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  • 特許-模様面の形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】模様面の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/32 20060101AFI20231024BHJP
   B05D 1/38 20060101ALI20231024BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20231024BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20231024BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20231024BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B05D1/32 Z
B05D1/38
B05D1/36 Z
B05D5/06 104K
B05D3/12 E
E04F13/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019162767
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2020040062
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2018167897
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三森 雅士
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-246370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
E04F13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地模様を有する模様面の形成方法であって、
(1)基材に対し、下塗材を塗装して下塗材層を形成する第1工程、
(2)可剥性目地材を、上記下塗材層の表面に設置する第2工程、
(3)上記第2工程で得られた面に対し、中塗材を塗装して中塗材層を形成する第3工程、
(4)上記中塗材層の表面に上塗材を塗装して上塗材層を形成する第4工程、
(5)上記目地材を除去する第5工程、
を行うものであり、
上記下塗材層と上記中塗材層との色差が10未満であり、
上記中塗材は、樹脂成分、着色顔料、及び平均粒子径1μm以上、屈折率1.3~1.7の粉粒体を含み、
上記中塗材における上記粉粒体の重量比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、10~300重量部であることを特徴とする模様面の形成方法。
【請求項2】
上記下塗材は、樹脂成分、着色顔料、及び平均粒子径1μm以上、屈折率1.3~1.7の粉粒体を含むものであることを特徴とする請求項1記載の模様面の形成方法。
【請求項3】
上記下塗材層と上記上塗材層との色差が10以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の模様面の形成方法。
【請求項4】
上記中塗材をローラー塗装して中塗材層を形成することを特徴とする請求項1に記載の模様面の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模様面の形成方法に関するものである。本発明は、主に建築物や土木構造物等に対して適用することができる。
【背景技術】
【0002】
建築物や土木構造物の壁面等の塗装仕上げにおいて、タイル調模様等の目地模様を設ける手法が行われている。このような手法によれば、デザイン性の高い模様面を形成することができる。
【0003】
目地模様を形成する方法としては、棒状または板状の目地材を下地に貼り、仕上塗装を行った後に目地材を除去する方法があり、例えば、特開平2-292450号公報、特開平10-266517号公報等に記載されている。これら特許文献に記載された方法によれば、目地部と模様部とのコントラスト、段差等によって、デザイン性に溢れる模様面が得られるものと期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-292450号公報
【文献】特開平10-266517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際のところ、上述の特許文献のような方法では、下地と目地材の隙間に塗装材料が入り込み、目地部と模様部との境界がぎざぎざした仕上りになる等、すっきりとせず、美観性の高い模様面を得ることができない場合がある。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、目地部と模様部との境界がすっきりとした仕上りとなり、美観性に優れた目地模様が形成できる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明者らは鋭意検討を行った結果、基材に下塗材を塗装して目地材を貼着した後、特定の条件を満たす中塗材、及び上塗材を順に塗装する方法に想到し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.目地模様を有する模様面の形成方法であって、
(1)基材に対し、下塗材を塗装して下塗材層を形成する第1工程、
(2)可剥性目地材を、上記下塗材層の表面に設置する第2工程、
(3)上記第2工程で得られた面に対し、中塗材を塗装して中塗材層を形成する第3工程、
(4)上記中塗材層の表面に上塗材を塗装して上塗材層を形成する第4工程、
(5)上記目地材を除去する第5工程、
を行うものであり、
上記下塗材層と上記中塗材層との色差が10未満であり、
上記中塗材は、樹脂成分、着色顔料、及び平均粒子径1μm以上、屈折率1.3~1.7の粉粒体を含み、
上記中塗材における上記粉粒体の重量比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、10~300重量部であることを特徴とする模様面の形成方法。
2.上記下塗材は、樹脂成分、着色顔料、及び平均粒子径1μm以上、屈折率1.3~1.7の粉粒体を含むものであることを特徴とする1.記載の模様面の形成方法。
3.上記下塗材層と上記上塗材層との色差が10以上であることを特徴とする1.または2.に記載の模様面の形成方法。
4.上記中塗材をローラー塗装して中塗材層を形成することを特徴とする1.に記載の模様面の形成方法。


【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、目地部と模様部との境界がすっきりとした仕上りとなり、美観性に優れた目地模様を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一例を示す概略図である。
図2】本発明の別の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0011】
a:基材
b:下塗材層
c:可剥性目地材
d:粘着層
e:中塗材層
f,f1,f2:上塗材層
g:目地部
h:模様部
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
本発明は、目地模様を有する模様面の形成方法である。図1は、本発明の一例を示す概略図である。なお、本発明において、目地部とは、模様面のうち線状の凹部を形成する部分であり、この目地部では下塗材層bが視認される。一方、模様部とは、模様面のうち凸部を形成する部分であり、この模様部では上塗材層fが視認される(図1(5))。
【0014】
本発明は、例えば、建築物の内外壁面、天井、床等、あるいは土木構造物の表面等に適用することができる。このような部位を構成する基材aとしては、例えば、コンクリート、モルタル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、ALC板、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、合板、プラスチック板、金属板、木工板、陶磁器タイル等の各種基材が挙げられる。これら基材は、何らかの表面処理(例えば、洗浄剤塗布、高圧洗浄等による洗浄処理;サンダー、皮すき、ケレン棒等を用いた脆弱部除去処理;フィラー、サーフェーサ、シーラー等の塗装、メッシュ貼着等による下地処理等)が施されたものや、予め着色塗料等で着色されたものでもよく、既に塗膜が形成されたものや、壁紙が貼り付けられたもの、断熱層が積層されたもの等であってもよい。
【0015】
上述の基材aに対し、まず第1工程として下塗材を塗装して下塗材層bを形成する(図1(1))。この下塗材層bは、最終的な模様面において目地部gとして現れるものである。したがって、下塗材層bの色調は、所望の目地色に合わせて設定すればよい。
【0016】
下塗材としては、例えば、樹脂成分、及び着色顔料を含むものが使用できる。このような下塗材では、着色顔料の種類、混合比率等を適宜調整することにより、下塗材層bを所望の色調に設定することができる。
【0017】
上記樹脂成分は、結合材として作用するものである。樹脂成分の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。樹脂成分の形態としては、水分散性樹脂(樹脂エマルション)及び/または水溶性樹脂が好ましい。このうち水分散性樹脂は、1段ないし多段(2段、または3段以上)の乳化重合法等によって製造することができる。
【0018】
樹脂成分のガラス転移温度(以下「Tg」ともいう)は、好ましくは-30~50℃、より好ましくは-10~40℃である。Tgがこのような範囲内であれば、耐汚染性、耐割れ性、目地材の接着性と除去性等において良好な性能を確保することが可能となる。ここに言うTgは、樹脂成分を構成するモノマーの種類とその構成比率から、Foxの計算式によって求められる値である。なお、本発明において、「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0019】
このような樹脂成分は、塗膜形成後に架橋反応を生じる性質(架橋反応性)を有するものであってもよい。樹脂成分が架橋反応性を有する場合は、下塗材層bの耐水性、耐候性、密着性等を高めることができ、目地材除去性等の点でも好適である。このような樹脂成分は、それ自体で架橋反応を生じるもの、あるいは別途混合する架橋剤によって架橋反応を生じるもののいずれであってもよい。このような架橋反応性は、例えば、カルボキシル基と金属イオン、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルド基とセミカルバジド基、ケト基とセミカルバジド基、アルコキシル基どうし等の反応性官能基を組み合わせることによって付与することができる。このような反応性官能基の組み合わせは、1種または2種以上で使用できる。
【0020】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、カーボンブラック、酸化第二鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、酸化鉄、群青、コバルトグリーン、鉄-クロム複合酸化物、マンガン-ビスマス複合酸化物、マンガン-イットリウム複合酸化物、マンガン-鉄-コバルト複合酸化物等の無機着色顔料;アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機着色顔料;アルミニウム顔料、パール顔料等の光輝性顔料等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0021】
着色顔料の重量比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは3~300重量部、より好ましくは5~250重量部である。
【0022】
下塗材としては、樹脂成分、着色顔料に加え、さらに平均粒子径1μm以上、屈折率1.3~1.7の粉粒体(以下単に「粉粒体」ともいう)を含むものがより好適である。このような下塗材では、着色顔料によって色調の設定が容易であると共に、粉粒体の作用により、目地材cの接着性と除去性、目地部gの仕上り性等において優れた性能を確保することが可能となる。
【0023】
粉粒体の平均粒子径は、1μm以上であり、好ましくは2~100μm、より好ましくは3~70μm、さらに好ましくは4~50μmである。平均粒子径とは、遠心沈降式粒度分布測定装置によって測定される50%粒子径を意味するものである。また、粉粒体の屈折率は、好ましくは1.3~1.7である。屈折率は、アッベ屈折計を用いて測定することができる。本発明では、このような条件を満たす粉粒体を使用することにより、着色顔料による色調を保持しつつ、目地材cの接着性と除去性、目地部gの仕上り性等を高めることができる。とりわけ、平均粒子径の下限が上記値以上であることにより、目地材cの除去性、目地部gの仕上り性等において有利な効果を得ることができる。その上限が上記値以下である場合は、目地材cの接着性、目地部gの仕上り性等において有利な効果を得ることができる。
【0024】
粉粒体としては、例えば、重質炭酸カルシウム、寒水石、軽微性炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、珪砂、珪石粉、石英粉、樹脂粉、樹脂ビーズ等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0025】
粉粒体の重量比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは50~600重量部、より好ましくは100~500重量部、さらに好ましくは150~450重量部である。粉粒体の重量比率の下限が上記値以上であることにより、目地材cの除去性、目地部gの仕上り性等において有利な効果を得ることができ、その上限が上記値以下であることにより、目地材cの接着性、目地部gの仕上り性、下塗材層bの耐候性、耐割れ性、密着性等において有利な効果を得ることができる。
【0026】
下塗材は、上記成分の他、公知の添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、例えば、骨材、繊維類、分散剤、乳化剤、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、カップリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、乾燥調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、消泡剤、吸着剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。本発明の効果を著しく損わない限り、上記以外の粉粒体(例えば、平均粒子径1μm未満の粉粒体等)を含むこともできる。下塗材は、上記成分を常法によって適宜混合することにより製造することができる。
【0027】
下塗材層bは、このような下塗材を基材aに塗装することによって形成される。下塗材の塗装方法としては、特に限定されず、例えば、吹付け塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り等の方法を採用することができる。本発明では、このうちローラー塗装が好適であり、ローラーとしては、多孔質ローラーを用いることが望ましい。このようなローラーを使用した場合、下塗材層bの表面に適度な起伏が形成され、目地材cの除去性、目地部gの仕上り性等をより高めることができる。
【0028】
多孔質ローラーは、例えば、筒状の芯材の外表面に多孔質層が備わったものであり、筒状の芯材は、軸を備えたハンドルを装着できるように空洞となっており、該空洞にハンドル軸を装着して使用することができるものである。
【0029】
多孔質ローラーとしては、例えば、スポンジ状の多孔質層を有するローラーが好ましく、また多孔質層としては、連通孔を有するものが好ましい。多孔質層の材質としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の樹脂等が挙げられ、これらをスポンジ状に多孔化したものが望ましい。
【0030】
このような多孔質層の孔径は、好ましくは0.3~10mm、より好ましくは0.5~5mm、さらに好ましくは0.8~3mmである。なお、各孔の孔径は、各孔の重心からの最大距離×2で算出すればよく、多孔質層の孔径は、10か所の孔の平均値を算出すればよい。また、多孔質層の厚みは、好ましくは1~25mm、より好ましくは2~20mmである。多孔質ローラーの幅(長さ)は、好ましくは50~300mmである。多孔質ローラーの直径(多孔質層の外周を円周率で除した値)は、好ましくは15~100mmである。
【0031】
下塗材の塗装時には水等の希釈剤を混合して粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、好ましくは0~10重量%である。
【0032】
下塗材の塗付け量は、基材aが下塗材層bによって隠蔽される程度であればよいが、好ましくは0.1~1kg/m、より好ましくは0.2~0.6kg/mである。下塗材の乾燥は、好ましくは常温(0~40℃)で行えばよい。乾燥時間は、好ましくは3時間以上、より好ましくは6時間以上である。本発明では、下塗材層bの乾燥後に次工程を行うことが望ましい。
【0033】
第2工程では、可剥性目地材(以下、「可剥性目地材」を単に「目地材」ともいう)cを、下塗材層bの表面に設置する(図1(2))。ここで使用する目地材cとしては、下塗材層bの表面に一時的に設置できるものであればよく、例えば、少なくとも下塗材層bに接する面が粘着性を有するもの等が使用できる。図1には、その一例として、粘着層dを有する目地材を示している。このような目地材は、上記下塗材層bが乾燥した後、粘着層dが下塗材層bに接するように貼着することによって設置することができる。
【0034】
目地材cを構成する材料としては、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、SBR等のゴム;ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート等の樹脂;発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン等の樹脂発泡体等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0035】
目地材cを貼り付ける位置、間隔等は、所望の目地模様に応じて決定すればよい。例えば、均等間隔に貼り付けることもできるし、ランダムに貼り付けることもできる。模様としては、例えば、タイル調模様、レンガ調模様、幾何学的模様、水玉模様、縞模様、格子模様、渦巻き模様、紋章柄の他、動植物、器物、文字等をデザイン化した図形等が可能である。これらの模様を表出するためには、直線状の目地材を複数組み合わせて用いてもよいし、平面状の型紙を所望の模様形状に応じて打ち抜いたものを目地材として用いてもよい。目地材cを貼着する前には、所望の目地模様を得るために、適宜墨出し等を行うことができる。目地材cを貼着した後には、ゴムローラー、プラスチックローラー、金属ローラー等を用いて、目地材cの表面を押さえ、目地材cを下塗材層bに圧着することもできる。
【0036】
目地材cの幅(目地部gに対応する部分の幅)は、好ましくは1~20mmである。目地材cの高さ(厚み)は、好ましくは0.1~10mm、より好ましくは0.2~3mmである。
【0037】
目地材cは、裏面に粘着層dを有する限り、その他の層が積層されたものであってもよい。例えば、裏面側に粘着層、表面側に剥離紙を設けたもの等を用いることもできる。粘着層は、粉粒体等を含むものであってもよい。
【0038】
第3工程では、第2工程で得られた面に対し、中塗材を塗装して中塗材層eを形成する(図1(3))。この第3工程では、少なくとも、目地材cと中塗材層eとの境界部(目地材cの側面と、中塗材層eの表面とが接する部分)に中塗材を塗装すればよく、この場合、中塗材層eは不連続塗膜であってもよい。但し、作業効率向上化等の点では、目地材cが貼着された下塗材層bの全面、すなわち、目地材cが貼着された部分を含む全面に対して中塗材を塗装することが望ましい。
【0039】
中塗材としては、下塗材層bと中塗材層eとの色差が10未満(好ましくは8以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは0~3)となるものを使用する。本発明では、このような条件を満たす中塗材を塗装することにより、目地部gと模様部hとの境界がすっきりとした仕上りとなり、美観性に優れた目地模様が形成できる。このような効果は、下塗材層bと目地材cの隙間が、下塗材層bとほぼ同色の中塗材によって封鎖され、後の工程で用いる上塗材の当該隙間への入り込みを抑制することによって奏されるものと考えられる。本発明では、目地材の除去性等を高めるために下塗材の組成を調整した結果、下塗材層bと目地材cとの接触面に隙間が生じやすくなった場合であっても、美観性に優れた目地模様が形成できる。
【0040】
本発明における色差(△E)は、乾燥後の各層の色調を、色彩色差計にて測定した値(任意の10箇所の平均値)に基づき算出される値である。具体的に、下塗材層bと中塗材層eとの色差(△Eeb)は、それぞれの層のL値、a値、b値より下記式1にて算出することができる。
<式1>△Eeb={(L -L +(a -a +(b -b 0.5
(式中、L 、a 、b はそれぞれ中塗材層eのL、a、b。L 、a 、b はそれぞれ下塗材層bのL、a、b
【0041】
中塗材としては、例えば、樹脂成分、及び着色顔料を含むものが使用できる。このような中塗材では、着色顔料の種類、混合比率等を適宜調整することにより、中塗材層eを所望の色調に設定することができる。
【0042】
中塗材における樹脂成分、着色顔料としては、下塗材にて説明したものと同様のものが使用できる。
【0043】
中塗材における樹脂成分は、そのTgが好ましくは-30~50℃、より好ましくは-10~40℃である。また、樹脂成分は架橋反応性を有するものであってもよい。このような場合、目地材除去時において、目地部gの幅で切り取るように目地材cを除去することができるため、目地材cと共に模様部hが剥れてしまう不具合が抑制され、目地材cを効率よく除去することが可能となる。
【0044】
中塗材における着色顔料の重量比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは3~300重量部、より好ましくは5~250重量部である。
【0045】
中塗材としては、樹脂成分、着色顔料に加え、さらに下塗材と同様の粉粒体を含むものも使用できる。このような中塗材では、着色顔料によって色調の設定が容易であると共に、目地材cの除去性、目地部gの仕上り性等において優れた性能を確保することが可能となる。
【0046】
中塗材における粉粒体の重量比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは10~500重量部、より好ましくは30~400重量部、さらに好ましくは50~300重量部である。粉粒体の重量比率の下限が上記値以上であることにより、目地材除去時において、目地部gの幅で切り取るように目地材cを除去することができるため、目地材cと共に模様部hが剥れてしまう不具合が抑制され、目地材cを効率よく除去することができ、さらに目地材下部の隙間封鎖に供された中塗材が目立ちにくく、目地部gの仕上り性等において有利な効果を得ることができる。粉粒体の重量比率の上限が上記値以下であることにより、目地材下部において隙間を封鎖する機能が十分に発揮され、目地部gの仕上り性をいっそう高めることができる。
【0047】
中塗材における粉粒体の重量比率は、下塗材における粉粒体の重量比率よりも小であることが望ましい。具体的に、中塗材における粉粒体の重量比率は、下塗材における粉粒体の重量比率よりも30重量部以上小であることがより望ましく、50重量部以上小であることがさらに望ましく、80重量部以上小であることが特に望ましい。また、中塗材に含まれる全粉粒体の平均粒子径は、下塗材に含まれる全粉粒体の平均粒子径よりも小であることが望ましい。このような場合、上述の効果が得られやすくなる。
【0048】
中塗材は、上記成分の他、公知の添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、例えば、下塗材にて説明したものと同様のものが使用できる。本発明の効果を著しく損わない限り、上記以外の粉粒体(例えば、平均粒子径1μm未満の粉粒体等)を含むこともできる。中塗材は、上記成分を常法によって適宜混合することにより製造することができる。
【0049】
中塗材層eは、このような中塗材を、下塗材層bの表面に塗装することによって形成される。中塗材の塗装方法としては、特に限定されず、例えば、吹付け塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り等の方法を採用することができる。本発明では、このうちローラー塗装が好適であり、ローラーとしては、繊維質ローラーを用いることが望ましい。このような繊維質ローラーを使用した場合、目地材下部において隙間を封鎖する機能が十分に発揮されやすくなり、目地部gの仕上り性をより高めることができる。
【0050】
繊維質ローラーは、例えば、筒状の芯材の外表面に繊維質層が備わったものであり、筒状の芯材は、軸を備えたハンドルを装着できるように空洞となっており、該空洞にハンドル軸を装着して使用することができるものである。
【0051】
繊維質層の材質としては、特に限定されないが、例えば、豚毛、馬毛、山羊毛、羊毛、狸毛等の他、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維等が挙げられる。
【0052】
繊維質層の厚み(乾燥時の厚み)は、好ましくは2~30mmである。また、繊維質層を構成する繊維の長さは、好ましくは、3~40mmである。このような繊維を、編み込んだり、2点以上で固定化したりする等、何らかの方法で繊維の自由度を抑えることによって、上記厚みの繊維質層を得ることができる。
【0053】
繊維質ローラーの幅(長さ)は、好ましくは50~300mmである。繊維質ローラーの直径(繊維質層の外周を円周率で除した値)は、好ましくは15~100mmである。
【0054】
中塗材の塗装時には水等の希釈剤を混合して粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、好ましくは0~10重量%である。
【0055】
中塗材の塗付け量は、目地材下部における隙間封鎖作用が発揮される範囲内で設定すればよいが、好ましくは0.03~0.5kg/m、より好ましくは0.05~0.3kg/mである。中塗材の乾燥は、好ましくは常温(0~40℃)で行えばよい。乾燥時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上である。本発明では、中塗材層eの乾燥後に次工程を行うことが望ましい。
【0056】
第4工程では、中塗材層eの表面に上塗材を塗装して上塗材層fを形成する(図1(4))。この第4工程では、目地材cが貼着された部分を含む全面に対して上塗材を塗装することが望ましい。これにより作業効率を高めることができる。上塗材としては、例えば、単色ないし多色の色彩を呈する各種材料が使用できる。
【0057】
上塗材としては、下塗材層bと上塗材層fとの色差が10以上(より好ましくは12以上、さらに好ましくは15以上)となるものを使用することが望ましい。本発明では、このような条件を満たす上塗材を塗装した場合であっても、目地部gと模様部hとの境界がすっきりとした仕上りとなり、しかも目地部gと模様部hとのコントラストが明瞭となり、美観性に優れた目地模様が形成できる。
【0058】
下塗材層bと上塗材層fとの色差(△Efb)は、それぞれの層のL値、a値、b値(任意の10箇所の平均値)より下記式2にて算出することができる。
<式2>△E={(L -L +(a -a +(b -b 0.5
(式中、L 、a 、b はそれぞれ上塗材層fのL、a、b。L 、a 、b はそれぞれ下塗材層bのL、a、b
【0059】
上塗材としては、例えば、樹脂成分、及び着色顔料を含むものが使用できる。このような上塗材では、着色顔料の種類、混合比率等を適宜調整することにより、上塗材層fを所望の色調に設定することができる。
【0060】
上塗材における樹脂成分、着色顔料としては、下塗材にて説明したものと同様のものが使用できる。
【0061】
上塗材における着色顔料の重量比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは3~300重量部、より好ましくは5~250重量部である。
【0062】
上塗材は、上記成分の他、下塗材と同様の粉粒体を含むことができ、また公知の添加剤を含むこともできる。このような添加剤としては、例えば、下塗材にて説明したものと同様のものが使用できる。上塗材は、上記成分を常法によって適宜混合することにより製造することができる。
【0063】
上塗材層fは、このような上塗材を、中塗材層eの表面に塗装することによって形成される。上塗材の塗装方法としては、特に限定されず、例えば、吹付け塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り等の方法を採用することができる。
【0064】
上塗材の塗装時には水等の希釈剤を混合して粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、好ましくは0~20重量%である。
【0065】
上塗材の塗付け量は、所望の模様部が形成される範囲内で適宜設定すればよいが、好ましくは0.03~1kg/m、より好ましくは0.05~0.8kg/mである。上塗材の乾燥は、好ましくは常温(0~40℃)で行えばよい。乾燥時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上である。
【0066】
第5工程では、目地材cを除去する(図1(5))。目地材cを除去することにより、目地部gが形成され、目地部gと模様部hとの色調及び高低差を有する、美観性に優れた模様面が得られる。目地材cの除去は、上塗材塗装後であればよく、上塗材の乾燥前ないし乾燥後のいずれでもよい。上塗材乾燥後に目地材cを除去する場合には、適宜押え具等を使用して模様部hを押えながら、目地材cを除去することもできる。
【0067】
第5工程の後には、クリアコート材を塗装することも可能である。このようなクリアコート材の塗装は、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐久性、耐汚染性等の向上化の点で好適である。クリアコート材の塗装は、目地部g及び模様部hを含む全面に行うことが望ましい。クリアコート材としては、例えば、アクリル樹脂系クリアコート材、ウレタン樹脂系クリアコート材、アクリルシリコン樹脂系クリアコート材、シリカ系クリアコート材、フッ素樹脂系クリアコート材等が挙げられる。本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、着色タイプのクリアコート材を使用することも可能である。
【0068】
クリアコート材の塗装においては、公知の方法が採用でき、例えば、吹付け塗装、ローラー塗装、刷毛塗り等の各種方法が採用できる。クリアコート材の塗付け量は、好ましくは0.01~0.5kg/m、より好ましくは0.03~0.4kg/mである。クリアコート材の乾燥は、好ましくは常温(0~40℃)で行えばよい。乾燥時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上である。
【0069】
本発明では、第4工程において、2種以上の上塗材を塗装することができる。すなわち、2種以上の上塗材層を積層することができる。図2は、第4工程において、2種の上塗材を塗装して、2種の上塗材層を積層した例(上塗材層f1、上塗材層f2)を示す概略図である。なお、2種以上の上塗材を使用する場合、上塗材層の色調は、当該2種以上の上塗材によって形成された積層塗膜について測定すればよい。
【0070】
図2に示す方法において、第4工程以外の工程は、図1と同様であり、その詳細は上述の通りである。
【0071】
図2では、第4-1工程として、中塗材層eの表面に第1上塗材を塗装して、第1上塗材層f1を形成している(図2(4-1))。第1上塗材としては、図1と同様のものが使用でき、その詳細は上述の通りである。
【0072】
次いで、第4-2工程として、第1上塗材層f1の表面に第2上塗材を塗装して、第2上塗材層f2を形成している(図2(4-2))。本発明では、第1上塗材層f1の乾燥後に、第2上塗材を塗装することが望ましい。
【0073】
第2上塗材としては、美観性向上化等の点から、多色模様が形成できるものが好適である。このような第2上塗材としては、液状またはゲル状の色粒が水性媒体に分散してなるもの等が使用できる。第2上塗材としては、例えばJIS K5667:2003に規定される材料等が使用でき、第2上塗材を構成する色粒と水性媒体との組み合わせ(色粒/水性媒体)によって、水中油型(O/W型)、または水中水型(W/W型)に分類される。本発明では、この中でも上塗材が水中水型(W/W型)である場合に顕著な効果が得られる。色粒と水性媒体との重量比率(色粒:水性媒体)は、好ましくは1:99~80:20(より好ましくは10:90~75:25、さらに好ましくは30:70~70:30)である。
【0074】
第2上塗材における色粒は、樹脂と着色顔料、及び必要に応じ各種添加剤等を含む着色材が、水性媒体中に、液状またはゲル状の状態にて粒状に分散されたものである。着色材中の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、バイオガム、ガラクトマンナン誘導体、アルギン酸誘導体、セルロース誘導体等が挙げられる。このような樹脂が、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂(樹脂エマルション)の形態であることにより、着色材を水性媒体に分散させると水中水型(W/W型)の上塗材となる。
【0075】
着色材における着色顔料としては、例えば、上記下塗材における着色顔料と同様のものが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0076】
着色材を水性媒体中に粒状に分散させる方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、分散安定剤等を含む水性媒体に、着色材を分散させる方法等を採用することができる。分散安定剤は、着色材を粒状に安定化させる成分であり、樹脂や着色材の種類等に応じて選定することができる。分散安定剤の具体例としては、例えば、マグネシウム塩類、カルシウム塩類、バリウム塩類、アルミニウム塩類、ナトリウム塩類、カリウム塩類、ホウ酸塩類、リン酸塩類等が挙げられる。この他、分散安定剤として、例えば、水溶性高分子類、粘土類等を使用することもできる。水性媒体は、上述と同様の樹脂(水溶性樹脂、樹脂エマルション等)を含むこともできる。なお、水性媒体が樹脂を含む場合、その樹脂が目地材下部の隙間に滲入して目地部gの仕上り性等に影響するおそれがあるが、本発明では中塗材等の作用により、このような影響を抑制することができる。
【0077】
着色材、水性媒体においては、公知の添加剤を適宜使用することができる。このような添加剤としては、例えば、体質顔料、骨材、充填剤、艶消し剤、繊維類、ゲル形成剤、顔料分散剤、乳化剤、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、カップリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、乾燥調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、消泡剤、吸着剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。
【0078】
色粒の粒径や形状は、適宜設定することができる。具体的には、製造時における攪拌羽根の形状、攪拌槽に対する攪拌羽根の大きさや位置、攪拌羽根の回転速度、着色材の粘性、分散安定剤の添加方法や濃度、水性媒体の粘性等を適宜選択・調整すればよい。色粒の粒径は、好ましくは0.01~10mm(より好ましくは0.1~8mm)である。
【0079】
第2上塗材の塗装方法としては、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り等を採用することができる。このうち、ローラーとしては、例えば、多孔質ローラー等が使用できる。
【0080】
第2上塗材は、1回ないし複数回塗付することができる。第2上塗材の塗付け量は、1回当たり好ましくは0.2~1.5kg/m、より好ましくは0.3~1.2kg/mである。
【0081】
第2上塗材の塗付時には水等の希釈剤を混合して粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、好ましくは0~10重量%である。
【0082】
第2上塗材を用いる場合、第1上塗材層f1の色調は、第2上塗材層f2に近似した色調(共色)に設定しておくことが望ましい。これにより、第2上塗材層f2の色粒間から第1上塗材層f1が視認される場合であっても違和感がなく、美観性に優れた仕上りを得ることができる。
【実施例
【0083】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0084】
・下塗材1
架橋反応性樹脂{カルボニル基含有アクリル樹脂エマルション(Tg20℃)とアジピン酸ジヒドラジドとの混合物、固形分50重量%}の固形分100重量部に対し、着色顔料(カーボンブラック、弁柄、黄色酸化鉄、酸化チタン)24重量部、粉粒体{炭酸カルシウム(平均粒子径32μm、屈折率1.6)及びカオリン(平均粒子径5μm、屈折率1.6)、全粉粒体の平均粒子径20μm}320重量部、その他添加剤(造膜助剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等)を均一に混合して、濃灰色の下塗材1を製造した。
【0085】
・中塗材1
架橋反応性樹脂(同上)の固形分100重量部に対し、着色顔料(カーボンブラック、弁柄、黄色酸化鉄、酸化チタン)24重量部、粉粒体{炭酸カルシウム(平均粒子径4μm、屈折率1.6)及びカオリン(平均粒子径5μm、屈折率1.6)、全粉粒体の平均粒子径5μm}170重量部、その他添加剤(造膜助剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等)を均一に混合して、濃灰色の中塗材1を製造した。
【0086】
・中塗材2
架橋反応性樹脂(同上)の固形分100重量部に対し、着色顔料(同上)24重量部、粉粒体{炭酸カルシウム(平均粒子径2μm、屈折率1.6)及びカオリン(平均粒子径8μm、屈折率1.6)、全粉粒体の平均粒子径4μm}105重量部、その他添加剤(同上)を均一に混合して、濃灰色の中塗材2を製造した。
【0087】
・中塗材3
架橋反応性樹脂(同上)の固形分100重量部に対し、着色顔料(同上)24重量部、粉粒体{炭酸カルシウム(平均粒子径2μm、屈折率1.6)及びタルク(平均粒子径12μm、屈折率1.6)、全粉粒体の平均粒子径8μm}220重量部、その他添加剤(同上)を均一に混合して、濃灰色の中塗材3を製造した。
【0088】
・中塗材4
架橋反応性樹脂(同上)の固形分100重量部に対し、着色顔料(同上)24重量部、その他添加剤(同上)を均一に混合して、濃灰色の中塗材4を製造した。
【0089】
・上塗材1
架橋反応性樹脂{アクリルシリコン樹脂エマルション(Tg16℃、固形分50重量%)}の固形分100重量部に対し、着色顔料(酸化チタン、カーボンブラック、弁柄、黄色酸化鉄)62重量部、その他添加剤(骨材、造膜助剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等)を均一に混合して、淡灰色の上塗材1を製造した。
【0090】
・上塗材2
ゲル状色粒1(淡黄色ゲル状粒子;アクリルシリコン樹脂エマルション、酸化チタン、黄色酸化鉄、弁柄、水を主成分とする着色材の粒状化物、粒子径1~3mm)15重量部、ゲル状色粒2(淡灰色ゲル状粒子;アクリルシリコン樹脂エマルション、黒色酸化鉄、酸化チタン、水を主成分とする着色材の粒状化物、粒子径0.5~2mm)25重量部、ゲル状色粒3(茶色ゲル状粒子;アクリルシリコン樹脂エマルション、弁柄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化チタン、水を主成分とする着色材の粒状化物、粒子径1~3mm)10重量部、水性媒体(アクリルシリコン樹脂エマルション、水を主成分とする水性媒体)50重量部を含む上塗材2を製造した。
【0091】
(実施例1)
45×30cmの基材(スレート板)の全面に、下塗材1を塗付け量0.3kg/mにて多孔質ローラー(多孔質層の孔径1mm)を用いて塗装し、16時間乾燥後、可剥性目地材を貼着した。なお、可剥性目地材としては、裏面に粘着層を有する格子状の型紙(厚み0.8mm、幅6mm)を使用した。
【0092】
次いで、中塗材1を塗付け量0.1kg/mにて繊維質ローラー(繊維質層の厚み13mm)を用いて全面に塗装し、3時間乾燥させた。その後、上塗材1を塗付け量0.4kg/mにて多孔質ローラー(多孔質層の孔径1mm)を用いて全面に塗装した。3時間乾燥後、上塗材2を塗付け量0.4kg/mにて多孔質ローラー(多孔質層の孔径3mm)を用いて全面に2回塗装し、24時間乾燥させた。その後、可剥性目地材を除去した。
【0093】
下塗材層1(下塗材1の塗膜)と中塗材層1(中塗材1の塗膜)との色差(△Eeb)は、0.4であった。下塗材層1と上塗材層1(上塗材1の塗膜)との色差(△Efb)は45であった。
【0094】
以上の工程によって得られた模様面は、目地部と模様部との境界がすっきりとした直線状の仕上りとなり、目地部と模様部とのコントラストも明瞭であり、美観性に優れた目地模様であった。
【0095】
(実施例2)
中塗材1に替えて中塗材2を使用した以外は、実施例1と同様の方法で塗装を行った。下塗材層1と中塗材層2(中塗材2の塗膜)との色差(△Eeb)は、0.6であった。
実施例2で得られた模様面は、実施例1と同様に、目地部と模様部との境界がすっきりとした直線状の仕上りとなり、目地部と模様部とのコントラストも明瞭であり、美観性に優れた目地模様であった。
【0096】
(実施例3)
中塗材1に替えて中塗材3を使用した以外は、実施例1と同様の方法で塗装を行った。下塗材層1と中塗材層3(中塗材3の塗膜)との色差(△Eeb)は、0.5であった。
実施例3で得られた模様面は、実施例1と同様に、目地部と模様部との境界がすっきりとした直線状の仕上りとなり、目地部と模様部とのコントラストも明瞭であり、美観性に優れた目地模様であった。
【0097】
(実施例4)
中塗材1に替えて中塗材4を使用した以外は、実施例1と同様の方法で塗装を行った。下塗材層1と中塗材層4(中塗材4の塗膜)との色差(△Eeb)は、0.6であった。
実施例4で得られた模様面は、目地部と模様部との境界が概ね直線状の仕上りとなった。目地部と模様部とのコントラストは明瞭であり、美観性も良好であった。
【0098】
(比較例1)
中塗材1の塗装工程を省いた以外は、実施例1と同様の方法で塗装を行ったところ、得られた模様面は、目地部と模様部との境界がぎざぎざした仕上りとなり、実施例1のような美観性を呈するものではなかった。
図1
図2