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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】顔料含有中空粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/02 20060101AFI20231024BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20231024BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20231024BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20231024BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20231024BHJP
   C08F 220/10 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
C09B67/02 A
C08F2/18
A61K8/81
A61K8/02
A61K8/49
A61Q1/12
A61Q1/02
C09D5/33
C08F220/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019161562
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021038339
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】松浦 春彦
(72)【発明者】
【氏名】前山 洋輔
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/150423(WO,A1)
【文献】特開2010-031185(JP,A)
【文献】特開2006-008930(JP,A)
【文献】特開2005-023277(JP,A)
【文献】特開2011-085235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C09B 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非多孔性のシェルと、前記シェルにより区画された空域とを備え、かつ顔料粒子を含む顔料含有中空粒子であって、前記シェルは、その内壁に複数の突起を有し、前記複数の突起が、互いに連結しており、前記顔料粒子は、800~1500nmの波長の光を含む近赤外光に対する反射率が40%以上であり、400~700nmの波長の光の反射率が10%以下であり、1200~1500nmの波長の光の反射率が50%以上である性質を有することを特徴とする顔料含有中空粒子 。
【請求項2】
前記顔料粒子が、前記顔料含有中空粒子中に1~30重量%含まれる請求項1に記載の顔料含有中空粒子。
【請求項3】
前記顔料含有中空粒子が、1.0~50μmの体積平均粒子径を有し、前記シェルが、架橋樹脂から構成される請求項1又は2に記載の顔料含有中空粒子。
【請求項4】
前記架橋樹脂が、ビニル系単官能単量体とビニル系架橋性単量体とに由来し、前記ビニル系単官能単量体とビニル系架橋性単量体とが、(メタ)アクリル酸エステルである請求項に記載の顔料含有中空粒子。
【請求項5】
前記顔料含有中空粒子が、塗料組成物、化粧料、紙被覆組成物、断熱性組成物、光拡散性組成物及び光拡散フィルムから選択される用途に使用される請求項1~のいずれか1つに記載の顔料含有中空粒子。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つに記載の顔料含有中空粒子の製造方法であり、
ビニル系単官能単量体と、ビニル系架橋性単量体と、非反応性溶剤と、重合開始剤と、顔料粒子とを含む混合物を、分散助剤の存在下、懸濁安定剤を含む水系媒体中で重合させる工程を含むことを特徴とする顔料含有中空粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料含有中空粒子及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、中空粒子を構成するシェルの内壁に複数の突起を備え、かつ顔料を含有した中空粒子及びその製造方法に関する。本発明の顔料含有中空粒子は、塗料組成物、化粧料、紙被覆組成物、断熱性組成物、光拡散性組成物、光拡散フィルム等の用途に適している。
【背景技術】
【0002】
内部に空域を有するポリマー粒子(中空粒子)は、材料の軽量化、造孔化、断熱性、遮音性、耐衝撃性等を付与する目的で、極めて広範な分野で利用されている。
この中空粒子は、シェルと、シェルにより区画された空域との屈折率差により可視光の散乱が起こることが知られており、内部に空域のないポリマー粒子(中実粒子)よりも優れた光拡散性を有している。このことから中空粒子は、不透明度、白色度、光沢等を向上させる効果を有しているため、例えば光拡散剤として塗料、紙被覆組成物、化粧品、日焼け止めクリーム等に用いられている。とりわけ、近年、省エネルギー化をはかる観点から、建物の屋根に遮熱塗料や断熱塗料を塗工することが検討されており、遮熱性や断熱性を向上させる材料として、光散性に優れた中空粒子の使用が検討されている。例えば、国際公開第2017/150423号(特許文献1)では、空域内に多孔質構造体を備えた中空粒子が提案され、この中空粒子は、高度な光拡散特性を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/150423号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、省エネルギー化をはかる観点から、建物の屋根に遮熱塗料や断熱塗料を塗工することが検討されており、遮熱性や断熱性を向上させる塗料が求められている。特に、屋外建物の屋根、自動車等は、濃彩色から黒色の塗料が多く求められている。
特許文献1に記載された中空粒子は、その高度な光拡散特性から白色度が高いため、濃彩色から黒色の塗料への添加には適していなかった。そのため、濃彩色から黒色の塗料への添加に適した中空粒子を提供することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして本発明によれば、非多孔性のシェルと、前記シェルにより区画された空域とを備え、かつ近赤外光を実質的に吸収しない顔料粒子を含む顔料含有中空粒子であって、前記シェルは、その内壁に複数の突起を有し、前記複数の突起が、互いに連結していることを特徴とする顔料含有中空粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記顔料含有中空粒子の製造方法であり、
ビニル系単官能単量体と、ビニル系架橋性単量体と、非反応性溶剤と、重合開始剤と、顔料粒子とを含む混合物を、分散助剤の存在下、懸濁安定剤を含む水系媒体中で重合させる工程を含むことを特徴とする顔料含有中空粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、濃彩色から黒色の塗料への添加に適した顔料含有中空粒子を提供できる。
また、以下のいずれかの場合、濃彩色から黒色の塗料への添加により適した顔料含有中空粒子を提供できる。
(1)顔料粒子は、400~700nmの波長の光の反射率が10%以下であり、1200~1500nmの波長の光の反射率が50%以上である性質を有する。
(2)顔料粒子が、顔料含有中空粒子中に1~30重量%含まれる。
(3)顔料含有中空粒子が、1.0~50μmの体積平均粒子径を有し、シェルが、架橋樹脂から構成される。
(4)架橋樹脂が、ビニル系単官能単量体とビニル系架橋性単量体とに由来し、ビニル系単官能単量体とビニル系架橋性単量体とが、(メタ)アクリル酸エステルである。
(5)顔料含有中空粒子が、塗料組成物、化粧料、紙被覆組成物、断熱性組成物、光拡散性組成物及び光拡散フィルムから選択される用途に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1~4の顔料含有中空粒子の断面写真(3000~5000倍)である。
図2】実施例5の顔料含有中空粒子、比較例1及び5の粒子の断面写真(3000~4000倍)である。
図3】紫外可視近赤外光の反射特性評価における実施例及び比較例の各中空粒子の各波長に対する光反射率を示すグラフである。
図4】紫外可視近赤外光の反射特性評価における実施例及び比較例の各中空粒子を含むサンプル板の各波長に対する光反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(顔料含有中空粒子)
顔料含有中空粒子は、非多孔性のシェルと、シェルにより区画された空域とを備えている。また、シェルは、その内壁に複数の突起を有している。更に、複数の突起は、互いに連結している。また更に、顔料含有中空粒子は、顔料粒子を含んでいる。
【0009】
(1)シェル
シェルを構成する材料は、空域を区画できさえすれば、特に限定されない。材料は、架橋樹脂を含んでいてもよい。材料には、無機成分(例えば、シリカ)を含んでいなくてもよい。
架橋樹脂は、シェルを構成できさえすればその種類は特に限定されない。架橋樹脂としては、ビニル系単量体に由来する樹脂が挙げられ、具体的には、ビニル系単官能単量体とビニル系架橋性単量体とに由来する樹脂が挙げられる。ビニル系単官能単量体は、ビニル基を1つ有する単量体であり、ビニル系架橋性単量体は、ビニル基を2つ以上有する単量体である。シェルが架橋樹脂からなることは、例えばゲル分率を測定することで確認できる。
ビニル系単官能単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等の炭素数1~16のアルキル(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、無水マレイン酸、N-ビニルカルバゾール;スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系単量体等が挙げられる。これらの単官能単量体を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0010】
ビニル系架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステル、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能アクリルアミド誘導体、ジアリルアミン、テトラアリロキシエタン等の多官能アリル誘導体等、ジビニルベンゼン等の芳香族系ジビニル化合物等が挙げられる。これらの架橋性単量体を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
ビニル系単官能単量体とビニル系架橋性単量体は、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
【0011】
ビニル系架橋性単量体に由来する成分は、ビニル系単官能単量体に由来する成分100重量部に対して、20重量部以上の割合でシェルに含まれていることが好ましい。架橋性単量体に由来する成分の量が20重量部未満の場合、十分な強度を有するシェルが形成されないことがある。ビニル系架橋性単量体に由来する成分の量は、20~150重量部であることがより好ましく、80~130重量部であることが更に好ましい。
【0012】
(2)内壁の突起
シェルは、その内壁に複数の突起を有している。突起の数は、特に限定されない。例えば、シェルの内壁に接する突起は、中空粒子の断面において、2個以上とすることができ、2~1600個の範囲とすることも可能である。また、複数の突起は、隣接する突起間で、互いに連結している。互いに連結していることは、中空粒子の断面写真により確認できる。
体積平均粒子径Vは、1.0~50μmを取り得る。用途にもよるが、体積平均粒子径は、2.0~30μmであることが好ましく、3.0~25μmであることがより好ましい。
複数の突起の平均幅Wは、0.1~2.0μmを取り得る。平均幅は、0.2~1.5μmであることが好ましく、0.3~1.0μmであることがより好ましい。
突起は、中空粒子の体積平均粒子径に対して、0.02~0.5のW/V(Wは、複数の突起の平均幅を、Vは、中空粒子の体積平均粒子径を意味する)の関係を有することが好ましい。W/Vが0.02未満の場合や、0.5より大きい場合、光拡散性が不十分となることがある。W/Vは、0.025~0.4であることがより好ましく、0.03~0.3であることが更に好ましい。
突起は、シェルを構成する材料と同じ材料からなっていてもよい。
【0013】
(3)顔料粒子
顔料粒子は、近赤外光を実質的に吸収しない限り、特に限定されず、近赤外光を反射及び/又は透過し得るが、反射するものが好ましい。一般には、近赤外光とは、800~2500nmの波長の光を意味し、可視光とは400nm以上、800nm未満の光を意味するが、「近赤外光を実質的に吸収しない」との表現に関しては、近赤外光とは、少なくとも800~1500nmの波長の光を意味し、例えば800~1500nm、例えば800~1700nm、例えば800~2000nm、又例えば800~2500nmである。よって、「近赤外光を実質的に吸収しない」とは、少なくとも800~1500nmの波長の光を含む近赤外光に対する反射率が例えば40%以上、例えば50%以上又は例えば60%以上反射及び/又は透過することを意味することができる。ここで反射率とは、実施例に記載しているように、積分球及び基準試料としての硫酸バリウムを用いて紫外可視近赤外分光光度計により測定したときの試料の反射率であって、上記波長域における平均値をいう。
顔料粒子は、所望する塗料に応じた色の顔料粒子を使用できる。濃彩色から黒色の塗料を得るために、顔料粒子も濃彩色から黒色の粒子であることが好ましい。特に、黒色の顔料粒子であることが好ましい。ここで、黒色の顔料粒子として、カーボンブラックが知られている。カーボンブラックは、近赤外光を吸収することが知られており、この吸収の結果、遮熱性や断熱性を向上させることが困難となる。これに対して、本発明で使用される顔料粒子は、近赤外光を実質的に吸収しないため、遮熱性や断熱性を向上させることが可能である。本発明では、カーボンブラックを使用しないことが好ましい。
顔料粒子としては、例えば、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、インジゴ・チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニン系顔料、インドリン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、金属錯体顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、アゾメチンアゾ系黒色顔料、アニリンブラック系顔料等を挙げることができる。この内、アゾメチンアゾ系黒色顔料(アゾメチン顔料)である、CAS No.103621-96-1の1-[4-[(4,5,6,7-テトラクロロ-3-オキソイソインドリン-1-イリデン)アミノ]フェニルアゾ]-2-ヒドロキシ-N-(4’-メトキシ-2’-メチルフェニル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-3-カルボキシアミドが好ましい。このアゾメチン顔料は、「クロモファインブラックA1103」として大日精化社から入手可能である。
近赤外光を反射し得る顔料として、無機顔料も使用することができる。また、赤、橙、黄、緑、青、紫系顔料のいずれか2種以上を混合することで、濃彩色から黒色の混合物とした顔料も使用することができる。
【0014】
顔料粒子は、400~700nm波長の光の反射率が10%以下であり、1200~1500nm波長の光の反射率が50%以上である性質を有していることが好ましい。この性質を有することで、可視光が吸収されて濃彩色から黒色となり、その結果、濃彩色から黒色の塗料への添加に適し、近赤外光が反射されることで遮熱性や断熱性の向上した塗料を提供できる。400~700nmの波長の光の反射率は、5%以下であることがより好ましい。顔料粒子は、800~1500nm波長の光の反射率が50%以上である性質を有していることが好ましく、800~2000nmの波長の光の反射率が50%以上である性質を有していることがより好ましく、900~1500nmの波長の光の反射率が80%以上である性質を有していることが更により好ましい。
顔料粒子は、10~5000nmの平均粒子径を有していることが好ましい。ここで、平均粒子径は、例えば、動的光散乱法、レーザー回折・散乱法、画像解析法、細孔電気抵抗法といった一般的な測定方法や、走査型電子顕微鏡を用いた観察により測定可能である。
顔料粒子は、顔料含有中空粒子中に1~30重量%含まれていてもよい。含有量が1重量%未満の場合、可視光の吸収が不十分となると共に、遮熱性や断熱性の向上効果が不十分となることがある。30重量%より多い場合、中空粒子の強度が低下することがある。含有量は、3~25重量%がより好ましく、5~20重量%が更により好ましい。
【0015】
(4)外形等
顔料含有中空粒子の外形は特に限定されないが、できるだけ球状に近いことが好ましい。
シェルは、0.1~2.0μmの厚みを有する。厚みが0.1μm未満の場合、顔料含有中空粒子がつぶれ易くなることがある。2.0μmより大きい場合、可視光及び近赤外光の反射性が低下することがある。厚みは、0.2~1.5μmであることが好ましく、0.3~1.0μmであることがより好ましい。
シェルは非多孔性である。非多孔性であることで、顔料含有中空粒子を種々の用途に使用しても、空域を維持できるため、顔料含有中空粒子の光拡散性を発揮させることが可能となる。非多孔性であることは、例えば、顔料含有中空粒子の断面写真を取る際に、顔料含有中空粒子を固定するための樹脂が空域に存在しているかどうかで確認できる。
空域内には、互いに連結した複数の粒子から構成される粒子塊が存在してもよい。顔料含有中空粒子の粒子塊は、隣接する突起と連結していてもよい。
また、顔料含有中空粒子の500nmの波長の光の反射率(R500)と1500nmの波長の光の反射率(R1500)との比(R500/R1500)が、0.01~0.5であることが好ましく、0.02~0.2であることがより好ましい。R1500は、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、100%であってもよい。
【0016】
(顔料含有中空粒子の製造方法)
顔料含有中空粒子の製造方法は、ビニル系単官能単量体と、ビニル系架橋性単量体と、非反応性溶剤と、分散助剤と、顔料粒子とを含む混合物を、重合開始剤の存在下、懸濁安定剤を含む水系媒体中で重合させる工程(重合工程)を含む。
【0017】
(1)重合工程
重合工程では、混合物と水系媒体との界面でビニル系単官能単量体とビニル系架橋性単量体とが重合し、生成したポリマーが水系媒体との界面に集まることで、顔料含有中空粒子が得られる。
重合工程では、まず、少なくとも、ビニル系単官能単量体と、ビニル系架橋性単量体と、非反応性溶剤と、重合開始剤と、顔料粒子とを混合して混合物を得る。なお、単量体の使用量と、外殻を構成する単量体由来成分の含有量は、実質的に一致している。
非反応性溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。これらの非反応性有機溶剤を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。顔料含有中空粒子からの除去が容易であることから、非反応性溶剤の沸点は100℃未満であることが好ましい。
非反応性溶媒の添加量は、特に限定されないが、全単量体100重量部に対して、40~250重量部である。添加量が40重量部未満の場合、シェルにて区画された空域の割合が少なくなり、光拡散性が不十分となることがある。250重量部を超えると、シェルの形成が不十分となり、十分な物理的強度を有する粒子が得られないことがある。
【0018】
単量体の重合は、重合開始剤の存在下で行われる。重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、
クメンハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジメチルビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(tert-ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ブチル-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレラート、2-エチルヘキサンペルオキシ酸tert-ブチル、ジベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物類、
2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(2,2’-アゾビス(2-メチル-ブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-イソプロピルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,3-ジメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルカプロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,3,3-トリメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-エトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-n-ブトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピネート)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピネート)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)等のアゾ化合物類が挙げられる。これらの重合開始剤を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
重合開始剤は、混合物中に、全単量体100重量部に対して、0.05~5重量部含まれていることが好ましい。
次に、分散させた混合物は、その中の単量体を重合に付すことで、顔料含有中空粒子が得られる。重合は、特に限定されず、混合物に含まれる単量体及び重合開始剤の種類に応じて、重合温度、重合時間等の諸条件を適宜調整しつつ行われる。例えば、重合温度を30~80℃、重合時間を1~20時間とすることができる。
混合物には、増粘剤を添加してもよい。増粘剤としては、例えば、アクリル系増粘剤、ウレタン系増粘剤、ポリエーテル系増粘剤、ポリビニルアルコール類、セルロース誘導体等の有機系増粘剤が挙げられる。無機系増粘剤としては、疎水性フュームドシリカ、粘土鉱物が挙げられる。これら増粘剤は、1種のみ添加されていても、2種以上が添加されていてもよい。
【0019】
混合物は、懸濁安定剤を含む水系媒体に添加される。
水系媒体を構成する水性媒体としては、例えば、水、水と水溶性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール)との混合物等が挙げられる。
懸濁安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機化合物が挙げられる。懸濁安定剤は、1種又は2種以上組合せて用いることができる。
懸濁安定剤は、全単量体と非反応性溶剤の混合物100重量部に対して、0.5~10重量部使用されることが好ましい。使用量が0.5重量部未満の場合、混合物を十分分散できないことがある。使用量が10重量部より多い場合、使用量に見合った効果が得られずコスト的に不経済であるため好ましくない。
【0020】
重合は分散助剤の存在下で行われる。分散助剤は、混合物中に存在していてもよく、水系媒体中に存在していてもよい。
分散助剤としては、ラウリルリン酸、ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(2)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(4)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(6)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(8)アルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(4)ノニルフェニルエーテルリン酸、カプロラクトンEO変性燐酸ジメタクリレート、2-メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。(数)はオキシエチレンの繰り返し数を意味する。EOはエチレンオキサイドを意味する。
分散助剤の添加量は、特に限定されないが、全単量体と非反応性溶剤の混合物100重量部に対して、0.001~0.5重量部である。添加量が0.001重量部未満の場合、混合物を十分分散できないことがある。0.5重量部を超えると、シェルが形成されないことがある。
本発明の特異な形状の顔料含有中空粒子は、混合物(油相)と水系媒体(水相)とから構成される界面に働く界面張力を制御することで適切に製造できると発明者等は考えている。例えば、界面張力が大きい場合、突起の数が減り及び/又は突起の大きさが大きくなる傾向がある。また、界面張力が小さい場合、突起の数が増え及び/又は突起の大きさが小さくなる傾向がある。混合物(油相)と水系媒体(水相)との界面張力は、例えば使用する非反応性溶剤の種類、全単量体と非反応性溶剤の比率、分散剤の量、分散助剤の量を調整することで制御できる。
加えて、本発明の特異な形状の中空粒子は、混合物(油相)の粘度を調整することでも適切に製造できると発明者等は考えている。混合物(油相)の粘度が高い場合、突起の数が増え及び/又は突起の大きさが小さくなる傾向がある。混合物(油相)の粘度が低い場合、突起の数が減り及び/又は突起の大きさが大きくなる傾向がある。例えば、界面張力が大きい場合においても、混合物(油相)の粘度を高めることで突起の数が多く及び/又は突起の大きさが小さな中空粒子が得られることがある。
使用する顔料が、増粘剤として機能する場合もある。
混合物は、所望の粒径の顔料含有中空粒子が得られるように、撹拌速度、撹拌時間等の諸条件を適宜調整しつつ水系媒体中で分散される。
(2)その他の工程
顔料含有中空粒子は、必要に応じて、遠心分離、水洗及び乾燥を経ることで、水系媒体から取り出すことができる。
【0021】
(用途)
顔料含有中空粒子は、塗料組成物、化粧料、紙被覆組成物、断熱性組成物、光拡散性組成物、光拡散フィルム等の用途で使用できる。特に、遮熱性や断熱性の向上が求められる用途に使用することが適切である。加えて、濃彩色から黒色を付すことが望まれる用途に使用することが適切である。
【0022】
(1)塗料、断熱性及び光拡散性の組成物
これら組成物は、必要に応じて、バインダー樹脂、UV硬化性樹脂、溶剤等が含まれる。バインダー樹脂としては、有機溶剤又は水に可溶な樹脂もしくは水中に分散できるエマルション型の水性樹脂を使用できる。
バインダー樹脂又はUV硬化性樹脂及び中空粒子の添加量は、形成される塗膜の膜厚、中空粒子の平均粒子径及び塗装方法によっても異なる。バインダー樹脂の添加量は、バインダー樹脂(エマルジョン型の水性樹脂を使用する場合は固形分)と中空粒子との合計に対して5~50重量%が好ましい。より好ましい含有量は10~50重量%であり、更に好ましい含有量は20~40重量%である。
バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられ、UV硬化性樹脂としては多価アルコール多官能(メタ)アクリレート等のような多官能(メタ)アクリレート樹脂;ジイソシアネート、多価アルコール、及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等から合成されるような多官能ウレタンアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0023】
UV硬化性樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂がより好ましい。1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂としては、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0024】
UV硬化性樹脂を用いる場合には、通常光重合開始剤が併用される。光重合開始剤は、特に限定されない。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001-139663号公報等に記載)、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、オニウム塩類、ボレート塩、活性ハロゲン化合物、α-アシルオキシムエステル等が挙げられる。
これらバインダー樹脂又はUV硬化性樹脂は、塗装される基材への塗料の密着性や使用される環境等によって適宜選択され得る。
【0025】
溶剤としては、特に限定されないが、バインダー樹脂又はUV硬化性樹脂を溶解又は分散できる溶剤を使用することが好ましい。例えば、油系塗料であれば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。水系塗料であれば、水、アルコール類等が使用できる。これら溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。コーティング材料中の溶剤含有量は、組成物全量に対し、通常20~60重量%程度である。
【0026】
組成物には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等が含まれていてもよい。
組成物を使用した塗膜の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法、ハケ塗り法等の方法、及び薄層としてフィルム等基材にコーティングするにはコーティングリバースロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、スプレーコート法が挙げられる。組成物は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;水;アルコール系溶剤等が挙げられる。これら希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
基材等の任意の塗工面に塗工して塗工膜を作製し、この塗工膜を乾燥させた後、必要に応じて塗工膜を硬化させることによって、塗膜を形成できる。なお、塗料組成物を使用した塗膜は各種基材にコーティングして使用され、金属、木材、ガラス、プラスチックス等特に限定されない。また、ポリエチレンテレフタラート(以下、PETと略す)、ポリエチレンカーボネート(以下、PCと略す)、アクリル等の透明基材にコーティングして用いることもできる。
(2)化粧料
化粧料は、顔料含有中空粒子を1~40重量%の範囲で含んでいることが好ましい。
化粧料としては、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料等の洗浄用化粧品、化粧水、クリーム、乳液、パック類、おしろい類、ファンデーション、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品、マニキュア化粧品、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、歯磨き、浴用剤、制汗剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ボディーパウダー、ベビーパウダー等のボディー用化粧料、ひげ剃り用クリーム、プレシェーブローション、アフターシェーブローション、ボディローション等のローション等が挙げられる。
【0027】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に一般に用いられている成分を目的に応じて配合できる。そのような成分として、例えば、水、低級アルコール、油脂及びロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、ステロール、脂肪酸エステル、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、色材原料、香料、防腐・殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、特殊配合成分が挙げられる。
油脂及びロウ類としてはアボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、ゴマ脂、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ひまし油、ブドウ油、マカダミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油、シリコーン油、オレンジラフィー油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
炭化水素としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸が挙げられる。
【0028】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルデカノール、イソステアリルアルコール、ホホバアルコール、デシルテトラデカノール等が挙げられる。
ステロールとしては、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトコレステロール等が挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキサデシル、イソオクタン酸セチル、パルミチン酸デシル、トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリルやイソステアリン酸コレステリル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル等の環状アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0029】
金属石鹸としては、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグリセリン、キシリット、マルチトール等が挙げられる。
界面活性剤としては、高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル、N-アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤、脂肪酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化エチレン縮合物等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0030】
高分子化合物としては、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子、シリカ粒子等の樹脂粒子等の合成高分子化合物が挙げられる。
【0031】
色材原料としては、酸化鉄、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等の無機顔料、アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、キサンテン系、キノリン系、アントラキノリン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、フタロシアニン系、ピレン系等のタール色素が挙げられる。
【0032】
ここで、上記高分子化合物や色材原料等の粉体原料については、予め表面処理が施されていてもよい。表面処理方法としては従来公知の表面処理技術が利用できる。例えば、炭化水素油、エステル油、ラノリン等による油剤処理、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキル基を有する重合体等によるフッ素化合物処理、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート等によるチタンカップリング剤処理、金属石鹸処理、アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理、水添卵黄レシチン等によるレシチン処理、コラーゲン処理、ポリエチレン処理、保湿性処理、無機化合物処理、メカノケミカル処理等の処理方法が挙げられる。
【0033】
香料としては、ラベンダー油、ペパーミント油、ライム油等の天然香料、エチルフェニルアセテート、ゲラニオール、p-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート等の合成香料が挙げられる。防腐・殺菌剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄、微粒子酸化ジルコニウム等の無機系吸収剤、安息香酸系、パラアミノ安息香酸系、アントラニリック酸系、サルチル酸系、桂皮酸系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系等の有機系吸収剤が挙げられる。
【0034】
特殊配合成分としては、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等のホルモン類、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の皮膚収斂剤、カンタリスチンキ、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンニクエキス、ヒノキチオール、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド、ビタミンE、エストロゲン、感光素等の発毛促進剤、リン酸-L-アスコルビン酸マグネシウム、コウジ酸等の美白剤等が挙げられる。
【0035】
(3)光拡散フィルム
光拡散フィルムは、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、トリアセチルセルロース(TAC)等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材の表面に前記の光拡散性組成物による光拡散層を形成したものである。用途によって異なるが、被膜が単独であるいは基材上に保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて形成されている。なお、組み合わせて用いる場合、光拡散層が必ずしも最外表面に形成されている必要はない。
【実施例
【0036】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。まず、実施例中の測定方法について説明する。
(体積平均粒子径)
粒子の体積平均粒子径は、コールターMultisizerTM3(ベックマン・コールター社製測定装置)により測定した。測定は、ベックマン・コールター社発行のMultisizerTM3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施した。
なお、測定に用いるアパチャーの選択は、測定する粒子の想定の体積平均粒子径が1μm以上10μm以下の場合は50μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する粒子の想定の体積平均粒子径が10μmより大きく30μm以下の場合は100μmのサイズを有するアパチャーを選択し、粒子の想定の体積平均粒子径が30μmより大きく90μm以下の場合は280μmのサイズを有するアパチャーを選択し、粒子の想定の体積平均粒子径が90μmより大きく150μm以下の場合は400μmのサイズを有するアパチャーを選択する等、適宜行った。測定後の体積平均粒子径が想定の体積平均粒子径と異なった場合は、適正なサイズを有するアパチャーに変更して、再度測定を行った。
【0037】
また、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-800、Gain(ゲイン)は4と設定し、100μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-1600、Gain(ゲイン)は2と設定し、280μm及び400μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-3200、Gain(ゲイン)は1と設定した。
測定用試料としては、粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10ml中にタッチミキサー(ヤマト科学社製、「TOUCHMIXER MT-31」)及び超音波洗浄器(ヴェルヴォクリーア社製、「ULTRASONICCLEANER VS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用した。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く撹拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了した。粒子の体積平均粒子径Vは、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均とした。
【0038】
(断面観察)
洗浄工程後、100℃で乾燥した粒子を光硬化性樹脂D-800(日本電子社)と混合し、紫外光を照射することで硬化物を得た。その後、硬化物をニッパーで裁断し、断面部分をカッターを用いて平滑に加工し、日本電子社製「オートファインコータJFC-1300」スパッタ装置を用いて試料をコーティングした。次いで、試料を日立ハイテクノロジーズ社製「SU1510」走査電子顕微鏡の二次電子検出器を用いて、撮影した。
【0039】
(複数の突起の平均幅)
上記断面観察時において、3000~5000倍に拡大して撮影した画像に日立ハイテクノロジーズ社製「SU1510」走査電子顕微鏡に付属している測長機能を用いて、シェルから生じている突起の測長を行った。測長は任意の突起30個に対し行い、その算術平均値を突起の平均幅Wとした。
【0040】
(粒子の光の反射率)
測定装置として島津製作所社製の紫外可視近赤外分光光度計(UV-3600Plus)を使用し、洗浄工程後、100℃で乾燥した粒子の紫外光から近赤外光(波長300~2500nm)の反射特性を反射率(%)として測定した。なお、測定は、各粒子を粉末試料ホルダ(積分球用)に充填して行った。加えて、60mmΦ積分球を用い、硫酸バリウムを標準白板に使用し測定した、硫酸バリウム標準白板の反射率の値を反射率100%とした。また、紫外可視近赤外分光光度計(UV-3600Plus)に付随するソフトウェアにおいて、「S/R切替」機能は「標準」に設定して、拡散反射測定を行った。
【0041】
(実施例1)
ビニル系単官能単量体としてメチルメタクリレート(MMA)90g、ビニル系架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)110g、非反応性溶剤としてのシクロヘキサン150g、及び酢酸エチル50g、重合開始剤としての2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2g(富士フィルム和光純薬工業社製;製品名V-65)、分散助剤としてのラウリルリン酸0.16g、黒色顔料としてクロモファインブラックA1103(大日精化工業社製)20gを混合・溶解して、混合物(油相)を調整した。また、水性媒体としてのイオン交換水1200gと、懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム24gとを混合し、水相を調整した。
この水相中に上記油相を加え、ポリトロンホモジナイザーPT10-35(セントラル科学貿易社製)を用いて5500rpmにて5分間乳化・分散処理を行った。得られた乳化液を2Lの攪拌翼付圧力容器に投入し、攪拌翼を250rpmで攪拌しながら50℃で4時間の加熱を行うことで、重合を進行させた。その後、反応系を室温まで冷却し、懸濁安定剤であるピロリン酸マグネシウムを塩酸によって分解した。ろ過による脱水で固形分を分離し、水洗を繰り返すことで精製を行った後、60℃にて乾燥することで顔料含有中空粒子を得た。
得られた顔料含有中空粒子の断面電子顕微鏡(SEM)写真(3000倍)を図1に示す。内部多孔構造を有することが確認できた。体積平均粒子径は10.0μmであった。得られた顔料含有中空粒子の可視光~近赤外線の光反射性能を評価した結果、R500/R1500の値は0.132であった。
【0042】
(実施例2)
黒色顔料としてクロモファインブラックA1103を40gとしたこと以外は、実施例1と同様にして顔料含有中空粒子を得た。得られた顔料含有中空粒子の断面SEM写真(3000倍)を図1に示す。図1から、内部多孔構造を有することが確認できた。体積平均粒子径は10.1μmであった。得られた顔料含有中空粒子の可視光~近赤外線の光反射性能を評価した結果、R500/R1500の値は0.048であった。
【0043】
(実施例3)
単官能単量体としてのMMA100g、架橋性単量体としてのEGDMA100g、テトラオルソシリケート(TEOS)170g、非反応性溶剤としての酢酸エチル30g、重合開始剤としての2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.0g(富士フィルム和光純薬工業社製;製品名V-65)、熱酸発生剤として(1R,2S,5R)-5-メチル-2-(プロパン-2-イル)シクロヘキシル4-メチルベンゼンスルホネート(富士フィルム和光純薬工業社製;製品名WPAG-699)1.0g、黒色顔料としてクロモファインブラックA1103を12g混合して、重合性組成物を調整した。一方、水相としてイオン交換水1200gに、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム26g、ラウリルリン酸0.16gを添加した。
ポリトロンホモジナイザーPT10-35を用いて5500rpmにて5分間乳化・分散処理を行った。得られた乳化液を2Lの攪拌翼付圧力容器に投入し、攪拌翼を250rpmで攪拌しながら50℃で4時間の加熱を行うことで、重合を進行させた。攪拌を維持したまま反応温度を105℃まで昇温し、2時間加熱することでTEOSのゲル化反応を進行させた。その後、反応系を室温まで冷却することで粒子を含む乳化液を得た。
得られた乳化液に塩酸を加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解させた後、吸引ろ過を行うことで乳化液から粒子を取り出した。水洗を繰り返し、精製を行った後、60℃の真空オーブンで乾燥を行うことで顔料含有中空粒子を得た。
得られた顔料含有中空粒子の断面SEM写真(5000倍)を図1に示す。図1から、内部多孔構造を有することが確認できた。体積平均粒子径は11.7μmであった。得られた顔料含有中空粒子の可視光~近赤外線の光反射性能を評価した結果、R500/R1500の値は0.129であった。
【0044】
(実施例4)
黒色顔料としてクロモファインブラックA1103を28gとしたこと以外は、実施例3と同様にして顔料含有中空粒子を得た。得られた顔料含有中空粒子の断面SEM写真(5000倍)を図1に示す。得られた顔料含有中空粒子の断面写真を図1に示す。内部多孔構造を有することが確認できた。体積平均粒子径は12.1μmであった。得られた粒子の可視光~近赤外線の光反射性能を評価した結果、R500/R1500の値は0.062であった。
【0045】
(実施例5)
黒色顔料をBlack3601(旭日産業社製)40gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして顔料含有中空粒子を得た。得られた顔料含有中空粒子の断面SEM写真(3000倍)を図2に示す。図2から、内部多孔構造を有することが確認できた。体積平均粒子径は14.2μmであった。図4から、得られた顔料含有中空粒子の可視光~近赤外線の光反射性能を評価した結果、R500/R1500の値は0.191であった。
【0046】
(比較例1)
MMA25g、EGDMA25g、TEOS40g、トルエン10g、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5g、潜在性pH調整剤としての(1R,2S,5R)-5-メチル-2-(プロパン-2-イル)シクロヘキシル4-メチルベンゼンスルホネート1gを混合・溶解して、混合物を調製した。得られた混合物を1重量%の濃度に調製したポリビニルアルコール(PVA)(日本合成化学社製;製品名ゴーセノールGH-17、ポリビニルアルコール3g)水溶液300ml(300g)に混合した。得られた混合液を1Lビーカーに投入し、ホモミキサー(プライミクス社製;製品名 ホモミキサーMK-II2.5型)を用いて、回転数4000rpmにて3分間乳化・分散処理を行った。得られた乳化液を500mlの撹拌翼付き圧力容器に投入し、撹拌翼を200rpmにて撹拌しながら、50℃の温度にて8時間、110℃で2時間撹拌することで、粒子を得た。得られた粒子を、遠心分離及び上澄みの分離に付すことで乳化液から取り出し、水洗を繰り返し、精製を行った後、60℃にて真空オーブンで乾燥させた。
得られた粒子の断面SEM写真(3000倍)を図2に示す。図2から、内部構造が非多孔質の粒子であることが確認できた。体積平均粒子径は11.7μmであった。得られた粒子の可視光~近赤外線の光反射性能を評価した結果、R500/R1500の値は1.018であった。
【0047】
(比較例2)
黒色顔料としてクロモファインブラックA1103を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして中空粒子を得た。体積平均粒子径は9.8μmであった。
得られた中空粒子4.55gとクロモファインブラックA1103を0.45g脱泡攪拌機(KURABO社製:マゼルスターKK-250)にて混合することで中空粒子-黒色顔料混合粉体を得た。なお、混合粉体中の中空粒子と黒色顔料の混合比率は、実施例1で得た中空粒子を構成する樹脂成分と黒色顔料の重量比率と同一とした。得られた混合粉体の可視光~近赤外線の光反射性能を評価した結果、R500/R1500の値は0.125であった。
(比較例3)
比較例2で得た中空粒子4.17gとクロモファインブラックA1103を0.83g脱泡攪拌機(マゼルスター)にて混合することで中空粒子-黒色顔料混合粉体を得た。なお、混合粉体中の中空粒子と黒色顔料の混合比率は、実施例2で得た顔料含有中空粒子を構成する樹脂成分と黒色顔料の重量比率と同一とした。得られた混合粉体の可視光~近赤外線の光反射性能を評価した結果、R500での反射率は7.50%、R1500では87.83%、R500/R1500の値は0.085であった。
(比較例4)
黒色顔料として近赤外光の吸収性の高いアセチレンカーボンブラック(50%compressed)(Strem Chemicals,Inc.)5gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして中空粒子を得た。体積平均粒子径は12.2μmであった。得られた粒子の可視光~近赤外線の光反射性能を評価した結果、R500/R1500の値は1.385であった。
(比較例5)
クロモファインブラックA1103のSEM写真(4000倍)を図2に示す。図2から、内部構造は確認できなかった。可視光~近赤外線の光反射性能を評価した結果、R500での反射率は1.47%、R1500での反射率は84.27%、R500/R1500の値は0.017であった。
上記実施例及び比較例の粒子の製造用原料及びその使用量(g)を表1に記載する。図3に、上記実施例及び比較例の粒子の光の波長に対する反射率のグラフを図3に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
図3及び表1から、実施例から得られた顔料含有中空粒子は、比較例1の粒子に比べて、紫外・可視光域(~800nm)の反射率が低く、濃彩色から黒色の塗料への添加に適していることが分かった。また、実施例から得られた顔料含有中空粒子は、近赤外光の吸収性の高い黒色顔料を使用した比較例4の粒子に比べて近赤外光領域(800~2500nm、特に800~1500nm)の反射率が高く、より遮熱性能に優れていることが分かった。
【0050】
(塗料化した試料での紫外可視近赤外光の反射特性評価)
各粒子を塗料化した際の紫外光、可視光及び近赤外光に対する反射率を以下の手順で評価した。
市販の水性塗料(アサヒペン社 商品名;水性多用途カラー 透明クリア)10gに対し、各粒子を2.5g加え、脱泡攪拌機(マゼルスターKK-250)にて混合することで分散し、評価用塗料を作製した。
評価用塗料を隠蔽率試験紙の黒側にウエット厚250μmに設定したアプリケーターにて塗工した後、室温下で十分に乾燥させ、光反射性評価用サンプル板を得た。
サンプル板の紫外光、可視光、及び近赤外光に対する反射率を以下の点順で評価した。
【0051】
反射率の測定装置として島津製作所社製の紫外可視近赤外分光光度計(Solid Spec3700)を使用し、サンプル板における塗工面の紫外光から近赤外光(波長300~2500nm)の反射特性を反射率(%)として測定した。なお、測定は60mmΦ積分球を用い、硫酸バリウムを標準白板に使用して行った。得られた結果を図4に示す。
実施例から得られた顔料含有中空粒子は、R500/R1500の値が0.5を上回った比較例1の粒子に比べて、紫外・可視光域(~800nm)の反射率が低く、濃彩色から黒色の塗料への添加に適していることが分かった。
実施例から得られた顔料含有中空粒子は、粒子と顔料を単純に混合した比較例2、3の粒子に比べて、紫外・可視光域(~800nm)の反射率が低く、濃彩色から黒色の塗料への添加により適していると共に、近赤外域(800nm~)の反射率が高く、より遮熱性能に優れていることが分かった。
実施例から得られた顔料含有中空粒子は、内部多孔構造を有さない比較例5の粒子に比べて、近赤外域(800nm~)の反射率が高く、より遮熱性能に優れていることが分かった。
【0052】
(塗料組成物製造例1)
実施例1で得られた顔料含有中空粒子2重量部と、市販のアクリル系水性つやあり塗料(カンぺパピオ社製、商品名スーパーヒット)20重量部とを、撹拌脱泡装置を用いて、3分間混合し、1分間脱泡することによって、塗料組成物を得た。
得られた塗料組成物を、クリアランス75μmのブレードをセットした塗工装置を用いてABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)板上に塗布した後、乾燥することによって塗膜を得た。
【0053】
(光拡散性組成物及び光拡散フィルム製造例1)
実施例1で得られた顔料含有中空粒子7.5重量部と、アクリル樹脂(DIC社製、製品名アクリディックA811)30重量部、架橋剤(DIC社製、製品名VM-D)10重量部、溶剤として酢酸ブチル50重量部とを撹拌脱泡装置を用いて、3分間混合し、1分間脱泡することによって、光拡散性組成物を得た。
得られた光拡散性組成物を、クリアランス50μmのブレードをセットした塗工装置を用いて、厚さ125μmのPETフィルム上に塗布した後、70℃で10分乾燥することによって光拡散フィルムを得た。
【0054】
(化粧料の処方例)
(配合例1)
パウダーファンデーションの製造
・配合量
実施例1で得られた顔料含有中空粒子 10.0重量部
赤色酸化鉄 3.0重量部
黄色酸化鉄 2.5重量部
黒色酸化鉄 0.5重量部
酸化チタン 10.0重量部
マイカ 20.0重量部
タルク 44.0重量部
流動パラフィン 5.0重量部
ミリスチン酸オクチルドデシル 2.5重量部
ワセリン 2.5重量部
防腐剤 適量
香料 適量
・製造法
顔料含有中空粒子、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化チタン、マイカ、タルクをヘンシェルミキサーで混合し、これに流動パラフィン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ワセリン及び防腐剤を混合溶解したものを加えて均一に混合する。これに、香料を加えて混合した後、粉砕して篩いに通す。これを、金皿に圧縮成形してパウダーファンデーションを得る。
【0055】
(配合例2)
化粧乳液の製造
・配合量
実施例1で得られた顔料含有中空粒子 10.0重量部
ステアリン酸 2.5重量部
セチルアルコール 1.5重量部
ワセリン 5.0重量部
流動パラフィン 10.0重量部
ポリエチレン(10モル)モノオレイン酸エステル 2.0重量部
ポリエチレングリコール1500 3.0重量部
トリエタノールアミン 1.0重量部
精製水 64.5重量部
香料 0.5重量部
防腐剤 適量・製造法
まず、ステアリン酸、セチルアルコール、ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレンモノオレイン酸エステルを加熱溶解して、ここへ顔料含有中空粒子を添加・混合し、70℃に保温する(油相)。また、精製水にポリエチレングリコール、トリエタノールアミンを加え、加熱溶解し、70℃に保温する(水相)。水相に油相を加え、予備乳化を行い、その後ホモジナイザーで均一に乳化し、乳化後かき混ぜながら30℃まで冷却させることで化粧乳液を得る。
図1
図2
図3
図4