接合する装置である。カウンタエジェクタ装置45は、この箱状に接合された段ボールシートを計数し、所定のシート枚数のバッチを形成して送り出す装置である。
【0017】
尚、図3は、図2と同様に、図面が煩雑となるのを避けるため、生産ライン23を構成する装置の一部を省略している。例えば、生産ライン23を構成する装置としては、上記した装置以外に、段ボールシートに溝切り加工を施すスロッタ装置や、段ボールシートに打ち抜き加工を施すダイカッタ装置などがある。また、図2に示すコルゲータ11A、図3に示す製函機11Bの構成は、一例である。例えば、3つの生産ライン21,23を管理する管理装置22,24は、1台の装置であっても良い。また、コルゲータ11Aや製函機11Bは、管理装置22,24を備えない構成でも良い。
【0018】
また、上記した生産ライン21,23のそれぞれを構成する装置(原紙掛け31や印刷装置42など)、及び管理装置22,24は、本発明の対象機器の一例である。このため、これらの装置を総称する場合は、図2及び図3に示すように対象機器50と称して説明する。可搬型通信装置12は、これらの対象機器50から紙工機械11に係わる情報である紙工機械情報51を取得する。具体的には、図2に示すように、生産ライン21を構成する各対象機器50は、各対象機器50に設けられたセンサ等の信号の取り込みや処理を実行するPLC(Programmable Logic Controller)37が設けられている。また、管理装置22は、PLC22A、制御部22B、表示操作部22Cを有している。PLC22Aは、生産ライン21の各対象機器50と接続され信号の処理を実行する。制御部22Bは、管理装置22を統括的に制御し、ログの記憶やエラーの報知などを実行する。表示操作部22Cは、例えば、タッチパネルや操作スイッチであり、作業者からの操作入力を受け付ける。また、表示操作部22Cは、制御部22Bの制御に基づいて、コルゲータ11Aに係わる情報の表示を実行する。
【0019】
同様に、図3に示すように、生産ライン23を構成する各対象機器50は、各対象機器50に設けられたセンサ等の信号の取り込みや処理を実行するPLC47が設けられている。また、管理装置24は、管理装置22と同様に、PLC24A、制御部24B、表示操作部24Cを有している。可搬型通信装置12は、これらの対象機器50に接続され紙工機械情報51を取得する。紙工機械情報51は、例えば、PLC37,22A,47,24A(以下、PLC37等という)で使用するラダープログラム自体や、ラダープログラムで処理する信号のON/OFF情報などの制御情報である。PLC37等は、例えば、LANインタフェース及びUSBインタフェースのうち、少なくとも一方の有線インタフェースを有している。また、紙工機械情報51は、ラダープログラムに関するものに係わらず、対象機器50で発生したエラーの情報、ログ情報(稼働率、生産枚数)でも良い。あるいは、紙工機械情報51は、対象機器50の表示操作部(タッチパネル等、図示略)に表示される表示情報でも良い。
【0020】
(可搬型通信装置12について)
次に、可搬型通信装置12について説明する。図4は、可搬型通信装置12の斜視図を示している。図5は、可搬型通信装置12のブロック図を示している。可搬型通信装置12は、指令装置13と通信可能になっており、紙工機械11の各対象機器50(図2図3参照)に接続され、指令装置13から取得した指令情報25(図1参照)に基づいて紙工機械情報51を対象機器50から取得する。
【0021】
図4及び図5に示すように、可搬型通信装置12は、電源部53、通信部54、処理部55、変圧器56を備えている。また、可搬型通信装置12は、図4に示す直方体形状の箱形の収容ケース58を備えている。可搬型通信装置12は、電源部53、通信部54、処理部55及び変圧器56を取り付けた取付ボード57を収容ケース58に収容している。電源部53は、プラグ部53A、第1ポート53B、第2ポート53Cを備えている。プラグ部53Aは、例えば、コンセント用のプラグであり、電源ケーブル53Dを介して電源部53と接続されている。電源ケーブル53Dは、一端を電源部53に接続され、他端側を収容ケース58の外に排出し、その先端にプラグ部53Aが取り付けられている(図4参照)。尚、電源部53は、バッテリーを備え、外部から電力を供給されない状態でも起動できる構成でも良い。
【0022】
例えば、図5に示す対象機器50は、コルゲータ11Aの対象機器50であり、PLC37の他に電源供給部61と、HUB62を有している。電源供給部61は、例えば、100Vのコンセントである。HUB62は、LANケーブルを介してPLC37に接続されている。生産工場17の作業者は、例えば、紙工機械情報51を取得する対象機器50の前まで可搬型通信装置12を運び、その対象機器50の電源供給部61にプラグ部53Aを差し込む(図5の破線の矢印参照)。これにより、可搬型通信装置12は、取得対象の対象機器50から電源を供給され起動する。尚、プラグ部53Aの接続先は対象機器50に限らず、生産工場17内の他の電源(壁コンセントなど)でも良い。また、対象機器50は、バッテリーを備え、外部から電力を供給されない状態でも起動できる構成でも良い。
【0023】
電源部53は、電源ケーブル53Dと、第1及び第2ポート53B,53Cを金属板53Eによって電気的に接続されている。従って、第1及び第2ポート53B,53Cには、プラグ部53Aに供給された電力が供給される。また、通信部54は、第1ポート54A、第2ポート54B、第3ポート54C、アンテナ部54Dを有している。第2ポート54Bは、電源部53の第2ポート53Cに電源ケーブル59を介して接続され、100Vの電力を供給される。通信部54は、プラグ部53Aが外部電源(電源供給部61など)に接続され、プラグ部53Aを介して電力を供給されると起動する。
【0024】
第1ポート54Aは、例えば、LANポートであり、LANケーブル63を介して処理部55(後述する第1ポート55C)に接続されている。通信部54は、第1ポート54Aを介して処理部55との間でデータの送受信を実行する。第3ポート54Cは、同軸ケーブル54Eを介してアンテナ部54Dに接続されている。アンテナ部54Dは、収容ケース58の上部に取り付けられている(図4参照)。尚、図4に示すアンテナ部54Dの取り付け位置は、一例であり、収容ケース58の外部の任意の位置にアンテナ部54Dを取り付けても良い。また、アンテナ部54Dの少なくとも一部が、収容ケース58の外部で露出していれば良い。或いは、収容ケース58の内部にアンテナ部54Dが収容されていても良い。通信部54は、後述するメーカ側19の通信ネットワーク装置29(図1参照)との間で通信を実行する。処理部55は、通信部54を介してメーカ側19の指令装置13から指令情報25を受信し、指令情報25に基づく処理結果を、通信部54を介して指令装置13へ送信する。
【0025】
処理部55は、例えば、CPU55A、記憶装置55B、第1ポート55C、第2ポート55D、第3ポート55E、第4ポート55F、表示操作部55Gを有している。処理部55は、例えば、CPU55Aを主体とするコンピュータであり、電力を供給されることで、記憶装置55Bに記憶されたオペレーティングシステム(以下、OSという)65をCPU55Aで実行し、システムを起動する。記憶装置55Bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、SSDなどを組み合わせて構成されている。尚、記憶装置55Bは、上記した構成に限らず、HDD等の他の記憶装置や、DVD-ROM等の読み書き可能な記憶媒体でも良い。
【0026】
記憶装置55Bには、OS65、アプリケーションプログラム(以下、アプリという)67が記憶されている。OS65は、例えば、Windows(登録商標)OSである。尚、OS65は、Windows(登録商標)OSに限らず、Macintosh(登録商標)OS、Linux(登録商標)OSなどのUNIX(登録商標)系OS、その他の種類のOSでも良い。アプリ67は、OS65のサービスを利用して各種処理を実行する。ここでいう各種処理とは、対象機器50から紙工機械情報51を取得する処理、取得した紙工機械情報51を表示・グラフ化する処理などである。より具体的には、アプリ67は、対象機器50と接続する接続先の通信ポートの選択、対象機器50へ送信するコマンドの受け付け、対象機器50から受信したデータの表示などを実行するエディタを含んでいる。また、アプリ67は、例えば、対象機器50からPLC37等のラダープログラムやラダープログラムの信号の情報を取得するプログラムを含んでいる。また、後述するように、アプリ67は、管理装置22,24から取得したログデータからグラフを表示する表計算ソフトウェアを含んでいる。
【0027】
第1ポート55Cは、例えば、LANポートであり、LANケーブル63を介して第1ポート54Aと接続され、指令情報25の送受信等を実行する。第2ポート55Dは、LANポートであり、LAN規格に準拠した通信を実行する。第3ポート55Eは、USBポートであり、USB規格に準拠した通信を実行する。USB規格は特に限定されないが、USB2.0規格やUSB3.0規格を採用できる。図4に示すように、収容ケース58の側面には、第2ポート55D及び第3ポート55Eが設けられており、LANケーブル69やUSBケーブル70を接続可能となっている。処理部55は、第2及び第3ポート55D,55Eに、LANケーブル69やUSBケーブル70を介して接続された対象機器50との間で通信を実行する。図5は、第2ポート55Dに接続したLANケーブル69を、対象機器50のHUB62に接続した接続状態の一例を示している。
【0028】
第2及び第3ポート55D,55Eは、本発明の有線インタフェースの一例である。尚、本発明の有線インタフェースは、LANインタフェースやUSBインタフェースに限らず、対象機器50と通信可能な他のインタフェース、例えば、IEEE394(登録商標)規格のインタフェースでも良い。また、可搬型通信装置12は、対象機器50と無線通信で接続可能な通信インタフェース、例えば、無線LANインタフェースやBluetooth(登録商標)規格に準拠した無線通信を実行可能なインタフェースを備えても良い。
【0029】
第4ポート55Fは、変圧器56に接続されている。変圧器56は、第1ポート56A、第2ポート56Bを有している。第1ポート56Aは、電源部53の第1ポート53Bに電源ケーブル71を介して接続され、100Vの電力を供給される。変圧器56は、例えば、第1ポート56Aに供給された100Vの電力を24Vの電力に変圧して第2ポート56Bから出力する。第2ポート56Bは、電源ケーブル73を介して処理部55の第4ポート55Fに接続されている。処理部55は、第4ポート55Fに24Vの電力を供給されると、CPU55AでOS65を実行してシステムを起動する。これにより、指令装置13からリモートデスクトップ機能により接続可能な状態となる。従って、処理部55は、プラグ部53Aを電源供給部61等の電源に接続するだけで、使用可能な状態となる。
【0030】
表示操作部55Gは、例えば、タッチパネル、操作スイッチ、電源ランプなどを備え、収容ケース58の正面の中央部に設けられている(図4参照)。処理部55は、例えば、指令装置13に基づく処理の状況、指令装置13からの指令の内容、発生したエラーの情報などをタッチパネルに表示する。また、処理部55は、タッチパネルや操作スイッチに対する操作入力に応じた処理を対象機器50に実行する。尚、処理部55は、表示操作部55Gを備えなくとも良い。
【0031】
また、図4に示すように、収容ケース58の上面には、ハンドル75が取り付けられている。生産工場17の作業者は、ハンドル75を持って可搬型通信装置12を持ち運ぶことができ、所望の対象機器50まで可搬型通信装置12を運ぶことができる。このため、例えば、生産工場17内の任意の対象機器50でエラーが発生した場合に、作業者は、可搬型通信装置12を対象機器50の前まで運んで、プラグ部53Aを対象機器50の電源供給部61に接続する。そして、作業者は、第2ポート55Dや第3ポート55Eを対象機器50と接続するだけで、可搬型通信装置12の設置を完了することができる。尚、図4に示す可搬型通信装置12の形状や構成は、一例である。例えば、収容ケース58は、前面が開閉式の扉となっていても良く、ハンドル75を備えない構成でも良い。また、可搬型通信装置12は、収容ケース58のような箱に収容されていない構成、例えば、取付ボード57にアンテナ部54Dを配置した構成でも良い。更に、図4に示す構成では、電源ケーブル53Dがプラグ部53Aと共に、収容ケース58の外に常に排出されているが、これに限定されない。例えば、収容ケース58に通過孔を設け、電源ケーブル53D又はプラグ部53Aを収容ケース58の内部に向かって通過可能にすると共に、電源ケーブル53Dを巻き取るコードリールを収容ケース58に内装し、巻取駆動装置によってコードリールを回転・逆回転させることにより、プラグ部53Aが電源ケーブル53Dを介して繰り出し・繰り戻し可能となる構成としても良い。即ち、可搬型通信装置12の使用が終了し保管する場合は、コードリールを逆回転させることで、電源ケーブル53Dが巻き取られ、電源ケーブル53Dのみ収容ケース58に収納されるか、プラグ部53Aが電源ケーブル53Dと共に収容ケース58に収納されるようにする。一方、可搬型通信装置12を使用する場合は、コードリールを正回転させ、電源ケーブル53Dを収容ケース58から繰り出すようにする。
【0032】
(メーカ側19の構成について)
図1に示すように、指令装置13及び接続用サーバ14は、紙工機械11のメーカ側19に設置されている。指令装置13及び接続用サーバ14は、メーカ側19の社内のネットワーク27を介して互いに通信可能となっている。ネットワーク27は、有線のネットワークでも良く、無線のネットワークでも良い。指令装置13は、例えば、パーソナルコンピュータであり、マウス、キーボードなどの入力装置と、LCDパネルなどの表示装置を備え、ユーザの操作入力に応じて指令情報25を受け付ける。指令装置13のOSは、例えば、Windows(登録商標)OSである。尚、指令装置13のOSは、Windows(登録商標)OSに限らず、Macintosh(登録商標)OS、Linux(登録商標)OSなどのUNIX(登録商標)系OS、その他の種類のOSでも良い。
【0033】
接続用サーバ14は、ネットワーク27に接続されたサーバ装置である。接続用サーバ14のOSは、例えば、Windows(登録商標)Serverである。また、接続用サーバ14は、例えば、Windows(登録商標)Server上で、マイクロソフト(登録商標)が提供するHyper-V(登録商標)を使用して仮想マシンを構築可能となっている。仮想マシンとしては、例えば、Windows(登録商標)OSで動作する仮想マシンを採用できる。
【0034】
また、メーカ側19には、通信ネットワーク装置29が設置されている。接続用サーバ14は、通信ネットワーク装置29と接続されており、通信ネットワーク装置29を介して可搬型通信装置12の通信部54(図5参照)との間で移動通信77により接続する。通信ネットワーク装置29及び通信部54は、例えば、所謂、LTEルータであり、移動通信77は、LTE規格に準拠した移動通信である。通信ネットワーク装置29及び通信部54は、LTE規格に準拠した電波を送信する中継所79を介して接続し、互いに通信可能となる。尚、移動通信77の通信規格は、LTEに限らず、第4世代(4G)、第5世代(5G)、第6世代(6G)以降の移動通信77の規格でも良い。また、接続用サーバ14(指令装置13)と可搬型通信装置12を接続する通信は、移動通信77に限らず、インターネットを介した通信、専用回線の通信、衛星通信などの他の通信でも良い。
【0035】
また、通信ネットワーク装置29及び通信部54は、例えば、NAT(Network Address Translation)機能を有している。通信ネットワーク装置29及び通信部54は、LTE回線を通じて互いのグローバルIPアドレスを指定して通信するとともに、接続用サーバ14(仮想マシンなど)や可搬型通信装置12の処理部55へプライベートIPアドレスに変換した通信を実行する。これにより、接続用サーバ14(仮想マシンなど)、即ち、指令装置13は、VPN(Virtual Private Network)のように仮想的なローカルエリアネットワーク(プライベートIPアドレス)で可搬型通信装置12の処理部55にアクセスすることができる。
【0036】
例えば、指令装置13を操作するメーカ側19の担当者は、Windows(登録商標)のリモートデスクトップ機能を利用して接続用サーバ14の仮想マシンにアクセスする。また、メーカ側19の担当者は、仮想マシンを操作し仮想マシンのリモートデスクトップ機能を利用して、仮想マシンからLTE回線を介して可搬型通信装置12の処理部55にリモートデスクトップ機能で接続する。即ち、指令装置13は、リモートデスクトップ機能を2回利用して可搬型通信装置12に接続する。各生産工場17に設置された可搬型通信装置12(通信部54)には、異なるグローバルIPアドレスが設定されており、移動通信77により接続用サーバ14から接続可能となっている。担当者は、リモートデスクトップ機能で接続する際に、接続したい生産工場17の可搬型通信装置12のグローバルIPアドレスを指定することで、所望の生産工場17の可搬型通信装置12に接続することができる。換言すれば、接続用サーバ14は、指令装置13により指定されたグローバルIPアドレスにより、複数の可搬型通信装置12のうち、接続先の可搬型通信装置12を設定する。
【0037】
尚、上記したOSの種類や、指令装置13から可搬型通信装置12へ接続する方法は、一例である。例えば、接続用サーバ14は、Windows(登録商標)Serverに限らず、Macintosh(登録商標)OS Server、UNIX(登録商標)系OSを用いたサーバでも良い。また、仮想化技術は、Hyper-V(登録商標)に限らず、VMware(登録商標)、Oracle VM VirtualBox(登録商標)などでも良い。従って、リモートデスクトップ機能を用いて指令装置13から可搬型通信装置12へ接続可能な様々な仮想化技術を採用できる。リモートデスクトップ機能や仮想化技術を用いることで、仮に、可搬型通信装置12等の生産工場17側にセキュリティ上の問題が発生しても、メーカ側19のネットワーク27に影響が波及することを抑制できる。また、接続用サーバ14において、顧客毎や生産工場17ごとなど、接続先ごとに別の仮想マシンのイメージファイルを設定し、接続先ごとに仮想マシンを切り替える構成でも良い。
【0038】
また、指令装置13から可搬型通信装置12へのアクセスに仮想化技術を用いなくとも良い。例えば、指令装置13から接続用サーバ14のホストOSにリモートデスクトップ機能で接続し、接続用サーバ14のホストOSから可搬型通信装置12へリモートデスクトップ機能で接続しても良い。この場合にもリモートデスクトップ機能を利用することで、生産工場17側にセキュリティ上の問題が発生しても、メーカ側19のネットワーク27に影響が波及することを抑制できる。従って、接続用サーバ14は、Hyper-V(登録商標)などの仮想マシンの機能を備えない構成、あるいは機能を有効にしていない構成でも良い。また、指令装置13から可搬型通信装置12の処理部55へ、即ち、接続用サーバ14を経由せずに、指令装置13から可搬型通信装置12へリモートデスクトップ機能を用いて接続しても良い。あるいは、可搬型通信装置12(処理部55)を使用せずに、指令装置13や接続用サーバ14から対象機器50へ直接アクセスしても良い(図11参照)。
【0039】
(紙工機械情報51の取得処理について)
次に、上記した構成の通信システム10が実行する紙工機械情報51の取得処理について説明する。図6は、紙工機械情報51を取得する処理の流れを示すフロー図である。以下の説明では、一例として、コルゲータ11Aの対象機器50(原紙掛け31など)にエラーが発生した場合について説明する。尚、図6に示す処理の流れや発生した事例等は一例である。
【0040】
例えば、図6のステップ(以下、単にSと記載する)11において、生産工場17の作業者は、コルゲータ11Aのエラーを発見すると、メーカ側19に電話等で連絡を行なう。作業者は、エラーが発生した対象機器50まで可搬型通信装置12を運び、可搬型通信装置12のプラグ部53Aを、例えば、エラーが発生した対象機器50の電源供給部61(図5参照)に接続する(S13)。可搬型通信装置12は、プラグ部53Aから電力を供給されることで、通信部54を起動し、移動通信を実行可能な状態となる(S15)。また、可搬型通信装置12は、プラグ部53Aから供給された電力を変圧器56で変換して処理部55に供給し、処理部55を起動する(S15)。
【0041】
作業者は、例えば、可搬型通信装置12の第2ポート55DにLANケーブル69の一端を接続し、他端を対象機器50のHUB62に接続する(S17、図5参照)。これにより、可搬型通信装置12は、対象機器50と通信可能な状態となる。尚、対象機器50がHUB62を備えていない場合など、第2ポート55DとPLC37のLANポートを、クロスケーブルで直接接続しても良い。
【0042】
次に、作業者は、可搬型通信装置12の設置及び接続が完了したことをメーカ側19に連絡する(S19)。メーカ側19の担当者は、S19の連絡を受けると、指令装置13を操作してリモートデスクトップ機能により接続用サーバ14に接続する(S21)。担当者は、例えば、接続用サーバ14の仮想マシンのIPアドレスを指定して、仮想マシンに接続する。担当者は、仮想マシンを遠隔操作し、リモートデスクトップ機能により可搬型通信装置12の処理部55に接続する(S23)。担当者は、接続先の可搬型通信装置12(通信部54)のグローバルIPアドレスを指定して、LTE回線により可搬型通信装置12に接続した後、リモートデスクトップ機能により処理部55に接続する。これにより、担当者は、指令装置13を操作することで、処理部55を遠隔で操作可能となる。
【0043】
ここで、通信システム10の各対象機器50は、機種及び生産ライン21,23における位置の違いに応じて異なるプライベートIPアドレスが設定されている。具体的には、例えば、同一機種の原紙掛け31については、生産ライン21や生産工場17が異なる場合であっても、機種が同一であれば同一のIPアドレスがPLC37のLANインタフェースに設定されている。また、同一の生産ライン21,23に同一機種が複数台設置されている場合、対象機器50は、生産ライン21,23の位置(上流又は下流の位置)に応じたプライベートIPアドレスが設定されている。このため、1つ生産ライン21,23において、プライベートIPアドレスを指定・選択することで、任意の対象機器50を特定することができる。また、異なる生産ライン21,23であっても、機種と、生産ライン21,23の位置が同じであれば、同一のプライベートIPアドレスが設定されている。
【0044】
そこで、担当者は、作業者から連絡を受けた機種及び生産ライン21,23の位置に対応するプライベートIPアドレスを指定した接続を実行する。詳述すると、S25において、担当者は、処理部55のOS65上でアプリ67(エディタ)を起動する。担当者は、起動したアプリ67を遠隔で操作して、接続先のプライベートIPアドレスを指定する(S27)。プライベートIPアドレスを指定する方法は、特に限定されないが、例えば、アプリ67のエディタ上でIPアドレスを入力しても良い。アプリ67は、入力されたIPアドレスを接続先として設定し、通信の確立を開始する(S29)。あるいは、機種及び生産ライン21,23の位置と、プライベートIPアドレスを対応付けたデータベースを予め準備しても良い。そして、アプリ67は、機種及び生産ライン21,23の位置を受け付け、受け付けた情報に基づいてデータベースからプライベートIPアドレスを検索し、自動で接続を試みても良い。尚、上記した担当者によるアプリ67の起動、接続先のプライベートIPアドレスの指定等を実行するために、リモートデスクトップ機能を用いて指令装置13から処理部55へ送信される情報は、本発明の指令情報25の一例である。
【0045】
担当者は、接続要求に対する対象機器50からの応答をエディタ上で確認し、処理部55(アプリ67)と対象機器50との間で通信が確立されたことを確認すると、コマンドを入力して実行する(S31)。このコマンドは、リモートデスクトップ機能を用いて指令装置13から処理部55へ送信される情報であり、本発明の指令情報25の一例である。担当者は、対象機器50から紙工機械情報51を取得するコマンドを入力して実行する。アプリ67は、入力されたコマンドを対象機器50に送信し、対象機器50から紙工機械情報51を取得する(S33)。例えば、担当者は、紙工機械情報51としてラダープログラムの信号情報を取得するコマンドを実行する。これにより、対象機器50から処理部55へ、ラダープログラムの信号情報が紙工機械情報51として送信される(S33)。アプリ67は、取得した紙工機械情報51をエディタに表示する、あるいは、ローカル(記憶装置55B)に記憶する処理等を実行する。このようにして、本実施例の通信システム10では、可搬型通信装置12を用いて、遠隔地に設置された紙工機械11から紙工機械情報51を取得し確認することができる。
【0046】
ここで、処理部55は、指令装置13からリモートデスクトップ機能により遠隔操作された操作内容に基づいて指令情報25を取得している。そして、処理部55は、通信部54を介して指令装置13との間で通信を確立した後、確立した通信が切断された場合にも対象機器50との間の通信を維持し取得した指令情報25に基づく処理を継続する。例えば、処理部55が、コマンドの実行指示をS31で受け付けた後、LTE回線が切断されたとする(図6の破線のS35参照)。この場合に、処理部55は、通信が切断された後も、対象機器50との間の通信を維持し、S31で受け付けたコマンドに基づく処理を継続する。これにより、指令装置13と可搬型通信装置12との通信が切断された場合にも、既に受け付けた指令情報25に基づく処理を処理部55側で継続できる。対象機器50において紙工機械情報51の送信エラーなどの異常が発生することを抑制できる。また、担当者は、改めて指令装置13を処理部55にリモートデスクトップ機能で接続することで、取得済みの紙工機械情報51を確認することができる。
【0047】
また、例えば、上記した対象機器50の紙工機械情報51からエラーの原因が判明しない場合など、担当者は、作業者に電話等で連絡し、可搬型通信装置12を管理装置22に接続し直す指示を出す(S41)。尚、以下の説明では、上記したS11~S33の対象機器50に対する処理と同様の内容については、その説明を適宜省略する。生産工場17の作業者は、上記したS13,S15,S17,S19と同様に、プラグ部53Aを接続し(S43)、処理部55を起動し(S45)、LANケーブル69を管理装置22に接続する(S47)。メーカ側19の担当者は、作業者から接続完了の連絡を受けると(S49)、指令装置13を操作してリモートデスクトップ機能により管理装置22に接続する(S51)。この場合、指令装置13と接続用サーバ14とのリモートデスクトップ機能による接続は既に完了しているため、接続用サーバ14の仮想マシン上において、処理部55への接続を再度実行する(S51)。
【0048】
担当者は、例えば、処理部55で管理装置22用のアプリ67を起動し(S53)、接続先のプライベートIPアドレスとして管理装置22のIPアドレスを指定し(S55)、管理装置22に接続する(S57)。担当者は、エディタ上でコマンドを実行し(S59)、管理装置22から紙工機械情報51としてログデータを取得する(S61)。担当者は、取得したログデータからグラフを表示するアプリ67を処理部55において実行し、グラフを表示させ、エラーの原因を確認する(S63)。
【0049】
(ログデータの表示処理)
次に、ログデータを用いた表示処理の一例として、原紙掛け31及びスプライサ32のログデータを表示する処理について説明する。上記したように、コルゲータ11Aの原紙掛け31は、裏ライナ、中芯及び表ライナのそれぞれの原紙ロールを一対備えている。図7は、3組の原紙ロールのうち、1組(一対)の原紙ロールを示している。図7に示すように、原紙掛け31は、表ライナ、裏ライナや中芯の原紙ロール81A,81Bを装填するミルロールスタンド85を有している。スプライサ32は、ロット替えなどの原紙ロール81A,81Bの交換においてコルゲータ11Aを停止させることなく交換を実行する。詳述すると、例えば、現在繰り出し中の原紙ロール81Aは、ミルロールスタンド85の架台87に回動軸89Aを介して回動自在に軸支されたチャッキングアーム90Aに装填される。原紙ロール81Aは、ミルロールスタンド85の上部に位置するスプライサ32に向けて段ボール原紙91Aを繰り出す。スプライサ32は、コルゲータ11Aのブリッジに取り付けられたフレーム93と、フレーム93の下に取り付けられたサイドフレーム94を有する。原紙ロール81Aは、サイドフレーム94に設けられた導入ローラ95、フレーム93に設けられた中間ローラ96や反転ローラ97を経て下流工程に搬送される。
【0050】
また、ミルロールスタンド85には、架台87に回動軸89Bを介してもう一つのチャッキングアーム90Bが設けられ、現在繰り出し中の原紙ロール81Aの次に使用する原紙ロール81Bが装填される。チャッキングアーム90A,90Bの各々の下方には、原紙ロール搬送台車99A,99Bが設けられている。次に使用する原紙ロール81Bは、原紙ロール搬送台車99Bによってミルロールスタンド85へと搬送され、チャッキングアーム90Bにて装填される。サイドフレーム94には、スプライサヘッド100A,100Bが設けられている。作業者は、装填された原紙ロール81Bから段ボール原紙91Bの紙端部を若干繰り出し、スプライサヘッド100Bに装着する。サイドフレーム94は、段ボール原紙91A,91Bの紙継ぎを実行する紙継ぎ位置と、作業者が紙端部をスプライサヘッド100A,100Bに装着する装着位置とに移動可能となっている。図7は、サイドフレーム94を紙継ぎ位置に配置した状態を示している。作業者は、例えば、次に使用する原紙ロール81Bをスプライサヘッド100Bに装着する際に、原紙掛け31を操作してスプライサヘッド100Bを装着位置に移動させる。作業者は、段ボール原紙91Bの紙端部の装着が完了すると、サイドフレーム94を紙継ぎ位置に移動させる。これにより、スプライサ32は、紙継ぎの実行準備が完了した状態となり、管理装置22からの紙継ぎ指令を待ちつつ段ボール原紙91Aの排出を継続する。管理装置22は、ロット替えのタイミング等に合わせて原紙掛け31及びスプライサ32に紙継ぎ指令を送信する。原紙掛け31は、管理装置22から紙継ぎ指令を受信すると、図示しないブレーキ機構を駆動して、使用中の原紙ロール81Aの回転を停止させ、段ボール原紙91Aの搬出を停止する。スプライサヘッド100A,100Bは、紙継ぎ作業に必要なニップバー、ナイフ、ドラックバー等を備えている。スプライサ32は、管理装置22から紙継ぎ指令を受信した後、原紙掛け31から回転を停止させた信号を入力すると、スプライサヘッド100A,100Bを駆動して紙継ぎを実行する。スプライサ32は、紙継ぎの作業が完了すると、作業が完了した旨の応答を管理装置22へ送信する。尚、上記した例では、段ボール原紙91Aから段ボール原紙91Bへの紙継ぎについて説明したが、逆の場合についても同様に実施できる。
【0051】
段ボール原紙91A,91Bの各々の紙端部が接続された紙継ぎ箇所は、一般的に製品にならない不良シートとしてコルゲータ11Aの下流工程のカッタ34で切断されて排出される。作業者は、段ボール原紙91A,91Bの何れかをスプライサヘッド100A,100Bに装着する際、繰り出し中の紙端部に、接合用のテープと、アルミ箔や薄い紙状の金属片等の被検出部材を貼り付ける。カッタ34の上流装置(ダブルフェーサなど)には、この被検出部材を検出する検出器(磁気センサなど)が設けられている。コルゲータ11Aは、スプライサ32から排出した紙継ぎ箇所を下流側装置へと搬送し、検出器で被検出部材を検出すると、所定の条件に基づいて不良シートを切断する切断範囲を設定し、被検出部材が貼り付けられた紙継ぎ箇所を含む切断範囲をカッタ34で切断して不良シートとして排出する。ここでいう所定の条件に基づく切断範囲とは、例えば、表ライナ、中芯、裏ライナの各々の紙継ぎ箇所(被検出部材)のうち、最も後から搬送されてきた(搬送位置が上流の)紙継ぎ箇所を基準として設定した一定の範囲である。切断範囲として設定可能な最大範囲に3つの紙継ぎ箇所が収まらない場合、不良シートは、複数枚となる。最大範囲は、不良シートを排出する経路の幅、即ち、排出可能な最大幅に応じて制限される。あるいは、所定の条件に基づく切断範囲とは、前回の切断範囲(不良シート)内における被検出部材の位置に基づいて、次回の切断範囲の幅を調整、より具体的には切断範囲が出来るだけ短くなるように調整した範囲でも良い。
【0052】
図8は、3つの紙継ぎ箇所と切断範囲の関係を示している。図8に示す表ライナ101、中芯102、及び裏ライナ103の各々の紙継ぎ箇所101A,102A,103Aは、例えば、被検出部材の検出に応じて設定され切断範囲105に収まるように、生産ライン21で搬送される位置を制御される。図8の上の図は、理想的な紙継ぎ箇所101A,102A,103Aの状態を示しおり、3つの紙継ぎ箇所101A,102A,103Aが、搬送方向における位置を同一位置として配置され切断範囲105に収まっている。これにより、不良シート107の長さを短くして、段ボール原紙91A,91Bのロスを減らすことができる。
【0053】
一方で、図8の下の図は、紙継ぎ箇所101A,102Aと、紙継ぎ箇所103Aとの位置が、搬送方向においてずれた状態を示している。何らかの原因で、表ライナ101、中芯102、裏ライナ103の各々の紙継ぎ箇所101A,102A,103Aが切断範囲105に収まらない場合、新たな切断範囲105Aが発生し、新たな不良シート107Aが発生する。紙継ぎ箇所101A,102A,103Aが全て通過した後でなければ、表ライナ101、中芯102、及び裏ライナ103の全てについて、段ボール原紙91A,91Bの入れ替えが完了しない。このため、搬送方向において、3つの紙継ぎ箇所101A,102A,103Aのうち、最も早くに搬送された紙継ぎ箇所から最も遅くに搬送された紙継ぎ箇所までの範囲が全て不良シートとなる虞がある。また、搬送位置のずれた紙継ぎ箇所101A,102A,103Aを全て含むような大きな切断範囲105を設定した場合、排出経路で不良シート107が詰まり排出不良が発生する虞がある。
【0054】
このような紙継ぎ箇所101A,102A,103Aのずれは、様々な要因で発生するが、その要因の1つとして、紙継ぎ作業前の停止位置のずれがある。詳述すると、上記したように、例えば、段ボール原紙91Aを使用している状態において、原紙掛け31は、管理装置22から紙継ぎ指令を受信すると、ブレーキ機構を駆動して原紙ロール81Aの回転を停止させ、段ボール原紙91Aの搬出を停止する。この際に、例えば、図7に示す設定上の停止位置109が、スプライサヘッド100A,100Bの作業位置で停止すると、図8の上の図のように、紙継ぎ箇所101A,102A,103Aが同一の切断範囲105に収まるとする。
【0055】
この場合、停止位置109よりも原紙ロール81A側の停止位置110が、スプライサヘッド100A,100Bの作業位置で停止すると、2つの停止位置109,110の間の距離111だけ、紙継ぎ箇所101A,102A,103Aがずれる。例えば、図8の距離111に示すように、裏ライナ103の紙継ぎ箇所103Aだけがずれる虞がある。このような停止位置109,110のずれは、原紙ロール81A,81Bの重さや段ボール原紙91A,91Bの搬送速度に起因して発生する。これは、原紙ロール81A,81Bの重さが重いほど、あるいは段ボール原紙91A,91Bの搬送速度が速いほど、ブレーキ機構を駆動してから原紙ロール81A,81Bの回転が停止するまでのブレーキ時間が長くなるためである。また、表ライナ101、中芯102、裏ライナ103の材質は、使用する用途や目的に応じて互いに異なる場合がある。即ち、材質の異なる表ライナ101、中芯102、裏ライナ103を組み合わせて段ボールシートを製造する場合がある。このため、1つの段ボールシートを構成する表ライナ101、中芯102、裏ライナ103の重さは互いに異なる場合があり、停止位置109,110もずれる虞がある。また、中芯102は、波形形状に折り曲げられる構造上、表ライナ101や裏ライナ103に比べて単位時間当たりに搬出される長さ(量)が多くなる。このため、中芯102の搬送速度は、表ライナ101や裏ライナ103に比べて速くなる。
【0056】
また、原紙ロール81A,81Bの停止時間(ブレーキ時間)が長くなればなるほど、紙継ぎを開始する時間が遅れる。このため、管理装置22から紙継ぎ指令をスプライサ32に送信した時点から、紙継ぎの作業が完了した旨の応答をスプライサ32から管理装置22に取得するまでの時間である応答時間は、原紙ロール81A,81Bの停止時間(ブレーキ時間)に比例して長くなる。そこで、例えば、不良シートが長くなる、あるいは、不良シートの枚数が多いといった異常が発生した場合、作業者からの連絡を受けた担当者は、可搬型通信装置12を原紙掛け31やスプライサ32のPLC37に接続するよう作業者に指示する。そして、担当者は、可搬型通信装置12を遠隔で操作して、ラダープログラムに異常がないか調査する。又は管理装置22が取得したログデータ、具体的には、上記した応答時間、原紙ロール81A,81Bの重さ、原紙ロール81A,81Bから段ボール原紙91A,91Bを排出する搬送速度のログデータを、管理装置22から取得し、グラフとして表示させる。
【0057】
管理装置22は、例えば、紙継ぎを実行するごとに、表ライナ101、中芯102、裏ライナ103の各々について、応答時間、原紙ロール81A,81Bの重さ、停止前の搬送速度の情報を関連付けてログデータ(紙工機械情報51)として記憶する。管理装置22は、例えば、原紙ロール81A,81Bの重さの情報として、重さと相関関係がある原紙ロール81A,81Bの残面積の情報を記憶する。ここでいう残面積とは、紙継ぎを実行する際に、交換対象(使用済み)の原紙ロール81A,81Bに残っている段ボール原紙91A,91Bの総面積である。尚、管理装置22は、原紙ロール81A,81Bの重さをセンサ等で検出し、ログデータとして記憶しても良い。
【0058】
可搬型通信装置12は、処理部55で所定のアプリ67(表計算ソフトなど)を実行することで、管理装置22から取得したログデータをグラフとして表示する。図9は、可搬型通信装置12が表示するグラフの一例を示している。縦軸は、例えば、基準となる応答時間を「1」としてその基準の応答時間に対する各データの比率を示している。横軸は、搬送速度(m/分)を示している。
【0059】
例えば、図8に示すように、表ライナ101及び中芯102の紙継ぎ箇所101A,102Aが、裏ライナ103の紙継ぎ箇所103Aに比べて遅延したとする。この場合、担当者は、遠隔でアプリ67を操作して、表ライナ101や中芯102のグラフを表示させる。図9は、表ライナ101のグラフを示している。図9に示す例では、搬送速度が約160m/分付近にデータが集中し、データが縦に並んでいる。このように同一搬送速度付近に、応答時間の異なるデータが多数発生しているということは、応答時間と搬送速度の相関関係が低いと判断できる。このため、担当者は、アプリ67を操作して図10に示すように、表ライナ101について、応答時間と重さの関係をグラフで表示させる。
【0060】
一方、図9に破線で示すように、例えば、搬送速度の増加と、応答時間の増加に比例関係(相関関係)がある場合、搬送速度の増加が応答時間の遅延、即ち、紙継ぎ箇所103Aのずれの原因と考えられる。この場合、担当者は、可搬型通信装置12を介して管理装置22の設定を変更する。具体的には、管理装置22から表ライナ101のスプライサ32へ紙継ぎ指令を送信するタイミングを早くする設定変更を行なう。これにより、表ライナ101の紙継ぎ作業が早く開始され、原紙ロール81A,81Bの停止時間による紙継ぎ箇所103Aの遅延の発生を抑制できる。
【0061】
図10の縦軸は、基準となる応答時間を「1」としてその基準の応答時間に対する各データの比率を示している。横軸は、原紙ロール81A,81Bの残面積(平方メートル)を示している。図10に示すグラフでは、残面積(重さ)の増加と、応答時間の増加が比例関係(相関関係)にある。即ち、原紙ロール81A,81Bの重さの増加が応答時間の遅延の原因と考えられる。この場合に、担当者は、可搬型通信装置12を介して管理装置22を操作し表ライナ101のスプライサ32へ紙継ぎ指令を送信するタイミングを早くする設定変更を行なう。担当者は、上記した表ライナ101の場合と同様に、遅延の発生している中芯102についてもグラフの表示及び設定の変更を実行する。これにより、紙継ぎ箇所101A,102A,103Aを1つの切断範囲105内に納め、且つ、切断範囲105の長さをより短くできる。結果として、段ボール原紙91A,91Bのロスを少なくできる。
【0062】
尚、図10に示す応答時間と重さのグラフにおいて、応答時間の増加と重さの増加に相関関係がない場合、紙継ぎ箇所101Aの遅延は、別の原因によって発生している可能性が高い。具体的には、搬送ローラ(反転ローラ97など)の経年劣化など、機器の不具合である。このため、担当者は、応答時間と搬送速度(図9)、応答時間と重さ(図10)の何れにも相関関係がない場合、作業者にコルゲータ11Aの搬送ローラの点検等を指示することができる。これにより、紙継ぎ箇所101A,102Aの遅延に対して、迅速且つ的確な対応を実施できる。また、上記した処理では、処理部55は、ログデータを取得して図9図10に示すグラフを表示したが、ログデータの取得のみを実行しても良い。この場合、担当者が、ログデータの値を見て相関関係を判断しても良い。また、図9図10に示すグラフの表示方法は、一例である。例えば、処理部55は、縦軸として、応答時間の比率ではなく、応答時間(分や秒)の値を設定しても良い。また、処理部55は、図10の横軸として、原紙ロール81A,81Bの重さの値を表示しても良い。
【0063】
また、上記した図8に示す例では、本発明の段ボールシートとして、1つの中芯102の両側に表ライナ101及び裏ライナ103を貼り付けた両面段ボールシートを例に説明したが、これに限らない。本発明の段ボールシートは、例えば、中芯102の片側にのみライナを貼り付けた片面段ボールシートでも良く、2段の中芯を3つのライナで挟んだ複両面段ボールシートでも良く、3段の中芯を4つのライナで挟んだ複々両面段ボールシートでも良く、それ以上の段数の段ボールシートでも良い。このような片面や複数段の段ボールシートにおいても、ライナと中芯の紙継ぎ箇所がずれる虞があるため、上記したログデータの取得、及びグラフの表示を行なうことは極めて有効である。
【0064】
また、上記した可搬型通信装置12を用いた異常原因の調査方法は、一例である。例えば、生産ライン21,23に並ぶ各対象機器50は、上流や下流の対象機器50とI/O信号等をやり取りする。このため、例えば、任意の対象機器50に可搬型通信装置12を接続してラダープログラムの信号の状態を確認することで、上流側や下流側の対象機器50から信号が正常に入力されているか確認できる。そこで、アプリ67として、上流や下流の対象機器50から入力される信号を診断するツールを用いても良い。アプリ67は、例えば、ラダープログラムの特定の信号を確認し、その信号の確認結果を表示しても良い。例えば、アプリ67は、「上流側のカッタ34からXXX信号が入力されていません」などの診断結果を表示しても良い。これにより、異常の原因の特定をより迅速に行なうことができる。
【0065】
因みに、上記実施例において、原紙掛け31は、原紙供給装置の一例である。第2ポート55D、第3ポート55Eは、有線インタフェースの一例である。LANケーブル69、USBケーブル70は、通信ケーブルの一例である。
【0066】
以上、上記した実施例によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施例の可搬型通信装置12は、電源部53、通信部54、処理部55を備える。通信部54は、電源部53から供給される電力に基づいて駆動し、紙工機械11を構成する対象機器50に対して指令を実行する指令装置13との間で通信を実行する。処理部55は、通信部54と接続され、紙工機械11を構成する対象機器50と通信ケーブル(LANケーブル69やUSBケーブル70)で接続可能な有線インタフェース(第2ポート55D、第3ポート55E)を有し、電源部53から供給される電力に基づいて駆動する。そして、処理部55は、通信部54を介して指令装置13から取得した指令情報25に基づいて、紙工機械11に係わる情報である紙工機械情報51を、有線インタフェースに接続された対象機器50から取得する。
【0067】
ここで、生産工場17の紙工機械情報51に異常やトラブルが発生した場合、メーカ側19の担当者は、原因を確認するために紙工機械情報51を取得する必要がある。一般的に、紙工機械11の生産ライン21,23の全長L(図1参照)は、数十m、あるいは100m以上と長くなる場合がある。このため、対象機器50を全てLANケーブルで接続しようとすると通信経路が長くなり、設備コストが高くなる。また、既存の設置済みの対象機器50の中には、無線インタフェースを備えていない対象機器50も含まれるため、汎用性を高める観点では、可搬型通信装置12は、有線通信によって紙工機械情報51を取得することが好ましい。
【0068】
また、図11は、比較例の通信システム10Aを示している。図11に示す通信システム10Aでは、コルゲータ11Aや製函機11Bの複数の対象機器50の各々に通信部54を取り付けている。このような構成であっても、メーカ側19から移動通信により各対象機器50へ直接接続することで、紙工機械情報51を取得することは可能である。しかしながら、生産ライン21,23を構成する複数の対象機器50の各々に通信部54を設置するため、設備コストの増加を招く虞がある。
【0069】
そこで、本実施例の可搬型通信装置12は、作業者が持ち運び可能に構成されており、有線によって対象機器50と接続可能となっている。そして、可搬型通信装置12は、指令装置13の指令情報25に基づいて紙工機械情報51を取得する。これにより、メーカ側19の担当者は、遠隔地の指令装置13を操作することで、異常やトラブルが発生した対象機器50の紙工機械情報51を取得し確認できる。また、可搬型通信装置12の接続先を作業者に変更させることで、複数の対象機器50から紙工機械情報51を適宜取得できる。また、生産ライン21,23の生産を継続したまま、ラダープログラムの確認などを実施できる。
【0070】
(2)また、処理部55は、指令装置13からリモートデスクトップ機能により遠隔操作された操作内容に基づいて指令情報25を取得し、通信部54を介して指令装置13との間で通信を確立した後、確立した通信が切断された場合にも対象機器50との間の通信を維持し取得した指令情報25に基づく処理を継続する(図6のS35参照)。これにより、対象機器50は、紙工機械情報51の送信処理において通信エラーが発生せず、処理部55への紙工機械情報51の送信を完了できる。指令装置13の担当者は、通信部54との通信を再度確立することで、取得済みの紙工機械情報51を確認できる。
【0071】
(3)また、可搬型通信装置12は、電源部53、通信部54、及び処理部55を収容する収容ケース58と、収容ケース58から排出される電源ケーブル53Dを備える。電源部53は、電源ケーブル53Dが外部の電源(電源供給部61など)に接続されることで、通信部54及び処理部55への電力供給を開始する。通信部54は、電源部53から電力を供給されると移動通信が実行可能となる。そして、指令装置13は、移動通信を介して通信部54に接続する。これにより、生産工場17の作業者は、有線ケーブルを対象機器50に接続し、電源ケーブル53Dを電源に接続するだけで、可搬型通信装置12の設置を完了できる。以降の異常の原因調査を専門家であるメーカ側19に委ねることができ、異常やトラブルに対してより迅速に対応できる。
【0072】
(4)また、複数の対象機器50は、機種及び生産ライン21,23における位置の違いに応じて異なるプライベートIPアドレスが設定されている。処理部55は、指令情報25により指定されたプライベートIPアドレスに基づいて、複数の対象機器50のうち、接続先の対象機器50を特定し、即ち、接続中の対象機器50のプライベートIPアドレスを特定し通信の確立を開始する。これにより、メーカ側19の担当者は、対象機器50の機種及び生産ライン21,23における位置を特定することで、接続に必要なプライベートIPアドレスを決定できる。従って、対象機器50への接続を迅速且つ的確に実施できる。
【0073】
(5)また、処理部55は、応答時間、原紙ロール81A,81Bの重さ、段ボール原紙91A,91Bを排出する搬送速度を、管理装置22から取得することができる。これにより、紙継ぎ箇所101A,102A,103Aの位置がずれるエラーが発生した場合に、取得したデータの関係性を調査することで、原因の特定を迅速に行なうことができる。
【0074】
(6)また、複数の対象機器50は、PLC37等をそれぞれ有する。PLC37等は、LANインタフェース及びUSBインタフェースのうち、少なくとも一方を有している。処理部55は、PLC37等を制御するラダープログラム等の制御情報を、紙工機械情報51として取得する。これにより、紙工機械11の生産ライン21,23において異常が発生した場合に、各対象機器50のラダープログラムやラダープログラムの信号の状態を確認でき、異常の原因を調査できる。例えば、製品納入時のラダープログラムと現状のラダープログラムとの差分を確認することで、異常の原因を発見することができる。
【0075】
(7)また、通信システム10は、異なる生産工場17のそれぞれに可搬型通信装置12が設置されている。複数の可搬型通信装置12の各々の通信部54には、異なるグローバルIPアドレスが設定され、移動通信により接続用サーバ14と接続可能となっている。接続用サーバ14は、指令装置13により指定されたグローバルIPアドレスにより、複数の可搬型通信装置12のうち、接続先の可搬型通信装置12を設定する。これにより、メーカ側19の担当者は、接続したい可搬型通信装置12のグローバルIPアドレスを指定することで、所望の生産工場17の可搬型通信装置12、即ち、異常が発生した対象機器50に接続された可搬型通信装置12に接続できる。
【0076】
尚、本発明の内容は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、図5に示す可搬型通信装置12の構成は、一例である。可搬型通信装置12は、対象機器50と無線通信が可能な無線インタフェースを備えても良い。また、可搬型通信装置12は、電源ケーブル53Dを電源に接続するだけで、通信部54や処理部55を起動したが、これに限らない。可搬型通信装置12は、電源部53から通信部54や処理部55に電力を供給するか、供給を停止するかを切り替える電源スイッチを備えても良い。また、可搬型通信装置12は、電源ケーブル53Dを備えず、バッテリーを備える構成でも良い。
処理部55は、指令装置13との通信が切断された場合、対象機器50との通信を終了しても良い。
【0077】
また、図1に示す通信システム10の構成は、一例である。通信システム10は、接続用サーバ14を備えなくとも良い。
対象機器50は、機種や生産ライン21,23の位置に係わらず、同一又は異なるプライベートIPアドレスが設定される構成でも良い。
処理部55は、応答時間、原紙ロール81A,81Bの重さ、段ボール原紙91A,91Bの搬送速度の値をグラフ化する機能を備えない構成でも良い。
【0078】
また、図2及び図3に示す紙工機械11の接続構成は、一例である。例えば、図12に示す通信システム10Bのように、コルゲータ11Aの一部の対象機器50が、複数のHUB113を介してローカルエリアネットワークに接続される構成でも良い。この場合、可搬型通信装置12を任意のHUB113に接続することで、同一ネットワーク内の対象機器50から紙工機械情報51を適宜取得できる。また、LANインタフェースを備えていない古い対象機器50(図12のシングルフェーサ33など)については、USB接続により紙工機械情報51を取得できる。また、コルゲータ11Aや製函機11Bの生産ライン21,23を構成する全ての対象機器50が1つのローカルエリアネットワークに接続される構成でも良い。
【符号の説明】
【0079】
10 通信システム、11 紙工機械、11A コルゲータ(紙工機械)、11B 製函機(紙工機械)、12 可搬型通信装置、13 指令装置、17 生産工場、21,23 生産ライン、22 管理装置、25 指令情報、50 対象機器、31 原紙掛け(対象機器、原紙供給装置)、32 スプライサ(対象機器)、33 シングルフェーサ(対象機器)、34 カッタ(対象機器)、35 スタッカ(対象機器)、22A,24A,37,47 PLC、41 給紙装置(対象機器、原紙供給装置)、42 印刷装置(対象機器)、43 クリーザ装置(対象機器)、44 フォルダグルア装置(対象機器)、45 カウンタエジェクタ装置(対象機器)、51 紙工機械情報、53 電源部、53D 電源ケーブル、54 通信部、55 処理部、55D 第2ポート(有線インタフェース)、55E 第3ポート(有線インタフェース)、58 収容ケース、69 LANケーブル(通信ケーブル)、70 USBケーブル(通信ケーブル)。
【要約】
【課題】複数の対象機器から紙工機械情報を取得できる可搬型通信装置、及び通信システムを提供すること。
【解決手段】可搬型通信装置12の通信部54は、電源部53から供給される電力に基づいて駆動し、紙工機械11を構成する対象機器50に対して指令を実行する指令装置13との間で通信を実行する。処理部55は、通信部54と接続され、紙工機械11を構成する対象機器50と通信ケーブル(LANケーブル69やUSBケーブル70)で接続可能な有線インタフェース(第2ポート55D、第3ポート55E)を有している。そして、処理部55は、通信部54を介して指令装置13から取得した指令情報25に基づいて、紙工機械11に係わる情報である紙工機械情報51を、有線インタフェースに接続された対象機器50から取得する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12