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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】美容器、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20231024BHJP
   A61N 1/30 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019091933
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020185207
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】山崎 岩男
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特許第6445212(JP,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1741110(KR,B1)
【文献】特開2013-059556(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084687(WO,A1)
【文献】特開2019-055052(JP,A)
【文献】特開2018-011775(JP,A)
【文献】特開2017-077314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/30
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の肌面に異なる特性の電流を通電可能な美容器であって、
2以上の特性の電流を発生する電源部と、
中央に1つの中央電極と、該中央電極の外周方向に離間した位置に3以上の外周電極と、使用者が手で把持した際に通電可能な手元電極とを備える構成において、
該外周電極は、先端が微小な曲面である略円錐台であり、
該中央電極と該手元電極との間に、イオン導入・導出を行う第1の特性の第1電流を通電すると共に、
該外周電極のうち所定の組み合わせの電極間に、第1の特性とは異なり、電気的筋肉刺激を与える第2の特性の第2電流を通電する
ことを特徴とする美容器。
【請求項2】
使用者の肌面に異なる特性の電流を通電可能な美容器であって、
2以上の特性の電流を発生する電源部と、
中央に1つの中央電極と、該中央電極の外周方向に離間した位置に3以上の外周電極と、使用者が手で把持した際に通電可能な手元電極とを備え
該外周電極が仮想多角形の各頂点に配置される略円頭状又は略円錐状であって、該中央電極の中心が、該外周電極を周方向に順に結んでなる該仮想多角形の内側に位置するように配置される構成において、
該中央電極と該手元電極との間に、イオン導入・導出を行う第1の特性の第1電流を通電すると共に、
該外周電極のうち2以上の組み合わせで選択される第1電極群の電極と、該中央電極を挟んで該第1電極群の各電極と対向する位置にある第2電極群の電極との間に、第1の特性とは異なり、電気的筋肉刺激を与える第2の特性の第2電流を通電する
ことを特徴とする美容器。
【請求項3】
前記外周電極が8以上の略正多角形の各頂点に配置される
請求項に記載の美容器。
【請求項4】
前記第1電極群と前記第2電極群を構成する前記外周電極の組み合わせは時間的に変化する
請求項2又は3に記載の美容器。
【請求項5】
前記外周電極の組み合わせは45度以下の角度ずつ周回するように変化する
請求項4に記載の美容器。
【請求項6】
該外周電極のうち前記第1電極群及び前記第2電極群の電極以外の電極間に第1の特性及び第2の特性とは異なる第3の特性の第3電流を通電する、
請求項2ないし5のいずれかに記載の美容器。
【請求項7】
前記外周電極は直径が2mmないし6mmである、
請求項1ないし6のいずれかに記載の美容器。
【請求項8】
前記外周電極のうち最遠の中心間距離が少なくとも10mm以上である、
請求項1ないし7のいずれかに記載の美容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の肌面に電流を通電可能な美容器とその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から所定の周波数の電流を印加する美容器が知られている。EMS(Electrical Muscle Stimulation)と呼ばれる電気的筋肉刺激を与える美容器や、さらに高い周波数帯を用いて温熱効果を与え、肌のハリ、弾力を高めるRF美容器が提供されている。
また、電極から使用者の体内に通電してイオン導入、イオン導出と呼ばれる作用を行い、移動する電荷と共に化粧水を浸透させやすくしたり、肌表面の老廃物を電極側に付属するコットンで拭き取りやすくする技術が知られている。
【0003】
EMSでは数Hzから数kHzの周波数で電気刺激を肌に与えることで筋収縮を起こして筋肉運動をさせ、たるみを改善させることができる。
また、RFでは例えば1Mhz程度の高周波を用いて肌の内部を温め、コラーゲン・エラスチンの生成を促し、シワ・ハリ・たるみの改善を図ることができる。
【0004】
さらに、近年メソポレーション法と呼ばれる、高分子物質や極性物質を経費導入する技術が知られている。非特許文献1によれば、パルス電流を用いたメソポレーション法によりビタミンC誘導体を導入する実験などが紹介されている。
【0005】
このように電極を備えた美容器による美容方法は多く知られており、電極の構成についても様々に提案されている。
本出願人による特許文献1は、中央にイオン導入用の電極として機能する美容処理電極が設けられ、その外周にイオン導入用及び通電刺激用を兼用する電極としての美容処理電極が設けられていること、グリップ電極が設けられていることが記載されている。本文献では中央電極の上下に2つの三日月状の電極を備える美容器が開示されている。
【0006】
同じく本出願による特許文献2では、同心円状に帯状電極が設けられていること、ユーザの手のひらと接触するグリップ電極が設けられていることが記載されている。そして、マイナスイオンを皮下組織に導入することで肌に潤いが与えられ、通電刺激モードでは、皮膚面にそれぞれ接触させた2つの兼用電極と兼用電極との間に、低周波の微弱電流が供給され、美肌処理効果が付与されることが記載されている。本文献において、電極は三日月状の電極が並列した構成や、大きな円形と三角形の2つの電極の構成が開示されている。
【0007】
特許文献3には、円筒状の先端部の中央に電極部が形成され、その外周に3対の電極部が形成されていることが記載されている。本文献では1対の電極として互いに隣接する電極が図示されており、該電極間から電気的穿孔によって皮膚の細胞膜に微細孔を形成することが記載されている。またイオン導入を行う中央部の電極部は、外周の3対の電極部と通電することから、3対の電極部については兼用となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-29518号公報
【文献】国際公開2006-131997号
【文献】特開2016-202660号公報
【文献】特開2014-184001号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】インターネットURL http://www.acthys.com/pdf/meso.pdf 2019年4月25日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術によると、イオン導入と電気刺激など、異なる種類の美容作用を及ぼすための様々な電極の構成が開示されている。しかし、これらの従来技術では3つの課題がある。
第1に、それぞれの作用を及ぼすための電極は固定されているので、例えば電気刺激が与えられる部位は常に同じである。肌面の様々な部位に通電することはできない。
第2に、中央の電極と外周に備えた電極とは、それぞれの作用を及ぼす際に兼用されるので、同時に2以上の特性の電流を通電することは想定されていない。そのため、多様な美容作用を提供することができない。
第3に、電極の形状はいずれも平面であり、通電する電流が分散しやすく少ない電力で効果的な電気刺激を付与しにくい。
【0011】
本発明は上記従来技術の有する問題に鑑みて創出されたものであって、使用者の肌面に異なる特性の電流を通電すると共に、肌面の様々な部位、向きに効率よく通電が可能な美容器、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は次のような美容器を提供する。
すなわち、本発明の第1の態様によれば、使用者の肌面に異なる特性の電流を通電可能な美容器であって、2以上の特性の電流を発生する電源部と、中央に1つの中央電極と、中央電極の外周方向に離間した位置に3以上の外周電極と、使用者が手で把持した際に通電可能な手元電極とを備える構成において、中央電極と手元電極との間に、第1の特性の第1電流を通電し、肌面深部への通電を可能にすると共に、外周電極のうち所定の組み合わせの電極間に、第2の特性の第2電流を通電し、肌面の表面近傍で通電を可能にする美容器を提供する。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、上記の外周電極がそれぞれ略点状であって、中央電極の中心が、外周電極を周方向に順に結んでなる仮想多角形の内側に位置するように配置することができる。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、上記の外周電極が8以上、好ましくは8ないし12の略正多角形の各頂点に配置される美容器を提供してもよい。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、上記の外周電極のうち最遠の中心間距離が少なくとも10mm以上である構成でもよい。
【0016】
本発明の第5の態様によれば、上記の外周電極は、肌面側に頂点を有する略円頭状又は略円錐状とすることもできる。
【0017】
また、本発明は次のような美容器の制御方法を提供することもできる。
すなわち、本発明の第6の態様によれば、少なくとも略正多角形の各頂点に配置された3以上の外周電極を用い、制御部が、1以上の外周電極から選択される第1電極群と、1以上の外周電極から選択される第2電極群との対に電源部からの第2の特性の第2電流を通電し、かつ、その第1電極群と第2電極群を構成する外周電極の組み合わせを変えることによって電流を印加する部位が時間変化するように制御することを特徴とする美容器の制御方法を提供する。
【0018】
本発明の第7の態様によれば、上記の第2電流の制御方法において第1電極群と第2電極群が対向する位置であって、第1電極群及び第2電極群の対が周方向に順次周回するように制御される美容器の制御方法を提供することができる。
【0019】
本発明の第8の態様によれば、上記美容器には、上記の略正多角形の内側に中心を有する中央電極と、使用者が手で把持した際に通電可能な手元電極とをさらに備えた構成において、制御部が、中央電極と手元電極との間に、電源部からの第1の特性の第1電流を通電することもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、中央電極と手元電極の対、及び3以上の外周電極の組み合わせからなる対によって独立した2つの異なる特性の電流を肌面に通電することができ、それぞれの電極の態様に応じた最適な美容作用を実現することができる。
【0021】
また、外周電極のうち所定の組み合わせの電極間に、第2の特性の第2電流を通電することによって肌面の様々な部位に通電が可能な美容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る美容器の斜視図。
図2】本発明に係る美容器の正面図及び右側面図。
図3】本発明に係る美容器の電極の説明図。
図4】本発明に係る美容器の電極の形状を示す図。
図5】本発明に係る美容器の構成図。
図6】本発明に係る制御方法の説明図。
図7】本発明に係る制御方法の説明図。
図8】本発明に係る美容器の電極の別実施例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
図1及び図2は本発明に係る美容器(1)の斜視図、正面図及び右側面図である。美容器(1)は使用者が手で把持する本体部(10)と電極を備えたヘッド部(11)とから構成される。本体部(10)には体感の程度を調整するためのレベルスイッチ(12)、電源の入り切りやモードを切り換えるための電源スイッチ(13)、本体の状態を示すインジケータ(14)などを備えている。なお、これらの操作機構や表示機構については任意に変更可能である。
【0024】
本体部(10)には、充電池を備えて底面に備えた給電端子からの給電により充電したり、給電して使用することができるが、充電機能の有無や給電の方法は問わない。
【0025】
ヘッド部(11)には、本発明に係る複数の電極を備えており、使用者がヘッド部(11)を肌面に当接させ、電気刺激やイオン導入・導出などの美容効果を奏することができる。まず、ヘッド部(11)の中央には1つの中央電極(20)と、中央電極(20)の外周方向に離間した位置に8個の外周電極(21aないし21g)とを備える。合わせて、使用者が手で把持した際に通電可能な手元電極(22)を本体部(10)の外装に備えている。
【0026】
図3には本発明に係る美容器の電極の説明図を示す。中央電極(20)は円環状に突出した導電体、本実施例ではステンレス材料で構成される。中央電極(20)の直径は10mmであり、手元電極(22)と対として通電される。手元電極(22)は本体部(10)の周縁に沿って配置されているため、本体部(10)を把持すると使用者の手掌と必ず接する位置にある。
【0027】
なお、手元電極(22)は本体部(10)の正面側、背面側などに帯状に設けられてもよい。いずれにしても、把持したときに自然に触れる位置で、接触抵抗が少なくなるように十分に広範囲で接する構成が好ましい。
【0028】
本発明において中央電極(20)は陰極、手元電極(22)を陽極として中央電極(20)から負の電荷が肌面深部へ至る。そこで、肌面に塗布したり、コットンに含ませた化粧水が、マイナスイオンに帯電して肌に吸着して浸透しやすくなる。これが所謂イオン導入であり、本実施例では中央電極(20)によって肌面への保湿ケアを行うことができる。なお、陽極と陰極を逆にしてイオン導出する構成でもよい。
【0029】
外周電極(21aないし21g)は中央電極(20)を取り囲むように、仮想的な正八角形の頂点の位置に設けられている。外周電極(21aないし21g)は基部における直径が5mmの略点状の形態であり、本実施例ではステンレス材料で構成される。
中央電極(20)の中心は、外周電極(21aないし21g)を周方向に順に結んでなる正八角形の内側に位置するように配置されている。この配置により、後述するようにヘッド部(11)を小型化しながら外周電極間の距離を長くし、多様な美容作用を実施することができる。
【0030】
従来からEMSやRFなどの美容器において同心円の円環状の電極を用いる構成がよく知られている。しかしながら、このような円環状の電極の場合、接している肌面において化粧水や汗が付着して電気を通しやすい部分に偏って通電してしまう問題があり、必ずしも均一に作用されないことがあった。
【0031】
また、従来の美容器における電極は一般に平面的で本発明よりも広い面積を有する電極が多かった。そのため、電流は肌面に対して分散しやすく、効率よく刺激を与えることはできなかった。
さらに、限られた電極部分で広い電極を用いると、電極間の距離が近くなり、顔面の筋肉がその間にうまく挟まれないと効果が十分に発揮できない問題もあった。
【0032】
本発明では略点状に配置したことで、外周電極の中で所定の電極間に電位差を生じさせれば目標部位に的確に通電することができる。略点状の電極は局地的に肌に接するため、美容鍼と同様の刺激を与えることが可能であり、ヒアルロン酸やアスコルビン酸などの保湿成分を角質層まで効率よく届けることにも寄与する。
【0033】
従って、本発明において略点状の外周電極の大きさは重要な要素である。外周電極の直径は3mmないし5mmの範囲が好ましい。このように小径で構成すると、出力電力が小さくても体感しやすくなり、美容作用を高めることができる。出力を抑えても強い刺激を得ることができるので省電力化を図ることもできる。
【0034】
発明者らの実験によれば、直径が2mm未満の場合、電極と肌面の接する部分が小さくなりすぎ、電気刺激を感じにくくなる。一方、直径が6mmを超えると、従来の構成のように電極が大きくなり、電極間の距離が十分に取りにくくなるほか、局地的な刺激の効果も薄くなることが分かっている。従って、少なくとも外周電極は直径2mmないし6mmの範囲、特に3mmから5mmの範囲が最適である。
なお、電極の大きさは異なっていてもよく、例えば直径3mmの電極と直径5mmの電極を混在させてもよい。
【0035】
外周電極において、最遠の電極(例えば21aと21e)間の中心間距離Lは20mmである。本発明では略点状の電極を外周に配置することにより、最小限のヘッド部(11)の面積において長い電極間距離をとることができる。この点でも本発明にかかる多角形の頂点に小径の外周電極(21aないし21g)を備えた構成は利点がある。
【0036】
上記中心間距離Lは、上述したように顔面の様々な筋肉に対して的確に作用するために、少なくとも10mm以上とするのが好ましい。ヘッド部(11)をコンパクトなサイズとして細かな筋肉にも対応しながら、略点状の外周電極から強い電気刺激を付与することで本発明は特に大きな美容効果を奏する。
特に本実施例の通り、直径5mmの外周電極に対してL=20mm程度が最適である。
【0037】
本実施例では、外周電極(21aないし21g)のうち所定の組み合わせの電極間に交流電流を印加し、電気刺激を与える。EMSのための交流周波数は数Hzから数kHzの範囲が好ましい。
【0038】
外周電極(21aないし21g)の具体的な形状を図4(a)及び(b)に示す。本発明では、外周電極を肌面側に頂点を有する円頭状とすることが好ましい。すなわち、小径の円頭状とすることで外周電極(図示では21a、21b)が皮膚(2)に食い込みやすく、電極間の電流(E)を皮膚の内部にダイレクトに流すことができる。この点、従来の平面的な電極では皮膚に食い込むことがないので表面同士を円弧状に流れた電流のみが内部に到達できる状態であった。本発明によれば、皮膚内部に効率よく電圧を印加することができる。
【0039】
図4(b)は外周電極(21a’,21b’・・)を略円錐状に構成した別実施例であり、(a)の構成よりもさらに皮膚(2)に局地的な刺激を与えやすく構成している。先端を尖らせると、電気刺激と共に電極が皮膚を強く押すことによる美容鍼のような刺激を肌に与えることもできる。
本発明に言う略円錐状には、微小な上面を形成した円錐台も含むことができる。
【0040】
外周電極の数について上記実施例では8としている。この点、少なくとも直交する向きに通電することが好ましいため、4つの電極としてもよいが、顔面の筋肉が細かく多様な方向に位置していることに鑑み、本発明では45度毎の向きにも電気刺激を与えられるように8角形の電極配置としている。これに対し、6角形では直交成分が形成できないことから、特に8以上の配置とすることが好ましい。
【0041】
8以上であれば、例えば9個であっても成す角が80度の直交に近い電極を選択することができるので適している。
一方、電極数が12を超えると、ヘッド部(11)においてコンパクトに配置することが困難となり、上記の最適な径の電極を備えることが困難となる。また、制御も複雑になる割に、効果に相違が見られない。
このため、発明者の知見によれば、電極数は8ないし12が最適である。
【0042】
本発明の美容器(1)の形状は以上の通りであるが、次に本発明に係る美容器の制御方法について説明する。
図5は本発明に係る美容器の構成図である。コンピュータや電気回路によって実現される制御部(30)、制御部(30)の制御に従って異なる特性の電流を出力可能な電源部(31)、レベルスイッチ(12)や電源スイッチ(13)を例とする操作部(32)などを本体部(10)の内部に装備する。
【0043】
上述したように中央電極(20)と手元電極(22)の間にはイオン導入に適する第1の特性の第1電流を出力する。第1電流は、例えば1V~20V程度の直流電流であり、使用者が操作部(32)でイオン導入のモードを選択した時に、制御部(30)が電源部(31)を制御して出力される。
【0044】
なお、第1電流は、直流電流の正逆を反転してもよいし、パルス電流であってもよい。パルス電流の場合には、電源部(31)に発振回路を備えるか、コンピュータのクロックを利用してソフトウェアによりパルス波を出力してもよい。
イオン導入に適したパルス電流は、例えば出力電圧5V程度、周波数1.5kHzなどが好ましい。
【0045】
一方、外周電極については、制御部(30)が、1以上の外周電極から選択される第1電極群(23)と、1以上の外周電極から選択される第2電極群(24)との対に電源部(31)からの第2の特性の第2電流を通電する。このとき、第1電極群(23)と第2電極群(24)を構成する外周電極の組み合わせを変えることによって電流を印加する部位が時間変化するように制御する。
【0046】
図6は本発明に係る制御方法の一例である。まず図6(a)では、外周電極(21a)を第1電極群(23)、中央電極(20)を挟んで対称の位置にある外周電極(21e)を第2電極群(24)とする。ここでは各電極群は1個の外周電極からなる。
【0047】
電源部(31)からは電気刺激を行う交流電流を肌面に対して通電する。所定時間の経過後、制御部(30)の作用により外周電極(20b)を第1電極群(23)、外周電極(20f)を第2電極群(24)に切り替えて交流電流を出力する。さらに1秒後に外周電極(20c)を第1電極群(23)、外周電極(20g)を第2電極群(24)に、さらに1秒後に外周電極(20d)を第1電極群(23)、外周電極(20h)を第2電極群(24)、と順に繰り返す。
【0048】
本発明による外周電極の制御方法によれば、従来のヘッド部(11)の面積内に多数の外周電極を配置した上で、当接する肌面に多方向からの刺激を与えることができ、美容効果の向上や多様化に寄与する。
例えば、顔面の表情筋に美容器(1)を適用する場合、様々な方向の筋肉に対して、多方面から刺激することができる。
【0049】
図6(b)では、2つの外周電極(21a)(21b)を第1電極群(23)、中央電極(20)を挟んで対称の位置にある外周電極(21e)(21f)を第2電極群(24)とする。
【0050】
電源部(31)からは電気刺激を行う交流電流を肌面に対して通電する。所定時間の経過後、制御部(30)の作用により外周電極(21c)(21d)を第1電極群(23)、外周電極(21g)(21h)を第2電極群(24)に切り替えて交流電流を出力し、これを順に繰り返す。
本制御方法でも、直交する2つの方向に電気刺激の向きを変えることができる上、2つの電極を利用することで1つの場合よりも出力を上げることが可能となる。
【0051】
図7は、更に別の制御方法である。本方法ではAの状態では外周電極(21a)(21b)(21c)を第1電極群(23)、外周電極(21e)(21f)(21g)を第2電極群(24)とする。次のBの状態では1つ周方向に移った外周電極(21b)(21c)(21d)を第1電極群(23)、外周電極(21f)(21g)(21h)を第2電極群(24)とする。順に1つずつずらしていって、Eの状態ではAと正負が逆転し、Hの状態の次にAの状態に戻る。
【0052】
図7のような構成では、十分な電極の面積を確保しながら電気刺激の向きを順次切り替えることができるので、従来の美容器では全く提供されてこなかった刺激の態様を実現することができる。
【0053】
なお、上記した通り、各電極群を構成する電極数は1以上であれば良いので、図7においても外周電極(21a)を第1電極群(23)、外周電極(21e)を第2電極群(24)と各1つの電極で構成してもよい。同様に、外周電極(21a)(21b)を第1電極群(23)、外周電極(21e)(21f)を第2電極群(24)のように各2つの電極で構成すること、外周電極(21a)(21b)(21c)(21d)を第1電極群(23)、外周電極(21e)(21f)(21g)(21h)を第2電極群(24)のように各4つの電極で構成してもよい。
【0054】
第1電極群(23)と第2電極群(24)の位置を変えると共に、それぞれの位置において第2電流を変化させてもよい。
【0055】
ここまでは第1電流と第2電流についてそれぞれ1つの特性の電流を出力する構成であったが、本発明ではさらに複数の特性の電流を外周電極に出力することもできる。図6(a)を用いてこれを説明する。
【0056】
すなわち、外周電極(21a)と中央電極(20)を挟んで対向する外周電極(21e)との間には第2の特性の高周波(1kHz)の電流を出力すると共に、外周電極(21b)と外周電極(21f)との間には第3の特性の低周波(10~0Hz)の電流を出力することができる。
【0057】
従来、電極の数に係わらず、同時に印加するのは単独波形であったが、本発明によれば混合波形の電流を肌面に印加することができ、それぞれの電流の特性に応じた美容作用の特徴を同時に動作させることができる。
【0058】
本発明では、中央電極(20)と手元電極(22)によるイオン導入と、外周電極による高周波、低周波出力を組み合わせることがさらに好ましい。
すなわち、外周電極によるパルス電流によって、筋繊維を刺激し、血行促進をすることで化粧水やビタミンA,ビタミンC誘導体などを導入効果を高めることができる。
【0059】
また、従来は別々に行っていたイオン導入とEMSによるリフトアップの2つの機能を同時に実施することができるので、従来の半分の時間で両方の効果を得ることができ、美容にかかる時間短縮に寄与する。
【0060】
さらに、電気的筋肉刺激に限らず、外周電極によってメソポレーションに適した電流を出力することで、化粧水やビタミンA,ビタミンC誘導体などを導入効果をさらに高めることができると考えられる。
【0061】
最後に、図8には外周電極が8以外の場合の実施例を示す。
図8(a)は3つの外周電極(25a)(25b)(25c)の場合を図示する。本発明では少なくとも3つの外周電極を有していれば、例えば2つの電極(25a)(25b)間の通電、電極(25b)(25c)間の通電、電極(25c)(25a)間の通電と順次切り替えが可能であり、十分に効果を奏することができる。
【0062】
図8(b)は4つの外周電極(26a)(26b)(26c)(26d)の場合を図示する。この場合、例えば2つの電極(26a)(26b)を第1電極群(23)、電極(26c)(26d)を第2電極群(24)として、次に電極(26a)(26b)を第2電極群(24)、電極(26c)(26d)を第1電極群(23)に切り替えることにより直交する向きに変化させて作用させることができる。
【0063】
図8(c)は5つの外周電極(27aないしe)の場合を図示する。この場合、例えば2つの電極(27a)(27b)を第1電極群(23)、電極(27d)を第2電極群(24)としてもよい。このように電極の数は必ずしも1対の中で等しい必要はない。次に電極(27b)(27c)を第1電極群(23)、電極(27e)を第2電極群(24)というように順次切り替えることができる。
【0064】
以上に説明したように、本発明の外周電極の数は3以上であれば適宜実施することが可能であり、具体的に図示していない6,7,9以上の電極数でも全く同じように実施することができることは明らかである。
【符号の説明】
【0065】
1 美容器
10 本体部
11 ヘッド部
12 レベルスイッチ
13 電源スイッチ
14 インジケータ
20 中央電極
21aないし21h 外周電極
22 手元電極
23 第1電極群
24 第2電極群
30 制御部
31 電源部
32 操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8