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  • 特許-ウェーハ研磨用ヘッド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ウェーハ研磨用ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/30 20120101AFI20231024BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231024BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231024BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20231024BHJP
【FI】
B24B37/30 E
H01L21/304 622K
B24B41/06 L
B24B37/005 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019188954
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021062451
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】持丸 順行
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕志
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 保成
(72)【発明者】
【氏名】上原 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】高岡 和宏
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-034935(JP,A)
【文献】特開2002-346911(JP,A)
【文献】特開平11-309672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/30
H01L 21/304
B24B 41/06
B24B 37/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体からなるラバーチャックと剛体からなる剛体チャックとを備えるチャック機構と、
前記ラバーチャック近傍にエア供給可能な第1の圧力調整機構と、
前記剛体チャック近傍にエア供給可能な第2の圧力調整機構と、を有し、
前記ラバーチャックは、その下面で加工対象のウェーハを押し、
前記剛体チャックは、その下面が前記ラバーチャックの上面に当接可能であり、
前記剛体チャックの上方には、前記剛体チャックの外周部が保持される支持部を有し前記剛体チャックの上面を覆うチャック保持部材が設けられており、
前記第1の圧力調整機構は、前記ラバーチャックの上面と前記剛体チャックの下面との間にエア供給可能であり、
前記第2の圧力調整機構は、前記チャック保持部材の下面と前記剛体チャックの上面との間にエア供給可能であり、
前記第1の圧力調整機構によるエア供給と前記第2の圧力調整機構によるエア供給を切り換えることにより加工方法の切り換えが可能であることを特徴とするウェーハ研磨用ヘッド。
【請求項2】
前記剛体チャックは、ポーラス体から形成されていることを特徴とする請求項1に記載のウェーハ研磨用ヘッド。
【請求項3】
前記第1の圧力調整機構によってエア供給した状態で表面基準研磨の前記チャック機構が構成され、
前記第2の圧力調整機構によってエア供給した状態で裏面基準研磨の前記チャック機構が構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウェーハ研磨用ヘッド。
【請求項4】
前記第1の圧力調整機構は、前記ラバーチャック近傍の大気開放及び前記ラバーチャック近傍からのエア吸引が可能であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のウェーハ研磨用ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの研磨工程において半導体ウェーハを保持するウェーハ研磨用ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハの表面、即ち研磨面、を基準として研磨する表面基準研磨用のチャック機構として、弾性体から形成されたラバーチャック等の吸着チャックを有するチャック機構が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、半導体ウェーハを吸着保持するためのシリコンゴムやシリコン発泡体等の弾性体からなるバッキング部材を有する半導体ウェーハの研磨装置が開示されている。同文献に開示された弾性体からなるバッキング部材は、研磨用定盤の上方に設けられた保持プレートの下面に固着されており、半導体ウェーハは、半導体ウェーハが入る空隙部に純水で濡らして張り付けられて水膜により固着保持される。
【0004】
上記構成により、半導体ウェーハは弾性体からなるバッキング部材に吸着保持されているので、反りが矯正されて半導体ウェーハの表面が研磨用定盤の研磨布に押しつけられることになる。これにより、半導体ウェーハの裏面ではなく、その表面を基準とした研磨が行われる。
【0005】
また例えば、特許文献2には、ラバー膜にワークを保持する、いわゆるラバーチャック方式による研磨ヘッドが開示されている。この研磨ヘッドは、末端部がOリング状となったブーツ状のラバー膜を具備し、ラバー膜で密閉された密閉空間部に圧力調整機構より流体が供給されることにより、該ラバー膜が膨らみ、ワークの裏面に荷重が掛かる構造となっている。
【0006】
また、他の従来技術の例として、半導体ウェーハの研磨装置に関し、加工対象であるウェーハを保持して回転するウェーハ研磨用ヘッドのチャック機構として、剛体から形成された剛体チャック等の吸着チャックを有するチャック機構が知られている。
【0007】
例えば、特許文献3には、ウェーハを直接吸着することが可能なポーラスセラミックス板よりなる剛体の吸着パッドを有するチャック機構が開示されている。このチャック機構は、吸着パッドのウェーハを吸着する面に液体を吹き付ける液体供給ノズルを具備し、吸着パッドが取り付けられているヘッドのチャンバを減圧した状態で、液体供給ノズルで吸着パッドに液体を吹き付けた後、吸着パッドの吸着面にウェーハを吸着させる。
【0008】
そして、液体供給ノズルからの液体吹き付けを中止した後、研磨布の上にチャック機構を下降させてウェーハを当接し、ウェーハの回転と研磨布の回転を利用してウェーハの表面を研磨布で研磨する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平7-263386号公報
【文献】特開2009-107094号公報
【文献】特開平11-309672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1や特許文献2に開示された従来技術のように、ラバーチャック等の吸着チャックを有するラバーチャック方式のウェーハ研磨用ヘッドでは、半導体ウェーハの表面を基準として平坦性の高い高精度な研磨が可能である。
【0011】
しかしながら、従来技術のラバーチャック方式による表面基準研磨用のウェーハ研磨用ヘッドでは、半導体ウェーハの裏面を基準とした裏面基準研磨を行うことはできない。裏面基準研磨を行うためには、裏面基準研磨が可能なウェーハ研磨用ヘッドに交換して半導体ウェーハを持ち換える工程が必要であった。
【0012】
特許文献3に開示された従来技術のように、ポーラスセラミックス板等の剛体から形成された剛体チャックを有するウェーハ研磨用ヘッドによれば、剛性の高い吸着パッドで半導体ウェーハの裏面を平坦として保持し、裏面を基準とした裏面基準研磨を実行することができる。
【0013】
しかしながら、従来技術の剛体から形成された剛体チャックを有する剛体チャック方式のウェーハ研磨用ヘッドでは、半導体ウェーハの表面を基準とする表面基準研磨を行うことはできない。
【0014】
よって、従来技術によれば、加工対象に応じて要求される好適な加工方法を実現するためには、ラバーチャックを有するラバーチャック方式のウェーハ研磨用ヘッドと、剛体チャックを有する剛体チャック方式のウェーハ研磨用ヘッドと、の両方を準備する必要があった。そして、加工プロセスに対応して、ラバーチャック方式のウェーハ研磨用ヘッドと、剛体チャック方式のウェーハ研磨用ヘッドと、を付け換えて使用しており、その交換工程に時間を要していた。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウェーハ研磨装置の生産性を向上させると共に、研磨プロセスの効率化を図ることができるウェーハ研磨用ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のウェーハ研磨用ヘッドは、弾性体からなるラバーチャックと剛体からなる剛体チャックとを備えるチャック機構と、前記ラバーチャック近傍にエア供給可能な第1の圧力調整機構と、前記剛体チャック近傍にエア供給可能な第2の圧力調整機構と、を有し、前記ラバーチャックは、その下面で加工対象のウェーハを押し、前記剛体チャックは、その下面が前記ラバーチャックの上面に当接可能であり、前記剛体チャックの上方には、前記剛体チャックの外周部が保持される支持部を有し前記剛体チャックの上面を覆うチャック保持部材が設けられており、前記第1の圧力調整機構は、前記ラバーチャックの上面と前記剛体チャックの下面との間にエア供給可能であり、前記第2の圧力調整機構は、前記チャック保持部材の下面と前記剛体チャックの上面との間にエア供給可能であり、前記第1の圧力調整機構によるエア供給と前記第2の圧力調整機構によるエア供給を切り換えることにより加工方法の切り換えが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のウェーハ研磨用ヘッドによれば、チャック機構として弾性体からなるラバーチャックと剛体からなる剛体チャックとを備え、ラバーチャック近傍にエア供給可能な第1の圧力調整機構と、剛体チャック近傍にエア供給可能な第2の圧力調整機構と、を有し、第1の圧力調整機構によるエア供給と第2の圧力調整機構によるエア供給を切り換えることにより加工方法の切り換えが可能である。これにより、1つのウェーハ研磨用ヘッドで、ラバーチャック方式の研磨加工と、剛体チャック方式の研磨加工と、を切り換えて実行することができる。よって、ラバーチャックを有するウェーハ研磨用ヘッドと、剛体チャックを有するウェーハ研磨用ヘッドと、を別々に設ける必要がなくなり、ウェーハ研磨装置の生産性を向上させることができる。また、ラバーチャックを有するウェーハ研磨用ヘッドと、剛体チャックを有する研磨用ヘッドと、を交換するプロセスがなくなるので、研磨プロセスの効率化を図ることができる。
【0018】
また、本発明のウェーハ研磨用ヘッドによれば、ラバーチャックは、その下面で加工対象のウェーハを押し、剛体チャックは、その下面がラバーチャックの上面に当接可能であっても良い。これにより、従来技術のラバーチャックのみを有するラバーチャック方式のウェーハ研磨用ヘッドと同様に、ラバーチャックのみでウェーハを押圧して研磨加工を行うことができる。また、剛体チャックをラバーチャックの上面に当接させることにより、従来技術の剛体チャックのみを有する剛体チャック方式のウェーハ研磨用ヘッドと略同等に、ウェーハを吸着保持することができる。
【0019】
また、本発明のウェーハ研磨用ヘッドによれば、第1の圧力調整機構は、ラバーチャックの上面と剛体チャックの下面との間にエア供給可能であり、第2の圧力調整機構は、剛体チャックの上面にエア供給可能であっても良い。これにより、第1の圧力調整機構によりラバーチャックの上面と剛体チャックの下面との間にエア供給し、ラバーチャックの下面でウェーハを保持するラバーチャック方式のチャック機構を構成することができる。また、第2の圧力調整機構によって剛体チャックの上面にエア供給し、剛体チャックの下面をラバーチャックの上面に当接させた状態で、ラバーチャックの下面でウェーハを保持する剛体チャック方式のチャック機構を構成することができる。
【0020】
また、本発明のウェーハ研磨用ヘッドによれば、剛体チャックは、ポーラス体から形成されていても良い。これにより、剛体チャックを介する高精度な空気圧調整が可能となり、ラバーチャックの上面を平坦状に硬く支持することができる。よって、剛体チャック方式のウェーハ研磨用ヘッドとしての優れた機能を発揮することができる。
【0021】
また、本発明のウェーハ研磨用ヘッドによれば、第1の圧力調整機構によってエア供給した状態で表面基準研磨のチャック機構が構成され、第2の圧力調整機構によってエア供給した状態で裏面基準研磨のチャック機構が構成されても良い。これにより、表面基準研磨用と裏面基準研磨用の2種類のウェーハ研磨用ヘッドを準備することなく、1つのウェーハ研磨用ヘッドで表面基準研磨と裏面基準研磨を実行することができる。よって、ウェーハ研磨用ヘッドの種類を減らすことができるのでウェーハ研磨装置の生産性が向上し、ウェーハ研磨用ヘッドの交換プロセスが不要になるので、研磨加工の効率化を図ることができる。
【0022】
また、本発明のウェーハ研磨用ヘッドによれば、第1の圧力調整機構は、ラバーチャック近傍の大気開放及びラバーチャック近傍からのエア吸引が可能であっても良い。このような構成の第1の圧力調整機構により、ラバーチャック近傍を、エア供給によって加圧して正圧に、大気開放によって大気圧に、及びエア吸引によって減圧して負圧に、調整することができる。これにより、ラバーチャック方式のチャック機構と剛体チャック方式のチャック機構を高精度に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るウェーハ研磨用ヘッドを備えたウェーハ研磨装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るウェーハ研磨用ヘッドの概略構成を示す断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るウェーハ研磨用ヘッド1を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るウェーハ研磨用ヘッド1を備えたウェーハ研磨装置の概略構成を示す図である。
【0025】
図1を参照して、ウェーハ研磨用ヘッド1は、ウェーハ研磨装置に設けられて、ウェーハWを研磨する工程において、ウェーハWを吸着保持する装置である。ウェーハWは、例えば、半導体ウェーハである。
【0026】
ウェーハ研磨装置は、ウェーハWを研磨する装置であり、回転自在な作業テーブル30と、液体供給ノズル33と、ウェーハ研磨用ヘッド1と、を有する。
作業テーブル30は、定盤上に回転自在に設けられており、回転軸32を介して図示しない駆動装置によって駆動され回転する。
【0027】
作業テーブル30の上面部には、上載台が設けられており、その上載台の上面に、ウェーハWを研磨する研磨布31が載置される。上載台の上面に載置された研磨布31は、例えば、図示しない減圧装置を利用して、上載台に真空吸着されても良い。
【0028】
作業テーブル30の内部、上載台の下面側には、図示しないチャンバが形成されており、そのチャンバを図示しない減圧装置で減圧することにより、上載台の上面に載置された研磨布31を吸着することができる。
【0029】
上載台としては、例えば、ポーラス酸化アルミナ、ポーラスセラミックス、焼結金属、その他合成樹脂のポーラス素材からなる板材が使用される。
研磨布31は、ウェーハWを研磨するための布材料である。研磨布31としては、例えば、発泡ポリウレタンシート、フェルトが利用されても良い。
【0030】
液体供給ノズル33は、研磨布31、ウェーハW、ラバーチャック10(図2参照)等に研磨用の液体を供給するためのノズルである。液体供給ノズル33から吹き付けられる研磨用の液体としては、例えば、純水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液が使用される。
【0031】
ウェーハ研磨用ヘッド1は、加工対象のウェーハWを保持して回転駆動する装置である。ウェーハ研磨用ヘッド1は、その下面にウェーハWを保持した状態で、回転軸27を介して図示しない駆動装置によって駆動され回転する。ウェーハWは、その上面がウェーハ研磨用ヘッド1に保持されて回転し、下面が作業テーブル30上で回転する研磨布31の上面に押圧されて研磨される。以下、適宜、研磨面となるウェーハWの下面を表面と、ウェーハWの上面を裏面と、称する。
【0032】
図2は、ウェーハ研磨用ヘッド1の概略構成を示す断面略図である。
図2を参照して、ウェーハ研磨用ヘッド1は、チャック機構として、ラバーチャック10と、剛体チャック11と、を備えている。
【0033】
ウェーハ研磨用ヘッド1は、ラバーチャック方式のチャック機構としての機能を有すると共に、剛体チャック方式のチャック機構としての機能を有し、ラバーチャック方式と剛体チャック方式を切り換えて利用可能である。
【0034】
ラバーチャック10は、合成ゴム材等の弾性体から形成された略円板状の部材である。ラバーチャック10の外周部近傍は、チャック保持部材12の外周部近傍の図示しない支持部に固定されている。
【0035】
剛体チャック11は、ポーラスセラミックス、ポーラス酸化アルミナ、焼結金属板、アルミニウム、その他合成樹脂等の剛体材料から形成された略円板状の部材である。剛体チャック11は、ラバーチャック10の上方に設けられ、剛体チャック11の外周部近傍は、チャック保持部材12の外周部近傍の図示しない支持部に保持されている。剛体チャックがポーラス体から形成されることにより、剛体チャック10を介する高精度な空気圧調整が可能となり、ラバーチャック10の上面を平坦状に硬く支持することができ、剛体チャック方式のウェーハ研磨用ヘッド1としての優れた機能を発揮することができる。
【0036】
ウェーハ研磨用ヘッド1は、ラバーチャック10近傍、例えば、ラバーチャック10と剛体チャック11との間にエア供給可能な第1の圧力調整機構23を備えている。第1の圧力調整機構23は、エア配管、エアバルブ等を有し、図示しない真空ポンプ、コンプレッサ等に接続されて、ラバーチャック10の上面と剛体チャック11の下面との間に空気を供給し、または、ラバーチャック10の上面と剛体チャック11の下面との間から空気を排出し、ラバーチャック10と剛体チャック11の間の圧力を調整する。
【0037】
ウェーハ研磨用ヘッド1は、剛体チャック11近傍にエア供給可能な第2の圧力調整機構24を備えている。第2の圧力調整機構24は、例えば、チャック保持部材12内部の剛体チャック11の上方にエア供給可能に設けられている。第2の圧力調整機構24は、剛体チャック11上方の空気の圧力を調整するための機構である。
【0038】
第2の圧力調整機構24は、エア配管、エアバルブ等を有し、図示しないコンプレッサ等に接続される。第2の圧力調整機構24は、剛体チャック11の上面に空気を供給し、または、剛体チャック11の上面から空気を排出し、剛体チャック11の上方の圧力を調整する。
【0039】
チャック保持部材12の上方には、チャックベース26が設けられている。チャックベース26は、チャック保持部材12を支持する部材である。ウェーハW(図1参照)を研磨する工程において、チャックベース26は、チャック保持部材12に対して回転する駆動力を伝達する。また、チャックベース26は、チャック保持部材12の上面に当接して、ラバーチャック10の下面をウェーハWに接触させるよう、チャック保持部材12を下方に押圧する。
【0040】
チャックベース26の下部には、略円板状のドライブリング28が設けられている。ドライブリング28は、ばね鋼等から形成され、その表面はゴム部材で覆われている。ドライブリング28の外周部近傍は、チャックベース26に固定されており、ドライブリング28の内周部近傍は、チャック保持部材12の回転軸部に摺動自在に連結されている。
【0041】
チャックベース26の上部には、回転軸27が設けられている。ウェーハ研磨用ヘッド1は、図示しない駆動装置から回転軸27を介して伝達される回転動力によって回転する。回転軸27には、後述する第3の圧力調整機構25を構成する中空部が形成されている。
【0042】
チャックベース26の内部、ドライブリング28の上方には、チャンバ22となる空間が形成されている。回転軸27の中空部は、チャンバ22に連通しており、チャンバ22の空気の圧力を調整するための第3の圧力調整機構25を構成している。
【0043】
第3の圧力調整機構25は、図示しないエア配管、エアバルブ等を有し、コンプレッサ等に接続されて、チャンバ22に空気を供給し、または、チャンバ22から空気を排出し、チャンバ22の圧力を調整する。
【0044】
次に、図1及び図2を参照して、ウェーハ研磨用ヘッド1の研磨加工に使用する際の態様について詳細に説明する。
先ず、ウェーハ研磨用ヘッド1をラバーチャック方式として機能させる際の態様について説明する。
ウェーハ研磨用ヘッド1をラバーチャック方式とする研磨工程において、ラバーチャック10と剛体チャック11の間は第1の圧力調整機構23によるエア供給によって加圧され正圧に、剛体チャック11の上方は第2の圧力調整機構24によって大気開放され大気圧に、チャンバ22は第3の圧力調整機構25によるエア供給によって加圧され正圧に、調整される。
【0045】
ラバーチャック10と剛体チャック11の間が正圧に、剛体チャック11の上方が大気圧に、調整されることにより、剛体チャック11によるラバーチャック10への押圧が制限される。これにより、ラバーチャック10の下面でウェーハを保持するラバーチャック方式のチャック機構を構成することができる。
【0046】
チャックベース26が駆動手段によって回転駆動され、上方から下方に向かって押圧されると、その回転駆動力及び押圧力は、正圧に調整されたチャンバ22及びドライブリング28を介してチャック保持部材12の上部に伝達される。そして、回転駆動力及び押圧力は、チャック保持部材12からラバーチャック10に伝達される。これにより、ラバーチャック10の下面でウェーハWを保持し、ウェーハWを研磨布31の上面に押し当てて回転させる研磨加工を実行することができる。
【0047】
ここで、ラバーチャック10は弾性体からなり、ラバーチャック10の弾性変形が剛体チャック11の押圧によって制限されることはないので、ラバーチャック10の下面はウェーハWの上面、即ち裏面、の形状に合わせて変形可能である。これにより、ウェーハWの下面、即ち表面、を基準とした表面基準研磨を実行可能なチャック機構が構成される。即ち、ウェーハWの表面を基準として、表面を高精度に平坦化加工する表面基準研磨が実行され、優れた平坦度のウェーハWが得られる。
【0048】
次に、ウェーハ研磨用ヘッド1を剛体チャック方式として機能させる際の態様について詳細に説明する。
ウェーハ研磨用ヘッド1を剛体チャック方式として機能させる研磨工程においては、ラバーチャック10と剛体チャック11の間は第1の圧力調整機構23によって大気開放され大気圧に、剛体チャック11の上面は第2の圧力調整機構24によって加圧され正圧に、チャンバ22は第3の圧力調整機構25によって加圧され正圧に、調整される。
【0049】
ラバーチャック10と剛体チャック11の間が大気圧に、剛体チャック11の上方が正圧に、調整されることにより、剛体チャック11の下面はラバーチャック10の上面に当接する。即ち、ラバーチャック10の上面と剛体チャック11の下面との間には間隙がなくなる。換言すれば、ラバーチャック10は、その上面に当接する剛体からなる硬い剛体チャック11によって保持された状態となる。
【0050】
チャックベース26が駆動手段によって回転駆動され、上方から下方に向かって押圧されると、その回転駆動力及び押圧力は、正圧に調整されたチャンバ22及びドライブリング28を介してチャック保持部材12の上部に伝達される。そして、回転駆動力及び押圧力は、チャック保持部材12から剛体チャック11及びラバーチャック10に伝達される。これにより、ラバーチャック10の下面でウェーハWを保持し、ウェーハWの表面を研磨布31の上面に押し当てて回転させる研磨加工を実行することができる。
【0051】
ここで、ラバーチャック10の上面は、剛体からなる剛体チャック11の平坦な下面に当接して保持されているので、ラバーチャック10の下面はウェーハWの上面、即ち裏面、を押圧して平坦に保持することができる。これにより、ウェーハWの裏面を基準とした裏面基準研磨を実行可能なチャック機構が構成される。よって、ウェーハWの裏面を基準として、裏面を平坦に保持した裏面基準研磨が実行され、面粗さが優れたウェーハWが得られる。
【0052】
次に、ウェーハ研磨用ヘッド1のウェーハ搬送工程における状態について詳細に説明する。
ウェーハ搬送工程においては、ラバーチャック10と剛体チャック11の間は第1の圧力調整機構23のエア吸引によって減圧され負圧に、剛体チャック11の上面は第2の圧力調整機構24によって加圧され正圧に、チャンバ22は第3の圧力調整機構25によって大気開放され大気圧に、調整される。
【0053】
ラバーチャック10と剛体チャック11の間が負圧に、剛体チャック11の上面が正圧に、調整されることにより、剛体チャック11の下面がラバーチャック10の上面に当接した状態で保持される。即ち、ラバーチャック10の上面と剛体チャック11の下面との間には間隙がなくなる。換言すれば、ラバーチャック10は、その上面に当接する剛体からなる剛体チャック11に保持される。よって、ラバーチャック10は、平坦な状態でウェーハWを吸着することができる。
【0054】
チャック保持部材12の図示しない回転軸部の上部周縁近傍には、搬送工程においてチャック保持部材12を支持するための図示しない支持部が形成されている。その支持部は、例えば、半径方向に突出する略環状の形態をなす。また、チャックベース26の内部には、チャック保持部材12の支持部に当接してチャック保持部材12を支える、例えば、略環状の図示しない支持部材が設けられている。
【0055】
搬送工程において、図示しない駆動装置によってチャックベース26が持ち上げられると、チャックベース26の支持部材がチャック保持部材12の支持部に当接して、チャック保持部材12が持ち上げられる。これにより、ラバーチャック10は、下面にウェーハWを吸着した状態で上昇し、ウェーハWは、ラバーチャック10に吸着された状態で研磨布31から離間して搬送される。
【0056】
前述のとおり、搬送時において、ラバーチャック10の上面には剛体からなる剛体チャック11が当接している。これによりラバーチャック10は、変形が抑えられて、平坦な状態で薄いウェーハWを吸着して搬送することができる。
【0057】
以上説明の如く、本実施形態に係るウェーハ研磨用ヘッド1によれば、チャック機構として弾性体からなるラバーチャック10と剛体からなる硬い剛体チャック11とを備え、ラバーチャック10の上面と剛体チャック11の下面との間にエア供給可能な第1の圧力調整機構23と、剛体チャック11の上面にエア供給可能な第2の圧力調整機構24と、を有し、第1の圧力調整機構23によるエア供給と第2の圧力調整機構24によるエア供給を切り換えることにより加工方法の切り換えが可能である。
【0058】
このような構成により、ウェーハ研磨用ヘッド1は、ラバーチャック10によるラバーチャック方式のチャック機構としての機能と、剛体チャック11による剛体チャック方式のチャック機構としての機能と、を兼ね備え、その2つの機能を調整可能である。
【0059】
これにより、ラバーチャック方式専用のウェーハ研磨用ヘッドと、剛体チャック方式専用のウェーハ研磨用ヘッドと、を別々に設ける必要がなくなり、1つのウェーハ研磨用ヘッド1を設ければ良いので、ウェーハ研磨用ヘッドの種類を減らすことができ、ウェーハ研磨装置の生産性を向上させることができる。また、ラバーチャック方式専用のウェーハ研磨用ヘッドと、剛体チャック方式専用のウェーハ研磨用ヘッドと、を交換するプロセスがなくなるので、研磨プロセスの効率化を図ることができる。
【0060】
例えば、ウェーハ研磨用ヘッド1を交換することなく、ラバーチャック10の上面と剛体チャック11の下面との間を正圧、剛体チャック11の上面を大気圧にした状態で表面基準研磨のチャック機構が構成され、ラバーチャック10の上面と剛体チャック11の下面との間を大気圧、剛体チャック11の上面を正圧にした状態で裏面基準研磨のチャック機構が構成される。また、ラバーチャック10の上面と剛体チャック11の下面との間を負圧にし、剛体チャック11の上面を正圧にした状態でウェーハ搬送機能が構成される。これにより、表面基準研磨用、裏面基準研磨用及びウェーハ搬送用のウェーハ研磨用ヘッドを別々に準備することなく、1つのウェーハ研磨用ヘッド1で表面基準研磨、裏面基準研磨及びウェーハ搬送を実行することができる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 ウェーハ研磨用ヘッド
10 ラバーチャック
11 剛体チャック
12 チャック保持部材
22 チャンバ
23 第1の圧力調整機構
24 第2の圧力調整機構
25 第3の圧力調整機構
26 チャックベース
27 回転軸
28 ドライブリング
30 作業テーブル
31 研磨布
32 回転軸
33 液体供給ノズル
W ウェーハ
図1
図2