(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ワイヤソー及びワイヤソーのワークの搬入出方法
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20231024BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20231024BHJP
B28D 7/04 20060101ALI20231024BHJP
B28D 1/08 20060101ALI20231024BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231024BHJP
B28D 5/04 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
B24B27/06 D
B24B41/06 A
B28D7/04
B28D1/08
H01L21/304 611W
B28D5/04 C
(21)【出願番号】P 2019172353
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】河津 知之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 克彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正明
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-128736(JP,A)
【文献】特開2003-201008(JP,A)
【文献】特許第3530483(JP,B2)
【文献】特開昭63-222808(JP,A)
【文献】国際公開第2008/059313(WO,A1)
【文献】特開2009-196851(JP,A)
【文献】特開2000-218499(JP,A)
【文献】特開平11-188600(JP,A)
【文献】特開平03-149153(JP,A)
【文献】特開平11-291152(JP,A)
【文献】特開平11-291154(JP,A)
【文献】国際公開第2012/031900(WO,A1)
【文献】特開2007-098528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B24B 41/06
B28D 7/04
B28D 1/08
H01L 21/304
B28D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤによってワークを切断するワイヤソーにおいて、
前記ワークを支持するスライダを含み、
前記スライダに載置された前記ワークを加工室に搬入及び前記加工室から搬出させる移送装置と、
前記加工室に配置され、
前記スライダから離間された前記ワークを加工する加工装置と、
前記加工室に配置され、
前記加工室に搬入された前記ワークをクランプするクランプ装置と、
前記ワークを前記加工室に搬入した前記移送装置を前記加工室から退避させた後、前記加工室内に搬入された前記ワークをクランプした前記クランプ装置を昇降させる昇降装置と、を備え、
前記移送装置は、
上端部に配置された揺動軸を中心として振子動作する
ことによって前記ワークを支持した前記スライダを、前記加工室へ搬入または搬出させるアームを有し、前記アームによって前記ワークを
前記加工室に搬入及び搬出し、
前記昇降装置は、前記加工室に搬入された前記ワークをクランプした前記クランプ装置を昇降させることによって、前記ワークを前記加工装置で加工する
ことを特徴とするワイヤソー。
【請求項2】
前記移送装置は、前記アームと、
前記アームを振子動作させる駆動装置と、
前記アームの振子動作を直線動作に変換させる変換部材と、
前記変換部材に連結されて進退する前記スライダと、
前記スライダの移動をガイドするガイドレールと、
前記スライダに支持されて前記ワークを進退させるワーク治具と、を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤソー。
【請求項3】
前記ワークは、前記ワーク治具に保持され、
前記ガイドレールは、互いに平行に配置された一対のレール状部材から成り、
前記スライダは、前記ワーク治具
の両側にそれぞれ突設された掛止部が支持される支持部を有し、
前記ワーク治具は、前記ワークを前記移送装置で搬送する際に、前記掛止部が、一対の前記支持部に支持され、
前記ワークを前記加工装置で加工する際に、前記ワーク治具が、前記移送装置によって加工室に搬入されて、前記クランプ装置でクランプされた状態で、前記昇降装置で上昇された後、前記移送装置によって前記スライダを前記加工室から前記加工室外に搬出させてから前記加工装置がある位置に下降されることで、前記ワークが前記加工装置で加工される
ことを特徴とする請求項
2に記載のワイヤソー。
【請求項4】
前記スライダは、ロード側に配設されるロード用のスライダと、アンロード側に配設されるアンロード用のスライダを有し、
前記移送装置は、ロード側に配設されるロード用移送装置と、アンロード側に配設されるアンロード用移送装置を有し、
前記ロード用移送装置は、前記ロード用のスライダをロード位置から前記加工室へ搬入し、前記加工室からロード位置に搬出させ、
前記アンロード用移送装置は、前記アンロード用のスライダをアンロード位置から前記加工室へ搬入し、前記加工室からアンロード側へ搬出させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤソー。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載のワイヤソーを使用してワークを搬入及び搬出するワイヤソーのワークの搬入出方法であって、
加工完了のワークをアンロード用のスライダにてアンロード位置に搬出する搬出工程と、
ロード位置の未加工のワーク
をロード用のスライダにて加工室内に搬入する搬入工程と、
前記加工室内に搬入された前記未加工のワークをクランプ装置によってクランプするクランプ工程と、
前記加工室に前記未加工のワークを搬入した前記ロード用のスライダをロード位置に退避させる退避工程と、
前記未加工のワークを昇降装置によって昇降させることによって加工装置で加工する加工工程と、
前記未加工のワークを加工中に、前記搬出工程で搬出された前記加工完了のワークを前記アンロード用のスライダから取り外すと共に、未加工のワークを前記ロード用のスライダに載置する取外載置工程と、
を
この順序で実行する
ことを特徴とするワイヤソーのワークの搬入出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤソー及びワイヤソーのワークの搬入出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体材料や磁性材料などのワークをワイヤによって切断するワイヤソーは、ワーク送りが、通常、垂直方向にしか駆動しない構造になっている。このため、ワイヤソーでは、ワイヤソー外にワークを出し入れする際に、例えば、特許文献1に記載されているように、ワーク受け渡し装置等の付帯装置によって行われている。
【0003】
特許文献1に記載のワイヤソーシステムでは、ワークを搬送する際に、ワイヤソーとは別体に形成されたワーク運搬用台車と、ワーク受け渡し装置と、を作業員によって手動的に移動させてワークの搬送を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のワイヤソーシステムでは、ワーク受け渡し装置でワークの交換を行っている際、ワイヤソーを稼働させることができない。このため、ワーク受け渡し装置でワークを交換している場合は、ワイヤソーを停止して中断している時間が非加工時間となるので、生産性が低下するという問題点があった。
【0006】
本発明は、前記した問題点を解決して、生産性を向上させることができるワイヤソー及びワイヤソーのワークの搬入出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、ワイヤによってワークを切断するワイヤソーにおいて、前記ワークを支持するスライダを含み、前記スライダに載置された前記ワークを加工室に搬入及び前記加工室から搬出させる移送装置と、前記加工室に配置され、前記スライダから離間された前記ワークを加工する加工装置と、前記加工室に配置され、前記加工室に搬入された前記ワークをクランプするクランプ装置と、前記ワークを前記加工室に搬入した前記移送装置を前記加工室から退避させた後、前記加工室内に搬入された前記ワークをクランプした前記クランプ装置を昇降させる昇降装置と、を備え、前記移送装置は、上端部に配置された揺動軸を中心として振子動作することによって前記ワークを支持した前記スライダを、前記加工室へ搬入または搬出させるアームを有し、前記アームによって前記ワークを前記加工室に搬入及び搬出し、前記昇降装置は、前記加工室に搬入された前記ワークをクランプした前記クランプ装置を昇降させることによって、前記ワークを前記加工装置で加工することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載のワイヤソーを使用してワークを搬入及び搬出するワイヤソーのワークの搬入出方法であって、加工完了のワークをアンロード用のスライダにてアンロード位置に搬出する搬出工程と、ロード位置の未加工のワークをロード用のスライダにて加工室内に搬入する搬入工程と、前記加工室内に搬入された前記未加工のワークをクランプ装置によってクランプするクランプ工程と、前記加工室に前記未加工のワークを搬入した前記ロード用のスライダをロード位置に退避させる退避工程と、前記未加工のワークを昇降装置によって昇降させることによって加工装置で加工する加工工程と、前記未加工のワークを加工中に、前記搬出工程で搬出された前記加工完了のワークを前記アンロード用のスライダから取り外すと共に、未加工のワークを前記ロード用のスライダに載置する取外載置工程と、をこの順序で実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、生産性を向上させることができるワイヤソー及びワイヤソーのワークの搬入出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るワイヤソーを示す概略側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るワイヤソーを示す概略正面図である。
【
図4】ワークに取り付けられたワーク治具と、ワーク治具を支持するスライダとの配置状態を示す要部拡大斜視図である。
【
図7】未加工のワークをロード位置の搬入装置のスライダに支持させ、加工装置で加工したワークを昇降装置で上昇させたときの状態を示す説明図である。
【
図8】搬出装置を加工室に移動させたときの状態を示す説明図である。
【
図9】加工後のワークを搬出装置で搬出したときの状態を示す説明図である。
【
図10】未加工のワークを搬入装置によって加工室に搬入したときの状態を示す説明図である。
【
図11】加工室に搬入装置で搬入されたワークをクランプ装置でクランプして昇降装置で上昇させたときの状態を示す説明図である。
【
図12】ワークを昇降装置で下降させて加工しているときの状態を示す説明図である。
【
図13】ワーク加工中に加工後のワークを搬出装置から取外し、未加工のワークを搬入装置に載置したときの状態を示す説明図である。
【
図14】加工後のワークを搬出装置で搬出する準備と、未加工のワークを搬入装置で搬入する準備をしているときの状態を示す説明図である。
【
図15】加工後のワークを搬出装置で搬出し、未加工のワークを搬入装置で搬入したときの状態を示す説明図である。
【
図16】本発明の実施形態に係るワイヤソーのワークの搬入出方法を示す工程図である。
【
図17】本発明の実施形態に係るワイヤソーの変形例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係るワイヤソー1及びワイヤソー1のワークWの搬入出方法を
図1~
図16を参照して説明する。
なお、
図1に示す搬入装置4aがある位置をロード位置Lo(ロード側)、搬出装置4bがある位置をアンロード位置Un(アンロード側)として説明する。また、
図1に示す搬入装置4aがある方向を前(F)、搬出装置4bがある方向を後(B)、鉛直上方側を上(U)、鉛直下方側を下(D)、
図2に示すシリンダ43がある方向を左(L)、シリンダ43がある左(L)側と対向する方向を右(R)として適宜説明する。
【0012】
<ワーク>
図1に示すように、ワークWは、半導体材料、磁性材料、セラミック等の硬脆材料から成る。ワークWは、ワイヤソー1に配置された加工装置5のワイヤ53に押し当てることで切削して切断される。なお、ワイヤソー1は、
図1に示すように、略前後対称に形成されているため、適宜その一方を説明して他方の説明を省略する。
【0013】
<ワイヤソー>
図1に示すワイヤソー1は、加工装置5のワイヤ53によってワークWを切断する切断装置である。ワイヤソー1は、基台13と、コラム14と、本体フレーム15と、ガイドレール支持部16と、クランプ装置2と、昇降装置3と、移送装置4と、加工装置5と、を備えて構成されている。
【0014】
<クランプ装置>
クランプ装置2は、加工装置5でワークWを加工する際に、加工室Rに搬入された未加工のワークWをクランプするための保持機構である。つまり、クランプ装置2は、加工室Rに搬入された未加工のワークWをクランプしてから、そのワークWを加工装置5のワイヤ53に押し当てて加工して、加工完了後のワークWを加工室Rの搬入位置にアンクランプさせるまで、ワークWを保持する。
図2に示すように、クランプ装置2は、複数のクランプ部材26と、複数(例えば、4つ)のクランプ部材26を保持したワーク保持部材25と、備えている。
【0015】
図2または
図6に示すように、ワークWの上面には、ガラスプレート21、金属プレート22を介在して金属製のワーク治具23が着脱可能に装着されている。ワーク治具23の上面には、複数の被クランプ部材24が設けられている。
【0016】
ワーク治具23は、ワークWを上側から保持するための治具である。ワーク治具23は、
図4に示すように、ワイヤソー1の左右前後に配置されたスライダ48の支持部48cに支持される掛止部23aを左右両端部に有する略板状の部材から成る。このため、ワーク治具23は、スライダ48が前後方向に移動することによって、ロード位置Loと加工室Rとの間と、アンロード位置Unと加工室Rとの間と、をそれぞれ往復移動可能に配置されている。なお、ワーク治具23については、後で、さらに詳述する。
【0017】
また、ワーク治具23が取り付けられたワークW(
図9参照)は、
図9~
図12に示すように、移送装置4によって加工室Rに搬入されて(
図10参照)、クランプ装置2でクランプされた状態で、昇降装置3で上昇された後、移送装置4によってスライダ48を加工室Rから加工室R外に搬出させることによって(
図11参照)、加工装置5がある加工位置に下降させて加工装置5での加工が可能となる(
図12参照)。つまり、ワークWは、加工室Rにおいて、クランプ装置2で保持して昇降装置3によって上昇させた後、スライダ48を加工室Rからロード位置Lo側、または、アンロード位置Unに搬出させることで、昇降装置3による加工装置5への下降が可能となる(
図1参照)。
【0018】
図1または
図2に示すように、ワーク保持部材25は、加工用ローラ51,52間に掛装されたワイヤ53の上方において、昇降装置3の下端にボルト締めされて、昇降装置3によって昇降可能に配置されている。ワーク保持部材25の下面には、被クランプ部材24に係合及び離間可能な複数のクランプ部材26が取り付けられている。
【0019】
<昇降装置>
昇降装置3は、下端部にワーク治具23等を介在してワークWを保持するクランプ装置2を備えて、ワークWを昇降させるための装置である。昇降装置3は、ワークWをスライダ48上から上昇させたり、ワークWを加工装置5のワイヤ53に押し付けて加工したり、加工完了後のワークWを下降させてスライダ48上に載置させたりする。
昇降装置3は、例えば、クランプ装置2を上下させるボールねじ等の移動機構(図示省略)と、その移動機構を作動させるサーボモータ等の移動用駆動モータ(図示省略)等と、を備えて構成されている。
【0020】
<移送装置>
図1または
図4に示すように、移送装置4は、ワークWを支持したワークロード用のスライダ48をロード位置Loから加工室Rに搬入したり、加工装置5によって加工された加工完了後のワークWを支持したワークアンロード用のスライダ48を加工室Rからアンロード位置Unに搬出させたりするための搬送装置である。換言すると、移送装置4は、
図1に示すように、ロード位置Lo側の未加工のワークWに取り付けられたワーク治具23をワークロード用のスライダ48で支持して、
図10に示すように、加工室Rに搬入させる。加工室Rに搬入後、
図11に示すように、空状態のワークロード用のスライダ48をロード位置Loに退避させる。また、移送装置4は、
図8に示すように、アンロード位置Un側の空状態のワークアンロード用のスライダ48を加工室Rに搬入させる。その後、移送装置4は、
図9に示すように、加工完了後のワークWのワーク治具23を支持したワークアンロード用のスライダ48を加工室Rからアンロード位置Unに搬出させる。
【0021】
図1に示すように、移送装置4は、ロード位置Lo側に配置されたワークWを加工室Rに搬入する搬入装置4a(ロード用移送装置)と、ワークWを加工室Rから搬出させるアンロード位置Un側に配置された搬出装置4b(アンロード用移送装置)と、で構成されている。搬入装置4aと搬出装置4bとは、コラム14の上方の前後に設置された本体フレーム15の外側上端部に、前後対称な状態に配置されている。搬入装置4a及び搬出装置4bは、駆動装置40と、回動部材45と、アーム46と、変換部材47と、スライダ48と、ガイドレール49と、をそれぞれ前後一対に配置して構成されている。
【0022】
図1に示すように、駆動装置40は、回動部材45及びアーム46を揺動させると共に、変換部材47及びスライダ48を往復直線移動させるための駆動源である。駆動装置40は、例えば、油圧または空気圧の流体圧を生成する圧力源(図示省略)と、流体圧が供給されるシリンダ43と、シリンダ43に供給された流体圧で作動するピストンロッド44と、を備えて成る。駆動装置40は、例えば、前後の本体フレーム15の外側上端部にそれぞれに配置されている。
【0023】
シリンダ43は、前後の本体フレーム15の外側上端部に、上下方向に向けて固定されている。ピストンロッド44は、そのシリンダ43から上方向に向けて昇降するように配置されている。ピストンロッド44の上端には、回動部材連結部44aが設けられている。回動部材連結部44aには、回動部材45の軸支部45aが回動自在に連結されている。回動部材連結部44aは、水平方向に長い長孔から成り、軸支部45aを水平方向に移動可能に軸支している。
【0024】
<回動部材>
回動部材45は、一端に軸支部45aを有し、他端にアーム46に連結したアーム連結部45bを有している。回動部材45は、軸支部45aがピストンロッド44によって上下動することで、アーム46の揺動軸46aを中心として前後方向に揺動する。
【0025】
<アーム>
つまり、アーム46は、揺動軸46aを中心として振子のように揺動する。アーム46は、振子動作することによって、ワークWを支持したスライダ48を、ロード位置Loから加工室Rへ搬入、または、加工室Rからアンロード位置Unへ搬出させるための部材である。アーム46は、上端部に配置された揺動軸46aと、下端部に配置された連結軸46bと、を有している。
【0026】
図1または
図2に示すように、揺動軸46aは、本体フレーム15の前側寄りの上端部に軸支されて、左右のアーム46を揺動自在に軸支した軸棒から成る。揺動軸46aは、左側に配置されたピストンロッド44の動きを、左右にそれぞれ配置されたアーム46に伝達するための部材の役目を果たす。連結軸46bは、変換部材47の上面に切欠形成された縦溝47aに上下方向に移動自在に係合されている。このため、左右の変換部材47は、左右のアーム46が揺動すると、スライダ48を介在して、ガイドレール49上を前後方向に直線往復移動する。
【0027】
<変換部材>
変換部材47は、アーム46の振子動作を、スライダ48の直線動作に変換させるための部材である。変換部材47は、前記縦溝47aと、前記スライダ48と、を有する厚板状の部材から成る。変換部材47は、ガイドレール49上の前後に配置されたそれぞれのスライダ48の前端及び後端にそれぞれ載設されている。前後一対の変換部材47は、左右にもそれぞれ配置されている(
図4参照)。縦溝47aは、側面視してU字状の切欠溝から成る。
【0028】
<スライダ>
スライダ48は、変換部材47に連結されて、変換部材47が移動することで、ガイドレール49上を、ロード位置Loから加工位置までの間、または、アンロード位置Unから加工位置までの間を前後方向に水平に進退(往復移動)する摺動部材である。スライダ48は、ガイドレール49の上側に設置されて、ガイドレール49に沿って平行に前後方向に延設されている。
図4または
図6に示すように、スライダ48は、変換部材設置部48aと、ストッパ48bと、支持部48cと、摺動部設置部48dと、摺動部48eと、架設部48fと、を有している。スライダ48は、平面視して略I(H)形状の前後一対の部材から成る。
【0029】
変換部材設置部48aは、変換部材47を載設した箇所である。このため、スライダ48と変換部材47とは、一体に前後方向に移動する。このようなことから、スライダ48と変換部材47とは、一体形成してもよい。
【0030】
ストッパ48bは、ワークWを保持したワーク治具23をスライダ48に支持させるときに、ワーク治具23の左右端部の位置を規制して位置決めするための部位である。ストッパ48bは、左右のスライダ48の左右上端部に上方向に突出形成されて、ガイドレール49に沿って前後方向に伸びている。
【0031】
支持部48cは、ワーク治具23の左右両側にそれぞれ突設された掛止部23aが支持(載置)される段差状の部位である。支持部48cは、ガイドレール49に沿って前後方向に延設されている。
摺動部設置部48dは、前後方向に延設された摺動部48e上にスライダ48を固定するための箇所である。摺動部設置部48dは、正面視して略L字状に形成されている。
【0032】
摺動部48eは、ガイドレール49上に前後方向に摺動自在に載置される箇所である。摺動部48eは、スライダ48の下端部に固定された角棒状の部材から成る。
架設部48fは、前後にそれぞれ配置された左右の一対のスライダ48を連結する部位である。架設部48fは、四角柱形状に形成されている。前側の架設部48fは、前側の左右一対のストッパ48bの前端部間に架設されている。また、後側の架設部48fは、後側の左右一対のストッパ48bの後端部間に架設されている。
【0033】
<ガイドレール>
図4または
図6に示すように、ガイドレール49は、前後方向に移動するスライダ48の移動をガイドするためのガイドブロックである。ガイドレール49は、前後一対のスライダ48において、互いに前後方向に平行に延設された左右一対のレール状部材から成る。このガイドレール49は、摺動部48eが摺動自在に係合するように、縦断面視して凹部形状に形成されている。ガイドレール49は、ガイドレール支持部16上の載設されている。
【0034】
前記したワーク治具23は、スライダ48の支持部48cに支持されてワークWを進退させるための治具の役目を果たす。ワーク治具23は、ワークWの上部に固定されている。ワーク治具23の上部に突設された掛止部23aは、ワークWよりも左右方向に伸びて形成されている。このため、ワーク治具23は、ワークWを搬送する際に、掛止部23aが、一対のスライダ48の支持部48cに支持され、ワークWを加工する際に、掛止部23aが、一対のスライダ48の支持部48cから前後方向に離間されて、一対のスライダ48間を昇降装置3によって下降させる。
【0035】
ワークWは、
図7に示すように、左右のガイドレール49間において、前側のスライダ48と、後側のスライダ48との間では、掛止部23aがスライダ48の支持部48cから前後方向に離間されているので、上下方向に昇降可能である。このため、ワークWは、掛止部23aを前後のスライダ48間に配置することで、昇降装置3によって加工装置5のワイヤ53がある加工位置まで下降可能となる。
【0036】
<加工装置>
図1に示すように、加工装置5は、クランプ装置2にクランプされた未加工のワークWを加工する切削機構である。加工装置5は、適宜な間隔で水平方向に対向配置された一対の加工用ローラ51,52と、加工用ローラ51と加工用ローラ52とに巻き掛けられたワイヤ53と、加工用ローラ51,52を回転駆動させる駆動モータ(図示省略)と、を備えて成る。加工装置5は、基台13上のコラム14に設けられている。
【0037】
加工装置5の上方において、コラム14には、ワークWを支持するクランプ装置2が昇降装置3によって昇降可能に配置されている。そして、ワイヤソー1の運転時には、ワイヤ53が加工用ローラ51,52間で走行されて、クランプ装置2で保持されたワークWが、昇降装置3によって加工装置5に向かって下降されてワイヤ53に押し付けられることで切断される。
【0038】
加工用ローラ52,52は、駆動モータ(図示省略)によって回転されることで、ワイヤ53を加工用ローラ52,53間だけ走行させるように構成されている。加工用ローラ52,53は、少なくとも一対であればよく、相互間隔をおいて平行に配置される構成であれば、3本以上でもよい。
【0039】
ワイヤ53は、例えば、1本の線材によって構成された加工用ワイヤである。ワイヤ53は、加工用ローラ52,53によって、一定量前進及び一定量後退を繰り返して、全体として歩進的に前進し、または、一方向に連続して前進するように駆動される。
【0040】
<加工室カバー>
図1及び
図2に示すように、加工室カバー6は、加工装置5における加工領域を覆って加工室Rを形成するカバー部材である。加工室カバー6は、ワークWの加工領域に供給されたクーラントが飛散しないように設けられる箱状部材から成る。加工室カバー6は、加工室R内のワークWの着脱作業等の際に、開閉する扉(図示省略)を備えている。
【0041】
[作用]
次に、本発明の実施形態に係るワイヤソー1及びワイヤソー1のワークWの搬入出方法の作用を、
図16を主に
図1~
図16を参照しながら作業工程順に説明する。
【0042】
図7に示すように、加工の完了したワークWを昇降装置3で退避位置まで上昇させ、加工室カバー6(
図1参照)を開き、
図8に示すように、アンロード位置Unにある空の搬出装置4bのスライダ48を加工室Rに搬入させる。続いて、クランプ装置2をワーククランプアンクランプ位置まで下降させ、ワークWをアンクランプし、クランプ装置2を退避位置まで上昇させて、
図9に示すように、そのワークWを、搬出装置4bによって加工室Rからアンロード位置Unに搬出する(搬出工程S1)。
【0043】
次に、
図10に示すように、ロード位置Loの搬入装置4aのスライダ48に支持された未加工のワークWを、搬入装置4aによって加工室Rに搬入する(搬入工程S2)。
続いて、加工室R内に搬入された未加工のワークWを昇降装置3で下降させて、クランプ装置2でクランプする(クランプ工程S3)。そして、昇降装置3でクランプ装置2を退避位置まで上昇させる。
【0044】
次に、
図11に示すように、加工室Rに未加工のワークWを搬入した搬入装置4aのスライダ48を、何も載置していない状態でロード位置Loに退避(搬出)させて、ワークWを加工する準備をする(退避工程S4)。
続いて、加工室カバー6(
図1参照)を閉めて、
図12に示すように、クランプ装置2でクランプした未加工のワークWを昇降装置3で下降させることで、加工装置5のワイヤ53に押し当ててワークWを切削加工(スライス加工)する(加工工程S5)。
【0045】
この未加工のワークWを加工しているときに、
図13に示すように、搬出工程S1でアンロード位置Unに搬出した加工後のワークWを搬出装置4bのスライダ48から取り外し、退避工程S4でロード位置Loに退避させた搬入装置4aのスライダ48に、次に加工する未加工のワークWを載置して、次の加工の準備をする(取外載置工程S6)。そして、
図14及び
図15に示すように、加工後のワークWを搬出装置4bのスライダ48でアンロード位置Unに搬出するときに、未加工のワークWを搬入装置4aのスライダ48で加工室Rに搬入する。つまり、搬出工程S1と搬入工程S2とは、同時に行うことができる。
以上の搬出工程S1から取外載置工程S6を繰り返して、ワークWを順次に加工して生産する。
【0046】
このように、本発明は、
図1に示すように、ワイヤ53によってワークWを切断するワイヤソー1において、ワークWを支持するスライダ48を含み、ワークWを加工室Rに搬入及び加工室Rから搬出させる移送装置4と、加工室Rに配置され、ワークWを加工する加工装置5と、加工室Rに配置され、ワークWをクランプするクランプ装置2と、クランプ装置2を昇降させる昇降装置3と、を備え、移送装置4は、振子動作するアーム46を有し、アーム46によってワークWを搬送する。
【0047】
これにより、ワイヤソー1は、未加工のワークWを加工室Rに搬入し、加工後のワークWを加工室Rから搬出させる移送装置4を備えていることで、ワイヤソー1の停止及び中断している時間を削減してワイヤソー1の稼働率を向上させることができる。このため、ワークWを生産する生産時間を短縮させて生産性を向上させることができる。また、移送装置4は、従来使用していたワークリフタ等の付帯装置を不要とするため、ワイヤソー1の構造を簡素化して、コストダウンを図ることができる。
【0048】
また、移送装置4は、アーム46と、アーム46を振子動作させる駆動装置40と、アーム46の振子動作を直線動作に変換させる変換部材47と、変換部材47に連結されて進退するスライダ48と、スライダ48の移動をガイドするガイドレール49と、スライダ48に支持されてワークWを進退させるワーク治具23と、を備えている。
【0049】
これにより、移送装置4は、ワークWを支持し、アーム46に連動して移動するスライダ48を備えていることで、ワークWの交換を自動化して容易にすることができる。その結果、ワークWを生産する際の作業性を向上させて省力化を図ることができる。
【0050】
また、ワークWは、ワーク治具23に保持され、ガイドレール49は、互いに平行に配置された一対のレール状部材から成り、スライダ48は、ワーク治具23の側面両側にそれぞれ突設された掛止部23aが支持される支持部48cを有し、ワーク治具23は、ワークWを移送装置4で搬送する際に、掛止部23aが、一対の支持部48cに支持され、ワークWを加工装置5で加工する際に、ワーク治具23が、移送装置4によって加工室Rに搬入されて、クランプ装置2でクランプされた状態で、昇降装置3で上昇された後、移送装置4によってスライダ48を加工室Rから加工室R外に搬出させてから加工装置5がある位置に下降されることで、ワークWが加工装置5で加工される。
【0051】
これにより、ワーク治具23は、ワークWを搬送する際に、一対のスライダ48の支持部48cに支持されるので、スライダ48を移動させることによって、ワークWを搬送させることができる。また、ワーク治具23は、ワークWを加工する際に、移送装置4によって加工室Rに搬入されて、クランプ装置2でクランプされた状態で、昇降装置3で上昇された後、移送装置4によってスライダ48を加工室Rから加工室R外に搬出させてから昇降装置3によって下降させることで、下方に配置された加工装置5のワイヤ53にワークWを押し当てて切断することを可能とする。
【0052】
また、スライダ48は、ロード側に配設されるロード用のスライダ48と、アンロード側に配設されるアンロード用のスライダ48を有し、移送装置4は、ロード側に配設される搬入装置4a(ロード用移送装置)と、アンロード側に配設される搬出装置4b(アンロード用移送装置)を有し、搬入装置4aは、ロード用のスライダ48をロード位置Loから加工室Rへ搬入し、加工室Rからロード位置Loに搬出させ、搬出装置4bは、アンロード用のスライダ48をアンロード位置Unから加工室Rへ搬入し、加工室Rからアンロード側へ搬出させる。
【0053】
これにより、移送装置4は、ワイヤソー1のロード側からワークWを搬入して、加工完了後のワークWをアンロード位置Unに搬出することで、未加工のワークWと、加工後のワークWと、を相違する位置の方向に搬送することができる。このため、未加工のワークWと、加工後のワークWとのワークW同士が対向する方向に移動するのを解消して、未加工のワークWと加工後のワークWを同時に搬送させることが可能になる。その結果、ワークWの搬送時間を短縮させて、効率よくワークWを搬送させることができるので、ワークWの生産性を向上させることができる。
【0054】
また、
図7~
図16に示すように、本発明は、ワイヤソー1を使用してワークWを搬入及び搬出するワイヤソーのワークの搬入出方法であって、加工完了のワークWをアンロード用のスライダ48にてアンロード位置Unに搬出する搬出工程S1と、ロード位置Loの未加工のワークWをロード用のスライダ48にて加工室R内に搬入する搬入工程S2と、加工室R内に搬入された未加工のワークWをクランプ装置2によってクランプするクランプ工程S3と、加工室Rに未加工のワークWを搬入したロード用のスライダ48をロード位置Loに退避させる退避工程S4と、未加工のワークWを昇降装置3によって昇降させることによって加工装置5で加工する加工工程S5と、未加工のワークWを昇降装置3によって昇降させることによって加工装置5で加工する加工工程S5と、未加工のワークWを加工中に、搬出工程S1で搬出された加工完了のワークWをアンロード用のスライダ48から取り外すと共に、未加工のワークWをロード用のスライダ48に載置する取外載置工程S6と、を有する。
【0055】
これにより、ワイヤソー1のワークWの搬入出方法は、未加工のワークWの加工室Rへの搬入し、加工後のワークWを加工室Rから搬出を容易に行うことができるので、ワイヤソー1のダウンタイムを削減して、ワークWの生産性を向上させることができる。
【0056】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0057】
次に、
図17を参照して、本発明の実施形態に係るワイヤソー1Aの変形例を説明する。なお、既に説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
図17は、本発明の実施形態に係るワイヤソー1Aの変形例を示す概略側面図である。
【0058】
前記実施形態では、移送装置4で未加工のワークWをロード位置Lo側から加工室Rに搬入して、加工後のワークWを加工室Rからアンロード位置Un側に搬出する場合を説明したが、
図17に示す移送装置4Aのように、一方向側(ロード位置Lo側)からワークWを支持したスライダ48を加工室Rに搬入して、搬入して来た方向側(ロード位置Lo側)から搬出してもよい。
【0059】
つまり、ワイヤソー1Aは、ワークWを移送装置4Aのスライダ48によってロード位置Lo側から加工室Rに搬入し、加工後のワークWを同じスライダ48を使用して、ロード位置Loと同じ位置にあるアンロード位置Un側に戻すように、往復移動させてもよい。つまり、移送装置4Aは、前記実施形態で説明した搬入装置4aと、搬出装置4bと、の機能を有するものであってもよい。
この場合、スライダ48は、ワークロード用のスライダ48と、ワークアンロード用のスライダ48と、を兼用している。
【0060】
これにより、ワイヤソー1Aは、
図17に示すように、移送装置4Aがワイヤソー1Aの前側のみに配置された1台から成るので、部品点数を削減してコストダウン及び装置の小型化を図ることができる。
【0061】
[その他の変形例]
例えば、前記実施形態で説明した駆動装置40は、アーム46を振子動作させる駆動手段であればよく、電動モータと、ラックアンドピニオン機構あるいはウォーム・ホイール等の歯車機構を使用したものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,1A ワイヤソー
2 クランプ装置
3 昇降装置
4,4A 移送装置
4a 搬入装置(ロード用移送装置)
4b 搬出装置(アンロード用移送装置)
5 加工装置
23 ワーク治具
23a 掛止部
40 駆動装置
46 アーム
47 変換部材
48 スライダ
48c 支持部
49 ガイドレール
53 ワイヤ
R 加工室
S1 搬出工程
S2 搬入工程
S3 クランプ工程
S4 退避工程
S5 加工工程
S6 取外載置工程
R 加工室
W ワーク