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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】バックドア取付用冶具構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/06 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
B62D65/06 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019231206
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021098453
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】横手 英幸
(72)【発明者】
【氏名】柴田 尚知
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-256626(JP,A)
【文献】特開2011-173536(JP,A)
【文献】特開2016-215849(JP,A)
【文献】特開平02-204185(JP,A)
【文献】米国特許第04961257(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/06
B62D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体組立工程において車体のハッチバック扉口に固定したヒンジ本体にバックドア上端縁部を組付ける作業において使用する冶具であって、
冶具本体は、一定肉厚を有した冶具本体をハッチバック扉口のくの字状のバックドア側ヒンジブラケット内側面に当接するに際しヒンジ固定用の固定ボルトの突出頭部が治具本体の底面と干渉しないように、底面部の一部に切欠面を形成すると共に、治具本体の先端部はくの字に傾斜したバックドア側ヒンジブラケットを縦方向に起すためのヒンジブラケット起し部を形成し、
治具本体の後端部はドア搭載機作動先端部で冶具本体をヒンジ軸方向に押出す際の作動受部を形成し、
バックドア組付け作業時にハッチバック扉口に固定したヒンジ本体とドア搭載機作動部先端との間に介在させた冶具本体部を搭載機作動部で押出すと共に、冶具本体部のヒンジブラケット起し部により略くの字状のバックドア側ヒンジブラケットをヒンジ軸を中心に起立させるように構成したことを特徴とするバックドア取付用冶具構造。
【請求項2】
冶具本体の前半部はヒンジブラケット起し部を形成し、前半部の下底面の一部には切欠面を形成して肉薄状とすると共に、冶具本体の後半部はヒンジブラケット起し部に連設した作動受部を形成し、作動受部の一側部には搭載機のヒンジ作動アームに取付けるためのボルト挿通孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載のバックドア取付用冶具構造。
【請求項3】
治具本体のヒンジブラケット起し部は、下部突出辺部と押し起し辺部とにより略L字状に構成し、ブラケット起し作動時の下部突出辺部はヒンジ本体のバックドア側ブラケット下端縁とヒンジ軸との隙間に挿入可能に構成すると共に、押し起し辺部は内方に傾斜したヒンジ本体におけるバックドア側ブラケットを内側面から押し起し可能に構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバックドア取付用治具構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のバックドアを車体に組付ける際のバックドア取付用治具構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハッチバック車輌のバックドアのようにボックス形状車体の後部のハッチバック扉口を塞ぐバックドアは、上端部をドアヒンジを介して車体に取り付け、当該ドアヒンジを中心にバックドアを跳ね上げ開閉するよう構成されている。
そして自動車の組み立て作業では、バックドア組付け位置において、バックドアを移載治具で持ち運び車体後部のハッチバック扉口に組み付ける。
かかるバックドア組付け作業は、搭載機の作動部先端でバックドアを把持して組み立てライン上にある車体の後部まで持ち運んで組付け作業を行うものであるが、かかる組付け作業時にはラインの前工程で車体後部のハッチバック扉口にバックドア取付用のヒンジが装着固定されており、そのドアヒンジのブラケットにバックドアの上端縁部を位置合わせしてボルトにより固定する。
つまり、ハッチバック扉口に固定されたヒンジ本体のブラケット面にバックドアの上端縁部を面合わせしてから固定ボルトによりバックドア側のヒンジブラケットを固定する。
【0003】
このように車体にドアを取り付ける際に取付用のヒンジを介してドアを組付ける方法としては、下記特許文献1,2に記載の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-215849号公報
【文献】特開平3-256626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかるバックドアの車体側ヒンジブラケットへの組付け作業は、組立ライン上に移動してきた車体にバックドアを移載治具で持ち運びながら組付けるものであるため、極めて微妙な搭載機の動きが要求される。
例えば、移載治具でバックドアを把持して、車体のハッチバック扉口の位置まで運んだ後には、まず、ハッチバック扉口に固定したドアヒンジの一方のバックドア側ヒンジブラケット外側面にバックドアの上端縁部のヒンジ取付面を面合わせする作業が必要となる。この面合わせ作業時においては、ハッチバック扉口に固定したドアヒンジの一方のバックドア側ヒンジブラケットがヒンジ軸を中心に他方のバックドア側ヒンジブラケットに対し、くの字の折曲姿勢となっている。特にトルクヒンジでは、バックドア側ヒンジブラケットが閉じる方向に付勢されるためバックドア側ヒンジブラケットがくの字姿勢になり勝ちとなる。
かかるバックドア側ヒンジブラケットのくの字姿勢に対応しながらバックドアの姿勢を調整してバックドアのヒンジ取付面をバックドア側ヒンジブラケットと面合わせすることは移載治具の作動に過度の負担を強いることになり、また既存のロボット等のアームの作動範囲では対応できない状況が生起する。
【0006】
この発明では、かかるバックドアのヒンジ取付面を車体側のくの字姿勢のバックドア側ヒンジブラケットに容易に面合わせすることが出来るように、車体側のくの字姿勢のバックドア側ヒンジブラケットと移載治具で持ち運んだバックドアの上端縁部との間に本発明の冶具を介在させ、くの字姿勢のバックドア側ヒンジブラケットを可及的に起立させてバックドア側ヒンジブラケットの面合わせ作業及びその後の連結固定作業を確実にかつ容易に行えるようにし、バックドア取付作業の省力化を図り取付作業も短縮することが出来る治具構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の1つは、車体組立工程において車体のハッチバック扉口に固定したヒンジ本体にバックドア上端縁部を組付ける作業において使用する冶具であって、
冶具本体は、一定肉厚を有した冶具本体をハッチバック扉口のくの字状のバックドア側ヒンジブラケット内側面に当接するに際しヒンジ固定用の固定ボルトの突出頭部が治具本体の底面と干渉しないように、底面部の一部に切欠面を形成すると共に、治具本体の先端部はくの字に傾斜したバックドア側ヒンジブラケットを縦方向に起すためのヒンジブラケット起し部を形成し、治具本体の後端部はドア搭載機作動先端部で冶具本体をヒンジ軸方向に押出す際の作動受部を形成し、バックドア組付け作業時にハッチバック扉口に固定したヒンジ本体とドア搭載機作動部先端との間に介在させた冶具本体部を搭載機作動部で押出すと共に、冶具本体部のヒンジブラケット起し部により略くの字状のバックドア側ヒンジブラケットをヒンジ軸を中心に起立させるように構成したことを特徴とするバックドア取付用冶具構造である。
【0008】
また、本発明の選択的な態様の1つにおいて、冶具本体の前半部はヒンジブラケット起し部を形成し、前半部の下底面の一部には切欠面を形成して肉薄状とすると共に、冶具本体の後半部はヒンジブラケット起し部に連設した作動受部を形成し、作動受部の一側部には搭載機のヒンジ作動アームに取付けるためのボルト挿通孔を設けたことを特徴とするバックドア取付用冶具構造である。
【0009】
また、本発明の選択的な態様の1つにおいて、治具本体のヒンジブラケット起し部は、下部突出辺部と押し起し辺部とにより略L字状に構成し、ブラケット起し作動時の下部突出辺部はヒンジ本体のバックドア側ブラケット下端縁とヒンジ軸との隙間に挿入可能に構成すると共に、押し起し辺部は内方に傾斜したヒンジ本体におけるバックドア側ブラケットを内側面から押し起し可能に構成したことを特徴とするバックドア取付用冶具構造である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、車体組立工程において車体のハッチバック扉口に固定したヒンジ本体にバックドア上端縁部を組付ける作業において使用する冶具であって、冶具本体は、一定肉厚を有した冶具本体をハッチバック扉口のくの字状のバックドア側ヒンジブラケット内側面に当接するに際しヒンジ固定用の固定ボルトの突出頭部が治具本体の底面と干渉しないように、底面部の一部に切欠面を形成すると共に、治具本体の先端部はくの字に傾斜したバックドア側ヒンジブラケットを縦方向に起すためのヒンジブラケット起し部を形成し、治具本体の後端部はバックドア搭載機作動先端部で冶具本体をヒンジ軸方向に押出す際の作動受部を形成し、バックドア組付け作業時にハッチバック扉口に固定したヒンジ本体とバックドア搭載機作動部先端との間に介在させた冶具本体部を搭載機作動部で押出すと共に、冶具本体部のヒンジブラケット起し部により略くの字状のバックドア側ヒンジブラケットをヒンジ軸を中心に起立させるように構成したため、冶具本体を搭載機のヒンジ合わせ作動アームの先端とヒンジ本体のバックドア側ヒンジブラケットとの間に介在させると、ヒンジ合わせ作動アームの進行及び作業者によるバックドア搭載機の前進作動により冶具本体はバックドア側ヒンジブラケットをヒンジ軸を中心に押し起し、搬送してきたバックドアのヒンジ取付側に最も適合した傾斜角度姿勢とする。すなわち、冶具を用いることによりバックドア搭載機で搬送移動されてきたバックドアの移動傾斜姿勢に可及的に適合するようなバックドア側ブラケットの傾斜角度とすることができバックドアの取付け作業を容易にし、次工程の作業に容易に移行することが出来る。
したがって、バックドアの上端縁部にヒンジ本体のバックドア側ヒンジブラケットを面合わせして連設固定する従来の手作業を本発明の冶具を用いることにより効率的にかつ容易正確に行うことが出来る効果がある。
しかも、冶具本体は簡単なブロック構造であり、単にヒンジ本体のブラケットと作動アームの先端部との間に介在させるだけでヒンジ面の面合わせを正確かつ容易に行える効果がある。
【0011】
また、本発明の請求項2にかかる発明によれば、冶具本体の前半部はヒンジブラケット起し部を形成し、前半部の下底面の一部には切欠面を形成して肉薄状とすると共に、冶具本体の後半部はヒンジブラケット起し部に連設した作動受部を形成し、作動受部の一側部にはバックドア搭載機のヒンジ作動アームに取付けるためのボルト挿通孔を設けた構成としたため、冶具本体の前半部底面の切欠面によりヒンジ本体をバックドアに連設固定する際に固定ボルトの突出頭部との干渉を回避し冶具本体をバックドア側ヒンジブラケットに円滑にスライドして押し込み挿入でき、冶具本体によるヒンジ押し起し機能を確実に果すことができる効果がある。
【0012】
また、本発明の請求項3にかかる発明によれば、治具本体のヒンジブラケット起し部は、下部突出辺部と押し起し辺部とにより略L字状に構成し、ブラケット起し作動時の下部突出辺部はヒンジ本体のバックドア側ブラケット下端縁とヒンジ軸との隙間に挿入可能に構成すると共に、押し起し辺部は内方に傾斜したヒンジ本体におけるバックドア側ブラケットを内側面から押し起し可能に構成したことを特徴としたため、冶具本体をヒンジ合わせ作動アームの先端とヒンジ本体のバックドア側ブラケットとの間に介在して前半部のヒンジブラケット起し部の下部突出辺部をヒンジ軸との隙間に進入することにより、押し起し辺部でヒンジ本体のバックドア側ブラケットを起立させてブラケットの傾斜姿勢の矯正を確実に行いその後のバックドアの上縁部とヒンジ本体のブラケットとの面合わせから連結固定作業を容易確実に、かつ、正確に行うことが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態にかかる治具本体とヒンジ本体とバックドアと車体後部の位置関係を示す側断面図である。
図2】本発明の実施形態にかかる治具本体をヒンジ本体に進入した際の側断面図である。
図3】本発明の実施形態にかかるバックドアをヒンジ本体に取付ける際の側面図である。
図4】本発明の実施形態にかかる治具本体とヒンジ本体を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態にかかる治具本体をヒンジ本体に進入した状態を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態にかかる治具本体の切欠面に突出頭部を嵌入した状態を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態にかかる治具本体を示す上方側斜視図である。
図8】本発明の実施形態にかかる治具本体を示す下方側斜視図である。
図9】本発明の実施形態にかかるバックドア搭載機を示す斜視図である。
図10】本発明の実施形態にかかるバックドアを車両に取付ける状態を示す側面図であり、バックドア搭載機にバックドアを搭載する前の状態を示す図である。
図11】本発明の実施形態にかかるバックドアを車両に取付ける状態を示す側面図であり、バックドア搭載機にバックドアを固定した状態を示す図である。
図12】本発明の実施形態にかかるバックドアを車両に取付ける状態を示す側面図であり、バックドアの左右側面にダンパーを取付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
以下、バックドア取付用治具構造の実施例について図面にもとづき詳説しながら、車体のハッチバック扉口の上端縁にヒンジ本体を介してバックドア上端縁を面合わせして連結する際に使用する治具本体構造やその使用形態、及びヒンジ本体、バックドアの移載治具等を順次説明していく。
まず、ハッチバック扉口及びバックドア等の構成について説明する。
【0016】
(ハッチバック扉口とバックドアとの取付構造について)
ハッチバック扉口B1はハッチバック車体Bの後端面に形成されており、図1に示すように、該扉口B1の上端縁部は車体Bの屋根板B2に連続したヒンジ本体100取付けの平坦面段差B3を左右端部近傍に形成し、この平坦面段差B3にヒンジ本体100を固定している。なお、平坦面段差B3へのヒンジ本体100の固定は、図4に示すように、後述する車体側ヒンジブラケット110を固定するボルトで行う。
このようにハッチバック扉口B1にはヒンジ本体100を介してバックドアDが開閉自在に取付られる。すなわち、車体組立工程においてはバックドアDの上端縁部がヒンジ本体100のバックドア側ヒンジブラケット120を介してハッチバック扉口B1の平坦面段差B3に開閉自在に取付けられる。
【0017】
本発明の治具本体200は、かかる車体後端面のハッチバック扉口B1にヒンジ本体100を介してバックドアDを取り付ける際に、ヒンジ本体100のバックドア側ヒンジブラケット120のくの字姿勢を起立姿勢とすると共にバックドアDと車体Bとの位置関係を調整するために使用される。
【0018】
ヒンジ本体100のバックドア側ヒンジブラケット120を起立させるためには、図3に示すように、ヒンジ本体100とバックドア搭載機300の作動部先端との間に治具本体200を介在させてバックドア搭載機300の作動部先端を前進させて押し起こすことにより行う。
【0019】
ヒンジ本体100の車体側ヒンジブラケット110は、前述の通りハッチバック扉口B1の平坦面段差B3にボルトHで固定されており、図2及び図5に示すように、ヒンジ本体100のバックドア側ヒンジブラケット120を治具本体200のヒンジブラケット起し部220と当接させて起立させた後にこのバックドア側ヒンジブラケット120の起立姿勢に適合する姿勢とする。その後に、図3に示すように、バックドア搭載機300によりバックドアDを移動し、バックドアDの上端縁部をハッチバック扉口B1の上端縁部のヒンジ取付位置まで移動し、バックドア側ヒンジブラケット120外面にバックドアDの上端縁部を面当接して両者120、Dをボルトで連結固定する。
かかる一連のバックドア組付け工程においてバックドア側ヒンジブラケット120の外面とバックドアDの上端縁部との確実な面当接及び固定作業に使用するのが本発明の治具本体200である。
【0020】
(ヒンジ本体の構成について)
ヒンジ本体100はヒンジ軸101を中心として両ヒンジブラケット110,120が枢支されている。
ヒンジ本体100は、図4に示すように、ヒンジ本体100のヒンジ軸101を枢軸として車体側ヒンジブラケット110とバックドア側ヒンジブラケット120により構成されている。
車体側ヒンジブラケット110は、予めハッチバック扉口B1の平坦面段差B3にボルトHで固定されている。他方のバックドア側ヒンジブラケット120は、図1に示すようにくの字姿勢で枢支されている。しかも、バックドア側ヒンジブラケット120の上端縁部は、図5に示すように、バックドア側ヒンジブラケット120が側面視略くの字状に形成され、その折曲端縁部をバックドア取付エッジ部121としている。
【0021】
かかるヒンジ本体100の構成において、バックドア搭載機300で運ばれてきたバックドアDの上端縁部内側をバックドア側ヒンジブラケット120のバックドア取付エッジ部121外側面に当接させてボルトで連設固定する。
かかる一連のバックドアDの組付作業において、バックドア側ヒンジブラケット120を倒伏姿勢から起立姿勢へ矯正するために用いるのが本発明の治具本体200である。
【0022】
(治具本体の構成について)
上記のように使用される治具本体200は、図4図7及び図8に示すように、一定肉厚のブロックに構成しており、しかも、かかる冶具本体200をハッチバック扉口B1のくの字状のバックドア側ヒンジブラケット120の内側面と当接させて起立操作する場合に、ヒンジ本体100の車体側ヒンジブラケット110固定のためのボルトHの突出頭部H1が治具本体200の底面と干渉してスライド作動を邪魔しないように、治具本体200の底面部201の一部に突出頭部H1の不干渉部としての切欠面210を形成している。
【0023】
また、治具本体200は、くの字に傾斜したバックドア側ヒンジブラケット120と当接してそのまま起立させるために、図4及び図5に示すように、一定の高さのヒンジブラケット起し部220を形成している。また、治具本体200の後半部はバックドア搭載機300と連結するための作動受部230を形成しており、かかるバックドア搭載機300の作動先端部に連結するための作動受部230は治具本体200をヒンジ軸101の方向に押出すように機能する。
また、左右の治具本体200はヒンジ軸101の方向にお互い内向きにスライドする。このように治具本体200が移動することで突出頭部H1を介してヒンジ本体100を挟み込む形となり、この付勢力により左右方向の位置が固定される。また、内向きにスライドすることで、切欠面210の溝に突出頭部H1が嵌まり込み前後の位置が固定される。このとき、車体Bに取り付けたヒンジ本体100と治具本体200の位置関係が固定される。すなわち、治具本体200及びヒンジ本体100の位置関係が固定されることで車体BとバックドアDの前後左右の位置関係が決定される。
【0024】
このように冶具本体200は、図1及び図2に示すように、バックドアDの組付け作業時にハッチバック扉口B1に固定したヒンジ本体100とバックドア搭載機300の作動部先端との間に介在させてバックドア搭載機300の作動先端部をバックドア搭載機300を作業者が前進するように操作することで、バックドア側ヒンジブラケット120の内側面と押し起こし継辺部222が接触してヒンジブラケット起し部220を介して略くの字状のバックドア側ヒンジブラケット120をヒンジ軸101を中心に押し起す。
【0025】
また、ヒンジブラケット起し部220を形成した冶具本体200は、図8に示すように、前半部下底面の一部に切欠面210を形成して肉薄状とし、また冶具本体200の後半部はヒンジブラケット起し部220の左右方に張り出して横長の作動受部230を形成している。
【0026】
作動受部230の後端面部には、図6に示すように、略U字状のボルト締付け工具の不干渉切欠部251を形成している。すなわち、バックドア側ヒンジブラケット120とバックドアDの上端縁部との面合わせ後に下方からボルトで連結固定する際にボルト締付け工具が下方から斜め上方向のバックドア上端縁部方向に向くように搭載機に配設されている。このように構成された不干渉切欠部251はボルト締付け工具の支持機能を果たすことができる。
【0027】
治具本体200の前半部底面、すなわち、底面部201には、前述するように治具本体200のスライド時にヒンジ本体100の車体側ヒンジブラケット110とハッチバック扉口B1とを固定するボルトHの突出頭部H1が干渉しないような切欠面210を形成している。また、作動受部230の一側部にはバックドア搭載機300のヒンジ作動アーム310と連設するためのボルト挿通孔240が設けられている。
【0028】
(バックドア搭載機について)
バックドア搭載機300の先端作動部には治具本体200を連設し、ヒンジ作動アーム310を前進させた後、作業者がバックドア搭載機300を操作して、ヒンジブラケット起し部220の下部突出片221をヒンジ軸101と車体側ヒンジブラケット110との隙間に挿入することでヒンジブラケット120を起立作動させる。
その後、前述の通り左右のヒンジブラケット起し部220をヒンジ軸101方向で内向きに動作させることで車両のヒンジ本体100とヒンジブラケット起し部220が固定される。すなわち、ヒンジブラケット起し部220とバックドア搭載機300を介してバックドアの位置(前後左右)が決定する。なお、ヒンジブラケット起し部220とヒンジ本体100との固定は、ヒンジ本体100を車体Bに固定するためのボルトHのボルト頭部H1がヒンジブラケット起し部220裏面の切欠面210に嵌まり係合することで前後方向への移動を規制し、さらに、ヒンジブラケット起し部220をヒンジ軸101の内側に移動させる付勢力により左右方向への移動を規制する。
【0029】
バックドア搭載機300は、図9に示すように、基フレーム320の左右先端にヒンジブラケット121の角度に合わせて斜めに伸縮自在のバックドア合わせ作動アーム370があり、バックドア合わせ作動アーム370の先端にヒンジ合わせ作動アーム保持ケース380を連結している。このヒンジ合わせ作動アーム保持ケース380はヒンジ合わせ作動アーム330を伸縮自在に収納しており、該アーム330の先端には横枠を介してヒンジ作動アーム310が突設され、ヒンジ作動アーム310の先端は治具本体200の後部の作動受部230の一側に連設されている。
【0030】
治具本体200の作動受部230は、略L字形状のヒンジブラケット起し部220と一体に連結し、バックドア搭載機300のヒンジ合わせ作動アーム330の進出作動によりヒンジブラケット起し部220が前進し、その下部突出辺部221がヒンジ本体100の車体側ヒンジブラケット110とヒンジ軸101との間に進入し、さらに、作業者によりバックドア搭載機300を前進させることで押し起し継辺部222が倒伏状態のバックドア側ヒンジブラケット120を押し起す。
【0031】
また、バックドア搭載機300の基フレーム320の中途部左右には、バックドアDを持ち運ぶために支持する左右ドア受部材340,340が設けられている。なお、左右ドア受部材340,340は縦支持アーム先端に設けたU字溝340aを介してバックドアDの側端縁部に連なるドアフレームを支持しながらバックドアDの前後の揺動を受け止めてバックドア側ヒンジブラケット120とバックドアDの上端縁部との面合わせ調整操作を可能にしている。
【0032】
また、バックドア搭載機300の基フレーム320の中央から斜め後方には支持枠350が配設され、該支持枠350の基端にはバックドアDの下端中央に設けたドアロック機構D1と連結するための連結輪351を設けている。
従って、バックドア搭載機300によりバックドアDを持ち運びながらバックドアDの上端縁部とヒンジ本体100のバックドア側ヒンジブラケット120とを面合わせして連設固定するため、図9、11、12に示すように、バックドア搭載機300の左右受部材340,340と後部支持枠350の連結輪351とによるバックドアの三点支持を行うように構成している。
なお、図12に示すように、ダンパー360は、バックドアDとヒンジブラケット120を図示しないボルトで締結し、治具本体200のロック状態を解除した後にハッチバック扉口B1とバックドアDとの間に介設される。
【0033】
このようにバックドア搭載機300による三点支持により支持されたバックドアDは、その上端縁部、すなわち、ヒンジ本体100を介してハッチバック扉口B1に連結される上端縁部を下方に傾斜させながら、バックドア搭載機300のアクチュエータの作動により徐々にヒンジ本体100のバックドア取付エッジ部121外側面に近づけ、バックドア側ヒンジブラケット120とバックドアDの上端縁部内側面との面合わせを行い、図示しないボルトにより連結固定することでバックドアDの取付作業を完了するものである。
【0034】
かかるバックドア搭載機300によりバックドアDの上端縁部をヒンジ本体100のバックドア側ヒンジブラケット120へ面合わせして固定する作業では、図3及び図10~12に示すような工程で行われる。すなわち、バックドア搭載機300を作業者が操作して治具本体200を前進作動し、バックドア側ヒンジブラケット120を起立させることで略水平姿勢に変位させる。
【0035】
このようにバックドア搭載機300の各種アクチュエータにより治具本体200を介してバックドア側ヒンジブラケット120の姿勢矯正を行い、最終的にバックドア側ヒンジブラケット120におけるバックドア取付エッジ部121の外側面をバックドア上端縁部と面合わせ調整し、最後にボルトにより連結固定する。かかる作業はバックドア搭載機300の各種アクチュエータの制御により機械的に正確かつ迅速に行いうるものである。
【0036】
(バックドア組み付けの作業手順について)
車体組立工程の作業現場に各種アクチュエータを設けたバックドア搭載機300を設置する。
車体組立工程ではハッチバック車両がハッチバック扉口B1を開放した状態で設置されており、このハッチバック扉口B1に対面してバックドア搭載機300が設置される。
バックドア搭載機300には三点支持機能を介してバックドアDを搭載する。
ハッチバック車両には後端面に形成されたハッチバック扉口B1の上端縁部、すなわち、車体Bの屋根板B2に連続したヒンジ本体100を取付けるための平坦面段差B3にヒンジ本体100を固定しておく。
【0037】
次いで、図10に示すように、ヒンジ本体100とバックドア搭載機300の作動部先端との間に治具本体200を介在させる。
そして、バックドア搭載機300の作動部先端を前進させて、図11に示すように、ヒンジ本体100のバックドア側ヒンジブラケット120を治具本体200のヒンジブラケット起し部220に当接させて起立させる。
この際に、図11に示すように、バックドア搭載機300のヒンジ合わせ作動アーム330の進出作動によりヒンジブラケット起し部220を前進させその下部突出辺部221をヒンジ本体100の車体側ヒンジブラケット110とヒンジ軸101との間に進入させ、更なる進出作動により押し起し継辺部222により最終的には倒伏状態のバックドア側ヒンジブラケット120を押し起す。
【0038】
このようにヒンジブラケット起し部220をスライドして前進させる際にヒンジ本体100の車体側ヒンジブラケット110を固定するための固定ボルトHの突出頭部H1が治具本体200の底面と干渉しスライド前進作動を邪魔しないように、治具本体200の底面部201の一部に形成したボルトHの突出頭部H1との不干渉部としての切欠面210により円滑な前進スライドを行う。この切欠面210は、ボルトHの突出頭部H1の径と略同一の径に切欠しており、突出頭部H1が切欠面210に進入した際に該突出頭部H1と切欠面210とでヒンジブラケット起し部220が係合固定され、バックドア側ヒンジブラケット120の設置角度を決定する。
【0039】
このように治具本体200によりヒンジ本体100のバックドア側ヒンジブラケット120のくの字姿勢を起立姿勢に矯正させると共に、バックドア搭載機300に三点支持されたバックドアDの上端縁部の姿勢制御を行い、図3に示すように、バックドア搭載機300によりバックドアDを斜め下方に移動してバックドア側ヒンジブラケット120起立姿勢のバックドア取付エッジ部121に適合するような姿勢制御を行い、最終的にバックドア側ヒンジブラケット120外面にバックドアDの上端縁部を面当接して最後に両者を図示しないボルトで連結固定する。
【0040】
かかる面当接後の両者のボルト連結に際しては、バックドア側ヒンジブラケット120とバックドアDの上端縁部との面合わせ後にボルト締付け工具を下方から斜め上方向に進出させてボルト締付け操作を行う。なお、図6に示すように、治具本体の作動受部230の後端面部に形成された略U字状のボルト締付け工具の不干渉切欠部251によりボルト締付け工具が治具本体200と干渉しないでボルト締付け作動を行うことができる。
【0041】
また、ハッチバック扉口B1の両側部に連設固定した左右両側のヒンジ本体100にバックドア上縁部両端を連結する時には左右一対の治具本体200を用いて片方ずつ連結する。
【0042】
このようにバックドア搭載機300による三点支持により支持されたバックドアDは、その上端縁部、すなわち、ヒンジ本体100を介してハッチバック扉口B1に連結される上端縁部120に対してヒンジの傾斜角に合わせたバックドア合わせ作動アーム370が縮むことにより徐々にヒンジ本体100のバックドア取付エッジ部121の外側面に接近し、バックドア側ヒンジブラケット120とバックドアDの上端縁部内側面との面合わせを行い、図示しないボルトにより締結することでバックドアDの取付作業を完了する。
【0043】
なお、治具本体200はバックドア搭載機300の一部として構成されているが別体として構成することもできる。例えば、治具本体200をあらかじめ車体側ヒンジブラケット110に取付けておいて、バックドア搭載機300が治具本体200を把持して位置固定する。
【0044】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
100 ヒンジ本体
101 ヒンジ軸
110 車体側ヒンジブラケット
120 バックドア側ヒンジブラケット
121 バックドア取付エッジ部
200 治具本体
201 底面部
210 切欠面
220 ヒンジブラケット起し部
221 下部突出辺部
222 押し起し継辺部
230 作動受部
240 ボルト挿通孔
250 切欠部
251 不干渉切欠部
300 バックドア搭載機
310 ヒンジ作動アーム
320 基フレーム
330 ヒンジ合わせ作動アーム
340 左右ドア受部材
340aU字溝
350 支持枠
351 連結輪
360 ダンパー
370 バックドア合わせ作動アーム
380 ヒンジ合わせ作動アーム保持ケース
B 車体
B1 ハッチバック扉口
B2 屋根板
B3 平坦面段差
D バックドア
D1 ドアロック機構
H ボルト
H1 突出頭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12