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特許7372063化学強化された着色ガラスおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】化学強化された着色ガラスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20231024BHJP
   C03C 4/02 20060101ALI20231024BHJP
   C03C 3/062 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C4/02
C03C3/062
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019124374
(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公開番号】P2020040870
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2018126710
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018169735
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池西 幹男
(72)【発明者】
【氏名】丹野 義剛
(72)【発明者】
【氏名】金子 将士
(72)【発明者】
【氏名】松本 奈緒美
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/007222(WO,A1)
【文献】特開2014-031305(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021975(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 4/02
C03C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス成分として、P5+を含み、Li+およびNa+のいずれか一方または両方を含み、さらにTi4+、Nb5+、W6+およびBi3+からなる群から選択される少なくとも1つを含む、リン酸塩ガラスであり、
化学強化された着色ガラス。
【請求項2】
5+の含有量が10~50カチオン%であり、
Ti4+、Nb5+、W6+、およびBi3+の合計含有量[Ti4++Nb5++W6++Bi3+]が0.1~80カチオン%であり、
Li+およびNa+の合計含有量[Li++Na+]が0.1~50カチオン%である、
請求項1に記載の着色ガラス。
【請求項3】
Ti4+の含有量が0.1~45カチオン%であり、
Nb5+の含有量が0.1~50カチオン%であり、
6+の含有量が30カチオン%以下であり、
Bi3+の含有量が35カチオン%以下である、
請求項1に記載の着色ガラス。
【請求項4】
Li+の含有量が0.1~35カチオン%であり、
Na+の含有量が0.1~45カチオン%であり、
+の含有量が30カチオン%以下である、
請求項1に記載の着色ガラス。
【請求項5】
5+の含有量に対するB3+の含有量のカチオン比[B3+/P5+]が0.95以下であり、
Si4+の含有量が10カチオン%以下であり、
Al3+の含有量が10カチオン%以下である、
請求項1に記載の着色ガラス。
【請求項6】
Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量[Ti4++Nb5++W6+]が0.1~75カチオン%であり、
Mg2+の含有量が15カチオン%以下であり、
Ca2+の含有量が15カチオン%以下であり、
Sr2+の含有量が15カチオン%以下であり、
Ba2+の含有量が20カチオン%以下であり、
Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量[Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+]が30カチオン%以下であり、
Zn2+の含有量が15カチオン%以下であり、
Zr4+の含有量が5カチオン%以下であり、
La3+の含有量が5カチオン%以下であり、
Gd3+の含有量が5カチオン%以下であり、
3+の含有量が5カチオン%以下であり、
Yb3+の含有量が5カチオン%以下である、
請求項1に記載の着色ガラス。
【請求項7】
5+、B3+、Si4+、Al3+、Ti4+、Nb5+、W6+、Bi3+、Ta5+、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+、Zr4+、Ga3+、In3+、Sc3+、Hf4+、Lu3+、Ge4+、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量が95カチオン%より多い、
請求項1に記載の着色ガラス。
【請求項8】
以下の(i)~(iii)のうち少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の着色ガラス。
(i)厚さ1.0mmに換算して波長500~1000nmの範囲における透過率の最小値が75%以下である。
(ii)厚さ1.0mmに換算したときの可視光(波長400~760nmの光)の透過率の最大値が50%以下である部分を含む。
(iii)厚さ1.0mmに換算したときの波長1100nmにおける透過率が80%以下である部分を含む。
【請求項9】
以下の(iv)~(vi)のうち少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の着色ガラス。
(iv)ガラス転移温度Tgが350~850℃である。
(v)屈折率ndが1.75以上である。
(vi)βOHの値が0.3~4.5mm-1である。
【請求項10】
上記ガラスのガラス転移温度Tgより20℃低い温度以下で電圧を印加することにより透過率が増加する、請求項1に記載の着色ガラス。
【請求項11】
ガラス成分としてLi2OおよびNa2Oのいずれか一方または両方を含む着色ガラスを、溶融塩に接触させる工程を含む、
リン酸塩ガラスであり、化学強化された着色ガラスの製造方法。
【請求項12】
ガラス成分としてLi2OおよびNa2Oのいずれか一方または両方を含む着色ガラスを、溶融塩に接触させる工程、
上記工程の前または後に、上記ガラスのガラス転移温度Tgより20℃低い温度以下で電圧を印加する工程を含む、
ガラス成分としてTi4+、Nb5+、W6+およびBi3+からなる群から選択される少なくとも1つを含む、リン酸塩ガラスであり、
5+の含有量が10~50カチオン%であり、
Ti4+、Nb5+、W6+、およびBi3+の合計含有量[Ti4++Nb5++W6++Bi3+]が0.1~80カチオン%であり、
Li+およびNa+の合計含有量[Li++Na+]が0.1~50カチオン%である、化学強化されたガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学強化された着色ガラスおよびその製造方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明は、化学強化された着色ガラスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)化学強化された着色ガラス。
【0004】
(2)上記ガラスのガラス転移温度Tgより20℃低い温度以下で電圧を印加することにより透過率が増加する、(1)に記載の着色ガラス。
【0005】
(3)ガラス成分としてLiOおよびNaOのいずれか一方または両方を含む着色ガラスを、溶融塩に接触させる工程を含む、化学強化された着色ガラスの製造方法。
【0006】
(4)ガラス成分としてLiOおよびNaOのいずれか一方または両方を含む着色ガラスを、溶融塩に接触させる工程、
上記工程の前または後に、上記ガラスのガラス転移温度Tgより20℃低い温度以下で電圧を印加する工程を含む、化学強化されたガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、化学強化された着色ガラスおよびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0009】
本実施形態に係るガラスは、ガラス成分として、LiOおよびNaOのいずれか一方または両方を含む着色ガラスを化学強化して得られる。好ましくは、ガラス成分として、LiOおよびNaOのいずれか一方または両方を含み、さらにTiO、Nb、WOおよびBiからなる群から選択される少なくとも1つの酸化物を含む着色ガラスを化学強化して得られる。より好ましくは、ガラス成分として、Pを含み、LiOおよびNaOのいずれか一方または両方を含み、さらにTiO、Nb、WOおよびBiからなる群から選択される少なくとも1つの酸化物を含むガラスを化学強化して得られる。ガラスに近赤外光吸収特性を付与するために、ガラス成分として適量の銅を添加してもよい。
【0010】
なお、上記はガラス成分を酸化物として説明しているが、下記のとおり、ガラス成分をカチオン成分として説明することもできる。
【0011】
すなわち、本実施形態に係るガラスは、ガラス成分として、LiおよびNaのいずれか一方または両方を含む着色ガラスを化学強化して得られる。好ましくは、ガラス成分として、LiおよびNaのいずれか一方または両方を含み、さらにTi4+、Nb5+、W6+およびBi3+からなる群から選択される少なくとも1つの酸化物を含む着色ガラスを化学強化して得られる。より好ましくは、ガラス成分として、P5+を含み、LiおよびNaのいずれか一方または両方を含み、さらにTi4+、Nb5+、W6+およびBi3+からなる群から選択される少なくとも1つを含むガラスを化学強化して得られる。ガラスに近赤外光吸収特性を付与するために、ガラス成分として適量の銅を添加してもよい。
【0012】
本実施形態において、着色ガラスの色は、ガラスに電圧を印加してイオン伝導によりガラス成分を酸化することで低減できる。着色ガラスの色は、好ましくはガラス成分に起因する還元色であり、より好ましくはTiO、Nb、WOおよびBi等(すなわち、カチオン成分ではTi4+、Nb5+、W6+およびBi3+等)に起因する還元色である。
【0013】
本実施形態において、着色ガラスは、好ましくは、厚さ1.0mmに換算して波長500~1000nmの範囲における透過率の最小値が75%以下である透過率特性を有する。
【0014】
また、本実施形態に係るガラスは、厚さ1.0mmに換算したときの可視光の透過率の最大値が50%以下である部分を含んでもよい。本実施形態に係るガラスは、厚さ1.0mmに換算して可視光の透過率の最大値が、好ましくは40%以下である部分を含み、また透過率の最大値が30%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、2%以下、または、1%以下である部分を含んでもよい。可視光の透過率の最大値は0%であってもよい。厚さ1.0mmに換算して可視光の透過率の最大値が上記範囲である領域は、ガラスの一部でもよいし、全部でもよい。なお、可視光とは、波長400~760nmの範囲の光である。
【0015】
さらに、本実施形態に係るガラスは、厚さ1.0mmに換算したときの波長1100nmにおける透過率が、好ましくは80%以下である部分を含み、また波長1100nmにおける透過率が70%以下、60%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下、0.3%以下、0.1%以下、0.05%以下、または、0.03%以下である部分を含んでもよい。厚さ1.0mmに換算したときの波長1100nmにおける透過率が上記範囲である領域は、ガラスの一部でもよいし、全部でもよい。
【0016】
本実施形態に係るガラスにおいて、着色部分、すなわち厚さ1.0mmに換算して可視光の透過率の最大値が50%以下である部分と、それ以外の部分とでは、ガラス成分組成は同じである。また、着色部分と、後述する方法で電圧を印加して脱色した部分とでも、ガラス成分組成は同じである。厚さ1.0mmに換算して波長1100nmにおける透過率が80%以下である部分と、それ以外の部分とについても同様である。
【0017】
本実施形態に係るガラスは、強還元雰囲気で熔融したガラスを化学強化しても得られる。また、熔融時に含炭素化合物を付加する工程を経て得られるガラスを化学強化してもよい。このような工程を経ることで、ガラスの着色の程度をより高めることができる。
【0018】
また、本実施形態では、熔融時に水を付加する工程を経て得られるガラスを化学強化してもよい。熔融時に水を付加することで、後述するガラスのβOH値を高めることができる。
【0019】
本実施形態では、ガラスを溶融塩に接触させて、化学強化することができる。
【0020】
化学強化の方法は、特に限定されないが、ガラス転移点を超えない温度領域で、イオン交換を行う低温型イオン交換法が好ましい。化学強化とは、溶融させた化学強化塩とガラスとを接触させることにより、化学強化塩中の相対的に大きな原子半径を有するアルカリ金属元素と、ガラス中の相対的に小さな原子半径を有するアルカリ金属元素とをイオン交換し、ガラスの表層に原子半径の大きなアルカリ金属元素を浸透させ、ガラスの表面に圧縮応力を生じさせる処理のことである。
【0021】
例えば、ガラス成分としてナトリウム(Na)を含むガラスを、加熱した硝酸カリウム(KNO)の溶融塩中に浸漬すると、ガラスに含まれるナトリウムイオン(Na)と、カリウムイオン(K)とのイオン交換が起きる。
【0022】
カリウムイオン(K)の大きさは、ナトリウムイオン(Na)の大きさよりも大きい。そのため、イオン交換によってガラスの表面近傍には、圧縮応力が掛かった圧縮応力層が形成される。このように、表面近傍に圧縮応力層が形成される結果、ガラスの強度が増す。
【0023】
また例えば、ガラス成分としてリチウム(Li)を含むガラスの場合には、ガラスを硝酸ナトリウム(NaNO)と硝酸カリウム(KNO)との混合塩からなる溶融塩に浸漬することができる。この場合、ガラスの表面近傍のリチウムイオン(Li)は、大きさがリチウムイオン(Li)よりも大きいナトリウムイオン(Na)およびカリウムイオン(K)のいずれでイオン交換されてもよい。
【0024】
本実施形態において、ガラスが化学強化されているかどうかは、例えばエネルギー分散型X線分析法(EDX)により調べることができる。具体的には、ガラスの表面近傍およびガラス内部における、アルカリ金属、銀など一価の陽イオンの含有量をEDXにより測定する。ガラス内部の組成は、ガラスを割る等して、ガラスの断面を露出させて測定する。ガラスの表面近傍における、イオン半径が比較的大きい一価の陽イオンの含有量が、ガラスの内部よりも多い場合に、当該ガラスは化学強化されているとみなされる。
【0025】
本実施形態において、ガラスの表面近傍における一価の陽イオンの含有量は、好ましくは、ガラスの内部における一価の陽イオンの含有量の2倍以上である。なお、この場合の含有量は、質量%表示とする。
【0026】
本実施形態に係るガラスは、上記の化学強化の前、または化学強化の後に、ガラスに電圧を印加してイオン伝導によりガラス成分を酸化することで脱色できる。
【0027】
具体的には、本実施形態に係るガラスを、ガラス転移温度Tgより20℃低い温度(Tg-20℃)以下に加熱した状態で、電圧を印加することにより、透過率を増加させることができる。
【0028】
脱色の程度は特に限定されないが、本実施形態に係るガラスは、ガラス転移温度Tgより400℃低い温度以上、ガラス転移温度Tgより20℃低い温度以下での温度範囲で、大気雰囲気において、厚さ1.0mmに研磨したガラスの厚さ方向に電極を接触させ、電圧1~20kv、処理時間5時間の条件で電圧を印加したときの、波長500~1000nmにおける透過率の最小値の、電気印加前後での変化量を10%以上とすることができる。
【0029】
上記脱色処理において、電圧を部分的に印加することでパターン状に脱色することも可能である。
【0030】
なお、本実施形態において、着色ガラスのガラス転移温度Tgの範囲は、好ましくは350~850℃であり、さらには370~830℃、380~800℃、400~770℃、420~740℃、440~710℃、440~680℃、460~670℃の順により好ましい。
【0031】
(屈折率)
本実施形態に係るガラスにおいて、屈折率ndは、好ましくは1.75以上であり、さらには1.76以上、1.77以上、1.78以上、1.79以上、1.80以上の順により好ましい。屈折率ndの上限は、特に限定されないが、通常2.50であり、好ましくは2.30である。本実施形態において、屈折率ndはそのまま測定してもよく、ガラスの着色を低減させてから測定してもよい。着色を低減する方法として、例えば後述する電圧を印加する方法、および熱処理が挙げられる。熱処理によりガラスの着色を低減する方法としては、ガラスを大気雰囲気中においてTg近傍で数時間~数十時間加熱する方法が挙げられる。
【0032】
なお、本明細書では、屈折率は、特記しない限り、ヘリウムのd線(波長587.56nm)における屈折率ndをいう。
【0033】
(平均線膨張係数)
本実施形態に係るガラスにおいて、平均線膨張係数は、好ましくは50×10-7-1以上であり、さらには、60×10-7-1以上、70×10-7-1以上、75×10-7-1以上、80×10-7-1以上、85×10-7-1以上、90×10-7-1以上の順により好ましい。平均線膨張係数の上限は、特に限定されないが、通常200×10-7-1であり、好ましくは150×10-7-1である。平均線膨張係数を上記範囲とすることで、後述する化学強化を施した場合にガラスの強度を高めることができる。
【0034】
平均線膨張係数の測定方法は、日本光学硝子工業会規格JOGIS 08―2003「光学ガラスの熱膨張の測定法」に従う。ただし、丸棒状の試料の直径は5mmとする。
【0035】
(耐酸性重量減少率Da)
本実施形態に係るガラスにおいて、耐酸性重量減少率Daの等級は、好ましくは1~2等級であり、より好ましくは1等級である。
【0036】
耐酸性重量減少率Daは、日本光学硝子工業会規格JOGIS06-2009の規定に従って測定する。具体的には、比重に相当する重量の粉末ガラス(粒度425~600μm)を白金かごに入れ、それを0.01mol/L硝酸水溶液の入った石英ガラス製丸底フラスコ内に浸漬し、沸騰水浴中で60分間処理し、その処理前後での重量減少率(%)を測定する。耐酸性重量減少率Daによる等級を表Aに示す。
【0037】
【表A】
【0038】
(βOH)
本実施形態に係るガラスにおいて、下記式(1)で表されるβOHの値の下限は、好ましくは0.3mm-1であり、さらには、0.4mm-1、0.5mm-1、0.6mm-1、0.7mm-1、0.8mm-1、0.9mm-1、1.0mm-1、1.05mm-1、1.1mm-1、1.15mm-1の順により好ましい。また、βOHの値の上限は、好ましくは4.5mm-1であり、さらには、4.0mm-1、3.8mm-1、3.5mm-1、3.0mm-1、2.5mm-1、2.3mm-1、2.2mm-1、2.1mm-1、2.0mm-1の順により好ましい。
βOH=-[ln(B/A)]/t ・・・(1)
【0039】
ここで、上記式(1)中、tは外部透過率の測定に用いる上記ガラスの厚み(mm)を表し、Aは上記ガラスに対してその厚み方向と平行に光を入射した際の波長2500nmにおける外部透過率(%)を表し、Bは上記ガラスに対してその厚み方向と平行に光を入射した際の波長2900nmにおける外部透過率(%)を表す。また、lnは自然対数である。βOHの単位はmm-1である。
【0040】
なお、「外部透過率」とは、ガラスに入射する入射光の強度Iinに対するガラスを透過した透過光の強度Ioutの比(Iout/Iin)、すなわち、ガラスの表面における表面反射も考慮した透過率である。透過率は、分光光度計を用いて、透過スペクトルを測定することにより得られる。分光装置としては、「UV-3100(島津)」を用いることができる。外部透過率は、そのまま測定してもよく、ガラスの着色を低減させてから測定してもよい。着色を低減する方法として、例えば後述する電圧を印加する方法、および熱処理が挙げられる。熱処理によりガラスの着色を低減する方法としては、ガラスを大気雰囲気中においてTg近傍で数時間~数十時間加熱する方法が挙げられる。
【0041】
上記式(1)で表されるβOHは、水酸基に起因する光の吸収により透過率が変化することに基づいて規定されている。そのため、βOHを評価することにより、ガラス中に含まれる水(および/または水酸化物イオン)の濃度を評価できる。すなわち、βOHが高いガラスは、ガラス中に含まれる水(および/または水酸化物イオン)の濃度が高いことを意味している。
【0042】
ガラスの着色を低減させるために、ガラスに電圧を印加する、またはガラスを熱処理する場合に、βOHの値を上記範囲とすることで、その印加時間または熱処理時間を短縮できる。一方、βOHの値が大きすぎると、ガラス中に含まれている遷移金属イオン成分が金属として析出しやすくなる。また、ガラスの熔解時に、熔融ガラスからの揮発物量が増加するおそれがある。
【0043】
(ガラス組成)
本実施形態に係るガラスのガラス組成について、非制限的な例を以下に示す。
【0044】
本実施形態では、カチオン%表示での各成分の含有比率に基づいて本発明に係るガラスを説明する。したがって、以下、各含有量は特記しない限り、「%」は「カチオン%」を意味する。
【0045】
カチオン%表示とは、全てのカチオン成分の含有量の合計を100%としたときのモル百分率をいう。また、合計含有量とは、複数種のカチオン成分の含有量(含有量が0%である場合も含む)の合計量をいう。また、カチオン比とは、カチオン%表示において、カチオン成分同士の含有量(複数種のカチオン成分の合計含有量も含む)の割合(比)をいう。
【0046】
ガラス成分の含有量は、公知の方法、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)等の方法で定量できる。また、本明細書および本発明において、構成成分の含有量が0%とは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、該成分が不可避的不純物レベルで含まれることを許容する。
【0047】
本実施形態に係るガラスは、リン酸塩ガラスであることが好ましい。リン酸塩ガラスとは、ガラスのネットワーク形成成分として主にP5+を含有するガラスをいう。ガラスのネットワーク形成成分として、P5+、B3+、Si4+、Al3+等が知られている。ここで、ガラスのネットワーク形成成分として主にリン酸塩を含むとは、P5+の含有量が、B3+、Si4+、Al3+のいずれの含有量よりも多いことを意味する。リン酸塩ガラスであることで、ガラスの着色の程度を高めることができる。
【0048】
本実施形態に係るガラスにおいて、P5+の含有量の下限は、好ましくは10%であり、さらには13%、15%、17%、20%の順により好ましい。また、P5+の含有量の上限は、好ましくは50%であり、さらには45%、43%、40%、38%、35%の順により好ましい。
【0049】
5+は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性を維持する働きがある。一方、P5+を過剰に含むと熔融性が悪化する。そのため、P5+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0050】
本実施形態に係るガラスにおいて、B3+の含有量の上限は、好ましくは35%であり、さらには30%、25%、20%、15%、13%、10%の順により好ましい。また、B3+の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.1%、0.3%、
0.5%、1%、3%、5%の順により好ましい。B3+の含有量は0%であってもよい。
【0051】
3+は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熔融性を改善する働きを有する。一方、B3+の含有量が多すぎると、化学的耐久性が低下する傾向がある。そのため、B3+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0052】
本実施形態に係るガラスにおいて、P5+の含有量に対するB3+の含有量のカチオン比[B3+/P5+]の上限は、好ましくは0.95であり、さらには0.93、0.9、0.8、0.7、0.6、0.55、0.5の順により好ましい。カチオン比[B3+/P5+]は0であってもよい。
【0053】
本実施形態に係るガラスにおいて、Si4+の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには7%、5%、3%、2%、1%の順により好ましい。Si4+の含有量は0%であってもよい。
【0054】
Si4+は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性を改善する働きを有する。一方、Si4+の含有量が多すぎると、ガラスの熔融性が低下し、ガラス原料が熔け残る傾向がある。そのため、Si4+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0055】
本実施形態に係るガラスにおいて、Al3+の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには7%、5%、3%、1%の順により好ましい。Al3+の含有量は0%であってもよい。
【0056】
Al3+は、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善する働きを有する。一方、Al3+の含有量が多すぎると、屈折率の低下、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラス転移温度Tgが上昇して、熔融性が低下しやすい。そのため、Al3+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0057】
本実施形態に係るガラスにおいて、P5+、B3+、Si4+およびAl3+の合計含有量[P5++B3++Si4++Al3+]の下限は、好ましくは10%であり、さらには15%、18%、20%、23%、25%の順により好ましい。また、合計含有量[P5++B3++Si4++Al3+]の上限は、好ましくは60%であり、さらには55%、53%、50%、45%、40%、37%の順により好ましい。
【0058】
本実施形態に係るガラスは、ガラス成分として、好ましくは遷移金属を有し、より好ましくはカチオン表示でTi4+、Nb5+、Bi3+およびW6+からなる群から選択される少なくとも1つのガラス成分を有し、さらに好ましくは、Ti4+を含有する。
【0059】
本実施形態に係るガラスにおいて、Ti4+の含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1%、1.5%、2%、3%の順により好ましい。また、Ti4+の含有量の上限は、好ましくは45%であり、さらには40%、38%、35%、33%、30%の順により好ましい。
【0060】
Ti4+は、Nb5+、W6+およびBi3+と同様に、高屈折率化に大きく寄与し、また、ガラスの着色を増大する働きを有する。一方、Ti4+の含有量が多すぎると、ガラスの熔融性が低下し、ガラス原料が熔け残る傾向がある。そのため、Ti4+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0061】
本実施形態に係るガラスにおいて、Nb5+の含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1%、5%、10%、13%、15%、17%の順により好ましい。また、Nb5+の含有量の上限は、好ましくは50%であり、さらには45%、43%、40%、38%の順により好ましい。
【0062】
Nb5+は、高屈折率化に寄与し、ガラスの着色を増大する成分である。また、ガラスの熱的安定性および化学的耐久性を改善する働きを有する。一方、Nb5+の含有量が多すぎると、ガラスの熱的安定性が低下する傾向がある。そのため、Nb5+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0063】
本実施形態に係るガラスにおいて、W6+の含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、15%、13%の順により好ましい。W6+の含有量は0%であってもよい。
【0064】
6+は、高屈折率化に寄与し、また、ガラスの着色を増大する働きを有する。一方、W6+の含有量が多すぎると、ガラスの熱的安定性が低下する傾向がある。そのため、W6+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0065】
本実施形態に係るガラスにおいて、Bi3+の含有量の上限は、好ましくは35%であり、さらには30%、28%、25%の順により好ましい。Bi3+の含有量は0%であってもよい。
【0066】
Bi3+は、高屈折率化に寄与し、また、ガラスの着色を増大する働きを有する。また、Bi3+はガラスの膨張を高める効果を有する。一方、Bi3+の含有量が多すぎると、ガラスの熱的安定性が低下する傾向がある。そのため、Bi3+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0067】
本実施形態に係るガラスにおいて、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量[Ti4++Nb5++W6+]の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1%、3%、5%、10%、15%、20%、22%の順により好ましい。また、合計含有量[Ti4++Nb5++W6+]の上限は、好ましくは75%であり、さらには70%、65%、63%、60%、58%の順により好ましい。
【0068】
本実施形態に係るガラスにおいて、Ti4+、Nb5+、W6+、およびBi3+の合計含有量[Ti4++Nb5++W6++Bi3+]の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1%、3%、5%、10%、15%、20%、22%、25%の順により好ましい。また、合計含有量[Ti4++Nb5++W6++Bi3+]の上限は、好ましくは80%であり、さらには75%、73%、70%、67%の順により好ましい。
【0069】
本実施形態に係るガラスにおいて、Ta5+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、2%、1%の順により好ましい。Ta5+の含有量は0%であってもよい。
【0070】
Ta5+は、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。一方、Ta5+の含有量が多すぎると、ガラスが低屈折率化し、また熔融性が低下する傾向がある。そのため、Ta5+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0071】
本実施形態に係るガラスにおいて、P5+、B3+およびSi4+の合計含有量に対するTi4+、Nb5+、W6+、およびBi3+の合計含有量のカチオン比[(Ti4++Nb5++W6++Bi3+)/(P5++B3++Si4+)]の下限は、好ましくは0.1であり、さらには0.3、0.4、0.5、0.55、0.6、0.7の順により好ましい。また、カチオン比[(Ti4++Nb5++W6++Bi3+)/(P5++B3++Si4+)]の上限は、好ましくは8であり、さらには5、4、3、2.7、2.5の順により好ましい。
【0072】
本実施形態に係るガラスは、ガラス成分として、好ましくはLiおよびNaのいずれか一方または両方を含有し、より好ましくは、LiおよびNaを合計で0.1%以上含有する。ガラスがLiまたはNaを含有することで、後述する化学強化を施すことができる。
【0073】
本実施形態に係るガラスにおいて、Liの含有量の上限は、好ましくは35%であり、さらには30%、27%、25%、22%、20%の順により好ましい。また、Liの含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1%、3%、5%、10%、15%の順により好ましい。Liの含有量は0%であってもよい。
【0074】
本実施形態に係るガラスにおいて、Naの含有量の上限は、好ましくは45%であり、さらには40%、38%、35%、33%の順により好ましい。また、Naの含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1%、3%、5%、10%、13%、15%、17%の順により好ましい。Naの含有量は0%であってもよい。
【0075】
ガラスがLiまたはNaを含有することで、ガラスに後述する化学強化を施すことができる。一方、LiまたはNaの含有量が多すぎると、ガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。そのため、LiおよびNaの各含有量はそれぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0076】
本実施形態に係るガラスにおいて、Kの含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、23%、20%、17%、15%の順により好ましい。また、Kの含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.3%、0.5%、1%の順により好ましい。Kの含有量は0%であってもよい。
【0077】
は、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。一方、Kの含有量が多すぎると、熱的安定性が低下する傾向がある。したがって、Kの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0078】
本実施形態に係るガラスにおいて、LiおよびNaの合計含有量[Li+Na]の上限は、好ましくは50%であり、さらには45%、43%、40%、38%の順により好ましい。また、合計含有量[Li+Na]の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1%、5%、10%、13%、15%の順により好ましい。
【0079】
本実施形態に係るガラスにおいて、Rbの含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、1%、0.5%の順により好ましい。Rbの含有量は0%であってもよい。
【0080】
本実施形態に係るガラスにおいて、Csの含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、1%、0.5%の順により好ましい。Csの含有量は0%であってもよい。
【0081】
RbおよびCsは、ガラスの熔融性を改善する働きを有する。一方、これらの含有量が多すぎると、屈折率ndが低下し、また熔解中にガラス成分の揮発が増加するおそれがある。そのため、RbおよびCsの各含有量は、それぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0082】
本実施形態に係るガラスにおいて、Mg2+の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには10%、5%、3%、1%の順により好ましい。Mg2+の含有量は0%であってもよい。
【0083】
本実施形態に係るガラスにおいて、Ca2+の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには10%、5%、3%、1%の順により好ましい。Ca2+の含有量は0%であってもよい。
【0084】
本実施形態に係るガラスにおいて、Sr2+の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには10%、5%、3%、1%の順により好ましい。Sr2+の含有量は0%であってもよい。
【0085】
本実施形態に係るガラスにおいて、Ba2+の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、10%、5%の順により好ましい。Ba2+の含有量は0%であってもよい。
【0086】
Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+は、いずれもガラスの熱的安定性、熔融性を改善させる働きを有する。また、Ba2+はガラスの膨張を高める効果を有する。一方、これらの含有量が多すぎると、高屈折率性が損なわれ、また、ガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。そのため、これらガラス成分の各含有量は、それぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0087】
本実施形態に係るガラスにおいて、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量[Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+]の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、18%、15%、10%、5%、3%、1%の順により好ましい。合計含有量[Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+]は0%であってもよい。
【0088】
本実施形態に係るガラスにおいて、Zn2+の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには10%、8%、5%、3%、1.5%の順により好ましい。Zn2+の含有量は0%であってもよい。
【0089】
Zn2+は、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。一方、Zn2+の含有量が多すぎると、熔融性が悪化するおそれがある。そのため、Zn2+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0090】
本実施形態に係るガラスにおいて、Zr4+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、2%、1%の順により好ましい。Zr4+の含有量は0%であってもよい。
【0091】
Zr4+は、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。一方、Zr4+の含有量が多すぎると、ガラスの熱的安定性および熔融性が低下する傾向がある。そのため、Zr4+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0092】
本実施形態に係るガラスにおいて、Ga3+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、Ga3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ga3+の含有量は0%であってもよい。
【0093】
本実施形態に係るガラスにおいて、In3+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、In3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。In3+の含有量は0%であってもよい。
【0094】
本実施形態に係るガラスにおいて、Sc3+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、Sc3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Sc3+の含有量は0%であってもよい。
【0095】
本実施形態に係るガラスにおいて、Hf4+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、Hf4+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Hf4+の含有量は0%であってもよい。
【0096】
本実施形態に係るガラスにおいて、Lu3+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、Lu3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Lu3+の含有量は0%であってもよい。
【0097】
本実施形態に係るガラスにおいて、Ge4+の含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。また、Ge4+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ge4+の含有量は0%であってもよい。
【0098】
本実施形態に係るガラスにおいて、La3+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには4%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、La3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。La3+の含有量は0%であってもよい。
【0099】
本実施形態に係るガラスにおいて、Gd3+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには4%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、Gd3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Gd3+の含有量は0%であってもよい。
【0100】
本実施形態に係るガラスにおいて、Y3+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには4%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、Y3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Y3+の含有量は0%であってもよい。
【0101】
本実施形態に係るガラスにおいて、Yb3+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには4%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、Yb3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Yb3+の含有量は0%であってもよい。
【0102】
本実施形態に係るガラスのカチオン成分は、主として上述の成分、すなわち、P5+、B3+、Si4+、Al3+、Ti4+、Nb5+、W6+、Bi3+、Ta5+、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+、Zr4+、Ga3+、In3+、Sc3+、Hf4+、Lu3+、Ge4+、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+で構成されていることが好ましく、上述の成分の合計含有量は、95%よりも多くすることが好ましく、98%よりも多くすることがより好ましく、99%よりも多くすることがさらに好ましく、99.5%よりも多くすることが一層好ましい。
【0103】
本実施形態に係るガラスは、アニオン成分として、FおよびO2-以外の成分を含んでいてもよい。FおよびO2-以外のアニオン成分として、Cl、Br、Iを例示できる。しかし、Cl、Br、Iは、いずれもガラスの熔融中に揮発しやすい。これらの成分の揮発によって、ガラスの特性が変動する、ガラスの均質性が低下する、熔融設備の消耗が著しくなる等の問題が生じる。したがって、Clの含有量は、5アニオン%未満であることが好ましく、より好ましくは3アニオン%未満、さらに好ましくは1アニオン%未満、特に好ましくは0.5アニオン%未満、一層好ましくは0.25アニオン%未満である。また、BrおよびIの合計含有量は、5アニオン%未満であることが好ましく、より好ましくは3アニオン%未満、さらに好ましくは1アニオン%未満、特に好ましくは0.5アニオン%未満、一層好ましくは0.1アニオン%未満、より一層好ましくは0アニオン%である。
【0104】
なお、アニオン%とは、全てのアニオン成分の含有量の合計を100%としたときのモル百分率である。
【0105】
本実施形態に係るガラスは、基本的に上記成分により構成されることが好ましいが、本発明の作用効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有させることも可能である。
【0106】
例えば、本実施形態に係るガラスは、さらに、ガラスに近赤外光吸収特性を付与するために、ガラス成分として適量の銅(Cu)を含有してもよい。その他にも、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pr,Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ce等を含有してもよい。これらは、ガラスの着色を増大させ、蛍光の発生源となり得る。
【0107】
また、本発明において、不可避的不純物の含有を排除するものではない。
【0108】
<その他の成分組成>
Pb、As、Cd、Tl、Be、Seは、いずれも毒性を有する。そのため、本実施形態のガラスはこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0109】
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、本実施形態のガラスはこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0110】
Sb、SnO、およびCeOは清澄剤として機能する、任意に添加可能なガラス成分である。このうち、Sb3+は、清澄効果の大きな清澄剤である。
【0111】
Sbの含有量は、外割り表示とする。すなわち、酸化物基準での表示においてSb、SnOおよびCeO以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのSbの含有量は、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%未満、一層好ましくは0.3質量%未満、特に好ましくは0.2質量%未満である。Sbの含有量は0質量%であってもよい。Sbの含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0112】
SnOおよびCeOの各含有量も、外割り表示とする。すなわち、酸化物基準での表示においてSb、SnOおよびCeO以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのSnOおよびCeOの各含有量は、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%未満、一層好ましくは0.1質量%未満である。SnOおよびCeOの各含有量は0質量%であってもよい。SnOおよびCeOの各含有量をそれぞれ上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0113】
(ガラスの製造)
本実施形態に係るガラスは、ガラス原料を調合し、公知のガラス製造方法に従って作製すればよい。例えば、複数種の化合物を調合し、十分混合してバッチ原料とし、バッチ原料を熔融容器中に入れて熔融、清澄、均質化した後に熔融ガラスを成形し、徐冷してガラスを得る。あるいは、バッチ原料を熔融容器中に入れて粗熔解(ラフメルト)する。粗熔解によって得られた熔融物を急冷、粉砕してカレットを作製する。さらにカレットを熔融容器中に入れて加熱、再熔融(リメルト)して熔融ガラスとし、さらに清澄、均質化した後に熔融ガラスを成形し、徐冷してガラスを得ることもできる。熔融ガラスの成形、徐冷には、公知の方法を適用すればよい。
【0114】
本実施形態に係るガラスの製造工程には、成形したガラスを還元性雰囲気で熱処理する工程が含まれてもよい。ガラスを還元性雰囲気で熱処理することで、ガラスの着色の程度を高めることができる。還元性雰囲気として用いる還元性ガスとしては、例えば水素ガスが挙げられる。以下に、還元性雰囲気でのガラスの熱処理工程について詳述する。
【0115】
まず、成形ガラスを真空・ガス置換炉内に配置し、減圧する。次に、大気圧になるまで炉内に還元性ガスを導入する。そして、炉内がガラス転移温度Tgより400℃低い温度(Tg-400℃)以上、軟化点以下になるまで昇温し、その温度で数分~数時間程度保持して、ガラスを熱処理する。
【0116】
上記還元性雰囲気での熱処理工程において、還元性ガスとして水素ガスを用いる場合には、炉内の雰囲気を水素ガスで置換する前に、雰囲気を窒素ガスで置換してもよい。一度炉内の雰囲気を窒素ガスで置換することで、炉内の酸素を排除して、その後水素ガスを導入する際の発火等を未然に防ぎ、炉内を安全に加熱できる。
【0117】
また、本実施形態に係るガラスの製造工程には、還元性雰囲気においてガラスを熔解し、熔融ガラスを得る工程が含まれてもよい。還元性雰囲気は、好ましくは強還元性雰囲気である。また、本実施形態に係るガラスの製造工程には、熔融時に含炭素化合物を付加する工程が含まれてもよい。このような工程を含むことで、ガラスの着色の程度を高めることができる。
【0118】
さらに、本実施形態に係るガラスの製造工程には、熔融ガラス中の水分量を高める工程が含まれてもよい。熔融ガラス中の水分量を高める工程としては、熔融雰囲気に水蒸気を付加する工程、熔融物内に水蒸気を含むガスをバブリングする工程が挙げられる。その中でも、熔融雰囲気に水蒸気を付加する工程を含むことが好ましい。熔融ガラス中の水分量を高める工程を含むことで、ガラスのβOH値を高めることができる。
【実施例
【0119】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明に適用できるガラス材のガラス組成としては、以下の実施例に示すガラス組成の他に、WO 2017/006998 A1に開示されたガラス組成が挙げられる。
【0120】
(実施例1)
表1~3に示すガラス組成を有するガラスサンプルを以下の手順で作製し、各種評価を行った。なお、表1、2、3は、No.1~50のガラスサンプルについて、それぞれカチオン%表示、モル%表示、質量%表示で示したものである。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
[ガラスの製造]
ガラスの構成成分に対応する正リン酸、メタリン酸塩、フッ化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、および硝酸塩を原材料として準備し、得られるガラスのガラス組成が、表1~3に示す各組成となるように上記原材料を秤量、調合して、原材料を十分に混合した。得られた調合原料(バッチ原料)を、白金坩堝に投入し、1300~1450℃で2~3時間加熱して熔融ガラスとした。白金坩堝に蓋をした状態で、熔融ガラスに、水または含炭素化合物の水溶液、すなわち0~1vol%のエタノール水溶液1.5~40ccを吹きかけ、付加した。その後、熔融ガラスを攪拌して均質化を図り、清澄してから、熔融ガラスを適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ。鋳込んだガラスを、ガラス転移温度Tg付近で1時間程度熱処理し、炉内で室温まで放冷した。長さ40mm、幅10mm、厚さ1mmの大きさに加工し、40mm×10mmとなる面を光学研磨して、ガラスサンプルを得た。
【0125】
[ガラス成分組成の確認]
得られたガラスサンプルについて、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)で各ガラス成分の含有量を測定し、表1~3に示す各組成のとおりであることを確認した。
【0126】
[化学強化]
上記ガラスサンプルを、KNOの単塩、または、KNOおよびNaNOの混合塩からなる溶融塩に浸漬し、化学強化サンプルを得た。このとき、溶融塩の温度は380℃とし、浸漬時間は4時間とした。
【0127】
[抗折強度(曲げ強さ)]
上記ガラスサンプル(強化前のガラスサンプル)および化学強化サンプルついて、JIS R 1601:2008に規定される3点曲げ試験法により、抗折強度(曲げ強さ)を測定した。支点間距離は30mmとした。結果を表4に示す。
【0128】
検体数は5以上とした。すなわち、1つの組成について、ガラスサンプルおよび化学強化サンプルをそれぞれ5以上準備した。得られた数値の最大値を抗折強度とした。
【0129】
[透過率]
上記ガラスサンプル(強化前のガラスサンプル)および化学強化サンプルついて、波長1100nmにおける外部透過率を測定した。外部透過率は、ガラスサンプルの厚み方向に光を入射したときの、入射光強度に対する透過光強度の百分率[透過光強度/入射光強度×100]で定義される。なお、外部透過率には試料表面における光線の反射損失も含まれる。結果を表4に示す。
【0130】
[比重]
上記化学強化サンプルについて、比重をアルキメデス法により測定した。結果を表4に示す。
【0131】
[ガラス転移温度Tg]
上記化学強化サンプルについて、Rigaku社製の示差走査熱量分析装置(DSC8270)を使用し、昇温速度10℃/分にてガラス転移温度Tg測定した。結果を表4に示す。
【0132】
[屈折率nd]
上記ガラスサンプルについて、JIS規格 JIS B 7071-1の屈折率測定法により、屈折率ndを測定した。透過率が低いガラスサンプルは、Tg近傍で数時間から数十時間熱処理して透過率を高めてから測定した。表4には屈折率ndの値の小数点以下3桁目を四捨五入して小数点以下2桁まで表す。
【0133】
表4に記載した屈折率ndの値の中には測定して得た値のほか、計算によって求めた値も含まれる。計算によって得た値は次のようにして求めた。組成が類似したガラスの屈折率について、加成性が成り立つことが広く知られている。したがって、屈折率を予測しようとするガラス(ガラスAと記す)の組成と類似する組成を有し、屈折率が既知のガラスBの組成および屈折率からガラスAの屈折率を予測することができる。
【0134】
以下、屈折率の予測方法の一例を示す。ガラスBに含まれる特定成分C(1)の一部または全部を他の成分B(2)、B(3)・・・・B(n)へそれぞれ置換した時の屈折率の変化量のデータを収集する。収集した屈折率変化量を各成分の置換量で除して、各成分の単位置換量当たり屈折率の変化量を計算し、一軸状にプロットする。組成が類似する範囲では各成分の屈折率変化量の位置関係は大きく変わらないので、屈折率が既知のガラスC(ガラスA、Bに類似する組成を持つ)から、プロットされた成分であるB(x)とB(y)を置換したときのガラスC‘の屈折率は、ガラスCの屈折率nd(C)とB(x)とB(y)のプロットされた屈折率変化量の差分Δnd(y-x)を用いて、
nd(C)+Δnd(y-x)
として算出できる。
【0135】
【表4】
【0136】
(実施例2)
<組成Iを有するガラスサンプル>
表5に示すガラス組成Iを有するガラスサンプルを以下の手順で作製し、各種評価を行った。
【0137】
【表5】
【0138】
[ガラスの製造]
ガラスの構成成分に対応する酸化物、水酸化物、メタリン酸塩、炭酸塩、および硝酸塩を原材料として準備し、得られるガラスの組成が、表5に示す組成Iとなるように上記原材料を秤量、調合して、原材料を十分に混合した。得られた調合原料(バッチ原料)を、白金坩堝に投入し、1100~1450℃で2~3時間加熱して熔融ガラスとした。熔融ガラスを攪拌して均質化を図り、清澄してから、熔融ガラスを適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ。鋳込んだガラスを、ガラス転移温度Tg付近で1時間程度熱処理し、炉内で室温まで放冷した。長さ40mm、幅10mm、厚さ1.0mmの大きさに加工し、40mm×10mmとなる2つ面を精密研磨して、ガラスサンプルを得た。
【0139】
[ガラス成分組成の確認]
得られたガラスサンプルについて、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)でガラス成分の含有量を測定し、表5に示す組成のとおりであることを確認した。
【0140】
[屈折率nd]
上記ガラスサンプルについて、JIS規格 JIS B 7071-1の屈折率測定法により、屈折率ndを測定した。透過率が低いガラスサンプルは、Tg近傍で数時間から数十時間熱処理して透過率を高めてから測定した。結果を表5に示す。なお、表5には屈折率ndの値の小数点以下3桁目を四捨五入して小数点以下2桁まで表示する。
【0141】
[比重]
比重は、アルキメデス法により測定した。結果を表5に示す。
【0142】
[ガラス転移温度Tg]
ガラス転移温度Tgは、MACサイエンス社製の熱機械分析装置(TMA4000S)を使用し、昇温速度4℃/分にて測定した。結果を表5に示す。
【0143】
[平均線膨張係数]
平均線膨張係数の測定方法は、日本光学硝子工業会規格JOGIS 08―2003「光学ガラスの熱膨張の測定法」に従い測定した。丸棒状の試料の直径を5mmとした。結果を表5に示す。
【0144】
[耐酸性重量減少率Da]
日本光学硝子工業会規格JOGIS06-2009の規定に従い、得られたガラスサンプルを比重に相当する重量の粉末ガラス(粒度425~600μm)にし、白金かごに入れ、それを0.01mol/L硝酸水溶液の入った石英ガラス製丸底フラスコ内に浸漬し、沸騰水浴中で60分間処理し、その処理前後での重量減少率(%)を測定した。その重量減少率を等級で評価した。結果を表5に示す。
【0145】
[還元性雰囲気での熱処理]
上記ガラスサンプルを、真空・ガス置換炉を用いて熱処理した。まず、ガラスサンプルを炉内に配置した。炉内を-100kPa程度にまで減圧し、大気圧になるまで炉内に水素ガスを導入した。昇温速度50~400℃/hで炉内を昇温した。450℃まで昇温し、その温度で8時間保持して、ガラスを水素雰囲気で熱処理した。着色されたガラスサンプルを得た。
【0146】
ガラス組成Iを有するガラスサンプルについて、実施例1と同様の条件で、可視光域(波長400~760nm)における外部透過率を測定した。さらに、波長1100nmにおける外部透過率を測定した。
可視光域における透過率の最大値、波長1100nmにおける透過率を表6に示す。
【0147】
[βOH]
ガラス組成Iを有するガラスサンプルについて、研磨面に垂直方向から光を入射して、波長2500nmにおける外部透過率Aおよび波長2900nmにおける外部透過率Bを、分光光度計を用いてそれぞれ測定し、下記式(1)により、βOHを算出した。結果を表6に示す。
βOH=-[ln(B/A)]/t ・・・(1)
【0148】
上記式(1)中、lnは自然対数であり、厚さtは上記2つの平面の間隔に相当する。また、外部透過率は、ガラス試料表面における反射損失も含み、ガラス試料に入射する入射光の強度に対する透過光の強度の比(透過光強度/入射光強度)である。
【0149】
【表6】
【0150】
<組成IIを有するガラスサンプル>
[ガラスの製造]
ガラスの熔融工程において熔融雰囲気に水蒸気を付加した以外は、組成Iを有するガラスサンプルと同様にして、表5に示すガラス組成IIを有するガラスサンプルを作製した。
【0151】
[各種評価]
得られたガラスサンプルについて、組成Iを有するガラスサンプルと同様に、ガラス成分組成を確認し、屈折率nd、比重、ガラス転移温度Tg、平均線膨張係数、および耐酸性重量減少率Daを測定した。結果を表5に示す。
【0152】
[還元性雰囲気での熱処理]
さらに、得られたガラスサンプルについて、586℃まで昇温し、その温度で5時間保持した以外は、組成Iを有するガラスサンプルと同様にしてガラスを水素雰囲気で熱処理した。着色されたガラスサンプルを得た。
【0153】
ガラス組成IIを有する着色されたガラスサンプルについて、実施例1と同様の条件で、可視光域(波長400~760nm)における外部透過率を測定した。さらに、波長1100nmにおける外部透過率を測定した。
可視光域における透過率の最大値、波長1100nmにおける透過率を表7に示す。
【0154】
<組成IIIを有するガラスサンプル>
[ガラスの製造]
ガラスの熔融工程において熔融雰囲気に水蒸気を付加した以外は、組成Iを有するガラスサンプルと同様にして、表5に示すガラス組成IIIを有するガラスサンプルを作製した。
【0155】
[各種評価]
得られたガラスサンプルについて、組成Iを有するガラスサンプルと同様に、ガラス成分組成を確認し、屈折率nd、比重、ガラス転移温度Tg、平均線膨張係数、および耐酸性重量減少率Daを測定した。結果を表5に示す。
【0156】
[還元性雰囲気での熱処理]
さらに、得られたガラスサンプルについて、642℃まで昇温し、その温度で5時間保持した以外は、組成Iを有するガラスサンプルと同様にしてガラスを水素雰囲気で熱処理した。着色されたガラスサンプルを得た。
【0157】
ガラス組成IIIを有する着色されたガラスサンプルについて、実施例1と同様の条件で、可視光域(波長400~760nm)における外部透過率を測定した。さらに、波長1100nmにおける外部透過率を測定した。
可視光域における透過率の最大値、波長1100nmにおける透過率を表7に示す。
【0158】
<組成IVを有するガラスサンプル>
[ガラスの製造]
組成Iを有するガラスサンプルと同様にして、表5に示すガラス組成IVを有するガラスサンプルを作製した。
【0159】
[各種評価]
得られたガラスサンプルについて、組成Iを有するガラスサンプルと同様に、ガラス成分組成を確認し、屈折率nd、比重、ガラス転移温度Tg、平均線膨張係数、および耐酸性重量減少率Daを測定した。結果を表5に示す。
【0160】
[還元性雰囲気での熱処理]
さらに、得られたガラスサンプルについて、449℃まで昇温し、その温度で10時間保持した以外は、組成Iを有するガラスサンプルと同様にしてガラスを水素雰囲気で熱処理した。着色されたガラスサンプルを得た。
【0161】
ガラス組成IVを有する着色されたガラスサンプルについて、実施例1と同様の条件で、可視光域(波長400~760nm)における外部透過率を測定した。さらに、波長1100nmにおける外部透過率を測定した。
可視光域における透過率の最大値、波長1100nmにおける透過率を表7に示す。
【0162】
【表7】
【0163】
[化学強化]
(実施例2-1)
上記のとおり還元性雰囲気で熱処理して得られた、組成Iを有する着色されたガラスサンプルを、KNOとNaNOとのモル比が5:5の混合塩からなる溶融塩に浸漬し、化学強化サンプルを得た。このとき、溶融塩の温度は340℃とし、浸漬時間は2時間とした。
【0164】
(実施例2-2)
溶融塩の温度を300℃とし、浸漬時間を4時間とした他は、実施例2-1と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0165】
(実施例2-3)
浸漬時間を4時間とした他は、実施例2-1と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0166】
(実施例2-4)
溶融塩の温度を380℃とした他は、実施例2-1と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0167】
(実施例2-5)
浸漬時間を7時間とした他は、実施例2-1と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0168】
(実施例2-6)
溶融塩の温度を320℃とし、浸漬時間を4時間とした他は、実施例2-1と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0169】
(実施例2-7)
溶融塩の温度を360℃とし、浸漬時間を4時間とした他は、実施例2-1と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0170】
(実施例2-8)
溶融塩の温度を320℃とし、浸漬時間を7時間とした他は、実施例2-1と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0171】
(実施例2-9)
上記のとおりガラスの熔融工程において熔融雰囲気に水蒸気を付加し、さらに還元性雰囲気で熱処理して得られた、ガラス組成IIを有する着色されたガラスサンプルを、KNOの単塩の溶融塩に浸漬し、化学強化サンプルを得た。このとき、溶融塩の温度は420℃とし、浸漬時間は4時間とした。
【0172】
(実施例2-10)
溶融塩の温度を460℃とした他は、実施例2-9と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0173】
(実施例2-11)
溶融塩の温度を440℃とした他は、実施例2-9と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0174】
(実施例2-12)
溶融塩の温度を460℃とし、浸漬時間を14時間とした他は、実施例2-9と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0175】
(実施例2-13)
溶融塩の温度を400℃とし、浸漬時間を24時間とした他は、実施例2-9と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0176】
(実施例2-14)
溶融塩の温度を380℃とし、浸漬時間を24時間とした他は、実施例2-9と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0177】
(実施例2-15)
溶融塩の温度を360℃とし、浸漬時間を24時間とした他は、実施例2-9と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0178】
(実施例2-16)
溶融塩の温度を460℃とし、浸漬時間を48時間とした他は、実施例2-9と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0179】
(実施例2-17)
溶融塩の温度を420℃とし、浸漬時間を24時間とした他は、実施例2-9と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0180】
(実施例2-18)
溶融塩の温度を440℃とし、浸漬時間を24時間とした他は、実施例2-9と同様にして化学強化サンプルを得た。
【0181】
(実施例2-19)
上記のとおりガラスの熔融工程において熔融雰囲気に水蒸気を付加し、さらに還元性雰囲気で熱処理して得られた、ガラス組成IIIを有する着色されたガラスサンプルを、KNOの単塩の溶融塩に浸漬し、化学強化サンプルを得た。このとき、溶融塩の温度は420℃とし、浸漬時間は4時間とした。
【0182】
(実施例2-20)
上記のとおり還元性雰囲気で熱処理して得られた、組成IVを有する着色されたガラスサンプルを、NaNOの単塩の溶融塩に浸漬し、その後KNOの単塩の溶融塩に浸漬して、化学強化サンプルを得た。このとき、溶融塩の温度はいずれも380℃とし、浸漬時間の合計は4時間とした。
【0183】
[抗折強度(曲げ強さ)]
上記化学強化サンプルについて、JIS R 1601:2008に規定される3点曲げ試験法により、抗折強度(曲げ強さ)を測定した。測定サンプルの寸法は40mm×10mm×1mmとし、支点間距離は30mmとした。なお、検体数は5以上とした。得られた数値の平均値、最大値、最小値を表8-1、8-2、8-3に示す。
【0184】
【表8-1】
【0185】
【表8-2】
【0186】
【表8-3】