(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】画像解析システムおよび画像解析方法
(51)【国際特許分類】
G08B 25/00 20060101AFI20231024BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231024BHJP
B67D 7/32 20100101ALI20231024BHJP
B67D 7/34 20100101ALI20231024BHJP
【FI】
G08B25/00 510M
G06T7/00 350C
B67D7/32 E
B67D7/34
B67D7/32 Z
B67D7/32 A
(21)【出願番号】P 2019033102
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 隆史
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-083422(JP,A)
【文献】特開2020-132162(JP,A)
【文献】特開2019-218095(JP,A)
【文献】特開2014-118153(JP,A)
【文献】特開2009-241962(JP,A)
【文献】特開平09-295696(JP,A)
【文献】特開2018-154401(JP,A)
【文献】特開2002-193399(JP,A)
【文献】特開2018-097487(JP,A)
【文献】特開2017-027374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D7/00-99/00
G06T7/00-7/90
G06V10/00-20/90
30/418
40/16
40/20
G08B19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油スペースを撮像した映像を取得する映像取得部と、
前記給油スペースの映像群について不正行為を機械学習させた学習モデルを用いて、前記映像取得部が取得した映像について前記不正行為を検知する検知部と、
前記不正行為の検知結果に基づいて給油可否に関する情報を生成する判定部と、
を備え、
前記検知部は、車体の塗装パターンや屋上灯、ロゴマークや会社名、車検シールの位置や配置の違い、車体とタイヤホイールの組み合わせ、車体に付けたコード、車体の損傷、のいずれかを含む車両の特徴を検知する
ことを特徴とする画像解析システム。
【請求項2】
請求項1記載の画像解析システムにおいて、
前記検知部は、
前記給油スペースの映像群について車両が給油位置に停止しているか否かを機械学習させた学習モデルを用いて、前記映像取得部が取得した映像について、車両が給油位置に停止しない不正行為を検知する
ことを特徴とする画像解析システム。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか1項記載の画像解析システムにおいて、
前記検知部は、
前記給油スペースの映像群について給油者が静電気除去行動をしたか否かを機械学習させた学習モデルを用いて、前記映像取得部が取得した映像について、給油者が静電気除去行動をしない不正行為を検知する
ことを特徴とする画像解析システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の画像解析システムにおいて、
前記検知部は、
前記給油スペースの映像群について給油ノズルが給油先に正しく挿置されたか否かを機械学習させた学習モデルを用いて、前記映像取得部が取得した映像について、給油ノズルの挿置についての不正行為を検知する
ことを特徴とする画像解析システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の画像解析システムにおいて、
前記検知部は、
前記給油スペースの映像群について給油スペースの人数を機械学習させた学習モデルを用いて、前記映像取得部が取得した映像について、給油スペースの人数が所定数を超える不正行為を検知する
ことを特徴とする画像解析システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の画像解析システムにおいて、
前記検知部は、
前記給油スペースの映像群について給油先が車両か否かを機械学習させた学習モデルを用いて、前記映像取得部が取得した映像について、車両以外に給油する不正行為を検知する
ことを特徴とする画像解析システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載の画像解析システムにおいて、
前記検知部は、
前記給油スペースの映像群について、
火気使用、たばこ、ライター、マッチ、喫煙具、喫煙、発火、スパーク発生、高温物、引火物、可燃物、爆発物、危険物、携行缶、灯油タンク、通話や画面注視、携帯電話、モバイル機器、車外の子供、よそ見、会話、転倒、争い、騒乱、給油キャップの紛失や閉め忘れ、異常行動、不注意行動、および危険行動からなる群の少なくとも一つ以上の要注意状況について機械学習させた学習モデルを用いて、前記映像取得部が取得した映像について、前記要注意状況を不正行為として検知する
ことを特徴とする画像解析システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の画像解析システムにおいて、
前記検知部は、
給油対象の車両について、車番または前記特徴を検知し、
前記判定部は、
前記検知部が検知した前記車番または前記特徴を給油履歴に照合し、給油が2回目以降であって過去と同じ油種の給油が選択されない場合は給油不可と判定する
ことを特徴とする画像解析システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の画像解析システムにおいて、
前記検知部は、
給油対象の車両について、車番または前記特徴を検知し、
前記判定部は、
車番または特徴に関連付けて油種または車種が登録された登録データベースに対して、前記検知部が読み取った前記車番または前記特徴を照会して油種または車種を情報取得し、情報取得した油種または車種に適合する油種が選択されない場合は給油不可と判定する
ことを特徴とする画像解析システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項記載の画像解析システムにおいて、
前記検知部は、
給油対象の車両について、車番を検知し、
前記判定部は、
前記検知部の検知した車番がレンタカーの車番と一致すると、油種間違いのおそれ有りと判定する
ことを特徴とする画像解析システム。
【請求項11】
給油資格を有する車両の車番または特徴を登録するための登録部と、
給油対象の車両から車番または特徴を検知する検知部と、
前記検知部が検知した車両の車番または特徴が、前記登録部に登録されていない場合、無資格給油の不正行為と判定する判定部と、
を備え、
前記検知部は、車体の塗装パターンや屋上灯、ロゴマークや会社名、車検シールの位置や配置の違い、車体とタイヤホイールの組み合わせ、車体に付けたコード、車体の損傷、のいずれかを含む車両の特徴を検知する
ことを特徴とする画像解析システム。
【請求項12】
給油スペースを撮像した映像を取得する映像取得ステップと、
前記給油スペースの映像群について不正行為を機械学習させた学習モデルを用いて、前記映像取得ステップが取得した映像について前記不正行為を検知する検知ステップと、
前記不正行為の検知結果に基づいて給油可否に関する情報を生成する判定ステップと、
を備え、
前記検知
ステップは、車体の塗装パターンや屋上灯、ロゴマークや会社名、車検シールの位置や配置の違い、車体とタイヤホイールの組み合わせ、車体に付けたコード、車体の損傷、のいずれかを含む車両の特徴を検知する
ことを特徴とする画像解析方法。
【請求項13】
給油資格を有する車両の車番または特徴を登録するための登録ステップと、
給油対象の車両から車番または特徴を検知する検知ステップと、
前記検知ステップが検知した車両の車番または特徴が、前記登録ステップにおいて登録されていない場合、無資格給油の不正行為と判定する判定ステップと、
を備え、
前記検知
ステップは、車体の塗装パターンや屋上灯、ロゴマークや会社名、車検シールの位置や配置の違い、車体とタイヤホイールの組み合わせ、車体に付けたコード、車体の損傷、のいずれかを含む車両の特徴を検知する
ことを特徴とする画像解析方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項記載の画像解析システムにおいて、
前記検知部は、資格者の専用給油所において、車両の前記特徴を検知する
ことを特徴とする画像解析システム。
【請求項15】
請求項12~13のいずれか1項記載の画像解析方法において、
前記検知
ステップは、資格者の専用給油所において、車両の前記特徴を検知する
ことを特徴とする画像解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析システムおよび画像解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルフサービスによって給油を行うガソリンスタンドが知られている。このようなガソリンスタンドには、法令によって危険物取扱者の資格を有する監視者が常駐する。監視者は、ガソリンスタンドの事務室から給油スペースのライブ画像を通して給油者の給油動作を確認しながら、給油の可否をリモート操作する。
【0003】
また、特許文献1には、「車両の給油口付近を撮像して給油ノズルの色調を識別し、識別された給油ノズルの色調に基づいて、給油ノズルの油種が車両の油種に合致していないと判別された場合には、油種不適の警告を行う」旨の技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、「給油ノズルの色調に基づく油種不適」以外の警告については、開示がない。
【0006】
しかしながら、監視者が給油可否を判断する上で、判断すべき不正行為(安全または誤り防止の規範から外れる行為)は他にも存在する。
一般に、監視者は、給油スペースのライブ映像を常時注視しながら様々な不正行為に対して同時に注意を払わなければならない。そのため、監視者の負担が大きいという問題が有った。
【0007】
そこで、本発明は、給油可否を判定するための画像解析技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、代表的な本発明の画像解析システムの一つは、給油スペースを撮像した映像を取得する映像取得部と、給油スペースの映像群について不正行為を機械学習した学習モデルを用いて、映像取得部が取得した映像について不正行為を検知する検知部と、不正行為の検知結果に基づいて給油可否に関する情報を生成する判定部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、給油可否を判定する画像解析が可能になる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】セルフサービス式のガソリンスタンドGSを示す図である。
【
図2】画像解析システム100のブロック図である。
【
図5】給油位置の学習用データセットを示す図である。
【
図6】静電気除去行動の学習用データセットを示す図である。
【
図7】ノズル挿置の学習用データセットを示す図である。
【
図8】滞在人数の学習用データセットを示す図である。
【
図9】車両以外への給油の学習用データセットを示す図である。
【
図10】要注意状況の学習用データセットを示す図である。
【
図11】車番の領域区分のための学習用データセットを示す図である。
【
図12】画像解析システム100の動作を示す流れ図(1/2)である。
【
図13】画像解析システム100の動作を示す流れ図(2/2)である。
【
図14】車両の給油位置の検知例を説明する図である。
【
図15】静電気除去行動の検知例を説明する図である。
【
図16】給油ノズルの挿置状況の検知例を説明する図である。
【
図18】車両外給油、危険・不安全行為などの検知例を説明する図である。
【
図19】監視パソコンや手持ち端末の表示画面を示す図である。
【
図20】給油許可後の画像解析を説明する図である。
【
図21】画像解析システム500の要部を示す図である。
【
図22】画像解析システム500の動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
[実施例1の構成説明]
図1は、セルフサービス式のガソリンスタンドGSを示す図である。
同図において、ガソリンスタンドGSには、複数の給油レーン(No1~NoX)が設置される。これらの給油レーンには、給油装置10がそれぞれ配置される。給油装置10には、3つの油種(レギュラー、ハイオク、および軽油)に対応して、3系統の給油ノズルが設けられる。これら3系統の給油ノズルは、給油者が油種を区別しやすいように、色分けされる。
【0013】
例えば、レギュラーガソリンを給油する給油ノズルは「赤色」に色分けされる。ハイオクガソリンを給油する給油ノズルは「黄色」に色分けされる。軽油を給油する給油ノズルは「緑色」に色分けされる。
【0014】
一方、給油レーンそれぞれには、給油スペースの映像をなるべく死角なく取得するように、映像取得部11が設置される。例えば、映像取得部11は、給油者の行動を俯瞰位置や鳥瞰位置から撮影するカメラA1(行動解析用)と、車両のナンバープレートを斜め横方向から撮影するカメラB1(車番解析用)とから構成される。
【0015】
図2は、給油監視用の画像解析システム100のブロック図である。
同図において、画像解析システム100は、映像取得部11、検知部12(学習モデル200~260を含む)、判定部13、給油履歴14、監視パソコン15、警報器16、警報器16a、手持ち端末17、無線LAN18、インターフェース部19、給油制御装置20、およびネットワークスイッチ21を備えて構成される。
【0016】
ここで、検知部12、判定部13、および給油履歴14は、AI学習機能付きの画像処理サーバ22の機能によって実現される。
【0017】
この画像処理サーバ22は、ハードウェアとしてCPU(Central Processing Unit)やメモリなどを備えたコンピュータとして構成される。このハードウェアの一部または全部については、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などで代替してもよい。また、ハードウェアの一部または全部をネットワーク上のサーバに集中または分散してクラウド配置してもよい。
【0018】
次に、画像解析システム100内の信号の流れについて説明する。
映像取得部11は、LANケーブル(PoE給電)を介して、ネットワークスイッチ21に接続される。映像取得部11は、ネットワークスイッチ21側からLANケーブルを介して電源供給を受ける。また、映像取得部11から出力された映像情報は、LANケーブルを介して、ネットワークスイッチ21に供給される。
【0019】
ネットワークスイッチ21は、給油レーンごとの映像取得部11から供給される映像情報(ライブ映像)を給油レーンごとに切り替えて、検知部12に出力する。
【0020】
検知部12は、映像情報を学習モデル200~260を使用して解析し、給油スペースの不正行為などを検知する。判定部13は、不正行為の検知結果に基づいて給油可否に関する情報を生成する。
【0021】
判定部13で生成された給油可否に関する情報は、ネットワークスイッチ21を介して、ガソリンスタンドGSの事務室内の監視パソコン15へ伝達される。監視パソコン15は、この給油可否に関する情報に基づいて、常駐する監視者への注意喚起をモニタ画面や警報器16を通して実施する。
【0022】
また、給油レーンそれぞれには、警報器16aも設置される。これらの警報器16aは、ネットワークスイッチ21を介して、監視パソコン15に接続される。監視パソコン15は、警報器16aを介して、給油者への音声ガイドや注意喚起を実施する。
【0023】
さらに、監視パソコン15は、ネットワークスイッチ21、インターフェース部19を介して、給油制御装置20に接続される。
【0024】
給油制御装置20は、給油レーンごとに給油装置10内の給油バルブや給油圧力を制御することにより、給油装置10の給油の停止や給油量や吐出量を制御する。
【0025】
この給油装置10は、ネットワークスイッチ21を介して監視パソコン15や画像処理サーバ22とも通信を行い、給油時の課金決済や、選択された油種・給油量などの情報を伝達する。給油履歴14は、給油に係る履歴を情報記録する。
【0026】
なお、監視者は、タブレットなどの手持ち端末17を介して、監視パソコン15と同様の給油監視や給油制御を行うことができる。この手持ち端末17がガソリンスタンドGSの敷地内での通信をカバーするように、複数の無線LAN18が分散して配置される。
【0027】
なお、検知部12に含まれる学習モデル200~260は、次の不正行為や車番認識などの画像解析に使用される。
・学習モデル200:給油位置に正しく停止しない不正行為
・学習モデル210:静電気除去をしない不正行為
・学習モデル220:給油ノズルを正しく挿置しない不正行為
・学習モデル230:不必要な人数が滞在する不正行為
・学習モデル240:車両以外へ給油する不正行為
・学習モデル250:要注意状況に関する不正行為
・学習モデル260:車番の認識
なお、これら学習モデル200~260の機械学習および使用については後述する。
【0028】
[学習モデル200~260の基本構成]
まず、学習モデル200~260に共通する基本構成について説明する。
【0029】
図3は、学習モデル200~260の基本構成を示す図である。
同図において、給油スペースの映像情報は、前処理部31に入力される。前処理部31は、画像解析の解析内容に合わせた前処理を映像情報に実施する。
【0030】
例えば、前処理部31は、解析領域設定(クロップ、リサイズ、鳥瞰変換、視点変換、歪み補正、畳み込み前のパディングなど)や、差分比較(背景差分、輪郭抽出など)や、ベクトル解析(動きベクトル検出、動き追跡)や、信号処理(特徴抽出、形状抽出、輪郭強調、階調補正、ダイナミックレンジの拡大縮小、レベル正規化、ノイズ抑制、モアレ除去、ホワイトバランス調整、色処理、減色処理、モノクロ化など)や、その他の前処理を実施する。
【0031】
例えば、
図4[A]に示す「物体有無の画像解析」を行う学習モデルでは、前処理部31は、差分比較や、物体の形状抽出、物体の特徴抽出、物体の存在し得る対象エリアのクロップなどの画像処理を実施する。
【0032】
また、
図4[B]に示す「給油ノズルや給油先などに関する画像解析」を行う学習モデルでは、前処理部31は、給油ノズルの色と給油装置10の前面収納位置から給油種別の油種を判定する。また、前処理部31は、給油ノズル(または給油者の手)の動きをベクトル解析することによって給油ノズルや給油先の対象エリアを検出し、その対象エリアをクロップする。
【0033】
さらに、
図4[C]に示す「車番に関する画像解析」を行う学習モデルでは、前処理部31は、ナンバープレートを差分比較や形状抽出によってナンバープレートの対象エリアを検出し、その対象エリアをクロップする。また、必要であればナンバープレートに台形補正などを加えたり、ナンバープレートの地色を除く減色処理などを実施してもよい。
【0034】
また、
図4[D]に示す「人間の行動に関する画像解析」を行う種類の学習モデルでは、前処理部31は、手の動き、形状、差分比較により喫煙や電話通話中やモバイル機器の利用中などの対象エリアを検出し、その対象エリアをクロップする。
【0035】
前処理部31において前処理された映像情報は、学習モデル200~260内の入力層32に入力される。入力層32の映像情報は、畳み込み層・活性化関数33およびプーリング層34を介して処理され、画像空間の局所的な特徴に応じて活性化するニューロンからなる特徴マップに変換される。この畳み込み層・活性化関数33およびプーリング層34は、画像解析に適した層数だけ多層化される。
【0036】
多層化された畳み込み層・活性化関数33およびプーリング層34を経由した特徴マップのニューロンの値はシリアル化された後、ニューラルネットワーク35に入力される。ニューラルネットワーク35は画像解析に適する層数でニューロンを結合(例えば全結合)して構成される。ニューラルネットワーク35の最終端の出力層36からは、画像解析の結果(尤度など)を示す値が出力される。
【0037】
[学習モデル200~260の機械学習]
上述した畳み込み層・活性化関数33やニューラルネットワーク35内のニューロンは、重み配列wやバイアスbを有する。これらの重み配列wやバイアスbは、学習用データセットを用いた機械学習(誤差逆伝搬法など)を繰り返すことにより逐次更新され、学習した教師データに沿った判定結果を出力するようになる。
【0038】
この機械学習は、システムの運用開始前に準備として行われる。また、システムの運用開始後には、実際の監視映像を訓練画像として自動収集しつつ、その監視映像に対する監視者の判断を教師データとすることで、現実に即した機械学習が行われる。
【0039】
図5~
図11は、このような機械学習に使用する学習用データセット(訓練画像と教師データのセット群)の例を、画像解析の種類別に示す図である。以下、これらの学習用データセットについてそれぞれ説明する。
【0040】
・学習モデル200に対する「給油位置に正しく停止しない不正行為」の機械学習
図5には、給油時の車両の正しい停止位置(以下「給油位置」という)について機械学習を行うための学習用データセット200A~Cが示される。この学習用データセット200A~Cの訓練画像は、学習モデル200の前処理部31の前処理(給油位置付近を対象エリアとしてクロップする処理、好ましくは鳥瞰変換により停止枠を長方形に変換する処理)がすでに実施された映像情報である。
【0041】
同図において、学習用データセット200Aの訓練画像の群は、給油スペースの停止枠からはみ出さずに車両が停止し、かつ車両の給油口が給油装置10の方向に有る状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「給油位置OK」の教師データが付与される。
【0042】
一方、学習用データセット200Bの訓練画像の群は、給油スペースの停止枠からはみ出して車両が停止した状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「給油位置NG」の教師データが付与される。
【0043】
さらに、学習用データセット200Cの訓練画像の群は、車両の給油口が給油装置10と反対側に有る状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「給油位置NG(または給油口逆向きNG)」の教師データが付与される。
【0044】
図5に示す学習用データセット200A~Cにより、車両が給油位置に停止しているか否かを機械学習させることにより、車両が給油位置に停止しない不正行為(さらには、給油口が給油装置10と反対側にある不正行為)を検知する学習モデル200が得られる。
【0045】
・学習モデル210に対する「静電気除去しない不正行為」の機械学習
図6には、静電気除去しない不正行為について機械学習を行うための学習用データセット210A~Cが示される。この学習用データセット210A~Cの訓練画像は、学習モデル210の前処理部31の前処理(静電気除去シート付近を対象エリアとしてクロップする処理)を実施済みの映像情報である。
【0046】
同図において、学習用データセット210Aの訓練画像の群は、給油者が静電気除去シートに素手(手袋など非着用)で接触している状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「静電気除去OK」の教師データが付与される。
【0047】
一方、学習用データセット210Bの訓練画像の群は、給油者が静電気除去シートに接触していない状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「静電気除去NG」の教師データが付与される。
【0048】
さらに、学習用データセット210Cの訓練画像の群は、給油者が静電気除去シートに手袋やハンカチなどを介して接触(放電不十分)した状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「静電気除去NG(または手袋着用NG)」の教師データが付与される。
【0049】
図6に示す学習用データセット210A~Cにより、給油者が静電気除去行動をしたか否かを機械学習させることにより、給油者が静電気除去行動をしない不正行為(さらには、手袋などをつけて静電気除去を行った不正行為)を検知する学習モデル210が得られる。
【0050】
・学習モデル220に対する「給油ノズルを正しく挿置しない不正行為」の機械学習
図7には、給油ノズルの挿置に関する不正行為を機械学習するための学習用データセット220A~Cが示される。この学習用データセット220A~Cの訓練画像は、学習モデル220の前処理部31の前処理(給油ノズルの移動ベクトルにより検出した給油口付近を対象エリアとしてクロップする処理)を実施済みの映像情報である。
【0051】
同図において、学習用データセット220Aの訓練画像の群は、給油ノズルが給油口に正しく挿置された状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「ノズル挿置OK」の教師データが付与される。
【0052】
一方、学習用データセット220Bの訓練画像の群は、給油ノズルが給油口に挿置されない状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「ノズル挿置NG」の教師データが付与される。
【0053】
さらに、学習用データセット220Cの訓練画像の群は、給油ノズルが給油口の奥まで挿置されずに浮いたり傾いたりした状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「ノズル挿置NG」の教師データが付与される。
【0054】
図7に示す学習用データセット220A~Cにより、給油ノズルが給油口に正しく挿置されたか否かを機械学習させることにより、給油ノズルが給油口に正しく挿置されない不正行為を検知する学習モデル220が得られる。
【0055】
・学習モデル230に対する「不必要な人数が滞在する不正行為」の機械学習
図8には、滞在人数に関する不正行為を機械学習するための学習用データセット230A~Cが示される。この学習用データセット230A~Cの訓練画像は、学習モデル230の前処理部31の前処理(車両の周辺を対象エリアとしてクロップする処理、好ましくは鳥瞰変換により停止枠を長方形に変換する処理)を実施済みの映像情報である。
【0056】
同図において、学習用データセット230Aの訓練画像の群は、滞在人数が給油に必要な人数(例えば給油者一人)の状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「滞在人数OK」の教師データが付与される。
【0057】
一方、学習用データセット230Bの訓練画像の群も、滞在人数が給油に必要な人数(例えば給油者とアドバイス者の二人程度)の状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「滞在人数OK」の教師データが付与される。
【0058】
さらに、学習用データセット230Cの訓練画像の群は、滞在人数が給油に必要な所定数を超える状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「滞在人数NG」の教師データが付与される。
【0059】
図8に示す学習用データセット230A~Cにより、給油スペースの滞在人数を機械学習させることにより、給油スペースの人数が所定数を超える不正行為を検知する学習モデル230が得られる。
【0060】
・学習モデル240に対する「車両以外へ給油する不正行為」の機械学習
図9には、車両以外へ給油する不正行為を機械学習するための学習用データセット240A~Cが示される。この学習用データセット240A~Cの訓練画像は、学習モデル240の前処理部31の前処理(給油ノズルの挿置先や届く範囲を対象エリアとしてクロップする処理)を実施済みの映像情報である。
【0061】
同図において、学習用データセット240Aの訓練画像の群は、車両に給油している状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「車両への給油OK」の教師データが付与される。
【0062】
一方、学習用データセット240Bの訓練画像の群は、車両以外(灯油タンク、ポリタンク、携行缶など)に給油している状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「車両以外への給油NG」の教師データが付与される。
【0063】
さらに、学習用データセット240Cの訓練画像の群は、車両トランクなどに搭載した(灯油タンク、ポリタンク、携行缶など)に給油している状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「車両以外への給油NG」の教師データが付与される。
【0064】
図9に示す学習用データセット240A~Cにより、給油先が車両か否かを機械学習させることにより、車両以外に給油する不正行為を検知する学習モデル240が得られる。
【0065】
・学習モデル250に対する「要注意状況に関する不正行為」の機械学習
図10には、要注意状況に関する不正行為を機械学習するための学習用データセット250A~Cが示される。この学習用データセット250A~Cの訓練画像は、学習モデル250の前処理部31の前処理(要注意状況が生じる範囲を対象エリアとしてクロップする処理)を実施済みの映像情報である。
【0066】
同図において、学習用データセット250A,250Bの訓練画像の群は、次のいずれか1種類の要注意状況(または複数種類の要注意状況の組み合わせ)が発生した状態の映像情報である。
【0067】
(1)火気使用、(2)たばこ、(3)ライター、(4)マッチ、(5)喫煙具、(6)喫煙、(7)発火、(8)スパーク発生、(9)高温物、(10)引火物、(11)可燃物、(12)爆発物、(13)危険物、(14)携行缶、(15)灯油タンク、(16)通話や画面注視の不注意状態、(17)携帯電話による不注意状態、(18)モバイル機器による不注意状態、(19)車外の子供の存在、(20)給油中のよそ見、(21)給油中の会話、(22)給油者などの転倒、(23)給油者などの争い、(24)給油スペースでの騒乱、(25)給油キャップの紛失や閉め忘れ、(26)酔っ払い、倒れ込む、しゃがみ込む、何かを隠すなどの異常行動、(27)不注意行動、(28)危険行動
これら訓練画像の群に対しては、「要注意状況NG」の教師データが付与される。
【0068】
一方、学習用データセット250Cの訓練画像の群は、学習用データセット250A,250Bの訓練画像から『要注意状況』を取り除いた状態の映像情報である。これら訓練画像の群に対しては、「要注意状況なしOK」の教師データが付与される。
【0069】
図10に示す学習用データセット250A~Cにより、要注意状況に関する不正行為を機械学習させることにより、要注意状況に関する不正行為をそれぞれ検知する複数個の学習モデル250が得られる。
【0070】
・学習モデル260に対する「車番認識」の機械学習
図11には、車番の領域区分のための学習用データセット260Aが示される。この学習用データセット260Aの訓練画像は、学習モデル260の前処理部31の前処理(ナンバープレートの領域をクロップする処理、好ましくはナンバープレートを長方形に変換し、ナンバープレートの画像サイズを正規化する処理)を実施済みの映像情報である。
【0071】
これら訓練画像の群に対しては、訓練画像をコード種類別に領域区分するための領域ラベル(陸上コード、車種コード、用途コード、一連指定番号コードなど)が付与される。ここでの領域ラベルは、画像解析システム100の使用国または使用地域のナンバープレートの表示法令などに従った領域ラベルを付与する。
【0072】
このような学習用データセット260Aにより機械学習を行うことにより、ナンバープレートの車番をコード種類別の画像領域に領域区分する学習モデル260が得られる。
【0073】
さらに、この学習モデル260は、領域区分された画像領域を、文字認識用の学習器で処理することにより、車番の各コードを文字や数字や記号として読み取る。
【0074】
[画像解析システム100の動作説明]
続いて、機械学習済みの学習モデル200~260を用いて行われる画像解析システム100の動作を説明する。
【0075】
図12~
図13は、画像解析システム100の動作を示す流れ図である。
図14~
図18は、画像解析の様子を説明するための図である。
図19は、監視パソコン15や手持ち端末17の表示画面を示す図である。
以下、
図12~
図13に示すステップ番号の順に、画像解析の動作を説明する。
【0076】
ステップS11: 給油レーン別に配置されたカメラA1,B1(映像取得部11)は、給油スペースの映像情報(動画)を出力する。この映像情報は、ネットワークスイッチ21を介して画像処理サーバ22内の検知部12に入力される。
【0077】
ステップS12: 検知部12は、学習モデル200に映像情報を出力する。学習モデル200内の前処理部31は、この映像情報に対して前処理(車両の給油位置付近を対象エリアとしてクロップする処理、好ましくは鳥瞰変換により停止枠を長方形に変換する処理)を実施する。前処理された映像情報は、車両が給油位置に正しく停止しているか否かを機械学習した学習モデル200を介して処理される。学習モデル200は、車両が給油位置に停止しない不正行為の尤度を出力する。または、車両方向が逆向きで給油口が給油装置10側に存在しない不正行為の尤度を出力する。
【0078】
図14は、車両の給油位置の検知例を示す図である。
車両が正しい位置および向きに停止するほど、不正行為の尤度は低くなる。逆に、車両が正しい給油位置から外れたり、車両が逆向きになるほど、不正行為の尤度は高くなる。
【0079】
ステップS13: 判定部13は、学習モデル200が出力する不正行為の尤度に基づいて、給油可否に関する情報を生成する。ここで給油不可と判定される場合、判定部13はステップS14に動作を移行する。それ以外の場合、判定部13はステップS15に動作を移行する。
【0080】
ステップS14: 判定部13は、給油不可に関する情報を、監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16aに転送する。監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16は、「車両が給油位置に停止しない不正行為」や「車両方向が逆向きで給油口が給油装置10側に存在しない不正行為」を、モニタ表示や音声通知や警報点灯によって監視者に報知する。給油レーンに配置された警報器16aも音声通知や警報点灯を行い、給油者に対して「車両が給油位置に停止しない不正行為」や「車両方向が逆向きで給油口が給油装置10側に存在しない不正行為」を報知する。これらの報知動作の後、判定部13はステップS12に動作を戻す。
【0081】
ステップS15: 検知部12は、学習モデル210に映像情報を出力する。学習モデル210内の前処理部31は、この映像情報に対して前処理(静電気除去シート付近を対象エリアとしてクロップする処理)を実施する。前処理された映像情報は、静電気除去をしたか否かを機械学習した学習モデル210を介して処理される。学習モデル210は、静電気除去をしない不正行為の尤度を出力する。
【0082】
図15は、静電気除去行動の検知例を示す図である。
静電気除去シートに一瞬でも給油者の手が触れることによって、不正行為の尤度は低くなる。ただし、肌色と異なる色の手袋やハンカチなどの介在物を検知すると、不正行為の尤度は高くなる。
【0083】
ステップS16: 判定部13は、学習モデル210が出力する不正行為の尤度に基づいて、給油可否に関する情報を生成する。ここで給油不可と判定される場合、判定部13はステップS17に動作を移行する。それ以外の場合、判定部13はステップS18に動作を移行する。
【0084】
ステップS17: 判定部13は、給油不可に関する情報を、監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16aに転送する。監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16は、「静電気除去をしない不正行為」を、モニタ表示や音声通知や警報点灯によって監視者に報知する。給油レーンに配置された警報器16aも音声通知や警報点灯を行い、給油者に対して「静電気除去をしない不正行為」を報知する。これらの報知動作の後、判定部13はステップS15に動作を戻す。
【0085】
ステップS18: 検知部12は、学習モデル220に映像情報を出力する。学習モデル220内の前処理部31は、この映像情報に対して前処理(給油ノズルのベクトル追跡により検出した給油口付近を対象エリアとしてクロップする処理)を実施する。前処理された映像情報は、給油ノズルが給油口に正しく挿置されたか否かを機械学習した学習モデル220を介して処理される。学習モデル220は、給油ノズルを正しく挿置しない不正行為の尤度を出力する。
【0086】
図16は、給油ノズルの挿置状況の検知例を示す図である。
給油ノズルが給油口に正しく挿置されるほど、不正行為の尤度は低くなる。給油ノズルが浮いたり傾いたりするほど、不正行為の尤度は高くなる。
【0087】
ステップS19: 判定部13は、学習モデル220が出力する不正行為の尤度に基づいて、給油可否に関する情報を生成する。ここで給油不可と判定される場合、判定部13はステップS20に動作を移行する。それ以外の場合、判定部13はステップS21に動作を移行する。
【0088】
ステップS20: 判定部13は、給油不可に関する情報を、監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16aに転送する。監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16は、「給油ノズルを給油口に正しく挿置しない不正行為」を、モニタ表示や音声通知や警報点灯によって監視者に報知する。給油レーンに配置された警報器16aも音声通知や警報点灯を行い、給油者に対して「給油ノズルを給油口に正しく挿置しない不正行為」を報知する。これらの報知動作の後、判定部13はステップS18に動作を戻す。
【0089】
ステップS21: 検知部12は、学習モデル230に映像情報を出力する。学習モデル230内の前処理部31は、この映像情報に対して前処理(車両の周辺を対象エリアとしてクロップする処理、好ましくは鳥瞰変換により停止枠を長方形に変換する処理)を実施する。前処理された映像情報は、給油に不必要な人数を機械学習した学習モデル230を介して処理される。学習モデル230は、人数が所定数を超えて給油スペースに不必要な人数が滞在する不正行為の尤度を出力する。
【0090】
図17は、給油者以外の人物の検知例を示す図である。
給油に必要な人数であれば、不正行為の尤度は低くなる。給油者以外の人数が増えるほど、不正行為の尤度は高くなる。
【0091】
ステップS22: 判定部13は、学習モデル230が出力する不正行為の尤度に基づいて、給油可否に関する情報を生成する。ここで給油不可と判定される場合、判定部13はステップS23に動作を移行する。それ以外の場合、判定部13はステップS24に動作を移行する。
【0092】
ステップS23: 判定部13は、給油不可に関する情報を、監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16aに転送する。監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16は、「給油に不必要な人数が滞在する不正行為」を、モニタ表示や音声通知や警報点灯によって監視者に報知する。給油レーンに配置された警報器16aも音声通知や警報点灯を行い、給油者に対して「給油に不必要な人数が滞在する不正行為」を報知する。これらの報知動作の後、判定部13はステップS21に動作を戻す。
【0093】
ステップS24: 検知部12は、学習モデル240に映像情報を出力する。学習モデル240内の前処理部31は、この映像情報に対して前処理(給油ノズルの届く範囲を対象エリアとしてクロップする処理)を実施する。前処理された映像情報は、給油先が車両(バイク含む)か否かを機械学習した学習モデル240を介して処理される。学習モデル240は、車両以外を給油先とする不正行為の尤度を出力する。
【0094】
図18は、車両以外への給油などの検知例を示す図である。
【0095】
車両への正常な給油であれば、不正行為の尤度は低くなる。車両以外に給油先が検知されると、不正行為の尤度は高くなる。
【0096】
ステップS25: 判定部13は、学習モデル240が出力する不正行為の尤度に基づいて、給油可否に関する情報を生成する。ここで給油不可と判定される場合、判定部13はステップS26に動作を移行する。それ以外の場合、判定部13はステップS27に動作を移行する。
【0097】
ステップS26: 判定部13は、給油不可に関する情報を、監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16aに転送する。監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16は、「車両以外を給油先とする不正行為」を、モニタ表示や音声通知や警報点灯によって監視者に報知する。給油レーンに配置された警報器16aも音声通知や警報点灯を行い、給油者に対して「車両以外を給油先とする不正行為」を報知する。これらの報知動作の後、判定部13はステップS24に動作を戻す。
【0098】
ステップS27: 検知部12は、学習モデル250に映像情報を出力する。学習モデル250内の前処理部31は、この映像情報に対して前処理(要注意状況が生じる範囲を対象エリアとしてクロップする処理など)を実施する。前処理された映像情報は、要注意状況について機械学習した学習モデル250を介して処理される。学習モデル250は、要注意状況に関する不正行為の尤度を出力する。
【0099】
ステップS28: 判定部13は、学習モデル250が出力する不正行為の尤度に基づいて、給油可否に関する情報を生成する。ここで給油不可と判定される場合、判定部13はステップS29に動作を移行する。それ以外の場合、判定部13はステップS30に動作を移行する。
【0100】
ステップS29: 判定部13は、給油不可に関する情報を、監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16aに転送する。監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16は、「要注意状況に関する不正行為」を、モニタ表示や音声通知や警報点灯によって監視者に報知する。給油レーンに配置された警報器16aも音声通知や警報点灯を行い、給油者に対して「要注意状況に関する不正行為」を報知する。これらの報知動作の後、判定部13はステップS27に動作を戻す。
【0101】
ステップS30: 検知部12は、学習モデル260に映像情報を出力する。学習モデル260内の前処理部31は、この映像情報に対して前処理(ナンバープレートの領域をクロップする処理、好ましくはナンバープレートを長方形に変換し、ナンバープレートの画像サイズを正規化する処理)を実施する。前処理された映像情報は、車番の読み取りについて機械学習した学習モデル260を介して処理される。学習モデル260は、車番の読み取り結果を出力する。
【0102】
ステップS31: 検知部12は、給油スペースの映像情報に基づいて、給油に使用される給油ノズルの色を判別し、給油する油種を情報取得する。なお、給油装置10で購入選択された油種を給油する油種として、給油装置10などから情報取得してもよい。
【0103】
ステップS32: 判定部13は、ステップS30で読み取った車番を給油履歴14に照合する。給油履歴14に同一の車番が見つかった場合、判定部13は、過去に給油された油種を給油履歴14から取得する。
【0104】
ステップS33: 判定部13は、ステップS31で情報取得した油種が、過去に同一車両に給油された油種と異なる場合、ステップS34に動作を移行する。一方、過去と同一の油種を給油する場合や、給油履歴14に車番が見つからない場合は、判定部13は、ステップS35に動作を移行する。
【0105】
ステップS34: 判定部13は、油種不適に関する情報を、監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16aに転送する。監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16は、「油種不適による給油不可」を、モニタ表示や音声通知や警報点灯によって監視者に報知する。給油レーンに配置された警報器16aも音声通知や警報点灯を行い、給油者に対して「油種不適による給油不可」を報知する。これらの報知動作の後、判定部13はステップS31に動作を戻す。
【0106】
ステップS35: 判定部13は、ステップS30で読み取った車番を、インターネットなどのネットワークを介して外部などの登録データベースに照会し、油種や車種の登録情報を取得する。(固定客など許可が事前に得られる場合、可能ならば自動車検査登録情報提供サービスなどから油種や車種の登録情報を取得する。)
【0107】
ステップS36: ステップS31で情報取得した油種が登録情報と適合しない場合、判定部13は、ステップS37に動作を移行する。一方、登録情報と適合する油種を給油する場合や、登録データベースに車番が見つからない場合は、判定部13は、ステップS38に動作を移行する。
【0108】
ステップS37: 判定部13は、油種不適に関する情報を、監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16aに転送する。監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16は、「油種不適による給油不可」を、モニタ表示や音声通知や警報点灯によって監視者に報知する。給油レーンに配置された警報器16aも音声通知や警報点灯を行い、給油者に対して「油種不適による給油不可」を報知する。これらの報知動作の後、判定部13はステップS31に動作を戻す。
【0109】
ステップS38: 判定部13は、ステップS30で読み取った車番について、レンタカー(カーシェアを含む)の車番か否か(例えば、日本では車番の用途コードが「わ」または「れ」は、レンタカーの車番である)を判定する。
【0110】
ステップS39: レンタカーの場合、給油者にとって一時的な車両利用であるために、給油者が油種を間違う確率が高くなる。そこで、判定部13は、レンタカーの車番を検知すると、「油種間違いのおそれ有り」と判定し、ステップS40に動作を移行する。レンタカーの車番でない場合、判定部13はステップS41に動作を移行する。
【0111】
ステップS40: 判定部13は、油種間違いの可能性を、監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16aに転送する。監視パソコン15や手持ち端末17や警報器16は、「油種間違いのおそれ有り」を、モニタ表示や音声通知や警報点灯によって監視者に報知する。給油レーンに配置された警報器16aも音声通知や警報点灯を行い、給油者に対して「油種間違いのおそれ有り」を報知する。これらの報知動作の後、判定部13はステップS41に動作を戻す。
【0112】
ステップS41: バイクのように給油タンクの小さな車両の場合、ノズルの差し込みが傾いたり浅くなるため、給油ノズルによる満タン検出(給油ストッパー動作)が不正確になり得る。そこで、判定部13は、バイクのように給油タンクの小さな車両の車番を検知すると、給油の吐出量や給油量を抑制して燃料の吹きこぼれを回避する。
【0113】
ステップS42: セルフサービス式のガソリンスタンドGSでは、法令などに従い、危険物取扱者である監視者が、給油者が行う給油を監視し、給油の許可を行う。
図19は、この監視者が使用する監視パソコン15や手持ち端末17の画面表示を示す図である。
同図において、画面表示は、ライブ表示域301、情報欄302、解析表示域303、確認要ボタン304、および操作域305などのマルチウィンドウから構成される。
ライブ表示域301には、映像取得部11により撮影される給油レーンごとのライブ映像がマルチ画面で同時に表示される。
情報欄302には、ステップS30で検知された車番、ステップS35で照会された登録情報、ステップS32で照会された給油履歴14のデータ、顧客の課金決裁の情報、当該車両や給油者における過去の不正行為などが一覧表示される。
【0114】
解析表示域303には、上述した学習モデル200~260による解析結果として、給油不可に係る重要部分の画像や、解析内容の状況説明や、不正行為に対する対処方策が表示される。
この解析表示域303には、監視者がライブ表示域301の画面選択により選択した給油レーンについて解析結果を表示してもよい。
また、複数の給油レーンごとの解析結果を所定間隔おきに自動的に切替え表示してもよい。
さらに、給油者の存在する給油レーンの解析結果を優先的に表示してもよい。
また、不正行為が発生中の給油レーンの解析結果を自動選択して表示してもよい。
【0115】
解析表示域303の表示の内、保安上の問題が生じ得る解析結果については、監視者に確認を促すために、確認要ボタン304が点灯ないし点滅表示する。監視者は、解析内容の状況説明を確認した上で確認要ボタン304を操作(クリックまたはタップ)する。この確認要ボタン304の操作結果は、不正行為の内容やライブ映像や日時情報と共に監視パソコン15内の監視ログファイルに逐次記録される。
【0116】
操作域305には、給油レーンの選択ボタンと、選択された給油レーンの給油可否を制御するための操作ボタン(OKボタン、NGボタン)が表示される。監視者は、OKボタンを操作することにより、給油者の給油を許可する。また、監視者は、NGボタンを操作することにより、給油者の給油を禁止(または一時停止)する。
【0117】
ステップS43: 判定部13は、車番、給油した油種、給油量、日時、不正行為の内容、および給油可否に関する情報を給油履歴14に記録する。
【0118】
以上の一連の監視支援が給油許可まで随時に繰り返されることにより、監視者は少ない負担で給油許可を慎重かつ安全に行うことが可能になる。
【0119】
[画像解析システム100の給油許可後の動作]
図20は、給油許可の後も検知する不正行為の項目を示す図である。
以下、同図に示す項目別に、給油許可の後の動作について説明する。
【0120】
・「給油ノズルを正しく挿置しない不正行為」
給油直前や給油中において、給油ノズルを給油口から浮かして給油ノズルによる液面検出を遅らせ、給油口ぎりぎりまで給油を行う行為(以下「追加給油行為」という)が知られている。この追加給油行為では、給油の自動停止機能が十分に機能せず、給油口から燃料が吹きこぼれる可能性が有る。
【0121】
そこで、画像解析システム100は、給油許可の後も、給油ノズルの挿置状況について継続して検知を行う。その結果、給油直前や給油中に給油ノズルを給油口から浮かせる追加給油行為を検知することが可能になる。
【0122】
給油直前に追加給油行為が検知された場合、画像解析システム100は、給油許可を給油不可に一旦変更する。この状態で、警報器16aによる給油者への注意喚起と、監視パソコン15などによる監視者への不正行為の報知がなされる。監視者は給油ノズルが正しく挿置されたことを確認した上で、監視パソコン15などを操作して給油不可を給油許可に切り替える。
【0123】
また、給油中に追加給油行為が検知された場合、画像解析システム100は、給油許可を給油不可に一旦変更すると共に、安全のために給油を一時停止する制御を行う。この状態で、警報器16aによる給油者への注意喚起と、監視パソコン15などによる監視者への不正行為の報知がなされる。監視者は給油ノズルが正しく挿置されたことを確認した上で、監視パソコン15などを操作して給油不可を給油許可に切替え、給油の一時停止を解除する。
【0124】
・「給油位置に正しく停止しない不正行為」
運転者が給油者と別人の場合、給油時に運転者が誤って車両を発進させる場合が有る。この場合、給油が正常に行えないばかりか、給油中のエンジン始動による不測の事態や、車体の揺れによって給油口から燃料がこぼれるなどの可能性も有る。
【0125】
そこで、画像解析システム100は、給油許可の後も、車両の給油位置について継続して検知を行う。その結果、給油直前や給油中の車両移動を検知することが可能になる。
【0126】
給油直前に車両移動が検知された場合、画像解析システム100は、給油許可を給油不可に一旦変更する。この状態で、警報器16aによる運転者への注意喚起と、監視パソコン15などによる監視者への不正行為の報知がなされる。監視者は車両が正しい給油位置に戻ったことを確認した上で、監視パソコン15などを操作して給油不可を給油許可に切り替える。
【0127】
また、給油中に車両移動が検知された場合、画像解析システム100は、給油許可を給油不可に一旦変更すると共に、安全のために給油を一時停止する制御を行う。この状態で、警報器16aによる運転者への注意喚起と、監視パソコン15などによる監視者への不正行為の報知がなされる。監視者は車両が正しい給油位置に戻ったことを確認した上で、監視パソコン15などを操作して給油不可を給油許可に切替え、給油の一時停止を解除する。
【0128】
・「要注意状況に関する不正行為」
下記のような要注意状況は、給油許可の後も同様に注意すべき状況である。
【0129】
(1)火気使用、(2)たばこ、(3)ライター、(4)マッチ、(5)喫煙具、(6)喫煙、(7)発火、(8)スパーク発生、(9)高温物、(10)引火物、(11)可燃物、(12)爆発物、(13)危険物、(14)携行缶、(15)灯油タンク、(16)通話や画面注視の不注意状態、(17)携帯電話による不注意状態、(18)モバイル機器による不注意状態、(19)車外の子供の存在、(20)給油中のよそ見、(21)給油中の会話、(22)給油者などの転倒、(23)給油者などの争い、(24)給油スペースでの騒乱、(25)給油キャップの紛失や閉め忘れ、(26)酔っ払い、倒れ込む、しゃがみ込む、何かを隠すなどの異常行動、(27)不注意行動、(28)危険行動
そこで、画像解析システム100は、給油許可の後も、要注意状況について継続して検知を行う。
【0130】
給油直前に要注意状況が検知された場合、画像解析システム100は、給油許可を給油不可に一旦変更する。この状態で、警報器16aによる給油者への注意喚起と、監視パソコン15などによる監視者への要注意状況の報知がなされる。監視者は要注意状況が解消されたことを確認した上で、監視パソコン15などを操作して給油不可を給油許可に切り替える。
【0131】
また、給油中に要注意状況が検知された場合、画像解析システム100は、給油許可を給油不可に一旦変更すると共に、安全のために給油を一時停止する制御を行う。この状態で、警報器16aによる給油者への注意喚起と、監視パソコン15などによる監視者への不正行為の報知がなされる。監視者は要注意状況の解消を確認した上で、監視パソコン15などを操作して給油不可を給油許可に切替え、給油の一時停止を解除する。
【0132】
・「不必要な人数が滞在する不正行為」
給油直前や給油中に不必要な人数が集まる行為は、不測の事態ともなり得る。そこで、画像解析システム100は、給油許可の後も、給油スペースの滞在人数を検知する。
【0133】
給油直前に「不必要な人数が滞在する不正行為」が検知された場合、画像解析システム100は、給油許可を給油不可に一旦変更する。この状態で、警報器16aによる滞在者への注意喚起と、監視パソコン15などによる監視者への要注意状況の報知がなされる。監視者は状況の安全を確認した上で、監視パソコン15などを操作して給油不可を給油許可に切り替える。
【0134】
また、給油中に「不必要な人数が滞在する不正行為」が検知された場合、画像解析システム100は、給油許可を給油不可に一旦変更すると共に、安全のために給油を一時停止する制御を行う。この状態で、警報器16aによる滞在者への注意喚起と、監視パソコン15などによる監視者への不正行為の報知がなされる。監視者は状況の安全を確認した上で、監視パソコン15などを操作して給油不可を給油許可に切替え、給油の一時停止を解除する。
[実施例1の効果]
【0135】
(1)実施例1では、給油スペースの映像群について不正行為を機械学習させた学習モデルを使用する。このような機械学習では、監視者が危険や誤りとして感じる不正行為に反応する学習モデルが得られる。そのため、監視者を補って(または監視者に代わって)給油スペースの不正行為を検知することが可能になる。
【0136】
(2)実施例1では、給油スペースの映像群について車両が給油位置に停止しているか否かを機械学習させた学習モデル200を使用する。そのため、監視者を補って(または監視者に代わって)、車両が給油位置に停止しない不正行為を検知することが可能になる。
【0137】
(3)実施例1では、給油スペースの映像群について給油者が静電気除去行動をしたか否かを機械学習させた学習モデル210を使用する。そのため、監視者を補って(または監視者に代わって)、給油者が静電気除去行動をしない不正行為を検知することが可能になる。
【0138】
(4)実施例1では、給油スペースの映像群について給油ノズルが給油先に正しく挿置されたか否かを機械学習させた学習モデル220を使用する。そのため、監視者を補って(または監視者に代わって)、給油ノズルの挿置についての不正行為を検知することが可能になる。
【0139】
(5)実施例1では、給油スペースの映像群について給油スペースの人数を機械学習させた学習モデル230を使用する。そのため、監視者を補って(または監視者に代わって)、給油スペースの人数が所定数を超える不正行為を検知することが可能になる。
【0140】
(6)実施例1では、給油スペースの映像群について給油先が車両か否かを機械学習させた学習モデル240を使用する。そのため、監視者を補って(または監視者に代わって)、車両以外に給油する不正行為を検知することが可能になる。
【0141】
(7)実施例1では、給油スペースの映像群について、火気使用、たばこ、ライター、マッチ、喫煙具、喫煙、発火、スパーク発生、高温物、引火物、可燃物、爆発物、危険物、携行缶、灯油タンク、通話や画面注視、携帯電話、モバイル機器、車外の子供、よそ見、会話、転倒、争い、騒乱、給油キャップの紛失や閉め忘れ、酔っ払い、倒れ込む、しゃがみ込む、何かを隠すなどの異常行動、不注意行動、および危険行動からなる群の少なくとも一つ以上の要注意状況について機械学習させた学習モデル250を使用する。そのため、監視者を補って(または監視者に代わって)、これらの要注意状況を不正行為として検知することが可能になる。
【0142】
(8)実施例1では、給油対象の車両について車番を検知する。車番は車両全てにおいて異なるため、車両の個体識別が可能になる。その車番を過去の給油履歴14に照合することにより、給油が2回目以降であって過去と同じ油種の給油が選択されない場合は給油不可と判定することができる。
【0143】
(9)さらに、実施例1では、車番に関連付けて油種(または油種を特定可能な車種)が登録された登録データベースに、給油対象の車両の車番を照会する。登録済みの車両であれば、照会結果と適合する油種が選択されない場合は給油不可と判定することができる。
【0144】
(10)実施例1では、給油対象の車番がレンタカー(カーシェアを含む)の車番(日本の場合は用途コードが「わ」または「れ」)と一致すると、「油種間違いのおそれ有り」と判定する。一般に、給油者にとってレンタカーは一時的な利用のため、給油者は油種を間違えやすくなる。そのため、レンタカーを検知して注意喚起を行うことにより、「油種間違い」を高い確率で防止することが可能になる。
【0145】
(11)実施例1では、事務室内の監視パソコン15の画面(
図19参照)において、不正行為の検知と給油可否の決定を一元的に操作することが可能になる。
【0146】
(12)実施例1では、手持ち端末17を介して、監視パソコン15と同様の一元的な操作が可能である。そのため、監視者が給油レーンに向かうために事務室から離れても、手持ち端末17を用いて、不正行為の検知と給油可否の決定を一元的に操作することが可能になる。
【実施例2】
【0147】
続いて、実施例2について説明する。
従来、タクシー会社や運輸会社のように所定数の車両を運用する会社では、社有駐車場の一角に専用給油所を設けることがある。このような専用給油所では、会社の営業車や社用車などの車両(以下「資格車」という)に限って会社の経費負担で給油が行われる。
【0148】
通常、専用給油所では、資格車の運転者に対して、給油資格を示すIDカードを貸与することで、資格車か否かを判断する。しかしながら、IDカードを不正使用して無資格車が無料で給油を行う行為(以下「無資格給油の不正行為」という)を防ぐことが困難であった。
【0149】
[実施例2の構成説明]
図21は、専用給油所の給油監視に好適な画像解析システム500の要部を示す図である。
【0150】
同図において、専用給油所GS2には、画像解析システム500、および給油装置510が設置される。
画像解析システム500は、一体型カメラユニット520と、検知部530と、判定部540と、資格車の車番を予め登録した登録部550と、監視パソコン560とを備えて構成される。
ここで、検知部530、および判定部540は、画像処理サーバ570の機能によって実現される。
【0151】
一体型カメラユニット520は、ナンバープレートを撮影する高感度カメラ521と、暗部を照明する赤外線照明装備522と、曇りや雨滴や内部結露を除去するためのヒーターガラス装備523と、駐車場の入口ゲートや給油スペースにカメラを設置するための設置柱524と、不正行為を警告するための警報器525とを備えて構成される。
【0152】
その他、実施例2の画像解析システム500は、実施例1の画像解析システム100と同一の構成(
図1,
図2参照)を備える。
【0153】
[実施例2の動作説明]
図22は、画像解析システム500の動作を説明する図である。
以下、同図に示すステップ番号に沿って説明する。
【0154】
ステップS111: 検知部530は、高感度カメラ521から給油対象の車両のナンバープレートの映像情報を取得する。
【0155】
ステップS112: 検知部530は、実施例1と同様にして、ナンバープレートの映像情報から車番を検知する。
【0156】
ステップS113: 判定部540は、検知された車番を、給油資格を有する資格車の車番を登録した登録部550に照会する。
【0157】
ステップS114: 判定部540は、車番が登録部550に登録されていない場合、無資格給油の不正行為と判定し、ステップS115に動作を移行する。一方、車番が登録部550に登録されていた場合、専用給油所GS2において給油資格有りと判定し、実施例1(
図12)のステップS11に動作を移行する。これ以降は、実施例1と同じ動作が行われる。
【0158】
ステップS115: 判定部540は、無資格給油の不正行為と判定し、給油装置510に対して給油禁止信号を出力して給油を停止し、無資格給油を未然に防止する。
【0159】
ステップS116: 判定部540は、監視パソコン560および警報器525に対して、無資格給油の不正行為を情報伝達する。監視パソコン560は、監視者に対して無資格給油の警報を出力し、注意喚起を行う。警報器525は、給油者に対して警報を発して、無資格給油の事情を音声ガイドで説明する。監視パソコン560は、無資格給油の未遂としてナンバープレートの映像と車番などを記録保存する。
【0160】
[実施例2の効果]
実施例2は、実施例1の効果に加えて、さらに次の効果を奏する。
(1)実施例2では、給油対象の車両について車番を検知する。車番は車両全てにおいて異なるため、車両の個体識別が可能になる。その車番を登録部550に照会することにより、無資格給油の不正行為を判定することが可能になる。
【0161】
<実施形態の補足>
上述した実施例1,2では、車両の識別に車番を使用する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。車番の代わりに、車体の特徴を使用しても、車両の識別を行うことができる。
例えば、タクシーなどの営業車であれば、車体の塗装パターンや屋上灯によってタクシー会社の車両の識別(給油資格を有するか否かなど)が可能である。
また、運輸会社の車両であれば、車体のロゴマークや会社名や塗装パターンによって運輸会社の車両の識別(給油資格を有するか否かなど)が可能である。
さらに、一般車であっても、車体に貼られた車検シールの位置や配置の違いや、車体とタイヤホイールの組み合わせや、車体に付けたQRコードなどのコード、車体の損傷などの固有の特徴や、それら2つ以上の組み合わせにより、車両の個体識別が可能である。
【0162】
また、上述した実施例1,2では、車番を映像情報から読み取っている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。車番は、映像情報から読み取るだけではなく、車両に搭載された無線タグや無線装置などを通じた情報通信により取得してもよい。
【0163】
さらに、上述した実施例1,2では、監視者が給油許可の最終判断を行っている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。法令などに反しない場合は、判定部が給油装置の給油可否を直接的に制御してもよい。
【0164】
また、上述した実施例1,2では、学習モデル200~260として、畳込みニューラルネットワーク(
図3参照)を使用した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、このような学習モデルとしては、決定木学習、相関ルール学習、ニューラルネットワーク、遺伝的プログラミング、帰納論理プログラミング、サポートベクターマシン、クラスタリング、ベイジアンネットワーク、強化学習、表現学習、主成分分析、エクストリーム・ラーニング・マシン、およびその他の機械学習技法の少なくとも一つの技法に基づく学習モデルを採用してもよい。
【0165】
さらに、上述した実施例1,2では、ガソリンや軽油の給油について説明した。しかしながら、本発明の給油はこれに限定されない。例えば、灯油を給油する装置であれば、ガソリン車やディーゼル車への給油を不正行為として検知すればよい。
【0166】
また、上述した実施例1,2では、ガソリンスタンドGSや専用給油所GS2の単位で実施している。しかしながら、本発明はこれに限定されない。クラウドネットワーク上に画像解析システムの一部または全部を設置して、個々の給油装置とネットワーク接続することによって、地域単位やガソリン供給会社単位などの広域を単位にして、発明を実施することが可能になる。
【0167】
さらに、上述した実施例1,2では、給油履歴を油種不適の発見に使用している。しかしながら、本発明はこれに限定されない。画像解析システムは、給油履歴として蓄積される過去の不正行為から、不正行為の常習者(常習車両)を抽出して要注意リストを作成してもよい。画像解析システムは、この要注意リストに入店者(入店車両)を照会することにより、不正行為を行う前に常習者(常習車両)を予防的に検知することが可能になる。その結果、画像解析システムは、常習者に対する事前の注意を監視者に促すことができる。また、画像解析システムは、常習者に対する不正行為の検知処理を優先することが可能になる。
【0168】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、有る実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、有る実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
さらに、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0169】
GS…ガソリンスタンド、10…給油装置、11…映像取得部、12…検知部、13…判定部、14…給油履歴、15…監視パソコン、16…警報器、16a…警報器、17…手持ち端末、18…無線LAN、19…インターフェース部、20…給油制御装置、21…ネットワークスイッチ、22…画像処理サーバ、31…前処理部、32…入力層、33…畳み込み層・活性化関数、34…プーリング層、35…ニューラルネットワーク、100…画像解析システム、200…学習モデル、210…学習モデル、220…学習モデル、230…学習モデル、240…学習モデル、250…学習モデル、260…学習モデル、301…ライブ表示域、302…情報欄、303…解析表示域、304…確認要ボタン、305…操作域、GS2…専用給油所、500…画像解析システム、510…給油装置、520…一体型カメラユニット、521…高感度カメラ、522…赤外線照明装備、523…ヒーターガラス装備、524…設置柱、525…警報器、530…検知部、540…判定部、550…登録部、560…監視パソコン、570…画像処理サーバ