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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/10 20150101AFI20231024BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20231024BHJP
【FI】
A63B53/10 A
A63B102:32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019217453
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021083972
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】坂 航
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-080719(JP,A)
【文献】特開2013-116207(JP,A)
【文献】実開平02-074069(JP,U)
【文献】特開平02-084973(JP,A)
【文献】特開2002-191735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0118049(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00-53/14
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト、前記シャフトの一端に設けられたヘッドと、前記シャフトの他端に設けられたグリップと、を備えたゴルフクラブであって、
前記シャフトは、
繊維強化樹脂製で筒状のシャフト本体と、
前記シャフト本体に埋設された金属繊維部と、
前記シャフトの外観に露出し、前記シャフトの軸方向で前記金属繊維部の配置領域と重なる位置に配され、前記金属繊維部の存在を示す意匠と、を含
前記意匠は、
前記金属繊維部の金属繊維の配列態様と同じ態様の模様を含む、
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項2】
シャフト、前記シャフトの一端に設けられたヘッドと、前記シャフトの他端に設けられたグリップと、を備えたゴルフクラブであって、
前記シャフトは、
繊維強化樹脂製で筒状のシャフト本体と、
前記シャフト本体に埋設された金属繊維部と、
前記シャフトの外観に露出し、前記シャフトの軸方向で前記金属繊維部の配置領域と重なる位置に配され、前記金属繊維部の存在を示す意匠と、を含
前記金属繊維部は、前記シャフトの周方向に複数配置され、前記シャフトの前記軸方向に延びる線状の金属繊維を含み、
前記意匠は、前記シャフトの周方向に複数配置され、前記シャフトの前記軸方向に延びる線の模様を含む、
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項3】
シャフト、前記シャフトの一端に設けられたヘッドと、前記シャフトの他端に設けられたグリップと、を備えたゴルフクラブであって、
前記シャフトは、
繊維強化樹脂製で筒状のシャフト本体と、
前記シャフト本体に埋設された金属繊維部と、
前記シャフトの外観に露出し、前記シャフトの軸方向で前記金属繊維部の配置領域と重なる位置に配され、前記金属繊維部の存在を示す意匠と、を含
前記金属繊維部は、前記シャフトの周方向に複数配置され、前記シャフトの前記軸方向と交差する方向に延びる線状の金属繊維を含み、
前記意匠は、前記シャフトの周方向に複数配置され、前記シャフトの前記軸方向と交差する方向に延びる線の模様を含む、
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のゴルフクラブであって、
前記金属繊維部の前記配置領域は、前記シャフトの前記軸方向の中央から前記他端までの間の範囲内の領域である、
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項5】
請求項に記載のゴルフクラブであって、
前記金属繊維部の前記配置領域は、前記シャフトの軸方向で前記グリップと重なる領域を含み、
前記意匠は、前記グリップと重なる前記領域の少なくとも一部には施されない、
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項6】
請求項に記載のゴルフクラブであって、
前記複数配置された線状の金属繊維は、前記シャフトの前記周方向に粗密が変化しており、
前記複数配置された線の模様は、前記線状の金属繊維の粗密の変化に対応して、前記シャフトの前記周方向に粗密が変化している、
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項7】
請求項に記載のゴルフクラブであって、
前記複数配置された線状の金属繊維の、前記シャフトの前記周方向の粗密が、前記シャフトの前記周方向の第一の位置において粗く、前記第一の位置から前記周方向に離れるにしたがって密に変化し、
前記複数配置された線の模様の、前記シャフトの前記周方向の粗密が、前記シャフトの前記周方向の前記第一の位置において粗く、前記第一の位置から前記周方向に離れるにしたがって密に変化し、
前記第一の位置とは、前記ゴルフクラブを用いて前記ヘッドをターゲット方向に向けてゴルファがアドレスした場合に、前記シャフトの前記周方向で頂部となる位置である、
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項8】
請求項7に記載のゴルフクラブであって、
前記複数配置された線の模様において、各線の前記シャフトの前記一端側の端部は、前記第一の位置に近い線の方が、前記第一の位置から遠い線よりも、前記シャフトの前記一端の側に位置している、
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブシャフトを構成する材料として、繊維強化樹脂を本体として金属繊維を用いたゴルフクラブシャフトが提案されている(例えば特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4643806号公報
【文献】特許第5823286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴルフクラブシャフトの仕様を認識する上で、ゴルフクラブシャフトに金属繊維が用いられることはユーザが認識しやすいことが望ましい。その方法の一つとして、金属繊維がゴルフクラブシャフトの外観に露出するように配置することが考えられる。しかし、金属繊維の径方向の配置に制約が生じて設計の自由度が低下する。また、金属繊維の外側を、傷つき防止の観点からシャフトの性能に影響しないガラス繊維シート等の透明なシートで被わなければならず、シャフトの重量増となる。金属繊維が繊維強化樹脂に埋設された構造の場合、ユーザは金属繊維の存在を視覚的に認識できない。
【0005】
本発明の目的は、シャフト中の金属繊維の存在をユーザが視覚的に認識可能なゴルフクラブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
シャフト、前記シャフトの一端に設けられたヘッドと、前記シャフトの他端に設けられたグリップと、を備えたゴルフクラブであって、
前記シャフトは、
繊維強化樹脂製で筒状のシャフト本体と、
前記シャフト本体に埋設された金属繊維部と、
前記シャフトの外観に露出し、前記シャフトの軸方向で前記金属繊維部の配置領域と重なる位置に配され、前記金属繊維部の存在を示す意匠と、を含
前記意匠は、
前記金属繊維部の金属繊維の配列態様と同じ態様の模様を含む、
ことを特徴とするゴルフクラブが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シャフト中の金属繊維の存在をユーザが視覚的に認識可能なゴルフクラブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフクラブの外観図。
図2図1のA-A線断面図。
図3図1のゴルフクラブのシャフトの積層構造を示す展開図。
図4】(A)および(B)は金属繊維及び対応意匠の別の例を示す図。
図5】(A)及び(B)はシャフトの周方向の基準位置の説明図。
図6】(A)は金属繊維及び対応意匠の別の例を示す図、(B)はシャフトの周方向における金属繊維の粗密を説明する図、(C)は意匠の別の例を示す図。
図7】(A)は金属繊維及び対応意匠の別の例を示す図、(B)はシャフトの周方向における金属繊維の粗密を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係るゴルフクラブ1の外観図である。ゴルフクラブ1は、ヘッド2と、グリップ3と、シャフト4とを含む。図1のゴルフクラブ1は、ドライバー等のウッド型ゴルフクラブであるが、本発明はアイアン型ゴルフクラブや、ユーティリティー型(ハイブリッド型)ゴルフクラブ等、他の種類のゴルフクラブにも適用可能である。
【0011】
シャフト4は先端4aと、後端4bと有する円筒状のロッドであり、先端4aから後端4bへ向かって外径が徐々に増加したテーパ形状のロッドである。シャフト4の全長L0(先端4aから後端4bまでの長さ)は例えば800mm~1150mmである。先端4aはヘッド2の装着側の端であり、先端4a側の部分がヘッド2内に挿入される。ヘッド2はホゼル部2aとフェース部(打撃面)2bとを含み、シャフト4は、先端4aからホゼル部2aに挿入される。シャフト4とホゼル部2aとは例えば接着剤により固定される。後端4bはグリップ3の装着側の端であり、後端4b側の部分にグリップ3が装着される。シャフト4上のグリップ3の装着領域は例えば200~300mmである。
【0012】
図1に加えて図2及び図3を参照する。図2図1のA-A線断面図であり、シャフト4の積層構造を模式的に示す。図3はシャフト4の構成部品の展開図である。シャフト4は、繊維強化樹脂製で筒状のシャフト本体40と、シャフト本体40に埋設された筒状の金属繊維部47と、シャフト本体40の外周面に施された意匠48と、シャフト4の最外周に施されたクリア層49とを含む。意匠48は透明のクリア層49を介してシャフト4の外観に露出している。金属繊維部47はシャフト本体40に埋設されているため、シャフト4の外観に露出しない。図1及び図3において、領域R1はシャフト4の軸方向における金属繊維部47の配置領域を示し、領域R2は意匠48の表示領域を示す。
【0013】
金属繊維部47は、チタン、ニッケル、タングステン、アルミ、ボロン、鉄系金属、銅、又は、これらのうちの複数の金属の合金等の金属材料の繊維から構成される。本実施形態の場合、金属繊維部47はシャフト4の軸方向に延びる複数の線状の金属繊維(金属線)47aが、シャフト4の周方向に等ピッチで配置されて構成されている。金属繊維47aの直径は、例えば、5~200μmである。なお、シャフト4は、テーパ形状のロッドであるため、金属繊維47aの延設方向としてのシャフト4の軸方向とは、より厳密に言うならば、金属繊維部47の外形を有する円錐台形状の周面上において、上下の底面間を最短で結ぶ方向である(以下、金属繊維部47及び意匠48について同様)。図2において、金属繊維部47は、説明の便宜上、厚みが一定の円環層状に描かれているが、実際には、多数の金属繊維47aの円形断面が環状に並んだ形態となる。
【0014】
金属繊維部47の配置領域R1は、本実施形態の場合、シャフト4の軸方向の中央(先端4aからL/2の位置)から後端4bまでの間の範囲内の領域である。より具体的には、配置領域R1は、シャフト4の軸方向の中央の位置から後端4b側にずれた位置から、後端4bまでの領域である。配置領域R1がこのように設定されることで、シャフト4の重量分布上、ユーザの手元側となる後端4bにおける重量を増加させることができ、ゴルフクラブ1の振り易さを向上できる。なお、図示の配置領域R1は一例であり、配置領域R1は、例えば、シャフト4の軸方向の中央の位置とグリップ3の配置領域の途中の部との間の範囲内であってもよい。また、配置領域R1は、例えば、シャフト4の軸方向の中央の位置と先端4aとの間の領域であってもよい。また、配置領域R1は、先端4a側の端がシャフト4の軸方向の中央の位置よりも先端4a側で、後端4b側の端がシャフト4の軸方向の中央の位置よりも後端4b側の範囲であってもよく、この場合、配置領域R1の後端4b側の端はグリップ3よりも先端4aの側であってもよい。
【0015】
意匠48は、金属繊維部47の存在を示す。意匠48の表示領域R2は、シャフト4の軸方向で金属繊維部47の配置領域R1と重なっている。ユーザに対して、表示領域R2の内部に金属繊維部47が存在することを視覚的に認識させることができ、ユーザはシャフト4の仕様の理解を深めることができる。
【0016】
表示領域R2は、配置領域R1の範囲内の領域であってもよいし、一部の表示領域が配置領域R1の範囲外となる領域であってもよい。一部の表示領域が配置領域R1の範囲外となる場合、表示領域R2の90%以上、或いは、95%以上が配置領域R1と重なることが好ましい。これにより、ユーザがより的確に金属繊維部47の位置を認識することができる。
【0017】
表示領域R2を配置領域R1の範囲内の領域とする場合、表示領域R2を配置領域R1と同じ範囲の領域としてもよいし、配置領域R1の一部の領域としてもよい。本実施形態のように、配置領域R1とグリップ3とが重なる場合、グリップ3と重なる領域に意匠48を表示しても、グリップ3が透明でなければユーザが意匠48を視認することはできない。したがって、配置領域R1とグリップ3とが重なる場合、その全部又は一部は表示領域R2となくてもよい。図1の例では、表示領域R2の後端4b側の端部が、グリップ3と僅かに重なっている。重なる範囲は例えば0.5cm~2cmの範囲である。重なる範囲は、グリップ3の種類や製造誤差によってグリップ3の全長が異なる場合があることを考慮したものであり、グリップ3と意匠48との間に意匠48が存在しない隙間が生じることを防止できる。これにより、ユーザに対して、グリップ3の範囲内にも金属繊維部47が存在することを認識させることができる。
【0018】
意匠48の内容は、金属繊維部47の存在を示すものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、金属繊維部47の名称を文字や記号で表示するものや、特定の色で表示領域R2を一様に着色したものであってもよい。本実施形態の場合、意匠48は金属繊維部47の金属繊維47aの配列態様と同じ態様の模様を含む。上記の通り、本実施形態の金属繊維部47は、シャフト4の軸方向に延びる複数の線状の金属繊維47aが、シャフト4の周方向に複数配置された配列態様である。これに対応して、意匠48もシャフト4の軸方向に延びる複数の線48aが、シャフト4の周方向に複数配置された模様である。但し、線48aの太さや線48aの配置のピッチまでは金属繊維47aの配列態様と同じではなく、デフォルメされている。太さやピッチまでも金属繊維47aの配列態様に合わせると、細かすぎて表示内容をユーザが認識できない場合があるためである。
【0019】
こうした模様を有する意匠48によって、ユーザは金属繊維部47の位置だけでなく、繊維の配列態様も認識することができる。ユーザはシャフト4の仕様の理解を更に深めることができる。意匠48は、こうした模様と、上記の着色や、名称とを組み合わせたものであってもよい。
【0020】
次に、シャフト4の製法の一例について主に図3を参照して説明する。シャフト4は複数のプリプレグ41a、42~46及び41b並びに金属繊維部47の積層体である。
【0021】
シャフト4は、例えば、シートワインディング法により製造することができる。シートワインディング法は、複数のプリプレグ41a、42~46及び41bおよび金属繊維部47を芯金に巻き付けて加熱硬化させ、その後に芯金を抜くことでシャフト4の素体を製造できる。
【0022】
各プリプレグ41a、42~46及び41bは、例えば、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させたシートであり、芯金に一又は複数回巻き回される。図中の細線は繊維方向を例示している。強化繊維としては、例えば、カーボン繊維、ガラス繊維、金属繊維、アラミド繊維、炭化けい素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維等の1種以上を挙げることができる。また、マトリクス樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の1種以上を挙げることができる。さらに、副資材として硬化剤、硬化促進剤、充填材、離型剤、顔料などを用いることができる。
【0023】
シャフト4の製造前の金属繊維部47は、例えば、複数の金属繊維47aを基材シート上に固着したシートの態様であってもよい。基材シートは、配置した金属の繊維方向を維持するために表面にタック性を持つものがよく、例えば、カーボン繊維を含んだプリプレグシートやガラス繊維を含んだプリプレグであってもよい。或いは、複数の金属繊維47aを、同じ金属繊維又は別の線材で編み上げてシート状に形成した態様であってもよい。なお、シートワインディング法で加工が可能ならば、タック性のない樹脂シートであってもよい。
【0024】
シャフト本体40は、シャフト4の径方向内側から順に積層される複数のプリプレグ41a、42~46及び41bによって形成される。プリプレグ41aは最内周において、繊維方向がシャフト軸方向と平行なストレート層を形成する。プリプレグ41aはシャフト4の先端4aから後端4b側へ部分的に配置される。
【0025】
プリプレグ42~46は先端4aから後端4bに渡ってシャフト4を構成する。プリプレグ42および43は繊維方向がシャフト軸方向に対して傾斜したアングル層を形成する。シャフト軸方向に対する繊維方向の角度は、例えば、30度~60度の範囲内の角度であり、プリプレグ42とプリプレグ43でシャフト軸方向に対する繊維方向の角度が反転する。プリプレグ44~46は繊維方向がシャフト軸方向と平行なストレート層を形成する。
【0026】
金属繊維部47は、本実施形態の場合、アングル層を形成するプリプレグ42及び43と、ストレート層を形成するプリプレグ44~46との間に配置されている。金属繊維部47は、別の層の位置に配置することも可能である。
【0027】
プリプレグ41bはシャフト本体40の最外周において繊維方向がシャフト軸方向と平行なストレート層を形成する。プリプレグ41aはシャフト4の先端4aから後端4b側へ部分的に配置される。
【0028】
シャフト4の素体は、その後、表面が研磨される。研磨後に意匠48が施される。意匠48は例えば離型フィルム5に予め印刷されており、シャフト4の素体に対して離型フィルム5から転写される。意匠48はシルク印刷によりシャフト4の素体に施してもよい。意匠48が施されたシャフト4は、その周面にクリア層49が形成されてシャフト4が完成する。クリア層49は例えばしごき塗装によりクリア塗料をシャフト4の素体に塗布することで形成される。
【0029】
<金属繊維部と対応意匠の他の例>
金属繊維部47と対応する意匠48の構成例は上記の例に限られない。図4(A)及び図4(B)は、金属繊維部47と、対応する意匠48の他の例を示している。
【0030】
図4(A)の例では、金属繊維部47が、網目状に交差した複数の線状の金属繊維47bと複数の線状の金属繊維47cとを含む。各金属繊維47bは互いに平行であり、かつ、シャフト4の軸方向に対して45度の方向(トルク方向)に延設されている。各金属繊維47cは互いに平行であり、かつ、シャフト4の軸方向に対して金属繊維47bとは逆の方向で45度の方向(トルク方向)に延設されている。金属繊維部47をシャフト4のトルクの特性に影響させることができる。
【0031】
意匠48は、網目状に交差した複数の線48bと複数の線48cとを含む。各線48bは互いに平行であり、かつ、シャフト4の軸方向に対して45度の方向(トルク方向)に延設されている。各線48cは互いに平行であり、かつ、シャフト4の軸方向に対して線48bとは逆の方向で45度の方向(トルク方向)に延設されている。線48b、48cの太さやピッチは金属繊維47b、47cの配列態様に対してデフォルメされている。
【0032】
図4(B)の例では、金属繊維部47が、網目状に交差した複数の線状の金属繊維47dと複数の線状の金属繊維47eとを含む。各金属繊維47dは互いに平行であり、かつ、シャフト4の軸方向に延設されている。各金属繊維47eは互いに平行であり、かつ、シャフト4の軸方向に対して90度の方向に延設されている。金属繊維部47をシャフト4の曲げとトルクの特性に影響させることができる。
【0033】
意匠48は、網目状に交差した複数の線48dと複数の線48eとを含む。各線48dは互いに平行であり、かつ、シャフト4の軸方向に延設されている。各線48eは互いに平行であり、かつ、シャフト4の軸方向に対して90度の方向に延設されている。線48d、48eの太さやピッチは金属繊維47d、47eの配列態様に対してデフォルメされている。
【0034】
次に、金属繊維部47と対応する意匠48は、シャフト4の周方向の位置によって粗密が異なっていてもよい。まず、図5(A)及び図5(B)を参照してシャフト4の周方向の基準位置について説明する。図5(A)は、ゴルフクラブ1のユーザ100がヘッド2をターゲット方向Xに向けてアドレスした状態を示している。図5(B)は図5(A)のB-B線断面図を示しており、図5(A)の状態におけるシャフト4の断面図である。以下の説明では、図5(A)の状態でシャフト4の、その周方向で頂部となる部位を基準位置Pとする。基準位置Pはアドレス時にユーザの目につきやすい部位である。
【0035】
図6(A)は、金属繊維部47と、対応する意匠48の他の例を示している。金属繊維部47はシャフト4の軸方向に延びる複数の線状の金属繊維47fを含む。各金属繊維47fは互いに平行であるが、周方向のピッチは等ピッチではない。図6(B)は、シャフト4の周方向における金属繊維47aの粗密の変化を示している。基準位置Pにおいて最も粗く、周方向の反対側(基準位置Pに対して180度の位置)で最も密となっている。
【0036】
意匠48は、シャフト4の軸方向に延びる複数の線48fを含む。各線48fは互いに平行であるが、金属繊維47fの配列態様に合わせて、周方向のピッチは等ピッチではない。線48fの太さ等は、金属繊維47fに対して適宜デフォルメされる。
【0037】
図6(A)の金属繊維部47の金属繊維47fの配列態様に対応する意匠として、図6(C)の模様も採用可能である。図6(C)の例では、各線48fのシャフト4の先端4a側の端部は、基準位置Pに近い線48fの方が、基準位置Pから遠い線48fよりも先端4aの側に位置している。換言すると基準位置Pに近い線48fの方が、基準位置Pから遠い線48fよりも先端4aの側に長く延びている。
【0038】
図6(C)のように意匠48を構成することで、ユーザが図5(A)のごとくアドレスの姿勢をとった場合に、金属繊維部47が円筒状に配置されていることをユーザに視覚的に認識させ易くなる場合がある。なお、図6(C)の意匠48を採用する場合、金属繊維部47の各金属繊維47fは、先端4a側の端部の位置がそろっていてもよいし、図6(C)の模様のように基準位置Pに近い金属繊維47fの方が、基準位置Pから遠い金属繊維47fよりも先端4aの側に長く延びていてもよい。
【0039】
シャフト4の周方向における金属繊維47aの粗密の変化の別の例としては、基準位置Pから周方向に反対側の位置(基準位置Pに対して180度の位置)へ位相が進むにしたがって、密→粗としてもよく、或いは、粗→密→粗、又は、密→粗→密となってもよい。この場合、意匠48の線の粗密も同様に変化させることになる。
【0040】
図7(A)は、金属繊維部47と、対応する意匠48の他の例を示している。図示の例では、シャフト4の周方向において、金属繊維の分布に異方性を与えた例である。金属繊維部47はシャフト4の軸方向に延びる複数の線状の金属繊維47fを含む。各金属繊維47fは互いに平行であり、周方向のピッチは等ピッチである。しかし、金属繊維47fはシャフト4の全周に渡って配置されていない。図7(B)に示す位相範囲Sにのみ配置されている。金属繊維の分布に、シャフト4の周方向での異方性を与えることで、シャフト4の特性にも異方性を与えることができる。
【0041】
意匠48は、シャフト4の軸方向に延びる複数の線48gを含む。各線48gは互いに平行であり、かつ、周方向に等ピッチであるが、金属繊維47gの配列態様に合わせて、位相範囲Sの領域にのみ施されている。
【0042】
なお、図6(A)、図6(C)又は図7(A)の例と、図4(A)又は図4(B)の例とを組み合わせることも可能である。
【0043】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 ゴルフクラブ、2 ヘッド、3 グリップ、4 シャフト、47 金属繊維部、48 意匠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7