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  • 特許-ブロー成形方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/58 20060101AFI20231024BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B29C49/58
B29C49/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019168598
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021045860
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】岸田 知之
(72)【発明者】
【氏名】入山 要次郎
(72)【発明者】
【氏名】大脇 優介
(72)【発明者】
【氏名】江口 雄太
(72)【発明者】
【氏名】小泉 順二
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-300453(JP,A)
【文献】特開平07-117105(JP,A)
【文献】特開平07-040425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全周に亘って平滑表面仕上げが施された第1平滑仕上面を備えた下側ピンを一対の金型の間に下方から挿入した状態で、一対の金型の間に上方から略円筒状に押し出された溶融樹脂により形成されたパリソンの下端部を前記下側ピンに被せる下側ピン挿入工程と、
下側ピン挿入工程後、前記一対の金型を閉じて、当該一対の金型のキャビティ面と前記第1平滑仕上面とで前記パリソンの下端部を前記パリソンの径方向に押圧する型締工程と、
前記型締工程後、前記一対の金型の上方でパリソンを切断する切断工程と、
前記切断工程後、全周に亘って平滑表面仕上げが施された第2平滑仕上面を備えた上側ピンを前記パリソンの上端部に上方から挿入すると共に、前記キャビティ面と前記第2平滑仕上面とで前記パリソンの上端部を前記パリソンの径方向に押圧する上側ピン挿入工程と、
前記上側ピン挿入工程後、または前記上側ピン挿入工程途中に、前記上側ピン及び前記下側ピンの少なくとも一方からパリソンの内部にガスを供給するブロー工程と、
を有する圧力容器ライナの製造方法。
【請求項2】
前記パリソンの厚さ寸法は、前記型締工程において前記一対の金型が型締めされた状態における前記下側ピンの前記第1平滑仕上面と前記一対の金型の前記キャビティ面との間の距離よりも大きく設定されている、
請求項1に記載の圧力容器ライナの製造方法。
【請求項3】
前記ブロー工程では、前記上側ピン挿入工程途中に、前記上側ピン及び前記下側ピンの少なくとも一方からパリソンの内部にガスを供給する、
請求項1に記載の圧力容器ライナの製造方法。
【請求項4】
前記上側ピンの挿入前と挿入後とで、ガスを供給する経路を前記上側ピン及び前記下側ピンの間で切り替える、
請求項3に記載の圧力容器ライナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、樹脂製の容器をブロー成形する方法が開示されている。この特許文献1に開示された技術では、押出ダイスから下方に向かって円筒状に押し出されたパリソンの下部をピンチ装置で閉じてから雄金型と雌金型との間にパリソンを配置し、押出ダイス内部に配設されたプリブローピンから低圧エアーをパリソンの内部に吹き込むことによりパリソンを膨張させる。次に、型締めしてパリソンの上下方向の端部を閉じた状態で、雌金型に設けられた2つのブローピンから高圧エアーをパリソンの内部に吹き込むことによりパリソンがキャビティ面に賦形され、容器が成形されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-290465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示されたブロー成形方法により、両端に開口部を有する中空部品を成形しようとした場合、押出ダイス内部に配設されたブローピンを雄金型と雌金型との間の位置まで延設させてブロー成形を行うことにより、上端に開口部を有するブロー成形品を得ることができる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたブロー成形方法では、パリソンの下部を閉じなければブロー成形を行うことができないため、後加工によりブロー成形品の下端に開口部を形成しなければならず、ブロー成形のみでは両端に開口部を有する中空部品を形成することができない。したがって、工程数を減らして生産性を向上させる観点から改善の余地がある。
【0006】
また、例えば圧力容器のように、軸方向の両端部に設けられた開口部へ栓を挿入することで密封するように構成された容器では、容器の内側の栓に嵌合する部分に平滑面を形成することが密封性向上の観点から望まれる。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、両端に開口部を有すると共に内側に平滑面を備える中空部品を後加工なしで成形することができるブロー成形方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の圧力容器ライナの製造方法は、全周に亘って第1平滑仕上面を備えた下側ピンを一対の金型の間に下方から挿入した状全周に亘って平滑表面仕上げが施された第1平滑仕上面を備えた下側ピンを一対の金型の間に下方から挿入した状態で、一対の金型の間に上方から略円筒状に押し出された溶融樹脂により形成されたパリソンの下端部を前記下側ピンに被せる下側ピン挿入工程と、下側ピン挿入工程後、前記一対の金型を閉じて、当該一対の金型のキャビティ面と前記第1平滑仕上面とで前記パリソンの下端部を前記パリソンの径方向に押圧する型締工程と、前記型締工程後、前記一対の金型の上方でパリソンを切断する切断工程と、前記切断工程後、全周に亘って平滑表面仕上げが施された第2平滑仕上面を備えた上側ピンを前記パリソンの上端部に上方から挿入すると共に、前記キャビティ面と前記第2平滑仕上面とで前記パリソンの上端部を前記パリソンの径方向に押圧する上側ピン挿入工程と、前記上側ピン挿入工程後、または前記上側ピン挿入工程途中に、前記上側ピン及び前記下側ピンの少なくとも一方からパリソンの内部にガスを供給するブロー工程と、を有する。
【0009】
請求項1に記載の圧力容器ライナの製造方法によれば、下側ピン挿入工程では、一対の金型の間に下方から挿入され、全周に亘って第1平滑仕上面を備えた下側ピンに、上方から略円筒状に押し出された溶融樹脂により形成されたパリソンの下端部が被せられることにより、パリソンの下端部の内部に下側ピンが挿入される。また、型締工程では、一対の金型を閉じることにより、キャビティ面と第1平滑仕上面とでパリソンの下端部が径方向に押圧され、切断工程では、型締めされた一対の金型の上方でパリソンが切断される。また、上側ピン挿入工程では、全周に亘って第2平滑仕上面を備えた上側ピンが、切断されたパリソンの上端部に上方から挿入されると共に、キャビティ面と第2平滑仕上面とでパリソンの上端部が径方向に押圧される。さらに、ブロー工程では、上側ピン及び下側ピンの少なくとも一方からパリソンの内部にガスが供給される。
【0010】
ここで、パリソンの下端部が、キャビティ面と第1平滑仕上面とでその径方向に押圧されると共に、パリソンの上端部がキャビティ面と第2平滑仕上面とで径方向に押圧されることにより、ブロー成形品の上端部及び下端部において内側に平滑面が形成される。また、ブロー工程において、パリソンの上端部及び下端部の内部に上側ピン及び下側ピンがそれぞれ配置されているので、両端に開口部を有する中空部品を後加工なしで成形することができる。
また、請求項2に記載の圧力容器ライナの製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記パリソンの厚さ寸法は、前記型締工程において前記一対の金型が型締めされた状態における前記下側ピンの前記第1平滑仕上面と前記一対の金型の前記キャビティ面との間の距離よりも大きく設定されている。
さらに、請求項3に記載の圧力容器ライナの製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記ブロー工程では、前記上側ピン挿入工程途中に、前記上側ピン及び前記下側ピンの少なくとも一方からパリソンの内部にガスを供給する。
さらにまた、請求項4に記載の圧力容器ライナの製造方法は、請求項3に記載の発明において、前記上側ピンの挿入前と挿入後とで、ガスを供給する経路を前記上側ピン及び前記下側ピンの間で切り替える。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る圧力容器ライナの製造方法では、両端に開口部を有すると共に内側に平滑面を備える中空部品を後加工なしで成形することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る圧力容器ライナの製造方法の下側ピン挿入工程、型締工程及び切断工程を説明するためのブロー成形装置の概略縦断面図である。
図2】本実施形態に係る圧力容器ライナの製造方法の上側ピン挿入工程及びブロー工程を説明するためのブロー成形装置の概略縦断面図である。
図3図1及び図2に示されるブロー成形装置の下側ピン周辺を拡大して示す拡大縦断面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1図3を用いて、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
(ブロー成形装置の構成)
図1及び図2には、本実施形態に係るブロー成形方法(圧力容器ライナの製造方法)に用いられるブロー成形装置10の要部が概略縦断面図にて示されている。これらの図に示されるように、ブロー成形装置10は、図示しない型締機構により互いに近接する方向及び離間する方向に移動可能に構成された一対の金型12と、一対の金型12のキャビティ14の間に上方から図示しない押出ダイスを介して溶融樹脂(例えば、ナイロン、ポリエチレン等)を押し出して略円筒状のパリソン16を形成する図示しない押出機と、押出機と一対の金型12との間でパリソン16を切断するためのパリソンカッター18(図1参照)と、パリソン16の下端部16Aに挿入される下側ピン20と、切断後のパリソン16の上端部16Bに挿入される上側ピン22(図2参照)と、上側ピン22及び下側ピン20を介してガスを供給する図示しないガス圧力印加装置と、を含んで構成されている。
【0015】
下側ピン20は、図3に示されるように、円筒状の基部20Aと、上端に向かうにつれて縮径する縮径部20Bと、基部20Aよりも小径とされた円筒状の小径部20Cと、小径部20Cの上端側に設けられ、上端に向かうにつれて縮径するテーパ部20Dと、を含んで構成されている。下側ピン20の小径部20Cの外径は、パリソン16の内径と同じか、またはそれより小さく設定されている。下側ピン20は、ブロー成形時にはその中心軸がパリソン16の中心軸CLと略一致するように配置されており、図示しない駆動装置によって、中心軸CLに沿って移動可能に構成されている。
【0016】
また、下側ピン20の小径部20Cの長手方向における一部分(Pで図示される部分)には、全周に亘って平滑表面仕上げが施された第1平滑仕上面24が形成されている。さらに、下側ピン20の内部には、中心軸に沿って中空部が設けられ、図示しないガス圧力印加装置から供給されるガス(一例として、窒素ガス)をパリソン16の内部に供給するためのガス供給経路26を構成している。
【0017】
上側ピン22は、図2に示されるように、基部22Aと、テーパ部22Bと、ガス供給経路28と、を含んで構成されており、基部22Aの長手方向における一部分(Qで図示される部分)には、全周に亘って平滑表面仕上げが施された第2平滑仕上面30が形成されている。また、上側ピン22は、図示しない駆動装置によって、中心軸CLに沿って移動可能に構成されている。
【0018】
なお、下側ピン20も上側ピン22と同様に、縮径部20Bを備えない構成としてもよい。具体的には、基部20Aとテーパ部20Dとで構成され、基部20Aの長手方向の一部分に第1平滑仕上面24が形成されていてもよい。
【0019】
パリソン16の厚さ寸法は(一例として、2~5ミリメートル程度)、一対の金型12が閉じた(型締めされた)状態における下側ピン20の第1平滑仕上面24と一対の金型12のキャビティ面12Aとの間の距離(すなわち第1平滑仕上面24とキャビティ面12Aとの間に形成される断面円環状の空隙部の厚さ寸法)よりも大きく設定されている。同様に、上側ピン22の第2平滑仕上面30とキャビティ面12Aとの間の距離よりもパリソン16の厚さ寸法が大きく設定されている。なお、図1図3において、一対の金型12を閉じた状態におけるパリソン16の厚さ寸法は長手方向に沿って一様であるように概略的に図示されているが、実際には、パリソン16のうち上側ピン22及び下側ピン20に接する部分は径方向に押圧されるため、他の部分よりも厚さ寸法が小さくなる。
【0020】
ブロー成形装置10により成形される成形品は、一例として、燃料電池車両に搭載される水素ガスタンク(燃料タンク)として用いられる圧力容器の最も内側の層を構成する圧力容器ライナ40(図3参照)である。この圧力容器ライナ40は、図1及び図2に示される一対の金型12のキャビティ面12Aにより外形が賦形され、図3に示されるように、略円筒状の胴部40Aと、胴部40Aの軸方向両端に各々形成された略半球状の一対のドーム部40Bと、一対のドーム部40Bの胴部40Aとは反対側の軸方向端部にそれぞれ形成されて胴部40Aよりも小径とされた略円筒状の一対の首部40Cと、を含んで構成されている(一対のドーム部40B及び一対の首部40Cのうち、金型内において上側に位置するドーム部及び首部は図示が省略されている)。
【0021】
(ブロー成形方法)
次に、本実施形態に係るブロー成形方法(より具体的には、圧力容器ライナ40の製造方法)を説明する。
【0022】
まず、図1に示されるように、一対の金型12の間に下方から下側ピン20が挿入された状態で、図示しない押出機によって、一対の金型12の間に上方から略円筒状に溶融樹脂を押し出してパリソン16が形成され、一対の金型12の間に供給される。このパリソン16の下端部16Aを下側ピン20に被せることにより、パリソン16の下端部16Aの内部に下側ピン20が挿入される(下側ピン挿入工程)。なお、図1には一対の金型12が閉じた状態が示されているが、パリソン16に下側ピン20を挿入する下側ピン挿入工程は、一対の金型12が開いた状態で行われる。
【0023】
次に、一対の金型12が閉じられる。型が閉じた状態では、キャビティ14の上下が金型の外部と連通しており、一対の金型12にパリソン16が挿通されている。ここで、上述の通り、パリソン16の厚さ寸法は、一対の金型12が閉じた状態におけるキャビティ面12Aと第1平滑仕上面24との間の距離よりも大きく設定されているので、一対の金型12が閉じられることにより、下側ピン20の第1平滑仕上面24とこれに対向するキャビティ面12Aとによってパリソン16の下端部16Aの長手方向における一部がパリソン16の径方向に押圧される(型締工程)。これにより、下側ピン20の第1平滑仕上面24の表面形状が、パリソン16の下端部16Aの長手方向における一部の内面に転写され、この部分が圧力容器ライナ40の首部40Cのシール面40C1を構成する(図3参照)。
【0024】
次に、一対の金型12の上方でパリソン16がパリソンカッター18(図1参照)により切断される(切断工程)。このとき、図示しない押出機の押出スクリューの回転を停止させることにより、パリソン16の下方への移動を停止させておく。一例として、一対の金型12の上端よりも2~3センチメートル上方の位置でパリソン16が切断される。
【0025】
上記下側ピン挿入工程、型締工程、及び切断工程は、図示しない押出機のダイスの下に一対の金型12が配置された状態で行われる。切断工程が終わると、一対の金型12は、半溶融状態のパリソン16及び下側ピン20を内部に保持したまま型締めした状態で別の場所に移動される。
【0026】
次に、図2に示されるように、一対の金型12が閉じた状態で上側ピン22がパリソン16の上端部16Bの内部に上方から挿入され、一対の金型12の間に配置される。ここで、上述の通り、パリソン16の厚さ寸法は、一対の金型12が閉じた状態における一対の金型12のキャビティ面12Aと第2平滑仕上面30との間の距離よりも大きく設定されているので、上側ピン22がパリソン16に挿入されることにより、第2平滑仕上面30とこれに対向するキャビティ面12Aとによってパリソン16の上端部16Bの長手方向における一部がパリソン16の径方向に押圧される(上側ピン挿入工程)。これにより、上側ピン22の第2平滑仕上面30の表面形状が、パリソン16の上端部16Bの長手方向における一部の内面に転写され、この部分が圧力容器ライナ40(図3参照)の図示しない首部のシール面を構成する。
【0027】
上述の上側ピン挿入工程は、図示しない駆動装置によって上側ピン22を中心軸CLに沿って下方に移動させることにより行われる。このとき、上側ピン22の移動によってパリソン16の内面が引きずられるようにしてパリソン16の内面に傷ができることを防止又は抑制するために、上側ピン22のパリソン16の内部への挿入量を極力小さくすると共に、挿入速度をコントロールすることが望ましい。
【0028】
次に、図示しないガス圧力印加装置によって加圧されたガスが、上側ピン22のガス供給経路28及び下側ピン20のガス供給経路26からパリソン16の内部に供給される(ブロー工程)。これにより、図3に示されるように、パリソン16が膨張し、キャビティ面12Aに密着して賦形される。これにより、キャビティ面12Aの形状がパリソン16の外面に転写されて成形品(圧力容器ライナ40)が成形される。また、上述の通り、上側ピン22の第2平滑仕上面30及び下側ピン20の第1平滑仕上面24の形状が、それぞれパリソン16の内面に転写され、この部分が圧力容器ライナ40の一対の首部40Cのシール面40C1を構成する。この状態で成形品を冷却させた後、一対の金型12を開いて成形品(圧力容器ライナ40)を取り出す。
【0029】
(作用及び効果)
次に、本実施形態のブロー成形方法の作用及び効果を説明する。
【0030】
本実施形態のブロー成形方法では、図1に示されるように、下側ピン挿入工程では、一対の金型12の間に下方から挿入された、全周に亘って第1平滑仕上面24を備えた下側ピン20に、上方から略円筒状に押し出された溶融樹脂により形成されたパリソン16の下端部16Aが被せられることにより、パリソン16の下端部16Aの内部に下側ピンが挿入される。また、型締工程では、一対の金型12を閉じることにより、キャビティ面12Aと第1平滑仕上面24とでパリソン16の下端部16Aが径方向に押圧され、切断工程では、型締めされた一対の金型12の上方でパリソン16が切断される。また、図2に示されるように、上側ピン挿入工程では、全周に亘って第2平滑仕上面30を備えた上側ピン22が、切断されたパリソン16の上端部16Bに上方から挿入されると共に、キャビティ面12Aと第2平滑仕上面30とでパリソン16の上端部16Bが径方向に押圧される。さらに、ブロー工程では、上側ピン22及び下側ピン20の少なくとも一方からパリソン16の内部にガスが供給される。
【0031】
ここで、パリソン16の下端部16Aが、キャビティ面12Aと第1平滑仕上面24とでその径方向に押圧されると共に、パリソン16の上端部16Bがキャビティ面12Aと第2平滑仕上面30とで径方向に押圧されることにより、ブロー成形品の上端部及び下端部において内側に平滑面(シール面40C1)が形成される。また、ブロー工程において、パリソン16の上端部16B及び下端部16Aの内部に上側ピン22及び下側ピン20がそれぞれ配置されているので、両端に開口部を有する中空部品を後加工なしで成形することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、下側ピン20及び上側ピン22がガス供給経路26、28をそれぞれ備える構成としたが、ガス供給経路26、28のいずれか一方を備える構成としてもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、上側ピン22のガス供給経路26及び下側ピン20のガス供給経路28の双方からパリソン16の内部にガスが供給される構成としたが、上側ピン22及び下側ピン20のいずれか一方からガスを供給する構成としてもよいし、途中で一方から他方に、又は両方に切り替える構成としてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、上側ピン挿入工程の後に上側ピン22及び下側ピン20からパリソン16の内部にガスを供給する供給工程を行う順序としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、上側ピン22を挿入しながら(すなわち上側ピン挿入工程の間に)上側ピン22及び下側ピン20の少なくとも一方からガスを供給してもよい。これにより、半溶融状態で切断されたパリソン16の上端部16Bの断面を開いて上側ピン22を挿入しやすくすることができる。この場合、上側ピン22の挿入前と挿入後とで、ガスを供給する経路を上側ピン22及び下側ピン20の間で切り替えてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、成形品を燃料電池車両に搭載される水素ガスタンクとして用いられる圧力容器の圧力容器ライナ40としたが、水素ガス以外の高圧ガスや液体を収容する容器であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
12 一対の金型
12A キャビティ面
16 パリソン
16A 下端部
16B 上端部
20 下側ピン
22 上側ピン
24 第1平滑仕上面
30 第2平滑仕上面
図1
図2
図3