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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】プログラム、方法、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20231024BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20231024BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20231024BHJP
   G06F 113/14 20200101ALN20231024BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F30/13
G06F30/20
G06F113:14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023514678
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2022017785
(87)【国際公開番号】W WO2022220277
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2021069385
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520294930
【氏名又は名称】株式会社PlantStream
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐海 文隆
(72)【発明者】
【氏名】織田 岳志
(72)【発明者】
【氏名】愛徳 誓太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂井 文明
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-162367(JP,A)
【文献】特開2019-106141(JP,A)
【文献】特表2011-526389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
G06Q 50/04 -50/08
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備えるコンピュータに実行させるプログラムであって、前記プログラムは、プラントの設計を行うためのものであり、前記プロセッサに、
仮想空間に、始点を有する第1のオブジェクトと、終点を有する第2のオブジェクトと、を配置する操作をユーザから受け付けるステップと、
仮想空間の座標軸に沿って、前記始点と前記終点とを結ぶ暫定ルートを複数設定するステップと、
設定された前記暫定ルートに対して、障害物との干渉の有無を検出するステップと、
前記干渉の有無を検出するステップにおいて干渉が検出された暫定ルートを変更して、仮想空間の座標軸に沿って前記障害物を避ける代替ルートを生成するステップと、
干渉が検出されなかった暫定ルート、および前記代替ルートから、最も低コストとなる最適ルートを選出するステップと、を実行させるプログラム。
【請求項2】
前記プロセッサに、
生成した前記代替ルートを修正して、前記代替ルートよりも屈曲回数が少なく、かつ経路長が短い修正ルートを生成するステップを実行させ、
前記最適ルートを選出するステップでは、
干渉が検出されなかった暫定ルート、前記代替ルート、および前記修正ルートから、最も低コストとなる最適ルートを選出する請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記最適ルートを選出する際における各ルートのコストは、各ルートそれぞれの経路長により算出され、前記経路長が同じである場合には、前記屈曲回数に基づいて、前記屈曲回数が少ないものが高評価とされる、請求項に記載のプログラム。
【請求項4】
前記最適ルートを選出する際における各ルートのコストは、前記経路長および前記屈曲回数が同じである場合には、前記各ルートの経路間における高さの変化量が少ないものが高評価とされる、請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記最適ルートを選出するステップにおいて、前記経路間における前記高さの変化に関する制約条件を満たすルートを予め選別し、選別された前記ルートから、前記最適ルートを選出する請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記代替ルートを生成するステップにおいて、エルボを用いて、前記代替ルートを生成する、請求項に記載のプログラム。
【請求項7】
前記代替ルートを生成するステップにおいて、前記代替ルートに新たな直管を適用する場合には、前記直管の両端部における最小溶接間距離を満たすように、代替ルートを生成する、請求項に記載のプログラム。
【請求項8】
前記代替ルートを生成するステップにおいて、
前記暫定ルートとの干渉が検出された複数の障害物から、前記始点および前記終点それぞれの位置との間の距離が、予め設定された閾値以内である前記障害物を除外して、前記代替ルートが避けるべき前記障害物である障害物オブジェクトを特定し、
特定された前記障害物オブジェクトを避ける前記代替ルートを生成する、請求項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記プロセッサに、
前記暫定ルートに用いられる配管のサイズを含む仕様値である配管設計パラメータの入力をユーザから受け付けるステップを実行させ、
前記閾値は、前記配管設計パラメータにより設定される前記暫定ルートに使用可能な最小のエルボが連結可能な距離を指す、請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
プロセッサを備えるコンピュータに実行させる方法であって、前記方法は、プラントの設計を行うためのものであり、前記プロセッサが、
仮想空間に、始点を有する第1のオブジェクトと、終点を有する第2のオブジェクトと、を配置する操作をユーザから受け付けるステップと、
仮想空間の座標軸に沿って、前記始点と前記終点とを結ぶ暫定ルートを複数設定するステップと、
設定された前記暫定ルートに対して、障害物との干渉の有無を検出するステップと、
前記干渉の有無を検出するステップにおいて干渉が検出された暫定ルートを変更して、仮想空間の座標軸に沿って前記障害物を避ける代替ルートを生成するステップと、
干渉が検出されなかった暫定ルート、および前記代替ルートから、最も低コストとなる最適ルートを選出するステップと、を実行する方法。
【請求項11】
制御部を備え、プラントの設計を行うシステムであり、
前記制御部は、
仮想空間に、始点を有する第1のオブジェクトと、終点を有する第2のオブジェクトと、を配置する操作をユーザから受け付ける手段と、
仮想空間の座標軸に沿って、前記始点と前記終点とを結ぶ暫定ルートを複数設定する手段と、
設定された前記暫定ルートに対して、障害物との干渉の有無を検出する手段と、
前記干渉の有無を検出するステップにおいて干渉が検出された暫定ルートを変更して、仮想空間の座標軸に沿って前記障害物を避ける代替ルートを生成する手段と、
干渉が検出されなかった暫定ルート、および前記代替ルートから、最も低コストとなる最適ルートを選出する手段と、を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、方法、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
化学プラントのような大規模な設備を建設するためには、各種設備を適切に配置し、機器を配置し、各機器同士を接続し、各種の流体を供給する配管のルーティングが行われる。プラントの設計段階で行われる配管ルーティングは、プラントを構成する各機器の位置関係に基づく要件、各機器に供給される電力から選定される配管のサイズの条件、メンテナンス性のように様々な要素の検討が必要であり、膨大な作業が必要になる。このような作業を支援するため、CADのような設計ツールが使用され、各種機器の配置、配管のルーティング等の各種設計が行われている。
【0003】
特許文献1には、プラントの設計段階において使用される、配管ルート作成装置の技術が開示されている。この技術は、配管ルートを自動で決定する処理の効率を向上させるため、配管の目標位置である整列ガイドを用いて配管ルートの位置を調節し、複数の配管ルートを整列させ、配管同士の干渉を回避し、配管の間隔を一定にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-106141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、干渉を回避するために、整列ガイドを用いた位置調整を行う必要があり、操作が煩雑であった。
【0006】
そこで、本開示では、極めて単純な操作により、配管同士の干渉を回避しながら、配管をルーティングすることができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のプログラムは、プロセッサに、仮想空間に、始点を有する第1のオブジェクトと、終点を有する第2のオブジェクトと、を配置する操作をユーザから受け付けるステップと、仮想空間の座標軸に沿って、始点と終点とを結ぶ暫定ルートを複数設定するステップと、設定された暫定ルートに対して、障害物との干渉の有無を検出するステップと、干渉が検出されなかった暫定ルートから、最も低コストとなる最適ルートを選出するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、極めて単純な操作により、配管同士の干渉を回避しながら、配管をルーティングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】配管ルーティングシステム1の全体の構成を示す図である。
図2】配管ルーティングシステム1を構成する端末装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図3】配管ルーティングシステム1を構成するサーバの機能的な構成を示す図である。
図4】サーバが記憶する機器データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図5】サーバが記憶する設計空間データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図6】配管ルーティングシステム1で扱う機器の種類を示す図である。
図7】サーバが記憶する配管情報データベース2023のデータ構造の一例を示す図である。
図8】サーバが記憶する設計パラメータデータベース2024のデータ構造の一例を示す図である。
図9】サーバが記憶するラック位置情報データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図10】サーバが記憶する機器位置情報データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図11】配管ルーティングシステム1による配管ルーティング処理の全体を示す図である。
図12】ラックおよび機器が3次元空間上に配置された状態の操作画面の一例を示す図である。
図13】配管が敷設されるレイヤーおよび領域を指定する際の操作画面の一例を示す図である。
図14】配管パスが設定された際の端末装置10の操作画面の一例を示す図である。
図15】配管ルーティング処理の詳細を示す図である。
図16】ラックの要否判断の処理を示す図である。
図17】配管パスを特定する処理を示す図である。
図18】機器の属性によるルーティング方法の決定処理を示す図である。
図19】機器の位置関係によるルーティング方法の決定処理を示す図である。
図20】各種のルーティング方法を説明する図である。
図21】各種のルーティング方法によりルーティングされた各種機器の状態を示す図である。
図22】ルーティングの実行処理を示す図である。
図23】ルーティングモジュールが生成する代替ルートを説明する図である。
図24】2次元的な経路においてルーティングモジュールが生成する代替ルートを説明する図である。
図25】3次元的な経路においてルーティングモジュールが生成する代替ルートを説明する図である。
図26図23に示す代替ルートの拡大図である。
図27】ルーティングモジュールが生成する修正ルートを説明する図である。
図28】配管ルーティングを行った際の端末装置の操作画面の一例を示す図である。
図29】3次元空間上におけるメインラックおよびサブラックの外観を示す図である。
図30】3次元空間上におけるストラクチャの外観を示す図である。
図31】3次元空間上におけるタワーの外観を示す図である
図32】変形例に係る代替ルートを説明する図である。
図33】変形例に係る代替ルートの作成処理を示す図である。
図34】変形例に係る代替ルートの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
<概要>
以下、プラント設計における配管ルーティングの概要、及び本開示に係る配管ルーティングシステム1について説明する。この配管ルーティングシステム1は、LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)プラントや石油化学プラントのように、化学反応による様々な生産工程を経由して化学製品を製造するための設備群に対して各種の流体を供給する配管の設計を行うためのシステムである。
プラントに配置される設備とは、LNGプラントを例に説明すると、液化処理の対象である原料ガス中に含まれる酸性ガス(HS、CO、有機硫黄等)を除去する酸性ガス除去設備、除去された酸性ガスから単体硫黄を回収する硫黄回収設備、原料ガス中に含まれる水分を除去する水分除去設備、原料ガスの冷却や液化に用いられる冷媒(混合冷媒、プロパン冷媒等)の圧縮設備等が含まれる。ここで、プラントの設備とは、そのプラントの目的に応じて敷設された装置群や機器群のことをいう。
【0012】
このようなプラントを設計するためには、例えば、以下のような工程が含まれる。まず、プラント内の各設備、ポンプや熱交換器等の各種機器、各種配管を通すための架構(配管ラック)の配置、主要な配管のルートを決定し、プラントのレイアウトを設計してプロットプランと呼ばれる配置図を作成する。次に、プラント全体の機能要件に基づき、プラントにて使用される原料の受け入れから製品出荷までのプロセスユニット(一連の製造工程)を詳細に策定し、プロセスごとに物質/熱収支計算を行い、プロセスフローダイアグラム(PFD)と呼ばれるプロセスフローを作成する。さらに、PFDに基づき、シミュレーションを繰り返してプロセス計算を修正し、プラント内の各機器を通す配管および各種配管のレイアウトが決定(配管ルーティング)され、詳細な計装図であるP&ID(Piping and Instrument Diagram)の作成が行われる。
本開示に係る配管ルーティングシステム1は、このような各工程において、プラント全体及び各設備における機器および配管等のレイアウト設計を行い、プロセスフロー作成、配管ルーティング、P&ID等を支援するための3DCADシステムである。
【0013】
以下、配管ルーティングシステム1について説明する。以下の説明では、例えば、端末装置10がサーバ20へアクセスすることにより、サーバ20が、端末装置10で画面を生成するための情報を応答する。端末装置10は、サーバ20から受信した情報に基づいて画面を生成し表示する。
【0014】
<1 配管ルーティングシステム1の全体構成>
図1は、配管ルーティングシステム1の全体の構成を示す図である。図1に示すように、配管ルーティングシステム1は、複数の端末装置(図1では、端末装置10A及び端末装置10Bを示している。以下、総称して「端末装置10」という)と、サーバ20とを含む。端末装置10とサーバ20とは、ネットワーク80を介して相互に通信可能に接続されている。ネットワーク80は、有線または無線ネットワークにより構成される。
【0015】
端末装置10は、各ユーザが操作する装置である。ここで、ユーザとは、端末装置10を使用して配管ルーティングシステム1の機能であるプラント設計を行う者をいう。端末装置10は、据え置き型のPC(Personal Computer)、ラップトップPCなどにより実現される。この他、端末装置10は、例えば移動体通信システムに対応したタブレットや、スマートフォン等の携帯端末であるとしてもよい。
【0016】
端末装置10は、ネットワーク80を介してサーバ20と通信可能に接続される。端末装置10は、5G、LTE(Long Term Evolution)などの通信規格に対応した無線基地局81、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11などの無線LAN(Local Area Network)規格に対応した無線LANルータ82等の通信機器と通信することにより、ネットワーク80に接続される。図1に端末装置10Bとして示すように、端末装置10は、通信IF(Interface)12と、入力装置13と、出力装置14と、メモリ15と、記憶部16と、プロセッサ19とを備える。
【0017】
通信IF12は、端末装置10が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。
入力装置13は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置(例えば、キーボードや、タッチパネル、タッチパッド、マウス等のポインティングデバイス等)である。
【0018】
出力装置14は、ユーザに対し情報を提示するための出力装置(ディスプレイ、スピーカ等)である。
メモリ15は、プログラム、及び、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。
【0019】
記憶部16は、データを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)である。
プロセッサ19は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。
【0020】
サーバ20は、各ユーザの情報、各種機器および各種配管の情報、及び、設計を行った仮想空間(設計途中のものも含む)の情報を管理する装置である。
サーバ20は、ユーザに対して、プラント設計をするための仮想空間内に配置する機器の種類、配置位置、配管のルーティングを行う指示等の入力を受け付ける。
【0021】
具体的には、例えばプラント設計をするための仮想空間内の視点(仮想カメラ)を設定し、ユーザの指示により配置された各種機器、ルーティングされた配管について、仮想カメラの設定に基づきレンダリングを行い、端末装置10へ表示させる。
サーバ20は、入力された各種機器の種類、配置位置に基づいて仮想空間に配置し、配管及び配管のルーティングを行うユーザからの指示に基づいて配管及び配管のルートを決定して、仮想空間上でルーティングを行い、ユーザの端末に表示させる。
【0022】
サーバ20は、ネットワーク80に接続されたコンピュータである。サーバ20は、通信IF22と、入出力IF23と、メモリ25と、ストレージ26と、プロセッサ29とを備える。
【0023】
通信IF22は、サーバ20が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。
入出力IF23は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置、及び、ユーザに対し情報を提示するための出力装置とのインタフェースとして機能する。
【0024】
メモリ25は、プログラム、及び、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。
ストレージ26は、データを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)である。
プロセッサ29は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。
【0025】
<1.1 端末装置10の構成>
図2は、配管ルーティングシステム1を構成する端末装置10の機能的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、端末装置10は、複数のアンテナ(アンテナ111、アンテナ112)と、各アンテナに対応する無線通信部(第1無線通信部121、第2無線通信部122)と、操作受付部130(キーボード131及びディスプレイ132を含む)と、音声処理部140と、マイク141と、スピーカ142と、カメラ150と、記憶部160と、制御部170とを含む。
【0026】
端末装置10は、図2では特に図示していない機能及び構成(例えば、電力を保持するためのバッテリー、バッテリーから各回路への電力の供給を制御する電力供給回路など)も有している。図2に示すように、端末装置10に含まれる各ブロックは、バス等により電気的に接続される。
【0027】
アンテナ111は、端末装置10が発する信号を電波として放射する。また、アンテナ111は、空間から電波を受信して受信信号を第1無線通信部121へ与える。
【0028】
アンテナ112は、端末装置10が発する信号を電波として放射する。また、アンテナ112は、空間から電波を受信して受信信号を第2無線通信部122へ与える。
【0029】
第1無線通信部121は、端末装置10が他の無線機器と通信するため、アンテナ111を介して信号を送受信するための変復調処理などを行う。第2無線通信部122は、端末装置10が他の無線機器と通信するため、アンテナ112を介して信号を送受信するための変復調処理などを行う。第1無線通信部121と第2無線通信部122とは、チューナー、RSSI(Received Signal Strength Indicator)算出回路、CRC(Cyclic Redundancy Check)算出回路、高周波回路などを含む通信モジュールである。第1無線通信部121と第2無線通信部122とは、端末装置10が送受信する無線信号の変復調や周波数変換を行い、受信信号を制御部170へ与える。
【0030】
操作受付部130は、ユーザの入力操作を受け付けるための機構を有する。具体的には、操作受付部130は、キーボード131と、ディスプレイ132とを含む。なお、操作受付部130は、例えば静電容量方式のタッチパネルを用いることによって、タッチパネルに対するユーザの接触位置を検出する、タッチスクリーンとして構成してもよい。
【0031】
キーボード131は、端末装置10のユーザの入力操作を受け付ける。キーボード131は、文字入力を行う装置であり、入力された文字情報を入力信号として制御部170へ出力する。
【0032】
ディスプレイ132は、制御部170の制御に応じて、画像、動画、テキストなどのデータを表示する。ディスプレイ132は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイによって実現される。
【0033】
音声処理部140は、音声信号の変復調を行う。音声処理部140は、マイク141から与えられる信号を変調して、変調後の信号を制御部170へ与える。また、音声処理部140は、音声信号をスピーカ142へ与える。
音声処理部140は、例えば音声処理用のプロセッサによって実現される。マイク141は、音声入力を受け付けて、当該音声入力に対応する音声信号を音声処理部140へ与える。スピーカ142は、音声処理部140から与えられる音声信号を音声に変換して当該音声を端末装置10の外部へ出力する。
【0034】
カメラ150は、受光素子により光を受光して、撮影画像として出力するためのデバイスである。カメラ150は、例えば、カメラ150から撮影対象までの距離を検出できる深度カメラである。
【0035】
記憶部160は、例えばフラッシュメモリ等により構成され、端末装置10が使用するデータ及びプログラムを記憶する。ある局面において、記憶部160は、ユーザ情報161を記憶する。
【0036】
ユーザ情報161は、端末装置10を使用して配管ルーティングシステム1の機能であるプラント設計を行うユーザの情報である。ユーザ情報としては、ユーザを識別する情報(ユーザID)、ユーザの名称、ユーザが所属している企業等の組織情報等が含まれる。
【0037】
制御部170は、記憶部160に記憶されるプログラムを読み込んで、プログラムに含まれる命令を実行することにより、端末装置10の動作を制御する。制御部170は、例えば予め端末装置10にインストールされているアプリケーションプログラムである。制御部170は、プログラムに従って動作することにより、入力操作受付部171と、送受信部172と、データ処理部173と、通知制御部174としての機能を発揮する。
【0038】
入力操作受付部171は、キーボード131等の入力装置に対するユーザの入力操作を受け付ける処理を行う。
【0039】
送受信部172は、端末装置10が、サーバ20等の外部の装置と、通信プロトコルに従ってデータを送受信するための処理を行う。
【0040】
データ処理部173は、端末装置10が入力を受け付けたデータに対し、プログラムに従って演算を行い、演算結果をメモリ等に出力する処理を行う。
【0041】
通知制御部174は、ユーザに対し情報を提示する処理を行う。通知制御部174は、表示画像をディスプレイ132に表示させる処理、音声をスピーカ142に出力させる処理、振動をカメラ150に発生させる処理等を行う。
【0042】
<1.2 サーバ20の機能的な構成>
図3は、配管ルーティングシステム1を構成するサーバ20の機能的な構成を示す図である。図3に示すように、サーバ20は、通信部201と、記憶部202と、制御部203としての機能を発揮する。
【0043】
通信部201は、サーバ20が外部の装置と通信するための処理を行う。
【0044】
記憶部202は、サーバ20が使用するデータ及びプログラムを記憶する。記憶部202は、機器データベース2021、設計空間データベース2022、配管情報データベース2023、設計パラメータデータベース2024、ラック位置情報データベース2025、機器位置情報データベース2026、を記憶している。
【0045】
機器データベース2021は、配管ルーティングシステム1においてプラント設計をするために提示される仮想空間に配置される、各種機器に関する情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0046】
設計空間データベース2022は、ユーザが設計を行った仮想空間の情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0047】
配管情報データベース2023は、配管の種類を、内部を流れる流体の属性に応じて分類した情報を記憶するデータベースである。詳細は後述する。
【0048】
設計パラメータデータベース2024は、配管ルーティングシステム1において、配管ルーティングをするためのパラメータ(配管設計パラメータ)の情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0049】
ラック位置情報データベース2025は、3次元空間上に配置されたラックのうち、配管をルーティングする際にユーザから指定されたラック領域を示す情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0050】
機器位置情報データベース2026は、3次元空間上に配置された各種機器について、それぞれの始点および終点も含めた位置に関する情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0051】
制御部203は、サーバ20のプロセッサ29がプログラムに従って処理を行うことにより、各種モジュールとして受信制御モジュール2031、送信制御モジュール2032、機器入力受付モジュール2033、機器配置モジュール2034、編集入力受付モジュール2035、パラメータ入力受付モジュール2036、編集表示モジュール2037、及びルーティングモジュール2038としての機能を発揮する。
【0052】
受信制御モジュール2031は、サーバ20が外部の装置から通信プロトコルに従って信号を受信する処理を制御する。
【0053】
送信制御モジュール2032は、サーバ20が外部の装置に対し通信プロトコルに従って信号を送信する処理を制御する。
【0054】
機器入力受付モジュール2033は、配管ルーティングシステム1を使用してプラント設計を行うための仮想空間に配置する、各種機器の種類、及び当該機器を仮想空間内に配置する位置の入力操作を、ユーザから受け付ける処理を制御する。
ユーザが端末装置10を使用してプラント設計を行うとき、端末装置10のディスプレイ132には、プラント設計を行う実際の敷地を模した仮想空間が表示される。その後、ユーザは、ディスプレイ132の画面上で所定の操作をすることにより、仮想空間内に配置する各種機器の種類、及び仮想空間内の配置位置を入力し、機器入力受付モジュール2033は、入力された各種機器の種類、及び仮想空間内の配置位置の情報を受け付ける。
【0055】
機器入力受付モジュール2033で受け付ける、ディスプレイ132の画面上における所定の操作とは、例えば、画面上に表示される複数パターンの各種機器の一覧から所望の種類をクリック等することにより選択し、画面上に表示される仮想空間の所望の箇所をクリック等することにより配置位置を選択する操作である。また、所定の操作の他の例は、画面上に表示される各種機器の外観を示す画像の一覧から所望の画像を選択してドラッグし、画面上に表示される仮想空間の所望の箇所まで移動させることにより配置位置を選択する操作である。なお、各種機器の入力は、このような入力操作に限られない。
【0056】
機器配置モジュール2034は、機器入力受付モジュール2033で受け付けた各種機器の種類、及び仮想空間内の配置位置の情報に基づき、仮想空間に配置して表示させる処理を制御する。ユーザの端末装置10への所定の操作により、仮想空間内に配置する各種機器の種類、及び仮想空間内の配置位置の情報を受け付けるので、それらの情報に基づき、端末装置10のディスプレイ132に表示されている仮想空間に、当該各種機器を入力された配置位置に配置し、端末装置10のディスプレイ132に表示させる。
ここで、仮想空間内に配置される機器を示すオブジェクトは、配管が接続されるノズルを始点および終点として備えている。オブジェクトは始点及び終点の情報を含んでいる。
【0057】
編集入力受付モジュール2035は、各種機器の編集を行う入力操作を、ユーザから受け付ける処理を制御する。ユーザが、端末装置10のディスプレイ132に表示されている各種機器に対して、各種調整を行うための編集情報を入力すると、編集入力受付モジュール2035は、入力された各種機器の編集情報を受け付ける。各種機器の編集は、例えば機器の種類、形状、サイズ、数量のいずれか1つまたは複数に対応した編集である。
【0058】
編集入力受付モジュール2035における、ユーザによる各種機器の編集を行う入力操作は、例えば、各種機器に設定されているパラメータを編集する入力操作である。ユーザによる入力操作の他の例は、ディスプレイ132に表示されている各種機器をドラッグ等することで大きさや長さ等を編集する入力操作であり、その大きさや長さに対応する数値をパラメータとして受け付ける。
【0059】
パラメータ入力受付モジュール2036は、配管のルーティングを行う際の各種のパラメータの入力を受け付ける処理を制御する。各種のパラメータとは、配管の種類、接続する機器の種類、配管トレイの数量、サイズ、配置に関する情報を含む。各種のパラメータについての詳細については後述する。ユーザは、配管ルーティングを行う際に、端末装置10を操作して、各種のパラメータを入力する。
【0060】
編集表示モジュール2037は、編集入力受付モジュール2035で受け付けた各種機器の編集情報に基づき、各種機器の表示態様を変更して仮想空間に表示させる処理を制御する。ユーザの端末装置10への所定の操作により、仮想空間内に配置されている各種機器を編集、例えば配管の長さや機器との接続角度を編集する情報を受け付けるので、それらの情報に基づき、端末装置10のディスプレイ132に表示されている仮想空間に、当該各種機器の表示態様を変更、例えば受け付けた付設配管の長さや機器との接続角度に合わせてその外観を変更し、端末装置10のディスプレイ132に表示させる。
【0061】
ルーティングモジュール2038は、配管ルーティングシステム1を使用して設計を行うプラントに配置する配管のルーティングを、仮想空間内に配置されている各種機器に関連付けて行う指示操作をユーザから受け付け、ルーティングを行う処理を制御する。プラントに配置する配管とは、例えば、プラント内において原料ガスを輸送するための配管、原料ガスから除去成分を吸収させるための吸収液を輸送するための配管、排出ガスを輸送するための配管等であり、液体や気体の流体を流すために配置される。
【0062】
ユーザは、例えば端末装置10のディスプレイ132に表示されている画面上で、仮想空間に配置されている各種機器の所定の箇所、例えば、機器の付設配管の端点をルーティングの開始位置または終了位置として指定し、ルーティングの指示をする操作(例えば、画面上の所定のボタン押下)をする。ルーティングモジュール2038は、ユーザからのルーティングの指示を受け付け、配管のルーティングを行う。
【0063】
なお、ルーティングモジュール2038は、ユーザが仮想空間上で行う詳細な入力情報に基づく配管のルーティング(いわゆるマニュアル)を行ってもよく、ユーザが始終点を指定することによる自動ルーティングを行ってもよい。このとき、所定の条件により配管のルーティングの方向が定められ、既存の各種機器、配管を避けるようなアルゴリズムにより自動ルーティングが行われる。また、ルーティングモジュール2038は、ユーザから入力されたパラメータ、またはあらかじめ設定されたパラメータにより指定された配管径や材質等のルーティングを行う構成にしてもよく、流す流体に最適な配管径や材質の配管をレコメンドする構成にしてもよい。
【0064】
ルーティングモジュール2038は、ルーティングにおいて配管同士、および配管と他の機器との干渉を回避する処理を実行する。具体的には、ルーティングモジュール2038はまず、始点と終点とを結ぶ暫定ルートを設定する。次に、ルーティングモジュール2038は、暫定ルートに対して、障害物との干渉の有無を検出する。ここで、障害物とは、既にルーティングされた他の配管、および既に配置された他の機器を指す。
【0065】
ルーティングモジュール2038は、他の障害物との干渉が検出されると、暫定ルートを変更して、障害物を迂回する複数の代替ルートを生成する。代替ルートを生成する際には、仮想空間の座標軸に沿って、障害物を迂回する。
ルーティングモジュール2038は、代替ルートを修正して、代替ルートよりも屈曲回数が少なく、かつ経路長が短い修正ルートを生成する。例えば、障害物が間隔をあけて複数並んでいる場合には、障害物毎に迂回するルートとなる代替ルートに対して、障害物が位置する領域全体を迂回するような修正ルートを生成する。
【0066】
ルーティングモジュール2038は、複数の代替ルート、および修正ルートに対して、経路長に基づいて算出されたスコア値を評価して、最適ルートを選出する。スコア値は、経路長が短いものが高評価となるように算出される。そして、ルーティングモジュール2038は、最適ルートに従って、始点と終点とをつなぐように、配管のルーティングを行う。
【0067】
本実施形態では、上記のようにサーバ20で、各種機器の種類及び配置位置の入力を受け付けて端末装置10へ表示指示を行い、各種機器の編集入力を受け付けて端末装置10へ表示指示を行い、配管ルーティングの指示を受け付けてルーティングを行い、端末装置10へ表示させる構成としているが、このような構成に限られない。
例えば、上記の機能の一部またはすべてについて、端末装置10で入力を受け付けて端末装置10内で処理を行い、端末装置10のディスプレイ132に表示させる構成としてもよい。このような構成にするため、ユーザは、端末装置10を介してサーバ20へアクセスし、サーバ20が提供するプログラムを端末装置10へインストールさせ、端末装置10内で処理を行う構成にしてもよい。この場合、サーバ20の機能として、機器入力受付モジュール2033、機器配置モジュール2034、編集入力受付モジュール2035、パラメータ入力受付モジュール2036、編集表示モジュール2037、またはルーティングモジュール2038の一部またはすべてを備えなくてもよい。
【0068】
<3 データ構造>
図4は、サーバ20が記憶する機器データベース2021を示す図である。
図4に示すように、機器データベース2021のレコードのそれぞれは、項目「機器ID」と、項目「機器名称」と、項目「BIMモデルデータ」等を含む。
【0069】
項目「機器ID」は、配管ルーティングシステム1にて仮想空間に配置可能な各種機器の種類を識別する情報である。
【0070】
項目「名称」は、各種機器単体の種類を示す名称であり、例えば、ポンプ、熱交換器、フィルタ、バルブ、ラックのような種類を示す名称の情報が格納されている。また、ポンプや熱交換器の場合、エンド-トップ型等のポンプの型式、多管式のような熱交換器の種類を示す情報も格納されている。なお、機器を示す名称は、所定の規格等により指定された記号でもよく、メーカにより指定された型番等でもよい。
【0071】
項目「BIMモデルデータ」は、配管ルーティングシステム1にて仮想空間に配置するモデルデータのデータ名(ファイル名)を示す情報であり、3DCADシステムで使用されるモデルデータである。サーバ20が提供する3DCADシステムでは、3次元仮想空間を構築し、3次元仮想空間上に機器の形状を表現するモデリングを行う。また、仮想空間内の視点(仮想カメラ)を設定し、これらの機器について、仮想カメラの設定に基づきレンダリングを行う。当該項目「BIMモデルデータ」に格納されるモデルデータは、実際の機器について、所定の仮想カメラによる視点でレンダリングするためのモデルデータである。
【0072】
図5は、および設計空間データベース2022のデータ構造の一例を示す図である。
図5に示すように、設計空間データベース2022のレコードのそれぞれは、項目「空間ID」と、項目「ユーザID」と、項目「空間内配管情報」等を含む。
【0073】
項目「空間ID」は、配管ルーティングシステム1にてユーザが設計した仮想空間の情報それぞれを識別する情報である。
【0074】
項目「ユーザID」は、配管ルーティングシステム1を使用するユーザそれぞれを識別する情報である。なお、項目「ユーザID」には、項目「空間ID」が「#0302」の場合の例として示すように、複数のユーザを識別する情報が格納されてもよい。これは、複数のユーザにより1の仮想空間が設計されて共有されることを可能にするためであり、後述する項目「空間内設計情報」の情報が、ユーザごとに紐づけて格納されてもよい。
【0075】
項目「空間内配管情報」は、配管ルーティングシステム1にてユーザが仮想空間に配置したブロックパターンや機器単体、ルーティングを行った配管に関する情報であり、具体的には、項目「相対座標」と、項目「配置物」と、項目「詳細情報(パラメータ)」等を含む。
【0076】
項目「相対座標」は、仮想空間に配置した機器又は配管の、仮想空間における相対位置を示す情報であり、例えば、仮想空間内における3次元座標の座標データが格納されている。相対座標は、例えば、機器の基準となる位置(例えば中心となる位置、6方向いずれかの端点)の、仮想空間をXYZ座標で表現した場合の相対座標であるが、この方式に限られない。
【0077】
項目「配置物」は、仮想空間に配置した機器または配管を示す情報であり、機器データベース2021の項目「機器ID」に対応している。
【0078】
項目「詳細情報(パラメータ)」は、仮想空間に配置した機器又は配管を編集した際の編集情報、ルーティングを行った配管の情報であり、例えば、機器の編集パラメータが格納されている。機器の編集パラメータとは、数量やサイズに関する情報である。
【0079】
サーバ20の機器入力受付モジュール2033は、各ユーザから機器の配置情報を受け付けることに伴って、設計空間データベース2022にレコードを追加し、更新する。編集入力受付モジュール2035は、各ユーザから機器の編集パラメータ情報を受け付けることに伴って、設計空間データベース2022にレコードを追加し、更新する。ルーティングモジュール2038は、配管ルーティングの処理を行うことに伴って、設計空間データベース2022にレコードを追加し、更新する。
【0080】
図6は、配管ルーティングシステム1で扱う機器の種類を示す図である。
図6に示すように、配管ルーティングシステム1では、ポンプ、コンプレッサー、タワー、ジャンクションボックス等の各種の機器が使用される。これらは、機器の種類時に応じて決められた設置区画に配置される。
【0081】
図7は、配管情報データベース2023のデータ構造の一例を示す図である。図7に示すように、配管情報データベース2023は、項目「Code」、項目「Description」、項目「Fluid Categoly」、項目「Fluid Type」、項目「Typical Ope Temp(℃)」、項目「Fluid Phase(V/L/VL)」、項目「Loop Type」等を含む。
【0082】
項目「Code」は、配管の内部を流れる流体の属性に対して付与される流体コードを示す情報である。
【0083】
項目「Description」は、流体コードに対応して設定された流体を記述する情報である。詳細は、以下の各項目の内容を示す。
【0084】
項目「Fluid Categoly」は、流体の区分を示す情報であり、配管の配列を決定する際に使用される。この項目は空欄であってもよい。
【0085】
項目「Fluid Type」は、流体の種類を示す情報であり、配管の段数決めに使用される。流体の種類としては、「プロセス」、「ユーティリティ」「フレアー」がある。
プロセスは、原料を分離、精製して製品、副産物、廃棄物として取り出すために原料や生成物を装置から装置へ送る配管、或いは配管系を指す。
ユーティリティは、プラントの機器を運転または維持するために必要な水、空気、蒸気、燃料、窒素などを送る配管、或いは配管系を指す。
また、可燃性流体を扱う機器や配管が設計圧力を超過すると内部流体は安全弁や制御弁から放出され、フレアースタックで燃焼される。フレアーは、これら安全弁や制御弁から放出された可燃性流体送る配管、或いは配管系を指す。
【0086】
項目「Typical Ope Temp(℃)」は、流体が流れる際の一般的な温度を示す情報であり、断熱材の厚さを決めるために使用される。この項目は空欄であってもよい。
【0087】
項目「Fluid Phase(V/L/VL)」は、流体の状態を示す情報であり、分岐部分の方向を上向きにするか、下向きにするかを示す情報である。
【0088】
項目「Loop Type」は、配管のループ部の構造を示す情報であり、ループ部の要否、およびループ部の形状を決める際に用いられる。
【0089】
図8は、設計パラメータデータベース2024の内容を示す情報である。
【0090】
配管設計パラメータは、項目「Fluid Code」、項目「Unit Code」、項目「Line Number Suffix」、項目「From ID」、項目「To ID」、項目「To Sub ID」、項目「NPS」、項目「Insulation Type」、項目「Routing Priority」、項目「Fluid PhaseL/V/2P」、項目「Operation Pressure(Mpa)」、項目「Operation Temperature(degC)」、項目「Material(MSDLevel)」、項目「Liquid Velocity(m/s)」、項目「Liquid Density(kg/m3)」、項目「Loop Type」、項目「Routing Group Name」、項目「Process Requirement」、項目「Bottum of Pipe」を含む。
【0091】
項目「Fluid Code」は、配管を流れる流体を示す流体コードを示す情報である。
【0092】
項目「Unit Code」は、配管が接続される設備、ユニットのコードを示す情報である。
【0093】
項目「Line Number Suffix」は、ルーティングされる配管のラインNoを示す情報である。
【0094】
項目「From ID」は、ルーティングされる配管の始点の位置を示す始点IDを示す情報である。ここで、始点として選択されたオブジェクトが本発明の第1のオブジェクトとなる。
【0095】
項目「To ID」は、ルーティングされる配管の終点の位置を示す終点IDを示す情報である。ここで、終点として選択されたオブジェクトが本発明の第2のオブジェクトとなる。
【0096】
項目「To Sub ID」は、ルーティングされる配管の詳細、例えばノズルの位置を示す情報である。
【0097】
項目「NPS」は、配管のサイズを示す情報である。
【0098】
項目「Insulation Type」は、ルーティングされる配管の断熱材の種類を示す情報である。
【0099】
項目「Routing Priority」は、ルーティングの優先度を示す情報である。配管のルーティングを行う際に用いられる。
【0100】
項目「Fluid PhaseL/V/2P」は、配管を流れる流体の状態を示す情報であり、配管の分岐部の構造を決定する際に使用される情報である。
【0101】
項目「Operation Pressure(Mpa)」は、配管の内部の流体の圧力を示す情報である。
【0102】
項目「Operation Temperature(degC)」は、配管の内部の流体の温度を示す情報である。
【0103】
項目「Material(MSDLevel)」は、配管の材質を示す情報である。
【0104】
項目「Liquid Velocity(m/s)」は、配管を流れる流体の速度を示す情報である。
【0105】
項目「Liquid Density(kg/m3)」は、配管を流れる流体の密度を示す情報である。
【0106】
項目「Loop Type」は、配管のループ部の要否、およびループ部の構造を示す情報である。ここで、ループ部とは、例えば配管を高温の流体が流れる際に、流体から受ける熱応力を吸収するために、本来のルート上から部分的に迂回するように曲げられた部分を指す。項目「Loop Type」には、2D(2次元)、又は3D(3次元)の情報が入力される。
【0107】
項目「Routing Group Name」は、複数の配管を隣同士に配置する等のグルーピングを行う際に用いられる情報である。例えば冷却水の配管等に適用される。
【0108】
項目「Process Requirement」は、プロセス要求に関する情報である。プロセス要求とは、配管の経路の構造が指定される一定の条件を指す情報である。プロセス要求の詳細については後述する。
【0109】
項目「Routing Group Name」は、複数の配管を隣同士に配置する等のグルーピングを行う際に用いられる情報である。例えば冷却水の配管等に適用される。
【0110】
項目「Head Clearance」は、パイプの最も低い部分の地面からの高さを指定する情報である。項目「Head Clearance」には、寸法値が入力される。
【0111】
図9は、ラック位置情報データベース2025の内容を示す情報である。図8に示すように、ラック位置情報データベース2025は、項目「ラック名称」、項目「位置座標」、項目「大きさ」、項目「レイヤー番号」、項目「レイヤー領域」を含む。
【0112】
項目「ラック名称」は、ユーザから配管をルーティング際に指定されたラックの名称を示す情報である。
【0113】
項目「位置座標」は、ラック名称に相当するラックの原点の3次元空間上での位置を示す情報である。3次元空間上での位置は、3次元空間の基準原点に対する座標値で表される。
【0114】
項目「大きさ」は、ラック名称に相当するラックの原点からの大きさを示す情報である。大きさは、直交する3方向それぞれの大きさが規定される。
【0115】
項目「レイヤー番号」は、ユーザから配管をルーティングする際に指定されたラックのレイヤー(階層)の番号を示す情報である。ラックは配管を敷設する空間が上下方向に間隔をあけて区画された積層構造を有している。このうち、下段から上段にかけて1から順番にレイヤー番号が割り振られている。
【0116】
項目「レイヤー領域」は、各レイヤーの中で、ユーザから指定された領域を示す情報である。レイヤー領域は、ユーザが指定する寸法に応じて指定される。例えば、ユーザは、レイヤーの左端から1500mmの範囲という形式でレイヤー領域を指定する。項目「レイヤー領域」には、このように指定された情報が記憶される。
【0117】
図10は、機器位置情報データベース2026のデータ構造の一例を示す図である。図10に示すように、機器位置情報DBは、項目「機器ID」と、項目「機器の種類」と、項目「位置座標」と、項目「始点名称」と、項目「始点座標」と、項目「終点名称」と、項目「終点座標」と、と含む。
【0118】
項目「機器ID」は、3次元空間上に配置された機器を識別する情報である。
【0119】
項目「機器の種類」は、機器IDに相当する機器の種類を示す情報です。
【0120】
項目「位置座標」は、機器IDに相当する機器の3次元空間における位置座標を示す情報である。
【0121】
項目「始点名称」は、機器IDに相当する機器における始点の名称を示す情報である。
【0122】
項目「始点座標」は、機器IDに相当する機器における始点の3次元空間における位置座標を示す情報である。
【0123】
項目「終点名称」は、機器IDに相当する機器における終点の名称を示す情報である。
【0124】
項目「終点座標」は、機器IDに相当する機器における終点の3次元空間における位置座標を示す情報である。
【0125】
<4 動作>
以下、図11から図19を参照しながら、本実施形態における配管ルーティングシステム1による配管ルーティング処理について説明する。
【0126】
図11は、配管ルーティングシステム1による配管ルーティング処理の全体を示すフローチャートである。例えばユーザは、端末装置10のWebブラウザを介してサーバ20へアクセスし、サーバ20が提供するプラント設計サービスの提供を受ける旨の指示を行うことで、処理が開始される。このとき、ユーザに対して所定の認証が行われてもよい。
【0127】
配管ルーティングシステム1では、ユーザが、端末装置10を操作してラックの位置を入力する(ステップS111)。具体的には、初期状態として表示された仮想空間上において、ラックを示すオブジェクトを操作して、ユーザが所望する位置にラックを配置する。ラックの大きさや種類は、ユーザが選択、指定することができる。
ステップS111において、ラックには長手方向が指定される。長手方向とは上方から見た平面視で、ラックが延びる方向を指す。ラックの長手方向は、ユーザが別途指定してもよいし、ユーザが編集したラックの形状により指定されてもよい。
【0128】
ステップS121において、サーバ20の制御部203は、プラント設計を行う仮想空間に配置するラックの位置および大きさの入力を受け付けるため、仮想空間を表示させる指示を、端末装置10へ通信部201を介して送信する。
ステップS121において、サーバ20の機器入力受付モジュール2033は、端末装置10から送信された各種機器の種類、仮想空間内の配置位置の情報、及びユーザ情報を、通信部201を介して受け付ける。
ステップS112の後に、サーバ20は、入力されたラックの種類、大きさ、及び仮想空間上の指定された位置の情報を受けつけ、仮想空間上に該当するラックを配置する(ステップS121)。
【0129】
次に、ユーザは、配管により接続される機器の種類、配置位置を指定する(ステップS112)。
サーバ20は、ユーザが指定した機器の種類、配置位置を受け付ける(ステップS122)
ステップS122において、サーバ20の制御部203は、プラント設計を行う仮想空間に配置する各種機器の種類、及び仮想空間内の配置位置の入力を受け付けるため、仮想空間を表示させる指示を、端末装置10へ通信部201を介して送信する。
【0130】
ステップS122において、端末装置10の入力操作受付部171は、ユーザから、各種機器の種類、及び仮想空間内の配置位置の入力操作を受け付ける。送受信部172は、受け付けた各種機器の種類、仮想空間内の配置位置の情報、及びユーザ情報をサーバ20へ送信する。
【0131】
ステップS122において、サーバ20の機器入力受付モジュール2033は、端末装置10から送信された各種機器の種類、仮想空間内の配置位置の情報、及びユーザ情報を、通信部201を介して受け付ける。
【0132】
ステップS122において、サーバ20の機器配置モジュール2034は、ステップS122で受け付けた各種機器の種類、及び仮想空間内の配置位置の情報に基づき、機器データベース2021を参照し、各種機器を仮想空間に配置して表示させる指示情報を、端末装置10へ通信部201を介して送信する。また、機器配置モジュール2034は、受け付けた各種機器の種類、及び仮想空間内の配置位置の情報を設計空間データベース2022へ格納する。
【0133】
ステップS122において、送受信部172は、サーバ20から送信された各種機器を仮想空間に配置して表示させる指示情報を受け付ける。通知制御部174は、各種機器を仮想空間に配置し、ディスプレイ132に表示させる。
【0134】
この時の端末装置10における表示例を、図12を用いて示す.図12は、ラックおよび各種機器が、3次元の仮想空間上に配置された状態の操作画面の一例を示す図である。なお、この図では、3次元の仮想空間を上方からみた平面図として表現している。
【0135】
図12に示すように、3次元空間は3次元の直交座標を備えている。この図では、メインラックMRと、サブラックSRと、タワーTと、複数のポンプと、が表示されている。
メインラックMRは、長手方向がY方向に沿って延びている。
サブラックSRは、長手方向がX方向に沿って延びている。
タワーTは、メインラックの端部に配置されている、タワーTは、円柱状の構造物である(図31参照)
【0136】
ここで、図29を参照して、メインラックMRおよびサブラックSRの構造について詳述する。図29は、3次元空間上におけるメインラックMRおよびサブラックSRの外観を示す図である。
図29に示すように、メインラックMRおよびサブラックSRそれぞれのレイヤーの高さは、互いに異なっている。メインラックMRの長手方向と、サブラックSRの長手方向は、互いに直交している。
【0137】
ステップS112の後に、ユーザは端末装置10を操作して、ラックに対して、配管が敷設されるレイヤーの位置を指定し、指定したレイヤーに対して敷設する配管の種類を設定する(ステップS113)。具体的には、ユーザは、仮想空間において設置されたラックのうち、配管が敷設されるレイヤーの位置を指定する。そしてさらにユーザは、該当するレイヤーに対して、配管が占める領域を指定する。さらに、指定したレイヤーに対して、配管を流れる流体の種類を選択することで、配管の種類を設定する。ユーザは、流体コードを選択することで、配管の種類を選択してもよい。
【0138】
ここで、配管が敷設されるレイヤーおよびレイヤーの領域の指定する操作について、画面例を用いて説明する。図13は、配管が敷設されるレイヤーおよび領域を指定する際の操作画面の一例を示す図である。ステップS112において、ラックのレイヤーごとに配置される配管の種類が示された編集画面が表示される。
【0139】
図13に示すように、この操作画面(編集画面)では、ラックが延びる長手方向と直交する断面視で、ラックの内部に収容される配管及び配管が表示されている。この図では、ラック内に積層されるレイヤーの構造が模式的に表現されている。符号R1で示す領域では、プロセス配管が敷設されることが指定されている。この操作画面では、ラックの端部からの寸法を指定して、レイヤ―内の領域を指定することができる。
【0140】
また、この操作画面では、ラックのレイヤーそれぞれに対して、配置される配管の種類ごとの占有率が表示されている(符号R2)。占有率とは、レイヤーの幅方向(X方向)に対して、指定された配管の幅方向の長さ(直径)が占める割合を指す。
占有率を確認することで、該当する種類の配管が占める割合を確認することができる。
また、この操作画面では、占有率を視覚的に表したバー(符号R3)が表示されている。バーは、占有率が50%である場合には、レイヤーの領域の半分の空間に延びている。バーを確認することで、レイヤー内の空きスペースがどの程度残っているかを、直感的に把握することができる。
【0141】
図11に示すように、ステップS113の後に、サーバ20は、ユーザから指定された、配管が敷設されるレイヤーおよび領域に関する情報を受け付ける(ステップS123)。具体的には、サーバ20は、指定されたラックのレイヤーおよび領域に関する情報を、ラック位置情報DBの新たなレコードとして記録する。
【0142】
次に、ユーザは、配管設計パラメータを入力する(ステップS114)。具体的には、ユーザは、設計パラメータDB2024に含まれる各項目のうち、既に入力した流体の種類を除く項目を入力する。具体的には、ラインNo、始点および終点の指定、配管サイズ、プロセス要求、優先度、運転温度等である。
ステップS124の後に、サーバ20は、ユーザから入力された配管設計パラメータを受け付ける。具体的には、ユーザから入力された各項目を、設計パラメータDB2024の新たなレコードとして記録する。
【0143】
図11に示すように、ステップS114の後に、ルーティングモジュール2038は、各機器の位置に関する情報、およびルーティングする配管として定義された定義項目の内容に従って、配管パスを暫定的に設定する(ステップS125)。ここで、配管パスとは、配管が敷設されるラックのレイヤーにおける一定の領域であって、配管が敷設される空間の経路を示す概念である。ステップS125では、配管により接続される機器と、ラックと、の間の長手方向と直交する距離を確認し、機器に対して、最も近いラックを特定する。暫定的な配管パスの設定では、特定された最も近いラックを通るように、配管パスが設定される。
【0144】
これにより、配管が敷設される空間の経路が暫定的に設定され、配管が通過する配管パスが端末装置10に表示される(ステップS115)。設定された配管パスの内容は、仮想空間上に表示される。この時の端末装置10の操作画面について、図14を用いて示す図14は、配管パスが設定された際の端末装置10の操作画面の一例を示す図である。
【0145】
図14において、ハッチングにより示す部分が、配管を敷設する空間の経路を示す配管パスである。配管パスは、タワーTからメインラックMRの3段目のレイヤーを通過し、サブラックSRの3段目のレイヤーを通過して、ポンプP1に接続されている。
【0146】
次に、サーバ20のルーティングモジュール2038は、配管ルーティングを行う(ステップS127)この処理の詳細については、後述する。
【0147】
次に、図15を用いて、配管ルーティング処理の詳細について説明する。図15は、配管ルーティング処理の詳細を示す図である。
図15に示すように、配管ルーティング処理では、まずルーティングモジュール2038が終始点の特定を行う(ステップS1271)。具体的には、ルーティングモジュール2038は、設計パラメータDB2024に入力された配管設計パラメータから、ルーティングする配管の始点と終点の情報を読み取る。ここで、始点と終点の情報には、配管が接続されるノズルの方向に関する情報が含まれていてもよい。
【0148】
次に、ルーティングモジュール2038は、ラックの要否判断を行う(ステップS1272)。この処理について、図16を用いて詳述する。図16はラックの要否判断の処理を示す図である。
図16に示すように、ラックの要否判断では、ユーザから、ダイレクト接続の指示の有無を確認する(ステップS301)。ダイレクト接続の指示は、配管設計パラメータとして設計パラメータDB2024に記憶されている。
【0149】
ルーティングモジュール2038は、ユーザからのダイレクト接続の指示がある場合(ステップS302のYes)には、ルーティングにおいてラックは不要と判断する(ステップS303)。一方、ユーザからのダイレクト接続の指示がない場合(ステップS302のNo)には、ルーティングモジュール2038は、配管により接続する機器同士の位置関係を確認する(ステップS304)。
【0150】
ここで、機器同士の所定の位置関係とは、例えば、長手方向の距離が、ラックの長手方向を区画する単位要素である1ピッチの半分未満かどうかである。
すなわち、ラックを用いて配管のルーティングを行った際に、ラックに搭載される配管の距離が短い場合には、ラックに乗せるとかえって接続構造が複雑になるため、ダイレクトに機器同士を配管で接続したり、配管がラックを横断したりするように機器同士を配管で接続することとなる。
なお、所定の位置関係については、ラックの1ピッチの半分以下であるという基準に限られず、任意に設定することができる。
【0151】
ルーティングモジュール2038は、機器同士の位置関係が、所定の位置関係を満たす場合(ステップS305Yes)には、ラックは不要と判断する(ステップS306)
一方、ルーティングモジュール2038は、機器同士の位置関係が、所定の位置関係を満たさない場合(ステップS305のNo)には、ラックが必要と判断する。
【0152】
次に、図15に示すように、ルーティングモジュール2038は、配管パスの特定を行う(ステップS1273)。すなわち、ルーティングモジュール2038は、前述したステップS125において暫定的に設定された配管パスを採用するのか、あるいは別の経路を配管パスとして採用するのか、についての判断を行う。この配管パスの特定の処理について、図17を用いて詳述する。図17は、ルーティングモジュール2038が配管パスを特定する処理を示す図である。
図17に示すように、配管パスの特定では、ルーティングモジュール2038は、プロセス要求の有無の確認を行う。具体的には、ルーティングモジュール2038は、ユーザが入力したプロセス要求が、設計パラメータDB2024に記憶されているかどうかを確認する。
【0153】
ルーティングモジュール2038は、プロセス要求があることが確認した場合(ステップS302のYes)には、プロセス要求に従って、配管パスを新たに選択する(ステップS403)。この場合には、ステップS125において暫定的に設定された配管パスの少なくとも一部を、プロセス要求を満たす経路となるように変更する処理を行う。
一方、ルーティングモジュール2038は、プロセス要求がないことを確認した場合(ステップS302のNo)には、ルーティングモジュール2038は、ステップS125において暫定的に設定された配管パスを、正規の配管パスとして採用する(ステップS404)。
【0154】
次に、図15に示すように、ルーティングモジュール2038は、ルーティング方法の決定を行う(ステップS1274、ステップS1275)。このルーティング方法の決定の処理について、図18および図19を用いて詳述する。図18および図19は、ルーティングモジュール2038によるルーティング方法を決定する手法を説明する図である。このうち、図18は、機器の属性によるルーティング方法の決定処理を示す図である。
【0155】
図18に示すように、ルーティングモジュール2038は、配管により接続する機器の属性を確認する。ルーティングモジュール2038は、まず、機器がストラクチャに搭載されているかどうかを確認する(ステップS501)。具体的には、設計パラメータDB2024を確認し、始点および終点の位置がストラクチャ上にあるかどうかを確認する。
【0156】
ここで、ルーティングモジュール2038は、機器がストラクチャに搭載されている場合(ステップS502のYes)には、ルーティング方法として、ストラクチャ内ルーティングを採用する(ステップS503)。ストラクチャ内ルーティングの詳細については後述する。
一方、ルーティングモジュール2038は、機器がストラクチャに搭載されていない場合(ステップS502のNo)には、機器がタワーであるかどうかを確認する(ステップS504)。ここで、タワー(第4のオブジェクト)とは、例えば蒸留塔のように、高さ方向に沿って立設される円柱状の構造物を指す。
【0157】
ルーティングモジュール2038は、機器がタワーである場合(ステップS504のYes)には、ルーティング方法として、タワー周辺ルーティングを採用する(ステップS505)。タワー周辺ルーティングの詳細については後述する。
一方、ルーティングモジュール2038は、機器がタワーでない場合(ステップS504のNo)には、ルーティング方法として、機器間ルーティングを採用する(ステップS506)。機器間ルーティングの詳細については後述する。
【0158】
次に、図19を用いて、ルーティング方法の決定手法のうち、機器同士の位置関係によりルーティング方法を選択する手法について説明する。図19は、機器の位置関係によるルーティング方法の決定処理を示す図である。
【0159】
まず。ルーティングモジュール2038は、ラックの要否および機器とラックとの位置関係を確認する(ステップS601)。ルーティングモジュール2038は、機器同士が、ラックが必要な場合(ステップS602のYes)には、ラック内ルーティングを採用する(ステップS603)。ラック内ルーティングの詳細については後述する。
【0160】
一方、ルーティングモジュール2038は、機器同士が、ラックが不要な場合(ステップS602のNo)には、ラックと機器との位置関係を確認する(ステップS604)。ここで、ラックは長手方向が設定されており、ラックの長手方向と、機器同士を接続するラインと、が互いに直交する場合には、二つの機器がラックをはさむ位置であると認識される。
そして、ルーティングモジュール2038は、機器同士が、ラックをはさむ位置関係ではない場合(ステップS604のNo)には、直接ルーティングを採用する(ステップS605)。直接ルーティングの詳細については後述する。
【0161】
一方、ルーティングモジュール2038は、機器同士が、ラックをはさむ位置関係である場合(ステップS604のYes)には、横断ルーティングを採用する(ステップS606)。横断ルーティングの詳細については後述する。
【0162】
次に、各種のルーティング方法について説明する。図20は、各種のルーティング方法を説明する図である。図21は、各種のルーティング方法によりルーティングされた各種機器の状態を示す図である。
図20に示すように、ルーティング方法は、機器の属性による区別と、機器とラックとの位置関係による区別に大別される。このうち、機器の属性による区別は、主に配管に機器を接続する際の機器周辺のルーティング方法に関するものである。
【0163】
一方、機器とラックとの位置関係による区別は、機器同士の間の経路を決定する際のルーティング方法に関するものである。すなわち、ルーティングモジュール2038は、前述した判断フローにより、図20の左側および右側のルーティング方法を一つずつ選択し、ルーティングを行う。
【0164】
まず、機器の属性による方法では、「A)機器間ルーティング」が一般的なルーティング方法であり、機器の始点および終点として設定されたノズルに対して配管を接続するルーティング方法である。
【0165】
次に、機器の属性による方法のうち、「B)ストラクチャ内ルーティング」は、配管により接続される機器のいずれかが、ストラクチャに搭載されている場合に採用されるルーティング方法である。ここで、ストラクチャ(第3のオブジェクト)とは、図30に示すように、プラントにおいて複数の機器が搭載された構造物を指す。図30は、3次元空間上におけるストラクチャの外観を示す図である。図30に示すストラクチャSTRは、2層構造になっており、それぞれの階層に、機器Mが配置されている。機器Mとしては、例えば熱交換器やポンプが挙げられる。
【0166】
このルーティング方法では、ストラクチャのノズルに対して直接ルーティングを行わずに、ストラクチャに敷設されるサポート部材の設置に要する空間を考慮して、配管のルーティングを行う。サポート部材とは、配管を支持する部材であり、例えばチャンネル鋼材、アングル鋼材等から構成される。ストラクチャ内の配管を支持するために、サポート部材が敷設される。サポート部材の大きさは、予め機器データベース2021に記憶されている。サポート部材は、仮想空間上ではモデリングされないが、その大きさを考慮して、配管のルーティングが行われる。
【0167】
図20に示す「C)タワー周辺ルーティング」では、タワーの始終点に向けて配管が延びる過程において、配管が、タワーの外周面に沿って高さ方向に延びるように、配管のルーティングを行う。ここで、始終点とは、始点と終点とを含む概念である。図31は、3次元空間上におけるタワーの外観を示す図である。図31に示すように、配管Piは、タワーTの外周面に沿って、高さ方向に延びている。配管Piは、タワーTの外周面から敷設される配管サポート部材の設置に要する空間を考慮してルーティングされる。すなわち、配管PiはタワーTの外周面から、サポート部材の大きさだけ、径方向の外側に離れた位置において、タワーの外周面に沿って高さ方向に延びるようにルーティングされる。
【0168】
次に、機器とラックとの位置関係による方法では、「D)ラック内ルーティング」が一般的なルーティング方法であり、パイプの長手方向にそって配管が延びるように、配管をラック内に敷設するようにルーティングが行われる。
【0169】
次に、図19に示す「E)直接ルーティング」では、ラックを用いることなく、機器同士を直接、配管で接続するようにルーティングが行われる。すなわち、配管により接続される機器同士の位置関係が、所定の位置関係を満たす場合には、ラックを経由することなく、機器同士に対して配管をダイレクトにルーティングする。
【0170】
そして、「F)横断ルーティング」では、二つの機器同士に配置されたラックを配管が横断するように、配管のルーティングが行われる。すなわち、機器同士に対して配管をダイレクトに接続する場合において、機器同士の間にラックが配置されている場合には、ラックを横断するように、機器同士に対して配管をダイレクトにルーティングする。
【0171】
図21に示すように、機器M1と機器M2を接続する配管には、「A)機器間ルーティング」と、「E)直接ルーティング」と、が採用されている。機器M1と機器M2との間の距離が、ラックの1ピッチPcの半分よりも短い距離だからである。
【0172】
また、機器M3と機器M4とを接続する配管には、「A)機器間ルーティング」と、「D)ラック内ルーティング」と、が採用されている。
【0173】
また、機器M5と機器M6とを接続する配管には、「B)ストラクチャ内ルーティング」と、「D)ラック内ルーティング」と、が採用されている。機器M5がストラクチャS1に搭載されているからである。
【0174】
また、機器M7と機器M8とを接続する配管には、「A)機器間ルーティング」と、「F)横断ルーティング」と、が採用されている。機器M7と機器M8とが、メインラックMRをはさむ位置に配置されているからである。
【0175】
また、機器M9と機器M10とを接続する配管には、「C)タワー周辺ルーティング」と、「D)ラック内ルーティング」と、が採用されている。
【0176】
そして、図15に示すように、ルーティングモジュール2038は、選択したルーティング方法を用いて、ルーティングの実行処理を行う(ステップS1276)。配管ルーティングでは、特定されたパスの位置、配管設計パラメータとして入力された始点および終点の位置に関する情報、プロセス要求等のその他の設計パラメータを用いて、選択された2つの機器同士に、ルーティングを実行する。ルーティングの実行処理について、図22を用いて説明する。
【0177】
図22は、ルーティングの実行処理を示す図である。
図22に示すように、ルーティングモジュール2038はまず、始点と終点とを結ぶ暫定ルートを設定する(ステップS701)。この際、前工程までに特定されたパスの位置、配管設計パラメータとして入力された始点および終点の位置に関する情報、プロセス要求等のその他の設計パラメータを用いて、仮想空間の座標軸に沿って、最短経路で始点と終点をむすぶルートを設定する。この最短ルートが暫定ルートとなる。この際、ルーティングモジュール2038は、始点と終点を結ぶ暫定ルートを複数設定する。
【0178】
ステップS701の後に、ルーティングモジュール2038は、暫定ルートに対して、障害物との干渉の有無を検出する(ステップS702)。具体的には、ルーティングモジュールは、仮想空間において、暫定ルートの経路上に、既にルーティングされた他の配管、および既に配置された他の機器が配置されていないかを確認する。暫定ルートが複数設定されている場合には、複数の暫定ルートそれぞれに対して、障害物との干渉の有無を検出する。
【0179】
ステップS702において、障害物と干渉しない暫定ルートがない場合(ステップS703のNo)には、ルーティングモジュール2038は、各ルートを評価するステップ(S707)を実行する。この処理については後述する。
【0180】
一方、ステップS702において、障害物との干渉が確認された場合(ステップS703のYes)には、ルーティングモジュール2038は、干渉が確認された暫定ルートを変更して、障害物を迂回する代替ルートを生成する。代替ルートを生成する際には、仮想空間の座標軸に沿って、障害物を迂回するように代替ルートを生成する。この時の代替ルートの生成方法について、図23を用いて詳述する。図23は、ルーティングモジュールが生成する代替ルートを説明する図である。
【0181】
図23Aに示すように、始点Aから終点Bまでの間に障害物Cがある場合、ルーティングモジュール2038が作成する暫定ルートR1上に、障害物Cが位置することとなる。
この場合、ルーティングモジュール2038は、図23Bに示す代替ルートR21と図23Cに示す代替ルートR22のように、複数の代替ルートを生成する。この際、図示を省略している上下方向Zに迂回するルートも作成する。このように、ルーティングモジュール2038は、障害物Cを迂回する複数の代替ルートを生成する。
【0182】
次に、図24を用いて、2次元的な経路の場合について説明する。図24Aは、始点Aと終点Bとが2次元的に離れている場合の例を示す図である。図24Bは、始点Aと終点Bとの間に障害物Cがある場合の例を示す図である。
図24Aに示すように、始点Aと終点Bとを結ぶ暫定ルートとしては、経路(x1、y2)と、経路(y1、x2)と、の2種類が設定される。
【0183】
図24Bに示すように、この場合において障害物Cがある場合には、ルーティングモジュール2038は、暫定ルートである経路(x1、y2)が障害物Cと干渉することを検出する。そして、ルーティングモジュール2038は、干渉が確認された経路(x1、y2)を変更し、代替ルートAL1を生成する。
【0184】
次に、図25を用いて、3次元的な経路の場合について説明する。図25Aは、始点Aと終点Bとが3次元的に離れている場合の例を示す図である。図25Bは、始点Aと終点Bとの間に障害物Cがある場合の例を示す図である。
図25Bに示すように、始点Aと終点Bとを結ぶ暫定ルートとしては、経路(x1,y4,z3)と、経路(x1,z4,y3)と、経路(y1,x4,z3)と、経路(y1,z2,x3)と、経路(z1,x2,y3)と、経路(z1,y2,x3)と、の6種類が設定される。
【0185】
図25Bに示すように、この場合において障害物Cがある場合には、ルーティングモジュール2038は、暫定ルートである経路(x1,y4,z3)および経路(x1,z4,y3)が、障害物Cと干渉していることを検出する。
そして、ルーティングモジュール2038は、干渉が確認されたる経路(x1,y4,z3)および経路(x1,z4,y3)を変更し、代替ルートAL2~AL4を生成する。このように、3次元的な経路の場合には、ルーティングモジュール2038は、代替ルートとして生成できるルートを複数生成する。
【0186】
ルーティングモジュール2038は、代替ルートを生成する際に、経路間の高さの変化に関する制約条件を満たすように、代替ルートを生成する。経路間の高さの変化に関する制約条件とは、設計パラメータデータベース2024において、「Process Requirement」として管理されている項目である。
【0187】
ルーティングモジュール2038は、予めサイズが登録されたエルボを用いて、代替ルートを生成する。様々な種類のエルボの大きさや材質等の情報が、配管情報データベース2023に記憶されている。
ルーティングモジュール2038は、代替ルートに新たな直管を適用する場合には、直管の両端部における最小溶接間距離を満たすように、直管の長さを選択する。この点について、図26を用いて説明する。図26は、代替ルートの拡大図である。
最小溶接間距離とは、溶接加工により資材同士が結合される場合において、溶接箇所同士に最低限確保されるべき間隔を指す。例えば、直管の両端部にエルボが結合される場合には、当該直管の長さが、最小溶接間距離よりも長いことが要求される。
【0188】
図26に示すように、代替ルートR2において、最も短い直管Pの長さLが、予め設定された最小溶接間距離よりも大きくなるように、代替ルートが生成される。この場合には、エルボEのサイズや位置を調整することで、この条件を満たすように調整される。
【0189】
図22に示すように、ステップS704の後に、ルーティングモジュール2038は、代替ルートを修正して、代替ルートよりも屈曲回数が少なく、かつ経路長が短い修正ルートを作れるかどうかの判定を行う(ステップS705)。
修正ルートについて、図27を用いて説明する。図27は、ルーティングモジュール2086が生成する修正ルートを説明する図である。
【0190】
図27Aに示すように、障害物C1および障害物C2が、間隔をあけて複数並んでいる場合には、1つの代替ルートR2として、障害物C1および障害物C2それぞれを迂回するルートが生成される。この場合、それぞれの障害物を迂回していることで、屈曲回数が多くなっている。
【0191】
そして、図27Bに示すように、この代替ルートR2に対して修正ルートR3を生成することができる。修正ルートR3は、障害物C1および障害物C2が位置する領域全体を迂回していることにより、代替ルートR2よりも屈曲回数が少なく、かつ経路長が短くなっている。この場合には、ルーティングモジュール2038は、代替ルートR2に対して、修正ルートR3を生成する。
【0192】
図22に示すステップS705において、修正ルートが作れないと判断した場合(ステップS705のNo)には、ルーティングモジュール2038は、各ルートを評価するステップ(S707)を実行する。この処理については後述する。
【0193】
ステップS705において、修正ルートが作れると判断した場合(ステップS705のYes)には、ルーティングモジュール2038は、代替ルートに対して、修正ルートを生成する(ステップS706)。修正ルートは、複数の代替ルートそれぞれに対して生成される。修正ルートは、1つの代替ルートに対して複数生成されてもよい。
【0194】
ルーティングモジュール2038は、予めサイズが登録されたエルボを用いて、修正ルートを生成する。
ルーティングモジュール2038は、修正ルートに新たな直管を適用する場合には、直管の両端部における最小溶接間距離を満たすように、直管の長さを選択する。
【0195】
ステップS705の後に、ルーティングモジュール2038は、これまでに生成された各ルートについて、すなわち、暫定ルート、代替ルート、および修正ルートの全てに対して、最も低コストなる最適ルートを選出する(ステップS707)。コストの評価は、経路長が短いものが高評価となるように算出される。
また、ルーティングモジュール2038は、最適ルートを選出する際に、経路間の高さの変化に関する制約条件を満たすルートを予め選別し、選別されたルートから、最適ルートを選出するようにしてもよい。
【0196】
最適ルートは、経路長、屈曲回数、経路間における高さの変化量、という複数のパラメータを評価することで選出される。各ルートは、経路長が短いものが高評価とされ、経路長が同じである場合には、屈曲回数が少ないものが高評価とされる。また、各ルートは、屈曲回数が同じである場合には、経路間における高さの変化量が少ないものが高評価とされる。
【0197】
なお、本実施形態では、ルーティングモジュール2038は、ラックの外部において、前述した干渉回避の処理を実行する。具体的には、干渉を検出する処理から最適ルートを選出する処理までを、ルーティングする配管のうち、ラックのビームの外側に配置される部分に対して適用する。ラックのビームとは、ラックを構成する部材のうち、横方向に延びる部材を指す。すなわち、最下段に位置するビームと地面との間は、ラックのビームの外側として定義される。
【0198】
このようにして配管のルーティングが行われた際の端末装置10の操作画面について、図28を用いて説明する。
【0199】
図28は、配管ルーティングを行った際の端末装置10の操作画面の一例を示す図である。図28に示すように、配管ルーティングを行うことで、タワーTと、ポンプP1を接続する配管Piが表示される。この状態において、障害物Cである他の機器を回避するように、配管がルーティングされている。
これにより、ルーティングシステムにより配管をルーティングする処理が終了する。
【0200】
次に、その他の設計パラメータを考慮したルーティング手法について説明する。その他の設計パラメータには、主に、「流体の状態」、「流体の温度」、「断熱材の種類、厚み」、「優先度」、「配管径」、「プロセス要求」、「グループ」がある。これらの情報は、配管設計パラメータを定義する際に入力され、設計パラメータDB2024に記憶されている。ルーティングモジュール2038は、指定された設計パラメータに従って、ルーティングする配管の種類により、予め規定された制約に則ってルーティングを行う。これらの情報は、設計パラメータが入力されるステップS114において入力されてもよいし、一度パスが表示されるステップS115の後に、追加的に入力されてもよい。
【0201】
「流体の状態」は、配管の分岐部分での接続方向を指定する情報である。一般に、流体が気体(V)又は液体と気体の混合(VL)である場合には、枝管が本管の上部から抜き出すように、接続部は上向きに設定される。一方、流体が液体(L)である場合には、枝管が本管の下部から抜き出すように、接続部は下向きに設定される。このように、ルーティングモジュール2038は、ルーティングする配管の種類により、ラックから機器の始終点に向かう配管の上下方向の向きを調整する。
【0202】
「流体の温度」は、互いに隣り合う配管同士の距離を指定する情報である。また、流体の温度が近いもの同士が隣り合うようにルーティングが行われる。
【0203】
「断熱材の種類、厚み」は、実質的な配管の径を設定する情報である。
【0204】
「優先度」は、ルーティングにおける優先度を指定する情報である。ルーティングモジュール2038は、ルーティングする配管に対して予め設定された優先度に従って、他の配管と関係において、ルーティングする順番を決定する。
【0205】
「配管径」は、優先度を指定する情報である。優先度の初期値は、直径の大きい配管が直径の小さい配管よりも高く設定されている。
【0206】
「プロセス要求」は、始点から終点に向かう経路における高さの変化(配管の形状)に関する制約条件である。プロセス要求には、「Gravity Flow」、「No Pockets」、「No Liquid Pocket」、「No Vapor Pocket」等がある。
「Gravity Flow」は、始点が終点の高さ以上になっていれば、途中の経路は問わない経路を指す。
「No Pockets」は、始点と終点との間にLow PocketsおよびHigh Pocketsがない経路を指す。Low Pocketsとは、流れ方向に対して、下方向の縦配管の後に、上方向の縦配管があることを指す。High Pocketsとは、流れ方向に対して、上方向の縦配管の後に、下方向の縦配管があることを指す。
「No Liquid Pocket」は、Low Pocketsのない経路、すなわち、液体だまりの無い経路を指す。
「No Vapor Pocket」は、High Pocketsがない経路、すなわち、気体だまりの無い経路を指す。
プロセス要求としては、前述した各条件以外の条件を含んでもよい。
ルーティングモジュール2038は、入力されたプロセス要求により、配管の接続構造を決定する。
【0207】
「グループ」は、同一系統を構成し、近くにあるべき配管をひとまとめに配置するように、ルーティングされる配管の位置を指定する。ルーティングモジュール2038は、同一系統を構成する複数の配管を、互いに隣接するようにルーティングする。
【0208】
「ヘッドクリアランス」は、パイプの最も低い部分の地面からの高さを指定する情報である。例えば人が通る通路の上に、充分な高さを確保する際等に入力される。ルーティングモジュール2038は、ヘッドクリアランスを満たすように配管のルーティングを行う。
【0209】
以上説明したように、本実施形態の配管ルーティングシステム1によれば、ルーティングモジュール2086が、設定した暫定ルートに対して、障害物の有無を検出する。そして、干渉が確認された場合には、代替ルートを複数生成し、複数の代替ルートの中から、最適ルートが選出される。これにより、極めて単純な操作により、配管同士の干渉を回避しながら、配管をルーティングすることができる。
【0210】
また、ルーティングモジュール2086が、生成した代替ルートを修正して、代替ルートよりも屈曲回数が少なく、かつ経路長が短い修正ルートを生成する。そして、ルーティングモジュール2086が、複数の代替ルート、および修正ルートに対して、経路長に基づいて算出されたコストを評価して、最適ルートを選出する。これにより、それぞれの障害物を回避するだけでなく、経路全体において、より屈曲回数が少なく、経路長が短い最適なルートを選出することができる。
【0211】
また、経路長が同じである場合には、屈曲回数に基づいてルーティング経路のコストが評価され、屈曲回数が少ないものが高評価とされる。このため、経路長が同じである場合には、屈曲回数の観点から、コストが安いルートを選出することができる。
【0212】
また、最低ルートが、屈曲回数が同じである場合には、経路間における高さの変化量に基づいて評価され、経路間における高さの変化量が少ないものが高評価とされる。このため、経路長および屈曲回数が同じ場合には、より運転環境の安定したルートを選出することができる。
【0213】
また、ルーティングモジュール2086は、経路間の高さの変化に関する制約条件を満たすように、代替ルートを生成する。これにより、流れる流体に性質に即して設定される、各種の制約条件を満たすルーティングを行うことができる。
【0214】
また、ルーティングモジュール2086が、制約条件を満たすルートを予め選別し、選別されたルートから、最適ルートを選出する。これにより、制約条件を満たさないルートを予め候補外とすることで、処理の負荷を減らすことができる。
【0215】
また、ルーティングモジュール2086が、直管の両端部における最小溶接間距離を満たすように、代替ルートを生成する。このため、実際に施工が可能はルートをルーティングすることができる。
【0216】
また、ルーティングモジュールが、ラックのビームの外部において、干渉の回避の有無を検出する処理を実行する。これにより、処理の負荷を減らすことができる。
【0217】
また、配管が敷設されるラックのレイヤーの指定を受け付け、配管が配置される空間の経路を示す配管パスを設定したうえで、仮想空間に配置された複数の機器のうち、選択された2つの機器同士に、配管のルーティングを行う。このため、ラックのレイヤー位置を把握したうえで、ルーティングルートが決められる。
これにより、各種機器同士をつなぐ配管のルーティング作業を、ラックの階層ごとに検討することができる。
【0218】
また、ルーティングモジュール2038が、始点および終点それぞれに対して、ラックに対して、当該ラックの長手方向と直交する距離を確認し、始点および終点と最も近いラックを特定し、配管パスを設定する。このため、始点および終点の位置に応じて、使用するべき最適なラックを正確に特定することができる。
【0219】
また、サーバ20は、ラックのレイヤーごとに配置される配管の種類が示された編集画面を表示する。このため、ユーザがラックのレイヤーの編集作業を容易に行うことができる。
【0220】
また、編集画面には、ラックのレイヤーそれぞれに対して、配置される配管の種類ごとの占有率が表示される。このため、ユーザがレイヤーに配置される配管の種類ごとの占有率を確認して、どの配管がどの程度配置されるかを正確に把握して、配管設計に資することができる。
【0221】
また、ルーティングモジュール2038は、ルーティングする配管の種類により、予め規定された制約に則ってルーティングを行う。このため、各種の制約条件を入力することで、ルーティングにおいて考慮すべき多様な要求事項に応えることができる。
【0222】
また、ルーティングモジュール2038は、ルーティングする配管を流れる流体の状態により、ラックから機器の始終点に向かう配管の上下方向の向きを調整する。このため、流体の状態を考慮して、適切な配管のルーティングを行うことができる。
【0223】
また、ルーティングモジュール2038は、入力された始点から終点に向かう経路における上下方向の位置関係に関する制約条件により、配管の接続構造を決定する。これにより、配管ルーティングの実際に即した有用な配管のルーティングを行うことができる。
【0224】
また、ルーティングモジュール2038は、ルーティングする配管に対して予め設定された優先度に従って、他の配管と関係において、ルーティングする順番を決定する。このため、優先度の高い配管を優先してルーティングすることで、ユーザの利便性を確保することができる。
【0225】
また、優先度の初期値は、直径の大きい配管が直径の小さい配管よりも高く設定されている。このため、施工コストを抑えた設計を実現することができる。
【0226】
また、ルーティングモジュール2038は、同一系統を構成する複数の配管を、互いに隣接するようにルーティングする。このため、ユーザの利便性を確保することができる。
【0227】
また、ルーティングモジュール2038は、機器がストラクチャに搭載されている場合には、ストラクチャに敷設されるサポート部材の設置に要する空間を考慮して配管のルーティングを行う。このため、ストラクチャに搭載される機器に即したルーティングを行うことができる。
【0228】
また、ルーティングモジュール2038は、機器がタワーである場合には、タワーの始終点に向けて配管が延びる過程において、配管が、タワーの外周面に沿って高さ方向に延びるように、配管のルーティングを行う。このため、タワーに接続される配管を、タワーの外周面で支持することで、配管のサポートの量を抑えながら、配管の強度を確保することができる。
【0229】
また、ルーティングモジュール2038は、配管により接続される機器同士の位置関係が、所定の位置関係を満たす場合には、ラックを経由することなく、機器同士に対して配管をダイレクトにルーティングする。このため、配管が不要に長くなるのを抑え、低コストな配管のルーティングを行うことができる。
【0230】
また、機器同士に対して配管をダイレクトに接続する場合において、機器同士の間にラックが配置されている場合には、ルーティングモジュール2038は、ラックを横断するように、機器同士に対して配管をダイレクトにルーティングする。このため、配管が不要に長くなるのを抑え、低コストな配管のルーティングを行うことができる。
【0231】
また、メインラックおよびサブラックそれぞれのレイヤーの高さは、互いに異なっている。このため、メインラックからサブラックに向けて、配管の高さを変えて接続することができ、メインラックからサブラックに延びる配管の接続部の構造をシンプルにすることができる。
【0232】
(変形例)
次に、変形例として、図32から図34を用いて、前述した干渉回避の処理の例外について説明する。この変形例では、仮想空間上に配置された障害物となるオブジェクトのうち、所定の条件を満たすものについては、障害物として干渉回避の対象から除外する。このような干渉回避の例外処理について、以下に説明する。図32は、変形例に係る代替ルートを説明する図である。このうち、図32Aは代替ルートの作成前の状態を示す図であり、図32Bは、変形例に係る代替ルートを生成した状態を示す図である。
【0233】
図32Aに示す仮想空間では、始点Aを有するオブジェクトと、終点Bを有するオブジェクトとの間に、干渉回避の対象とならないオブジェクトであるエンベローブE1、E2と、干渉回避の対象となるオブジェクトである機器C(障害物)が配置されている。
この場合、変形例に係る代替ルートを生成では、ルーティングモジュール2038は、図32Bに示すように、エンベローブE1、E2については、干渉回避の対象とせずに、代替ルートR21を作成する。ルーティングモジュール2038は、複数の代替ルートを生成する際も、エンベローブE1、E2については、干渉回避の対象とせずに、それぞれの代替ルートを生成する。
【0234】
ここで、エンベローブとは、仮想空間上の所定の空間領域を占めるサーフェースモデルであり、例えば、機器のメンテナンスの作業性を考慮して、機器(オブジェクト)の始点又は終点の周囲に配置される。エンベローブが仮想空間上に配置される目的としては、機器のメンテナンスの他、作業に用いられる作業機械の配置場所の確保、作業員の避難場所、避難経路の確保、作業員の移動導線の確保などがある。
【0235】
そして、ルーティングモジュール2038は、エンベローブを示すオブジェクトの近傍に位置する始点および終点を繋ぐ暫定ルートに関しては、当該エンベローブを干渉回避の対象とせずに、代替ルートを生成する。
一方、ルーティングモジュール2038は、エンベローブを示すオブジェクトの近傍に位置しない始点および終点を繋ぐ暫定ルートに関しては、当該エンベローブを干渉回避の対象として、代替ルートを生成する。
【0236】
このような変形例に係る代替ルートの作成処理について以下に説明する。図33は、変形例に係る代替ルートの作成処理を示す図である。この図では、図22における代替ルートの作成処理(ステップ704)を、更に細分化した処理として説明している。
【0237】
図33に示すように、変形例に係る代替ルートの作成では、まず、ルーティングモジュール2038は、図22における障害物との干渉の有無の検出(ステップS702)において障害物として検出されたオブジェクトと、始点および終点と、の位置関係を確認する。(ステップS7041)
具体的には、ルーティングモジュール2038は、暫定ルートに対する障害物として検出された複数のオブジェクトそれぞれに対して、暫定ルートの始点との距離を確認する。また、ルーティングモジュール2038は、暫定ルートに対する障害物として検出されたオブジェクトそれぞれに対して、暫定ルートの終点との距離を確認する。
【0238】
ステップS7041において、ルーティングモジュール2038は、暫定ルートの始点との距離、および暫定ルートの終点との距離がともに、所定の閾値に相当する距離より離れている場合(ステップS7042におけるNo)には、当該オブジェクトを干渉回避の対象とする(ステップS7043)
【0239】
一方、ステップS7041において、ルーティングモジュール2038は、暫定ルートの始点との距離、および暫定ルートの終点との距離の少なくとも一方が、所定の閾値に相当する距離以内に位置している場合(ステップS7042におけるYes)には、当該オブジェクトが、所定の目的により始点又は終点の近傍に配置されたエンベローブに相当すると判断し、干渉回避の対象外とする(ステップS7044)。
【0240】
ステップS7033の後に、ルーティングモジュール2038は、暫定ルート上に検出された全ての障害物についてステップS7041の判断を繰り返す(ステップS7045)。
ステップS7034の後にも同様に、ルーティングモジュール2038は、暫定ルート上に検出された全ての障害物についてステップS7041の判断を繰り返す(ステップS7045)。
【0241】
ステップS7045の後に、ルーティングモジュール2038は、暫定ルート上に障害物として検出された複数のオブジェクトのうち、干渉回避の対象となるオブジェクトである障害物オブジェクトを特定する(ステップS7046)。
【0242】
ステップS7046の後に、ルーティングモジュール2038は、特定した障害物オブジェクトを干渉回避の対象として、これらを避ける代替ルートを生成する(ステップS7047)。
以上により、変形例に係る代替ルートの作成処理が終了する。これにより、図32Bに示したように、始点A又は終点Bの近傍に位置するエンベローブについては、干渉回避を行わない代替ルートが作成される。
その後、ルーティングモジュール2038は、図22に示す、修正ルートを作れるかどうかの判定(ステップS705)を行う。
【0243】
ここで、ステップS7042の判断の基準となった閾値に相当する距離は、例えば、配管設計パラメータにより設定される暫定ルートに使用可能な最小のエルボが連結可能な距離である。配管設計パラメータには、暫定ルートに用いられる配管のサイズを含む仕様値が含まれ、暫定ルートの設定の際にユーザから予め入力されている。
なお、判断の基準とする閾値については、任意に設定することができる。
【0244】
図34は、変形例に係る代替ルートの他の例を示す図である。
図34Aに示すように、エンベローブは、機器の特性に応じた形状を備えてもよい。図示の例では、エンベローブE3は、熱交換器M3の内部に収容されるシリンダに相当した形状を有している。エンベローブE3は、熱交換器M3のメンテナンスにおいて、一時的に内部のシリンダを取りだすためのスペースを確保するために仮想空間上に配置されている。
【0245】
図34Bの例では、始点A3を有するオブジェクトと、終点を有する熱交換器M3と、を繋ぐ代替ルートR23が作成されている。代替ルートR23は、障害物C3との干渉は回避しながら、エンベローブE3については干渉を回避することなく、その内部を通過している。この場合には、熱交換器M3の内部からシリンダを取り出す作業において、熱交換器M3の終点に連結された配管も取り外されるため、代替ルートがエンベローブE3を回避する必要がないからである。
【0246】
一方、図34Cの例では、始点A4を有するオブジェクトと、終点B4を有するオブジェクトと、を繋ぐ代替ルートR24が作成されている。代替ルートR24は、エンベローブE3を回避するようにルーティングされている。仮に、エンベローブE3と近接しない他の機器同士を繋ぐ配管がエンベローブE3の内部を通過していると、熱交換器M3のメンテナンスにおいて、一時的にシリンダを取りだす作業の妨げとなる。このため、この例では、エンベローブE3を回避するように、エンベローブE3と近接しない他の機器同士を繋ぐ配管の代替ルートが生成される。
【0247】
このほうに、変形例に係る代替ルートの作成処理では、始点又は終点の近傍に配置されるオブジェクトについては、干渉回避の対象とならないエンベローブと判断し、干渉回避の対象としない。このため、作業スペースの確保等といった各種の目的のために、又は設計の初期段階における配管ルートの経路長の概算のために、適宜、干渉回避を行わない代替ルートの作成を行うことができ、より一層自由度の高い配管のルーティング処理を実現することができる。
【0248】
(その他の変形例)
上記実施形態では、ルーティングモジュール2086が、代替ルートに対して修正ルートを生成する処理を説明したが、このような態様に限られない。ルーティングモジュール2086は、修正ルートを生成しなくてもよい。
また、ルーティングもモジュール2038は、仮に複数の暫定ルートの全てに対して、障害物の干渉が検出されない場合には、代替ルートを生成することなく、複数の暫定ルートから最適ルートを選出してもよい。
【0249】
以上、開示に係る実施形態について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換及び変更を行なって実施することが出来る。これらの実施形態及び変形例ならびに省略、置換及び変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
また、各処理は、矛盾しない範囲で処理の順番を変更することができる。
【符号の説明】
【0250】
1 配管ルーティングシステム
10 端末装置
20 サーバ、
80 ネットワーク
130 操作受付部
161 ユーザ情報
22 通信IF
23 入出力IF
25 メモリ
26 ストレージ
29 プロセッサ
201 通信部
202 記憶部
203 制御部
301 通信部
302 記憶部
303 制御部
図1
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