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特許7372016回転ロック装置、レバーホイストおよび巻上機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】回転ロック装置、レバーホイストおよび巻上機
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/54 20060101AFI20231024BHJP
   B66D 3/14 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B66D1/54 Q
B66D3/14 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022530086
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2021018865
(87)【国際公開番号】W WO2021251077
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2020100235
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020198927
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】100120101
【弁理士】
【氏名又は名称】畑▲崎▼ 昭
(72)【発明者】
【氏名】河西 貴幸
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-193591(JP,A)
【文献】特開平05-208798(JP,A)
【文献】特開平07-172779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00-5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状部材に取り付けられ、当該軸状部材と一体的に回転するストッパ支持部材と、
前記軸状部材の軸心側から外方に向かってスライド可能な状態で前記ストッパ支持部材に支持されているストッパ部材と、
前記ストッパ部材を前記ストッパ支持部材の所定の位置に保持する保持手段と、
前記ストッパ部材に対し前記保持手段を一方の回転方向である第1回転方向に向かって付勢する付勢手段と、
前記ストッパ部材と係合することで前記軸状部材の回転を停止させるストッパ係止手段と、
を備え、
前記軸状部材が前記第1回転方向に向かい回転を加速したときに、前記保持手段による前記ストッパ部材の保持力を当該保持手段の慣性負荷により低下および/または解除することで、前記ストッパ部材が所定の位置から前記ストッパ係止手段と係合する位置に突出し、前記軸状部材の回転を停止させる、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転ロック装置であって、
前記保持手段は、円板状の保持プレートと、保持ピンとを有し、
前記保持プレートには前記軸状部材の軸心を中心に回転可能に軸支される軸受け孔を有し、前記ストッパ支持部材と前記保持プレートは前記付勢手段で連結されている、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項3】
請求項2記載の回転ロック装置であって、
前記ストッパ部材のうち前記第1回転方向の側面と反対側の側面には、前記保持ピンと係合する保持凹部が設けられている、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転ロック装置であって、
前記ストッパ係止手段は、
前記ストッパ支持部材を前記軸状部材の軸心回りに回転自在とする挿通孔と、
前記挿通孔の内壁から外径側に向かい凹んでいると共に、ストッパ支持部材の外周から突出した前記ストッパ部材が入り込む係止凹部と、
前記係止凹部のうち前記第1回転方向の端部側に設けられ、前記ストッパ部材が当接することで軸状部材の回転を停止させる係止壁と、
を有することを特徴とする回転ロック装置。
【請求項5】
請求項4記載の回転ロック装置であって、
前記ストッパ係止手段は、
前記係止凹部のうち前記第1回転方向と反対方向の第2回転方向の端部側に向かうにつれて軸心に向かって徐々に突出する係合解除壁を有していて、
前記係合解除壁は、前記ストッパ部材を当接させた状態で前記軸状部材を前記第2回転方向に回転させることで、当該ストッパ部材が突出位置から押し戻される、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項6】
請求項1記載の回転ロック装置であって、
前記保持手段は、円板状の保持プレートを有し、
前記保持プレートは、前記軸状部材の軸心を中心に回転可能に軸支される軸受け孔を有し、
前記ストッパ支持部材と前記保持プレートは前記付勢手段で連結されていて、
前記ストッパ部材は、前記保持プレートに向かって突出するストッパ突起を有し、
前記保持プレートは、前記ストッパ突起と係合し前記ストッパ部材を前記ストッパ支持部材の径方向における所定位置に保持する保持凸部を有し、
前記保持凸部は、前記ストッパ部材が前記径方向における所定位置で係合する第1規制壁と、前記径方向における所定位置から外径側に前記ストッパ部材が突出した位置で係合する第2規制壁とを有している、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の回転ロック装置であって、
前記軸状部材が前記第1回転方向に向かって加速回転した際に、前記保持手段が前記付勢手段の付勢力に抗して、前記軸状部材に対し前記第1回転方向と反対の方向に相対的に回転し、
該相対的に回転した角度が、所定の角度を超えるまで、前記保持手段が前記ストッパ部材を半径方向の所定位置に保持する、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の回転ロック装置であって、
前記軸状部材は、チェーンが掛け回されたロードシーブに一体的に連結されている、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項9】
一対のフレームに軸支され、荷を吊り上げるチェーンが掛け回されているロードシーブと、
前記ロードシーブと減速ギヤを介して連結される駆動軸と、
前記駆動軸に取り付けられているブレーキ装置と、
前記ロードシーブを巻上げおよび巻下げ方向に回転駆動操作する操作レバーと、を備えているレバーホイストであって、
前記駆動軸の外周には、請求項1から8のいずれか1項に記載の回転ロック装置が配置されていて、
前記軸状部材は前記駆動軸であり、
前記ストッパ係止手段は前記フレームに取り付けられている、
ことを特徴とするレバーホイスト。
【請求項10】
請求項9記載のレバーホイストであって、
前記回転ロック装置は、
前記軸状部材が前記第1回転方向に向かって加速回転した際に、前記保持手段が前記付勢手段の付勢力に抗して、前記軸状部材に対し前記第1回転方向と反対の方向に相対的に回転し、
該相対的に回転した角度が、所定の角度を超えるまで、前記保持手段が前記ストッパ部材を半径方向の所定位置に保持し、
前記ブレーキ装置は、複数のラチェット歯を有する爪車を備え、
前記駆動軸は前記回転ロック装置を備え、
前記所定の角度は、前記爪車の一周を前記ラチェット歯の歯数で分割した角度である、
ことを特徴とするレバーホイスト。
【請求項11】
板状のフレームを有する巻上機であって、
軸状部材の周囲に取り付けられると共に外周側にラチェット歯を有する爪車と、前記ラチェット歯に係合する爪部材と、前記爪部材の回動を軸支する爪軸とを備え、前記ラチェット歯と前記爪部材との係合によって爪車の巻上げ方向への回転は許容すると共に巻下げ方向への回転は不可とするラチェット機構を備えたブレーキ装置と、
前記軸状部材の急激な回転をロックする回転ロック装置と、
を備え、
前記回転ロック装置は、
軸状部材に取り付けられ、当該軸状部材と一体的に回転するストッパ支持部材と、
前記軸状部材の軸心側から外方に向かってスライド可能な状態で前記ストッパ支持部材に支持されているストッパ部材と、
前記ストッパ部材を前記ストッパ支持部材の所定の位置に保持する保持手段と、
前記保持手段を前記ストッパ部材に対し前記巻下げ方向に向かって付勢する付勢手段と、
前記ストッパ部材が当接することで軸状部材の回転を停止させるストッパ係止手段と、
を有し、
前記軸状部材が前記巻下げ方向に向かい回転を加速したときに、前記保持手段による前記ストッパ部材の保持力を当該保持手段の慣性負荷により解除することで、前記ストッパ部材が所定の位置から前記ストッパ係止手段と係合する位置に突出し、前記軸状部材の回転を停止させる、
ことを特徴とする巻上機。
【請求項12】
請求項11記載の巻上機であって、
それぞれの前記ストッパ係止手段には、前記爪軸が一体化されていて、
前記ストッパ係止手段は、締結部材を介して前記フレームに取り付けられている、
ことを特徴とする巻上機。
【請求項13】
請求項11または12記載の巻上機であって、
前記ストッパ係止手段は、前記軸状部材の周方向において異なる位置に一対設けられ、一方の前記ストッパ係止手段と他方の前記ストッパ係止手段の間には、スペースが設けられている、
ことを特徴とする巻上機。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか1項に記載の巻上機であって、
前記保持手段は、円板状の保持プレートを有し、
前記保持プレートは、前記軸状部材の軸心を中心に回転可能に軸支される軸受け孔を有し、
前記ストッパ支持部材と前記保持プレートは前記付勢手段で連結されていて、
前記ストッパ部材は、前記保持プレートに向かって突出するストッパ突起を有し、
前記保持プレートは、前記ストッパ突起と係合し前記ストッパ部材を前記ストッパ支持部材の径方向における所定位置に保持するガイド溝を有し、
前記ガイド溝は、前記ストッパ部材が前記径方向における所定位置で係合する第1規制壁と、前記径方向における所定位置から外径側に前記ストッパ部材が突出した位置で係合する第2規制壁とを有していて、
前記第1規制壁は、前記軸受け孔と同心の円弧で形成されている、
ことを特徴とする巻上機。
【請求項15】
請求項14記載の巻上機であって、
前記保持プレートには、周方向に沿う遊間溝部が形成されていて、前記ストッパ突起は当該遊間溝部に沿って移動可能であると共に、
前記第1規制壁は、前記遊間溝部のうち外径側の壁面である、
ことを特徴とする巻上機。
【請求項16】
請求項11から15のいずれか1項に記載の巻上機であって、
前記ストッパ支持部材には、前記ストッパ部材を収納する凹状のストッパ収納部が設けられていて、前記ストッパ部材は外径側への非突出時には当該ストッパ収納部に収納されていて、
前記軸状部材の内径側である前記ストッパ収納部の奥側には、円弧状の円弧底面が設けられていると共に、
前記軸状部材の内径側には、前記ストッパ収納部に係合する前記ストッパ部材の側面形状が円弧状の円弧面が設けられている、
ことを特徴とする巻上機。
【請求項17】
請求項11から16のいずれか1項に記載の巻上機であって、
前記軸状部材が一方の回転方向である第1回転方向に向かって加速回転した際に、前記保持手段が前記付勢手段の付勢力に抗して、前記軸状部材に対し前記第1回転方向と反対の方向に相対的に回転し、
該相対的に回転した角度が、所定の角度を超えるまで、前記保持手段が前記ストッパ部材を半径方向の所定位置に保持する、
ことを特徴とする巻上機。
【請求項18】
請求項11から17のいずれか1項に記載の巻上機であって、
前記巻上機はレバーホイストであり、
一対の前記フレームに軸支され、荷を吊り上げるチェーンが掛け回されているロードシーブと、
前記ロードシーブと減速ギヤを介して連結されると共に、前記軸状部材に対応する駆動軸と、
前記ロードシーブを巻上げおよび巻下げ方向に回転駆動操作する操作レバーと、を備える、
ことを特徴とする巻上機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ロック装置、レバーホイストおよび巻上機に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を昇降および引き寄せたり、荷物をスリング等で固定する(荷締めする)等の作業のために、レバーホイストが広く用いられている。このレバーホイストは、手で操作レバーを駆動操作することで、チェーンの巻上げ(巻取り)および巻下げ(巻戻し)を行える。このようなレバーホイストとしては、たとえば特許文献1に示すものがある。特許文献1に示すレバーホイストでは、従来からあるブレーキ機構(メカニカルブレーキ)の他に、ピニオンのフレーム(2B)よりも操作ハンドル(12)側には、2つの遠心力部材(31)およびその遠心力部材(31)を収納するハウジングリング(35)が設けられている。この遠心力部材(31)は、遠心力の作用によって、ハウジングリング(35)の内周面に押し付けられる。それにより、荷が落下する速度を低下させるようにしている。
【0003】
なお、上記のブレーキ機構(メカニカルブレーキ)は、たとえば特許文献2に示すように構成されている。このブレーキ機構は、一対のブレーキ板(10a,10b)と、逆転防止用爪車(11)と、爪軸(15)に取り付けられたラチェット爪(12)とを備えている。そして、ラチェット爪(12)がバネ(13)によって付勢されることで、ラチェット爪(12)は爪車(11)の係止歯(11a)に係合されている。かかる係合により、爪車(11)の逆転が防止され、それによって駆動軸(4)は一方向、すなわち巻上方向にのみ回転可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】DE102015121581A1号公報
【文献】特開2008-230726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ホイスト類(レバーホイストやチェーンブロック)の巻上げに際して、外周に多数のラチェット歯が形成された爪車と、このラチェット歯と噛み合う爪部材を備えたラチェット機構を有するブレーキ機構(メカニカルブレーキ)に、例えば特許文献2に示すような爪車(11)の係止歯(11a)とラチェット爪(12)との噛み合い不具合や損傷が発生すると、機能しなくなる虞がある。ブレーキが機能しなくなると、吊り荷の荷重によってチェーンを巻き取るロードシーブが勢い良く巻下げ方向に回転し始め荷を落下させてしまう虞がある。
【0006】
ここで、ブレーキ機構が故障した場合、特許文献1に開示の構成では、遠心力の作用によって、遠心力部材(31)がハウジングリング(35)の内周面に押し付けられることで、荷の落下速度(すなわち、ピニオンの回転速度)を遅くすることはできる。しかしながら、荷が落下するのを停止させることはできない。
【0007】
また、特許文献2に示す構成では、爪軸(15)は、圧入等によってフレーム(1b)に取り付けられている。しかしながら、フレーム(1b)の厚みは比較的薄いため、爪軸(15)の長さが長くなると爪軸(15)に作用するモーメントも大きくなるので、その分だけ爪軸(15)とその取付部の強度を高くする必要があるが、フレーム(1b)の孔部への圧入で爪軸(15)を取り付ける場合、その取付強度の向上には限界がある。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、ブレーキ装置が故障した場合などに、確実に軸状部材の回転を止めることが可能であると共に、爪軸の取付強度を向上させることが可能な回転ロック装置、レバーホイストおよび巻上機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、軸状部材に取り付けられ、当該軸状部材と一体的に回転するストッパ支持部材と、軸状部材の軸心側から外方に向かってスライド可能な状態でストッパ支持部材に支持されているストッパ部材と、ストッパ部材をストッパ支持部材の所定の位置に保持する保持手段と、ストッパ部材に対し保持手段を一方の回転方向である第1回転方向に向かって付勢する付勢手段と、ストッパ部材と係合することで軸状部材の回転を停止させるストッパ係止手段と、を備え、軸状部材が第1回転方向に向かい回転を加速したときに、保持手段によるストッパ部材の保持力を当該保持手段の慣性負荷により低下および/または解除することで、ストッパ部材が所定の位置からストッパ係止手段と係合する位置に突出し、軸状部材の回転を停止させる、ことを特徴とする回転ロック装置が提供される。
【0010】
また、上述の発明において、保持手段は、円板状の保持プレートと、保持ピンとを有し、保持プレートには軸状部材の軸心を中心に回転可能に軸支される軸受け孔を有し、ストッパ支持部材と保持プレートは付勢手段で連結されている、ことが好ましい。
【0011】
また、上述の発明において、ストッパ部材のうち第1回転方向の側面と反対側の側面には、保持ピンと係合する保持凹部が設けられている、ことが好ましい。
【0012】
また、上述の発明において、ストッパ係止手段は、ストッパ支持部材を軸状部材の軸心回りに回転自在とする挿通孔と、挿通孔の内壁から外径側に向かい凹んでいると共に、ストッパ支持部材の外周から突出したストッパ部材が入り込む係止凹部と、係止凹部のうち第1回転方向の端部側に設けられ、ストッパ部材が当接することで軸状部材の回転を停止させる係止壁と、を有する、ことが好ましい。
【0013】
また、上述の発明において、ストッパ係止手段は、係止凹部のうち第1回転方向と反対方向の第2回転方向の端部側に向かうにつれて軸心に向かって徐々に突出する係合解除壁を有していて、係合解除壁は、ストッパ部材を当接させた状態で軸状部材を第2回転方向に回転させることで、当該ストッパ部材が突出位置から押し戻される、ことが好ましい。
【0014】
また、上述の発明において、保持手段は、円板状の保持プレートを有し、保持プレートは、軸状部材の軸心を中心に回転可能に軸支される軸受け孔を有し、ストッパ支持部材と保持プレートは付勢手段で連結されていて、ストッパ部材は、保持プレートに向かって突出するストッパ突起を有し、保持プレートは、ストッパ突起と係合しストッパ部材をストッパ支持部材の径方向における所定位置に保持する保持凸部を有し、保持凸部は、ストッパ部材が径方向における所定位置で係合する第1規制壁と、径方向における所定位置から外径側にストッパ部材が突出した位置で係合する第2規制壁とを有している、ことが好ましい。
【0015】
また、上述の発明において、軸状部材が第1回転方向に向かって加速回転した際に、保持手段が付勢手段の付勢力に抗して、軸状部材に対し第1回転と反対の方向に相対的に回転し、該相対的に回転した角度が、所定の角度を超えるまで、保持手段がストッパ部材を半径方向の所定位置に保持する、ことが好ましい。
【0016】
また、上述の発明において、軸状部材は、チェーンが掛け回されたロードシーブに一体的に連結されている、ことが好ましい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の観点によると、一対のフレームに軸支され、荷を吊り上げるチェーンが掛け回されているロードシーブと、ロードシーブと減速ギヤを介して連結される駆動軸と、駆動軸に取り付けられているブレーキ装置と、ロードシーブを巻上げおよび巻下げ方向に回転駆動操作する操作レバーと、を備えているレバーホイストであって、駆動軸の外周には、上述の各発明に係る回転ロック装置が配置されていて、軸状部材は駆動軸であり、ストッパ係止手段はフレームに取り付けられている、ことを特徴とするレバーホイストが提供される。
【0018】
また、上述の発明において、回転ロック装置は、軸状部材が第1回転方向に向かって加速回転した際に、保持手段が付勢手段の付勢力に抗して、軸状部材に対し第1回転と反対の方向に相対的に回転し、該相対的に回転した角度が、所定の角度を超えるまで、保持手段がストッパ部材を半径方向の所定位置に保持し、ブレーキ装置は、複数のラチェット歯を有する爪車を備え、駆動軸は回転ロック装置を備え、所定の角度は、爪車の一周をラチェット歯の歯数で分割した角度である、ことが好ましい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の第3の観点によると、板状のフレームを有する巻上機であって、軸状部材の周囲に取り付けられると共に外周側にラチェット歯を有する爪車と、ラチェット歯に係合する爪部材と、爪部材の回動を軸支する爪軸とを備え、ラチェット歯と爪部材との係合によって爪車の巻上げ方向への回転は許容すると共に巻下げ方向への回転は不可とするラチェット機構を備えたブレーキ装置と、軸状部材の急激な回転をロックする回転ロック装置と、を備え、回転ロック装置は、軸状部材に取り付けられ、当該軸状部材と一体的に回転するストッパ支持部材と、軸状部材の軸心側から外方に向かってスライド可能な状態でストッパ支持部材に支持されているストッパ部材と、ストッパ部材をストッパ支持部材の所定の位置に保持する保持手段と、保持手段をストッパ部材に対し巻下げ方向に向かって付勢する付勢手段と、ストッパ部材が当接することで軸状部材の回転を停止させるストッパ係止手段と、を有し、軸状部材が巻下げ方向に向かい回転を加速したときに、保持手段によるストッパ部材の保持力を当該保持手段の慣性負荷により解除することで、ストッパ部材が所定の位置からストッパ係止手段と係合する位置に突出し、軸状部材の回転を停止させる、ことを特徴とする巻上機が提供される。
【0020】
また、上述の発明において、それぞれのストッパ係止手段には、爪軸が一体化されていて、ストッパ係止手段は、締結部材を介してフレームに取り付けられている、ことが好ましい。
【0021】
また、上述の発明において、ストッパ係止手段は、軸状部材の周方向において異なる位置に一対設けられ、一方のストッパ係止手段と他方のストッパ係止手段の間には、スペースが設けられている、ことが好ましい。
【0022】
また、上述の発明において、保持手段は、円板状の保持プレートを有し、保持プレートは、軸状部材の軸心を中心に回転可能に軸支される軸受け孔を有し、ストッパ支持部材と保持プレートは付勢手段で連結されていて、ストッパ部材は、保持プレートに向かって突出するストッパ突起を有し、保持プレートは、ストッパ突起と係合しストッパ部材をストッパ支持部材の径方向における所定位置に保持するガイド溝を有し、ガイド溝は、ストッパ部材が径方向における所定位置で係合する第1規制壁と、径方向における所定位置から外径側にストッパ部材が突出した位置で係合する第2規制壁とを有していて、第1規制壁は、軸受け孔と同心の円弧で形成されている、ことが好ましい。
【0023】
また、上述の発明において、保持プレートには、周方向に沿う遊間溝部が形成されていて、ストッパ突起は当該遊間溝部に沿って移動可能であると共に、第1規制壁は、遊間溝部のうち外径側の壁面である、ことが好ましい。
【0024】
また、上述の発明において、ストッパ支持部材には、ストッパ部材を収納する凹状のストッパ収納部が設けられていて、ストッパ部材は外径側への非突出時には当該ストッパ収納部に収納されていて、軸状部材の内径側であるストッパ収納部の奥側には、円弧状の円弧底面が設けられていると共に、軸状部材の内径側には、ストッパ収納部に係合するストッパ部材の側面形状が円弧状の円弧面が設けられている、ことが好ましい。
【0025】
また、上述の発明において、軸状部材が第1回転方向に向かって加速回転した際に、保持手段が付勢手段の付勢力に抗して、軸状部材に対し第1回転と反対の方向に相対的に回転し、該相対的に回転した角度が、所定の角度を超えるまで、保持手段がストッパ部材を半径方向の所定位置に保持する、ことが好ましい。
【0026】
また、上述の発明において、巻上機はレバーホイストであり、一対のフレームに軸支され、荷を吊り上げるチェーンが掛け回されているロードシーブと、ロードシーブと減速ギヤを介して連結されると共に、軸状部材に対応する駆動軸と、ロードシーブを巻上げおよび巻下げ方向に回転駆動操作する操作レバーと、を備える、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、ブレーキ装置が故障した場合などに、確実に軸状部材の回転を止めることが可能であると共に、爪軸の取付強度を向上させることが可能な巻上機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置が取り付けられるレバーホイストの構成の一例を示す正面図である
図2図1に示すレバーホイストの構成を示す断面図である。
図3図1に示すレバーホイストのうち、ステイボルトが挿通する通し孔および挿通孔付近の構成を拡大して示す部分的な断面図である。
図4図1に示すレバーホイストのうち、回転ロック(荷落下防止)装置付近の構成を示す断面図である。
図5図3に示す回転ロック(荷落下防止)装置の構成を示す分解斜視図である。
図6図1に示すレバーホイストのうち、保持プレートの構成を示す平面図である。
図7図1に示すレバーホイストのうち、回転ロック(荷落下防止)装置付近の構成を示すと共に、回転ロック(荷落下防止)装置の作動前の各部位の位置関係を透過的に示す図である。
図8図7に示す状態からストッパ支持部材と保持プレートとが相対的に回転してストッパ突起が許容溝部に到達した状態における各部位の位置関係を透過的に示す図である。
図9図8に示す状態からストッパ部材が外径側に突出すると共に、ストッパ突起が戻り規制溝部に位置した状態における各部位の位置関係を透過的に示す図である。
図10図1に示すレバーホイストの変形例に係り、回転ロック(荷落下防止)装置付近の構成を示すと共に、回転ロック(荷落下防止)装置の作動前の各部位の位置関係を透過的に示す図である。
図11】本発明の第2の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置付近の構成を示す断面図である。
図12図11に示す回転ロック(荷落下防止)装置の構成を示す分解斜視図である。
図13】回転ロック(荷落下防止)装置の構成を示すと共に、図12とは別の角度から見た状態を示す分解斜視図である。
図14図11に示す装置の断面において、回転ロック(荷落下防止)装置が作動した状態を示す断面図である。
図15図14のうち、ストッパ部材付近を拡大して示す図である。
図16図11のうち、ストッパ部材付近を拡大して示す図である。
図17】本発明の変形例に係る回転ロック装置の概略的な構成を示す断面図である。
図18】本発明の別の変形例に係る回転ロック装置の概略的な構成を示す断面図である。
図19】本発明の変形例に係り、保持ピンとストッパ部材の別の係合方法を示す図である。
図20図19に示す状態から、ストッパ部材が突出して係止壁に係合した状態を示す図である。
図21】保持手段の変形例を示す正面図である。
図22図21に示す保持手段の側断面図である。
図23】本発明の別の変形例に係り、ストッパ収納部の開口部付近に傾斜壁が設けられていると共に、ガイド溝を透過的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態に係る、レバーホイスト10について、図面に基づいて説明する。以下の説明においては、X方向は、駆動軸25の軸線方向とし、X1側は遊転ニギリ60が取り付けられる側とし、X2側はそれとは逆のギヤボックス34側とする。また、Z方向はレバーホイスト10の懸吊状態における鉛直方向(懸吊方向;巻上げ下げ方向)とし、Z1側は懸吊状態における上側とし、Z2側は懸吊状態における下側とする。また、X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とし、Y1側は図4および図5において右側とし、Y2側は図4および図5において左側とする。また、以下の説明では、ロードシーブ20の回転方向は、巻下げ方向を一方の回転方向とし巻上げ方向を他方の回転方向としている。また、ロードシーブ20に連結する軸回りの回転方向は、ロードシーブ20を回転させる方向を基準としている。
【0030】
<レバーホイストの全体構成について>
図1は本発明の第1の実施の形態に係るレバーホイスト10の構成の一例を示す正面図である。図2は、図1に示すレバーホイスト10の構成を示す断面図である。
【0031】
図2に示すように、レバーホイスト10が備える一対のフレーム11,12の間には、チェーンC1を掛け回すロードシーブ20が回転自在な状態で支持されている。このロードシーブ20には、後述する減速ギヤ30の小径ギヤ部32と噛み合うロードギヤ21が回転不能に設けられている。なお、ロードシーブ20の構成の詳細については、後述する。
【0032】
また、ロードシーブ20は、軸方向(X方向)に貫く挿通孔20aを有し、そのロードシーブ20の中空孔には駆動軸25が挿通されている。なお、駆動軸25は、軸状部材に対応する。駆動軸25の中途の外周側には後述するブレーキ装置70を構成するメネジ部材35と噛み合う雄ネジ部26が設けられると共に、駆動軸25の他端側(X2側)には減速ギヤ30の大径ギヤ部31に噛み合うピニオンギヤ27が設けられている。また、減速ギヤ30には、上述したロードギヤ21と噛み合う小径ギヤ部32も一体的に設けられている。
【0033】
なお、フレーム11にはケーシング13が取り付けられ、上述した減速ギヤ30やロードギヤ21等の駆動部位を保護している。また、上述した雄ネジ部26は、メネジ部材35の雌ネジ部36と噛み合っている。このメネジ部材35には、雌ネジ部36の他に、操作レバー50に配置された切換爪40と噛み合い可能な切換歯車37も設けられている。切換爪40は、たとえば一方側と他方側に1つずつ設けられているラチェット爪であり、この切換爪40が切換歯車37と噛み合った状態で操作レバー50を揺動させることで、メネジ部材35に駆動力を伝達させる。
【0034】
また、切換爪40に同軸で切換ツマミ45が固定され、その切換ツマミ45の切り換え操作によって、メネジ部材35への駆動力の伝達を、巻上げ方向とするか、または巻下げ方向とするか、またはニュートラル位置とするかを切り換え可能となっている。たとえば、図1において切換ツマミ45の下側(Z2側)を左側に倒すと巻上げ用の切換爪40が切換歯車37と噛み合う。それにより、操作レバー50を揺動させる動作を繰り返した場合、切換歯車37は巻上げ方向には回転するが巻下げ方向には回転しない。このとき、チェーンC1の巻上げ状態に対応する。
【0035】
一方、たとえば切換ツマミ45の下側(Z2側)を図1において右側に倒すと巻下げ用の切換爪40が切換歯車37と噛み合う。それにより、操作レバー50を揺動させる動作を繰り返した場合、切換歯車37は巻下げ方向には回転するが巻上げ方向には回転しない。また、ニュートラル位置に切り換えた場合、手でチェーンC1を引き出すことができる遊転状態(このときロードシーブ20および駆動軸25も回転する)への移行を可能としている。さらには後述する遊転ニギリ60の操作で操作レバー50を操作せずにチェーンC1の巻上げまたは巻下げを行うこともできる。
【0036】
また、駆動軸25には、たとえばスプライン結合やキー結合といった回転不能な状態でカム部材55が取り付けられている。さらに、カム部材55には、遊転ニギリ60と呼ばれる部材がカム部材55に対し所定量軸方向にスライド可能に取り付けられている。図2の位置では、遊転ニギリ60は、カム部材55に対し回転不能に係合されているが、X1方向に遊転ニギリ60をスライドさせると、遊転ニギリ60はカム部材55に対し一定の範囲で回転可能となっている。遊転ニギリ60は、カム部材55を介して駆動軸25と共に回転可能な略円形のノブ状の部分であり、作業者が手で握ることが可能となっている。
【0037】
この遊転ニギリ60は、図示しない第1ねじりばねでメネジ部材35と連結され、さらに図示しない第2ねじりばねで駆動軸25の一端に連結されている。切換ツマミ45がニュートラルの位置で、遊転ニギリ60を図2のX1方向にスライドさせると遊転ニギリ60は第2ねじりばね(遊転ばね)の付勢力で巻下げ方向に所定量回転する。所定量回転した遊転ニギリ60に取り付けられた第1ねじりばねも巻下げ方向に回転し、それまでメネジ部材35を巻き上げ方向に回転付勢していた付勢力が解除され、遊転モードに切り替わる。ここで、遊転モードか否かに拘わらず、作業者が遊転ニギリ60を手で握って回転させると、駆動軸25に回転力を伝達することができる。したがって、遊転ニギリ60を回転させることで、チェーンC1の長さ調整を素早く行うことや、スライドさせることで遊転モードへの切り替えが可能となっている。また、遊転モードにおいても、チェーンC1に規定以上の張力が巻下げ方向に作用すると、メネジ部材35は駆動軸25に対し締まり方向に相対的に回転し、後述するブレーキ装置70のブレーキが作動する。
【0038】
<ブレーキ装置70について>
図2に示すように、ロードシーブ20に歯車を介して連結された駆動軸25には、ブレーキ装置70が配置されている。ブレーキ装置70は、ブレーキ受け71、ブレーキ板72a,72b、爪車80、爪部材90、爪軸115、ブッシュ92、メネジ部材35等を主要な構成要素としている。なお、爪車80、爪部材90および爪軸115は、ラチェット機構の主な構成要素に対応する。
【0039】
ブレーキ受け71は、フランジ部71aと、中空ボス部71bとを有している。フランジ部71aは、中空ボス部71bよりも大径に設けられている部分であり、ブレーキ板72aを受け止めることが可能となっている。
【0040】
中空ボス部71bは、フランジ部71aよりもメネジ部材35側(X1側)に位置し、ブッシュ92を介して爪車80を軸支する。なお、中空ボス部71bの内周側は、キー結合またはスプライン結合等によって駆動軸25と噛み合うことで、駆動軸25とブレーキ受け71とが一体的に回転する。
【0041】
また、フランジ部71aと爪車80との間、及びメネジ部材35と爪車80との間には、それぞれブレーキ板72a,72bが中空ボス部71bに軸支されている。ブレーキ板72a,72bは、たとえば所定の摩擦材料を板状に形成された摩擦材であり、または、爪車80の両面に焼結成形するなどして配置されている。
【0042】
メネジ部材35を巻き上げ方向に回転させると、駆動軸25の雄ネジ部26との作用によりメネジ部材35は爪車80をブレーキ板72a,72bと共にブレーキ受け71方向に押圧し、駆動力を駆動軸25に伝達する。一方、この状態で、駆動軸25を巻下げ方向に回転させても、メネジ部材35は爪車80をブレーキ板72a,72bとともにブレーキ受け71方向に押圧する。このとき、爪車80は爪部材90により巻下げ方向に回転不能となっているので、ブレーキ装置70には摩擦力によるブレーキ力が働く。これによって、駆動軸25の巻下げ方向への回転は停止させることが可能となっている。反対に、メネジ部材35を巻下げ方向に回動させると、その分だけメネジ部材35による押圧力が緩みブレーキ装置70のブレーキ力が減じ巻下げ方向に回転することが可能となる。
【0043】
また、後述するストッパ支持部材120には爪軸115が一体的に設けられていて、その爪軸115には爪部材90が回動可能に支持されている。また、爪軸115には、ねじりばね93のコイル部93aが取り付けられていて、爪部材90が爪車80のラチェット歯83に押し付けられる向きの付勢力をねじりばね93が与えている。このようにして、爪車80は、巻上げ方向には回転可能で巻下げ方向には爪車80の歯数で分割されるピッチ角度毎に回転が規制されるようになっている。なお、爪部材90は一対設けられていて、爪車80の周方向において、180度離れて配置されている。
【0044】
<ブレーキカバー14およびロックカバー15について>
図2および図3に示すように、上記のブレーキ装置70は、ブレーキカバー14で覆われることで、当該ブレーキカバー14の内部に存在するブレーキ装置70側に塵埃や雨水等が侵入するのを防止している。このブレーキカバー14は、ロックカバー15に取り付けられている。すなわち、図3に示すように、ブレーキカバー14のフランジ部14aがロックカバー15に当接している。なお、フランジ部14aには、挿通孔14a1が設けられていて、その挿通孔14a1にはステイボルトB1(締結部材に対応)が挿通されている。
【0045】
また、ロックカバー15は、後述する回転ロック装置100を覆うカバーである。このロックカバー15で回転ロック装置100が覆われることで、回転ロック装置100に塵埃や雨水等が侵入するのを防止している。このロックカバー15は、立ち上がり部(側面)15aと、その立ち上がり部15aに直交する対向面15bとを有している。この対向面15bは、フレーム12に対して所定の間隔で対向すると共に、フランジ部14aが当接する。
【0046】
なお、回転ロック装置100を構成するストッパ係止部材110(後述)の厚みと、対向面15bからの立ち上がり部15aの高さ(内寸)とは、同程度となるように設けられている。
【0047】
また、フレーム12には、ステイボルトB1を挿通させるための貫通孔12aが設けられている。この貫通孔12aに挿通するステイボルトB1はロードシーブ20側(X2側)が大径となるように設けられているが、そのようなステイボルトB1の直径の変化により、当該ステイボルトB1には第1段差部B1aが設けられている。この第1段差部B1aがフレーム12のロードシーブ20側(X2側)に当接することにより、フレーム12がロードシーブ20側(X2側)に移動するのが規制(位置決め)される。規制された状態でステイボルトB1はフレーム12に溶接接合される。
【0048】
また、ロックカバー15の対向面15bには通し孔15b1が設けられ、その通し孔15b1にステイボルトB1が挿通している。さらに、ブレーキカバー14のフランジ部14aには挿通孔14a1が設けられ、その挿通孔14a1にステイボルトB1が挿通している。ここで、ステイボルトB1には上記の第1段差部B1aと同様の第2段差部B1bが設けられていて、その第2段差部B1bを挟んで遊転ニギリ60側(X1側)がより小径に設けられている。また、ステイボルトB1のうち、挿通孔14a1から遊転ニギリ60側(X1側)に飛び出している部位には雄ネジ部B1cが設けられている。そのため、雄ネジ部B1cにワッシャWを介してナット(袋ナット)N1を捻じ込むことで、ブレーキカバー14およびロックカバー15が締め付け固定される。
【0049】
ここで、上記の第2段差部B1bは、挿通孔14a1の中途部分に位置するように設定されている。それにより、第2段差部B1bとフランジ部14aの表面との間には、隙間S1が設けられている。そのため、雄ネジ部B1cにナットN1を捻じ込んでも、第2段差部B1bがフランジ部14aの表面側に突出しない状態となっている。
【0050】
なお、上記のように、ストッパ係止部材110(後述)の厚みと、対向面15bからの立ち上がり部15aの高さ(内寸)とは、同程度となるように設けられていることで、ストッパ係止部材110はフレーム12と対向面15bとの間に挟まれて強固に固定されると共に、立ち上がり部15aの先端側がフレーム12に強固に接触する。ただし、立ち上がり部15aの高さ(内寸)の方が、ストッパ係止部材110(後述)の厚みよりも若干大きくても良い。この場合には、ナットN1の締め付けにより対向面15bが若干撓むことで、立ち上がり部15aの先端側がフレーム12に強固に接触すると共に、ストッパ係止部材110が強固に固定(挟持)される。
【0051】
<ロードシーブ20および回転ロック(荷落下防止)装置100について>
次に、ロードシーブ20および回転ロック(荷落下防止)装置100について説明する。図4は、回転ロック(荷落下防止)装置100付近の構成を示す断面図である。図5は、図4に示す回転ロック(荷落下防止)装置100の構成を示す分解斜視図である。図4および図5に示すように、回転ロック(荷落下防止)装置100は、ストッパ係止部材110、ストッパ支持部材120、保持プレート130、ストッパ部材140および付勢ユニット150を主要な構成要素としている。なお、ストッパ係止部材110はストッパ係止手段に対応し、付勢ユニット150は付勢手段に対応する。
【0052】
図3から図5に示すように、本実施の形態では、フレーム12の爪車80側には、一対のストッパ係止部材110が取り付けられている。ストッパ係止部材110は、本実施の形態では、Y方向に長い長片状の部材であり、2つのストッパ係止部材110の間に、スペースSP1が形成されている。このため、ストッパ係止部材が、ストッパ支持部材120および保持プレート130の外周側の全周に亘るように設けられている場合と比較して、ストッパ係止部材110の軽量化が可能となっている。
【0053】
それぞれのストッパ係止部材110は、2本のステイボルトB1を介してフレーム12に取り付けられているが、そのような取り付けを可能とするために、ストッパ係止部材110には2つの取付孔111が設けられ、その取付孔111にステイボルトB1が挿通されている。なお、取付孔111は、本実施の形態では一対(2つ)設けられているが、3つ以上設けるように構成しても良い。
【0054】
また、ストッパ係止部材110には内側突出部112が設けられている。内側突出部112は、ストッパ係止部材110のうち、フレーム12の軸孔12bの中心側に向かって突出している部分である。なお、軸孔12bは、上述した駆動軸25およびロードシーブ20を挿通させるための孔である。
【0055】
内側突出部112は、後述するストッパ支持部材120および保持プレート130の外周面に対して若干の隙間を有する状態で対向している。それにより、ストッパ部材140を保持位置に支持しているストッパ支持部材120および保持プレート130の回転に支障のない構成となっている。なお、本実施の形態では、それぞれのストッパ係止部材110に1つずつ設けられている。したがって、内側突出部112は、周方向において180度間隔で2つ配置されている。
【0056】
また、内側突出部112には、係止壁114が設けられている。係止壁114は、内側突出部112の回転方向における他方側(図4および図5では、内側突出部112の時計回り側)の壁面であり、この係止壁114に対して、一方の回転方向(巻下げ方向)に回転するストッパ部材140がストッパ支持部材120から径方向外側に突出した際に衝突することで、ロードシーブ20の回転を停止させることが可能となっている。このため、係止壁114は、軸孔12bにおける径方向に対し、後述するストッパ部材140を回転軸芯方向に押し戻さない傾斜角度に設定されている。また、ストッパ部材140の側面も、係止壁114との衝突で、回転軸芯方向に押し戻されない傾斜角度の側面を有している。なお、図5に示すように、係止壁114に連続して、回転軸心方向から離れる方向(外径側)に向かって凹む凹状部113が設けられている。この凹状部113には、ねじりばね93の図示しない一方のフック部が係合され、ストッパ部材140とねじりばね93のフック部の接触を回避できるようになっている。
【0057】
また、図5に示すように、ストッパ係止部材110には爪軸115が設けられている。本実施の形態では、爪軸115は、ストッパ係止部材110の他の部分と一体化されている。このような一体化のために、ストッパ係止部材110は、鋳造(たとえばロストワックス法)によって形成されるのが好ましい。しかしながら、爪軸115のみを別体的に形成し、ストッパ係止部材110に存在する取付穴等に爪軸115を圧入して取り付けるようにしても良い。
【0058】
ここで、図4の断面図に示すように、ストッパ係止部材110の内部には、複数のリブ116が配置されている。すなわち、ストッパ係止部材110は中実部材でなく、複数のリブ116から構成される中空部分が存在する部材となっているので、ストッパ係止部材110の軽量化が可能となっている。なお、爪軸115の根本側には2つのリブ116がXを描くように配置されることで、爪軸115の軸線方向(スラスト方向)の荷重を受け止めることが可能となっている。
【0059】
なお、本実施の形態では、図4に示すように、内側突出部112のうち係止壁114とは反対側の側壁も、係止壁114として機能しても良い。また、凹状部113に面する側壁のうち、図4および図5における時計回り側の側壁が、径方向に対して所定角度以上傾斜することで、ストッパ収納部123から突出したストッパ部材140を、後述するストッパ収納部123に収納させるように構成しても良い。
【0060】
次に、ストッパ支持部材120について説明する。ストッパ支持部材120は、中心孔121を有し、その中心孔121において駆動軸25に取り付けられていて、ストッパ支持部材120と駆動軸25とは一体的に回転する。なお、ストッパ支持部材120の駆動軸25に対する取り付けは、たとえば止めねじ、キー結合、スプライン結合等、必要なトルクを伝達できればどのようなものであっても良い。
【0061】
また、図5に示すように、ストッパ支持部材120には、軸受ボス部122が設けられている。軸受ボス部122は、軸方向(X方向)に突出する中空軸状の部分であり、保持プレート130に設けられた中心孔132に回転可能な状態で嵌め込まれる。
【0062】
また、ストッパ支持部材120には、その中心孔121側から外周側に向かうストッパ収納部123が設けられている。ストッパ収納部123は、後述するストッパ部材140を収納する部分であり、その外周側が開放している。したがって、ストッパ収納部123に収納されたストッパ部材140は、外周側に向かって突出することが可能となっており、ストッパ収納部123の側壁123aでスライド可能に支持されている。
【0063】
なお、ストッパ収納部123は、幅狭片部120aと幅広片部120bとで挟まれることで形成されている。後述するストッパ部材140が係止壁114に衝突する場合、幅狭片部120aは内側突出部112と対向する部位に位置するが、幅広片部120bは、ストッパ収納部123を挟んで内側突出部112(係止壁114)から離れる部位に位置している。図4に示す構成では、幅狭片部120aはストッパ収納部123の左側に位置し、幅広片部120bはストッパ収納部123の右側に位置している。ここで、幅広片部120bは、幅狭片部120aよりも周方向の幅が広く設けられている。したがって、ストッパ部材140が係止壁114に衝突した場合でも、その衝撃を幅広片部120bで受け止めるだけの強度が確保されている。
【0064】
また、ストッパ支持部材120には、差込穴124も設けられている。差込穴124は、ストッパ支持部材120の外周面のうち中心孔121およびストッパ収納部123と干渉しない部位から凹む穴であり、図3ではストッパ収納部123とは反対側の外周面から形成されている。この差込穴124には、後述する一端掛止ピン152の一端が差し込まれることで、ストッパ支持部材120は一端掛止ピン152を支持する。
【0065】
次に、保持プレート130について説明する。なお、保持プレート130は、保持手段を構成する。保持プレート130は円盤状に設けられていて、その径方向の中央には、中心孔132が設けられている。この中心孔132に軸受ボス部122が嵌め込まれることで、保持プレート130は、ストッパ支持部材120に対して同軸で回動可能に支持されている。なお、回転中心から保持プレート130の最外周までの距離(すなわち半径)は、ストッパ支持部材120の最外周までのそれと同程度となっている。しかしながら、ストッパ支持部材120と保持プレート130のうちのいずれか一方の半径が大きく設けられていても良い。
【0066】
本実施の形態では、保持プレート130は一対設けられていて、その一対の保持プレート130の間に、ストッパ支持部材120が挟み込まれている。そして、保持プレート130同士を連結部材R1で所定の間隔で連結している
【0067】
また、保持プレート130には、ガイド溝136が設けられている。図6は、保持プレート130の構成を示す平面図である。このガイド溝136は、ストッパ部材140のストッパ突起141(後述)が入り込んで、そのストッパ突起141の移動をガイドする部分であり、その外観は、略三角形状の部位の径方向中心側に、円弧状に長く伸びている溝を加えた形状となっている。具体的には、ガイド溝136には、図6に示すような略三角形状の保持凸部137が入り込んでいて、その入り込みにより、ガイド溝136には、許容溝部136aと、遊間溝部136bと、戻り規制溝部136cの3つの溝が設けられている。
【0068】
許容溝部136aは、ストッパ突起141が径方向に移動するのを許容する溝である。そのため、図6において許容溝部136aの下側に位置する内側壁136a1は、径方向(中心孔132の中心から延びる一つの放射線の方向)に平行となるように設けられている。なお、許容溝部136aの幅は、保持凸部137のうち最も内側壁136a1に向かって突出している凸部先端部137aと、上述した内側壁136a1の間によって規定される。
【0069】
また、遊間溝部136bは、凸部先端部137aから、周方向において許容溝部136aから遠ざかるように(図6において右側に)凹んだ溝である。この遊間溝部136bは、ストッパ突起141を、遊びをもって位置させることを可能としている。ここで、遊間溝部136bの外径側の内壁(第1規制壁136b1とする)は、ストッパ突起141と係合して、ストッパ部材140をストッパ支持部材120の所定位置に保持するための壁面である。なお、この遊間溝部136bにストッパ突起141が収納された状態では、ストッパ部材140の外径側は、ストッパ支持部材120の外周面よりも外径側に突出しない状態で、ストッパ収納部123に収納されている。
【0070】
ここで、遊間溝部136bの周方向の長さは、次に述べる角度γにより定まる長さより長くなるように形成されている。すなわち、爪車80は、巻上げ操作途中で操作を中断すると、最大で一周を歯数で分割した角度(ピッチ角度)分だけ、巻き下げ方向に空転する。この角度を角度γ(図示省略)とする。この場合、回転ロック装置100も角度γより大きい角度だけ遅延して作動することが好ましい態様となる。このため、ストッパ部材140の収納状態において、ストッパ突起141が入り込む遊間溝部136bの周方向の長さを少なくとも角度γ以上に長くする。そして、ストッパ支持部材120に対して、保持プレート130が角度γ以上、駆動軸25およびストッパ支持部材120に対し、巻下げ方向とは反対の第2の回転方向に相対回転するまで、ストッパ部材140の保持を維持するようにすることが好ましい。
【0071】
なお、本実施の形態では、遊間溝部136bは、角度γよりも十分に長くしている。ここで、遊間溝部136bの長さが短い場合には、切換ツマミ45をニュートラル位置に切り換えて遊転ニギリ60を操作して遊転モードとした後、巻下げ方向にチェーンC1を素早く引き出す遊転操作中に、回転ロック装置100が作動し易い状態となってしまい、チェーンC1の引き出しの利便性が低下してしまう。そこで、切換ツマミ45をニュートラル位置に切り換えて遊転モードとした後、チェーンC1を手で引き出す遊転操作中に、回転ロック装置100が直ぐには作動しないように、遊間溝部136bの長さを、角度γよりも十分に長くしている。それにより、上記のような遊転操作中に、回転ロック装置100が作動して回転ロック状態となってしまうのを防止している。
【0072】
また、戻り規制溝部136cは、周方向において許容溝部136aから遠ざかるように(図6において上側に)凹んだ溝である。この戻り規制溝部136cは、ストッパ突起141を、遊びをもって位置させることを可能としている。しかしながら、戻り規制溝部136cには、第2規制壁136c1が設けられている。この第2規制壁136c1は、ストッパ突起141と係合することにより、ストッパ部材140の外径側は、ストッパ支持部材120の外周面よりも突出した状態が維持される。すなわち、第2規制壁136c1は、ストッパ部材140がストッパ収納部123に完全に収納されるのを規制するための壁面である。
【0073】
なお、第2規制壁136c1は、許容溝部136aに近接するにつれて徐々に内径側に向かうように傾斜している。そのため、戻り規制溝部136cにストッパ突起141が入り込んだ状態で、ストッパ支持部材120およびストッパ部材140を、保持プレート130に相対的に回転させることで、ストッパ突起141が許容溝部136aに向かい移動すると、第2規制壁136c1との係合が外れる。それにより、ストッパ部材140がストッパ収納部123の内径側に移動可能となる。また一方で、ストッパ部材140が所定の位置から遠心方向にスライドし、ストッパ突起141が凸部先端部137aを越えた後に、駆動軸25の第1回転方向への回転加速度が減少しても、ストッパ突起141が第2規制壁136c1と係合することで、ストッパ部材140は係止壁114と確実に係合し、駆動軸25に第1回転方向への負荷が継続する間は、その係合を維持する。
【0074】
また、上述したストッパ支持部材120のストッパ収納部123には、ストッパ部材140が収納されている。このストッパ部材140は、ストッパ収納部123に対し、収納位置から遠心方向にスライド可能な状態で収納されている。
【0075】
ここで、ストッパ収納部123の奥側(回転軸心側)の内壁面(奥側の底面)は、概ね半円状に設けられている。以下の説明では、この半円状の内壁面(奥側の底面)を、円弧底面123bと呼称する。このような円弧底面123bが設けられることで、ストッパ収納部123の奥側には、応力集中する部位が形成されないようにしている。すなわち、後述するストッパ部材140が係止壁114に衝突した際には、その衝撃がストッパ収納部123の内壁面にも伝達されるが、その衝撃の伝達の際に、応力集中する部位が存在していると、ストッパ支持部材120が破損する原因となってしまう。しかしながら、ストッパ収納部123の奥側の内壁面が半円状の円弧底面123bとなっていることで、ストッパ部材140が係止壁114に衝突した際に、この半円状の円弧底面123bに応力集中する部位が形成されずに済む。なお、円弧底面123bには、後述する円弧面143が当接する。
【0076】
なお、図7に示すように、ストッパ収納部123にストッパ部材140が所定の位置に収納された状態では、ストッパ部材140の外周面(径方向中心から離れる側の面)は、回転軸中心に対してストッパ支持部材120の外周面よりも内径側に位置している。なお、ストッパ支持部材120の外周面の距離は、保持プレート130の回転軸中心から外周面までの距離と同程度に設けられているのが良い。なお、ストッパ部材140は、駆動軸25の回転の支障とならないように、回転中心から離間する外周面の寸法が設定されていることが必要である。
【0077】
ここで、ストッパ部材140には、円柱状のストッパ突起141が設けられている。ストッパ突起141は、ストッパ部材140のうち保持プレート130と対向する面(表面および裏面)から、保持プレート130に向かってX軸方向に突出している。なお、図4図7図9に示すように、ストッパ突起141は、ストッパ部材140の深さ方向(ストッパ支持部材120の径方向)の中央よりも、駆動軸25(ストッパ部材140)の軸心側に設けられている。また、ストッパ突起141はストッパ部材140と一体成形するようにしてもよいが、ストッパ部材140に取り付け孔を設け、軸状部材やピン等を取り付け孔に嵌合させてストッパ突起141を構成するようにしても良い。
【0078】
このストッパ突起141は、上述したガイド溝136に入り込む。それにより、ストッパ支持部材120と保持プレート130の回転方向の位置が相対的に変化した場合に、ストッパ突起141がガイド溝136内を摺動する。そして、ストッパ突起141が許容溝部136aに位置する場合には、ストッパ部材140に作用する遠心力、または付勢バネ151の付勢力による第2規制壁136c1からの押圧力に応じて、ストッパ部材140が外径側に飛び出すことが可能となる。
【0079】
ここで、ストッパ部材140の径方向の最も外側に位置する外周面142は、上述したストッパ支持部材120の外周面や保持プレート130の外周面と同様に円弧状に設けられている。しかしながら、外周面142は直線状に設けられていても良く、その他の形状に設けられていても良い。
【0080】
一方、ストッパ部材140のうち、径方向の中心寄りに位置する外周面は、概ね半円状に設けられている。以下では、この半円状の外周面を、円弧面143と呼称する。この円弧面143は、上記のストッパ収納部123の円弧底面123bと当接する部分である。
【0081】
ここで、ストッパ支持部材120にストッパ部材140と2つの保持プレート130と付勢ユニット150を組み付け、連結部材R1(図5参照)で2枚の保持プレート130を所定の間隔で連結すると共に、ガイド溝136の内壁でストッパ部材140をストッパ支持部材120のストッパ収納部123の所定の位置に保持していることで、1ユニット化することができる。このように1ユニット化とすることで、駆動軸25への組付け及びメンテナンス時の取り外しや交換などの作業が容易に確実に行うことが可能となっている。特に、レバーホイスト10(巻上機)に組み付け前に、上記の1ユニット化したものの動作確認や調整が可能となっている。また、ストッパ部材140に大きな負荷が作用する場合でも、一対の保持プレート130でストッパ部材140をストッパ支持部材120のストッパ収納部123に確実に保持することが可能となっている。
【0082】
なお、本実施の形態では、連結部材R1は、リベットとカラー(スペーサ))から構成されている。すなわち、一対の保持プレート130の間にカラーを配置し、保持プレート130に形成された孔部131およびカラーにリベットを挿通させる。その後に、リベットの他端側を塑性変形させることで、所定の間隔が維持された状態で、一対の保持プレート130が連結される。
【0083】
次に、付勢ユニット150について説明する。図4に示すように、付勢ユニット150は、付勢バネ151と、一端掛止ピン152と、他端掛止ピンに対応する連結部材R1とを有している。これらのうち、付勢バネ151は、本実施の形態では、引っ張りバネとなっている。付勢ユニット150の構成としては、引っ張りバネを含むものの他に、圧縮バネやねじりバネを含むものであっても良く、保持プレート130をストッパ支持部材120に対し図4において反時計方向である一方の回転方向(巻下げ方向;第1回転方向)に回動付勢する構成であれば良い。
【0084】
また、一端掛止ピン152は、上述したように、ストッパ支持部材120の差込穴124に差し込まれることで取り付けられている。また、この一端掛止ピン152には、付勢バネ161の一端側が掛けられている。また、他端掛止ピンとして、連結部材R1を兼用している。すなわち、孔部131に差し込まれた連結部材R1に、付勢バネ151の他端側が掛けられる。
【0085】
ここで、一端掛止ピン152のうち付勢バネ151が掛けられている作用点と、他端掛止ピンに対応する連結部材R1のうち付勢バネ151が掛けられている作用点とは、回転中心に対して所定の角度θだけ異なっている。したがって、付勢バネ151は、この角度θが小さくなるように付勢力を与えている。
【0086】
なお、図5に示す構成では、上記の他端掛止ピンに対応する連結部材R1を含めて、合計3個の連結部材R1が設けられていて、その3個の連結部材R1に対応して保持プレート130には合計3個の孔部131が設けられている。しかしながら、図10に示すように、連結部材R1は合計4個設けられると共に、その4個の連結部材R1に対応して保持プレート130に合計4個の孔部131を設けるようにしても良い。なお、連結部材R1および孔部131の個数は、幾つでも良い。また、連結部材R1は、一対の保持プレート130の間隔を維持しつつ連結するものであれば、ビスとナット等、どのようなものを用いても良い。
【0087】
なお、図10は、図1に示すレバーホイストの変形例に係り、回転ロック(荷落下防止)装置100付近の構成を示すと共に、回転ロック(荷落下防止)装置100の作動前の各部位の位置関係を透過的に示す図である。図10に示す構成では、4個の連結部材R1のうち、2個の連結部材R1が、付勢バネ151に隣接して配置されている。それにより、孔部131から付勢バネ151が外れるのを防止している。さらに、付勢バネ151の一端側が一端掛止ピン152から外れたり、他端側が連結部材R1(他端掛止ピンに対応)から外れた際に、保持プレート130の回転による遠心力で付勢バネ151が飛び出すのを防止している。
【0088】
また、図10に示す構成では、図4および図5等に示す構成とは異なり、ストッパ収納部123には、円弧状の円弧底面123bが設けられておらず、直線状の底面が設けられている(符号省略)。それと共に、ストッパ部材140には、円弧状の円弧面143が設けられておらず、直線状の底面が設けられている(符号省略)。
【0089】
<作用について>
以上のような構成の回転ロック(荷落下防止)装置100において、レバーホイスト10の巻上げ操作において、ブレーキ装置70が破損するなどして、駆動軸25が吊り荷重などによるチェーンC1に掛かる張力によって巻下げ方向に加速回転を開始するときを考える。
【0090】
図7は、図1に示すレバーホイスト10のうち、回転ロック(荷落下防止)装置100付近の構成を示すと共に、回転ロック(荷落下防止)装置100の作動前の各部位の位置関係を透過的に示す図である。また、図8は、図7に示す状態からストッパ支持部材120と保持プレート130とが相対的に回転してストッパ突起141が許容溝部136aに到達した状態における各部位の位置関係を透過的に示す図である。また、図9は、図8に示す状態からストッパ部材140が外径側に突出すると共に、ストッパ突起141が戻り規制溝部136cに位置した状態における各部位の位置関係を透過的に示す図である。
【0091】
最初に、ブレーキ力を失った駆動軸25およびストッパ支持部材120は、チェーンC1に掛かる張力により、ストッパ部材140と共に図7における反時計方向である一方の回転方向(巻下げ方向)に急激な回転速度の上昇が生じる。このとき、付勢バネ151の付勢力は、遊間溝部136bの最も端部(許容溝部136aから離れる側の端部)にストッパ部材140のストッパ突起141が位置する状態で、保持プレート130をストッパ部材140の回転に追従させようと働く。しかし、保持プレート130に働く慣性力が付勢バネ151の付勢力を上回ると、ストッパ突起141は、遊間溝部136bの最も端部(許容溝部136aから離れる側の端部)から離れる。さらに、この端部からストッパ突起141が離れる(追従できない)向きの加速度で駆動軸25がストッパ支持部材120とストッパ部材140と共に加速回転すると、保持プレート130に働く慣性力により付勢バネ151が伸びて、ストッパ部材140のストッパ突起141は、遊間溝部136b内を許容溝部136aに向かって摺動する。
【0092】
なお、ストッパ支持部材120とストッパ部材140の回転に伴って生じる遠心力により、ストッパ部材140が外径側に飛び出そうとしても、許容溝部136aにストッパ突起141が到達するまでは、ストッパ突起141が第1規制壁136b1に規制されることで、ストッパ部材140の外径側への飛び出しが規制される。
【0093】
そして、図8に示す位置まで、遊間溝部136b内をストッパ突起141が相対的に移動すると、ストッパ部材140が外径側に飛び出すことが可能となる。すなわち、ストッパ突起141と第1規制壁136b1との間での係合(保持)状態が解除されたストッパ部材140は、遠心力によってストッパ収納部123から外径側に飛び出す。ただし、外径側への飛び出しは、ガイド溝136の最外周側までの範囲内となっている。また一方で、ストッパ部材140が所定の位置から遠心方向にスライドし、ストッパ突起141が凸部先端部137aを越えた後に、駆動軸25の第1回転方向への回転加速度が減少しても、付勢バネ151の付勢力によりストッパ突起141が第2規制壁136c1により押圧される。この押圧により、ストッパ部材140は係止壁114と確実に係合する位置まで突出し、駆動軸25に第1回転方向への負荷が継続する間は、その係合を維持する。
【0094】
そして、ストッパ収納部123から突出したストッパ部材140が、反時計方向である一方の回転方向(巻下げ方向)に回転を継続すると、図9に示すように、ストッパ係止部材110の係止壁114に衝突する。それにより、ストッパ支持部材120および駆動軸25の一方の回転方向(巻下げ方向)への回転は停止させられ、荷の落下が停止する。
【0095】
また、ストッパ部材140が係止壁114に衝突した後に、ストッパ突起141は戻り規制溝部136cに入り込む。それにより、駆動軸25が停止した後に、付勢バネ151の付勢力によって、ストッパ突起141が第2規制壁136c1から反時計回りの付勢力を受けるので、ストッパ突起141が戻り規制溝部136cに入った状態が維持される。このとき、ストッパ部材140がストッパ収納部123に不用意に戻ろうとしても、ストッパ突起141が第2規制壁136c1に係合を維持することで、ストッパ部材140のストッパ収納部123への戻りが規制される。このため、駆動軸25の回転停止状態が維持される。すなわち、荷が再び落下し始めるのが防止される。
【0096】
次に、ブレーキ装置70が正常に作動している状態において、チェーンC1を手で引いて巻下げ方向に引き出すことが可能な状態である遊転モードについて考える。レバーホイスト10では、無負荷の状態で上記遊転モードにできる機能を有している。具体的には、ブレーキ装置70のメネジ部材35を遊転ばね(図示せず)の作用によりブレーキを開放する機能を有している。遊転モードでは、操作レバー50の操作で操作するより速い速度でチェーンC1の長さを調整できるようになっている。遊転モードに切り替えるには、無負荷状態で切換ツマミ45をニュートラルにするだけで切換が可能な自動遊転方式と、切換ツマミ45をニュートラルに操作した後、さらに遊転ニギリ60を所定の操作をすることで遊転モードに切り替えるものがある。本実施の形態では、後者の切換ツマミ45をニュートラルに操作した後、さらに遊転ニギリ60を所定の操作をすることで遊転モードに切り替えられる構造となっているが、その詳細説明は省略する。
【0097】
このような遊転モードにおいては、ブレーキ装置70のブレーキ力を一時的に働かないようにしている。ただし、安全上、巻下げ方向に所定以上の張力がチェーンC1に働くとブレーキ装置70が作用して駆動軸25の回転を停止させる機構となっている。一方、レバーホイスト10に採用されている爪車80を有するブレーキ装置70は、巻上げ方向にはブレーキが働かないので、巻下げ方向よりも速い速度でチェーンC1の長さを調節することが可能となっている。かかる状況のレバーホイスト10においては、回転ロック(荷落下防止)装置100も巻上げ方向(他方の回転方向)には出来るだけ作用しない方が、作業性が良好となる。
【0098】
チェーンC1を作業者が巻上げ方向に引っ張った場合、ロードシーブ20は巻上げ方向に回転し、駆動軸25、ストッパ支持部材120、ストッパ部材140も巻上げ方向に回転する。このとき、保持プレート130に働く慣性力は、ストッパ突起141を遊間溝部136bの最も端部(許容溝部136aから離れる側の端部)に押し付ける向きに働く。そのため、ストッパ部材140がストッパ収納部123の内部から外径側に飛び出そうとしても、第1規制壁136b1にストッパ突起141が規制されることで、飛び出すことが不能となる。
【0099】
一方、チェーンC1を作業者が巻下げ方向に引っ張った場合、ロードシーブ20が巻下げ方向に回転し、駆動軸25、ストッパ支持部材120、ストッパ部材140も巻下げ方向に回転する。このとき、ストッパ支持部材120およびストッパ部材140の回転加速により、保持プレート130が取り残されるように付勢バネ151の付勢力に抗して相対回転し、ストッパ突起141が遊間溝部136bの最も端部(許容溝部136aから離れる側の端部)から離れる場合がある。この場合において、遊間溝部136bの長さが短いと、ストッパ突起141が比較的容易に許容溝部136aに到達し、その後にストッパ部材140が外径側に突出して係止壁114とストッパ部材140とが衝突するロック状態となってしまう。その場合には、チェーンC1を作業者が巻下げ方向に引っ張る作業が中断され、ロック状態を解除する必要があるので、作業性が悪化してしまう。
【0100】
しかしながら、本実施の形態では、遊間溝部136bの長さは、上記の角度γよりも十分に長くなっていて、チェーンC1を作業者が巻下げ方向に引っ張る程度の回転加速では、ストッパ突起141が遊間溝部136b内を若干移動しても、許容溝部136aにまで到達できない程度に設定されている。このため、チェーンC1を作業者が巻下げ方向に引っ張る作業が中断されずに済む。遊転モードにおいて駆動軸25が巻下げ方向に急激に回転した場合、遊転モードにより一時的に解放されたブレーキ装置70が回転ロック装置100より先に駆動軸25の回転を制動するように、遊間溝部136bの長さが設定されている。
【0101】
<効果について>
以上のような構成の回転ロック(荷落下防止)装置100は、駆動軸25(軸状部材)に取り付けられ、駆動軸25(軸状部材)と一体的に回転するストッパ支持部材120と、駆動軸25(軸状部材)の軸心側から外方に向かってスライド可能な状態でストッパ支持部材120に支持されているストッパ部材140と、ストッパ部材140をストッパ支持部材120の所定の位置に保持する保持プレート130(保持手段)と、ストッパ部材140に対し保持プレート130(保持手段)を一方の回転方向である第1回転方向に向かって付勢する付勢バネ151(付勢手段)と、駆動軸25(軸状部材)を回転可能に支持するフレーム11,12に固定され、ストッパ部材140と係合することで駆動軸25(軸状部材)の回転を停止させるストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)と、を備えている。そして、駆動軸25(軸状部材)が第1回転方向に向かい回転を加速したときに、保持プレート130(保持手段)によるストッパ部材140の保持力を保持プレート130(保持手段)の慣性負荷により低下および/または解除すると共に、ストッパ部材140が所定の位置からストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)と係合する位置に突出することで、駆動軸25(軸状部材)の回転を停止させる。
【0102】
このような構成によって、駆動軸25(軸状部材)が一方の回転方向に所定の加速度を超える場合に、回転ロック(荷落下防止)装置100が作動して、回転を停止させることができる。また、駆動軸25(軸状部材)が他方の回転方向である第2回転方向に回転した状態で、所定の回転速度を越えた場合に、回転ロック(荷落下防止)装置100が作動するように、保持プレート130(保持手段)の構成を選択することが可能となる。
【0103】
さらに、駆動軸25(軸状部材)が一方の回転方向である第1回転方向へ加速回転した場合には、その加速度と回転速度の相乗作用によって、他方の回転方向への回転した場合の回転速度より低速で回転ロック(荷落下防止)装置100が作動するように設定することが可能となる。また、巻上機や昇降装置など負荷が一方向にのみ働く駆動装置において、ブレーキ装置70が故障するなどしても、巻上げまたは昇降駆動するための回転部材の回転をただちに停止させ、荷落下などによる事故を防止することができる。
【0104】
また、本実施の形態では、保持手段は、円板状の保持プレート130を有し、保持プレート130は、軸状部材の軸心を中心に回転可能に軸支される軸受け孔(中心孔132を有し、ストッパ支持部材120と保持プレート130は付勢手段(付勢ユニット150)で連結されていて、ストッパ部材140は、保持プレート130に向かって突出するストッパ突起141を有し、保持プレート130は、ストッパ突起141と係合しストッパ部材140をストッパ支持部材120の径方向における所定位置に保持する保持凸部137を有し、保持凸部137は、ストッパ部材140が径方向における所定位置で係合する第1規制壁136b1と、径方向における所定位置から外径側にストッパ部材140が突出した位置で係合する第2規制壁136c1とを有している。
【0105】
このような構成とすることで、第1回転方向に急加速で回転を開始した駆動軸25と一体で回転するストッパ支持部材120に対し、保持手段(保持プレート130)が所定の遅れを生じさせるまで、または、駆動軸25と保持手段(保持プレート130)が所定の相対角度を越えるまで、保持手段(保持プレート130)はストッパ部材140をストッパ収納部123の所定の位置に保持させることができる。また、保持凸部137の第1規制壁136b1の長さをストッパ部材140の大きさに係らず自由に設定することができる。
【0106】
また、本実施の形態の変形例では、軸状部材である駆動軸25が第1回転方向に向かって加速回転した際に、保持手段を構成する保持プレート130が付勢手段(付勢ユニット150)の付勢力に抗して、駆動軸25に対し第1回転と反対の方向に相対的に回転し、この相対的に回転した角度が、所定の角度を超えるまで、保持手段を構成する保持プレート130がストッパ部材140を半径方向の所定位置に保持する。
【0107】
このような構成とすることで、本発明の回転ロック装置100を例えば非常停止用ブレーキとして、レバーホイスト10等の巻上装置が備えた場合に、レバーホイスト10等の巻上装置の通常ブレーキ(ブレーキ装置70)より遅れて動作するように設定することができる。したがって、本発明の回転ロック装置100は、通常のレバーホイスト10等の巻上装置の使用状態では、通常ブレーキ(ブレーキ装置70)の作動を妨げずに済む。
【0108】
また、本実施の形態では、軸状部材(駆動軸25)は、チェーンC1が掛け回されたロードシーブ20に一体的に連結されている。
【0109】
このような構成とすることで、チェーンC1をロードシーブ20で巻上げまたは巻下げするホイストにおいて、荷の落下を確実に防止することが可能となる。
【0110】
また、本実施の形態では、一対のフレーム11,12に軸支され、荷を吊り上げるチェーンC1が掛け回されているロードシーブ20と、ロードシーブ20と減速ギヤ30を介して連結される駆動軸25と、駆動軸25に取り付けられているブレーキ装置70と、ロードシーブ20を巻上げおよび巻下げ方向に回転駆動操作する操作レバー50と、を備えているレバーホイスト10であって、駆動軸25の外周には、回転ロック(荷落下防止)装置100が配置されていて、ストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)はフレーム12に取り付けられている。
【0111】
このような構成とすることで、ブレーキ装置70が故障しても確実に荷の落下を防止することが可能となる。
【0112】
また、本実施の形態のレバーホイスト10(巻上機)は、駆動軸25(軸状部材)の周囲に取り付けられると共に外周側にラチェット歯83を有する爪車80と、ラチェット歯83に係合する爪部材90と、爪部材90の回動を軸支する爪軸115とを備え、ラチェット歯83と爪部材90との係合によって爪車80の巻上げ方向への回転は許容すると共に巻下げ方向への回転は不可とするラチェット機構(爪車80、爪部材90および爪軸115が対応)を備えたブレーキ装置70と、駆動軸25(軸状部材)の急激な回転をロックする回転ロック装置100と、を備えている。また、回転ロック装置100は、駆動軸25(軸状部材)に取り付けられ、駆動軸25(軸状部材)と一体的に回転するストッパ支持部材120と、駆動軸25(軸状部材)の軸心側から外方に向かってスライド可能な状態でストッパ支持部材120に支持されているストッパ部材140と、ストッパ部材140をストッパ支持部材120の所定の位置に保持する保持プレート130(保持手段)と、保持プレート130(保持手段)をストッパ部材140に対し巻下げ方向に向かって付勢する付勢ユニット150(付勢手段)と、ストッパ部材140が当接することで駆動軸25(軸状部材)の回転を停止させる係止壁114を有するストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)と、を有する。
【0113】
そして、駆動軸25(軸状部材)が巻下げ方向に向かい回転を加速したときに、保持プレート130(保持手段)によるストッパ部材140の保持力を保持プレート130(保持手段)の慣性負荷により解除することで、ストッパ部材140が所定の位置からストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)と係合する位置に突出し、駆動軸25(軸状部材)の回転を停止させると共に、それぞれのストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)には、爪軸115が一体化されていて、ストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)は、ステイボルトB1(締結部材)を介してフレーム12に取り付けられている。
【0114】
このように構成する場合には、ブレーキ装置70が故障した場合に生じる駆動軸25(軸状部材)の回転の加速により、保持プレート130(保持手段)によるストッパ部材140の保持力が保持プレート130(保持手段)の慣性負荷により解除される。それにより、ストッパ部材140が所定の位置からストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)と係合する位置に突出することで、駆動軸25(軸状部材)の回転を確実に停止させることができる。
【0115】
また、爪軸115はストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)に一体化されていて、そのストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)はステイボルトB1(締結部材)を介してフレーム12に取り付けられている。このため、爪軸115がフレーム12の孔部に圧入等によって取り付ける場合の取付強度と比較して、その強度を大幅に向上させることができる。
【0116】
また、本実施の形態では、ストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)は、駆動軸25(軸状部材)の周方向において異なる位置に一対設けられ、一方のストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)と他方のストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)の間には、スペースが設けられている。
【0117】
このように、一対のストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)の間にスペースSP1が設けられているので、ストッパ係止部材(ストッパ係止手段)が、ストッパ支持部材120および保持プレート130の外周側の全周に亘るように設けられている場合と比較して、ストッパ係止部材110の軽量化が可能となる。
【0118】
また、本実施の形態では、保持プレート130(保持手段)は、円板状の保持プレート130を有し、保持プレート130は、駆動軸25(軸状部材)の軸心を中心に回転可能に軸支される中心孔132(軸受け孔)を有している。また、ストッパ支持部材120と保持プレート130は付勢ユニット150(付勢手段)で連結されていて、ストッパ部材140は、保持プレート130に向かって突出するストッパ突起141を有し、保持プレート130は、ストッパ突起141と係合しストッパ部材140をストッパ支持部材120の径方向における所定位置に保持するガイド溝136を有し、ガイド溝136は、ストッパ部材140が径方向における所定位置で係合する第1規制壁136b1と、径方向における所定位置から外径側にストッパ部材140が突出した位置で係合する第2規制壁136c1とを有している。また、第1規制壁136b1は、中心孔132と同心の円弧で形成されている。
【0119】
このような構成によって、保持プレート130(保持手段)は、ストッパ支持部材120に対し同軸で滑らかに相対回転ができ、構造がシンプルで、回転ロック(荷落下防止)装置100の小型化が可能となっている。また、ストッパ支持部材120にストッパ部材140と2つの保持プレート130と付勢ユニット150を組み付け、連結部材R1で2枚の保持プレート130を所定の間隔で連結することで、1ユニット化することができる。また組み立て性も良好となる。なお、軸受け孔(中心孔132)は、ストッパ支持部材120の軸受ボス部122の外周で軸支されているが、駆動軸25(軸状部材)で直接軸支されるようにしても良い。
【0120】
また、このような構成とすることで、第1回転方向に急加速で回転を開始した駆動軸25(軸状部材)と一体で回転するストッパ支持部材120に対し、保持手段(保持プレート130)が所定の遅れを生じさせるまで、または、駆動軸25(軸状部材)と保持手段(保持プレート130)が所定の相対角度を越えるまで、保持手段(保持プレート130)はストッパ部材140をストッパ収納部123の所定の位置に保持させることができる。また、ガイド溝136の第1規制壁136b1の長さをストッパ部材140の大きさに係らず自由に設定することができる。それにより、ストッパ突起141がガイド溝136内を若干移動するだけでは、第1規制壁136b1でストッパ突起141の径方向への移動を規制することで、ストッパ部材140が外径側に移動しない状態に設定できるので、遊転操作においてチェーンC1を作業者が巻下げ方向に引っ張る作業が中断されずに済む。
【0121】
また、本実施の形態では、保持プレート130には、周方向に沿う遊間溝部136bが形成されていて、ストッパ突起141は当該遊間溝部136bに沿って移動可能であると共に、第1規制壁136b1は、遊間溝部136bのうち外径側の壁面である。
【0122】
このような構成とすることで、ストッパ突起141は、周方向に沿う遊間溝部136b内を摺動する構成となるので、遊間溝部136bの長さを適宜設定することで、回転ロック装置100が作動するタイミングを適切に調整することができる。
【0123】
また、本実施の形態では、ストッパ支持部材120には、ストッパ部材140を収納する凹状のストッパ収納部123が設けられていて、ストッパ部材140は外径側への非突出時には当該ストッパ収納部123に収納されていて、駆動軸25(軸状部材)の内径側であるストッパ収納部123の奥側には、円弧状の円弧底面123bが設けられていると共に、駆動軸25(軸状部材)の内径側には、ストッパ収納部123に係合するストッパ部材140の側面形状が円弧状の円弧面143が設けられている。
【0124】
このように、ストッパ収納部123の内径側(奥側)に円弧底面123bが設けられることで、ストッパ収納部123の奥側には、応力集中する部位が形成されずに済む。それにより、ストッパ支持部材120が破損せずに済む。また、ストッパ部材140にも円弧状の円弧面143が設けられることで、ストッパ部材140が係止壁114と衝突した際に、ストッパ部材140の鋭利な角部分がストッパ収納部123内の側壁123aに衝突せずに済む。そのため、側壁123aにダメージが生じるのを防止することができる。
【0125】
また、本実施の形態では、駆動軸25(軸状部材)が第1回転方向に向かって加速回転した際に、保持プレート130(保持手段)が付勢ユニット150(付勢手段)の付勢力に抗して、駆動軸25(軸状部材)に対し第1回転と反対の方向に相対的に回転し、該相対的に回転した角度が、所定の角度を超えるまで、保持プレート130(保持手段)がストッパ部材140を半径方向の所定位置に保持する。
【0126】
このような構成とすることで、レバーホイスト10等の巻上装置の通常ブレーキ(ブレーキ装置70)よりも、回転ロック装置100が遅れて動作するように設定することができる。したがって、本発明の回転ロック装置100は、通常のレバーホイスト10等の巻上装置の使用状態では、通常ブレーキ(ブレーキ装置70)の作動を妨げずに済む。
【0127】
また、本実施の形態では、巻上機はレバーホイスト10であり、一対のフレーム11,12に軸支され、荷を吊り上げるチェーンC1が掛け回されているロードシーブ20と、ロードシーブ20と減速ギヤ30を介して連結される駆動軸25(軸状部材に対応)と、ロードシーブ20を巻上げおよび巻下げ方向に回転駆動操作する操作レバー50と、を備えている。
【0128】
このような構成とすることで、レバーホイスト10は、ブレーキ装置70が故障しても確実に荷の落下を防止することが可能となる。
【0129】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態に係る、レバーホイスト10の回転ロック(荷落下防止)装置200について、図面に基づいて説明する。
【0130】
図11は、第2の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置200付近の構成を示す断面図である。図12は、図11に示す回転ロック(荷落下防止)装置200の構成を示す分解斜視図である。図13は、回転ロック(荷落下防止)装置200の構成を示すと共に、図12とは別の角度から見た状態を示す分解斜視図である。
【0131】
図11から図13に示すように、本実施の形態では、フレーム12の爪車80側には、プレート状の係止用プレート210が取り付けられていて、その係止用プレート210の中央側には、挿通孔211が設けられている。この挿通孔211には、駆動軸25、ストッパ支持部材220および保持プレート230が挿通されている。
【0132】
また、係止用プレート210には、挿通孔211の内壁面211aに沿って、内側突出部212と、係止凹部213とが設けられている。内側突出部212は、係止凹部213よりも内径側に突出している部分である。この内側突出部212は、後述するストッパ支持部材220および保持プレート230の外周面に対して若干の隙間を有する状態で対向している。それにより、ストッパ部材240を保持位置に支持しているストッパ支持部材120および保持プレート130の回転を支障しない構成となっている。なお、本実施の形態では、内側突出部212は、周方向において180度間隔で2つ設けられている。
【0133】
また、係止凹部213は、内側突出部212に連続して周方向に位置する部分である。本実施の形態では、図11に示すように、係止凹部213は、内壁面211aのうち、一対の内側突出部212の間の部分となっていて、係止凹部213の周方向長さが長く設けられている。しかしながら、内側突出部212の周方向長さを係止凹部213よりも長く形成しても良い。ただし、係止凹部213の周方向長さを短くする場合でも、係止凹部213の内部に後述するストッパ部材240が入り込める長さと深さを有することが必要である。係止凹部213の位置する内壁面211aの駆動軸25の軸心からの半径は一定で、ストッパ部材240の突出を所定範囲内に規制するようになっている。ここでは、ストッパ部材240の長さの約三分の1の長さ部分が、係止凹部213内に突出できるようになっている。
【0134】
また、内側突出部212には、係止壁214が設けられている。係止壁214は、係止凹部213内に突出し、一方の回転方向(巻下げ方向)に回転するストッパ部材240が衝突することでロードシーブ20の回転を停止させるための壁面である。このため、係止壁214はストッパ部材240を回転軸芯方向に押し戻さない形状となっており、ストッパ部材240の側面も、係止壁214との衝突で押し戻されない形状となっている。
【0135】
なお、本実施の形態では、図11に示すように、内側突出部212のうち、係止壁214とは反対側の内壁面211aは、テーパ壁215となっている。テーパ壁215は、径方向に対して傾斜している壁面であり、係止凹部213の駆動軸25における巻下げ方向の端部に係止壁214が位置し、巻上げ方向端部にテーパ壁215が位置する。テーパ壁215は係止凹部213に突出したストッパ部材240を、駆動軸25を巻上げ方向に回転させることで係止凹部213から軸心方向に押し戻すための壁面である。なお、内側突出部212および係止凹部213は、1つのみ設けられていても良く、3つ以上設けられていても良い。テーパ壁215は係合解除壁に対応する。また、テーパ壁215の代わりに係止壁を配置するようにしても良い。この場合は、駆動軸25を巻上げ方向に回転させてもストッパ部材240は係止凹部213に突出する状態が維持され、巻上げ方向への回転もこの係止壁により規制される。
【0136】
なお、本実施の形態のストッパ支持部材220は、第1の実施の形態におけるストッパ支持部材120と類似する構成となっている。具体的には、ストッパ支持部材220は、上述した中心孔121、軸受ボス部122、ストッパ収納部123および差込穴124と同様の中心孔221、軸受ボス部222、ストッパ収納部223および差込穴224を備えている。このストッパ支持部材220は、中心孔221において駆動軸25に取り付けられることで、駆動軸25と一体的に回転する。なお、ストッパ支持部材220の駆動軸25に対する取り付けは、たとえば止めねじ、キー結合、スプライン結合等、必要なトルクを伝達できればどのようなものであっても良い。
【0137】
次に、保持プレート230について説明する。なお、保持プレート230は、保持ピン250と共に保持手段を構成する。保持プレート230には、円盤状の回転板部231が設けられていて、その回転板部231の径方向の中央には、中心孔232が設けられている。この中心孔232に軸受ボス部222が嵌め込まれることで、保持プレート230は、ストッパ支持部材220に対して同軸で回動可能に支持されている。なお、回転中心から保持プレート230の最外周までの距離(すなわち半径)は、ストッパ支持部材220の最外周までのそれと同程度となっている。しかしながら、ストッパ支持部材220と保持プレート230のうちのいずれか一方の半径が大きく設けられていても良い。
【0138】
なお、保持プレート230は、1枚で保持ピン250を片持ちで支持するように構成しているが、作用する負荷が大きい場合には、ストッパ支持部材220を挟んで2枚の保持プレートを配置する。そして、保持プレート230同士を連結部材で連結すると共に、2枚の保持プレート230で保持ピン250の両端をそれぞれ保持するようにしても良い。或いは、保持ピン250自身で両保持プレート230を連結するようにしても良い。
【0139】
また、回転板部231の外周側には、周壁部233が立設している。そして、回転板部231および周壁部233で囲むことで、ストッパ支持部材220に対し回動可能な範囲が規定される。以下の説明では、かかるストッパ支持部材220に対し回動可能な部分を、遊嵌部234とする。周壁部233は、保持プレート230の慣性負荷を増加する重りに相当し、周壁部233を保持プレート230の外周側に設けることで、回転板部231の厚さを薄くできるなど、全体の小型化・軽量化に寄与している。かかる周壁部233の構成は、特に低速で回転する軸状部材への適用に効果を発揮する。
【0140】
ここで、ストッパ支持部材220の回動範囲を規定するためには、周壁部233には、回動範囲の一端側を規定する第1周壁部233aと、回動範囲の他端側を規定する第2周壁部233bとが設けられている。ただし、第1周壁部233aと第2周壁部233bとは、連続して一体的に設けられていても良い。また、第1周壁部233aと第2周壁部233bとの間には、ストッパ支持部材220を位置させるための開口部235が設けられている。したがって、ストッパ支持部材120の外周側は、開口部235から露出した状態で、規定の角度範囲だけ回動可能に設けられている。
【0141】
なお、後述するストッパ部材240の保持状態では、第1周壁部233aにストッパ支持部材220が当接するが、この位置が保持位置に対応する。また、第1周壁部233aからストッパ支持部材220が離れてストッパ部材240の保持が解除された解除位置は、保持解除位置に対応する。なお、対象とする駆動軸25の加速度が非常に大きい場合に回転ロック装置が作動すれば良いように装置を設定するには、周壁部233を省略した方が良い場合がある。
【0142】
また、上述したストッパ収納部223には、ストッパ部材240が収納されている。ストッパ部材240は、ストッパ収納部223に対し、収納位置から遠心方向にスライド可能な状態で収納されている。ただし、ストッパ収納部223の他方の側壁223aには、該側面から凹むように後述する保持ピン250を、遊びをもって位置することを可能とする遊間部223bを有している。この保持ピン250がストッパ部材240と係合するための保持凹部241が、遊間部223bに面するストッパ部材240の側面に設けられている。この保持凹部241と保持ピン250の係合状態を維持することで、ストッパ部材240がストッパ収納部223の所定の位置(収納位置)に収納されている状態が維持される。
【0143】
なお、図11に示すように、ストッパ収納部223にストッパ部材240が所定の位置に収納された状態では、ストッパ部材240の最外周面は、回転軸中心に対してストッパ支持部材220のそれと同程度の距離に設けられている。また、保持プレート230の回転軸中心から最外周面までの距離とも同程度に設けられているのが良い。なお、ストッパ部材240は、駆動軸25の回転の支障とならないように、回転中心から離間する外周面の寸法が設定されていることが必要である。
【0144】
また、図11および図12に示すように、保持プレート230には、保持ピン250が取り付けられている。保持ピン250は、保持プレート230の中空円盤状の回転板部231に垂直に形成された取付孔231aにその一端を差し込むことで取り付けられている。このため、保持ピン250は、保持プレート230と一体的に回転する。この保持ピン250は、上述した保持凹部241に嵌まり込むことで、ストッパ収納部223にストッパ部材240が収納された状態を維持する。保持ピン250は、遊間部223b内で保持凹部241に対し嵌合、離脱可能に移動できるようになっている。従って、遊間部223bの保持ピン250とストッパ支持部材220の隙間の大きさに応じて、保持プレート230はストッパ支持部材220に対する相対回転が規制されることになるが、前述の通り、周壁部233とストッパ支持部材220との当接によって相対回転が規制されるようにしても良い。
【0145】
なお、保持ピン250は保持手段の一部に対応し、中空円板状の回転板部231、周壁部233と一体的である。
【0146】
また、ストッパ部材240がストッパ収納部223の所定位置に収納された際に、保持凹部241に保持ピン250が嵌まり込んで、ストッパ部材240がストッパ収納部223に収納された状態を維持するために、回転ロック(荷落下防止)装置200には、付勢ユニット260が設けられている。なお、図11に示すように、本実施の形態では、付勢ユニット260は、遊嵌部234のうち開口部235とは反対側に配置されているが、ストッパ部材240がストッパ収納部223に収納された状態を維持可能であれば、どのような位置に配置されても良い。
【0147】
なお、付勢ユニット260は、上述した第1の実施の形態における付勢ユニット150と類似した構成となっている。具体的には、付勢ユニット260は、付勢バネ151と同様の付勢バネ261と、一端掛止ピン152と同様の一端掛止ピン262とを有している。加えて、付勢ユニット260は、他端掛止ピン263を有している。
【0148】
他端掛止ピン263は、保持プレート230の回転板部231に形成された取付孔231bに差し込むことで取り付けられていると共に、付勢バネ261の他端側が掛けられる部材である。
【0149】
ここで、一端掛止ピン262のうち付勢バネ261が掛けられている作用点と、他端掛止ピン263のうち付勢バネ261が掛けられている作用点とは、回転中心に対して所定の角度θだけ異なっている。したがって、付勢バネ261は、この角度θが小さくなるように付勢力を与えている。なお、かかる付勢力は、保持凹部241に対して保持ピン250を当接させる向きの付勢力となっている。
【0150】
なお、図14は、ストッパ部材240が係止凹部213に突出し係止壁214に当接した状態、すなわち、回転ロック装置200が作動し駆動軸25の回転をロックした状態を示す図である。図15は、図14のうち、ストッパ部材240付近を拡大して示す図である。図6および図7に示すように、ストッパ部材240の下端には保持ピン250と当接する傾斜面242が設けられている。傾斜面242の接線L1は側壁223aに対し角度αをなしている。この角度αは、45度か、または45度付近が好適であるが、それ以外の傾斜角度であっても良い。
【0151】
<作用について>
以上のような構成の回転ロック(荷落下防止)装置200において、レバーホイスト10の巻上げ操作において、ブレーキ装置70が破損するなどして、駆動軸25が吊り荷重などによるチェーンC1に掛かる張力によって巻下げ方向に加速回転を開始するときを考える。
【0152】
最初に、チェーンC1に掛かる張力により、ブレーキ力を失った駆動軸25およびストッパ支持部材220は、ストッパ部材240と共に図11における反時計方向である一方の回転方向(巻下げ方向)に急激な回転速度の上昇が生じる。このとき、付勢バネ261の付勢力は、保持手段(保持プレート230および保持ピン250)をストッパ部材240の回転に追従させようと働く。しかし、保持手段(保持プレート230および保持ピン250)に働く慣性力により保持ピン250がストッパ部材240の保持凹部241を押圧する押圧力が最初に相殺される。更に追従可能な加速度を上回る加速度で駆動軸25がストッパ支持部材220とストッパ部材240と共に加速回転すると、保持手段(保持プレート230および保持ピン250)は、その回転に追従できず、保持手段(保持プレート230および保持ピン250)の保持ピン250がストッパ部材240の保持凹部241から離脱を開始する。更に、加速回転を続けると、保持ピン250は保持凹部241から完全に離脱し保持ピン250と保持凹部241との係合が解除される。保持手段(保持プレート230および保持ピン250)による保持力を失ったストッパ部材240は、ストッパ支持部材220のストッパ収納部223から係止用プレート210の内壁面211aに向って突出可能となる。そして、ストッパ部材240を遠心方向に付勢する図示しないバネ等による遠心手段、または図11に例示するようにバネによる遠心手段は設けずに、ストッパ部材240に働く遠心力によって遠心方向にスライドし係止凹部213内にストッパ部材240の先端側が突入する。
【0153】
このようにして、係止凹部213にストッパ部材240が入り込む。そして、その入り込みの後に、ストッパ部材240はストッパ支持部材220に支持された状態でその一方の側面は係止壁214に衝突する。それにより、ストッパ支持部材220および駆動軸25の一方の回転方向(巻下げ方向)への回転は停止させられ、荷の落下が停止する。
【0154】
また、上記のような駆動軸25の停止後、ストッパ部材240が不用意にストッパ収納部223に戻らないように保持ピン250はストッパ部材240の後端を押圧付勢し、ストッパ部材240と係止壁214の係合を維持する。
【0155】
一方、ブレーキ装置70が破損している状態であって、比較的軽い荷を巻上げている場合を考える。このとき、レバーホイスト10の内部機構の抵抗により、荷の急激な落下は生じないものの、駆動軸25の回転速度は徐々に上昇していく。
【0156】
この場合、最初に、チェーンC1に掛かる張力により、ブレーキ力を失った駆動軸25およびストッパ支持部材220は、ストッパ部材240と共に巻下げ方向(図11における反時計方向である一方の回転方向)に回転速度の上昇が生じる。このとき、付勢バネ261の付勢力は、保持手段(保持プレート230および保持ピン250)をストッパ部材240の回転に追従させようと働く。そして、ストッパ部材240がストッパ支持部材220と駆動軸25と共に加速回転を開始しても、保持手段を追従する方向に加速させられる加速度を上回る加速度に達しない場合は、保持手段(保持プレート230および保持ピン250)はその回転に追従し、保持ピン250と保持凹部241との係合は解除されず、保持が継続される。ただし、保持ピン250がストッパ部材240の保持凹部241を押圧する押圧力は回転加速度によって減少する。
【0157】
さらに、加速回転の継続によって、駆動軸25の回転速度が上昇しストッパ部材240に働く遠心力が保持凹部241を押圧する保持ピン250の押圧力による保持力を上回ると、ストッパ部材240は保持位置から内壁面211aに向って突出する。そして、ストッパ部材240の側面は係止壁214に衝突し、ストッパ支持部材220は駆動軸25と共に回転を停止する。
【0158】
次に、ブレーキ装置70が正常に作動している状態を考える。レバーホイスト10においては、そのレバーホイスト10特有の遊転機構を備えるのが一般的である。遊転機構を働かせている状態では、チェーンC1を作業者が手で引っ張ってレバー操作で操作するより速い速度でチェーンC1の長さを調整することが可能となるように、ブレーキ装置70のブレーキ力を一時的に働かないようにしている。ただし、安全上、巻下げ方向には所定の張力が働くとブレーキ装置70が作用して駆動軸25の回転を停止させる機構となっている。一方、レバーホイスト10に採用されている爪車80を有するブレーキ装置70は、巻上げ方向にはブレーキが働かないので、巻下げ方向よりも速い速度でチェーンC1の長さを調節することが可能となっている。かかる状況のレバーホイスト10においては、回転ロック(荷落下防止)装置200も巻上げ方向(他方の回転方向)には出来るだけ作用しない方が、作業性が良好となる。
【0159】
チェーンC1を作業者が巻上げ方向に引っ張った場合、ロードシーブ20は巻上げ方向に回転し、駆動軸25、ストッパ支持部材220、ストッパ部材240も巻上げ方向に回転する。このとき、ストッパ部材140の保持凹部241は、保持手段の保持ピン250を巻上げ方向に押圧するので、ストッパ部材240を保持する保持力は減少しない。したがって、駆動軸25の回転方向によってストッパ部材240を保持する保持力が異なる。すなわち、巻下げ方向と巻上げ方向ではストッパ部材240がストッパ収納部123の所定位置から遠心方向に突出する駆動軸25の回転数などの条件を別々に設定可能となっている。
【0160】
図16は、図11のうち、ストッパ部材240付近を拡大して示す図である。ストッパ部材240をストッパ支持部材220の所定の位置に保持する保持力は、保持ピン250の押圧力の他に、ストッパ収納部223の側壁223aと保持凹部241と保持ピン250が接する接線L2の成す角度βによって決まる。詳述すると、ストッパ部材240をスライド可能にガイドする側壁223aと、保持凹部241と保持ピン250が接する接線L2とのなす角度βが90度以上では、保持ピン250による押圧力が小さくてもストッパ部材240が遠心方向に飛び出すことはない。また、側壁223aと接線L2のなす角度βを45度程度とすると、保持ピン250の押圧力と同等以上の遠心力が作用するとストッパ部材240は押圧力に抗して遠心方向に飛び出すことになる。
【0161】
したがって、回転ロック装置200が、駆動軸25の回転速度が高速になっても作動せず、駆動軸25の回転する加速度が所定の値以上になったときにだけ作動させるには、側壁223aと接線L2のなす角度βを90度以上となるように、保持ピン250と保持凹部241の形状や位置関係を適宜設定することで可能となる。一方、所定の回転速度を越えた場合に回転ロック装置200を作動させたい場合は、この成す角度βを90度未満、実用的には75度以下となるように設定する。なお、保持ピン250の断面形状が、図11および図16に示すように円形の場合には、保持凹部241に嵌まり込む深さが保持ピン250の半径までの範囲においては、その深さによって角度βが変化するので、保持力が変化する。また、この接線L2との成す角度βが0度でも、所定の摩擦力を生じる構成を選択することによって保持力を得ることも可能となる。
【0162】
図14および図16に示すように、ストッパ部材240は、傾斜面242によって、保持ピン250の押圧力の分力で、外径側に突出するように保持している。押圧力の分力を超える力でストッパ部材240を軸心方向に押圧すると、ストッパ部材240は押し戻される。駆動軸25を操作レバー50によって巻上げ方向に回転させるとストッパ部材240は係止壁214から離れ、係止凹部213の反対側に設けられたテーパ壁215にストッパ部材240の先端部が当接する。更に駆動軸25を巻上げ方向に回転させると、ストッパ部材240の先端はテーパ壁215に押され軸心方向に押し戻される。この間、保持ピン250は、ストッパ部材140の側壁を押圧し続ける。保持ピン250とストッパ部材240の接点が保持凹部241に移動すると、保持ピン250の押圧力の分力によってストッパ部材240を軸心方向にスライドさせ、所定の位置で保持する。
【0163】
なお、図14および図15に示すように、係止壁214はストッパ部材240が当接した状態でストッパ収納部223の側壁223aと平行になるように設定されている。したがって、係止壁214から受ける押圧力によるストッパ部材240を軸心方向に押し戻す分力は発生しない。
【0164】
<効果について>
このような構成とする場合には、上述した第1の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置100と同様の効果を生じさせることが可能となる。
【0165】
また、本実施の形態では、保持手段の保持プレート230は、円板状の回転板部231を有し、回転板部231には、駆動軸25の軸心を中心に回転可能に軸支される軸受け孔(中心孔232)を有し、ストッパ支持部材220と回転板部231は付勢バネ261(付勢手段)で連結されている。
【0166】
このような構成によって、保持手段は、ストッパ支持部材220に対し同軸で滑らかに相対回転ができ、構造がシンプルで、回転ロック(荷落下防止)装置200の小型化が可能となっている。また組み立て性も良好となる。なお、軸受け孔(中心孔132)は、ストッパ支持部材220の軸受ボス部222の外周で軸支されているが、駆動軸25(軸状部材)で直接軸支されるようにしても良い。
【0167】
また、本実施の形態では、ストッパ部材240のうち第1回転方向の側面と反対側の側面(図3においてストッパ部材240の右側の側面)には、保持ピン250と係合する保持凹部241が設けられている。このような構成とすることで、保持ピン250とストッパ部材240との摩擦力等による保持よりも一層確実に、ストッパ部材240が突出するための作動しきい値を精度良く設定することができる。
【0168】
また、本実施の形態では、係止用プレート210(ストッパ係止手段)は、ストッパ支持部材220を駆動軸25(軸状部材)の軸心回りに回転自在とする挿通孔211と、挿通孔211の内壁面211aから外径側に向かい凹んでいると共に、ストッパ支持部材220の外周から突出したストッパ部材240が入り込む係止凹部213と、係止凹部213のうち第1回転方向の端部側に設けられ、ストッパ部材240が当接することで駆動軸25(軸状部材)の回転を停止させる係止壁214と、を有している。
【0169】
このような構成とすることで、駆動軸25(軸状部材)を回転可能に保持する平板状のフレーム12への取り付けが容易となる。また、挿通孔211へのストッパ支持部材220およびストッパ部材240等の配置により、回転ロック(荷落下防止)装置200としての作動部分を外部から確実かつ容易に隔離することが可能となる。
【0170】
また、本実施の形態では、係止用プレート210(ストッパ係止手段)は、係止凹部213のうち第1回転方向と反対方向の第2回転方向の端部側に向かうにつれて軸心に向かって徐々に突出するテーパ壁215(係合解除壁)を有していて、テーパ壁215(係合解除壁)は、ストッパ部材240を当接させた状態で、駆動軸25(軸状部材)を第2回転方向に回転させることで、ストッパ部材240が突出位置から押し戻される。
【0171】
このような構成とすることで、一旦ストッパ支持部材220の所定の位置から遠心方向に移動したストッパ部材240を、駆動軸25(軸状部材)を他方の回転方向(巻上げ方向)に回転させるだけで、回転ロック(荷落下防止)装置200(レバーホイスト10)を分解することなく所定の位置に押し戻すことが可能となる。
【0172】
<変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0173】
上述の各実施の形態では、回転ロック(荷落下防止)装置100が、レバーホイスト10に適用された場合について説明している。しかしながら、上記の回転ロック(荷落下防止)装置は、たとえばチェーンブロック等のような、レバーホイスト以外の巻上機や、あるいは巻上装置と同様に負荷の方向が一定の昇降装置などに適用しても良い。
【0174】
また、上述の第1および第2の実施の形態では、たとえば図7から図9、および図14から図16に示すように、保持プレート130,230に対して、ストッパ部材140,240が周方向に移動可能な構成となっている。また、ストッパ支持部材120,220と保持プレート130,230とは、付勢ユニット150,260を介して連結されている。しかしながら、本発明は、このような構成には限られない。たとえば、図17および図18に示すように、鉄球のような保持球133,252が保持手段に対応し、さらにストッパ支持部材120,220に、付勢手段に対応する付勢バネ151,261を収納する収納凹部125,225を設け、この付勢バネ151,261によって付勢される保持球133,252がストッパ部材140,240の保持凹部144,241に係合する構成とする。また、ストッパ部材140,240は、遠心付勢バネ160,270で常に外径側に付勢される状態とする。また、ストッパ部材140,240のうち、保持凹部144,241とは反対側の側面には、抜け止め用の突部145,243を設ける。また、ストッパ支持部材120,220のうち、中心孔121,221よりも外径側には、突部145,243が入り込んで抜け止めとして機能するための抜け止め凹部126,226を設ける。また、保持手段は、保持球133,252のような鉄球の他にローラ形状または、角柱や多角形断面の柱状体でも良い。
【0175】
このように構成しても、上述した回転ロック(荷落下防止)装置100,200と同様に、駆動軸25(軸状部材)が一方の回転方向に所定の加速度を超える場合に、回転ロック(荷落下防止)装置100,200が作動して、回転を停止させることができる。また、ストッパ部材140が外径側に飛び出しても、突部145が抜け止め凹部126から抜けないため、ストッパ部材140がストッパ収納部123から抜けるのが防止される。したがって、ストッパ部材140のストッパ収納部123からの抜け防止のためにストッパ支持部材120の全周に亘ってストッパ支持部材120を配置する必要がなくなる。したがって、ストッパ係止部材110は、たとえば一対設ける等の構成とすることができ、そのような一対のストッパ係止部材110の間に、大きなスペースSP1を形成することができる。また、一対のストッパ係止部材110の軽量化を図ることも可能となる。
【0176】
また、回転ロック(荷落下防止)装置100,200は、巻上機の駆動軸に配置するように例示しているが、その取り付け位置は駆動軸に限定されず、例えばロードシーブや巻取りドラムの軸部のように、対象とする回転部材と一体的に回転する軸状部材に、回転ロック(荷落下防止)装置100,200を配置することができる。そうすることによって、減速機構などが破損しても荷の落下を防止することができる。
【0177】
図19は、保持ピン250とストッパ部材240の係合方法に関する変形例を示す図である。また、図20は、図19に示す状態から、ストッパ部材240が突出して係止壁214に係合した状態を示す図である。図19に示す状態では、保持ピン250はストッパ部材240の先端を覆うように位置している。この状態から、ストッパ支持部材220が急加速で巻下げ方向に回転した場合に、保持ピン250は追従できずに取り残され、ストッパ部材240の先端面との係合が解除される。すると、ストッパ部材240は、係止凹部213に突出可能となる。そして、図20に示すように、ストッパ部材240が突出すると、係止壁214とストッパ部材240が係合して回転をロックする。このとき、保持ピン250は、付勢ユニット260の付勢力によって、突出したストッパ部材240の側面に形成されている戻り規制用凹部253と係合し、ストッパ部材240の不用意な戻りを規制することができる。
【0178】
図21は、保持手段の変形例を示す正面図であり、図22は、図21に示す保持手段の側断面図である。図21および図22に示す構成では、保持プレート230が2枚設けられていて、この2枚の保持プレート230で、ストッパ支持部材220とストッパ部材240を挟み込む構成となっている。なお、2枚の保持プレート230は、連結部材R1で連結されているが、2枚の保持プレート230は所定の間隔を有する状態で、連結部材によって一体的に連結される。
【0179】
また、図22に示すように、保持ピン250は、2枚の保持プレート230にその両端部を支持されている。2枚の保持プレート230は、ストッパ支持部材220のボス部227の外周で回転可能に軸支されている。ストッパ支持部材220と保持プレート230は、付勢ユニット260により連結され、その付勢ユニット260は、ストッパ支持部材220に対し巻下げ方向に保持プレート230を回転付勢している。すなわち、ストッパ支持部材220が巻き下げ方向に回転する時、保持プレート230は付勢ユニット260によってその回転に追従する方向に付勢されている。なお、保持ピン250と連結部材R1を一体に構成するようにしても良いが、図21および図22に示す構成では、保持ピン250と連結部材R1は別体的に設けられていて、また連結部材R1は4個設けられている。あるいは、連結部材R1の機能を、保持ピン250と他端掛止ピン263に兼用させるようにしても良い。
【0180】
レバーホイストやチェーンブロックに採用されているブレーキ装置は、爪車80と爪部材90を備えたブレーキ装置70で構成されている。このブレーキ装置70は、巻下げ方向にのみブレーキ力が作用するが、爪車80のラチェット歯83の歯数で決まる所定角度(ピッチ角度)の範囲で、ブレーキ力が作用せず空転し巻き下がる。その為、ブレーキ装置70と同軸に回転ロック装置200を取り付けると、ブレーキ装置70よりも早く回転ロック装置200が働くことがある。しかしながら、回転ロック装置200は非常ブレーキであり、通常作動することは好ましくない。そこで、図21および図22に示す変形例では、ブレーキ装置70より遅延して回転ロック装置200が作動するようにしている。
【0181】
すなわち、爪車80は、巻上げ操作途中で操作を中断すると、最大で一周を歯数で分割した角度(ピッチ角度)分だけ、巻き下げ方向に空転する。この角度を図20に示す角度γとする。この場合、回転ロック装置200も角度γより大きい角度だけ遅延して作動することが好ましい態様となる。このために、ストッパ部材240の収納状態において、保持ピン250と係合する保持凹部241の深さを少なくとも角度γ分深くする。そして、ストッパ支持部材220に対して、保持プレート230が角度γ以上、駆動軸25およびストッパ支持部材220に対し、巻下げ方向とは反対の第2の回転方向に相対回転するまで、ストッパ部材240の保持を維持するようにすることが好ましい。
【0182】
ストッパ部材240の保持凹部241は、保持ピン250の軌跡によって定まるが、保持凹部241の外周側内壁は、軌跡に対し所定の隙間を設けるようにするのが、製作が容易となる。ここで、回転ロック装置200の作動をブレーキ装置70より遅延させるには、保持凹部241の深さの代わりに、付勢ユニット260の付勢バネ261のバネ圧によっても調整することができる。付勢バネ261のバネ圧を上げることで遅延するようになるが、低荷重ではブレーキ装置70が故障しても作動しない範囲が増加するので、保持凹部241の深さ(駆動軸25の軸心周りで保持凹部241の深さが成す角度)で調整するようにするのが良い。
【0183】
また、第1の実施の形態においては、図5から図10におけるガイド溝136を省略し、第1規制壁と第2規制壁を有する保持凸部137を保持プレート130からストッパ部材140側に突出させ、ストッパ突起141との係合によりストッパ部材140の作動を制御するようにしても良い。この場合、内側壁136a1の代わりに、ストッパ支持部材120と保持プレート130の相対回転を所定範囲に規制する相対回転規制突起を保持プレートに追加すればよい。また、ストッパ部材140の遠心方向への飛び出しを規制するのは、係止用プレートの110の内壁面111aで代用できる。
【0184】
また、効果は限定されるが、図5から図10における戻り規制溝部136cを省略し、その代わりに図17に示すような遠心付勢バネ160を備え、回転ロック装置が作動したらストッパ部材140が元の位置に戻らないようにしても良く、あるいは、回転ロック装置を取り付ける巻上装置の仕様によっては、戻り規制溝部136cを省略するだけで、遠心付勢バネ160は追加しなくても良い。また、戻り規制溝部136cは備えるが、第2規制壁136c1は省略するようにしても良い。傾斜壁である第2規制壁136c1の代わりに遊間溝部136bの様な駆動軸25の軸心を中心とする円弧状の壁面であっても良く、傾斜壁と円弧状の壁面の組み合わせであっても良い。
【0185】
更にまた、図示は省略するが、ストッパ部材140側にガイド溝、保持プレート130側にガイド溝と係合するガイドピンを備えるようにしても良い。
【0186】
保持プレート130は2枚でストッパ支持部材120を挟みこむように配置されることが好ましいが、1枚の保持プレート130だけでストッパ支持部材120に隣接配置する構成としても良い。
【0187】
保持プレート130,230は2枚でストッパ支持部材120,220を挟みこむように配置されることが好ましいが、1枚の保持プレート130,230だけでストッパ支持部材120,220に隣接配置する構成としても良い。
【0188】
また、係止壁114,214にストッパ部材140,240が衝突した際に、ストッパ部材140,240が倒れるように構成しても良い。このような構成例を、図21に示す。なお、図21は、第1の実施の形態における回転ロック装置100に適用した場合を示しているが、第2の実施の形態における回転ロック装置200に適用しても良い。図23は、本発明の変形例に係り、ストッパ収納部123の開口部付近に傾斜壁127が設けられていると共に、ガイド溝136を透過的に示す図である。図23に示す構成では、ストッパ収納部123の開口側の一方側(図23では左側;時計回り側)に、ストッパ支持部材120の径方向に対して傾斜している傾斜壁127が設けられている。
【0189】
このような構成では、係止壁114に対してストッパ部材140が衝突すると、ストッパ突起141を支点としてストッパ部材140が時計回り方向に回動する(倒れる)。そして、ストッパ部材140が傾斜壁127に衝突して、ストッパ部材140の回動が停止する。このとき、ストッパ部材140は、係止壁114の角部114aと傾斜壁127との間に挟まれる。このとき、ストッパ部材140は、矢示A方向の力を傾斜壁127に与える。この矢示Aの力の向きは、ストッパ支持部材120の周方向に対して傾斜している。したがって、幅広片部120bには、周方向に沿うような力が作用しない。
【0190】
ここで、図4から明らかなように、幅広片部120bの周方向の厚さ寸法は、図23における矢示A方向の寸法よりも小さい。したがって、係止壁114にストッパ部材140が衝突しても、傾斜壁127が存在することにより、幅広片部120bに与えられる力の向きが、周方向から矢示A方向へと変換される。このため、係止壁114とストッパ部材140の衝突時の衝撃に対するストッパ支持部材120の強度を向上させることができる。
【0191】
また、上述の第1の実施の形態では、ストッパ支持部材120は円弧底面123bを有すると共に、ストッパ部材140は円弧底面123bに対応する円弧面143を有している。しかしながら、ストッパ支持部材120は円弧底面123b以外に角形の底面を有していても良く、また角形の底面のうちコーナー部分をR形状とした中間的な形状であっても良い。また、円弧底面123bに対応する円弧面143も、角形の面を有していても良く、また角形の面のうちコーナー部分をR形状とした中間的な形状であっても良い。
【0192】
また、上記の第1の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置100の構成を、第2の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置200に適用しても良く、それとは逆に、上記の第2の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置200の構成を、第1の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置100に適用しても良い。たとえば、第2の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置200においては、係止用プレート210に代えて、第1の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置100の一対のストッパ係止部材110(爪軸115を有するもの)を適用しても良い。また、第2の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置100においては、一対のストッパ係止部材110に代えて、第2の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置200の係止用プレート210を適用しても良い。
【符号の説明】
【0193】
10…レバーホイスト、11,12…フレーム、12a…貫通孔、12b…軸孔、13…ケーシング、14…ブレーキカバー、14a…フランジ部、14a1…挿通孔、15…ロックカバー、15a…立ち上がり部、15b…対向面、15b1…通し孔、20…ロードシーブ、20a…挿通孔、21…ロードギヤ、25…駆動軸(軸状部材に対応)、26…雄ネジ部、27…ピニオンギヤ、30…減速ギヤ、31…大径ギヤ部、32…小径ギヤ部、34…ギヤボックス、35…メネジ部材、36…雌ネジ部、37…切換歯車、40…切換爪、45…切換ツマミ、50…操作レバー、55…カム部材、60…遊転ニギリ、70…ブレーキ装置、71…ブレーキ受け、71a…フランジ部、71b…中空ボス部、72a,72b…ブレーキ板、80…爪車(ラチェット機構の一部に対応)、83…ラチェット歯、90…爪部材(ラチェット機構の一部に対応)、91…爪軸、92…ブッシュ、93…ねじりばね、93a…コイル部、100,200…回転ロック(荷落下防止)装置、110…ストッパ係止部材(ストッパ係止手段に対応)、111…取付孔、111a…内壁面、112,212…内側突出部、113…凹状部、114,214…係止壁、114a…角部、115…爪軸(ラチェット機構の一部に対応)、116…リブ、120,220…ストッパ支持部材、120a…幅狭片部、120b…幅広片部、121,221…中心孔、122,222…軸受ボス部、123,223…ストッパ収納部、123a,223a…側壁、123b…円弧底面、124,224…差込穴、125,225…収納凹部、126,226…抜け止め凹部、127…傾斜壁、130,230…保持プレート(保持手段の一部に対応)、131…孔部、132,232…中心孔、133,252…保持球(保持手段に対応)、136…ガイド溝、136a…許容溝部、136a1…内側壁、136b…遊間溝部、136b1…第1規制壁、136c…戻り規制溝部、136c1…第2規制壁、137…保持凸部、137a…凸部先端部、140,240…ストッパ部材、141…ストッパ突起、142…外周面、143…円弧面、144,241…保持凹部、145…突部、150,260…付勢ユニット(付勢手段に対応)、151,261…付勢バネ、152,262…一端掛止ピン、160,270…遠心付勢バネ、210…係止用プレート(ストッパ係止手段に対応)、211…挿通孔、211a…内壁面、213…係止凹部、215…テーパ壁、223b…遊間部、227…ボス部、231…回転板部、231a,231b…取付孔、233…周壁部、233a…第1周壁部、233b…第2周壁部、234…遊嵌部、235…開口部、242…傾斜面、243…突部、250…保持ピン、、253…戻り規制用凹部、263…他端掛止ピン、B1…ステイボルト(締結部材に対応)、B1a…第1段差部、B1b…第2段差部、B1c…雄ネジ部、C1…チェーン、N1…ナット、R1…連結部材、S1…隙間、SP1…スペース、W…ワッシャ
図1
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