IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大塚製薬株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-抗I型アレルギー剤 図1
  • 特許-抗I型アレルギー剤 図2
  • 特許-抗I型アレルギー剤 図3
  • 特許-抗I型アレルギー剤 図4
  • 特許-抗I型アレルギー剤 図5
  • 特許-抗I型アレルギー剤 図6
  • 特許-抗I型アレルギー剤 図7
  • 特許-抗I型アレルギー剤 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】抗I型アレルギー剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20231024BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20231024BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231024BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
A23L33/135
A61K35/747
A61P11/02
A61P11/06
A61P17/00
A61P27/14
A61P37/06
A61P37/08
C12N1/20 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019196388
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021069289
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (その1) 発送日 2018年10月29日 刊行物 第21回日本補完代替医療学会学術集会 抄録集 (その2) 開催日 2018年11月10日から2018年11月11日 集会名、開催場所 第21回日本補完代替医療学会学術集会 日本獣医生命科学大学・日本医科大学武蔵境校舎(東京都武蔵野市境南町1-7-1) (その3) 開催日 2019年4月17日 集会名、開催場所 岡山市薬剤師会保険薬局部会研修会 岡山大学病院マスカットキューブ3F(岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1) (その4) ウェブサイトの掲載日 2019年9月18日 ウェブサイトのアドレス http://www.cc.kochi-u.ac.jp/▲~▼nmiyake/am60/index.html http://www.cc.kochi-u.ac.jp/▲~▼nmiyake/am60/am60_program.pdf (その5) 発行日 2019年10月11日 刊行物 日本花粉学会第60回大会講演要旨 (その6) 開催日 2019年10月11日~2019年10月13日 集会名、開催場所 日本花粉学会第60回大会 高知大学(朝倉キャンパス)(高知市曙町2-5-1) (その7) ウェブサイトの掲載日 2019年10月15日 ウェブサイトのアドレス https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2019/20191015_1.html
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-10065
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 高雄
(72)【発明者】
【氏名】羽室 浩爾
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】甲田 哲之
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-004620(JP,A)
【文献】特開2003-300887(JP,A)
【文献】国際公開第2005/019438(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/023665(WO,A1)
【文献】特開2006-321786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 31/00-33/29
A61K 35/00-36/068
A61P 1/00-43/00
C12N 1/00- 7/08
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルスONRICb0240(FERM BP-10065)又はその変異株を含有する、抗I型アレルギー剤。
【請求項2】
前記I型アレルギーが、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、アレルギー性皮膚炎、気管支喘息、蕁麻疹、アレルギー性結膜炎、又はアナフィラキシーショックである、請求項1に記載の抗I型アレルギー剤。
【請求項3】
ラクトバチルスONRICb0240(FERM BP-10065)又はその変異株を含有する、花粉症軽減剤。
【請求項4】
ラクトバチルスONRICb0240(FERM BP-10065)又はその変異株を含有する、アレルゲンによる不快感の軽減剤。
【請求項5】
前記アレルゲンが花粉である、請求項に記載のアレルゲンによる不快感の軽減剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗I型アレルギー剤、花粉症軽減剤、アレルゲンによる不快感の軽減剤、及びIgE低減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本の多くの人々が、スギ(Cryptomeria japonica)花粉によって引き起こされるアレルギー反応に苦しんでおり、その患者の数は、人口の約3分の1を占め、多くの対策が講じられているが増加している。したがって、花粉症は国民病であり、スギ花粉の季節には、毎日、スギ花粉の飛散予報がマスコミにより発表されている。
【0003】
くしゃみ、鼻水、鼻づまり及び目のかゆみのようなアレルギー反応は、スギ花粉曝露の最初の段階では現れないが、花粉曝露が反応に必要なしきい値を越えると発症する。したがって、アレルギー反応を最小限にするためには曝露を防ぐことが重要であり、完全にスギ花粉を防ぐことができなくても、多くの人々がスギ花粉の季節中にはマスクを着けている。
【0004】
抗ヒスタミン剤又はステロイド点鼻薬のような抗アレルギー剤は、花粉曝露後の症状を緩和するために使用されるが、それらの効果は一時的であったり、眠気のような副作用を有している。舌下免疫療法は、日本においてスギ花粉又はダニアレルギーのための治療法として最近承認された。しかしながら、毎日、長期間の摂取が必要であり、口腔そう痒症、口腔浮腫、咽頭刺激感及びくしゃみのような局所的副作用が生じることが知られている。したがって、新しい治療方法の開発が求められている。
【0005】
アレルギー反応の重症度は幅広く、個人のアレルギー反応のタイプ及び重症度に応じて適切な治療が行われるべきである。例えば、軽度の反応を示す人では、アレルギー症状を減少させるだけでなく、QOLを改善する効果を有する抗アレルギー食品の摂取により、アレルギーをコントロールすることもできる。
【0006】
乳酸菌の一種であるラクトバチルスONRICb0240(FERM BP-10065)株は、抗鳥インフルエンザ抗体産生促進作用(特許文献1)、肺炎予防、風邪予防、生活の質(Quality of Life;QOL)の改善作用(特許文献2)を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-222329号公報
【文献】国際公開第2012/133533号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新たな抗I型アレルギー剤、花粉症軽減剤、アレルゲンによる不快感の軽減剤、及びIgE低減剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アレルギー性鼻炎モデルマウスを用いた試験とヒトの花粉に対するアレルギー反応についての試験により、ラクトバチルスONRICb0240(FERM BP-10065)がI型アレルギーに対する抗アレルギー作用を有することを見出した。
【0010】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の抗I型アレルギー剤、花粉症軽減剤、アレルゲンによる不快感の軽減剤、及びIgE低減剤を提供するものである。
【0011】
(1)抗I型アレルギー剤
項1-1.ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌を含有する、抗I型アレルギー剤。
項1-2.前記I型アレルギーが、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、アレルギー性皮膚炎、気管支喘息、蕁麻疹、アレルギー性結膜炎、又はアナフィラキシーショックである、項1-1に記載の抗I型アレルギー剤。
項1-3.前記ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌が、ラクトバチルスONRICb0240(FERM BP-10065)又はその変異株である、項1-1又は1-2に記載の抗I型アレルギー剤。
項1-4.飲食品又は医薬品である、項1-1~1-3のいずれか一項に記載の抗I型アレルギー剤。
【0012】
(2)花粉症軽減剤
項2-1.ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌を含有する、花粉症軽減剤。
項2-2.前記ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌が、ラクトバチルスONRICb0240(FERM BP-10065)又はその変異株である、項2-1に記載の花粉症軽減剤。
項2-3.飲食品又は医薬品である、項2-1又は2-2に記載の花粉症軽減剤。
【0013】
(3)アレルゲンによる不快感の軽減剤
項3-1.ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌を含有する、アレルゲンによる不快感の軽減剤。
項3-2.前記アレルゲンが花粉である、項3-1に記載のアレルゲンによる不快感の軽減剤。
項3-3.前記ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌が、ラクトバチルスONRICb0240(FERM BP-10065)又はその変異株である、項3-1又は3-2に記載のアレルゲンによる不快感の軽減剤。
項3-4.飲食品又は医薬品である、項3-1~3-3のいずれか一項に記載のアレルゲンによる不快感の軽減剤。
【0014】
(4)IgE低減剤
項4-1.ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌を含有する、IgE低減剤。
項4-2.前記ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌が、ラクトバチルスONRICb0240(FERM BP-10065)又はその変異株である、項4-1に記載のIgE低減剤。
項4-3.飲食品又は医薬品である、項4-1又は4-2に記載のIgE低減剤。
【発明の効果】
【0015】
ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌は優れたI型アレルギーに対する抗アレルギー作用を有するので、抗I型アレルギー剤、花粉症軽減剤、及びアレルゲンによる不快感の軽減剤の有効成分として有用である。また、より詳細には、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌は優れたIgE低減作用を有するので、IgE低減剤の有効成分として有用である。そのため、本発明によれば、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌を有効成分とする、抗I型アレルギー剤、花粉症軽減剤、アレルゲンによる不快感の軽減剤、及びIgE低減剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】試験例1の試験スケジュールを示す。
図2】試験例1の試験期間中の体重推移を示すグラフである。値は平均±SE(n=8)(非感作群のみn=3)
図3】試験例1の鼻掻き回数を示すグラフである。値は平均±SE(n=8)(非感作群のみn=3)*P < 0.05 (vsコントロール群, Dunnett test) #P < 0.05 (vsコントロール群, t-test)
図4】試験例1の血清IgE濃度を示すグラフである。値は平均±SE(n=8)(非感作群のみn=3)*P < 0.1 (vsコントロール群, Dunnett test) **P < 0.01 (vsコントロール群, t-test)
図5】試験例2の試験デザイン及び花粉曝露日のスケジュールを示す図である。
図6】試験例2で使用したアンケートを示す図である。
図7】試験例2の被験者の選択フローを示す図である。
図8】試験例2の0週と8週の花粉曝露3時間の顔スケールスコアの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明の抗I型アレルギー剤、花粉症軽減剤、アレルゲンによる不快感の軽減剤、及びIgE低減剤は、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌を有効成分として含有することを特徴とする。
【0019】
本発明におけるI型アレルギーとしては、特に制限されないが、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、アレルギー性皮膚炎、気管支喘息、蕁麻疹、アレルギー性結膜炎、アナフィラキシーショックなどが挙げられる。
【0020】
本発明におけるアレルゲンとしては、特に制限されないが、ハウスダスト、ほこり、花粉、ダニ、カビ、細菌及び動物のフケなどが挙げられ、特に花粉である。花粉の種類としては、特に制限されないが、スギ、ヒノキ、ハンノキ、シラカンバ、サワラ、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、イネ科植物などの花粉が挙げられ、特にスギ花粉である。
【0021】
本発明のアレルゲンによる不快感の軽減剤における不快感としては、例えば、目、鼻のアレルギー反応及びQOL低下を総括した不快感であり、具体的には、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ、目のかゆみ、流涙などの症状やアレルゲン曝露によるQOL低下を含む総括的な不快感が挙げられる。
【0022】
本発明において使用されるラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)としては、例えば、ラクトバチルス・ペントーサスS-PT84、ラクトバチルスONRICb0240株などが挙げられ、好ましくはラクトバチルスONRICb0240株である。ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌は、1種又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。
【0023】
ラクトバチルスONRICb0240(以下、B240と表記することもある)株は、天然物から単離された乳酸菌であり、平成15年8月6日に、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6に住所を有する独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(IPOD)に寄託番号FERM P-19470として寄託され、現在、国際寄託に移管されており、その国際寄託番号はFERM BP-10065である。なお、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターは、2012年4月に独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センターと統合され、現在、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター特許生物寄託センター(NITE-IPOD)(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)にてその微生物寄託業務は承継されている。ラクトバチルスONRICb0240株の菌学的性質については、既知である。なお、本発明で使用されるラクトバチルスONRICb0240株は、国際寄託の時点では、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)に属すると分類されていたが、その後の分類基準の変更(Francois Bringle et al., International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, Vol. 55, 2005, p.1629-1634)に伴い、本株は、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)に分類されることになった。
【0024】
ラクトバチルスONRICb0240株の変異株としては、ラクトバチルスONRICb0240株から得られた任意の株であって、ラクトバチルスONRICb0240株と同様に抗アレルギー作用を有するものである限り特に制限されない。このような変異株は、例えば、自然突然変異、化学的若しくは物理的変異原による誘発変異によって人工的に突然変異の頻度を高める方法、又は遺伝子組換え技術により得ることができる。変異原の例としては、例えば、エチルメタンスルホネート、亜硝酸、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、UV照射、重イオンビーム照射、X線照射、ガンマ線照射などが挙げられる。
【0025】
本発明の抗I型アレルギー剤、花粉症軽減剤、アレルゲンによる不快感の軽減剤、及びIgE低減剤(以下、抗I型アレルギー剤等と表記することもある)に含有されるラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌は、生菌の状態であってもよく、死菌の状態であってもよく、菌体処理物であってもよく、また、これらが混合された状態であってもよい。ここで、生菌とは、生きた状態の乳酸菌であり、乳酸菌の培養液、当該培養液の懸濁物、粗精製物、精製物や、また、これらの生きた乳酸菌を凍結乾燥やスプレードライ等により乾燥させた菌体粉末なども含まれ、生きた状態である限り制限されない。また、死菌とは、生きた状態の乳酸菌を加熱処理、放射線処理等の物理的処理又は化学的処理に供して殺菌された状態の乳酸菌であり、殺菌された状態の乳酸菌が凍結乾燥やスプレードライ等により乾燥された菌体粉末なども含まれ、死菌である限り制限されない。また、菌体処理物とは、乳酸菌をホモジナイズ処理、酵素処理、超音波処理等で破壊した菌体破砕物であり、当該菌体破砕物を凍結乾燥やスプレードライ等により乾燥させた菌体破砕物の粉末も含まれる。本発明に含有されているラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌は、好ましくは生菌、死菌、菌体処理物又はこれらの混合物の状態であり、より好ましくは死菌又は生菌と死菌の混合物の状態であり、更に好ましくは死菌の状態ある。
【0026】
本発明の抗I型アレルギー剤等に使用されるラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌は、当該乳酸菌株の生育に適した培地で培養することによって増殖させることができる。培養方法は制限されないが、例えば、MRS培地、LBS培地、Rogosa培地等の培地中で30℃で16時間程度培養することによって増殖させることができる。また、菌体は、培養後に、例えば、培養物(培養液)を遠心分離(例えば、3,000rpm、4℃、10分間)して集菌することができる。また、本発明で使用されるラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌は、乳、野菜類、果物類、豆乳等などの素材等の存在下で培養(発酵)してもよい。前述同様、菌体は、培養後に遠心分離を行うことにより集菌することができる。本発明においては、このようにして得られる培養物(発酵物)や集菌された菌体、当該培養物又は菌体の懸濁物や濃縮物、また、このようにして得られた培養物、菌体、懸濁物、濃縮物を凍結乾燥やスプレードライ等により乾燥させて粉末化したものなども用いることもできる。これらの調製は、当業界で公知の方法に従って行うことができる。また、培養(発酵)がより効率よく行われる点から、発酵前の乳、野菜類、果物類、豆乳などの素材は、液状など一定以上の流動性を有することが好ましい。
【0027】
本発明の抗I型アレルギー剤等は、前述するように、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌を有効成分として含有すればよい。したがって、例えば、前記培養物をそのまま、あるいは均質化等の処理を施して、抗I型アレルギー剤等として使用してもよいし、前記調製したものを抗I型アレルギー剤等として使用してもよい。
【0028】
本発明の抗I型アレルギー剤等に、生きた状態のラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌が含有されている場合、生きた状態を一層良好に維持させる点から、必要に応じて更に、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌の生育に適した栄養成分を抗I型アレルギー剤等に含有させることが望ましい。当該栄養成分としては、例えば、グルコース、澱粉、蔗糖、乳糖、デキストリン、ソルビトール、フラクトース等の炭素源;酵母エキス、ペプトン等の窒素源;ビタミン類;ミネラル類;微量金属元素;その他の栄養成分等の各成分を挙げることができる。ビタミン類としては、具体的には、ビタミンB、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK等を例示できる。微量金属元素としては、具体的には、亜鉛、セレン等を例示できる。その他の栄養成分としては、具体的には、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラクチュロース、ラクチトール、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等の各種オリゴ糖を例示できる。
【0029】
また、本発明の抗I型アレルギー剤等には、更に必要に応じて任意の成分を含有させることができ、当該任意の成分として、例えば、可食性又は薬学的に許容される担体や添加物等を含有させることができる。可食性又は薬学的に許容される担体や添加物としては、水性媒体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、界面活性剤、浸透圧調節剤、付湿剤、pH調整剤、甘味料、香料、色素等が例示される。これらは当業者により公知であり、適宜選択して使用される。具体的には、これらの一例として、水、生理食塩水、果汁等の水性媒体;乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウム、コーンスターチ、デキストリン等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の崩壊剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤;ゼラチン、アラビアガム、デキストリン、メチルチセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、ペクチン、トラガントガム、カゼイン、アルギン酸等の増粘剤;リオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等の界面活性剤;ステビア、サッカリン、アセスルファムK、アスパラテーム、スクラロース等の甘味料等が挙げられる。
【0030】
必要に応じて使用される成分は当業者であれは適宜選択可能であり、また、当該成分の配合量は、目的とする形態や嗜好等に適合するよう、本発明の効果を妨げない範囲で、適宜調整すればよい。
【0031】
本発明の抗I型アレルギー剤等の形態は特に制限されないが、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、トローチ等の固形形態;ゼリー、ムース、ヨーグルト、プディング、クリームのような半固形形態、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の液状形態が挙げられる。また、これらの形態は、マイクロカプセル、ソフトカプセル、ハードカプセル等に充填されて、カプセル剤の形態とすることもできる。また、本発明の抗I型アレルギー剤等は、発泡製剤の形態とすることもできる。これらの形態の製造方法は、当業界で公知の方法に従って行うことができる。
【0032】
本発明の抗I型アレルギー剤等におけるラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌の含有量は、1日当たりの投与量、投与形態、投与回数、使用目的等に応じて適宜設定される。本発明の効果が奏されることを限度として制限されないが、例えば、本発明の抗I型アレルギー剤等におけるラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌の含有量は、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌が総菌数(すなわち、生菌、死菌、菌体処理物の合計数)として10cells/mg以上、好ましくは10~1012cells/mg、より好ましくは10~1011cells/mgである。
【0033】
また、本発明の抗I型アレルギー剤等におけるラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌の含有量は、本発明の効果が奏されることを限度として制限されないが、例えば、当該剤あたり、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌が総菌数して10cells以上、好ましくは10~1012cells、より好ましくは10~1012cells、更に好ましくは10~1012cells、効率良く所望の効果が得られる点から特に好ましくは総菌数として10~1011cells、一層好ましくは総菌数として10~1010cellsである。
【0034】
また、本発明の抗I型アレルギー剤等の投与量は、年齢、性別、症状等によって適宜調整されるが、成人1日当たりの投与量として、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌が総菌数として10cells以上、好ましくは10~1012cells、より好ましくは10~1012cells、更に好ましくは10~1012cells、効率良く所望の効果が得られる点から特に好ましくは10~1011cells、一層好ましくは10~1010cellsが例示される。これは、1日に1回又は数回に分けて投与することができる。投与方法は、本発明の効果を奏する限り制限されないが、経口投与が好ましい。
【0035】
なお、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌の総菌数は、公知の細菌数測定法や細菌数測定装置を使用して測定すればよい。例えば、公知の細菌数測定装置として顕微鏡、フローサイトメーター、また迅速検査装置バイオプローラ(登録商標)(パナソニックエコシステムズ社製)などが使用できる。後述する実施例においては、凍結乾燥原末を製造した段階でフローサイトメーターを使用して総菌数を測定した。
【0036】
また、本発明における適用対象は、I型アレルギー症状を緩和することを目的とする動物であれば制限されない。例えば、当該動物としてヒトなどの哺乳動物が挙げられるが、このほか、哺乳動物以外のペットや家畜をはじめとする多様な動物が挙げられる。本発明は、適用対象の年齢や性別を問わない。
【0037】
本発明の抗I型アレルギー剤等は飲食品に応用できる。すなわち、本発明の抗I型アレルギー剤等は、そのまま飲食品として使用できる。また、飲食品への添加剤として使用できる。このような本発明の抗I型アレルギー剤等を含有する飲食品によれば、本発明の抗I型アレルギー剤等に起因する効果、すなわち、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌に起因する前記効果が得られる。また、本発明の抗I型アレルギー剤等は、そのまま医薬品として使用できる。また、本発明の抗I型アレルギー剤等は医薬品への添加剤として使用できる。このような本発明の抗I型アレルギー剤等を含有する医薬品によれば、本発明の抗I型アレルギー剤等に起因する効果、すなわち、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌に起因する前記効果が得られる。
【0038】
本発明の抗I型アレルギー剤等がこのように飲食品又は医薬品に応用される場合、当該飲食品又は医薬品の種類は限定されず、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌を一成分として飲食品や医薬品に配合すればよく、また、必要に応じて任意の成分、例えば、可食性又は薬学的に許容される担体や添加物等を更に含有させることができる。可食性又は薬学的に許容される担体や添加物等としては、水性媒体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、界面活性剤、浸透圧調節剤、付湿剤、pH調整剤、甘味料、香料、色素等の前述のものが例示されるがこれらに限定されない。なお、これらの成分は当業者であれは適宜選択可能であり、また、当該成分の配合量は、目的とする形態や嗜好等に適合するよう、本発明の効果を妨げない範囲で、適宜調整すればよい。
【0039】
また、このように本発明の抗I型アレルギー剤等が飲食品又は医薬品に応用される場合の飲食品又は医薬品も本発明の効果を奏する限り制限されない。例えば、飲食品として、制限されないが、菓子類(ガム、キャンディー、クッキー、グミ、せんべい、ビスケット、ゼリー、ムース、クリームキャラメル、ラムネ菓子、可食性シート、可食性フィルム、トローチ等)、口中清涼剤(ガム、飴、グミ、可食性フィルム、トローチ等)、飲料(炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料、アルコール飲料、果汁飲料、茶類、栄養飲料等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、乳製品(チーズ、ヨーグルト等)、パン、麺類、シリアル等が挙げられる。また、飲食品として、例えば、特定保健用食品、栄養補助食品、サプリメント、機能性表示食品、病者用食品等を挙げることができる。また、医薬品についても限定されないが、前述するような固形形態、半固形形態、液状形態の製剤、カプセル剤、発泡製剤等が挙げられる。これらの製造方法は、当業界で公知の方法に従って行うことができる。
【0040】
本発明の抗I型アレルギー剤等を含有する飲食品又は医薬品におけるラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌の含有量は、1日当たりの投与量、投与形態、投与回数、使用目的等に応じて適宜設定される。本発明の効果が奏されることを限度として制限されないが、例えば、当該飲食品又は医薬品あたり、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌が総菌数として10cells/mg以上、好ましくは10~1012cells/mg、より好ましくは10~1011cells/mgである。
【0041】
また、当該飲食品又は医薬品におけるラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌の含有量は、本発明の効果が奏されることを限度として制限されないが、例えば、飲食品又は医薬品あたり、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌が総菌数して10cells以上、好ましくは10~1012cells、より好ましくは10~1012cells、更に好ましくは10~1012cells、効率良く所望の効果が得られる点から特に好ましくは総菌数として10~1011cells、一層好ましくは総菌数として10~1010cellsである。
【0042】
また、当該飲食品又は医薬品の投与量は、年齢、性別、症状等によって適宜調整されるが、成人1日当たりの投与量として、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌が総菌数として10cells以上、好ましくは10~1012cells、より好ましくは10~1012cells、更に好ましくは10~1012cells、効率良く所望の効果が得られる点から特に好ましくは10~1011cells、一層好ましくは10~1010cellsが例示される。これは、1日に1回又は数回に分けて投与することができる。
【0043】
後述する実施例で示すように、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌は優れたI型アレルギーに対する抗アレルギー作用を有するので、抗I型アレルギー剤、花粉症軽減剤、及びアレルゲンによる不快感の軽減剤の有効成分として使用することができる。また、より詳細には、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌は優れたIgE低減作用を有するので、IgE低減剤の有効成分として使用することができる。そのため、本発明によれば、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌を有効成分とする、抗I型アレルギー剤、花粉症軽減剤、アレルゲンによる不快感の軽減剤、及びIgE低減剤を提供することができる。また、本発明の抗I型アレルギー剤等は、食品として使用し得るラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌を有効成分とするものであり、副作用が無いか又は極めて少ない。さらに、本発明の抗I型アレルギー剤等は、軽度のアレルギー反応を示す人のQOL低下を軽減する目的でも使用することができる。
【0044】
前述するように、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌は、優れたI型アレルギーに対する抗アレルギー作用、また、より詳細には、優れたIgE低減作用を有している。このことから、本発明は更に、ラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌を用いてI型アレルギー症状を緩和する方法、花粉症を軽減する方法、アレルゲンによる不快感を軽減する方法、及びIgEを低減する方法(以下、I型アレルギー症状を緩和等する方法と表記することもある)を提供する。本発明のI型アレルギー症状を緩和等する方法は、I型アレルギー症状の緩和等を求める動物にラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌を投与することにより実施できる。すなわち、本発明のI型アレルギー症状を緩和等する方法は、I型アレルギー症状の緩和等が要求される動物に、前記抗I型アレルギー剤等、又は前記抗I型アレルギー剤等を含有する飲食品又は医薬品を摂取させる工程を含む。本発明の方法におけるラクトバチルス・ペントーサスに属する乳酸菌、前記抗I型アレルギー剤等、前記抗I型アレルギー剤等を含有する飲食品又は医薬品の投与量、投与回数、投与方法、投与部位等は前述に従う。
【実施例
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
試験例1
<試験方法>
・試験動物:7週齢雄性マウスBALB/cCrSlc(日本エスエルシー株式会社)
【0047】
・試験群:
(1)コントロール群(CRF-1粉末食)(n=8)
(2)PreB240群(0.25%b0240含有CRF-1粉末食)(n=8)
(3)PostB240群(0.25%b0240含有CRF-1粉末食)(n=8)
(4)非感作群(CRF-1粉末食)(n=3)
0.25%b0240含有CRF-1粉末食は、CRF-1粉末1kgに、乳酸菌ラクトバチルスONRICb0240原末2.5gを混合して調製した。なお、0.25%b0240は10mgに相当する。
【0048】
・評価項目:鼻掻き回数、血清IgE(総IgE)
鼻掻き回数については、観察用ケージ内に入れたマウスに50mg/mL OVA溶液を点鼻投与し、その直後からマウスの行動をビデオカメラで撮影した。鼻掻き回数は、マウスが前肢で鼻部を引っ掻いた行動のみを鼻掻き行動として計数した。なお、撮影画像がどの群であるかが分からないよう盲検化し、鼻掻き回数データ固定後に開錠した。
血清IgE(総IgE)については、Mouse OptEIA ELISA Set Mouse IgEを用い、キットの説明書に従い実施した。
【0049】
・試験スケジュール:図1に示すスケジュールにてOVAによる感作及びラクトバチルスONRICb0240の投与を行った。
初回感作は,マウスに腹腔投与用感作液(OVA0.5mg+水酸化アルミニウムゲル5mg+百日咳毒素1.5μg/mL溶液)0.2mLを腹腔内投与した。感作2回目は皮下投与用感作液(OVA0.5mg/mL溶液)0.1mLを背部皮下投与した。症状惹起は、惹起日午前中に、局所感作として1日1回の頻度で惹起用抗原投与液(OVA50mg/mL溶液)を、無麻酔下で保定したマウス両側鼻腔に2μLずつ、合計4μLを点鼻投与し、鼻アレルギー症状を惹起させた。非感作群では生理食塩水を感作群と同様の方法で投与した。ラクトバチルスONRICb0240の投与は、初回感作以前から0.25%b0240含有CRF-1粉末食を給餌する群(PreB240群)と感作2回目翌日から給餌する群(PostB240)を設定した。対照群は、CRF-1粉末食を給餌した。
【0050】
<試験結果>
試験期間中の体重推移の結果を図2に、鼻掻き回数の結果を図3に、血清IgE濃度の結果を図4に示す。
【0051】
図2から試験期間中に平均体重が減少した群は無かった。図3からラクトバチルスONRICb0240摂取によりアレルギー性鼻炎モデルマウスの鼻掻き回数が減少していた。図4からPreB240群について血清IgEは減少傾向を認めた。
【0052】
試験例2
<試験方法>
・被験者
被験者は、NPO日本健康増進支援機構によって20~65歳の間の健康なボランティアから募集された。全てのボランティアは、スギ花粉によると思われるアレルギー症状を経験していた。書面によるインフォームドコンセントを与えたボランティアは、次の選択基準に従い試験責任医師によって試験に適切であると判断され、被験者として登録された。1)同意時に20~65歳であること;2)試験に参加するために書面による同意を提供したこと;3)スギ花粉飛散時期以外にアレルギー性鼻炎の症状を示さず、投薬が必要でなかったこと;4)スギ花粉特異的IgE値が≧0.7UA/mLであること;及び5)事前診断後に試験責任医師によって試験に適切であると判断されたこと。
【0053】
除外基準は以下のとおりであった。1)妊娠中又は妊娠している可能性のある女性、及び試験中に妊娠を計画している女性;2)授乳中の女性;3)重度の呼吸器疾患、心臓病、肝臓病、腎臓病、糖尿病、自己免疫性疾患又はこれらの疾患の既往歴を有する被験者;4)急性鼻炎、副鼻腔炎又は肥厚性鼻炎を有する被験者;5)気管支喘息を有する被験者;6)試験の結果に影響し得る治療(舌下の免疫療法など)を受けている被験者;7)抗ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン薬、鼻内噴霧ステロイド、経口ステロイド又は免疫療法を受けている被験者;8)牛乳アレルギーを有する被験者;9)乳酸菌が豊富な食品(キムチ、ピクルス、飲料、ヨーグルト、特定保健用食品、機能性表示食品、又はサプリメント)又はプロバイオティクス含有医薬品を定期的に摂取した被験者;10)抗アレルギー食品を定期的に消費した被験者;11)事前診断の12週間以内に400mLの血液又は4週間以内に200mLの血液を提供した被験者;及び12)主任試験責任医師及び主任研究者によって試験に不適切であると考えられた被験者。
【0054】
・試験デザイン
試験は、無作為化二重盲検プラセボ対照試験としてデザインされ、2018年9月と12月の間にNPO日本健康増進支援機構(和歌山、日本)によって実施された。スギ花粉曝露を含む事前検診を受けた50人のボランティアからインフォームドコンセントを得た。スギ花粉曝露については、ボランティアは曝露施設に入り、3時間、スギ花粉8,000個/mに曝露され、その間、30分ごとに症状を記録した。被験者は、選択基準と除外基準の両方に基づき選ばれ、年齢及び男女比により調整された層別無作為化によって2群に分けられた。1)プラセボ錠剤摂取群(プラセボ群)、2)20億個のB240含有錠剤摂取群(B240群)。被験者は、8週間連続して毎日朝食前に1粒の錠剤を摂取し、試験期間中毎日、錠剤の摂取と健康状態を自己評価した。4週目及び8週目において、スギ花粉曝露が、事前検診と同じ方法で行なわれた(図5)。
【0055】
・試験食品
加熱殺菌されたB240を含有する錠剤は次のように調製した。B240細胞を培養し、繰り返し洗浄し、殺菌、凍結乾燥を行い、20億個のB240細胞を含有する乳糖錠剤を作製した。B240を含まない乳糖錠剤はプラセボとして使用した。2つの錠剤は、大きさ、味及び外観において判別不能だった。
【0056】
・測定
評価項目は、みずっぱな、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ、目のかゆみ、なみだめ、鼻水を拭くために使用されたティッシュペーパーの枚数及び総括的な顔スケールを含むアレルギー症状であり、環境曝露施設での3時間のスギ花粉への曝露によって引き起こされ、JRQLQ No.1に基づいたアンケートを参考にして評価された。被験者は、曝露施設に入る前に、症状の重症度、鼻を拭くために使用されたティッシュペーパーの枚数、及び総括的状態を自ら記録した。スギ花粉への曝露中に、アレルギー症状とQOLを評価するために一般的に使用されるJRQLQ No.1(1)を参考にして作成されたアンケートを使用して、30分毎に症状を記録した。JRQLQ No.1は、一般にアレルギー症状、QOL、QOLとアレルギー症状を組み合わせた総括的な顔スコアに関する質問からなる(2)。アンケートは、5段階評価で7つのパラメーター(みずっぱな、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ、目のかゆみ、なみだめ、及び総括的な顔スケール)を含んでいる。鼻水を拭くために使用されたティッシュペーパーの枚数は、パラメーターに追加した(図6)。
(1) Okubo K, Kurono Y, Ichimura K, Enomoto T, Okamoto Y, Kawauchi H et al, Japanese guidelines for allergic rhinitis 2017. Allergol Int2017; 66: 205-19.
(2) Okuda M, Ohkubo K, Goto M, Okamoto Y, Konno A, Baba K, et al. Japanese allergic rhinitis QOL questionnaire. Jpn J Allergology 2003; 52(suppl 1): 21-56.
【0057】
・統計分析
全てのデータは平均又は最小二乗平均±SEM又はSDとして表し、有意水準が5%の両側検定を統計分析に使用した。
【0058】
曝露3時間の増分スコアは、3時間の間の症状の重症度を示すために、0、4及び8週で、曲線下面積(AUC)として合計した。群間で有意差を示したスコアについては、曝露3時間の変化を参考のために示した。
【0059】
データは、0週値(基準値)を共変量とし、各症状を従属変数とし、群、週及び週ごとの群を独立変数として、混合モデルを用いた分散分析による経時測定データ解析を実施した。各週での2群間の統計的な相違は単純主効果テストを実施した。総括的な顔スケールと各症状スコアの間の単純相関は、ピアソンの相関係数を使用して分析し、各症状が総括的な顔スケールにどの程度影響したかを調査するために逐次重回帰分析を行った。変数は、総括的な顔スケール以外の7つの症状を選択した。8週の3時間曝露後の各症状のスコアから、0週のスコアを引いたデルタ値は、対応のないt検定(vsプラセボ)を使用して群間で比較した。両側10%未満を傾向差ありと設定した。統計分析はSASバージョン9.4(SAS Institute Japan Ltd.)統計ソフトウェアを使用して行った。
【0060】
<試験結果>
・被験者
図7は試験のフローを示す。書面によるインフォームドコンセントは、52人の応募者のうちの50人から得られ、34人のボランティアが適格基準に基づき選ばれ、試験に登録された。全ての被験者が8週間の試験を完了したので、最大の解析対象集団(FAS)は34人のボランティアを含んだ。曝露前にアレルギー症状及び風邪の症状を示した4人のボランティア(4週で5人のボランティア)を除外した。したがって、30人のボランティア(4週で29人のボランティア)が、per-protocol set(PPS)として有効性の分析に含まれた。試験食品の摂取率は、>85.7%であり、2つの群の性別又は年齢の間に有意差はなかった(表1)。
【0061】
【表1】
【0062】
・スギ花粉曝露時の症状スコアのAUC
FAS及びPPSを使用してB240群とプラセボ群の間の各症状の3時間の合計スコアを比較した。顔スケールスコアは、PPSとFASのいずれにおいても、8週において、B240摂取群はプラセボ群より有意に低かった(表2)。0週及び8週における、曝露3時間にわたる顔スケールスコアの変化を図8に示す。
【0063】
【表2】
0週値を共変量とした混合モデルを用いた共分散分析
各週での2群間の統計的な相違は単純主効果テストを実施した。
算術平均±SEM (0 w), 最小二乗平均±SEM (4 w, 8 w) *P < 0.05 (vs.プラセボ)
【0064】
・顔スケールと各症状に関する曝露3時間の総スコアのAUCの相関
単純相関分析は、3時間の合計の顔スケールスコアが全ての症状と有意に、正の相関関係があることを示した(表3)。さらに、相関係数は鼻づまりで特に高く、水っぱな、鼻のかゆみ、鼻紙枚数に関するものも高かった。
【0065】
【表3】
0、4及び8週の全てのデータ(n = 102)を用いて、総括的な顔スケールと各症状スコアの間のピアソンの相関係数を算出した。各症状が総括的な顔スケールにどの程度影響したかを調査するために逐次重回帰分析を行った。変数は、総括的な顔スケール以外の7つの症状から選択された(F (3, 98) = 29.19., P < 0.0001)。全ての分散拡大係数は、2未満であった。
【0066】
・安全性
副作用:分析対象は、34人の適格とされたボランティアであった。皮膚のかゆみ及び眼瞼膨張(n=1)、細菌性結膜炎(n=1)並びに腎盂炎(n=1)が副作用として定義されたが、重篤では無いと判断された。3人全てのボランティアがB240摂取群であった。しかしながら、全ての副作用が試験食品摂取前に生じたか又は一時的であったので、試験責任医師は有害事象と試験食品摂取の間に関係はないと判断した。
【0067】
・3時間曝露後の各症状のスコアの比較
8週の3時間曝露後の各症状のスコアから0週のスコアを引いたデルタ(Δ)値は、プラセボ群とB240群で比較された(表4)。顔スケール、鼻づまり及び鼻水を拭くために使用されたティッシュペーパーの枚数は、プラセボ群と比べて改善する傾向にあった。
【0068】
【表4】
#P < 0.1 対応のないt検定 (vs プラセボ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8