(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ撚糸の製造方法
(51)【国際特許分類】
D02G 3/16 20060101AFI20231024BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20231024BHJP
D02G 3/26 20060101ALI20231024BHJP
H01B 1/04 20060101ALI20231024BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
D02G3/16
C01B32/168
D02G3/26
H01B1/04
H01B13/00 501Z
(21)【出願番号】P 2019169389
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110147
【氏名又は名称】トクセン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 典史
(72)【発明者】
【氏名】大上 寛之
(72)【発明者】
【氏名】太田 栄次
(72)【発明者】
【氏名】山川 智弘
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-208296(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131061(WO,A1)
【文献】特開2017-007919(JP,A)
【文献】国際公開第2015/011768(WO,A1)
【文献】特開2014-169521(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108625005(CN,A)
【文献】特表2009-509066(JP,A)
【文献】国際公開第2015/011767(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0144984(US,A1)
【文献】特表2008-523254(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001668(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 - 32/991
D01F 9/12 - 9/32
D01H 1/00 - 17/02
D02G 1/00 - 3/48
H01B 1/04
H01B 5/08
H01B 13/00
H01B 13/02
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置され、前記基板に対して垂直に配向される垂直配向カーボンナノチューブから、複数のカーボンナノチューブを線状に連続するように引き出し、糸状に束ね、糸状に束ねた仮製糸を第1巻取体に巻き取る工程と、
巻き取った前記仮製糸を前記第1巻取体から繰り出しながら、前記第1巻取体を前記仮製糸の繰出方向に沿う軸線を中心として回転させて、前記仮製糸に撚りをかける工程と、を含
み、
前記仮製糸を長さ方向と直交する方向に切断したときの、前記仮製糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率が、40面積%以下であることを特徴とする、カーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
【請求項2】
前記仮製糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率が、0.3面積%以上
40面積%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
【請求項3】
カーボンナノチューブ撚糸を長さ方向と直交する方向に切断したときの、前記カーボンナノチューブ撚糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率は、前記仮製糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率よりも大きく、50面積%以上90面積%以下であることを特徴とする、請求項1
または2記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
【請求項4】
前記仮製糸の撚り角度は、0°以上10°以下であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
【請求項5】
カーボンナノチューブ撚糸の撚り角度は、5°以上30°以下であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
【請求項6】
線状に連続するように引き出した複数のカーボンナノチューブを、穴に挿通して糸状に束ねることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
【請求項7】
前記穴の内径は、前記垂直配向カーボンナノチューブにおける前記カーボンナノチューブの引出位置の幅に対して、1/3000以上1/100以下であることを特徴とする、請求項
6に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
【請求項8】
前記第1巻取体から繰り出された前記仮製糸に撚りがかけられたカーボンナノチューブ撚糸を、第2巻取体が回転して巻き取ることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
【請求項9】
カーボンナノチューブ撚糸を長さ方向に伸長させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
【請求項10】
基板上に配置され、前記基板に対して垂直に配向される垂直配向カーボンナノチューブから、複数のカーボンナノチューブを線状に連続するように引き出し、糸状に束ね、糸状に束ねた仮製糸を第1巻取体に巻き取る工程と、
巻き取った前記仮製糸を前記第1巻取体から繰り出しながら、前記第1巻取体を前記仮製糸の繰出方向に沿う軸線を中心として回転させて、前記仮製糸に撚りをかける工程と、を含み、
線状に連続するように引き出した前記複数のカーボンナノチューブを、穴に挿通して糸状に束ねることを特徴とする、カーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
【請求項11】
前記穴の内径は、前記垂直配向カーボンナノチューブにおける前記カーボンナノチューブの引出位置の幅に対して、1/3000以上1/100以下であることを特徴とする、請求項10に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ撚糸の製造方法およびカーボンナノチューブ撚糸の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、優れた機械強度、熱伝導性および電気伝導性を有することが知られており、複数のカーボンナノチューブを糸状に形成して、カーボンナノチューブ糸として、各種産業製品に利用することが検討されている。
【0003】
このようなカーボンナノチューブ糸の製造方法として、例えば、基板上に成長させたカーボンナノチューブアレイから、複数のカーボンナノチューブが連続的に繋がるカーボンナノチューブウェブを引き出した後、カーボンナノチューブウェブを撚り合わせながら、カーボンナノチューブウェブが撚り合わされたカーボンナノチューブ撚糸を糸巻軸に巻き取る、カーボンナノチューブ撚糸の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そのようなカーボンナノチューブ撚糸の製造方法は、カーボンナノチューブアレイが配置される基板と、糸巻軸を回転可能に支持する回転部とを備える紡績装置により実施される。紡績装置では、回転部および糸巻軸に駆動力が入力されて、回転部が糸巻軸の軸線と交差する回転軸線を中心として回転するとともに、糸巻軸が糸巻軸の軸線を中心として回転する。
【0005】
これによって、糸巻軸は、カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブウェブを連続的に引き出し、回転部の回転に伴なってカーボンナノチューブウェブを撚り合わせながら、カーボンナノチューブ撚糸を巻き取る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、特許文献1に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法において、糸巻軸を糸巻軸の軸線を中心として回転させるには、回転部に設けられるモータなどの駆動源から糸巻軸に駆動力を入力する必要があり、その駆動源に回転部を介して電力を供給する必要がある。
【0008】
そこで、回転する回転部と外部電源とを電気的に接続するスリップリングなどの回転接続用のコネクタを設けて、回転部に設けられる駆動源に電力を供給することが検討される。
【0009】
しかし、スリップリングなどの回転接続用のコネクタでは、回転部と外部電源との電気的な接続を確保しつつ、回転部の回転速度の向上を図るには限度がある。また、回転接続用のコネクタを設けると、カーボンナノチューブ撚糸の製造装置の構成が複雑化してしまう。
【0010】
そこで、回転部を回転させずに、カーボンナノチューブアレイが配置される基板を回転させて、カーボンナノチューブウェブを撚り合わせることが検討される。しかし、カーボンナノチューブ撚糸を工業的に製造する場合、基板が大型化するため、基板を安定して回転させることは困難であり、基板の回転速度を十分に確保できない。その結果、カーボンナノチューブ撚糸の製造効率の向上を図るには限度がある。
【0011】
本発明は、カーボンナノチューブ撚糸を工業的に効率よく製造できるカーボンナノチューブ撚糸の製造方法およびカーボンナノチューブ撚糸の製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明[1]は、基板上に配置され、前記基板に対して垂直に配向される垂直配向カーボンナノチューブから、複数のカーボンナノチューブを線状に連続するように引き出し、糸状に束ね、糸状に束ねた仮製糸を第1巻取体に巻き取る工程と、巻き取った前記仮製糸を前記第1巻取体から繰り出しながら、前記第1巻取体を前記仮製糸の繰出方向に沿う軸線を中心として回転させて、前記仮製糸に撚りをかける工程とを含む、カーボンナノチューブ撚糸の製造方法を含んでいる。
【0013】
このような方法によれば、垂直配向カーボンナノチューブから複数のカーボンナノチューブを線状に連続するように引き出し、糸状に束ね、糸状に束ねた仮製糸を第1巻取体に一旦巻き取る。その後、仮製糸を第1巻取体から繰り出しながら、第1巻取体を仮製糸の繰出方向に沿う軸線を中心として回転させて、仮製糸に撚りをかける。
【0014】
そのため、回転接続用のコネクタが不要であり、基板を回転させる場合と比較しても、第1巻取体を安定して回転させることができ、仮製糸に円滑に撚りをかけることができる。その結果、カーボンナノチューブ撚糸を工業的に効率よく製造することができる。
【0015】
本発明[2]は、前記仮製糸を長さ方向と直交する方向に切断したときの、前記仮製糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率が、0.3面積%以上75面積%以下である、上記[1]に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法を含んでいる。
【0016】
このような方法によれば、仮製糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率が上記下限以上となるように、線状に連続する複数のカーボンナノチューブを糸状に束ねるので、仮製糸を安定して形成することができる。また、仮製糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率が上記上限以下であるので、線状に連続する複数のカーボンナノチューブを糸状に束ねるときに、仮製糸が破断することを抑制できる。
【0017】
本発明[3]は、前記仮製糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率が、40面積%以下である、上記[2]に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法を含んでいる。
【0018】
このような方法によれば、仮製糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率が上記上限以下であるので、第1巻取体から繰り出された仮製糸に安定して撚りをかけることができ、カーボンナノチューブ撚糸の引張強度の向上を図ることができる。
【0019】
本発明[4]は、カーボンナノチューブ撚糸を長さ方向と直交する方向に切断したときの、前記カーボンナノチューブ撚糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率は、前記仮製糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率よりも大きく、50面積%以上90面積%以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法を含んでいる。
【0020】
このような方法によれば、カーボンナノチューブ撚糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率が上記範囲であるので、カーボンナノチューブ撚糸の引張強度の向上を安定して図ることができる。
【0021】
本発明[5]は、前記仮製糸の撚り角度は、0°以上10°以下である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法を含んでいる。
【0022】
このような方法によれば、仮製糸の撚り角度が上記範囲であるので、第1巻取体から繰り出された仮製糸により一層安定して撚りをかけることができる。
【0023】
本発明[6]は、カーボンナノチューブ撚糸の撚り角度は、5°以上30°以下である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法を含んでいる。
【0024】
このような方法によれば、カーボンナノチューブ撚糸の撚り角度が上記範囲であるので、カーボンナノチューブ撚糸の引張強度の向上をより一層安定して図ることができる。
【0025】
本発明[7]は、線状に連続するように引き出した複数のカーボンナノチューブを、穴に挿通して糸状に束ねる、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法を含んでいる。
【0026】
このような方法によれば、簡易な方法でありながら、線状に連続する複数のカーボンナノチューブを安定して糸状に束ねることができる。
【0027】
本発明[8]は、前記穴の内径は、前記垂直配向カーボンナノチューブにおける前記カーボンナノチューブの引出位置の幅に対して、1/3000以上1/100以下である、上記[7]に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法を含んでいる。
【0028】
このような方法によれば、穴の内径が引出位置の幅に対して上記下限以上であるので、線状に連続する複数のカーボンナノチューブを、安定して穴に挿通することができる。また、穴の内径が引出位置の幅に対して上記上限以下であるので、仮製糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率を所定の範囲に調整することができる。
【0029】
本発明[9]は、前記第1巻取体から繰り出された前記仮製糸に撚りがかけられたカーボンナノチューブ撚糸を、第2巻取体が回転して巻き取る、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法を含んでいる。
【0030】
このような方法によれば、第2巻取体がカーボンナノチューブ撚糸を回転して巻き取るので、第1巻取体を第2巻取体の回転に従動させることにより、仮製糸を連続的に繰り出すことができる。そのため、第1巻取体を仮製糸の繰出方向に沿う軸線を中心として回転駆動させるとともに、第2巻取体を回転駆動させることにより、カーボンナノチューブ撚糸を連続して製造することができる。
【0031】
本発明[10]は、カーボンナノチューブ撚糸を長さ方向に伸長させる工程をさらに含む、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法を含んでいる。
【0032】
このような方法によれば、カーボンナノチューブ撚糸を長さ方向に伸長させるので、カーボンナノチューブ撚糸の断面におけるカーボンナノチューブの充填率の向上を図ることができ、カーボンナノチューブ撚糸の引張強度のさらなる向上を図ることができる。
【0033】
本発明[11]は、基板上に配置され、前記基板に対して垂直に配向される垂直配向カーボンナノチューブと、前記垂直配向カーボンナノチューブから引き出される線状に連続する複数のカーボンナノチューブを糸状に束ねる集束部と、糸状に束ねた仮製糸を巻き取り可能な第1巻取体と、を備える仮製糸製造ユニットと、前記第1巻取体から繰り出された前記仮製糸を、回転駆動により巻き取り可能な第2巻取体と、前記第1巻取体を従動回転可能に支持し、前記仮製糸の繰出方向に沿う軸線を中心として回転駆動可能な支持部と、を備える撚糸製造ユニットと、を備える、カーボンナノチューブ撚糸の製造装置を含んでいる。
【0034】
このような構成によれば、集束部が、基板上に配置される垂直配向カーボンナノチューブから引き出される線状に連続する複数のカーボンナノチューブを糸状に束ねた後、第1巻取体が、仮製糸を一旦巻き取る。
【0035】
そして、第2巻取体が、回転駆動することにより、第1巻取体を従動回転させて仮製糸を連続的に繰り出しながら、第1巻取体を支持する支持部が、仮製糸の繰出方向に沿う軸線を中心として回転駆動して仮製糸に撚りをかける。その後、第2巻取体が、撚りをかけられたカーボンナノチューブ撚糸を巻き取る。
【0036】
つまり、第2巻取体が、仮製糸を第1巻取体から連続的に繰り出し、かつ、カーボンナノチューブ撚糸を巻き取るために回転駆動し、支持部が、仮製糸に撚りをかけるために回転駆動する。そのため、第2巻取体が、仮製糸に撚りをかけながらカーボンナノチューブ撚糸を巻き取るために、異なる2つの軸線について回転駆動する場合と比較して、カーボンナノチューブ撚糸の製造装置の構成の簡略化を図ることができ、かつ、カーボンナノチューブ撚糸を工業的に効率よく製造できる。
【0037】
本発明[12]は、基板上に配置され、前記基板に対して垂直に配向される垂直配向カーボンナノチューブと、前記垂直配向カーボンナノチューブから引き出される線状に連続する複数のカーボンナノチューブを糸状に束ねる集束部と、糸状に束ねた仮製糸を巻き取り可能な第1巻取体と、を備える仮製糸製造ユニットと、前記第1巻取体から繰り出された前記仮製糸を、回転駆動により巻き取り可能な第2巻取体と、前記第2巻取体を回転可能に支持し、前記仮製糸の繰出方向に沿う軸線を中心として回転駆動可能な支持部と、を備える撚糸製造ユニットと、を備える、カーボンナノチューブ撚糸の製造装置を含んでいる。
【0038】
このような構成によれば、集束部が、基板上に配置される垂直配向カーボンナノチューブから引き出される線状に連続する複数のカーボンナノチューブを糸状に束ねた後、第1巻取体が、仮製糸を一旦巻き取る。そして、第1巻取体が仮製糸を連続的に繰り出しながら、第2巻取体を支持する支持部が、仮製糸の繰出方向に沿う軸線を中心として回転駆動して仮製糸に撚りをかける。その後、第2巻取体が、撚りをかけられたカーボンナノチューブ撚糸を巻き取る。そのため、カーボンナノチューブ撚糸を工業的に効率よく製造できる。
【0039】
本発明[13]は、基板上に配置され、前記基板に対して垂直に配向される垂直配向カーボンナノチューブと、前記垂直配向カーボンナノチューブから引き出される線状に連続する複数のカーボンナノチューブを糸状に束ねる集束部と、糸状に束ねた仮製糸を巻き取り可能な第1巻取体と、を備える仮製糸製造ユニットと、前記第1巻取体から繰り出された前記仮製糸を、回転駆動により巻き取り可能な第2巻取体と、前記第1巻取体と前記第2巻取体との間において、前記仮製糸を撚りかけ可能な中間撚糸部と、を備える撚糸製造ユニットと、を備えることを特徴とする、カーボンナノチューブ撚糸の製造装置を含んでいる。
【0040】
このような構成によれば、集束部が、基板上に配置される垂直配向カーボンナノチューブから引き出される線状に連続する複数のカーボンナノチューブを糸状に束ねた後、第1巻取体が、仮製糸を一旦巻き取る。そして、第2巻取体が回転駆動することにより、第1巻取体から仮製糸を連続的に繰り出しながら、第1巻取体と第2巻取体との間において、中間撚糸部が仮製糸に撚りをかける。その後、第2巻取体が、撚りをかけられたカーボンナノチューブ撚糸を巻き取る。そのため、カーボンナノチューブ撚糸の製造装置の構成の簡略化を図ることができ、かつ、カーボンナノチューブ撚糸を工業的に効率よく製造できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法では、カーボンナノチューブ撚糸を工業的に効率よく製造することができ、カーボンナノチューブ撚糸の強度の向上を図ることが可能となる。また、従来の製造方法に比べて、カーボンナノチューブ撚糸が断線する確率を減少させることが可能となる。
【0042】
本発明のカーボンナノチューブ撚糸の製造装置では、構成の簡略化を図ることができながら、カーボンナノチューブ撚糸を工業的に効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、本発明のカーボンナノチューブ撚糸の製造装置の第1実施形態としてのCNT撚糸製造装置が備える仮製糸製造ユニットの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明のカーボンナノチューブ撚糸の製造装置の第1実施形態としてのCNT撚糸製造装置が備える撚糸製造ユニットの斜視図である。
【
図3】
図3Aは、
図1に示す基板上に触媒層を形成する工程を示す。
図3Bは、
図3Aに続いて、基板を加熱して触媒層を複数の粒状体に凝集させる工程を示す。
図3Cは、
図3Bに続いて、複数の粒状体に原料ガスを供給して、複数のカーボンナノチューブを成長させる工程を示す。
図3Dは、
図3Cに続いて、複数のカーボンナノチューブを引き出して、カーボンナノチューブウェブを調製する工程を示す。
【
図4】
図4は、本発明のカーボンナノチューブ撚糸の製造装置の第2実施形態としてのCNT撚糸製造装置が備える仮製糸製造ユニットの概略構成図である。
【
図5】
図5Aは、本発明のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法の第3実施形態が含むカーボンナノチューブ撚糸を伸長させる工程を説明するための説明図であって、カーボンナノチューブ撚糸の端部を把持した状態を示す。
図5Bは、
図5Aに続いて、カーボンナノチューブ撚糸を伸長させた状態を示す。
【
図6】
図6は、製造例4の仮製糸の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【
図7】
図7は、実施例9のカーボンナノチューブ撚糸の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【
図8】
図8は、実施例1~16におけるカーボンナノチューブ撚糸の撚り数とカーボンナノチューブ撚糸の引張強度との相関を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例4、10、13、17~19および比較例1における仮製糸の充填率とカーボンナノチューブ撚糸の引張強度との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
1.第1実施形態
(1)カーボンナノチューブ撚糸の製造方法
本発明のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法の第1実施形態は、例えば、
図1に示すように、基板1上に配置される垂直配向カーボンナノチューブ2(Vertically Aligned carbon nanotubes;以下、VACNTs2とする。)から、複数のカーボンナノチューブ10(以下、CNT10とする。)を線状に連続するように引き出した後、糸状に束ね、糸状に束ねた仮製糸11を第1巻取体12に巻き取る工程と、
図2に示すように、仮製糸11を第1巻取体12から繰り出しながら、仮製糸11に撚りをかける工程とを含む。
【0045】
このような製造方法では、まず、
図3A~
図3Dに示すように、化学気相成長法(CVD法)により、基板1上にVACNTs2を成長させて、基板1上に配置されるVACNTs2を準備する。
【0046】
詳しくは、
図3Aに示すように、まず、基板1を準備する。基板1は、特に限定されず、例えば、CVD法に用いられる公知の基板が挙げられ、市販品を用いることができる。
【0047】
基板1として、例えば、シリコン基板や、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板5などが挙げられ、好ましくは、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板5が挙げられる。なお、
図1、
図3A~
図3Dでは、基板1が、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板5である場合を示す。
【0048】
そして、
図3Aに示すように、基板1上、好ましくは、二酸化ケイ素膜6上に触媒層7を形成する。基板1上に触媒層7を形成するには、金属触媒を、公知の成膜方法により、基板1(好ましくは、二酸化ケイ素膜6)上に成膜する。
【0049】
金属触媒として、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどが挙げられ、好ましくは、鉄が挙げられる。このような金属触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。成膜方法として、例えば、真空蒸着およびスパッタリングが挙げられ、好ましくは、真空蒸着が挙げられる。これによって、基板1上に触媒層7が配置される。
【0050】
次いで、触媒層7が配置される基板1を、
図3Bに示すように、例えば、700℃以上900℃以下に加熱する。これにより、触媒層7が、凝集して、複数の粒状体7Aとなる。
【0051】
そして、加熱された基板1に、
図3Cに示すように、原料ガスを供給する。原料ガスは、炭素数1~4の炭化水素ガス(低級炭化水素ガス)を含んでいる。炭素数1~4の炭化水素ガスとして、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、エチレンガス、アセチレンガスなどが挙げられ、好ましくは、アセチレンガスが挙げられる。
【0052】
また、原料ガスは、必要により、水素ガスや、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴンなど)、水蒸気などを含むこともできる。
【0053】
原料ガスの供給時間としては、例えば、1分以上60分以下である。
【0054】
これによって、複数の粒状体7Aのそれぞれを起点として、複数のCNT10が成長する。なお、
図3Cでは、便宜上、1つの粒状体7Aから、1つのCNT10が成長するように記載されているが、これに限定されず、1つの粒状体7Aから、複数のCNT10が成長してもよい。
【0055】
複数のCNT10のそれぞれは、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれであってもよく、好ましくは、多層カーボンナノチューブである。これらCNT10は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0056】
CNT10の平均外径は、例えば、1nm以上100nm以下である。CNT10の平均長さ(平均軸線方向寸法)は、例えば、1μm以上、好ましくは、100μm以上、さらに好ましくは、200μm以上、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、さらに好ましくは、400μm以下である。また、CNT10が多層CNTである場合、CNT10の平均内径は、例えば、0.5nm以上50nm以下である。なお、CNT10の平均内径および平均外径は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)により測定される。CNT10の平均長さは、例えば、レーザ変位計や、走査型電子顕微鏡(SEM)などの公知の方法により測定される。
【0057】
このような複数のCNT10のそれぞれは、基板1上において、互いに略平行となるように、基板1の厚み方向に延びている。これによって、複数のCNT10からなるVACNTs2が、基板1上に成長する。
【0058】
つまり、複数のCNT10は、基板1に対して直交するように配向(垂直に配向)されており、VACNTs2は、基板1に対して垂直に配向されている。
【0059】
以上によって、基板1上に配置されるVACNTs2が準備される。VACNTs2は、
図1に示すように、基板1の厚み方向(上下方向)と直交する面方向(縦方向および横方向)に延びる平面視略矩形形状を有している。VACNTs2は、複数のCNT10が縦方向に直線的に並ぶ列2Aを、横方向に複数備えている。VACNTs2において、複数のCNT10は、面方向(縦方向および横方向)に互いに密集している。
【0060】
VACNTs2の嵩密度は、例えば、10mg/cm3以上、好ましくは、20mg/cm3以上、例えば、80mg/cm3以下、好ましくは、60mg/cm3以下である。なお、VACNTs2の嵩密度は、例えば、単位面積当たり質量(目付量:単位 mg/cm2)と、カーボンナノチューブの長さ(SEM(日本電子社製)またはレーザ変位計(キーエンス社製)により測定)とから算出される。
【0061】
次いで、VACNTs2から、複数のCNT10を線状に連続するように引き出す。
【0062】
具体的には、VACNTs2のうち、各列2Aの縦方向一端部に位置するCNT10を、図示しない引出具により一括して保持し、基板1から離れるように引っ張る。
【0063】
すると、引っ張られたCNT10は、
図3Dに示すように、粒状体7Aから引き抜かれる。このとき、引き抜かれるCNT10は、隣接するCNT10に付着し、次いで、その付着されたCNT10が、粒状体7Aから引き抜かれる。
【0064】
これによって、複数のCNT10が、順次連続して、VACNTs2から引き出され、複数のCNT10が線状に連続的に繋がるカーボンナノチューブ単糸8(以下、CNT単糸8とする。)を形成する。なお、
図3Dでは、便宜上、CNT10が1本ずつ連続的に繋がり、CNT単糸8を形成するように記載されているが、実際には、複数のCNT10からなる束(バンドル)が連続的に繋がり、CNT単糸8を形成している。
【0065】
CNT単糸8は、撚り合わされていない無撚糸であって、撚り角度は、略0°である。CNT単糸8の外径は、例えば、5nm以上、例えば、100nm以下、好ましくは、80nm以下である。
【0066】
そして、CNT単糸8は、
図1の拡大図に示すように、各列2AのCNT10が同時かつ平行に一括して引き出されるために、横方向に複数並んでいる。これによって、複数のCNT単糸8が、略シート形状を有するカーボンナノチューブウェブ9(以下、CNTウェブ9とする。)を構成する。
【0067】
次いで、複数のCNT単糸8(つまり、線状に連続する複数のCNT10)を糸状に束ねる。具体的には、複数のCNT単糸8を、集束部の一例としてのダイ13が有する穴13Aに挿通して糸状に束ねる。つまり、ダイ13は、VACNTs2から引き出される複数のCNT単糸8を糸状に束ねる。
【0068】
ダイ13は、円筒形状を有し、穴13Aを有する。穴13Aの内径は、VACNTs2におけるCNT10の引出位置の幅(つまり、VACNTs2の横方向寸法)に対して、例えば、1/5000以上、好ましくは、1/3000以上、例えば、1/50以下、好ましくは、1/100以下である。なお、複数のVACNTs2からCNT単糸8を引き出す場合、各VACNTs2におけるCNT10の引出位置の幅が合算されてもよい。
【0069】
穴13Aの内径が引出位置の幅に対して上記下限以上であると、複数のCNT単糸8を、安定して穴13Aに挿通することができる。また、穴13Aの内径が引出位置の幅に対して上記上限以下であるので、仮製糸11の断面におけるCNT10の充填率を後述する範囲に調整することができる。
【0070】
なお、
図1では、便宜上、ダイ13が1つ配置されるが、ダイ13の個数は特に制限されない。複数のダイ13が、互いに間隔を空けて配置されてもよい。この場合、複数のCNT単糸8は、複数のダイ13の穴13Aに順次挿通される。また、複数のCNT単糸8を糸状に束ねる方法は、上記の方法に限定されず、例えば、国際公開第2015/011768号に記載されるような、穴のあいたプーリーを通して、複数のCNT単糸8を糸状に束ねてもよい。
【0071】
これによって、複数のCNT単糸8が糸状に束ねられて、仮製糸11を形成する。仮製糸11は、仮製糸11の長さ方向に配向される複数のCNT単糸8を含む。
【0072】
仮製糸11を長さ方向と直交する方向に切断したときの、仮製糸11の断面におけるCNT10の充填率は、例えば、0.01面積%以上、好ましくは、0.3面積%以上、例えば、90面積%以下、好ましくは、75面積%以下、さらに好ましくは、40面積%以下、とりわけ好ましくは、30面積%以下である。なお、充填率は、例えば、以下のように計算できる。また、充填率の計算の説明において、CNTは、好ましくは、多層CNTであり、仮製糸11およびCNT撚糸19(後述)を合わせて、CNT糸とする。
【0073】
まず、下記式(1)に示すように、CNT1本あたりの質量を算出する。
【式1】
【0074】
【0075】
(式(1)中、doutは、CNT1本あたりの外径を示す。dinは、CNT1本あたりの内径を示す。hは、CNT1本あたりの平均長さを示す。ρgrapは、グラファイトの密度を示し、2.25g/cm3である(出典:「理科年表 2001(文部省国立天文台編 平成13年)の第445頁)。)
CNT1本あたりの外径および内径は、SEM画像またはレーザ寸法計により測定できる。CNT1本あたりの平均長さは、基板上のVACNTs2の膜厚を測定することにより求められる。
【0076】
次いで、下記式(2)に示すように、CNT糸におけるCNT1本の平均長さあたり(以下、単位あたりとする。)のCNTの本数を算出する。
【式2】
【0077】
【0078】
(式(2)中、NCNTは、CNT糸における単位あたりのCNTの本数を示す。Wyarnは、CNT糸の単位あたりの質量を示す。WCNTは、CNT1本の質量を示す。)
仮製糸11の断面におけるCNTの充填率を算出する場合、NCNTは、仮製糸11における単位あたりのCNTの本数を示し、Wyarnは、仮製糸11の単位あたりの質量を示す。また、CNT撚糸19の断面におけるCNTの充填率を算出する場合、NCNTは、CNT撚糸19における単位あたりのCNTの本数を示し、Wyarnは、CNT撚糸19の単位あたりの質量を示す。
【0079】
次いで、下記式(3)に示すように、CNT糸(仮製糸11またはCNT撚糸19)の断面におけるCNTの充填率を算出する。
【式3】
【0080】
【0081】
(式(3)中、SCNTは、CNT1本あたりの断面積を示す。Syarnは、CNT糸の断面積を示す。NCNTは、式(2)におけるNCNTと同義である。)
CNT1本あたりの断面積(SCNT)は、下記式(4)により算出される。
【式4】
【0082】
【0083】
(式(4)中、doutは、式(1)におけるdoutと同義である。)
また、CNT糸の断面積(Syarn)は、下記式(5)により算出される。
【式5】
【0084】
【0085】
(式(5)中、dyarnは、CNT糸の外径を示す。)
仮製糸11の断面におけるCNTの充填率を算出する場合、Syarnは、仮製糸11を長さ方向と直交する方向に切断したときの断面積を示し、CNT撚糸19の断面におけるCNTの充填率を算出する場合、Syarnは、CNT撚糸19を長さ方向と直交する方向に切断したときの断面積を示す。
【0086】
仮製糸11の断面におけるCNT10の充填率が上記下限以上であると、仮製糸11を安定して形成することができる。仮製糸11の断面におけるCNT10の充填率が上記上限以下であると、複数のCNT単糸8を束ねるときに、仮製糸11が破断することを抑制できる。とりわけ、仮製糸11の断面におけるCNT10の充填率が40面積%以下であると、後述する仮製糸11に撚りをかける工程において、仮製糸11に安定して撚りをかけることができ、後述するカーボンナノチューブ撚糸19(以下、CNT撚糸19とする。)の引張強度の向上を図ることができる。
【0087】
また、仮製糸11の撚り角度は、例えば、0°以上10°以下、好ましくは、5°以下である。つまり、仮製糸11は、撚り角度が0°である無撚糸であってもよく、撚り角度が10°以下である撚糸であってもよい。仮製糸11を撚糸にする場合には、上記したダイ13をダイ13の軸線を中心として回転させて、仮製糸11に撚りをかける。
【0088】
仮製糸11の撚り角度が上記範囲であると、後述する仮製糸11に撚りをかける工程において、仮製糸11により一層安定して撚りをかけることができる。
【0089】
次いで、糸状に束ねた仮製糸11を第1巻取体12に巻き取る。
【0090】
第1巻取体12は、仮製糸11を巻き取り可能である。第1巻取体12は、円柱形状を有する。第1巻取体12は、第1巻取体12の軸線を中心として回転可能である。第1巻取体12の外径は、特に制限されないが、例えば、1mm以上300mm以下であり、好ましくは、10mm以上100mm以下である。第1巻取体12の軸線方向の寸法は、特に制限されないが、例えば、10mm以上100mm以下である。そして、第1巻取体12は、図示しない外部の駆動源から駆動力が入力されて、第1巻取体12の軸線を中心として回転駆動することにより、第1巻取体12の周面に仮製糸11を巻き取る。
【0091】
これによって、仮製糸11が移動方向の下流に向かって引っ張られ、それに伴なって、VACNTs2から複数のCNT単糸8が連続して引き出され、ダイ13に挿通された後、仮製糸11として第1巻取体12に連続して巻き取られる。
【0092】
このとき、仮製糸11の移動速度は、例えば、1m/min以上、好ましくは、50m/min以上、さらに好ましくは、100m/min以上、例えば、300m/min以下である。
【0093】
次いで、
図2に示すように、巻き取った仮製糸11を第1巻取体12から繰り出しながら、仮製糸11に撚りをかける。
【0094】
具体的には、まず、仮製糸11を巻き取った第1巻取体12を、撚掛部25に取り付ける。撚掛部25は、支持部15と、回転軸16とを備える。
【0095】
支持部15は、略コ字状を有している。支持部15は、2つの側壁15Aと、連結壁15Bとを有する。2つの側壁15Aは、それらの間に第1巻取体12を取付可能であり、第1巻取体12の軸線方向に互いに間隔を空けて位置する。第1巻取体12は、2つの側壁15Aに支持された状態において、図示しない外部の駆動源から駆動力が入力されない。2つの側壁15Aは、第1巻取体12を従動回転可能に支持する。連結壁15Bは、第1巻取体12に対して間隔を空けて位置し、2つの側壁15Aの端部を連結する。
【0096】
回転軸16は、連結壁15Bに対して、第1巻取体12の反対側に位置する。回転軸16の一端部は、連結壁15Bの中央に固定されている。また、回転軸16は、図示しない外部の駆動源から駆動力が入力されて、回転軸16の軸線を中心として回転する。これによって、支持部15は、回転軸16の軸線を中心として回転駆動可能である。なお、回転軸16の軸線は、後述する仮製糸11の繰出方向に沿う。
【0097】
次いで、第1巻取体12から繰り出した仮製糸11を、第2巻取体14に架け渡す。
【0098】
第2巻取体14は、第1巻取体12から繰り出された仮製糸11を、回転駆動により巻き取り可能である。第2巻取体14は、円柱形状を有する。第2巻取体14は、第2巻取体14の軸線を中心として回転可能である。第2巻取体14の外径は、特に制限されないが、例えば、1mm以上300mm以下であり、好ましくは、10mm以上100mm以下である。第2巻取体14の軸線方向の寸法は、特に制限されないが、例えば、1mm以上300mm以下である。
【0099】
そして、第2巻取体14に図示しない外部の駆動源から駆動力を入力するとともに、回転軸16に図示しない外部の駆動源から駆動力を入力する。すると、第2巻取体14が、第2巻取体14の軸線を中心として回転駆動するとともに、支持部15が、回転軸16の軸線を中心として回転駆動する。
【0100】
このとき、仮製糸11は、第2巻取体14の回転により引っ張られて、第1巻取体12が従動回転して連続的に繰り出される。そして、支持部15が仮製糸11の繰出方向に沿う軸線(回転軸16の軸線)を中心として回転することにより、第1巻取体12が、支持部15とともに繰出方向に沿う軸線を中心として回転し、仮製糸11に撚りがかけられる。その後、第1巻取体12から繰り出された仮製糸11に撚りがかけられたCNT撚糸19を、第2巻取体14が回転して巻き取る。
【0101】
つまり、仮製糸11を第1巻取体12から繰り出しながら、第1巻取体12を仮製糸11の繰出方向に沿う軸線を中心として回転させて、仮製糸11に撚りをかけた後、第2巻取体14に巻き取る。
【0102】
なお、
図2では、第1巻取体12が、支持部15とともに繰出方向に沿う軸線を中心として回転し、仮製糸11に撚りをかけているが、これに限定されない。例えば、支持部が、第2巻取体14を回転可能に支持し、第2巻取体14が、支持部とともに繰出方向に沿う軸線を中心として回転し、仮製糸11に撚りをかけてもよい。
【0103】
他にも、第1巻取体12と第2巻取体14との間に中間撚糸部を配置して、第1巻取体12から仮製糸11を繰り出しながら、第1巻取体12と第2巻取体14との間において、仮製糸11に撚りをかける中間撚糸部を通した後に、第2巻取体14に巻き取ることも可能である。例えば、国際公開第2015/011768号に記載されるような、糸製造部による圧縮空気(エアー)の旋回流によって仮製糸11に撚りをかけた後、第2巻取体14に巻き取ってもよい。
【0104】
以上によって、仮製糸11が備える複数のCNT単糸8が互いに撚り合わされて、CNT撚糸19(CNTワイヤ)が製造される。
【0105】
CNT撚糸19の撚り数は、例えば、500T/m以上、好ましくは、1000T/m以上、さらに好ましくは、3000T/m以上、例えば、7000T/m以下、好ましくは、5000T/m以下である。
【0106】
また、CNT撚糸19を長さ方向と直交する方向に切断したときの、CNT撚糸19の断面におけるCNT10の充填率は、仮製糸11の断面におけるCNT10の充填率よりも大きい。CNT撚糸19の断面におけるCNT10の充填率は、例えば、30面積%以上、好ましくは、40面積%を超過し、さらに好ましくは、50面積%以上、例えば、90面積%以下、好ましくは、85面積%以下である。なお、CNT撚糸19の断面におけるCNT10の充填率は、上記の方法により算出できる。
【0107】
CNT撚糸19の断面におけるCNT10の充填率が上記範囲であれば、CNT撚糸19の引張強度の向上を安定して図ることができる。
【0108】
また、CNT撚糸19の撚り角度は、例えば、1°以上、好ましくは、5°以上、さらに好ましくは、10°以上、例えば、60°以下、好ましくは、50°以下、さらに好ましくは、30°以下である。
【0109】
CNT撚糸19の撚り角度が上記範囲であるので、CNT撚糸19の引張強度の向上をより一層安定して図ることができる。
【0110】
CNT撚糸19の引張強度は、例えば、200MPa以上、好ましくは、600MPa以上、さらに好ましくは、800MPa以上、例えば、2000MPa以下、好ましくは、1200MPa以下である。なお、CNT撚糸の引張強度は、CNT撚糸の一端を固定し、CNT撚糸の他端をフォースゲージへ固定して、0.2mm/secで引き上げて断裂した負荷を破断強度とし、その破断強度をCNT撚糸の断面積で除して算出できる。
【0111】
上記したCNT撚糸19の製造方法は、例えば、カーボンナノチューブ撚糸の製造装置の一例としてのCNT撚糸製造装置22により実施される。CNT撚糸製造装置22は、
図1に示す仮製糸製造ユニット20と、
図2に示す撚糸製造ユニット21とを備える。なお、CNT撚糸製造装置22の説明において、上記した部材と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0112】
図1に示すように、仮製糸製造ユニット20は、基板1上に配置されるVACNTs2と、ダイ13と、第1巻取体12とを備える。
図2に示すように、撚糸製造ユニット21は、第2巻取体14と、撚掛部25とを備える。
【0113】
このようなCNT撚糸製造装置22では、上記と同様にして、VACNTs2から複数のCNT単糸8を引き出して、複数のCNT単糸8を、ダイ13が有する穴13Aに挿通して糸状に束ねる。その後、複数のCNT単糸8が糸状に束ねられた仮製糸11を第1巻取体12に架け渡して、第1巻取体12を回転駆動させる。
【0114】
これによって、仮製糸11が第1巻取体12の回転により引っ張られて、複数のCNT単糸8がVACNTs2から連続して引き出され、ダイ13に挿通された後、仮製糸11として第1巻取体12に連続して巻き取られる。以上によって、仮製糸製造ユニット20が、第1巻取体12に巻き付けられた仮製糸11を製造する。
【0115】
その後、仮製糸製造ユニット20から、仮製糸11が巻き付けられた第1巻取体12を取り外す。そして、第1巻取体12を支持部15に取り付けた後、第1巻取体12から仮製糸11を繰り出して、第2巻取体14に架け渡す。
【0116】
次いで、第2巻取体14を、第2巻取体14の軸線を中心として回転駆動させるとともに、支持部15を、回転軸16の軸線を中心として回転駆動させる。
【0117】
これによって、仮製糸11が、第2巻取体14の回転により引っ張られて、第1巻取体12から連続的に繰り出されるとともに、支持部15の回転により撚りかけられる。その後、第2巻取体14が、回転してCNT撚糸19を巻き取る。
【0118】
以上によって、CNT撚糸19が、CNT撚糸製造装置22により製造される。
【0119】
このようなCNT撚糸19は、例えば、炭素繊維が用いられる織物(シート)、電気機器(例えば、モータ、トランス、センサーなど)の導電線材など各種産業製品に利用される。
【0120】
(2)作用効果
図1および
図2に示すように、上記したCNT撚糸19の製造方法では、VACNTs2から複数のCNT10を線状に連続するように引き出し、糸状に束ね、糸状に束ねた仮製糸11を第1巻取体12に一旦巻き取る。その後、仮製糸11を第1巻取体12から繰り出しながら、第1巻取体12を仮製糸11の繰出方向に沿う軸線を中心として回転させて、仮製糸11に撚りをかける。
【0121】
そのため、第1巻取体12を繰出方向に沿う軸線を中心として安定して回転させることができ、仮製糸11に円滑に撚りをかけることができる。その結果、CNT撚糸19を工業的に効率よく製造することができる。また、従来の製造方法に比べて、CNT撚糸19が断線する確率を減少させることが可能となる。
【0122】
また、複数のCNT単糸8は、仮製糸11の断面におけるCNT10の充填率が上記下限以上となるように束ねられる。そのため、仮製糸11を安定して形成することができる。また、仮製糸11の断面におけるCNT10の充填率は、上記上限以下である。そのため、複数のCNT単糸8を糸状に束ねるときに、仮製糸11が破断することを抑制できる。さらに、仮製糸11の断面におけるCNT10の充填率が40面積%以下であると、第1巻取体12から繰り出された仮製糸11に安定して撚りをかけることができ、CNT撚糸19の引張強度の向上を図ることができる。
【0123】
また、CNT撚糸19の断面におけるCNT10の充填率は、上記範囲である。そのため、CNT撚糸19の引張強度の向上を安定して図ることができる。
【0124】
また、仮製糸11の撚り角度は、上記範囲である。そのため、第1巻取体12から繰り出された仮製糸11により一層安定して撚りをかけることができる。
【0125】
また、CNT撚糸19の撚り角度は、上記範囲である。そのため、CNT撚糸19の引張強度の向上をより一層安定して図ることができる。
【0126】
また、複数のCNT単糸8は、ダイ13の穴13Aに挿通されて糸状に束ねられる。そのため、簡易な方法でありながら、複数のCNT単糸8を安定して糸状に束ねることができる。
【0127】
また、穴13Aの内径は、VACNTs2におけるCNT10の引出位置の幅に対して上記下限以上である。そのため、複数のCNT単糸8を、安定して穴13Aに挿通することができる。また、穴13Aの内径が引出位置の幅に対して上記上限以下である。そのため、仮製糸11の断面におけるCNT10の充填率を上記範囲に調整することができる。
【0128】
また、第1巻取体12から繰り出された仮製糸11に撚りがかけられたCNT撚糸19を、第2巻取体14が回転して巻き取る。そのため、第1巻取体12を第2巻取体14の回転に従動させることにより、仮製糸11を連続的に繰り出すことができる。その結果、第1巻取体12を繰出方向に沿う軸線を中心として回転駆動させるとともに、第2巻取体14を回転駆動させることにより、CNT撚糸19を連続して製造することができる。
【0129】
また、上記したCNT撚糸19の製造方法は、CNT撚糸製造装置22により実施される。具体的には、ダイ13が、VACNTs2から引き出される複数のCNT単糸8を糸状に束ねた後、第1巻取体12が、仮製糸11を一旦巻き取る。そして、第2巻取体14が、回転駆動することにより、第1巻取体12を従動回転させて仮製糸11を連続的に繰り出しながら、第1巻取体12を支持する支持部15が、繰出方向に沿う軸線を中心として回転駆動して仮製糸11に撚りをかける。その後、第2巻取体14が、撚りをかけられたCNT撚糸19を巻き取る。
【0130】
第2巻取体14が、仮製糸11に撚りをかけながらCNT撚糸19を巻き取るために、異なる2つの軸線について回転駆動する場合と比較して、CNT撚糸製造装置22の構成の簡略化を図ることができ、かつ、CNT撚糸19を工業的に効率よく製造できる。
【0131】
なお、撚糸製造ユニット21は、一般的に用いられる撚糸機も利用することができる。
【0132】
2.第2実施形態
次に、
図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態では、上記した第1実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0133】
本発明のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法の第2実施形態は、
図4に示すように、VACNTs2から引き出された複数のCNT単糸8に揮発性の液体を供給する工程をさらに含む。
【0134】
揮発性の液体として、例えば、水、有機溶媒などが挙げられ、好ましくは、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒として、例えば、低級(C1~3)アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、ケトン類(例えば、アセトンなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、アルキルエステル類(例えば、酢酸エチルなど)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなど)、極性非プロトン類(例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなど)などが挙げられる。
【0135】
このような揮発性の液体のなかでは、好ましくは、低級アルコール類、さらに好ましくは、エタノールが挙げられる。このような揮発性の液体は、単独使用または2種類以上併用することができる。また、揮発性の液体には、微粒子を分散でき、また、金属塩および/または樹脂材料を溶解することもできる。
【0136】
揮発性の液体は、仮製糸11の移動方向において、ダイ13の上流側で複数のCNT単糸8(CNTウェブ9)に供給されてもよく、ダイ13の下流側で複数のCNT単糸8(仮製糸11)に供給されてもよく、また、その両方において供給されてもよい。なお、揮発性の液体を仮製糸11に均一に浸透させる観点から、好ましくは、揮発性の液体は、仮製糸11の移動方向において、ダイ13の上流側で複数のCNT単糸8(CNTウェブ9)に供給される。
【0137】
そして、複数のCNT単糸8に揮発性の液体が供給するには、例えば、揮発性の液体を、複数のCNT単糸8に向けて霧状に吹き付ける。このような場合、CNT撚糸製造装置22の仮製糸製造ユニット20は、噴霧部30を備えている。
【0138】
本実施形態では、噴霧部30は、VACNTs2とダイ13との間に位置する複数のCNTウェブ9と向かい合うように配置される。また、仮想線で示すように、噴霧部30は、ダイ13と第1巻取体12との間に位置する仮製糸11と向かい合うように配置されてもよい。噴霧部30は、上記した揮発性の液体をスプレー可能である。
【0139】
そして、揮発性の液体が供給された複数のCNT単糸8は、必要に応じて乾燥された後、仮製糸11として第1巻取体12に巻き取られる。
【0140】
なお、揮発性の液体を複数のCNT単糸8に供給する方法は、上記に限定されず、例えば、複数のCNT単糸8を揮発性の液体に浸漬させてもよい。
【0141】
このような第2実施形態では、揮発性の液体が気化することにより、各CNT単糸8において複数のCNT10が互いに凝集するとともに、仮製糸11において複数のCNT単糸8が互いに凝集する。そのため、仮製糸11の断面におけるCNT10の充填率の向上を図ることができる。
【0142】
また、揮発性の液体に、微粒子が分散されるか、金属塩および/または樹脂材料が溶解されている場合、仮製糸11に他の材料を複合化することができ、ひいては、CNT撚糸19に他の材料を複合化することができる。
【0143】
このような第2実施形態によっても、上記した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0144】
3.第3実施形態
次に、
図5Aおよび
図5Bを参照して、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態では、上記した第1実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0145】
本発明のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法の第3実施形態は、
図5Aおよび
図5Bに示すように、CNT撚糸19を長さ方向に伸長させる工程をさらに含む。
【0146】
例えば、第2巻取体14から繰り出したCNT撚糸19の両端を把持部材31により把持して、CNT撚糸19を長さ方向に伸長させる。
【0147】
これによって、CNT撚糸19の断面におけるCNT10の充填率の向上を図ることができ、CNT撚糸19の引張強度のさらなる向上を図ることができる。
【0148】
なお、CNT撚糸19を伸長させる方法は、上記に限定されず、例えば、撚糸製造ユニット21において、仮製糸11に撚りをかけながら伸長させることもできる。
【0149】
このような第3実施形態によっても、上記した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。なお、これら第1実施形態~第3実施形態は、適宜組み合わせることができる。
【実施例】
【0150】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0151】
<製造例1~6>
ステンレス製の基板(ステンレス基板)の表面に二酸化ケイ素膜を積層した後、二酸化ケイ素膜上に、触媒層として鉄を蒸着した。次いで、基板を所定の温度に加熱して、触媒層に原料ガス(アセチレンガス)を供給した。これにより、基板上において、平面視略矩形形状のVACNTsを形成した。
【0152】
次いで、VACNTsから複数のCNT単糸を引き出して、複数のCNT単糸を、仮製糸の充填率が表1の値となるようにダイの穴に挿通して糸状に束ねた。なお、仮製糸の充填率は、VACNTsから複数のCNT単糸を引き出す幅(CNTの量)は同一として、ダイの穴の内径により調整した。その後、第1巻取体を回転駆動させて、複数のCNT単糸が糸状に束ねられた仮製糸を第1巻取体に巻き取った。
【0153】
以上によって、仮製糸を製造した。仮製糸の断面におけるCNTの充填率、仮製糸の撚り角度、および、仮製糸の直径を、表1に示す。さらに、製造例4の仮製糸の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を、
図6に示す。
【0154】
【0155】
<実施例1~5>
製造例1の仮製糸(充填率0.3面積%)を第1巻取体から繰り出して、CNT撚糸の撚り数が表2に示す値となるように、第1巻取体を仮製糸の繰出方向に沿う軸線を中心として回転させて、仮製糸に撚りをかけた。
【0156】
以上によって、CNT撚糸を製造した。CNT撚糸の撚り数、CNT撚糸の撚り角度、CNT撚糸の直径、CNT撚糸の断面におけるCNTの充填率、および、CNT撚糸の引張強度を表2に示す。
【0157】
<実施例6~11>
製造例4の仮製糸(充填率30面積%)を第1巻取体から繰り出して、CNT撚糸の撚り数が表3に示す値となるように、第1巻取体を仮製糸の繰出方向に沿う軸線を中心として回転させて、仮製糸に撚りをかけた。
【0158】
以上によって、CNT撚糸を製造した。CNT撚糸の撚り数、CNT撚糸の撚り角度、CNT撚糸の直径、CNT撚糸の断面におけるCNTの充填率、および、CNT撚糸の引張強度を表3に示す。また、実施例9のCNT撚糸の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を、
図7に示す。
【0159】
<実施例12~16>
製造例6の仮製糸(充填率75面積%)を第1巻取体から繰り出して、CNT撚糸の撚り数が表4に示す値となるように、第1巻取体を仮製糸の繰出方向に沿う軸線を中心として回転させて、仮製糸に撚りをかけた。
【0160】
以上によって、CNT撚糸を製造した。CNT撚糸の撚り数、および、CNT撚糸の引張強度を、表4に示す。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
<考察>
実施例1~16におけるCNT撚糸の撚り数とCNT撚糸の引張強度との相関を
図8に示す。
図8に示すように、仮製糸の充填率が0.3面積%である場合、撚り数が5000T/mのときに(実施例4)、CNT撚糸の引張強度が最大となり、仮製糸の充填率が30面積%である場合、撚り数が4000T/mのときに(実施例10)、CNT撚糸の引張強度が最大となり、仮製糸の充填率が75面積%である場合、撚り数が1000T/mのときに(実施例13)、CNT撚糸の引張強度が最大となることが確認された。つまり、仮製糸の充填率毎に、CNT撚糸の引張強度が最大となる撚り数が異なり、CNT撚糸の最大引張強度が異なることが確認された。
【0165】
<実施例17~19>
表5に示す製造例の仮製糸毎に、CNT撚糸の撚り数が異なる複数のCNT撚糸を製造して、各製造例の仮製糸を用いたときのCNT撚糸の最大引張強度を確認した。その結果を表5に示す。
【0166】
<比較例1>
従来例として、製造例1と同様にして調製したVACNTsから、複数のCNT単糸を引き出すとともに基板を回転させて、複数のCNT単糸を巻き取りながら撚りをかけて、CNT撚糸を製造した。CNT撚糸の最大引張強度を表5に示す。
【0167】
【0168】
<考察>
実施例4、10、13、17~19および比較例1における、仮製糸の充填率とCNT撚糸の引張強度との相関を
図9に示す。なお、
図9において、比較例1は、便宜上、仮製糸の充填率を0面積%として記載した。
図9に示すように、仮製糸の充填率が30面積%以下であると、比較的高いCNT撚糸の引張強度を確保できる一方、仮製糸の充填率が50面積%以上であると、CNT撚糸の引張強度が低下することが確認された。
【0169】
また、比較例では基板を回転させるので、VACNTsから引き出されたウェブが三角形状(扇形状)に撚られ、ウェブの三角形の角度が直接撚り角度へ影響するため、撚りの間隔がCNT撚糸の長さ方向に広がり易くなる。対して、実施例では、仮製糸を撚るときは回転軸(第1巻取体)上で撚られるため、撚りがCNT撚糸の間隔が長さ方向で狭くなり引張強度が強くなると考えられる。比較例の製造方法では、断線が頻発して長尺のCNT撚糸が作れないなどの問題もあった。
【符号の説明】
【0170】
1 基板
2 VACNTs
10 CNT
11 仮製糸
12 第1巻取体
13 ダイ
13A 穴
14 第2巻取体
15 支持部
19 CNT撚糸
20 仮製糸製造ユニット
21 撚糸製造ユニット
22 CNT撚糸製造装置