(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/436 20060101AFI20231024BHJP
H01R 13/434 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01R13/436
H01R13/434
(21)【出願番号】P 2019133506
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 友美
(72)【発明者】
【氏名】大石 全伸
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-014577(JP,U)
【文献】特開2002-270274(JP,A)
【文献】特開2001-189177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H01R 12/00,12/50-12/91
H01R 24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と、前記端子を収容する端子収容室を有するハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、
所定方向に延びる梁状の形状を有し且つ前記端子収容室の中の所定位置に前記端子を係止するランスと、前記ランスの近傍から前記ハウジングの外部まで前記ランスが延びる前記所定方向に交差する方向に延びる貫通路を画成する開口部と、を有し、
前記ランスは、
前記端子の係止を解除する操作のための外力を当該ランスに及ぼすことが可能な操作部を有し、
前記ハウジングは、ハウジング本体と、前記ハウジング本体に装着されるリテーナとで構成され、
前記ハウジング本体には
、複数の前記端子収容室が
、前記所定方向に直交する幅方向に間隔を空けて並ぶように設けられ、前記リテーナには
、複数の前記ランス
が、前記複数の端子収容室に対応して前記幅方向に間隔を空けて並ぶように設けられ、且つ、1つの幅広の前記開口部が
、前記幅方向の最も一方側に位置する前記端子収容室の位置から前記幅方向の最も他方側に位置する前記端子収容室の位置まで前記幅方向に連続して延びるように設けられている、
コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記ランスは、
前記端子から離れる向きに撓むことによって前記端子の係止を解除可能である、ように構成され、
前記ハウジングは、
前記離れる向きにおいて前記ランスに向かい合う前記リテーナの壁部に、前記開口部を有する、
コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタにおいて、
前記ランスは、
片持ち梁状の形状を有し、且つ、前記操作部として前記離れる向きに交差する向きに突出する突起部を有する、
コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子と、その端子を収容する端子収容室を有するハウジングと、を備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、端子収容室に収容された端子を端子収容室内の所定位置に係止するためのランスを有するコネクタが提案されている。例えば、従来のコネクタの一つは、端子と、端子収容室を有するハウジング本体と、ハウジング本体に組み付けられるフロントホルダと、を備えている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のコネクタは、相手側コネクタとの嵌合時に相手側端子を端子収容室に向けて受け入れる前端開口部と、その前端開口部に隣接するように設けられて端子の係止を解除する操作のための棒状の解除具を受け入れる解除用開口部と、を有している。この解除用開口部に挿入した解除具によってランスに外力を及ぼして変形させることで、ランスによる端子の係止が解除されるようになっている。このような解除の仕組み上、このコネクタには、解除用開口部や、解除用開口部からランスまで解除具を通すための空間(いわゆる挿入スペース)を設ける必要があり、コネクタの小型化が困難であった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化が可能なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記[1]~[3]を特徴としている。
[1]
端子と、前記端子を収容する端子収容室を有するハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、
所定方向に延びる梁状の形状を有し且つ前記端子収容室の中の所定位置に前記端子を係止するランスと、前記ランスの近傍から前記ハウジングの外部まで前記ランスが延びる前記所定方向に交差する方向に延びる貫通路を画成する開口部と、を有し、
前記ランスは、
前記端子の係止を解除する操作のための外力を当該ランスに及ぼすことが可能な操作部を有し、
前記ハウジングは、ハウジング本体と、前記ハウジング本体に装着されるリテーナとで構成され、
前記ハウジング本体には、複数の前記端子収容室が、前記所定方向に直交する幅方向に間隔を空けて並ぶように設けられ、前記リテーナには、複数の前記ランスが、前記複数の端子収容室に対応して前記幅方向に間隔を空けて並ぶように設けられ、且つ、1つの幅広の前記開口部が、前記幅方向の最も一方側に位置する前記端子収容室の位置から前記幅方向の最も他方側に位置する前記端子収容室の位置まで前記幅方向に連続して延びるように設けられている、
コネクタであること。
[2]
上記[1]に記載のコネクタにおいて、
前記ランスは、
前記端子から離れる向きに撓むことによって前記端子の係止を解除可能である、ように構成され、
前記ハウジングは、
前記離れる向きにおいて前記ランスに向かい合う前記リテーナの壁部に、前記開口部を有する、
コネクタであること。
[3]
上記[2]に記載のコネクタにおいて、
前記ランスは、
片持ち梁状の形状を有し、且つ、前記操作部として前記離れる向きに交差する向きに突出する突起部を有する、
コネクタであること。
【0007】
上記[1]の構成のコネクタによれば、ハウジングが有する開口部により、ランスの近傍とハウジングの外部とを繋ぐ貫通路が、ランスが延びる方向に交差する方向に延びるように(例えば、ハウジングの側壁や底壁を貫通するように)画成される。よって、例えば、この貫通路に棒状の解除具を挿し込み、その解除具によってランスの操作部に外力を及ぼすことで、ランスによる端子の係止を解除できる。ここで、貫通路は、従来のコネクタのようにハウジングの前端開口部からハウジングの長手方向に沿って長々と延びるように設ける必要はなく、例えば、ハウジングの側壁や底壁に設けた開口部から比較的短い長さでランスに到達するように設け得る。したがって、本構成のコネクタは、従来のコネクタに比べ、小型化が可能である。
【0008】
なお、「ランス」は、例えば、片持ち梁状の形状を有してもよいし、両持ち梁状の形状を有してもよいし、他の梁状の形状を有してもよい。
【0009】
上記[2]の構成のコネクタによれば、ランスによる端子の係止を解除する際にランスを撓ませる向き(即ち、端子から離れる向き)においてランスに向かい合う壁部に、上述した開口部が設けられる。よって、例えば、他の壁部に開口部が設けられる場合に比べ、解除具を貫通孔に挿し込んでランスによる端子の係止を解除する作業が容易である。その結果、係止解除の作業性を向上できる。
【0010】
上記[3]の構成のコネクタによれば、係止解除のためにランスを撓ませる向き(即ち、端子から離れる向き)に交差する向きに、片持ち梁状のランスから突起部が突出する。よって、例えば、解除具をこの突起部に引っ掛けて外力を及ぼすことで、ランスを端子から離すように容易に変形させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型化が可能なコネクタを提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、リテーナが仮係止位置にある状態における本発明の実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すハウジング本体に
図1に示すリテーナを装着する際の様子を示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1に示すコネクタの正面図であり、
図3(b)は、そのコネクタの下面図である。
【
図5】
図5(a)は、
図3(b)のB-B断面図であり、
図5(b)は、
図3(b)のC-C断面図である。
【
図7】
図7は、棒状の解除具を開口部に挿入してランスによる端子の係止を解除する様子を示す
図5(b)に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタ1について説明する。以下、説明の便宜上、
図1に示すように、「前後方向」、「幅方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、コネクタ1と相手側コネクタ(図示省略)との嵌合方向と一致している。
【0015】
図1に示すコネクタ1は、ハウジング10と、ハウジング10に収容される端子50(
図5参照)と、を備える。以下、コネクタ1を構成する各部材について順に説明する。
【0016】
まず、端子50について説明する。
図5に示すように、金属製の端子50は、前後方向に延びるメス端子であり、その前端部に、矩形筒状の箱部51を有する。箱部51には、相手側コネクタに収容された相手側端子(オス端子、図示省略)が挿入されることになる。箱部51の後側には、端子50から後方に延びる電線(図示省略)の端末に接続される加締め部(図示省略)が一体に設けられている。
【0017】
箱部51の下面には、下方に突出するランス係止片52が形成されている(
図5(a)及び
図6参照)。ランス係止片52は、ハウジング10の後述するランス36(
図4参照)に係止されることになる。箱部51の後側には、上方に窪み且つ幅方向に貫通する凹部53が形成されている。凹部53には、ハウジング10の後述する検知突起39(
図4参照)が挿入されることになる。
【0018】
次いで、ハウジング10について説明する。樹脂製のハウジング10は、
図1及び
図2に示すように、ハウジング本体20と、ハウジング本体20に装着されるリテーナ30と、を有する。
【0019】
まず、ハウジング本体20について説明する。ハウジング本体20は、
図2に示すように、前後方向に延びる略直方体状の端子収容部21と、端子収容部21の後部領域の外周を環状隙間20aを介して包囲する筒状の外筒部22と、を一体に有する。コネクタ1と相手側コネクタとの嵌合時(以下、単に「嵌合時」と呼ぶこともある)、この環状隙間20aに、相手側コネクタのフード部(図示省略)が挿入されることになる。
【0020】
端子収容部21の前部領域は、外筒部22の前端から前方に突出している。この端子収容部21の前部領域(以下、「装着部21a」と称呼する)に、リテーナ30が装着されることになる。
【0021】
端子収容部21の後部領域の前端部(即ち、装着部21aの後端部の後側に隣接する箇所)には、ゴム製の環状リップ60が装着されている。嵌合時、環状リップ60は、端子収容部21の外周と相手側コネクタのフード部の内周との間の隙間をシールする防水機能を発揮する。
【0022】
端子収容部21の内部には、後方に開口し且つ前後方向に延びる端子収容室23(
図5参照)が、幅方向に一列に並ぶように複数(本例では、8つ)設けられている。端子収容室23には、その後端開口から端子50が挿入されることになる。
【0023】
装着部21aの前端部には、各端子収容室23と連通する前端開口24(前後方向に延びる貫通孔)が、幅方向に一列に並ぶように複数(本例では、8つ)設けられている(
図2及び
図5参照)。嵌合時、相手側コネクタのオス端子が前端開口24を通過して端子収容室23に収容された端子50の箱部51に挿入されることになる。
【0024】
装着部21aの下面には、幅方向全域に亘って延びる矩形状の下部開口25が、複数の端子収容室23と連通するように形成されている。下部開口25は、ハウジング本体20にリテーナ30を装着することにより、リテーナ30の後述する下板部32によって塞がれることになる。
【0025】
装着部21aの上面には、幅方向中央部にて、幅方向に所定距離を空けて前後方向に延びる一対の突条26,27が形成されている。突条26,27は、後述するように、ハウジング本体20に装着されたリテーナ30を仮係止位置および本係止位置のそれぞれに係止する機能を有する。なお、
図1~
図7(
図2を除く)は、リテーナ30が「仮係止位置」にある状態を示す。
【0026】
次いで、リテーナ30について説明する。リテーナ30は、各端子50が端子収容室23内の正規位置(
図5参照)に収容されているか否かを検知する機能を有する。リテーナ30は、
図2に示すように、上下方向に対向するように配置され且つ幅方向に延びる矩形平板状の上板部31及び下板部32と、上板部31及び下板部32の右端部同士を連結する連結部33と、上板部31及び下板部32の間の空間を前側から塞ぐように上板部31、下板部32、及び連結部33それぞれの前端面に連結された前板部34と、を備える。
【0027】
前板部34には、ハウジング本体20の複数の端子収容室23に対応して、前端開口35(前後方向に延びる貫通孔)が、幅方向に一列に並ぶように複数(本例では、8つ)設けられている(
図2及び
図5(b)参照)。嵌合時、相手側コネクタのオス端子が前端開口35を通過して端子収容室23に収容された端子50の箱部51に挿入されることになる。
【0028】
図4に示すように、下板部32の上面(内面)には、複数の前端開口35に対応して、前方に向けて延びる片持ち梁状のランス36が、幅方向に一列に並ぶように複数(本例では、8つ)設けられている。各ランス36は、下向きに弾性変形可能となっている。リテーナ30をハウジング本体20の装着部21aに装着することで、装着部21aの下部開口25が下板部32によって塞がれると共に、複数のランス36が複数の端子収容室23にそれぞれ臨むように配置されることになる(
図5参照)。
【0029】
ランス36は、その先端面37が端子収容室23内の正規位置にある端子50のランス係止片52と係合することで、端子50を正規位置に係止する機能を有する(
図5(a)参照)。リテーナ30が本係止位置にあるときに加えてリテーナ30が仮係止位置にあるときにも、ランス36が端子50のランス係止片52と係合可能とするため、ランス36は、幅方向において前端開口35に対応する領域から更に左側に延びた幅広の形状を有している(
図6も参照)。
【0030】
各ランス36の先端面37の下端位置には、前方に突出し幅方向に延びる突起部38が形成されている(
図5及び
図6も参照)。各ランス36の根元部の幅方向において前端開口35に対応する位置(即ち、根元部の右側部分)には、上方に突出する検知突起39が設けられている。突起部38、及び、検知突起39の作用については後述する。
【0031】
下板部32には、ランス36の先端面37より僅かに前側の位置に、複数の前端開口35に対応して、上下方向に貫通する矩形状の開口部41が、幅方向に一列に並ぶように複数(本例では、8つ)設けられている(
図3(b)及び
図5(b)参照)。このため、各開口部41は、各ランス36の先端面37(突起部38)の近傍部分と、リテーナ30の外部とを連通する貫通路を画成している。開口部41には、後述するように、棒状の解除具70が挿入される(
図7参照)。
【0032】
開口部41の前側の内壁面は、上方に向かう(よって、ランス36の突起部38に向かう)につれてより後方に位置する向きに傾斜している。この内壁面は、解除具70を開口部41に挿入する際において、解除具70をランス36の突起部38に向けて案内する案内面42として機能する。
【0033】
下板部32の上面には、複数の開口部41より前側の位置にて、前方に開口し且つ後方に窪み、幅方向全域に亘って延びる溝部43が形成されている(
図4及び
図5参照)。溝部43は、リテーナ30をハウジング本体20の装着部21aに装着する際に、装着部21aの下部開口25の幅方向に延びる前側縁部と係合することになる(
図5参照)。以上、コネクタ1を構成する各部材について説明した。
【0034】
次いで、ハウジング10の組み付け手順について簡単に説明する。まず、
図2に示すように、ハウジング本体20の端子収容部21の後部領域の前端部に、環状リップ60を装着する。次いで、
図2に白矢印で示すように、リテーナ30を、リテーナ30の溝部43を装着部21aの下部開口25の前側縁部に係合させながら、端子収容部21の装着部21aに、右側から左向きにスライドしながら装着する。
【0035】
リテーナ30のスライドは、リテーナ30の上板部の下面(内面)から下方に突出する突起(図示省略)が突条26と突条27との間に移動するまで継続される。リテーナ30の上板部の当該突起が突条26と突条27との間に位置して突条26,27に挟まれることで、リテーナ30が仮係止位置に保持される。
【0036】
リテーナ30が仮係止位置にある状態では、リテーナ30の各検知突起39が、幅方向において、隣接する端子収容室23の間の空間に位置する。このため、検知突起39に邪魔されることなく、各端子50が端子収容室23に挿入可能となる。また、リテーナ30が仮係止位置にある状態では、各ランス36の左側部分(前端開口35に対応する領域から左側に延びた部分)が端子収容室23に臨むように配置されている(
図6参照)。また、リテーナ30が仮係止位置にある状態では、リテーナ30の各前端開口35及び各開口部41は、装着部21aの各前端開口24(各端子収容室23)に対して、リテーナ30の仮係止位置及び本係止位置の間の位置ずれ分だけ、右側にずれた状態にある(
図6参照)。
【0037】
次いで、リテーナ30が仮係止位置にあるハウジング本体20の複数の端子収容室23に複数の端子50を後側からそれぞれ挿入する。ランス36は、端子50が正規位置(
図5参照)に到達する直前に、端子50のランス係止片52からの押圧により一時的に下向きに弾性変形し、端子が正規位置に到達すると、ランス係止片52がランス36を乗り越えることで、上向きに弾性回復する。この結果、ランス36の先端面37がランス係止片52と係合してランス36が端子50を正規位置に係止する(
図5参照)。端子50が正規位置にある状態では、端子50の凹部53とリテーナ30の検知突起39との前後方向位置が一致するので、リテーナ30の左向きの移動により検知突起39が凹部53に挿入可能となっている。
【0038】
全ての端子50が正規位置に挿入された後、仮係止位置にあるリテーナ30を本係止位置に向けて更に左向きにスライドさせる。複数の端子50の全てが正規位置にあるときには、リテーナ30の複数の検知突起39の全てが対応する端子50の凹部53に挿入可能であるので、リテーナ30が仮係止位置から左向きに移動し、リテーナ30の上板部31の上記突起が突条27の左側面に係止されることで、リテーナ30が本係止位置に保持される。これにより、コネクタ1の組み付けが完了し、コネクタ1が相手側コネクタと嵌合し得る状態となる。
【0039】
一方、複数の端子50のうちで、正規位置(
図5参照)に到達していない(半挿入位置にある)端子50が存在する場合、半挿入位置にある端子50の箱部51の後端部の側面に、対応する検知突起39が干渉することで、リテーナ30が仮係止位置から左向きに移動できない。このように、リテーナ30が仮係止位置から左向きに移動できるか否かを検知することで、全ての端子50が端子収容室23内の正規位置に収容されているか否かを検知することができる。
【0040】
リテーナ30が本係止位置にある状態(コネクタ1の組付完了状態)では、ランス36の先端面37がランス係止片52と係合すること、並びに、検知突起39が端子50の凹部53に進入して端子50の箱部51の後端面と検知突起39とが係合することで、端子50が正規位置に二重に係止される。リテーナ30が本係止位置にある状態では、リテーナ30の各前端開口35の幅方向位置と、装着部21aの各前端開口24(各端子収容室23)の幅方向位置とが一致する。このため、嵌合時、相手側コネクタのオス端子が前端開口24,35を通過して端子収容室23に収容された端子50の箱部51に挿入され得る。
【0041】
次いで、端子収容室23内の正規位置に収容されている端子50を端子収容室23から抜き出す際の手順について説明する。まず、本係止位置にあるリテーナ30を仮係止位置まで移動させる。これにより、端子50の箱部51の後端面と検知突起39との係合が解除される。
【0042】
次いで、
図7に示すように、抜き出す対象の端子50に対応するリテーナ30の開口部41に、棒状の解除具70を挿入して解除具70の先端を、抜き出す対象の端子50に対応するランス36の突起部38に近づける。このとき、解除具70の先端部を開口部41の傾斜する案内面42上に滑らせながら解除具70を挿入することで、解除具70の先端を当該突起部38に極めて容易に近づけることができる。
【0043】
そして、解除具70の先端に設けられたフック状の引っ掛け部71を当該突起部38に引っ掛けて解除具70を下向きに引っ張ることで、当該ランス36を下向きに弾性変形させる(
図7の白矢印参照)。これにより、当該ランス36による端子50の係止が解除される。この状態にて、当該端子50を後方に引くことで、当該端子50を端子収容室23から抜き出すことができる。このような手順を端子50毎に繰り返すことで、複数の端子50の全てを端子収容室23から順に抜き出すことができる。このように、突起部38は、ランス36による端子50の係止を解除する操作のための外力をランス36に及ぼすための操作部として機能する。
【0044】
以上、本発明の実施形態に係るコネクタ1によれば、ハウジング10が有する開口部41により、片持ち梁状のランス36が延びる前方に交差する上下方向に延びる貫通路が画成される。このため、この貫通路を通り抜けるように棒状の解除具70をハウジング10の外部からランス36に向けて近付け、解除具70によって端子50の係止が解除される下向きにランス36を変形させれば、端子50を端子収容室23から抜き出すことができる。ハウジング10の貫通路は、従来のコネクタのようにハウジングの前端面からハウジングの長手方向に沿って延びるように設ける必要はなく、本例では、ハウジング10の下面から(具体的には、リテーナ30の下板部32にて)上下方向に沿って延びるように設け得る。よって、本実施形態のコネクタ1は、従来のコネクタに比べ、長手方向に延びる貫通路を排除できる分だけ小型化が可能である。また、本実施形態のコネクタ1は、従来のコネクタのようにハウジングの前端面に開口部を設ける場合に比べ、開口部の開口面積を大きくすることができるため、ランスによる端子の係止を解除する作業の作業性を向上できる。
【0045】
更に、本実施形態に係るコネクタ1によれば、ランス36が端子50から離れる下向きにおいてランス36に対面するハウジング10の壁部(具体的には、リテーナ30の下板部32)に、貫通路を画成するための開口部41が設けられる。よって、例えば、他の壁部に開口部が設けられる場合に比べ、解除具70を開口部41に挿入してランス36による端子50の係止を解除する作業が容易になり、係止解除の作業性を向上できる。
【0046】
更に、本実施形態に係るコネクタ1によれば、ランス36が端子50から離れる下向きに交差する前向きに、ランス36から突起部38が突出する。よって、解除具70をこの突起部38に引っ掛けることで、ランス36を端子50から離すように容易に変形させることができる。
【0047】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0048】
例えば、上記実施形態では、リテーナ30の下板部32に、複数の前端開口35に対応して、上下方向に貫通する矩形状の開口部41が、幅方向に一列に並ぶように複数設けられている(
図3(b)及び
図5(b)参照)。このため、解除具70を1つの開口部41に挿入する毎に対応する1本の端子50しか抜き出すことができない。
【0049】
これに対し、リテーナ30の下板部32に、上下方向に貫通し、且つ、複数の前端開口35の幅寸法に対応して幅方向に連続して延びる矩形状の1つの幅広の開口部が設けられてもよい。これによれば、幅方向に延びる解除具を利用することで、当該解除具を1つの幅広の開口部に挿入して全てのランス36を一度に下向きに弾性変形させることで、全ての端子50を一度に抜き出すことができる。
【0050】
更に、上記実施形態では、樹脂製のハウジング10が、ハウジング本体20とリテーナ30という2つの部品で構成されているが、樹脂製のハウジング10が1つの部品で構成されていてもよい。
【0051】
更に、上記実施形態では、片持ち梁状の形状を有するランス36がハウジング10に設けられている。しかし、ランス36の形状は、片持ち梁状の形状に限られず、両持ち梁状の形状であってもよいし、他の梁状の形状であってもよい。また、端子50の係止を解除する操作のための外力をランス36に及ぼすための箇所(操作部)は、突起部38に限られず、窪み(凹部)であってもよい。
【0052】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
端子(50)と、前記端子(50)を収容する端子収容室(23)を有するハウジング(10)と、を備えるコネクタ(1)であって、
前記ハウジング(10)は、
所定方向に延びる梁状の形状を有し且つ前記端子収容室(23)の中の所定位置に前記端子(50)を係止するランス(36)と、前記ランス(36)の近傍から前記ハウジング(10)の外部まで前記ランス(36)が延びる前記所定方向に交差する方向に延びる貫通路を画成する開口部(41)と、を有し、
前記ランス(36)は、
前記端子(50)の係止を解除する操作のための外力を当該ランス(36)に及ぼすことが可能な操作部(38)を有する、
コネクタ(1)。
[2]
上記[1]に記載のコネクタ(1)において、
前記ランス(36)は、
前記端子(50)から離れる向きに撓むことによって前記端子(50)の係止を解除可能であり
前記ハウジング(10)は、
前記離れる向きにおいて前記ランス(36)に向かい合う当該ハウジング(10)の壁部(32)に、前記開口部(41)を有する、
コネクタ(1)。
[3]
上記[2]に記載のコネクタ(1)において、
前記ランス(36)は、
片持ち梁状の形状を有し、且つ、前記操作部として前記離れる向きに交差する向きに突出する突起部(38)を有する、
コネクタ(1)。
【符号の説明】
【0053】
1 コネクタ
10 ハウジング
20 ハウジング本体(ハウジング)
23 端子収容室
30 リテーナ(ハウジング)
32 下板部(壁部)
36 ランス
38 突起部(操作部)
41 開口部