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特許7372100熱収縮性多層チューブおよびプレフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】熱収縮性多層チューブおよびプレフォーム
(51)【国際特許分類】
   B32B 1/08 20060101AFI20231024BHJP
   B32B 7/028 20190101ALI20231024BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231024BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231024BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20231024BHJP
【FI】
B32B1/08 Z
B32B7/028
B32B27/36
B32B27/32 C
H01M50/129
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019173707
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021049695
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 尚人
(72)【発明者】
【氏名】石坂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】新井 一郎
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/084212(WO,A1)
【文献】特開2008-307896(JP,A)
【文献】特開2003-223872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B29C 61/00-61/10
H01M 50/00-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層がポリエステル系樹脂から主としてなる樹脂層であり、内層がポリオレフィン系樹脂から主としてなる樹脂層、または外層がポリオレフィン系樹脂から主としてなる樹脂層であり、内層がポリエステル系樹脂から主としてなる樹脂層であって、次のa~cを満たすことを特徴とする、熱収縮性多層チューブ。
a:縦方向(MD)の収縮率が5%以下であり、横方向(TD)の収縮率が30%以上、
b:70℃の湯中において、縦方向(MD)の収縮応力が1N/15mm以下であり、横方向(TD)の収縮応力が6N/15mm以下、
c:シール強度(内-内)が8N/15mm以上。
【請求項2】
外層と内層との間に中間層を更に有する、請求項1に記載の熱収縮性多層チューブ。
【請求項3】
電池セルの周囲を被覆する絶縁体として用いられる、請求項1または2に記載の熱収縮性多層チューブ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱収縮性多層チューブの一方の開口部に端面材フィルムが熱圧着されてなる、プレフォーム。
【請求項5】
電池セルの周囲を被覆する絶縁体として用いられる、請求項4に記載のプレフォーム。
【請求項6】
次の1~4の工程を含むことを特徴とする、プレフォームの製造方法。
1:プレフォーム型に請求項1~3のいずれか一項に記載の熱収縮性多層チューブを当該プレフォーム型から少し食みた状態で被せる工程、
2:当該熱収縮性多層チューブがプレフォーム型から食み出した側の、プレフォーム型の片端面側に端面材フィルムを載せる工程、
3:プレフォーム型に被せた当該熱収縮性多層チューブに熱を与え収縮させることにより、プレフォーム型から食み出した部分の当該熱収縮性多層チューブをプレフォーム型の片端面側へ屈曲させる工程、および
4:当該熱収縮性多層チューブの屈曲部分と端面材フィルムとの接近部分(重なり部分)をシールバーで熱圧着する工程。
【請求項7】
請求項4または5に記載のプレフォームで被覆されてなる、電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性多層チューブの技術分野に属する。本発明は、ポリエステル系樹脂から主としてなる樹脂層およびポリオレフィン系樹脂から主としてなる樹脂層とを含む熱収縮性多層チューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガソリン車、ハイブリッドカー(HEV)、電気自動車(EV)等の車両などに搭載されるバッテリー(蓄電池、二次電池)は、一般に複数の角型電池セルからなる。そして、各電池セルは、ショートしないよう、また防水、保護等のためにその周囲は絶縁体(セパレーター)で覆われている。かかる絶縁体として、従来からポリエステル系樹脂のフィルムが広く用いられている。
【0003】
上記のような絶縁用の樹脂フィルムないしそれを用いて包装された包装体(電池セル)等は、様々なものが開発されている。
例えば、特許文献1には、底部にガゼットが入れられ、両側部が熱シールされてなる熱収縮性包装用袋が開示されている。かかる熱収縮性包装用袋は、底部にガゼットが設けられていることから自立することができる。
特許文献2には、角型被包装体の天面の上側及び底面の下側の双方に食み出るように、前記角型被包装体の胴周囲に熱収縮性粘着テープを巻きつけ、これを熱収縮させることにより、前記天面と前記底面のそれぞれの長辺、短辺及び4隅を熱収縮性粘着テープで被覆してなる角型包装体が開示されている。当該発明は、帯状のフィルムを角型の電池セルの胴体部に巻き付けたものである。
【0004】
特許文献3には、上方に開口部を有する角形外装缶と、前記開口部を封止する封口体と、前記封口体と絶縁された状態で、前記封口体から突出する正負電極外部端子と、を有する角形電池の底面全面および側面を、折り曲げられた一枚の絶縁シートにより覆うものが開示されている。熱溶着性フィルムからなる絶縁シートの折り重なりを、外装缶の底面ではなく側面に配している。これにより、折り重なりによる電池高さの上昇と電池高さの電池セル間のばらつきを解消している。
また、特許文献4には、下記a)~d)を満たすことを特徴とする、共重合ポリエステルを主成分とする表面層を少なくとも一方の主面に備えた単層又は複層の熱収縮性フィルムが開示されている。
a)示差走査型熱量測定により、10℃/分で昇温した際の結晶融解熱量(△Hm)が20J/g以下
b)一方の表面同士の融着温度(FT1)と他方の表面同士の融着温度(FT2)との融着温度差(FT1-FT2)の絶対値が20℃以下
c)80℃の温水中に10秒間浸漬した際の主収縮方向における熱収縮率が10%以上50%以下
d)70℃の温水中に10秒間浸漬した後のネックイン率が2.5%以下
そして、当該発明は、上記熱収縮性フィルムを断裁して山折り部および切り込み部を設けた箱状包装資材展開体とし、フィルムの一端側が箱状包装体の内側となり、フィルムの他端側が箱状包装体の外側となるようにしてヒートシール加工で箱状に組立てた箱状包装体とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3195394号公報
【文献】実用新案登録第3200706号公報
【文献】特開2011-181485号公報
【文献】国際公開第2018/003994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明では、底部を平らにすることができるものの、両側部に本来的には不要な熱シール部が形成され、また電池セルとの密着性も十分でないおそれがある。特許文献2の発明では、十分に電池セルを被覆できないおそれがある。特許文献3や4の発明は、フィルムを一定の形に切り出しあるいは打ち抜き、一定の展開体とし、これを折り込むなどして組み立て箱型とするものである。
本発明は、主として、新規な熱収縮性多層チューブを提供することにある。また、例えば、かかる熱収縮性多層チューブと端面材フィルムとからなるプレフォームで被覆された電池セルを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、一定の構成樹脂層を含み、一定の特性を有する熱収縮性多層チューブとすることにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明としては、例えば、下記のものを挙げることができる。
【0009】
[1]外層がポリエステル系樹脂から主としてなる樹脂層であり、内層がポリオレフィン系樹脂から主としてなる樹脂層、または外層がポリオレフィン系樹脂から主としてなる樹脂層であり、内層がポリエステル系樹脂から主としてなる樹脂層であって、次のa~cを満たすことを特徴とする、熱収縮性多層チューブ。
a:縦方向(MD)の収縮率が5%以下であり、横方向(TD)の収縮率が30%以上、
b:70℃の湯中において、縦方向(MD)の収縮応力が1N/15mm以下であり、横方向(TD)の収縮応力が6N/15mm以下、
c:シール強度(内-内)が8N/15mm以上。
[2]外層と内層との間に中間層を更に有する、上記[1]に記載の熱収縮性多層チューブ。
[3]電池セルの周囲を被覆する絶縁体として用いられる、上記[1]または[2]に記載の熱収縮性多層チューブ。
[4]上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱収縮性多層チューブの一方の開口部が端面材フィルムと熱圧着され塞がれている、プレフォーム。
[5]電池セルの周囲を被覆する絶縁体として用いられる、上記[4]に記載のプレフォーム。
【0010】
[6]次の1~4の工程を含むことを特徴とする、プレフォームの製造方法。
1:プレフォーム型に上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱収縮性多層チューブを当該プレフォーム型から少し食み出した状態で被せる工程、
2:当該熱収縮性多層チューブがプレフォーム型から食み出した側の、プレフォーム型の片端面側に端面材フィルムを載せる工程、
3:プレフォーム型に被せた当該熱収縮性多層チューブに熱を与え収縮させることにより、プレフォーム型から食み出した部分の当該熱収縮性多層チューブをプレフォーム型の片端面側へ屈曲させる工程、および
4:当該熱収縮性多層チューブの屈曲部分と端面材フィルムとの接近部分(重なり部分)をシールバーで熱圧着する工程。
[7]上記[4]または[5]に記載のプレフォームで被覆されてなる、電池セル。
【発明の効果】
【0011】
本発明(熱収縮性多層チューブ)によれば、電池セルに対して簡便に密にまた十分に絶縁等を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るプレフォームの製造例を示した模式図である。
図2】本発明に係るプレフォームの製造例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1 本発明に係る熱収縮性多層チューブについて
本発明に係る熱収縮性多層チューブ(以下、「本発明チューブ」という。)は、外層がポリエステル系樹脂から主としてなる樹脂層(以下、「ポリエステル系樹脂層」ともいう。)であり、内層がポリオレフィン系樹脂から主としてなる樹脂層(以下、「ポリオレフィン系樹脂層」ともいう。)、または外層がポリオレフィン系樹脂から主としてなる樹脂層であり、内層がポリエステル系樹脂から主としてなる樹脂層であって、次のa~cを満たすことを特徴とする。
a:縦方向(MD)の収縮率が5%以下であり、横方向(TD)の収縮率が30%以上、
b:70℃の湯中において、縦方向(MD)の収縮応力が1N/15mm以下であり、横方向(TD)の収縮応力が6N/15mm以下、
c:シール強度(内-内)が8N/15mm以上
【0014】
本発明チューブは、中空の筒状形態を有する。
ここで「外層」とは、本発明チューブ等で被覆される対象物と接しない方の面をいう。「内層」とは、本発明チューブ等で被覆される対象物と接する方の面をいう。本発明においては、ポリエステル系樹脂層およびポリオレフィン系樹脂層の一方が外層を形成し、他方が内層を形成する。
「主としてなる」とは、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含むことを許容することを意味し、成分の含有率を制限するものではないが、通常、層成分全体に対する含有率が50質量%以上を占めていることをいう。好ましくは当該含有率が70質量%以上を占めること、より好ましくは80質量%以上ないし90質量%以上を占めていることをいう。当該含有率が100質量%であってもよい。
以下、本発明チューブについて詳述する。
【0015】
1.1 ポリエステル系樹脂層
本発明チューブにおいては、ポリエステル系樹脂層を本発明チューブの外層または内層とすることができる。ポリエステル系樹脂層を外層とした場合は、後述のポリオレフィン系樹脂層が内層となり、ポリエステル系樹脂層を内層とした場合は、後述のポリオレフィン系樹脂層が外層となる。
本発明において用いうるポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸とジオールとを縮重合させることにより得られる重合体が挙げられる。
【0016】
上記ポリエステル系樹脂のジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2,5-ジクロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、4,4-スチルベンジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4-ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩、エチレン-ビス-p-安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記ポリエステル系樹脂のジオール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、トランス-又は-2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジオール等が挙げられる。これらのジオール成分は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記ポリエステル系樹脂としては、なかでも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、かつ、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を含有するものが好ましい。このようなポリエステル系樹脂を用いることにより、耐熱性を付与することができる。
【0019】
また、熱収縮性および剛性をより高めたい場合に用いる上記ポリエステル系樹脂のジカルボン酸成分としては、ジカルボン酸成分の含有量を100モル%として、テレフタル酸に由来する成分の好ましい下限は60モル%、より好ましい下限は65モル%であり、好ましい上限は100モル%、より好ましい上限は95モル%であり、イソフタル酸に由来する成分の好ましい下限は0モル%、より好ましい下限は5モル%、好ましい上限は40モル%であり、より好ましい上限は35モル%である。また、熱収縮性をより高めたい場合に用いる上記ポリエステル系樹脂のジオール成分としては、ジオール成分の含有量を100モル%として、エチレングリコールに由来する成分の含有量の好ましい下限が50モル%、より好ましい下限が60モル%、好ましい上限が100モル%、より好ましい上限が80モル%であり、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する成分の含有量の好ましい下限が0モル%、より好ましい下限が10モル%、好ましい上限が40モル%、より好ましい上限が35モル%であり、ジエチレングリコールに由来する成分含有量の好ましい下限が0モル%、より好ましい下限が5モル%、好ましい上限が30モル%、より好ましい上限が25モル%である。
【0020】
上記ポリエステル系樹脂の固有粘度の下限は0.6dl/g、上限は1.4dl/gである。上記固有粘度が0.6dl/g未満であると、熱収縮性チューブの強度が低下し、1.4dl/gを超えると、溶融粘度が高く押出成形しにくくなる。好ましい下限は0.8dl/g、好ましい上限は1.2dl/gである。なお、上記固有粘度は、35℃においてオルトクロロフェノール中で測定した値のことをいう。
【0021】
上記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度の下限は65℃、上限は85℃である。ガラス転移温度がこの範囲にあると、熱収縮性チューブは良好な熱収縮性を示し好ましい。ガラス転移温度の好ましい下限は67℃、好ましい上限は83℃である。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimetry)で測定することができる。
【0022】
ポリエステル系樹脂層には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記ポリエステル系樹脂以外に、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、顔料、加水分解防止剤等を適量含有することができる。
【0023】
1.2 ポリオレフィン系樹脂層
本発明チューブにおいては、ポリオレフィン系樹脂層を本発明チューブの外層または内層とすることができる。ポリオレフィン系樹脂層を外層とした場合は、前述のポリエステル系樹脂層が内層となり、ポリオレフィン系樹脂層を内層とした場合は、前述のポリエステル系樹脂層が外層となる。
本発明に係るポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂を挙げることができる。
【0024】
1.2.1 ポリエチレン系樹脂
本発明に係るポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体またはエチレンと共重合可能な成分との共重合体であることが好ましい。
エチレンと共重合可能な成分としては、炭素数3~20のα-オレフィン、酢酸ビニル、または(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を挙げることができる。
炭素数3~20のα-オレフィンとしては、具体的には、例えば、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。この中、炭素数3~8の、例えば、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンが好ましい。これらエチレン以外のα-オレフィンは1種であっても、また2種以上の併用であってもよい。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、一般に炭素数1~5のアルキル(特に、メチル、エチル等)を含む(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル等が挙げられるが、これらに限らない。
【0026】
当該ポリエチレン系樹脂中のエチレンと共重合成分との含有割合としては、通常エチレンが75~100質量%、共重合成分が0~25質量%であり、好ましくはエチレンが85~99.9質量%、共重合成分が0.1~15質量%であり、より好ましくはエチレンが90~99.5質量%、共重合成分が0.5~10質量%であり、更に好ましくはエチレンが90~99質量%、共重合成分が1~10質量%である。
【0027】
当該ポリエチレン系樹脂の中、国際標準化機構(ISO)規格1133(1997)に準拠して190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定されたメルトフローレート(MFR)値が0.5~20g/10分の範囲内であるポリエチレン系樹脂が好ましい。また、当該メルトフローレート値が、2~4g/10分の範囲内であるポリエチレン系樹脂がより好ましい。
【0028】
更に当該ポリエチレン系樹脂の中、国際標準化機構(ISO)規格1183(1987)に準拠して測定した場合の密度が850~940kg/mの範囲内であるポリエチレン系樹脂が好ましく、860~930kg/mの範囲内であるポリエチレン系樹脂がより好ましい。
【0029】
当該ポリエチレン系樹脂の中、分岐鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体、エチレン-エチルメタアクリレート共重合体が好ましく、分岐鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体が、より好ましいものとして挙げることができる。
【0030】
ポリエチレン系樹脂層には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記ポリエチレン系樹脂以外に、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、滑剤、顔料、メヤニ防止剤等を適量含有することができる。
【0031】
1.2.2 ポリプロピレン系樹脂
本発明に係るポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。
【0032】
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~20のプロピレン以外のα-オレフィンを挙げることができ、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンが挙げられる。この中、炭素数2~4の、例えば、エチレン、ブテンが好ましい。これらプロピレン以外のα-オレフィンは、1種であっても、2種以上の併用であってもよい。
【0033】
当該ポリプロピレン系樹脂におけるプロピレン以外のα-オレフィンの含有割合は、0.5~15モル%の範囲内が適当であり、1~12モル%の範囲内が好ましく、3~10モル%の範囲内がより好ましい。
【0034】
当該ポリプロピレン系樹脂の中、国際標準化機構(ISO)規格1133(1997)に準拠して測定した場合(条件:230℃、21.18N荷重)のメルトフローレート(MFR)値が、0.5~100g/10分の範囲内であるポリプロピレン系樹脂が好ましい。また当該メルトフローレート値が、1~30g/10分の範囲内であるポリプロピレン系樹脂がより好ましい。なお、重合体のメルトフローレート(MFR)値は、プロピレン以外のα-オレフィンの種類や含有量、重合体の分子量や重合度によって適宜調整することができる。
【0035】
また、当該ポリプロピレン系樹脂の中、国際標準化機構(ISO)規格1183(1987)に準拠して測定した場合の密度が、850~950kg/mの範囲内であるポリプロピレン系樹脂が好ましく、860~920kg/mの範囲内であるポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
【0036】
1.3 中間層
本発明チューブにおいては、外層と内層との間に中間層を設けることができる。かかる中間層は、基本的には外層と内層との接着強度を高めるために設けられる。当該中間層を設け、外層/中間層/内層の3層構造とした本発明チューブが好ましい。
【0037】
当該中間層を主として構成する樹脂としては、例えば、密度910kg/m以下のエチレン-αオレフィン共重合体、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0038】
ここで「不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン」とは、カルボン酸基、酸無水物基およびこれらの誘導体と、共重合またはグラフト重合させた上記ポリオレフィン樹脂を意味し、カルボン酸基、酸無水物基およびこれらの誘導体として、具体的にはメタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸無水物、無水マレイン酸、メタクリル酸エチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジグリシジル等が挙げられる。
【0039】
中間層には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記樹脂以外に、酸化防止剤、熱安定剤、顔料等を適量含有することができる。
【0040】
1.4 その他
(1)厚み
ポリエステル系樹脂層またはポリオレフィン系樹脂層からなる外層の厚みは、通常、10~80μmであり、好ましくは15~75μm、より好ましくは20~70μmである。ポリエステル系樹脂層またはポリオレフィン系樹脂層からなる内層の厚みは、通常、10~80μmであり、好ましくは15~75μm、より好ましくは20~70μmである。中間層の厚みは、通常、5~20μmであり、好ましくは7~15μm、より好ましくは8~12μmである。
本発明チューブの総厚みは、通常、80~120μmであり、好ましくは90~110μm、より好ましくは95~105μmである。
【0041】
(2)本発明チューブの特性
本発明チューブは、次のa~cの特性を有する。
a:縦方向(MD)の収縮率が5%以下であり、横方向(TD)の収縮率が30%以上、
b:70℃の湯中において、縦方向(MD)の収縮応力が1N/15mm以下であり、横方向(TD)の収縮応力が6N/15mm以下、
c:シール強度(内-内)が8N/15mm以上
【0042】
特性aに係る、縦方向(MD)の収縮率は5%以下であるが、4%以下が好ましく、下限値としては0.5%ないし1%を挙げることができる。また、横方向(TD)の収縮率は30%以上であるが、35%以上が好ましく、上限値としては60%ないし55%を挙げることができる。当該収縮率は、サンプルフィルム(チューブ)を98℃の湯中に30秒間浸し、元の長さからどの程度収縮したかによって求められる。
なお、MDおよびTDは、当業者に周知の用語であって、MDは樹脂の流れ方向、即ち縦方向を表し、TDはMDに対して直角方向、即ち横方向ないし周方向を表す。
【0043】
特性bに係る、縦方向(MD)の収縮応力は1N/15mm以下であるが、下限値としては0.3N/15mmないし0.4N/15mmを挙げることができる。また、横方向(TD)の収縮応力が6N/15mm以下であるが、下限値としては1.5N/15mmないし2N/15mmを挙げることができる。当該収縮応力は、測定試料の幅15mm、チャック間距離15mmにおいて、70℃の湯中に浸漬した時のロードセルで検出される応力の最大値である。
収縮応力は、延伸条件により調整することができる。延伸倍率が高くなれば、収縮応力は大きくなる傾向にある。また、延伸温度が低い方が、収縮応力は大きくなる傾向にある。延伸倍率と延伸温度により適切な収縮応力を有する熱収縮性チューブを製造することができる。
【0044】
また、収縮応力は、使用する樹脂によって異なる。ポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂を比較すると、ポリエステル系樹脂の方が収縮応力は大きくなる傾向にある。また、ポリエステル系樹脂おいて、ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリエステル系共重合体を比べると、ポリエチレンテレフタレート樹脂の方が収縮応力は大きくなる傾向にある。熱収縮性多層チューブの場合、ポリエステル系樹脂を主としてなる層とポリオレフィン系樹脂を主としてなる層の厚み比率を調整することにより、収縮応力を調整することができる。
【0045】
特性cに係るシール強度は、内層面同士のシール強度であって、8N/15mm以上であるが、好ましくは10N/15mm以上である。上限値としては、50N/15mmないし40N/15mmを挙げることができる。当該シール強度は、例えば、富士インパルス社製のSM-SHTS 310-5ACを用い、加熱温度180℃、加熱時間1秒、冷却温度100℃というシール条件で内層面同士を接着し、測定試料の幅15mm、引張強度30mm/分という引張条件で引っ張ることにより求めることができる。
【0046】
2 本発明チューブの製造方法
本発明チューブの製造方法は、当該外層/中間層/内層の3層からなる樹脂フィルムを製造することができる方法であれば特に制限されない。例えば、以下の方法により製造することができる。
【0047】
当該外層、必要に応じて中間層、および内層を構成する樹脂を、それぞれ所定の温度に調整された押出機に投入し、多層環状ダイスよりチューブ状に押出成形し、直ちに冷水により冷却固化する。冷却固化されたチューブ状物は延伸工程に供給される。
延伸工程では、チューブ状物をニップロールにて挟み、一定速度で送り出された後、チューブ状物を加熱し、他方の端より圧縮空気をチューブ状物内部に注入し、チューブ状物を任意の径まで膨らませた後、他方側もニップロールで挟んで送り出す。かかるチューブ状物は、2対のニップロールの速度差により、縦方向(MD方向)に延伸され、圧縮空気により膨らむことにより、横方向(TD方向)にも延伸される。延伸温度は、85℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、また、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。延伸倍率は、MD方向について0.9倍以上が好ましく、0.95倍以上がより好ましく、また、1.5倍以下が好ましく、1.2倍以下がより好ましい。TD方向については1.3倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、また3倍以下が好ましく、2.5倍以下がより好ましい。
【0048】
3 本発明に係るプレフォーム
本発明に係るプレフォーム(以下、「本発明プレフォーム」という。)は、中空筒状の本発明チューブの一方の開口部が端面材フィルムと熱圧着され塞がれている。従って、本発明プレフォームは、底面を有し開口した袋状ないし箱型のものである。
【0049】
上記端面材フィルムとしては、本発明チューブと十分に熱圧着できるものであれば特に制限されないが、本発明チューブと同質のフィルム、即ち本発明チューブを端面材フィルムとして用いることができる。
また、端面材フィルムは、ポリエステル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂を主としてなる単層フィルムであってもよく、ポリエステル系樹脂を含有する層またはポリエステル系樹脂から主としてなる層とポリオレフィン系樹脂とを含有する層またはポリオレフィン系樹脂から主としてなる層を少なくとも有する多層のフラットフィルムであってもよい。また、端面材フィルムは、収縮性フィルムであってもよく、非収縮性フィルムであってもよい。また、延伸フィルムでも無延伸フィルムでもよい。
【0050】
本発明プレフォームは、例えば、次の1~4の工程を含む製造方法により製造することができる。
1:プレフォーム型に本発明チューブを当該プレフォーム型から少し食み出した状態で被せる工程、
2:当該チューブがプレフォーム型から食み出した側の、プレフォーム型の片端面側に端面材フィルムを載せる工程、
3:プレフォーム型に被せた本発明チューブに熱を与え収縮させることにより、プレフォーム型から食み出した部分の本発明チューブをプレフォーム型の片端面側へ屈曲させる工程、および
4:本発明チューブの屈曲部分と端面材フィルムとの接近部分(重なり部分)をシールバーで熱圧着する工程
【0051】
上記工程1において、プレフォーム型から本発明チューブが食み出す長さは、適宜設定することができるが、具体的には、例えば、5~10mmの範囲内が適当である。5mmより短いと、上記工程4における端面材フィルムとの熱圧着が不十分になるおそれがある。10mmより長いと、上記工程3における片端面側への屈曲部分が十分に収縮しきらないおそれがある。
上記工程3ないし後述の工程2a、2bにおける熱による本発明チューブの屈曲は、本発明チューブが縦方向より横方向(周方向)の収縮率ないし収縮応力が大きいために生じる。そしてその屈曲は、通常、ほぼ90度である。
【0052】
より具体的には、例えば、図1図2に示すような工程を経ることにより本発明プレフォームを製造することができる。
【0053】
図1に示す製造方法は、少なくとも次の1a~3aの工程を含む。
1a:プレフォーム型3に中空筒状の本発明チューブ1をプレフォーム型3から少し食み出した状態で被せると共に、本発明チューブ1がプレフォーム型3から食み出した側の、プレフォーム型3の片端面側に端面材フィルム2を載せる工程、
2a:プレフォーム型3に被せた本発明チューブ1に熱を与え収縮させることにより、食み出した部分の本発明チューブ1をプレフォーム型3の片端面側へ屈曲させ、本発明チューブ1の内側面と端面材フィルム2の外側面とを接近させる工程、
3a:本発明チューブ1の屈曲部分と端面材フィルム2との接近部分(重なり部分)をシールバー4で熱圧着する工程
工程3aにより、本発明チューブ1の一方の開口部は、端面材フィルム2で塞がれ袋状物(箱型)となり、これをプレフォーム型3から外すことにより本発明プレフォームAを製造することができる。
【0054】
図2に示す製造方法は、少なくとも次の1b~4bの工程を含む。
1b:プレフォーム型3に中空筒状の本発明チューブ1をプレフォーム型3から少し食み出した状態で被せる工程、
2b:プレフォーム型3に被せた本発明チューブ1に熱を与え収縮させることにより、食み出した部分の本発明チューブ1をプレフォーム型3の片端面側へ屈曲させ、本発明チューブ1の内側面とプレフォーム型3とを接近させる工程、
3b:本発明チューブ1が屈曲した方の、プレフォーム型3の片端面側に端面材フィルム2を載せ、本発明チューブ1の屈曲部分と端面材フィルム2とを重ねる工程、
4b:本発明チューブ1と端面材フィルム2との重なり部分をシールバー4で熱圧着する工程
工程4bにより、本発明チューブ1の一方の開口部は、端面材フィルム2で塞がれ袋状物(箱型)となり、これをプレフォーム型3から外すことにより本発明プレフォームBを製造することができる。
【0055】
上記図1の工程において、端面材フィルムが本発明チューブの場合、端面材フィルムと熱圧着される本発明チューブの内層の樹脂層と同様の樹脂層面が上を向くよう、端面材フィルムをプレフォーム型に載せることが好ましい。例えば、プレフォーム型に被せた本発明チューブの内層がポリオレフィン系樹脂から主としてなる樹脂層である場合、同様のポリオレフィン系樹脂から主としてなる樹脂層が上を向くよう、端面材フィルムをプレフォーム型に載せることが好ましい。これにより、プレフォーム型に被せた本発明チューブと端面材フィルムとは、熱圧着面において同様な樹脂層が対向することになり、熱圧着され易くなり好ましい。
【0056】
上記図2の工程において、端面材フィルムが本発明チューブの場合、端面材チューブと熱圧着される本発明チューブの外層の樹脂層と同様の樹脂層面が下を向くよう、端面材フィルムをプレフォーム型に載せることが好ましい。例えば、プレフォーム型に被せた本発明チューブの外層がポリオレフィン系樹脂から主としてなる樹脂層である場合、同様のポリオレフィン系樹脂から主としてなる樹脂層が下を向くよう、端面材フィルムをプレフォーム型に載せることが好ましい。これにより、プレフォーム型に被せた本発明チューブと端面材フィルムとは、熱圧着面において同様な樹脂層が対向することになり、熱圧着され易くなり好ましい。
【0057】
プレフォーム型3は、本発明プレフォームを成形するための型であり、通常、熱に耐えうる、アルミニウム、鉄、銅、ステンレス等の金属であり、金型である。金型は、離型性を考慮して離型剤の塗布、テフロン(登録商標)シートの貼り付け、表面処理等を施してもよく、その形状は、適用する電池セルの形状などに従うが、通常、四角錐台状、正四角錐台状、直方体状、または立方体状である。各辺はRを形成していてもよい。
【0058】
シールバー4は、本発明チューブと端面材フィルムとの接触部分を熱圧着するためのものであり、その用に供することができれば特に制限されない。その材質としては、通常、アルミニウム、鉄、銅、ステンレス等の金属であり、離型性を考慮して離型剤の塗布、テフロン(登録商標)シートの貼り付け、表面処理等を施してもよく、その形状は適宜設定される。
【0059】
本発明プレフォームは、袋状ないし箱型であり、一方が開口している。その開口部分から被覆する電池セル等を挿入することができる。本発明プレフォームにおいて、端面材フィルムは底面を形成しているということができる。
本発明プレフォームは、図1、2などから明らかな通り、その側面に重なり部分などはなく、平らである。全体としても、底面に端面材フィルムと本発明チューブとの重なり部分が多少ある程度である。そのため、電池セルの筐体への収納性に優れ、振動などにも強い。
【0060】
4 用途、使用方法
本発明チューブおよび本発明プレフォームは、例えば、電池セルの周囲を被覆する絶縁体として用いることができる。本発明チューブまたは本発明プレフォームで被覆された電池セルも本発明に含まれる。
【0061】
本発明プレフォームを電池セルの絶縁体として用いる場合、本発明プレフォームの開口部から電池セルを挿入し、必要に応じて蓋カバーフィルムなどを電池セルの上に載せ、熱を加えることにより、本発明プレフォームを電池セルにしっかり密着させることができる。そして本発明プレフォームで被覆された電池セルの数個を適当な筐体へ収納することにより一つのバッテリーとすることができる。
電池セルは、通常、角型である。電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池、アルカリ二次電池、鉛蓄電池、燃料電池、全固体電池、スーパーキャパシタ等を挙げることができる。
【0062】
本発明チューブまたは本発明プレフォームで被覆された電池セルまたはそれを複数個筐体に収納したバッテリーは、それを必要とする乗り物に搭載することができる。かかる乗り物として、例えば、ガソリン車、ハイブリッドカー、電気自動車などの自動車、燃料電池車、ドローン等を挙げることができる。乗り物以外にも、当該電池セルないしバッテリーは、自然エネルギーや深夜電力を充電するための電源装置、ノートPC、タブレット、スマートフォン等のモバイル端末等にも使用することができる。
【実施例
【0063】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0064】
使用した原料は、次の通りである。
・PET-1:ホモポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸:100モル%、エチレングリコール:100モル%、IV(固有粘度)値:1.07)
・PET-2:1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸:100モル%、エチレングリコール70モル%、ジエチレングリコール10モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール20モル%、IV値:0.75)
・AD-1:変性ポリオレフィン樹脂(MFR:2.7g/10分、密度:902kg/m
・AD-2:変性ポリオレフィン樹脂(MFR:1.0g/10分、密度:900kg/m
・AD-3:変性ポリオレフィン樹脂(MFR:1.0g/10分、密度:900kg/m
・PE-1:直鎖状低密度ポリエチレン(C6)(MFR:2.0g/10分、密度:919kg/m
・PE-2:直鎖状低密度ポリエチレン(C8)(MFR:3.5g/10分、密度:880kg/m
【0065】
[実施例1~3]
下記表1に示す通り、外層としてPE-1、内層としてPET-1、中間層としてそれぞれAD-1、AD-2、AD-3を用いた。200℃~250℃に調整された外層用押出機、250℃~290℃に調整された内層用押出機、および140℃~210℃に調整された中間層用押出機に、各層の樹脂を投入し、280℃の環状多層ダイスより溶融成形し、直ちに冷水に浸漬しチューブ状の成形物を得た。得られたチューブ状の成形物は連続的に次の延伸工程に供給した。延伸工程において、チューブ状の成形物を、圧縮気体による圧力を一方の端から管の内側に加えつつ一定速度で送り出し、その後95℃に加熱し、下記表2に示すようにMD1.0倍、TD1.7倍の延伸倍率で延伸し、延伸チューブとして引き取り巻き取り、折径180mm、総厚み100μm(外層20μm/中間層10μm/内層70μm)の熱収縮性多層チューブを得た(実施例1~3、本発明チューブ)。
【0066】
[実施例4~9]
表1に示す通り、外層としてPET-1、中間層をAD-2、内層としてそれぞれPE-1またはPE-2を用いた。外層用の押出機の温度を250~290℃、および内層用の押出機の温度を200~250℃の温度に調整した以外は上記実施例1~3の場合と同様にしてチューブ状の成形物を得た。得られた成形物を同様に次の延伸工程に供給し、それぞれ表2に示す延伸倍率で延伸し、延伸チューブとして引き取り巻き取り、折径180mm、総厚み100μmで各層が表2に示す厚みの熱収縮性多層チューブを得た(実施例4~9、本発明チューブ)。
【0067】
[実施例10、11]
表1に示す通り、外層としてPET-2、中間層としてAD-2、内層としてPE-2を用いた。外層用の押出機の温度を200℃~260℃に調整した以外は上記実施例1~3の場合と同様にしてチューブ状の成形物を得た。得られた成形物を同様に次の延伸工程に供給し、それぞれ表2に示す延伸倍率で延伸し、延伸チューブとして引き取り巻き取り、折径180mm、総厚み100μm(外層70μm/中間層10μm/内層20μm)の熱収縮性多層チューブを得た(実施例10、11、本発明チューブ)。
【0068】
[試験例1]収縮率の測定
得られた本発明チューブをMD方向(チューブの長さ方向)に100mm、TD方向(チューブの幅方向)に100mmの寸法でフィルム状に切り出して測定用サンプルとした。このサンプルを熱水(98℃)に30秒間浸漬して熱収縮させ、収縮後のサンプルのMDおよびTD方向の寸法を測定した。収縮前の原寸に対する収縮量の比率を各方向において%値で求めた。得られた収縮率の値を表2に示す。
【0069】
[試験例2]収縮応力の測定
MDおよびTD方向の収縮応力を測定するため、得られた本発明チューブを測定したい収縮方向に100mm、その垂直方向に15mmの寸法でフィルム状に切り出して測定用サンプルとした。チャック間距離を15mmとして、このサンプルをロードセルにたるみなく固定した。その状態でサンプルを熱水(70℃)に浸漬し、ロードセルにかかる荷重を測定した。このときロードセルが示した最大値を収縮応力(N/15mm)とした。得られた収縮応力の値を表2に示す。
【0070】
[試験例3]シール強度の測定
得られた本発明チューブを、内層同士を接触させて折りたたんだ状態で、シール機(SM-SHTS310-5AC、富士インパルス社製)を用いて加熱温度180℃、加熱時間1秒、冷却温度100℃でTD方向にシールした。シールされた本発明チューブを、MD方向に100mm、TD方向に15mmの寸法でシール部を含むように切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルの非シール部をひらいて、測定器(ストログラフV10-C、東洋精機製作所製)にチャック間距離50mmで取付け、引張速度30mm/分でシールが剥離する荷重を測定した。このときの荷重値をシール強度(N/15mm)とした。得られたシール強度の値を表2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
上記結果の通り、本発明チューブは、TD方向に35%以上もの非常に大きな収縮率を実現しながらも収縮応力が低く抑えられている。他方、MD方向では収縮率も収縮応力もきわめて小さい。さらに、いずれの実施例も10N/15mm以上の高いシール強度を有している。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明チューブおよび本発明プレフォームによれば、一方向への優れた収縮性により密着包装が可能でありながら、その収縮応力は低く抑えられているため包装体やプレフォーム自身への負担は小さい。また、高いシール強度により、密閉性が高く占有スペースが最小限の包装が実現できる。さらに、素材が絶縁体であることから、簡便に密にまた十分に絶縁等を施すことができるので、電池セル包装用チューブおよびプレフォームとして有用である。
【符号の説明】
【0075】
A,B 本発明プレフォーム
1 本発明チューブ
2 端面材フィルム
3 プレフォーム型
4 シールバー
図1
図2