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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂複合体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20231024BHJP
   C08J 9/28 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C08J5/04 CFG
C08J9/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019208004
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021080347
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】水田 悠生
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-186718(JP,A)
【文献】特開平10-338762(JP,A)
【文献】特開昭60-209075(JP,A)
【文献】特開2002-030176(JP,A)
【文献】特開平3-168222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
C08J 9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した長繊維の織物であって目付100~250g/m の織物および芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維強化樹脂複合体であり、下記式1にて算出される複合体中空隙率が10~60重量%であることを特徴とする、繊維強化樹脂複合体。
複合体中空隙率(%)
= (Vtotal-Vresin-Vfiber)/Vtotal×100 (式1)
ここで、
Vtotal:繊維強化樹脂複合体全体の体積(cm
Vresin:樹脂部分の体積(cm
Vresinは、下記式2にて算出する。
Vresin = (Wtotal-Wfiber)/dresin (式2)
ここで、
Wtotal:繊維強化樹脂複合体全体の重量(g)
Wfiber:繊維部分の重量(g)
dresin:樹脂密度(g/cm
Vfiber:繊維部分の体積(cm
Vfiberは、下記式3にて算出する。
Vfiber = Wfiber/dfiber (式3)
ここで、
dfiber:繊維密度(g/cm
【請求項2】
請求項1記載の繊維強化樹脂複合体の製造方法であって、
極性有機溶媒中に溶解させた芳香族ポリアミド樹脂液を繊維基材中に含浸させその後、(A1)溶媒を揮発すること、および(A2)貧溶媒への浸漬により溶媒交換すること、のいずれかによってポリマー成分を凝固させること
を特徴とする、繊維強化樹脂複合体の製造方法
【請求項3】
請求項2記載の繊維強化樹脂複合体の製造方法であって、
ポリマー成分の凝固後、さらに(B)酸化性雰囲気下で250℃~400℃で30~120分間の熱処理工程を経ること
を特徴とする、繊維強化樹脂複合体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維および芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維強化樹脂複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のEVシフト化促進に伴い、リチウムイオン電池のパックシステムに関する安全性向上が益々求められている。具体的には、バッテリーを覆う外装材の高耐火・高耐熱性の要求が高まっている。バッテリーの外装材などの場合、材そのものの着炎防止はもちろんのこと、内部のバッテリーデバイスが熱暴走反応により着火した場合、周囲への延焼防止という観点が重要となる。高耐熱な材料としては例えばセラミック材料などが考えられるが、当該材料は一般的に重量であり、車載を想定した場合は燃費の面から不利である。
【0003】
また、力学的に脆性な物質が多いため、設置時の作業性が困難、力学的な作用によりひび割れなどが生じるとひび割れ箇所から炎が燃え抜け、延焼が進行するなどの懸念点がある。
【0004】
軽量な難燃材料としては例えば、熱膨張体を利用する考え方がある。例えば、特許文献1(特開2019-131654号公報)では、熱膨張黒鉛を含有する樹脂組成物による耐火シートが提案されている。しかし、この方法では膨張後のスペースを事前に確保しなければ設計通りの耐火性は発現しないという制約がある。一方で、膨張量のスペースを確保すると相対的にバッテリー本体の設置可能容積が小さくなり、エネルギー効率上の観点からは望ましくない。
【0005】
その他の考え方としては、特許文献2のような難燃繊維からなる繊維構造体使用がある。ただし、繊維により形成される構造体は総じて柔軟であり、自身を支持できるだけの剛性を有していないため、設置時の位置を明確に規定することが難しい。これは、延焼防止上不利に働くだけではなく、外装材として取扱いにくい面もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-131654号公報
【文献】特開2007-291563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、軽量であり、自身が着炎または溶融せず、接炎ひび割れなどに起因する燃え抜けが生じず、設置に際し省スペース化が望め、さらには自立可能な剛性を有し、耐火性かつ耐熱性の面材として利用することのできる繊維強化樹脂複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
繊維および芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維強化樹脂複合体であり、下記式1にて算出される複合体中空隙率が10~60重量%であることを特徴とする、繊維強化樹脂複合体。
複合体中空隙率(%)
= (Vtotal-Vresin-Vfiber)/Vtotal×100 (式1)
ここで、
total:繊維強化樹脂複合体全体の体積(cm
resin:樹脂部分の体積(cm
resinは、下記式2にて算出する。
resin = (Wtotal-Wfiber)/dresin (式2)
ここで、
total:繊維強化樹脂複合体全体の重量(g)
fiber:繊維部分の重量(g)
resin:樹脂密度(g/cm
fiber:繊維部分の体積(cm
fiberは、下記式3にて算出する。
fiber = Wfiber/dfiber (式3)
ここで、
fiber:繊維密度(g/cm
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軽量であり、自身が着炎または溶融せず、接炎ひび割れなどに起因する燃え抜けが生じず、設置に際し省スペース化が望め、さらには自立可能な剛性を有し、耐火性かつ耐熱性の面材として利用することのできる繊維強化樹脂複合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔芳香族ポリアミド樹脂〕
本発明は、繊維およびマトリクス樹脂からなる繊維強化樹脂複合体であり、マトリクス樹脂として芳香族ポリアミド樹脂を使用する。芳香族ポリアミドは、1種または2種以上の2価の芳香族基がアミド結合により連結されたポリマーである。この芳香族ポリアミドは、芳香族基には2個以上の芳香環が存在してもよく、その芳香環は直接結合していても、酸素や硫黄を介して結合していてもよい。2価の芳香族基の水素原子は、ハロゲン化物、低級アルキル基、フェニル基で置換されていてもよい。
【0011】
芳香族ポリアミド樹脂は、パラ系芳香族ポリアミドであってもメタ系芳香族ポリアミドであってもよく、メタ系芳香族ポリアミドが好ましい。パラ系芳香族ポリアミドとしては、パラフェニレンテレフタルアミド(パラフェニレンジアミンとテレフタル酸クロリドから共縮合して得られるポリアミド)やその共重合体を用いることができる。メタ系芳香族ポリアミドとしては、具体的にはポリメタフェニレンイソフタルアミド(メタフェニレンジアミンとイソフタル酸クロリドから共縮重合して得られるポリアミド)が好ましい。
【0012】
この芳香族ポリアミド樹脂を使用することにより、接炎時に樹脂部分での着炎が生じにくく、樹脂は溶融過程を経ることなく炭化するため延焼を防止することができる。また、燃焼があった場合にも、燃焼後に炭化物として繊維強化複合体中に残留し、繊維強化複合体を自己支持する程度の剛性を維持することができる。
【0013】
〔繊維〕
繊維強化樹脂複合体が接炎した状況を想定すると、繊維強化樹脂複合体に用いる繊維には耐熱性および耐炎性が必要である。この観点から 繊維強化樹脂複合体の繊維として、好ましくは炭素繊維または芳香族アミド繊維を用いる。
【0014】
炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維のいずれも用いることができる。前者は、例えば東レ株式会社、東邦テナックス株式会社、三菱ケミカル株式会社から市販され、後者は、例えば三菱ケミカル株式会社、クレハ株式会社から市販されている。
【0015】
芳香族ポリアミド繊維としては、例えばトワロン(帝人株式会社製)、テクノーラ(帝人株式会社製)、ケブラー(デュポン・東レ株式会社製)といったパラ系アラミド、コーネックス(帝人株式会社製)、ノーメックス(デュポン・東レ株式会社製)といったメタ系アラミドを用いることができる。
【0016】
燃焼があったときの自立性を得るために繊維は連続した長繊維であることが好ましく、織物の形態で用いることが好ましい。織物は、例えば、平織、綾織、朱子織であることができる。剛性発現の観点から、織物の目付は好ましくは100~250g/mであり、かつ繊維の直径は好ましくは7~20μmである。
【0017】
繊維強化樹脂複合体における繊維の含有率は、好ましくは30~60体積%である。
30体積%未満であると複合体における繊維補強効果が低く剛性発現の観点から好ましくない。また、60体積%を超えると、応力伝達を担う樹脂量不足により想定される力学特性が発現せず、なおかつ均質な複合体成形が困難となるため好ましくない。
【0018】
〔複合体中空隙率〕
本発明の繊維補強樹脂複合体は、下記式1にて算出される複合体中空隙率が10~60重量%である。複合体中空隙率が60重量%を超えると、複合体中の芳香族ポリアミド樹脂の炭化進行速度が速くなり、面全体の樹脂炭化により面材の剛性が低下する他、多量の空隙は炎に対して酸素供給能を発揮してしまい、燃焼抑制上も不利になる。加えて、剛性発現効果が得られにくく、平常時の剛性も低くなる。
【0019】
他方、複合体中空隙率が10重量%未満であると、上述のような耐炎性能と力学剛性での不都合は生じないが、複合体中空隙率を10%未満とするために、低揮発速度下で溶媒を除去し、ポリマー成分を凝固させる必要があり、溶媒除去に多大な時間を必要とし、また、乾燥工程でのエネルギーロスも大きくなり、経済的に合理的な製造が困難となる。
複合体中空隙率(%)
= (Vtotal-Vresin-Vfiber)/Vtotal×100 (式1)
ここで、
total:繊維強化樹脂複合体全体の体積(cm
resin:樹脂部分の体積(cm
resinは、下記式2にて算出する。
resin = (Wtotal-Wfiber)/dresin (式2)
ここで、
total:繊維強化樹脂複合体全体の重量(g)
fiber:繊維部分の重量(g)
resin:樹脂密度(g/cm
fiber:繊維部分の体積(cm
fiberは、下記式3にて算出する。
fiber = Wfiber/dfiber (式3)
ここで、
fiber:繊維密度(g/cm
【0020】
〔製造方法〕
上記の複合体中空隙率を有する本発明の繊維強化樹脂複合体は、極性有機溶媒中に溶解させた芳香族ポリアミド樹脂液を繊維基材中に含浸させその後、(A1)溶媒を揮発すること、および(A2)貧溶媒への浸漬により溶媒交換すること、のいずれかによってポリマー成分を凝固させることで、好ましく製造することができる。溶媒の揮発は揮発速度の観点から好ましくは80~180℃に加熱して行う。この場合の加熱時間は10~60分間である。
【0021】
さらに、ポリマー成分の凝固後、250~400℃で30~120分間の熱処理工程を経ることが望ましい。この熱処理を行うことにより、分子内または分子間にて脱水素反応が進行し、炭素および窒素原子からなる六員環構造を形成することで耐熱性を向上させることができる。
【0022】
極性有機溶媒としては好ましくは非プロトン性極性溶媒を用い、例えば、N-メチルー2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドを用いることができる。
【0023】
貧溶媒といては水を用いることが好ましい。水には塩が溶解していてもよい。
【実施例
【0024】
以下、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明する。
(1)複合体中空隙率の算出
得られた複合体を55mm×60mmの長方形に切り取り、切り取ったサンプルの重量(Wtotal)を電子天秤にて計測した。繊維基材部分の重量(Wfiber)は繊維基材の目付から算出した。得られた複合体の体積(Vtotal)については、サンプルの厚みを厚み計で計測し、サンプルの幅と長さと厚みの積により算出した。なお、厚みは5箇所計測した平均値を採用した。炭素繊維密度(dfiber)を1.79g/cm、メタ型芳香族ポリアミド樹脂密度(dresin)を1.38g/cmとし、実験的に得られた物理量を下記の式1、式2および式3に代入し、複合体中空隙率を導出した。
【0025】
複合体中空隙率(%)
= (Vtotal-Vresin-Vfiber)/Vtotal×100 (式1)
ここで、
total:繊維強化樹脂複合体全体の体積(cm
resin:樹脂部分の体積(cm
resinは、下記式2にて算出する。
resin = (Wtotal-Wfiber)/dresin (式2)
ここで、
total:繊維強化樹脂複合体全体の重量(g)
fiber:繊維部分の重量(g)
resin:樹脂密度(g/cm
fiber:繊維部分の体積(cm
fiberは、下記式3にて算出する。
fiber = Wfiber/dfiber (式3)
ここで、
fiber:繊維密度(g/cm
【0026】
(2)自立性評価
得られた複合体を15cm角の正方形に切り取り、切り取ったサンプルの一端を持ち、サンプル全体のたわみの発生の有無を目視にて確認した。たわみが発生しない場合は「自立性あり」、たわみが発生する場合は「自立性なし」と判定した。
【0027】
(3)剛軟度評価
得られた複合体を幅10mm、長さ100mmの長方形に切り取り、剛軟度(サンプルを所定の角度に曲げる際の抵抗度合いを示す指標)を評価した。剛軟度評価には、ガーレー式試験機(テスター産業株式会社製)を用い、JIS規格L1085(不織布しん地試験方法)記載の手順に従い実施した。剛軟度については、下記の式4にて算出した。
Br=RG×a×W・(L-12.7)/d×3.375×10-5 (式4)
ここで、
Br:剛軟度(mN)
RG:試料が振り子から離れるときの目盛(mgf)
a:振り子支点から重り取り付け孔までの距離(mm)
W:取り付けた重りの質量(g)
L:試料の長さ(mm)
d:試料の幅(mm)
【0028】
(4)接炎試験
15cm角の正方形に切り取った複合体サンプルにガスバーナー炎を接触させる接炎試験を実施した。試験においては、以下の条件とした。
サンプル接触前の火炎高さ: 15cm
火炎温度: 1130℃
ガスバーナー口からサンプルまでの距離: 6.5cm
接炎: 中央に5cm角の孔が空いた金属プレートでサンプルを挟み当該孔位置にて接炎
接炎時間: 最大5分間(目視にて炎の燃え抜けが認められた場合その時点で中断)
【0029】
上記条件での接炎試験において、試験時のサンプル自体の着炎有無および炎の燃え抜け有無を目視にて判定した。また、接炎試験中の樹脂部分炭化進行度合いの指標として、試験終了後の接炎面を写真撮影し、接炎面中の炭化面積比率を算出した。具体的には、撮影写真を紙に印刷し、サンプル全体および目視にて炭化が認められる箇所の紙重量をそれぞれ計測することで算出した。
【0030】
〔実施例1〕
平織タイプの炭素繊維織物基材(繊維目付:200g/m、帝人株式会社製 品番:W3101)に、N-メチルー2-ピロリドン中に溶解させたメタ型芳香族ポリアミド(溶液中のポリマー濃度は15重量%とした)を塗布した。繊維基材への当該ポリマー溶液塗布後、炉内温度を150℃に設定した防爆タイプの乾燥炉内にて1時間乾燥させ、有機溶媒を揮発させることでメタ型芳香族ポリアミド樹脂を硬化させて繊維強化樹脂複合体を得た。
【0031】
【表1】
【0032】
〔実施例2〕
樹脂の硬化方法を、常温の水への浸漬による凝固とし、さらにその後空気雰囲気下の乾燥炉内での250℃60分間および280℃60分間の加熱処理をすることでメタ型芳香族ポリアミド樹脂を硬化させて繊維強化樹脂複合体を得た。
【0033】
〔実施例3〕
樹脂の硬化方法を常温の40重量%の塩化カルシウム水溶液への浸漬による凝固(繊維基材への当該ポリマー溶液塗布後、塩化カルシウム水溶液中に浸漬し3分間静置し、その後取り出し、乾燥炉内にて80℃で30分間で乾燥し、水を乾燥させた)とした以外は実施例1と同様にして繊維強化樹脂複合体を得た。
【0034】
〔比較例1〕
メタ型芳香族ポリアミド樹脂の硬化方法を常温の水による凝固とした以外は実施例1と同様に繊維強化樹脂複合体を得た。
【0035】
〔比較例2〕
メタ型芳香族ポリアミド樹脂を含浸する前の繊維基材について、その自立性・剛軟度を評価した。
【0036】
表1から分かるとおり、メタ型芳香族ポリアミド樹脂を含浸および硬化させた複合体はいずれも自立性を有し、繊維基材対比高い剛軟度を示すことが確認された。空隙率が最も低い実施例1のサンプルの剛軟度が実施例2および3と比較して低いのは、空隙を含む複合体全体の厚みに起因するものであると考えられる。すなわち、実施例1の低空隙による剛性向上効果よりも、実施例2および3の高い断面二次モーメントによる剛性向上効果が上回ったことが原因と考えられる。
【0037】
また、いずれの複合体サンプルにおいても、着炎や燃え抜けなく5分間の接炎に耐えることも確認され、当該複合体組成の高耐熱・高耐炎性が示された。
【0038】
複合体の空隙率については、それぞれ以下のように考えられる。実施例1では、乾燥による有機溶媒揮発プロセスのため、ポリマー部分が徐々に濃縮されながら硬化した。したがって、低空隙な複合体が得られた。実施例2では、加熱処理時による脱水素反応過程において、緻密なポリマー構造が形成された。実施例3では、塩化カルシウム水溶液中でのポリマー凝固により、有機溶媒の逆拡散機構が水溶液の侵入機構より優先されたため、比較例1との対比で緻密な凝固構造が形成された。比較例1では、水の侵入機構が優先され、その結果空隙の多い凝固構造が形成された。
【0039】
5分間の接炎試験後の接炎面の炭化面積比率については、算出された空隙率との相関が認められる。すなわち、空隙率が高い比較例1では炭化面積比率が高い。これは、多孔による樹脂構造体の表面積増大により燃焼が進行しやすかったことが原因と考えられる。一方、相対的に空隙率が低かった実施例1や2においては、炭化面積比率が小さく、剛性維持・延焼防止の観点から、より優れた水準であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の繊維強化樹脂複合体は、耐火性かつ耐熱性の面材として、特に軽量耐熱パネルとして好適に利用することができる。