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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】粉粒体の加熱又は殺菌処理装置
(51)【国際特許分類】
   F28C 3/12 20060101AFI20231024BHJP
   F28F 19/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F28C3/12
F28F19/02 501Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023127096
(22)【出願日】2023-08-03
【審査請求日】2023-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000223931
【氏名又は名称】株式会社フジワラテクノアート
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 利雄
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-75269(JP,A)
【文献】特公平01-20859(JP,B2)
【文献】特開2003-243138(JP,A)
【文献】国際公開第2009/145198(WO,A1)
【文献】特開2007-229703(JP,A)
【文献】特開2000-24091(JP,A)
【文献】実開昭60-189769(JP,U)
【文献】特開2012-11685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28C 3/12
A61L 2/07
F28F 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を供給する供給手段と、
前記供給手段から前記粉粒体が投入される粉粒体投入部と、
前記粉粒体に凝縮性気体を吹き込む凝縮性気体供給部と、
前記凝縮性気体によって前記粉粒体を加熱する加熱部と、
前記粉粒体と前記凝縮性気体の混合体を前記加熱部より圧力が低い空間に開放する減圧部とを備え、
前記加熱部は金属であり、
前記加熱部の内面にメッキ層が施されており、
前記メッキ層の表面は、
水との接触角が90度以上であり、
表面粗度がRa1.6μm以下であり、
硬度がHV140以上であり、
前記粉粒体が前記凝縮性気体中に投入されると、前記加熱部において、前記混合体は、加圧条件下において流速200m/秒以下で流動しながら前記粉粒体と前記凝縮性気体との温度差により前記凝縮性気体の熱が前記粉粒体に伝達され前記粉粒体の表面で凝結が生じ、前記加熱部より圧力が低い空間に前記減圧部を通じて開放されて前記粉粒体が加熱又は殺菌されることを特徴とする粉粒体の加熱又は殺菌処理装置。
【請求項2】
前記減圧部の内面にメッキ層が施されており、前記メッキ層の表面は、水との接触角が90度以上であり、表面粗度がRa1.6μm以下であり、硬度がHV140以上である請求項1に記載の粉粒体の加熱又は殺菌処理装置。
【請求項3】
前記減圧部が細管で構成される請求項1に記載の粉粒体の加熱又は殺菌処理装置。
【請求項4】
前記減圧部がロータリーバルブで構成される請求項1に記載の粉粒体の加熱又は殺菌処理装置。
【請求項5】
前記加熱部が接地している請求項1から4のいずれかに記載の粉粒体の加熱又は殺菌処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝縮性気体を用いた粉粒体の加熱又は殺菌処理装置に関し、より詳しくは、加熱部の内面への粉粒体の付着と摩耗を防止できる粉粒体の加熱又は殺菌処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凝縮性気体の気流中に粉粒体を投入し、これを加熱して殺菌処理する加熱処理装置が知られている(例えば下記特許文献1)。このような加熱処理装置において、粉粒体は凝縮性気体とともに、加熱部を流動する。加熱部内では、粉粒体は凝縮性気体によって加熱され、凝縮性気体と粉粒体との温度差により粉粒体表面で凝結が生じる。この凝結が多いと粉粒体が加熱部の内面に付着し易くなる。特に、糖分や油分が多い原料(とうがらし等)や吸水して粘着性が高くなる原料(増粘剤等)は、付着し易い。
【0003】
粉粒体が加熱部の内面に付着すると、粉粒体同士が付着して塊になったり、焦げたりする。付着物の塊や焦げが剥離して気流中へ混入すると、品質劣化や異物混入の原因になる。また、加熱部の内面への付着が進行すると、加熱部の表面積が小さくなり、加熱処理条件が変化してしまう。さらに付着が進行すると加熱部が閉塞し、運転が中断してしまう。
【0004】
このため、粉粒体の付着防止を図る装置が提案されている。下記特許文献2には、加熱部の内面を非粘着性材料で形成することで粉粒体の付着を防止する加熱処理装置が提案されている。また、同文献には、非粘着性材料はフッ素樹脂が好ましいことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4499184号公報
【文献】特許第6232242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の加熱処理装置で用いる非粘着性材料は、フッ素樹脂に代表されるように、一般に樹脂であり、硬度が低く摩耗し易いという課題がある。このような摩耗は、異物混入の原因となる。また、摩耗が進むと加熱部内の表面積が大きくなり、流速や内部圧力の低下につながる。このことに加えて、摩耗が進むと、装置の寿命が短くなる。さらに、樹脂は熱変形し易く、加熱部内の加熱温度を一定温度内に抑える必要がある。
【0007】
本発明は、前記のような従来の課題を解決するものであり、粉粒体の付着防止を図りつつ、硬度が高く摩耗しにくく、熱変形にも強い加熱部を備えた粉粒体の加熱又は殺菌処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明の粉粒体の加熱又は殺菌処理装置は、粉粒体を供給する供給手段と、前記供給手段から前記粉粒体が投入される粉粒体投入部と、前記粉粒体に凝縮性気体を吹き込む凝縮性気体供給部と、前記凝縮性気体によって前記粉粒体を加熱する加熱部と、前記粉粒体と前記凝縮性気体の混合体を前記加熱部より圧力が低い空間に開放する減圧部とを備え、前記加熱部は金属であり、前記加熱部の内面にメッキ層が施されており、前記メッキ層の表面は、水との接触角が90度以上であり、表面粗度がRa1.6μm以下であり、硬度がHV140以上であり、前記粉粒体が前記凝縮性気体中に投入されると、前記加熱部において、前記混合体は、加圧条件下において流速200m/秒以下で流動しながら前記粉粒体と前記凝縮性気体との温度差により前記凝縮性気体の熱が前記粉粒体に伝達され前記粉粒体の表面で凝結が生じ、前記加熱部より圧力が低い空間に前記減圧部を通じて開放されて前記粉粒体が加熱又は殺菌されることを特徴とする。
【0009】
前記本発明の粉粒体の加熱又は殺菌処理装置によれば、加熱部の内面であるメッキ層の表面は、水との接触角が90度以上であり、表面粗度がRa1.6μm以下であることにより、凝結による粉粒体の付着を防止できる。また、メッキ層の表面は、硬度がHV140以上であることにより、硬度が高く摩耗しにくくなる。このことにより、摩耗した材料による異物混入を防止できる上、摩耗による内面の表面積の拡大を防止し、流速や内部圧力の低下を防止でき、装置の寿命を長くできる。さらに、加熱部は金属の内面にメッキ層を施した構成により、熱変形に強くなるので加熱温度を高くできる。同構成は構造がシンプルになることに加えて、高強度であるため、薄肉化による軽量化を図ることができる。
【0010】
前記本発明の粉粒体の加熱又は殺菌処理装置においては、以下の各構成とすることが好ましい。前記減圧部の内面にメッキ層が施されており、前記メッキ層の表面は、水との接触角が90度以上であり、表面粗度がRa1.6μm以下であり、硬度がHV140以上であることが好ましい。この構成によれば、減圧部においても、前記の加熱部と同様の効果が得られる。
【0011】
前記減圧部が細管で構成されることが好ましい。この構成によれば、簡単な構造で、減圧部を実現できる。
【0012】
前記減圧部がロータリーバルブで構成されることが好ましい。この構成によれば、ロータリーバルブの回転速度を変えることで、加圧条件下において粉粒体が加熱される時間を容易に変えることができる。
【0013】
前記加熱部が接地していることが好ましい。この構成によれば、静電気による加熱部内面への粉粒体の付着を防止できる。このことにより、塊や焦げなどが生じることによる品質劣化や異物混入が防止できることに加え、付着による加熱部内面の表面積の縮小を防止し、流速や内部圧力の上昇を防止でき、あわせて洗浄がし易くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果は前記のとおりであり、本発明によれば、加熱部内面であるメッキ層の表面は、水との接触角が90度以上であり、表面粗度がRa1.6μm以下であることにより、凝結による粉粒体の付着を防止できる。また、メッキ層の表面は、硬度がHV140以上であることにより、硬度が高く摩耗しにくくなる。このことにより、摩耗した材料による異物混入を防止できる上、摩耗による内面の表面積の拡大を防止し、流速や内部圧力の低下を防止でき、装置の寿命を長くできる。さらに、加熱部は金属の内面にメッキ層を施した構成により、熱変形に強くなるので加熱温度を高くできる。同構成は構造がシンプルになることに加えて、高強度であるため、薄肉化による軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る加熱又は殺菌処理装置の概略構成図。
図2図1のAA線における断面図。
図3】水との接触角を説明する側面図。
図4】本発明の一実施形態において、水との接触角θが90度よりも大きくなった状態を示す側面図。
図5】本発明の別の実施形態に係る加熱又は殺菌処理装置の概略構成図。
図6】本発明の減圧部の別の実施形態(ロータリーバルブ)を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る加熱又は殺菌処理装置1(以下、「装置1」という。)の概略構成図である。装置1の加熱又は殺菌処理の対象は、粉粒体10である。粉粒体10は特に限定されないが、例えば、小麦粉、米粉等の穀物粉、糠、海藻粉、魚粉、野菜粉、野菜チップ粉、茶葉粉末、胡椒等の香辛料粉末、各種添加物の粉末、医薬品粉末、化粧品粉末、各種飼料の粉末などが挙げられる。
【0017】
本発明は、加熱部14の内面への粉粒体10の付着防止を図りつつ、加熱部14を、硬度が高く摩耗しにくくし、熱変形にも強くしたものである。このため、付着が生じ易い粉粒体、例えばとうがらしなどの糖分や油分が多い原料や、増粘剤などの吸水して粘着性が高くなる原料を加熱対象とするときに、特に本発明の効果が発揮される。装置1による加熱又は殺菌工程を経ることにより、加熱又は殺菌処理と共に微生物や害虫等の有害な生物の繁殖を防止することができる。
【0018】
図1において、装置1は、供給手段11、粉粒体投入部12、凝縮性気体供給部13、加熱部14及び減圧部15で要部を構成している。本実施形態では、供給手段11としてホッパーを用いており、粉粒体投入部12としてスクリューフィーダを用いており、加熱部14として加熱管を用いており、減圧部15として細管を用いている。また、凝縮性気体供給部13は、凝縮性気体供給源131と凝縮性気体供給路132とで構成されている。
【0019】
粉粒体投入部12と加熱部14との間は、原料供給路16を介して接続されている。減圧部15の下流側には、冷却管17が接続され、冷却管17の下流側にはサイクロン18が接続されている。冷却管17は、送風路191を介して送風機19と接続されている。
【0020】
以下、装置1による粉粒体10の加熱又は殺菌処理について、図1を参照しながら工程順に説明する。図1において、供給手段11には、粉粒体10が充填される。供給手段11からの粉粒体10は、粉粒体投入部12へ投入される。粉粒体投入部12内で粉粒体10は搬送され、原料供給路16へ供給される。原料供給路16を経た粉粒体10は、加熱部14へ流入する。
【0021】
加熱部14の入口部141において、凝縮性気体供給路132から供給された凝縮性気体と原料供給路16から供給された粉粒体10との混合体が生成される。凝縮性気体は、例えば水蒸気であり、飽和水蒸気、過熱水蒸気のいずれでもよく、各種溶剤の蒸気であってもよい。混合体は減圧部15に向かって流動する。本実施形態では、加熱部14において、混合体が加圧条件下において流速200m/秒以下で流動するように設定されている。
【0022】
加熱部14及び減圧部15において、粉粒体10は凝縮性気体により加熱又は殺菌処理される。具体的には、粉粒体10と凝縮性気体との温度差により凝縮性気体の熱が粉粒体に伝達され前記粉粒体の表面で凝結が生じ、加熱部14より圧力が低い空間に減圧部15を通じて開放されることにより、粉粒体10は加熱又は殺菌処理される。
【0023】
加熱又は殺菌処理された粉粒体10は、冷却管17内で冷却される。冷却管17内には、送風機19からの非凝縮性気体が、送風路191を経て供給される。非凝縮性気体は、例えば空気、酸素、窒素、二酸化炭素であり、冷えても凝縮しない気体である。冷却管17において、凝縮性気体と粉粒体10との混合気体は、送風機19からの非凝縮性気体により冷却されて、サイクロン18に供給される。このことにより、粉粒体10の温度をサイクロン18に供給する前に、所定の温度に下げることができる。サイクロン18内で凝縮性気体と粉粒体10とが分離される。凝縮性気体は排気路181を経て排気され、凝縮性気体から分離された粉粒体10は、回収路182を経て回収される。
【0024】
以上、装置1による粉粒体10の加熱又は殺菌処理について説明したが、本実施形態では、粉粒体10の加熱部14の内面への付着防止を図る構成を採用しており、同構成について以下説明する。粉粒体10が加熱部14内の凝縮性気体中に投入されると、粉粒体10と凝縮性気体との温度差により、熱が粉粒体10に伝達することで粒体10の表面で凝結が生じ、短時間で粉粒体10が加熱される。その一方、凝結すると粉粒体10が加熱部14の内面に付着し易くなる。
【0025】
すでに述べたとおり、粉粒体10が加熱部14の内面に付着すると、様々な問題が生じることから、特許文献2には、加熱部14の内面を非粘着性材料で形成することで粉粒体の付着を防止することが提案されている。しかし、非粘着性材料は、一般に樹脂であり、硬度が低く摩耗し易く、熱変形もし易いことから、新たな問題が生じることについても、すでに述べたとおりである。
【0026】
本願発明者は、粉粒体10の付着防止を図りつつ、硬度が高く摩耗しにくく、熱変形にも強い加熱部14を実現するという目的を達成する構成として、金属製の加熱部14の内面にメッキ層を施すという基本構成を導き出した。図2は、加熱部14の断面図を示しており、図1のAA線における断面図に相当する。加熱部14は金属管141の内面にメッキ層142を施したものである。
【0027】
さらに、本願発明者は、前記目的をより確実に達成するために、メッキ層142の表面は、水との接触角が90度以上であり、表面粗度がRa1.6μm以下であり、硬度がHV140以上であるという具体的構成を導き出した。
【0028】
水との接触角は、JIS(日本産業規格、以下同じ)R3257:1999の静滴法で規定される接触角のことである。図3は、水との接触角を説明する側面図である。水との接触角は、試験片20、水滴21及び空気の接する部位(A点)から、水滴21の曲面に接線を引いたときに、この接線と試験片20の表面とのなす角度θである。
【0029】
表面粗度Raは、JIS B601:2013で規定される算術平均粗さのことである。硬度HVは、JIS Z2244-1:2020で規定されるビッカース硬さのことである。
【0030】
本発明の本実施形態に係る加熱部14の構成によれば、加熱部14の内面であるメッキ層142の表面は、水との接触角が90度以上であり、表面粗度がRa1.6μm以下であることにより、凝結による粉粒体の付着を防止できる。図4は、メッキ層142上の水滴21を示している。図4の状態では、水との接触角θが90度よりも大きくなっており、水滴21の離型性や撥水性が高くなる。水との接触角θは、離型性や撥水性をより高める観点からは、100度以上がより好ましい。
【0031】
また、メッキ層142の表面は、硬度がHV140以上であることにより、硬度が高く摩耗しにくくなる。このことにより、摩耗した材料による異物混入を防止できる上、摩耗による内面の表面積の拡大を防止し、流速や内部圧力の低下を防止でき、装置1の寿命を長くできる。
【0032】
さらに、加熱部14は金属管141の内面にメッキ層142を施した構成により、熱変形に強くなるので加熱温度を高くできる。同構成は構造がシンプルになることに加えて、高強度であるため、薄肉化による軽量化を図ることができる。
【0033】
メッキ層142は、水との接触角が90度以上、表面粗度がRa1.6μm以下及び硬度がHV140以上を満足するものであればよく、メッキ層142の種類に限定は無い。これに対し、PTFE(フッ素樹脂、以下同じ)の硬度は著しく低く、HV140以上の硬度を確保することはできない(下記の比較例2参照)。
【0034】
表1に、比較例1、2及び実施例1について、接触角、表面粗度及び硬度を示している。表1中、接触角、表面粗度及び硬度の括弧内は、目標値を示している。
【表1】
【0035】
比較例1は加熱部の断面全体がステンレスであり、硬度の目標値は達成でき、面粗度の目標値も達成可能であるが、接触角の目標値は達成できない。比較例2は加熱部の断面全体がPTFEであり、接触角及び面粗度の目標値は達成しているが、硬度の目標値は達成できない。比較例2は柔らか過ぎて、ビッカース硬さによる硬度の評価ができないが、目標値を著しく下回る硬度であることは明らかである。
【0036】
実施例1は、金属製の基体にフッ素樹脂粒子を含有したメッキ層を施したものであり、接触角、表面粗度及び硬度にいずれについても、目標値を達成している。フッ素樹脂粒子の含有量は任意であり、目標値を全て達成できるメッキは、汎用品の中から選択可能である。
【0037】
ここで、装置1は、前記のとおり、凝縮性気体と粉粒体10との混合気体が流速200m/秒以下で流れるように設定されている。また、流速が200m/秒よりも大きいと、粉粒体10の流れも速くなり、粉粒体10が加熱部14に付着しにくくなり、付着防止対策の必要性が薄れてくる。すなわち、本実施形態は、粉粒体10の付着防止の効果が有効に発揮される構成である。このことにより、粉粒体10の滞留時間を確保するための加熱部14の長さを抑えることができ、装置1の大型化を防ぐことができる。
【0038】
図5は、本発明の別の実施形態に係る加熱又は殺菌処理装置1’(以下、「装置1’」という。)の概略構成図である。図1と同一構成のものは、同一符号を付してその説明は省略する。図1では加熱部14は水平方向に配置されているが、図5では加熱部14は垂直方向に配置されている。この構成においても、加熱部14の内面に、前記のメッキ層142を施した構成を採用すれば、図1の装置1と同様に、粉粒体10の付着防止を図りつつ、硬度が高く摩耗しにくく、熱変形にも強い加熱部14を実現することができる。
【0039】
図1に示した装置1及び図5に示した装置1’において、加熱部14が接地(アース)していることが好ましい。図1に示した装置1は、加熱部14にアース143を付加している。接地は実質的に加熱部14を接地できればよく、接地箇所は加熱部14に限らない。図5に示した装置1’は、サイクロン18にアース183を付加している。これらの構成によれば、静電気による加熱部14内面への粉粒体の付着を防止できる。このことにより、塊や焦げなどが生じることによる品質劣化や異物混入が防止できることに加え、付着による加熱部14内面の表面積の縮小を防止し、流速や内部圧力の上昇を防止でき、あわせて洗浄がし易くなる。
【0040】
以上、加熱部14の内面にメッキ層142を施した構成について説明したが、図1及び図5において、減圧部15の内面にメッキ層を施してもよい。この構成では加熱部14と同様に、メッキ層の表面は、水との接触角が90度以上であり、表面粗度がRa1.6μm以下であり、硬度がHV140以上とする。この構成によれば、減圧部15においても、加熱部14と同様に、粉粒体10の付着防止を図りつつ、硬度が高く摩耗しにくく、熱変形にも強いという効果が得られる。
【0041】
また、図1及び図5において、減圧部15は細管を用いているが、これに代えてロータリーバルブを用いてもよい。図6に示した減圧部15’は、減圧部として、ロータリーバルブを用いている。減圧部15’のロータリーバルブは、加熱部14に接続されており、粉粒体10の供給口151と、粉粒体10の排出口152と、ケーシング153と、ケーシング153内に複数のポケット154を形成しケーシング153内を回転するローター155で構成されている。
【0042】
この構成において、供給口151に供給された粉粒体10は、開口したポケット154へ供給され、ローター155の回転に伴って排出口152に移送され、排出口152へ開口したポケット154から落下する。ローター155の回転速度を変えることで、加圧条件下において粉粒体10が加熱される時間を容易に変えることができる。
【0043】
ロータリーバルブの内面を形成するケーシング153の内面及びローター155表面に、メッキ層142を施してもよい。この構成では加熱部14と同様に、メッキ層の表面は、水との接触角が90度以上であり、表面粗度がRa1.6μm以下であり、硬度がHV140以上とする。この構成によれば、ケーシング153及びローター155においても、加熱部14と同様に、粉粒体10の付着防止を図りつつ、硬度が高く摩耗しにくく、熱変形にも強いという効果が得られる。
【実施例
【0044】
以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに具体的に説明する。実施例の装置構成は図1に示した装置1と同様の構成である。加熱部14の断面構造は、図2に示したとおりであり、金属管141(本実施例ではステンレス管)の内面にメッキ層142(本実施例では表1の実施例1)を施したものである。減圧部15についても、加熱部14と同様にステンレス管の内面にメッキ層を施したものである。
これら以外の実験条件は次のとおりである。
実験開始時の加熱部14の内径:30.0mm
実験開始時の減圧部15の内径:15.0mm
粉粒体10:小麦粉、とうがらし
実験開始時の水蒸気圧:0.40MPa
処理時間:1時間
運転後、加熱部14内を確認したところ、小麦粉、とうがらしのいずれにおいても、付着、焦げ及び閉塞は確認されなかった。比較のために、加熱部14を内径30.0mmのステンレス管のみ(メッキ層無し)、減圧部15を内径15.0mmのステンレス管のみ(メッキ層無し)で構成し、これ以外は実施例と同じ構成の比較例で実験確認した。比較例では、小麦粉は5分後、とうがらしは3分後から徐々に処理量(排出量)が減って部分的に焦げが混ざり始めた。いずれの場合も、この2分後には加熱部14は完全に閉塞した。加熱部14内を確認したところ、ステンレス表面に原料が付着して焦げ、管内が閉塞していた。この比較実験により、本発明による粉粒体10の付着防止効果を確認できた。
【0045】
前記実施例の小麦粉での実験を継続し、通算の処理時間を1600時間とした。この間、運転の停止、装置の洗浄、再運転を繰り返した。運転中の水蒸気圧は変化しておらず、1600時間運転後加熱部14及び減圧部15の内径を測定したところ加熱部は30.0mm、減圧部は15.0mmであり、実験開始時から変化していなかった。比較のために、加熱部14を内径30.0mmのフッ素樹脂管とフッ素樹脂管を外側から補強するステンレス管、減圧部15を内径15.0mmのフッ素樹脂管とフッ素樹脂管を外側から補強するステンレス管で構成し、これ以外は実施例と同じ構成の比較例で実験確認した。比較例では、供給している水蒸気流量は一定にも関わらず、200時間経過後から徐々に運転中の水蒸気圧が低下し始め、1600時間に達する頃には0.31MPaまで低下した。1600時間運転後加熱部14及び減圧部15の内径を測定したところ、加熱部14は30.1mm、減圧部15は16.5mmであり実験開始時から拡大していた。この比較実験により、本発明による加熱部14及び減圧部15の摩耗防止効果を確認できた。
【0046】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、これらは一例であり、適宜変更したものであってもよい。例えば、装置1及び装置1’は、粉粒体10を凝縮性気体により加熱処理する加熱部14を備えたものであればよく、加熱部14の形状、大きさは任意であり、配置も特に限定されさない。
【符号の説明】
【0047】
1,1’ 加熱又は殺菌処理装置
11 供給手段
12 粉粒体投入部
13 凝縮性気体供給部
14 加熱部
142 メッキ層
143 アース(接地)
15 減圧部(細管)
15’ 減圧部(ロータリーバルブ)
183 アース(接地)

【要約】
【課題】粉粒体の付着防止を図りつつ、硬度が高く摩耗しにくく、熱変形にも強い加熱部を備えた粉粒体の加熱又は殺菌処理装置を提供する。
【解決手段】粉粒体10の供給手段11と、粉粒体10が投入される粉粒体投入部12と、凝縮性気体供給部13と、粉粒体10を加熱する加熱部14と、粉粒体10と凝縮性気体の混合体を加熱部14より圧力が低い空間に開放する減圧部15とを備え、加熱部14は金属であり、内面にメッキ層が施され、メッキ層の表面は、水との接触角が90度以上であり、表面粗度がRa1.6μm以下であり、硬度がHV140以上であり、粉粒体10が凝縮性気体中に投入されると、加熱部14において、混合体は、加圧条件下において流速200m/秒以下で流動しながら凝縮性気体の熱が粉粒体10に伝達され粉粒体10の表面で凝結が生じ、加熱部14より圧力が低い空間に減圧部15を通じて開放されて粉粒体10が加熱又は殺菌される。
【選択図】図1

図1
図2
図3
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図5
図6