(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/06 20060101AFI20231024BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20231024BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20231024BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C09D133/06
C09D5/02
C09D175/04
C09D5/00 D
(21)【出願番号】P 2020025662
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 広晃
(72)【発明者】
【氏名】坂口 彰啓
(72)【発明者】
【氏名】福田 樹
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-214600(JP,A)
【文献】特開2015-183138(JP,A)
【文献】特開2000-025169(JP,A)
【文献】特開2018-168338(JP,A)
【文献】特開2018-168339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位(A)と、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体に由来する構成単位(B)と、水酸基、オキシアルキレン基、及びエチレン性不飽和二重結合を有するノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位(C)と、を含み、前記構成単位(A)の含有率が、全構成単位〔但し、前記構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕に対して65質量%以上である樹脂の粒子と、
イソシアネート系架橋剤と、
水と、を含有し、
前記樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数に対する、前記イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が、0.30以上であるポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート系架橋剤が、水分散型イソシアネート系架橋剤、及び、解離温度が100℃以下であるブロックイソシアネート系架橋剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ノニオン型反応性界面活性剤における前記オキシアルキレン基の平均付加モル数が、5以上40以下の範囲である請求項1又は請求項2に記載のポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物。
【請求項4】
前記分岐構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体が、i-ブチルメタクリレート及びt-ブチルアクリレートの少なくとも一方である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物。
【請求項5】
前記脂環構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体が、シクロヘキシルメタクリレートである請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物。
【請求項6】
前記構成単位(B)が、N-メチロールアクリルアミドに由来する構成単位を含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンに代表されるポリオレフィンは、透明性及び発色性が高く、比重が軽く、強度を有し、かつ、加工性に優れることから、身の回りの製品(例えば、文具、家電、及び各種包装材料)に多用されている。また、ポリオレフィンフィルム(以下、「ポリオレフィン基材」ともいう。)は、その表面に、保護コート層、印刷層等の各種機能層が積層された後、さらに成形加工され、広く用いられている。しかし、ポリオレフィン基材は、一般に、機能層との密着性に劣るため、ポリオレフィン基材に対してコロナ処理等の表面処理を施したり、ポリオレフィン基材と機能層との間にプライマー層等のコーティング層を設けたりすることで、ポリオレフィン基材と各種機能層との密着性を改善している。
【0003】
ポリオレフィン基材と機能層との間に設けられるコーティング層には、ポリオレフィン基材との密着性、及び、各種機能層との密着性(以下、「易接着性」ともいう。)の両方が求められる。ポリオレフィン基材との密着性を改善させる手法、及び各種機能層との易接着性を改善させる手法については、これまで種々報告されている。
【0004】
例えば、ポリオレフィン基材との密着性を改善できるコーティング剤として、特定範囲のSP値を示す水酸基含有アクリル樹脂(I)とポリイソシアネート化合物(II)とを含む溶剤系コーティング組成物が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
また、例えば、機能層との易接着性を改善できるコーティング剤として、オキサゾリン基変性樹脂を含むコーティング組成物が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-52078号公報
【文献】特開2001-150612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、ポリオレフィン基材には、低温かつ短時間でも乾燥しやすい、乾燥後の膜厚が平滑になりやすい等の観点から、溶剤系コーティング剤が広く用いられてきた。しかし、近年、VOC(Volatile Organic Compounds)の規制、リサイクル法の施行等に伴い、環境への配慮が求められるようになり、有機溶剤を含まない水系コーティング剤の使用が推奨されている。
【0007】
一方、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材には、エマルション樹脂(例えば、アクリル系のエマルション樹脂)を含む水系コーティング剤が広く用いられている。エマルション樹脂は、一般に乳化重合法により製造され、製造工程では、界面活性剤が使用される。この界面活性剤は、コーティング層の形成後、経時でコーティング層の表面にブリードアウトし、PET基材との密着性及び機能層との易接着性の低下の原因となり得る。界面活性剤のブリードアウトは、例えば、コーティング層内で強固な架橋構造を形成させることにより抑制できる。しかし、ポリオレフィン基材に、エマルション樹脂を含む水系コーティング剤を適用すると、ポリオレフィン基材は、PET基材とは異なり、低い温度領域で熱可塑性を示すため、十分な熱を与えることができない。このため、ポリオレフィン基材の表面に、熱硬化反応による強固な架橋構造が形成されたコーティング層を設けることは困難であり、界面活性剤のブリードアウトを抑制できないと考えられる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ポリオレフィン基材に対する密着性及び機能層に対する易接着性に優れる膜を形成できるポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位(A)と、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体に由来する構成単位(B)と、水酸基、オキシアルキレン基、及びエチレン性不飽和二重結合を有するノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位(C)と、を含み、上記構成単位(A)の含有率が、全構成単位〔但し、上記構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕に対して65質量%以上である樹脂の粒子と、
イソシアネート系架橋剤と、
水と、を含有し、
上記樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数に対する、上記イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比(即ち、上記イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数/上記樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数)が、0.30以上であるポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物。
<2> 上記イソシアネート系架橋剤が、水分散型イソシアネート系架橋剤、及び、解離温度が100℃以下であるブロックイソシアネート系架橋剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である<1>に記載のポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物。
<3> 上記ノニオン型反応性界面活性剤における上記オキシアルキレン基の平均付加モル数が、5以上40以下の範囲である<1>又は<2>に記載のポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物。
<4> 上記分岐構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体が、i-ブチルメタクリレート及びt-ブチルアクリレートの少なくとも一方である<1>~<3>のいずれか1つに記載のポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物。
<5> 上記脂環構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体が、シクロヘキシルメタクリレートである<1>~<4>のいずれか1つに記載のポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物。
<6> 上記構成単位(B)が、N-メチロールアクリルアミドに由来する構成単位を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載のポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリオレフィン基材に対する密着性及び機能層に対する易接着性に優れる膜を形成できるポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0012】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0014】
本明細書において「(メタ)アクリル単量体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
本明細書における「単量体」には、反応性界面活性剤は含まれない。
【0015】
本明細書において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0016】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0017】
[ポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物]
本発明のポリオレフィン基材コーティング用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位(A)と、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体に由来する構成単位(B)と、水酸基、オキシアルキレン基、及びエチレン性不飽和二重結合を有するノニオン型反応性界面活性剤(以下、「特定ノニオン型反応性界面活性剤」ともいう。)に由来する構成単位(C)と、を含み、上記構成単位(A)の含有率が、全構成単位〔但し、上記構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕に対して65質量%以上である樹脂の粒子と、
イソシアネート系架橋剤と、
水と、を含有し、
上記樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数に対する、上記イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が、0.30以上である。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン基材をコーティングするために用いられるものである。本発明の樹脂組成物では、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位(A)と、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体に由来する構成単位(B)と、特定ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位(C)と、を含み、構成単位(A)の含有率が、全構成単位〔但し、構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕に対して65質量%以上である樹脂の粒子が、イソシアネート系架橋剤及び水を含む媒体中に分散している状態で存在している。
【0019】
本発明の樹脂組成物によれば、ポリオレフィン基材に対する密着性及び機能層に対する易接着性に優れる膜を形成できる。
本発明の樹脂組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本発明の樹脂組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、特定ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位(C)を含む樹脂の粒子を含み、この樹脂の粒子を構成する樹脂では、特定ノニオン型反応性界面活性剤が、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体、並びに、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体と強固に化学結合している。このため、界面活性剤の膜表面へのブリードアウトが抑制される。よって、本発明の樹脂組成物により形成される膜では、界面活性剤の膜表面へのブリードアウトに起因する、ポリオレフィン基材に対する密着性の低下及び機能層に対する易接着性の低下が起こり難いと考えられる。
また、本発明の樹脂組成物は、樹脂の粒子と、イソシアネート系架橋剤とを含み、かつ、樹脂の粒子を構成する樹脂が、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位(A)、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体に由来する構成単位(B)、並びに、特定ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位(C)を含む。
このため、本発明の樹脂組成物により形成される膜では、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基が、構成単位(B)中のカルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方、並びに、構成単位(C)中の水酸基と、架橋反応し、強固な架橋構造が形成される。また、詳細なメカニズムは不明であるが、構成単位(A)中の分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基が膜の形成に作用する。よって、本発明の樹脂組成物により形成される膜は、ポリオレフィン基材に対する密着性に優れると考えられる。
また、本発明の樹脂組成物により形成される膜では、特定割合以上の構成単位(A)と、構成単位(B)と、構成単位(C)と、を含む架橋構造が形成され、かつ、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基と構成単位(C)中の水酸基とが架橋反応することにより、UV(ultraviolet)インク層、ハードコート層等の機能層との親和性が向上する。よって、本発明の樹脂組成物により形成される膜は、機能層に対する易接着性に優れると考えられる。
以上により、本発明の樹脂組成物により形成される膜は、ポリオレフィン基材に対する密着性及び機能層に対する易接着性に優れると推測される。
【0021】
以下、本発明の樹脂組成物の各成分について説明する。
【0022】
〔樹脂の粒子〕
本発明の樹脂組成物は、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位(A)と、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体に由来する構成単位(B)と、水酸基、オキシアルキレン基、及びエチレン性不飽和二重結合を有するノニオン型反応性界面活性剤(即ち、特定ノニオン型反応性界面活性剤)に由来する構成単位(C)と、を含み、上記構成単位(A)の含有率が、全構成単位〔但し、構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕に対して65質量%以上である樹脂の粒子を含有する。
まず、樹脂の粒子を構成する樹脂の構成単位について説明する。
【0023】
<構成単位(A)>
樹脂は、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位(A)を含む。
構成単位(A)は、ポリオレフィン基材に対する密着性及び機能層(特に、UVインク層)に対する易接着性の向上に寄与する。
【0024】
本明細書において、「分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位」とは、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
なお、本明細書における「分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体」には、後述のカルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体は、含まれない。
【0025】
構成単位(A)は、分岐構造及び脂環構造のうち、分岐構造のみを含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位であってもよく、脂環構造のみを含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位であってもよく、分岐構造及び脂環構造の両方を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位であってもよい。
【0026】
分岐構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体の種類は、特に制限されない。
分岐構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体としては、分岐構造を含む基が分岐鎖状のアルキル基である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
分岐構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体の具体例としては、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、分岐構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体としては、i-ブチルメタクリレート及びt-ブチルアクリレートの少なくとも一方が好ましく、i-ブチルメタクリレート又はt-ブチルアクリレートがより好ましく、t-ブチルアクリレートが更に好ましい。
【0027】
脂環構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体の種類は、特に制限されない。
脂環構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
脂環構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、脂環構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体としては、シクロヘキシルメタクリレートが好ましい。
【0028】
樹脂は、構成単位(A)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
また、樹脂は、例えば、構成単位(A)として、分岐構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位のみを含んでいてもよく、脂環構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位のみを含んでいてもよく、分岐構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位及び脂環構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位の両方を含んでいてもよい。
【0029】
樹脂における構成単位(A)の含有率は、樹脂の全構成単位〔但し、構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕に対して、65質量%以上であり、65質量%以上98.5質量%以下の範囲であることが好ましく、67質量%以上98.5質量%以下の範囲であることがより好ましく、69質量%以上98.5質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
樹脂における構成単位(A)の含有率が、樹脂の全構成単位〔但し、構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕に対して65質量%以上であると、機能層(特に、UVインク層)に対する易接着性に優れる膜を形成できる傾向を示す。
【0030】
<構成単位(B)>
樹脂は、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体に由来する構成単位(B)を含む。
構成単位(B)中のカルボキシ基及び水酸基は、後述のイソシアネート系架橋剤のイソシアネート基と架橋反応し、架橋構造を形成し得る。
【0031】
本明細書において、「カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0032】
構成単位(B)は、カルボキシ基及び水酸基のうち、カルボキシ基のみを有する単量体に由来する構成単位であってもよく、水酸基のみを有する単量体に由来する構成単位であってもよく、カルボキシ基及び水酸基の両方を有する単量体に由来する構成単位であってもよい。
例えば、機能層に対する易接着性の向上の観点から、構成単位(B)は、少なくとも水酸基を有する単量体に由来する構成単位であることが好ましい。
【0033】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、コハク酸エステル(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)等が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0034】
水酸基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド〔即ち、N-メチロールアクリルアミド(N-MAM)〕等が挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、N-メチロールアクリルアミドが好ましい。
樹脂が、構成単位(B)として、N-メチロールアクリルアミドに由来する構成単位を含むと、機能層に対する易接着性により優れる膜を形成できる傾向を示す。
【0035】
樹脂は、構成単位(B)を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
また、樹脂は、例えば、構成単位(B)として、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のみを含んでいてもよく、水酸基を有する単量体に由来する構成単位のみを含んでいてもよく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位及び水酸基を有する単量体に由来する構成単位の両方を含んでいてもよい。
【0036】
樹脂における構成単位(B)の含有率は、特に制限されないが、例えば、樹脂の全構成単位〔但し、構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕に対して、1質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましく、1質量%以上8質量%以下の範囲であることがより好ましく、1.5質量%以上7質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
樹脂における構成単位(B)の含有率が、樹脂の全構成単位〔但し、構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕に対して、上記範囲内であると、機能層に対する易接着性により優れる膜を形成できる傾向を示す。
【0037】
<その他の単量体に由来する構成単位>
樹脂は、本発明の効果が発揮される範囲において、既述の単量体に由来する構成単位以外の構成単位(所謂、その他の単量体に由来する構成単位)を含んでいてもよい。
【0038】
その他の単量体に由来する構成単位としては、例えば、分岐構造を含む基、脂環構造を含む基、カルボキシ基、及び水酸基のいずれも有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体〔以下、「特定(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」ともいう。)〕に由来する構成単位が挙げられる。
【0039】
特定(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基の炭素数は、例えば、1以上18以下の範囲であることが好ましく、1以上15以下の範囲であることがより好ましく、1以上12以下の範囲であることが更に好ましい。
【0040】
特定(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
樹脂は、その他の単量体に由来する構成単位を含む場合、その他の単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0042】
樹脂がその他の単量体に由来する構成単位を含む場合、樹脂におけるその他の単量体に由来する構成単位の含有率は、特に制限されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0043】
<構成単位(C)>
樹脂は、水酸基、オキシアルキレン基、及びエチレン性不飽和二重結合を有するノニオン型反応性界面活性剤(即ち、特定ノニオン型反応性界面活性剤)に由来する構成単位(C)を含む。
構成単位(C)は、ポリオレフィン基材に対する密着性の向上、及び、機能層に対する易接着性の向上に寄与する。
【0044】
本明細書において、「特定ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位」とは、特定ノニオン型反応性界面活性剤が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0045】
特定ノニオン型反応性界面活性剤は、水酸基を有する。
構成単位(C)中の水酸基は、後述のイソシアネート系架橋剤のイソシアネート基と架橋反応し、架橋構造を形成し得る。
【0046】
特定ノニオン型反応性界面活性剤は、オキシアルキレン基を有する。
オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。
オキシアルキレン基としては、例えば、単量体との反応性が高いとの観点から、オキシエチレン基が好ましい。また、オキシエチレン基は、例えば、オキシプロピレン基又はオキシブチレン基よりも親水性が高いため、樹脂の粒子の表面に密度の高い水和層を形成できる。樹脂がオキシエチレン基を有する反応性界面活性剤に由来する構成単位を含むと、水等の水性媒体中における樹脂の粒子の分散性がより向上するため、より均質な膜を形成できる傾向を示す。
【0047】
オキシアルキレン基の平均付加モル数は、特に制限されないが、例えば、5以上50以下の範囲であることが好ましく、5以上40以下の範囲であることがより好ましく、10以上30以下の範囲であることが更に好ましい。
オキシアルキレン基の平均付加モル数が5以上であると、水等の水性媒体中における樹脂の粒子の分散性がより優れる傾向を示す。
オキシアルキレン基の平均付加モル数が50以下であると、樹脂組成物を製造する際に、粘度が過度に高くならず、生産性がより良好になる傾向を示す。
【0048】
特定ノニオン型反応性界面活性剤は、エチレン性不飽和二重結合を有する。
エチレン性不飽和二重結合を有するノニオン型反応性界面活性剤は、ノニオン型反応性界面活性剤に対して、エチレン性不飽和二重結合を有する基を付与することにより、得ることができる。
エチレン性不飽和二重結合を有する基の具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、アリルオキシ基、スチリル基等が挙げられる。
エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、例えば、単量体との反応性が高いとの観点から、1-プロペニル基が好ましい。
【0049】
特定ノニオン型反応性界面活性剤は、水酸基、オキシアルキレン基、及びエチレン性不飽和二重結合を有していれば、その種類は、特に制限されないが、例えば、下記式(1)で表されるノニオン型反応性界面活性剤であることが好ましい。
【0050】
【0051】
式(1)において、R1bは、炭素数6~24の脂肪族アルキル基を表し、X1bは、水素原子を表す。
また、式(1)において、n3は、オキシエチレン基の平均付加モル数(「オキシエチレン単位の平均繰り返し数」ともいう。)を表す。n3は、5~50の整数であり、5~40の整数であることがより好ましく、10~30の整数であることが更に好ましい。
【0052】
式(1)で表されるノニオン型反応性界面活性剤の市販品の例としては、アデカリアソープ(登録商標) ER-10[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシエチレン基の平均付加モル数:10〕、有効成分濃度:100質量%、(株)ADEKA]、アデカリアソープ(登録商標) ER-30[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシエチレン基の平均付加モル数:30〕、有効成分濃度:65質量%、(株)ADEKA]、アデカリアソープ(登録商標) ER-40[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシエチレン基の平均付加モル数:40〕、有効成分濃度:60質量%、(株)ADEKA]等が挙げられる。
【0053】
また、特定ノニオン型反応性界面活性剤としては、アクアロン(登録商標) AN-10[オキシエチレン基の平均付加モル数:10、第一工業製薬(株)]、アクアロン(登録商標) AN-30[オキシエチレン基の平均付加モル数:30、第一工業製薬(株)]等の市販品も好適な例として挙げられる。
【0054】
樹脂は、構成単位(C)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0055】
樹脂における構成単位(C)の含有量は、特に制限されないが、例えば、樹脂の構成単位〔但し、構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕の合計100質量部に対して、4.9質量部以上27.5質量部以下の範囲であることが好ましく、8.0質量部以上24.0質量部以下の範囲であることがより好ましく、11.4質量部以上21.6質量部以下の範囲であることが更に好ましく、11.4質量部以上15.0質量部以下の範囲であることが特に好ましい。
樹脂における構成単位(C)の含有量が、樹脂の構成単位〔但し、構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕の合計100質量部に対して、4.9質量部以上であると、機能層に対する易接着性により優れる膜を形成できる傾向を示す。
樹脂における構成単位(C)の含有量が、樹脂の構成単位〔但し、構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕の合計100質量部に対して、27.5質量部以下であると、ポリオレフィン基材に対する塗工性がより良好となる傾向を示す。
【0056】
-樹脂の粒子の平均粒子径-
樹脂の粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、例えば、20nm以上400nm以下の範囲であることが好ましく、30nm以上200nm以下の範囲であることがより好ましく、40nm以上150nm以下の範囲であることが更に好ましい。
樹脂の粒子の平均粒子径が20nm以上であると、製造適性により優れる傾向がある。
樹脂の粒子の平均粒子径が400nm以下であると、造膜性により優れる傾向がある。
【0057】
本明細書において、「樹脂の粒子の平均粒子径」は、日本化学会編「新実験化学講座4 基礎技術3 光(II)」第725頁~第741頁(昭和51年7月20日丸善(株)発行)に記載された動的光散乱法により測定された値である。具体的な方法は、以下のとおりである。
樹脂組成物を、蒸留水を用いて希釈し、十分に撹拌混合した後、10mm角のガラスセル中にパスツールピペットを用いて5mL採取し、これを動的光散乱光度計〔例えば、MALVERN INSTRUMENT社のゼータサイザー NANO-ZS90(商品名)〕にセットする。減衰率(Attenuator)の設定値をx8(8倍)に設定し、減衰率のCount Rateが150kCps~200kCpsになるように、樹脂組成物の希釈液の濃度を調整した後、測定温度25℃±1℃、及び光散乱角90°の条件で測定した結果をコンピュータ処理することにより、樹脂組成物中の樹脂の粒子の平均粒子径を求める。また、平均粒子径の値は、Z平均の値を用いる。
【0058】
-樹脂のガラス転移温度-
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、例えば、0℃以上60℃以下の範囲であることが好ましく、10℃以上50℃以下の範囲であることがより好ましく、20℃以上45℃以下の範囲であることが更に好ましい。
本明細書において、「樹脂のガラス転移温度(Tg)」は、示差走査熱量計(DSC:Differential scanning calorimetry)を用い、下記の方法により測定される値である。
剥離紙上に、樹脂を、4ミル(101.6μm)のアプリケーターを用いて塗布する。次いで、塗布した樹脂を室温(即ち、25℃)で乾燥させ、樹脂の乾燥物を得る。得られた乾燥物を測定用サンプルとする。次いで、測定用サンプルである乾燥物10mgをアルミ製のサンプルパン〔商品名:Tzero Pan、ティー・エイ・インスツルメント社〕に詰め、アルミ製の蓋〔商品名:Tzero Hermetic Lid、ティー・エイ・インスツルメント社〕で封をした後、示差走査熱量計を用いて、ガラス転移温度を測定する。測定条件を以下に示す。
測定は、同一の測定用サンプルについて2回行い、2回目の測定で得られる値を樹脂のガラス転移温度として採用する。
示差走査熱量計としては、例えば、ティー・エイ・インスツルメント社の示差走査熱量計(商品名:DSC2500)を用いることができる。
【0059】
-測定条件-
雰囲気条件:大気下
測定範囲:-50℃~100℃
昇温速度:10℃/分
標準物質:空のサンプルパン
【0060】
-樹脂の粒子の含有率-
本発明の樹脂組成物における樹脂の粒子の含有率は、特に制限されないが、例えば、製造安定性の観点から、樹脂組成物の全質量に対して、15質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下の範囲であることがより好ましく、25質量%以上40質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
【0061】
〔イソシアネート系架橋剤〕
本発明の樹脂組成物は、イソシアネート系架橋剤を含有する。
イソシアネート系架橋剤は、ポリオレフィン基材に対する密着性及び機能層に対する易接着性の向上に寄与する。
本明細書において、「イソシアネート系架橋剤」とは、分子内に2以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、ポリイソシアネート化合物)を指す。
【0062】
ポリイソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
また、ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート化合物の2量体、3量体、又は5量体、上記ポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ポリイソシアネート化合物のビウレット体なども挙げられる。
【0063】
イソシアネート系架橋剤は、水分散型イソシアネート系架橋剤、及び、解離温度が100℃以下であるブロックイソシアネート系架橋剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0064】
本明細書において、「水分散型イソシアネート系架橋剤」とは、水等の水性媒体中で分散可能なイソシアネート系架橋剤であり、水等の水性媒体中では、イソシアネート基が内包された状態で分散されていることにより、イソシアネート基の反応性が抑えられているが、水性媒体が揮発すると、イソシアネート基の内包された状態が解消されて、イソシアネート基の反応性が発現し得るポリイソシアネート化合物を意味する。
【0065】
水分散型イソシアネート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
水分散型イソシアネート系架橋剤の市販品の例としては、三井化学(株)の「タケネート(登録商標) WD-725」、旭化成(株)の「デュラネート(登録商標) WL70-100」、住化コベストロウレタン(株)の「バイヒジュール(登録商標) 302」等が挙げられる。
なお、これらの市販品は、水等の水性媒体に分散されていない状態で販売されており、本発明の樹脂組成物の製造に際しては、あらかじめ希釈等により水等の水性媒体に分散させた後、使用することが好ましい。
【0066】
本明細書において、「ブロックイソシアネート系架橋剤」とは、分子内に2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を意味する。「ブロックイソシアネート基」とは、通常は、イソシアネート基がブロック剤で保護(所謂、マスク)されていることにより、イソシアネート基の反応性が抑えられているが、加熱されると脱保護し、活性なイソシアネート基を生成することができる基を意味する。
【0067】
解離温度が100℃以下であるブロックイソシアネート系架橋剤は、市販のものであってもよく、常法により合成したものであってもよい。
【0068】
本発明の樹脂組成物は、イソシアネート系架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0069】
樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数に対する、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比(即ち、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数/樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数)は、0.30以上であり、0.40以上であることが好ましく、0.75以上であることがより好ましく、1.0以上であることが更に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数/樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数が0.30以上であると、機能層(特に、UVインク層)に対する易接着性に優れる膜を形成できる傾向を示す。
樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数に対する、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比の上限は、特に制限されないが、例えば、過剰なイソシアネート系架橋剤に起因する基材への塗工後のブロッキングをより抑制しやすいとの観点から、9.0以下であることが好ましい。
【0070】
樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数に対する、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数(即ち、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数/樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数)は、以下の計算式(1)~(3)により求められる。なお、以下の計算式では、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数を「NCOモル数」と表記し、樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数を「総官能基モル数」と表記する。
【0071】
NCOモル数(単位:mol/イソシアネート系架橋剤の固形分100g)
=[イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基の含有率(単位:質量%)/イソシアネート系架橋剤の固形分濃度(単位:質量%)×イソシアネート系架橋剤の配合量(単位:g)]/イソシアネート基の式量(単位:g/mol)・・・(1)
【0072】
総官能基モル数(単位:mol/カルボキシ基を有する単量体、水酸基を有する単量体、及び特定ノニオン型反応性界面活性剤の全固形分100g)
=[樹脂中のカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位中のカルボキシ基の個数(価数)]+[樹脂中の水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/水酸基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×水酸基を有する単量体に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)]+[樹脂中の特定ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/特定ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×特定ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)]・・・(2)
【0073】
樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数に対する、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比
=NCOモル数/総官能基モル数・・・(3)
【0074】
〔水〕
本発明の樹脂組成物は、水を含有する。
本発明の樹脂組成物において、水は、樹脂の粒子の分散媒として機能し得る。
水としては、特に制限はなく、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物における水の含有率は、特に制限されないが、例えば、製造安定性の観点から、樹脂組成物の全質量に対して、70質量%以上98質量%以下の範囲であることが好ましく、75質量%以上95質量%以下の範囲であることがより好ましく、80質量%以上92質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
【0075】
〔水以外の水性媒体〕
本発明の樹脂組成物は、水以外の水性媒体を含有していてもよい。
水以外の水性媒体としては、アルコール系溶剤が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、特に制限はなく、1,3-ジオールモノイソブチラート、アセチレングリコール等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、水以外の水性媒体を含有する場合、水以外の水性媒体を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0076】
本発明の樹脂組成物が水以外の水性媒体を含有する場合、樹脂組成物における水以外の水性媒体の含有率は、特に制限されないが、例えば、塗膜の乾燥性の観点から、樹脂組成物の全質量に対して、3質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0077】
〔その他の成分〕
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含有していてもよい。
その他の成分としては、酸化防止剤、帯電防止剤、pH調整剤、消泡剤、造膜助剤等が挙げられる。
【0078】
-樹脂組成物のpH-
本発明の樹脂組成物のpHは、例えば、水等の水性媒体中における樹脂の粒子の分散性の観点から、5.0~9.0であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物のpHの測定方法は、特に制限されない。
本発明の樹脂組成物のpHは、25℃の環境下、pHメーターを用いて測定した値を採用する。pHメーターとしては、例えば、(株)堀場製作所のLAQUA(商品名)を好ましく用いることができる。但し、pHメーターは、これに限定されない。
【0079】
[樹脂組成物の用途]
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン基材のコーティングに好ましく用いられる。
本発明の樹脂組成物により形成される膜は、ポリオレフィン基材に対する密着性及び機能層に対する易接着性に優れ、所謂、プライマー層として機能し得る。
機能層としては、UVインク層、ハードコート層、粘着剤層、アンカー層、印刷層、導電層、防眩層、反射防止層、防汚層等が挙げられる。
機能層は、アクリル系材料を用いて形成された層であることが好ましい。
アクリル系材料を用いて形成された機能層は、本発明の樹脂組成物により形成される膜との易接着性により優れる傾向を示す。
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン基材と、アクリル系材料を使用した機能層と、の間に設けられる膜を形成する用途に特に好適である。
【0080】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物の製造方法は、既述の樹脂組成物を製造できればよく、特に制限されない。
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、既述の樹脂組成物を製造しやすいとの観点から、以下で説明する、本実施形態の樹脂組成物の製造方法が好ましい。
【0081】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」ともいう。)は、特定ノニオン型反応性界面活性剤及び水の存在下、少なくとも、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体と、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体と、を重合させて、樹脂の粒子を得る工程(以下、「乳化重合工程」ともいう。)を含む。
【0082】
以下、本実施形態の製造方法における各工程について説明するが、既述の樹脂組成物と共通する事項、例えば、樹脂組成物に含まれる成分の詳細については、説明を省略する。
【0083】
<乳化重合工程>
乳化重合工程は、特定ノニオン型反応性界面活性剤及び水の存在下、少なくとも、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体と、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体と、を重合させて、構成単位(A)の含有率が、全構成単位〔但し、構成単位(C)を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。〕に対して65質量%以上である樹脂の粒子を得る工程である。
ここで、構成単位(A)は、既述の構成単位(A)、すなわち、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位であり、構成単位(C)は、既述の構成単位(C)、すなわち、特定ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を意味する。
乳化重合工程では、少なくとも、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体と、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体と、特定ノニオン型反応性界面活性剤と、が共重合して、特定ノニオン型反応性界面活性剤による水和層が表面に形成された樹脂の粒子が得られる。
【0084】
重合方法としては、特に制限されず、例えば、以下に示す(1)~(3)の方法が挙げられる。
(1)温度計、撹拌棒、還流冷却器、滴下ロート等を備えた反応容器内に、少なくとも、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体と、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体と、特定ノニオン型反応性界面活性剤と、水と、を仕込み、反応容器内を昇温させた後、適宜、重合開始剤、還元剤等を加えて、乳化重合反応を進行させる方法(所謂、一括仕込み方式)、
(2)温度計、撹拌棒、還流冷却器、滴下ロート等を備えた反応容器内に、少なくとも、特定ノニオン型反応性界面活性剤と、水と、を仕込み、反応容器内を昇温させた後、単量体成分〔少なくとも、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体、並びに、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体〕を滴下し、適宜、重合開始剤、還元剤等を加えて、乳化重合反応を進行させる方法(所謂、モノマー滴下法)、
(3)単量体成分〔少なくとも、分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体、並びに、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体〕を予め、少なくとも、特定ノニオン型反応性界面活性剤と、水と、を用いて乳化させ、プレエマルションを得た後、得られたプレエマルションを、温度計、撹拌棒、還流冷却器、滴下ロート等を備えた反応容器内に滴下し、適宜、重合開始剤、還元剤等を加えて、乳化重合反応を進行させる方法(所謂、乳化モノマー滴下法)等が挙げられる。
これらの中でも、重合方法としては、例えば、製造安定性の観点から、上記(3)の乳化モノマー滴下法が好ましい。
【0085】
重合温度は、例えば、50℃~80℃であり、好ましくは50℃~70℃である。
重合時間は、例えば、4時間~6時間であり、好ましくは5時間~6時間である。
【0086】
分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体の使用量は、単量体の総量100質量部に対して、65質量部以上であり、65質量部以上98.5質量部以下の範囲であることが好ましく、67質量部以上98.5質量部以下の範囲であることがより好ましく、69質量部以上98.5質量部以下の範囲であることが更に好ましい。
分岐構造及び脂環構造の少なくとも一方の構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体の使用量が、単量体の総量100質量部に対して65質量部以上であると、機能層(特に、UVインク層)に対する易接着性に優れる膜を形成できる樹脂組成物を製造できる傾向がある。
【0087】
カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体の使用量は、特に制限されないが、例えば、単量体の総量100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下の範囲であることが好ましく、1質量部以上8質量部以下の範囲であることがより好ましく、1.5質量部以上7質量部以下の範囲であることが更に好ましい。
カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方を有する単量体の使用量が、単量体の総量100質量部に対して上記範囲内であると、機能層に対する易接着性に優れる膜を形成できる樹脂組成物を製造できる傾向がある。
【0088】
特定ノニオン型反応性界面活性剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、単量体の総量100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下の範囲であることが好ましく、8質量部以上40質量部以下の範囲であることがより好ましく、10質量部以上25質量部以下の範囲であることが更に好ましい。
特定ノニオン型反応性界面活性剤の使用量が、単量体の総量100質量部に対して5質量部以上であると、機能層に対する易接着性により優れる膜を形成できる傾向がある。
特定ノニオン型反応性界面活性剤の使用量が、単量体の総量100質量部に対して50質量部以下であると、ポリオレフィン基材に対する密着性により優れる膜を形成できる傾向がある。
【0089】
乳化重合工程では、重合開始剤、還元剤、連鎖移動剤、pH調整剤等の各種添加剤を用いてもよい。
【0090】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、通常の乳化重合に使用可能な重合開始剤であれば、特に制限なく用いることができる。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウムに代表される過硫酸塩、t-ブチルヒドロパーオキサイド及びクメンヒドロパーオキサイドに代表される有機過酸化物、並びに過酸化水素が挙げられる。
乳化重合工程において重合開始剤を用いる場合、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0091】
重合開始剤は、通常用いられる量で使用される。
重合開始剤の使用量は、原料である単量体の合計100質量部に対して、例えば、0.1質量部~2質量部であり、好ましくは0.3質量部~1.5質量部である。
【0092】
(還元剤)
乳化重合工程では、既述の重合開始剤とともに、還元剤を用いてもよい。
還元剤としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム(「二亜硫酸ナトリウム」ともいう。)、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、チオグリコール酸、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖等が挙げられる。
乳化重合工程において還元剤を用いる場合、還元剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0093】
還元剤は、通常用いられる量で使用される。
還元剤の使用量は、原料である単量体の合計100質量部に対して、例えば、0.1質量部~2質量部であり、好ましくは0.2質量部~1.5質量部である。
【0094】
<他の工程>
本実施形態の製造方法は、必要に応じ、乳化重合工程以外の他の工程を有していてもよい。
【0095】
既述の本実施形態の製造方法では、樹脂の粒子を得る方法として、乳化重合法を一例として挙げたが、本発明における樹脂の粒子を得る方法は、上記の乳化重合法に限定されるものではなく、例えば、懸濁重合法、シード重合法等の方法を用いることもできる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0097】
本実施例において製造した樹脂組成物のpHは、既述の測定方法により測定した。また、測定装置には、既述の測定方法において、一例として記載したものと同様のものを使用した。
【0098】
[樹脂組成物の製造]
〔実施例1〕
温度計、撹拌棒、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた反応容器内に、脱イオン水104.4質量部と、「アクアロン(登録商標) KH-10」[商品名、アニオン型反応性界面活性剤、有効成分濃度:99質量%、第一工業製薬(株)]2.0質量部と、を仕込み、反応容器内を窒素置換しながら57℃に昇温させた。
一方、別の容器に、脱イオン水98.2質量部と、「アデカリアソープ(登録商標) ER-30」[商品名、特定ノニオン型反応性界面活性剤、オキシエチレン基の平均付加モル数:30、有効成分濃度:65質量%、(株)ADEKA]17.6質量部(有効成分量として11.44質量部)と、「アクアロン(登録商標) KH-10」[商品名、アニオン型反応性界面活性剤、有効成分濃度:99質量%、第一工業製薬(株)]3.0質量部と、を入れて撹拌した後、更に、t-ブチルアクリレート(t-BA)[分岐構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体]96.5質量部と、メタクリル酸(MAA)[カルボキシ基を有する単量体]1.5質量部と、N-メチロールアクリルアミド(N-MAM)[水酸基を有する単量体]2.0質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。
次に、反応容器の内温を57℃に保ちながら、8.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]2.5質量部及び6.4質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]2.5質量部を加え、乳化重合反応を開始させた。
反応容器の内温を57℃に保ちながら、上記にて調製したプレエマルションを、3時間にわたって均一に逐次添加するとともに、1.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]20.75質量部及び0.8質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]20.75質量部を3時間30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合させた。逐次添加終了後、得られた乳化重合物を57℃で30分間熟成させてから室温まで冷却し、樹脂含有溶液を得た。
次いで、得られた樹脂含有溶液に、「タケネート(登録商標) WD-725」[商品名、水分散型イソシアネート系架橋剤、固形分濃度:100質量%、三井化学(株)]を脱イオン水で10倍希釈した溶液45質量部(固形分量として4.5質量部)と、脱イオン水とを加え、固形分濃度が11質量%となるように調整し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のpHは、6.9であった。
【0099】
樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数に対する、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数(即ち、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数/樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数)は、既述の計算式(1)~(3)を用いて求めた。結果を表1及び表2に示す。
なお、表1及び表2では、「イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数」を「イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数(B)」と表記し、「樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数」を「樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数(A)」と表記した。また、「イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数(B)/樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数(A)」を「モル当量比[(B)/(A)」と表記した。
【0100】
例えば、実施例1の樹脂組成物における「イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数/樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数」は、具体的には、以下のようにして計算した。
なお、イソシアネート系架橋剤である「タケネート(登録商標) WD-725」は、イソシアネート基の含有率が15.96質量%であり、固形分濃度が100質量%であり、配合量(固形分換算量)が4.5gである。また、イソシアネート基の式量は42g/molである。
カルボキシ基を有する単量体であるメタクリル酸(MAA)の分子量は、86g/molである。また、樹脂中のメタクリル酸(MAA)に由来する構成単位の含有率は、1.5質量%であり、メタクリル酸(MAA)に由来する構成単位中のカルボキシ基の個数(価数)は、1である。
水酸基を有する単量体であるN-メチロールアクリルアミド(N-MAM)の分子量は、101g/molである。また、樹脂中のN-メチロールアクリルアミド(N-MAM)に由来する構成単位の含有率は、2.0質量%であり、N-メチロールアクリルアミド(N-MAM)に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)は、1である。
特定ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標) ER-30」の分子量は、1608g/molである。また、樹脂中の「アデカリアソープ(登録商標) ER-30」に由来する構成単位の含有率は、11.44質量%であり、「アデカリアソープ(登録商標) ER-30」に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)は、1である。
【0101】
計算式(1)
NCOモル数(単位:mol/イソシアネート系架橋剤の固形分100g)
=[イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基の含有率(単位:質量%)/イソシアネート系架橋剤の固形分濃度(単位:質量%)×イソシアネート系架橋剤の配合量(単位:g)]/イソシアネート基の式量(単位:g/mol)
=[15.96/100×4.5/42]
=0.017
【0102】
計算式(2)
総官能基モル数(単位:mol/カルボキシ基を有する単量体、水酸基を有する単量体、及び特定ノニオン型反応性界面活性剤の全固形分100g)
=[樹脂中のカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位中のカルボキシ基の個数(価数)]+[樹脂中の水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/水酸基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×水酸基を有する単量体に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)]+[樹脂中の特定ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/特定ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×特定ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)]
=[1.5/86×1]+[2.0/101×1]+[11.44/1608×1]
=0.017+0.020+0.007
=0.044
【0103】
計算式(3)
樹脂中のカルボキシ基及び水酸基の合計モル数に対する、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比
=NCOモル数/総官能基モル数
=0.017/0.044
=0.39
【0104】
〔実施例2~実施例13〕
実施例1において、樹脂組成物の組成を表1に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のpHは、以下のとおりであった。
実施例2[pH:6.9]、実施例3[pH:8.0]、実施例4[pH:8.9]、実施例5[pH:8.6]、実施例6[pH:6.3]、実施例7[pH:7.7]、実施例8[pH:6.9]、実施例9[pH:7.1]、実施例10[pH:7.4]、実施例11[pH:7.1]、実施例12[pH:6.9]、実施例13[pH:6.2]
【0105】
〔比較例1~比較例3及び比較例6~比較例10〕
実施例1において、樹脂組成物の組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のpHは、以下のとおりであった。
比較例1[pH:8.0]、比較例2[pH:6.9]、比較例3[pH:8.0]、比較例6[pH:6.6]、比較例7[pH:7.2]、比較例8[pH:8.0]、比較例9[pH:9.0]、比較例10[pH:8.0]
【0106】
〔比較例4〕
実施例1において、プレエマルションを調製するまでの操作を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂含有溶液を得た。
次いで、得られた樹脂含有溶液50質量部に、脱イオン水を加え、固形分濃度が11質量%となるように調整し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のpHは、6.9であった。
「温度計、撹拌棒、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた反応容器内に、脱イオン水121質量部と、「ネオペレックス G-65」[商品名、アニオン型非反応性界面活性剤、有効成分濃度:65質量%、花王(株)]1.55質量部(有効成分量として1.01質量部)と、を仕込み、反応容器内を窒素置換しながら57℃に昇温させた。
一方、別の容器に、脱イオン水41.6質量部と、「ネオペレックス G-65」[商品名、アニオン型非反応性界面活性剤、有効成分濃度:65質量%、花王(株)]1.55質量部(有効成分量として1.01質量部)と、を入れて撹拌した後、更に、t-ブチルアクリレート(t-BA)[分岐構造を含む基を有する(メタ)アクリル単量体]96.5質量部と、メタクリル酸(MAA)[カルボキシ基を有する単量体]1.5質量部と、N-メチロールアクリルアミド(N-MAM)[水酸基を有する単量体]2.0質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0107】
〔比較例5〕
比較例4において、樹脂組成物の組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、比較例4と同様の操作を行い、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のpHは、7.8であった。
【0108】
〔比較例11〕
実施例1において、樹脂含有溶液を得た後の操作を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂含有溶液を得た。得られた樹脂組成物のpHは、6.9であった。
「次いで、得られた樹脂含有溶液に、「エポクロス(登録商標) WS-500」[商品名、オキサゾリン系架橋剤、固形分濃度:39質量%、(株)日本触媒]を脱イオン水で3.9倍希釈した溶液37質量部(固形分量として3.7質量部)と、脱イオン水とを加え、固形分濃度が11質量%となるように調整し、樹脂組成物を得た。」
【0109】
〔比較例12〕
実施例1において、樹脂含有溶液を得た後の操作を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、樹脂含有溶液を得た。得られた樹脂組成物のpHは、6.9であった。
「次いで、得られた樹脂含有溶液に、「デナコール(登録商標) EX-810」[商品名、エポキシ系架橋剤、固形分濃度:100質量%、ナガセケムテックス(株)]を脱イオン水で10倍希釈した溶液19質量部(固形分量として1.9質量部)と、脱イオン水とを加え、固形分濃度が11質量%となるように調整し、樹脂組成物を得た。」
【0110】
[測定]
1.樹脂のガラス転移温度(Tg)
実施例1~実施例13の各樹脂組成物を製造する際に得られた各樹脂含有溶液を用いて、樹脂のガラス転移温度を測定した。具体的には、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC:Differential scanning calorimetry)を用い、下記の方法により測定した。
剥離紙上に、樹脂含有溶液を、4ミル(101.6μm)のアプリケーターを用いて塗布した。次いで、塗布した樹脂含有溶液を室温(即ち、25℃)で乾燥させ、樹脂の乾燥物を得た。得られた乾燥物を測定用サンプルとした。次いで、測定用サンプルである乾燥物10mgをアルミ製のサンプルパン〔商品名:Tzero Pan、ティー・エイ・インスツルメント社〕に詰め、アルミ製の蓋〔商品名:Tzero Hermetic Lid、ティー・エイ・インスツルメント社〕で封をした後、示差走査熱量計〔商品名:DSC2500、ティー・エイ・インスツルメント社〕を用いて、ガラス転移温度を測定した。測定条件を以下に示す。測定は、同一の測定用サンプルについて2回行い、2回目の測定で得られる値を樹脂のガラス転移温度として採用した。
【0111】
-測定条件-
雰囲気条件:大気下
測定範囲:-50℃~100℃
昇温速度:10℃/分
標準物質:空のサンプルパン
【0112】
その結果、実施例1~実施例13の樹脂組成物を製造する際に得られた樹脂含有溶液に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)は、いずれも0℃~60℃の範囲内であった。このことから、実施例1~実施例13の樹脂組成物に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)は、いずれも0℃~60℃の範囲内であることが確認された。
【0113】
2.樹脂の粒子の平均粒子径
実施例1~実施例13の各樹脂組成物を製造する際に得られた各樹脂含有溶液を用いて、樹脂の粒子の平均粒子径を測定した。具体的には、下記の方法により測定した。
樹脂含有溶液を、脱イオン水を用いて30倍に希釈し、十分に撹拌混合した後、10mm角のガラスセル中にパスツールピペットを用いて5mL採取し、これを動的光散乱光度計〔商品名:ゼータサイザー NANO-ZS90、MALVERN INSTRUMENT社〕にセットした。次いで、減衰率(Attenuator)の設定値をx8(8倍)に設定し、減衰率のCount Rateが150kCps~200kCpsになるように、樹脂含有溶液の希釈液の濃度を調整した後、測定温度25℃±1℃、及び光散乱角90°の条件で測定した結果をコンピュータ処理することにより、樹脂含有溶液中の樹脂の粒子の平均粒子径を求めた。なお、平均粒子径の値は、Z平均の値を用いた。
【0114】
その結果、実施例1~実施例13の樹脂組成物を製造する際に得られた樹脂含有溶液に含まれる樹脂の粒子の平均粒子径は、いずれも20nm~400nmの範囲内であった。このことから、実施例1~実施例13の樹脂組成物に含まれる樹脂の粒子の平均粒子径は、いずれも20nm~400nmの範囲内であると考えられる。
【0115】
[評価]
実施例1~実施例13及び比較例1~比較例12の各樹脂組成物について、以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0116】
1.オレフィン基材に対する密着性
樹脂組成物を、基材であるポリプロピレンフィルム[商品名:トレファン(登録商標) #40-2578、厚さ:40μm、東レ(株)]の上に、バーコーターを用いて塗工し、塗膜を形成した。なお、バーコーターは、乾燥後の膜の厚さが500nmになるように選定した。
次いで、形成した塗膜を100℃にて1分間加熱し、乾燥させることにより、「ポリプロピレンフィルム/樹脂組成物により形成された膜」の層構成を有する試験片Xを得た。得られた試験片Xを用いて、樹脂組成物により形成された膜に対し、JIS K5600-5-6(クロスカット法)に準拠したクロスカット試験を行った。このクロスカット試験では、カット間隔を1mmとし、1mm角の正方形の格子を100個形成した。試験後、剥がれなかった格子の数を測定し、その割合を算出した。
剥がれなかった格子の数の割合が95%以上である場合には、オレフィン基材に対する密着性に優れる膜を形成できる樹脂組成物であると判断した。剥がれなかった格子の数の割合は、95%以上であることが好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0117】
2.機能層に対する易接着性
(1)UVインク層
上記「1.オレフィン基材に対する密着性」における方法と同様の方法により、試験片Xを得た。
次いで、得られた試験片Xのポリプロピレンフィルムとは反対側の面、すなわち、樹脂組成物により形成された膜の上に、UVインク樹脂〔商品名:ダイキュア(登録商標) MAR50、DIC(株)〕を、バーコーターを用いて塗工し、塗膜を形成した。なお、バーコーターは、乾燥後の膜の厚さが7μmになるように選定した。
次いで、形成した塗膜を100℃にて1分間加熱した。加熱後の膜に対し、紫外線照射装置を用いて、ランプ出力160W/cmの紫外線を、積算光量が250mJ/cm2となるように照射し、膜を硬化させることにより、「ポリプロピレンフィルム/樹脂組成物により形成された膜/UVインク層」の層構成を有する試験片Yを得た。
得られた試験片Yを用いて、UVインク層に対し、JIS K5600-5-6(クロスカット法)に準拠したクロスカット試験を行った。このクロスカット試験では、カット間隔を1mmとし、1mm角の正方形の格子を100個形成した。試験後、剥がれなかった格子の数を測定し、その割合を算出した。
剥がれなかった格子の数の割合が95%以上である場合には、UVインク層に対する易接着性に優れる膜を形成できる樹脂組成物であると判断した。剥がれなかった格子の数の割合は、95%以上であることが好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0118】
なお、比較例4、比較例5、及び比較例10の樹脂組成物により形成された膜は、ポリプロピレンフィルムに対する密着性が非常に悪かったため、UVインク層に対する易接着性の評価試験を行うことができなかった。
【0119】
(2)ハードコート層
上記「1.オレフィン基材に対する密着性」における方法と同様の方法により、試験片Xを得た。
次いで、得られた試験片Xのポリプロピレンフィルムとは反対側の面、すなわち、樹脂組成物により形成された膜の上に、ハードコート樹脂〔商品名:HX-1000UV、共栄社化学(株)〕を、バーコーターを用いて塗工し、塗膜を形成した。なお、バーコーターは、乾燥後の膜の厚さが7μmになるように選定した。
次いで、形成した塗膜を100℃にて1分間加熱した。加熱後の膜に対し、紫外線照射装置を用いて、ランプ出力160W/cmの紫外線を、積算光量が250mJ/cm2となるように照射し、膜を硬化させることにより、「ポリプロピレンフィルム/樹脂組成物により形成された膜/ハードコート層」の層構成を有する試験片Zを得た。
得られた試験片Zを用いて、ハードコート層に対し、JIS K5600-5-6(クロスカット法)に準拠したクロスカット試験を行った。このクロスカット試験では、カット間隔を1mmとし、1mm角の正方形の格子を100個形成した。試験後、剥がれなかった格子の数を測定し、その割合を算出した。
剥がれなかった格子の数の割合が95%以上である場合には、ハードコート層に対する易接着性に優れる膜を形成できる樹脂組成物であると判断した。剥がれなかった格子の数の割合は、95%以上であることが好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0120】
なお、比較例4、比較例5、及び比較例10の樹脂組成物により形成された膜は、ポリプロピレンフィルムに対する密着性が非常に悪かったため、ハードコート層に対する易接着性の評価試験を行うことができなかった。
【0121】
【0122】
【0123】
表1及び表2中、組成の欄における「-」は、該当する成分を配合していないことを意味する。表1及び表2中、組成の欄以外の欄における「-」は、該当する項目がないことを意味する
表1及び表2に示す界面活性剤の配合量は、有効成分換算値である。
表1及び表2に示す架橋剤の配合量は、固形分換算値である。
【0124】
表1及び表2に記載の各成分の詳細は、以下に示すとおりである。
[単量体]
<分岐鎖を有する(メタ)アクリル単量体>
「i-BMA」:i-ブチルメタクリレート
「t-BA」:t-ブチルアクリレート
<脂環構造を有する(メタ)アクリル単量体>
「CHMA」:シクロヘキシルメタクリレート
<カルボキシ基を有する単量体>
「AA」:アクリル酸
「MAA」:メタクリル酸
<水酸基を有する単量体>
「N-MAM」:N-メチロールアクリルアミド
<その他の単量体>
「MMA」:メチルメタクリレート(メタクリル酸アルキルエステル単量体)
「EA」:エチルアクリレート(アクリル酸アルキルエステル単量体)
「n-BMA」:n-ブチルメタクリレート(メタクリル酸アルキルエステル単量体)
【0125】
[反応性界面活性剤]
<アニオン型>
「アクアロン KH-10」[商品名、有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシエチレン基の平均付加モル数:10〕、有効成分濃度:99質量%、第一工業製薬(株)]
「アクアロン AR-10」[商品名、有効成分:ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシエチレン基の平均付加モル数:10〕、有効成分濃度:99質量%、第一工業製薬(株)]
上記「アクアロン」は、登録商標である。
【0126】
<特定ノニオン型>
「アデカリアソープ ER-30」[商品名、有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシエチレン基の平均付加モル数:30〕、有効成分濃度:65質量%、式(1)で表されるノニオン型反応性界面活性剤、(株)ADEKA]
「アクアロン AN-10」[商品名、オキシエチレン基の平均付加モル数:10、第一工業製薬(株)]
「アクアロン AN-30」[商品名、オキシエチレン基の平均付加モル数:30、第一工業製薬(株)]
上記「アデカリアソープ」及び「アクアロン」は、いずれも登録商標である。
【0127】
[非反応性界面活性剤]
<アニオン型>
「ネオペレックス G-65」[商品名、有効成分:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、有効成分濃度:65質量%、花王(株)]
<ノニオン型>
「ノイゲン EA-177」[商品名、有効成分:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル〔オキシエチレン基の平均付加モル数:20〕、有効成分濃度量:100質量%、第一工業製薬(株)]
「ノイゲン EA-197D」[商品名、有効成分:ポリオキシエチレン化フェニルエーテル、有効成分濃度:60質量%、第一工業製薬(株)]
上記「ネオペレックス」及び「ノイゲン」は、いずれも登録商標である。
【0128】
[架橋剤]
<イソシアネート系架橋剤>
「タケネート WD-725」[商品名、水分散型イソシアネート系架橋剤、ヘキサメチレンジイソシアネート、固形分濃度:100質量%、イソシアネート基の含有率:15.96質量%、三井化学(株)]
「デュラネート WL70-100」[商品名、水分散型イソシアネート系架橋剤、ヘキサメチレンジイソシアネート、固形分濃度:100質量%、イソシアネート基の含有率:15.5質量%、旭化成(株)]
<オキサゾリン系架橋剤>
「エポクロス WS-500」[商品名、固形分濃度:39質量%、(株)日本触媒]
<エポキシ系架橋剤>
「デナコール EX-810」[商品名、固形分濃度:100質量%、ナガセケムテックス(株)]
上記「タケネート」、「デュラネート」、「エポクロス」、及び「デナコール」は、いずれも登録商標である。
【0129】
表1に示すように、実施例1~実施例13の樹脂組成物により形成された膜は、ポリオレフィン基材に対する密着性に優れていた。また、実施例1~実施例13の樹脂組成物により形成された膜は、UVインク層及びハードコート層のいずれの機能層に対しても、優れた易接着性を示した。
【0130】
一方、表2に示すように、比較例1~比較例12の樹脂組成物により形成された膜は、ポリオレフィン基材に対する密着性及び機能層に対する易接着性の少なくとも一方が劣っていた。