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特許7372018冷却ファン制御装置、冷却装置、および、冷却ファン制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】冷却ファン制御装置、冷却装置、および、冷却ファン制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/04 20060101AFI20231024BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20231024BHJP
   F01P 5/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F01P7/04 J
E02F9/00 M
F01P5/02 H
F01P7/04 P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019174447
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021050666
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】原 桂吾
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-167113(JP,A)
【文献】特開2004-194495(JP,A)
【文献】特開2006-333556(JP,A)
【文献】特開2015-048774(JP,A)
【文献】特開2018-009517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F01P 5/02
F01P 7/04
F02D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電源からの給電により駆動され、主とする冷却対象がそれぞれ異なる複数の冷却ファンの回転数をそれぞれ制御する冷却ファン制御装置であって、
給電源の電力容量と、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和と、に基づき、冷却ファンの消費電力が給電源の電力容量を超えない範囲で各冷却ファンの目標回転数を設定する回転数設定手段を備え
回転数設定手段は、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超える場合には、各冷却ファンの目標回転数を予め定められた上限目標回転数にするとともに、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超えない場合には、一部の冷却ファンの目標回転数を、上限目標回転数を超えて設定可能とすることにより、各冷却ファインの目標回転数を最適化する
ことを特徴とする冷却ファン制御装置
【請求項2】
給電源となるオルタネータと、
熱交換器と、
オルタネータにより発電された電力により駆動され、主とする冷却対象となる熱交換器がそれぞれ異なる複数の冷却ファンと、
これら複数の冷却ファンの回転数をそれぞれ制御する請求項記載の冷却ファン制御装置と、
を備えたことを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
給電源からの給電により駆動され、主とする冷却対象がそれぞれ異なる複数の冷却ファンの回転数をそれぞれ制御する冷却ファン制御方法であって、
給電源の電力容量と、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和と、に基づき、冷却ファンの消費電力が給電源の電力容量を超えない範囲で各冷却ファンの目標回転数を設定するものであり、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超える場合には、各冷却ファンの目標回転数を予め定められた上限目標回転数にするとともに、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超えない場合には、一部の冷却ファンの目標回転数を、上限目標回転数を超えて設定可能とすることにより、各冷却ファンの目標回転数を最適化する
ことを特徴とする冷却ファン制御方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の冷却ファンの回転数をそれぞれ制御する冷却ファン制御装置、冷却装置、および、冷却ファン制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械においては、エンジン冷却用のラジエタ、各油圧アクチュエータに給排される作動油の冷却用のオイルクーラ、および、ターボ過給機により圧縮されたエンジン吸気を冷却するアフタクーラなどの熱交換器と、これら熱交換器にそれぞれ対応した電動の冷却ファンとを備える冷却ユニットであるクーリングパッケージが設置されている。冷却ファンは、それぞれ別個に回転数、すなわちファンスピードを制御している。従来、各冷却ファンには、給電源となるオルタネータの電流容量を超えないように、上限ファンスピードがそれぞれ予め定められている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-9517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クーリングパッケージにおいて、複数の熱交換器の冷却状態に偏りがある場合には、温度が低い熱交換器用の冷却ファンのファンスピードを抑制する一方、温度が高い熱交換器用の冷却ファンのファンスピードを増加することが望まれる。
【0005】
例えばラジエタが目詰まりした場合など、水温が相対的に高く、油温が相対的に低い場合、オイルクーラやアフタクーラの冷却用の冷却ファンのファンスピードは比較的小さくてよいものの、ラジエタ冷却用の冷却ファンのファンスピードが要求される。
【0006】
また、作業機械を高地で使用する場合、空気の密度が低いのでラジエタの性能がオイルクーラと比較して低下するため、ラジエタ冷却用の冷却ファンのファンスピードを上げることが望まれる。
【0007】
さらに、ハンマなどのアタッチメントを用いる場合、オイルクーラ冷却用の冷却ファンのファンスピードが、ラジエタ冷却用の冷却ファンのファンスピードと比較して要求される。
【0008】
しかしながら、冷却ファンの上限ファンスピードが予め決められていると、冷却ファンの必要電流の総和が比較的少なく、オルタネータの電流容量に余裕がある場合でも、冷却ファンを上限ファンスピード以上とすることができない。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、給電源の電力容量を効率よく利用して冷却対象を適切に冷却可能な冷却ファン制御装置、冷却装置、および、冷却ファン制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、給電源からの給電により駆動され、主とする冷却対象がそれぞれ異なる複数の冷却ファンの回転数をそれぞれ制御する冷却ファン制御装置であって、給電源の電力容量と、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和と、に基づき、冷却ファンの消費電力が給電源の電力容量を超えない範囲で各冷却ファンの目標回転数を設定する回転数設定手段を備え、回転数設定手段が、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超える場合には、各冷却ファンの目標回転数を予め定められた上限目標回転数にするとともに、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超えない場合には、一部の冷却ファンの目標回転数を、上限目標回転数を超えて設定可能とすることにより、各冷却ファインの目標回転数を最適化するものである
【0011】
請求項記載の発明は、給電源となるオルタネータと、熱交換器と、オルタネータにより発電された電力により駆動され、主とする冷却対象となる熱交換器がそれぞれ異なる複数の冷却ファンと、これら複数の冷却ファンの回転数をそれぞれ制御する請求項記載の冷却ファン制御装置と、を備えた冷却装置である。
【0012】
請求項記載の発明は、給電源からの給電により駆動され、主とする冷却対象がそれぞれ異なる複数の冷却ファンの回転数をそれぞれ制御する冷却ファン制御方法であって、給電源の電力容量と、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和と、に基づき、冷却ファンの消費電力が給電源の電力容量を超えない範囲で各冷却ファンの目標回転数を設定するものであり、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超える場合には、各冷却ファンの目標回転数を予め定められた上限目標回転数にするとともに、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超えない場合には、一部の冷却ファンの目標回転数を、上限目標回転数を超えて設定可能とすることにより、各冷却ファンの目標回転数を最適化するものである
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超えない場合には、一部の冷却ファンの目標回転数を、上限目標回転数を超えて設定可能とすることにより、冷却対象の冷却状態に応じて、必要電力に余裕がある場合には、必要電力が小さい冷却ファンの電力を抑制し、その分を必要電力が大きい冷却ファンに回して上限目標回転数に制限されることなく目標回転数を上げ、給電源の電力容量を効率よく利用して冷却対象を適切に冷却可能となる
【0014】
請求項記載の発明によれば、オルタネータの電力を有効に利用し、オルタネータを大型化することなく冷却ファンによって冷却対象となる熱交換器を適切に冷却できる。
【0015】
請求項記載の発明によれば、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超えない場合には、一部の冷却ファンの目標回転数を、上限目標回転数を超えて設定することにより、冷却対象の冷却状態に応じて、必要電力に余裕がある場合には、必要電力が大きい冷却ファンに対してより多くの電力を回して上限目標回転数に制限されることなく目標回転数を上げ、給電源の電力容量を効率よく利用して冷却対象を適切に冷却可能となる
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る冷却ファン制御装置を備える冷却装置の一実施の形態を示すブロック図である。
図2】同上冷却ファン制御装置を示す説明図である。
図3】同上冷却ファン制御装置の回転数設定手段の処理を模式的に示す説明図である。
図4】同上冷却ファン制御装置のエンジンの回転数に対する給電源の発電電流のテーブルの一例を示す説明図である。
図5】(a)は同上冷却ファン制御装置の第一の熱交換器の温度に対する第一の冷却ファンの必要回転数のテーブルの一例を示す説明図、(b)は同上冷却ファン制御装置の第二の熱交換器の温度に対する第二の冷却ファンの必要回転数のテーブルの一例を示す説明図、(c)は同上冷却ファン制御装置の第三の熱交換器の温度に対する第三の冷却ファンの必要回転数のテーブルの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、図1乃至図5に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0018】
図1において、11は冷却装置を示す。本実施の形態の冷却装置11は、油圧ショベルなどの作業機械用の冷却装置である。冷却装置11は、冷却対象となる複数の熱交換器を備えている。本実施の形態において、熱交換器は、エンジン冷却水が通る第一の熱交換器であるラジエタ15と、油圧アクチュエータに給排される作動油が通る第二の熱交換器であるオイルクーラ16と、図示されないターボ過給機により圧縮された空気が通る第三の熱交換器であるアフタクーラ17とを有する。
【0019】
また、冷却装置11は、熱交換器毎に配置された冷却ファンを備えている。すなわち、冷却装置11は、複数の冷却ファンを備えている。冷却ファンは、熱交換器に対しそれぞれ対向配置されている。冷却ファンは、駆動手段により駆動される。駆動手段は、電動駆動手段であり、給電源から給電されて駆動する。すなわち、本実施の形態の冷却ファンは、電動ファンである。本実施の形態において、冷却ファンは、ラジエタ15の冷却用の第一の冷却ファンであるラジエタファン25と、オイルクーラ16の冷却用の第二の冷却ファンであるオイルクーラファン26と、アフタクーラ17の冷却用の第三の冷却ファンであるアフタクーラファン27とを有する。そして、駆動手段としては、ラジエタファン25を駆動させる第一の電動モータであるラジエタファン用電動モータ25mと、オイルクーラファン26を駆動させる第二の電動モータであるオイルクーラファン用電動モータ26mと、アフタクーラファン27を駆動させる第三の電動モータであるアフタクーラファン用電動モータ27mとを有する。
【0020】
駆動手段に給電する給電源としては、オルタネータ30が用いられる。オルタネータ30は、エンジン31の出力軸に連結され、エンジン31によって駆動されて発電するとともに、発電した電力をバッテリ32に蓄えるように構成されている。エンジン31の回転数に応じてオルタネータ30の回転数が設定され、オルタネータ30の回転数が高いほど発電電流が多くなる。通常、エンジン31の回転数とオルタネータ30の回転数とは正の相関を有し、本実施の形態において、エンジン31の回転数とオルタネータ30の回転数とは比例関係にある。バッテリ32が電動モータ25m,26m,27mと電気的に接続され、オルタネータ30により発電された電力がバッテリ32を介して電動モータ25m,26m,27mに供給される。また、エンジン31の回転数は、回転数検出手段33により検出される。
【0021】
また、冷却装置11は、熱交換器毎に配置された温度センサを備えている。すなわち、冷却装置11は、複数の温度センサを備えている。温度センサは、各熱交換器の温度、または、各熱交換器を通過する流体の温度に関連する情報を、直接的または間接的に取得する。本実施の形態において、温度センサは、ラジエタ15用の第一の温度センサ35と、オイルクーラ16用の第二の温度センサ36と、アフタクーラ17用の第三の温度センサ37とを有する。本実施の形態において、第一の温度センサ35は、ラジエタ15を通るエンジン冷却水の温度を直接的または間接的に検出する。また、第二の温度センサ36は、オイルクーラ16を通る作動油の温度を直接的または間接的に検出する。さらに、第三の温度センサ37は、アフタクーラ17を通る空気の温度を直接的または間接的に検出する。
【0022】
さらに、冷却装置11は、冷却ファン制御装置40を備える。冷却ファン制御装置40は、複数の冷却ファンの回転数(ファンスピード)をそれぞれ制御する。本実施の形態において、冷却ファン制御装置40は、ファン25,26,27の回転数、すなわち電動モータ25m,26m,27mの回転数をそれぞれ制御する。冷却ファン制御装置40は、コントローラ42を備える。
【0023】
コントローラ42は、コンピュータから構成され得る。コントローラ42は、冷却ファンの駆動手段、および、温度センサと電気的に接続される。本実施の形態において、コントローラ42は、ラジエタファン用電動モータ25m、オイルクーラファン用電動モータ26m、アフタクーラファン用電動モータ27m、回転数検出手段33、第一の温度センサ35、第二の温度センサ36、第三の温度センサ37などと電気的に接続されている。
【0024】
そして、本実施の形態において、コントローラ42は、回転数設定手段の機能を有する。コントローラ42は、オルタネータ30の電力容量と、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和とに基づき、各冷却ファンの消費電力がオルタネータ30の電力容量を超えない範囲で各冷却ファンの目標回転数を最適化する。以下、本実施の形態においては、「電力」を「電流」として説明する。
【0025】
コントローラ42には、エンジン31の回転数に対するオルタネータ30の発電電流のテーブル(図4)、ファン25,26,27の電動モータ25m,26m,27m以外の電装品の制御に必要な電流値、電動モータ25m,26m,27mに供給される電流値に対する電動モータ25m,26m,27mの回転数のテーブル、第一乃至第三の温度センサ35,36,37により検出される温度TR,TO,TAに対するファン25,26,27または電動モータ25m,26m,27mの回転数NR,NO,NAのテーブルT1,T2,T3(図5(a)乃至図5(c))、および、ファン25,26,27(電動モータ25m,26m,27m)の上限目標回転数などが予め記憶されている。
【0026】
図4に一例が示されるように、オルタネータ30の発電電流は、基本的にエンジン31の回転数に対し正の相関を有している。なお、エンジン31の回転数に対するオルタネータ30の発電電流のテーブルは、例えばオルタネータ30の周囲温度に応じて予め複数記憶されていてもよい。
【0027】
図5(a)に一例が示されるように、温度TRに対するラジエタファン25またはラジエタファン用電動モータ25mの回転数NRのテーブルT1については、温度TRが所定の第一の温度閾値TR1以下(TR≦TR1)の場合は、回転数NRは、所定の第一の回転数NR1で一定である。また、温度TRが第一の温度閾値TR1より大きく、所定の第二の温度閾値TR2未満(TR1<TR<TR2)の場合は、回転数NRは第一の回転数NR1から所定の第二の回転数NR2(NR1<NR2)までの間で例えば比例関係など、正の相関を有する関係にある。さらに、温度TRが第二の温度閾値TR2以上(TR2≦TR)の場合は、回転数NRは第二の回転数NR2で一定である。
【0028】
同様に、図5(b)に一例が示されるように、温度TOに対するオイルクーラファン26またはオイルクーラファン用電動モータ26mの回転数NOのテーブルT2については、温度TOが所定の第一の温度閾値TO1以下(TO≦TO1)の場合は、回転数NOは所定の第一の回転数NO1で一定である。また、温度TOが第一の温度閾値TO1より大きく、所定の第二の温度閾値TO2未満(TO1<TO<TO2)の場合は、回転数NOは第一の回転数NO1から所定の第二の回転数NO2(NO1<NO2)までの間で例えば比例関係など、正の相関を有する関係にある。さらに、温度TOが第二の温度閾値TO2以上(TO2≦TO)の場合は、回転数NOは第二の回転数NO2で一定である。
【0029】
また、図5(c)に一例が示されるように、温度TAに対するアフタクーラファン27またはアフタクーラファン用電動モータ27mの回転数NAのテーブルT3については、温度TAが所定の第一の温度閾値TA1以下(TA≦TA1)の場合は、回転数NAは所定の第一の回転数NA1で一定である。また、温度TAが第一の温度閾値TA1より大きく、所定の第二の温度閾値TA2未満(TA1<TA<TA2)の場合は、回転数NAは第一の回転数NA1から所定の第二の回転数NA2(NA1<NA2)までの間で例えば比例関係など、正の相関を有する関係にある。さらに、温度TAが第二の温度閾値TA2以上(TA2≦TA)の場合は、回転数NAは第二の回転数NA2で一定である。
【0030】
ファン25,26,27(電動モータ25m,26m,27m)の上限目標回転数は、互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。また、上限目標回転数は、エンジン31の回転数に応じて予め設定されていてもよい。例えば、上限目標回転数は、給電源の電流容量、すなわちオルタネータ30の発電電流からその他の電装品の制御に必要な電流値を差し引いた容量を、冷却ファンの数で等分、つまり本実施の形態では三等分した電流値以下の所定の電流値に対応する回転数などに予め設定されていてよい。
【0031】
そして、コントローラ42は、図1および図2に示されるように、ファン25,26,27の目標回転数TNR,TNO,TNAを算出する算出手段43と、算出手段43により算出された目標回転数TNR,TNO,TNAとなるようにファン25,26,27の制御信号を出力する出力手段44とを備えている。
【0032】
算出手段43は、本実施の形態において、電動モータ25m,26m,27mの目標回転数を算出することにより、ファン25,26,27の目標回転数TNR,TNO,TNAを算出する。算出手段43は、オルタネータ30の電流容量と、ファン25,26,27毎の冷却対象となる熱交換器、つまりラジエタ15、オイルクーラ16、および、アフタクーラ17の冷却状態に応じた必要電流の総和とに基づき、各ファン25,26,27の電動モータ25m,26m,27mの消費電流がオルタネータ30の電流容量を超えない範囲で、最適のファン25,26,27または電動モータ25m,26m,27mの目標回転数TNR,TNO,TNAを算出する。例えば、算出手段43は、冷却ファンによる冷却対象の冷却状態に偏りがあって、必要電流が所定の電流値よりも小さい冷却ファンがあるなど、オルタネータ30の電流容量に余裕がある場合には、オルタネータ30の電流容量の余剰分を、必要電流が大きい冷却ファンに回すように、この冷却ファンの目標回転数を増加させる。言い換えると、算出手段43は、クーリング的に余裕がある冷却ファンの目標回転数を抑制して冷却ファンを減速し、その分浮いた電流を必要な冷却ファン(冷却対象が冷却不足になっている冷却ファン)に回して、その冷却ファンの回転数(ファンスピード)を増加させるように、冷却ファンの目標回転数を算出する。
【0033】
算出手段43には、冷却対象となる熱交換器の冷却状態として、温度センサにより検出された温度が入力される。好ましくは、算出手段43には、温度センサにより検出された温度の平均値が入力される。すなわち、算出手段43には、平均化手段が電気的に接続されている。本実施の形態において、算出手段43には、第一乃至第三の温度センサ35,36,37により検出された温度TR,TO,TAの移動平均値が入力される。すなわち、算出手段43には、第一乃至第三の平均化手段45,46,47が電気的に接続されている。第一乃至第三の平均化手段45,46,47は、第一乃至第三の温度センサ35,36,37と電気的に接続され、これら第一乃至第三の温度センサ35,36,37から出力された温度TR,TO,TAを、所定の移動平均時間で平均化した値を算出手段43に出力する。所定の移動平均時間は、予め設定されていてもよいし、オペレータなどが任意に設定してもよい。なお、以下、温度TR,TO,TAとは、第一乃至第三の温度センサ35,36,37により検出された温度を示す場合と、第一乃至第三の平均化手段45,46,47により平均化された温度を示す場合との双方を含むものとする。
【0034】
次に、図示された実施の形態の動作を説明する。
【0035】
ファン25,26,27の回転数を制御する際、コントローラ42は、まず、算出手段43において、エンジン31の回転数に対するオルタネータ30の発電電流のテーブル(図4)に基づいて、回転数検出手段33により検出したエンジン31の回転数からオルタネータ30の発電電流を算出する。この発電電流の算出の際には、オルタネータ30の周囲温度を加味してテーブルを選択してもよい。その場合、オルタネータ30の周囲温度を検出する温度センサをさらに備えていてもよい。
【0036】
次いで、コントローラ42は、算出手段43において、算出したオルタネータ30の発電電流から電動モータ25m,26m,27m以外の電装品の制御に必要な電流値を差し引く。また、算出手段43は、温度TR,TO,TAに対するファン25,26,27または電動モータ25m,26m,27mの回転数NR,NO,NAのテーブルT1,T2,T3(図5(a)乃至図5(c))から、必要回転数、すなわち必要電流を算出する。
【0037】
この後、コントローラ42は、算出手段43において、オルタネータ30の電流容量と、ファン25,26,27の必要電流、すなわち電動モータ25m,26m,27mの必要電流の総和とに基づき、ファン25,26,27の目標回転数TNR,TNO,TNAを最適化するように算出する。本実施の形態においては、算出手段43が、オルタネータ30による発電電流から電動モータ25m,26m,27m以外の電装品の制御に必要な電流値を引いた分と、電動モータ25m,26m,27mの必要電流との大小関係に基づき、ファン25,26,27の目標回転数TNR,TNO,TNAを最適化するように算出する。
【0038】
算出手段43は、好ましくは目標回転数を順次算出する。すなわち、算出手段43は、一の目標回転数を算出し、その算出した目標回転数に対応する消費電力、本実施の形態では消費電流を、給電源の電流容量、本実施の形態ではオルタネータ30による発電電流から電動モータ25m,26m,27m以外の電装品の制御に必要な電流値を引いた分からさらに差し引き、次の他の目標回転数を算出する。つまり、本実施の形態において、算出手段43による目標回転数の設定には、優先順位がある。この優先順位は、例えば冷却対象の熱容量の順、あるいは、冷却対象がオーバヒートしやすい順などとする。この優先順位は、予め定められていてもよいし、優先順位をオペレータなどが任意に設定可能としてもよい。本実施の形態においては、ラジエタファン25(ラジエタファン用電動モータ25m)の目標回転数TNRを最優先とし、次いでオイルクーラファン26(オイルクーラファン用電動モータ26m)の目標回転数TNO、さらにアフタクーラファン27(アフタクーラファン用電動モータ27m)の目標回転数TNAの順に算出する。
【0039】
本実施の形態において、算出手段43は、図3に示されるように、まず、ラジエタファン25(ラジエタファン用電動モータ25m)の目標回転数TNRを算出する(ラジエタファン用処理ブロック(ラジエタファン用処理シーケンス)BR)。算出手段43は、冷却ファンの必要電流の総和を算出し(ステップS1)、この算出した総和と、給電源の電流容量、すなわちオルタネータ30の発電電流からその他の電装品の制御に必要な電流値を差し引いた容量とを比較して、総和が給電源の電流容量を超えるか否かを判断する(ステップS2)。そして、総和が電流容量を超える場合(ステップS2のYESの場合)には、目標回転数TNRを予め定められた上限目標回転数など、現在の回転数に維持し(ステップS3)、総和が電流容量を超えない場合(ステップS2のNOの場合)には、目標回転数TNRを必要回転数とする(ステップS4)。このとき、必要回転数は、上限目標回転数より大きい回転数を許容する。そして、ステップS3またはステップS4において決定された目標回転数TNRを出力手段44(図2)へと出力するとともに、この目標回転数TNRを現在の回転数として記憶する(ステップS5)。
【0040】
以降、算出手段43では、ラジエタファン用処理ブロック(ラジエタファン用処理シーケンス)BRでのステップS1乃至ステップS5と同様に、オイルクーラファン用処理ブロック(オイルクーラファン用処理シーケンス)BO、および、アフタクーラファン用処理ブロック(アフタクーラファン用処理シーケンス)BAにおいて、残りの冷却ファンの必要電流の総和を算出し、電流容量から算出された目標回転数に応じた消費電流を差し引いた電流値と、算出した総和との大小を同様に比較し、オイルクーラファン26(オイルクーラファン用電動モータ26m)の目標回転数TNO、アフタクーラファン27(アフタクーラファン用電動モータ27m)の目標回転数TNAを順次算出する。
【0041】
そして、図2に示されるように、出力手段44では、算出手段43により算出された目標回転数TNR,TNO,TNAに応じた制御信号を図1に示される各電動モータ25m,26m,27mに出力する。
【0042】
このように、一実施の形態によれば、オルタネータ30の電力容量と、ファン25,26,27毎の冷却対象となるラジエタ15、オイルクーラ16、アフタクーラ17の冷却状態に応じた必要電力の総和とに基づき、ファン25,26,27の消費電力がオルタネータ30の電力容量を超えない範囲で各ファン25,26,27の目標回転数TNR,TNO,TNAを最適化するので、冷却対象となるラジエタ15、オイルクーラ16、アフタクーラ17の冷却状態に応じて、必要電力に余裕がある場合には、必要電力が小さい冷却ファンの電力を抑制し、その分を必要電力が大きい冷却ファンに回して、オルタネータ30の電力容量を効率よく利用してラジエタ15、オイルクーラ16、アフタクーラ17を適切に冷却可能となる。
【0043】
具体的に、コントローラ42は、ファン25,26,27(電動モータ25m,26m,27m)毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超える場合には、ファン25,26,27(電動モータ25m,26m,27m)の目標回転数TNR,TNO,TNAを予め定められた上限目標回転数にし、ファン25,26,27(電動モータ25m,26m,27m)毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超えない場合には、ファン25,26,27(電動モータ25m,26m,27m)の目標回転数TNR,TNO,TNAのいずれかを、上限目標回転数を超えて設定可能とするので、冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和が給電源の電力容量を超えない場合には、一部の冷却ファンの目標回転数を、上限目標回転数を超えて設定することも可能となり、必要電力が大きい冷却ファンについては、上限目標回転数に制限されることなく目標回転数を上げて、冷却対象を適切に冷却できる。
【0044】
そして、上記の冷却ファン制御装置40を備えることで、オルタネータ30の電力を有効に利用し、オルタネータ30を大型化することにより電力容量を増やして冷却ファンによる冷却能力を向上することなく、ファン25,26,27によって冷却対象となる熱交換器を適切に冷却可能な冷却装置11を提供できる。すなわち、大型のオルタネータ30を新たに開発・搭載する必要がなく、作業機械の設計変更なども不要であり、冷却装置11によって安価に、かつ、適切に熱交換器を冷却できる。
【0045】
すなわち、標準的な仕様やアプリケーションに応じて上限目標回転数を設定していた従来例では、電力容量に余裕があるにもかかわらず、目標回転数を上限目標回転数より大きく設定できないため、標準的な仕様から外れる仕様、作業環境(高温・高地)、あるいは作業内容においては、冷却対象の冷却不足に陥るおそれがあった。また、電力容量を増加させるために、オルタネータ30を大型化することは、コストや車体スペースなどの観点から現実的でなかった。本実施の形態では、これらの問題を解決し、小型で、かつ、冷却効率の良好な冷却装置11を提供できる。
【0046】
なお、上記一実施の形態において、冷却ファンは、ファン25,26,27に限られず、その他の任意の冷却対象を冷却する電動ファンに対し冷却ファン制御装置40を適用できる。
【0047】
また、冷却ファンは、複数であれば三つに限られず、二つでもよいし、四以上でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、油圧ショベルなどの作業機械に用いられる冷却装置の製造業、販売業などに携わる事業者にとって産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0049】
11 冷却装置
15 冷却対象となる熱交換器であるラジエタ
16 冷却対象となる熱交換器であるオイルクーラ
17 冷却対象となる熱交換器であるアフタクーラ
25 冷却ファンであるラジエタファン
26 冷却ファンであるオイルクーラファン
27 冷却ファンであるアフタクーラファン
30 給電源であるオルタネータ
40 冷却ファン制御装置
42 回転数設定手段の機能を有するコントローラ
図1
図2
図3
図4
図5