(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 Q
(21)【出願番号】P 2020038714
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】指田 和之
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 健一
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222998(JP,A)
【文献】特開2004-274864(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125004(WO,A1)
【文献】特開2018-019489(JP,A)
【文献】特開平09-117156(JP,A)
【文献】特開2018-057223(JP,A)
【文献】特開平06-006972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が入力される第1入力端子および第2入力端子と、
前記第1入力端子と前記第2入力端子との間において直列に接続された第1スイッチ素子および第2スイッチ素子と、
前記第1スイッチ素子および前記第2スイッチ素子と並列に接続され、互いに直列接続された第3スイッチ素子および第4スイッチ素子と、
1次巻線が前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子との間の第1ノードと、前記第2入力端子との間に接続された第1トランスと、
1次巻線が前記第3スイッチ素子と前記第4スイッチ素子との間の第2ノードと、前記第2入力端子との間に接続され、2次巻線が前記第1トランスの2次巻線に直列に接続された第2トランスと、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に設けられた補助インダクタと、
前記第1スイッチ素子と、前記第2スイッチ素子と、前記第3スイッチ素子と、前記第4スイッチ素子とのスイッチング動作を制御する制御部と、
を備える、
電源装置。
【請求項2】
前記補助インダクタは、前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子とを含む第1アームの動作と、前記第3スイッチ素子と第4スイッチ素子とを含む第2アームの動作との位相差に基づいて励磁される、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に、前記補助インダクタと直列に接続されたキャパシタをさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LLCコンバータ(絶縁型共振コンバータ)は、ZVS(Zero Voltage Switching)動作およびZCS(Zero Current Switching)動作によるスイッチング損失を低減することができるので、高効率を実現することができる。しかしながら、LLCコンバータは、軽負荷の場合においてはZVS動作を維持できなくなるため、スイッチング損失が増加してしまう。そこで、ZVSを行うための電流を蓄積するインダクタを追加することで、スイッチング損失を補う技術が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-57223号公報
【文献】特開2018-19489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ZVSを十分に行える定格負荷領域であっても、スイッチング損失を補うために追加したインダクタの励磁電流が流れてしまい、不要な電力損失が発生してしまう。電力損失の発生を防ぐために、例えば、スイッチ素子を追加して制御することも考えられる。しかしながら、スイッチ素子を追加することは、電源装置のコストが上昇したり、実装面積が増加したりするため好ましくない。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、コストの上昇を抑え、かつ、実装面積の増加を抑えることのできる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の電源装置は、直流電圧が入力される第1入力端子および第2入力端子と、前記第1入力端子と前記第2入力端子との間において直列に接続された第1スイッチ素子および第2スイッチ素子と、前記第1スイッチ素子および前記第2スイッチ素子と並列に接続され、互いに直列接続された第3スイッチ素子および第4スイッチ素子と、1次巻線が前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子との間の第1ノードと、前記第2入力端子との間に接続された第1トランスと、1次巻線が前記第3スイッチ素子と前記第4スイッチ素子との間の第2ノードと、前記第2入力端子との間に接続され、2次巻線が前記第1トランスの2次巻線に直列に接続された第2トランスと、前記第1ノードと前記第2ノードとの間に設けられた補助インダクタと、前記第1スイッチ素子と、前記第2スイッチ素子と、前記第3スイッチ素子と、前記第4スイッチ素子とのスイッチング動作を制御する制御部と、を備える。
【0007】
前記補助インダクタは、前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子とを含む第1アームの動作と、前記第3スイッチ素子と第4スイッチ素子とを含む第2アームの動作との位相差に基づいて励磁されることが好ましい。
【0008】
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に、前記補助インダクタと直列に接続されたキャパシタをさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様の電源装置は、コストの上昇を抑え、かつ、実装面積の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、比較例に係る電源装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、比較例による電源装置が定格負荷で動作している際の補助インダクタに流れる電流の波形を示す図である。
【
図4】
図4は、比較例の電源装置に係る電力損失を低減する方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、比較例の電源装置に係る電力損失を低減する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各図の説明において、他の図と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
図1を用いて、実施形態に係る電源装置の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る電源装置の構成の一例を示す図である。
【0013】
電源装置1は、第1入力端子11と、第2入力端子12と、平滑化コンデンサ13と、絶縁型共振コンバータ20と、第1出力端子31と、第2出力端子32と、平滑化コンデンサ33と、制御部100と、電流検出部110と、記憶部120とを含む。
【0014】
第1入力端子11および第2入力端子12には、直流電圧が入力される。
【0015】
平滑化コンデンサ13は、第1入力端子11と、第2入力端子12とに電気的に接続されている。平滑化コンデンサ13は、第1入力端子11および第2入力端子12に入力された直流電圧を平滑化する。平滑化コンデンサ13は、平滑化した直流電圧を絶縁型共振コンバータ20に出力する。
【0016】
絶縁型共振コンバータ20は、第1スイッチ素子であるスイッチ素子Q1と、第2スイッチ素子であるスイッチ素子Q2と、第3スイッチ素子であるスイッチ素子Q3と、第4スイッチ素子であるスイッチ素子Q4と、補助インダクタLaと、トランスTR1と、トランスTR2と、ダイオードブリッジDBとを含む。絶縁型共振コンバータ20は、ハーフブリッジ方式のLLCコンバータであるものとして説明するが、本開示はこれに限定されない。絶縁型共振コンバータ20は、フルブリッジ方式のLLCコンバータであってもよい。なお、トランスTR1とトランスTR2とをまとめて1つのトランスとしてもよい。
【0017】
スイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q2と、スイッチ素子Q3と、スイッチ素子Q4とは、例えば、Nチャネル型の電界効果トランジスタで実現することができる。なお、各スイッチ素子は、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイス、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などで実現されてもよい。
【0018】
スイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q2とは、第1入力端子11と、第2入力端子12との間において互いに直列にかつ電気的に接続されている。
【0019】
スイッチ素子Q3と、スイッチ素子Q4とは、第1入力端子11と、第2入力端子12との間において互いに直列にかつ電気的に接続されている。また、スイッチ素子Q3およびスイッチ素子Q4の直列回路は、スイッチ素子Q1およびスイッチ素子Q2の直列回路に対して並列に接続されている。
【0020】
補助インダクタLaは、ZVSの動作を補助するためのインダクタである。補助インダクタLaの一端は、キャパシタCaを介して、スイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q2との間の第1ノードであるノードN1に電気的に接続されている。補助インダクタLaの他端は、スイッチ素子Q3と、スイッチ素子Q4との間の第2ノードであるノードN2に電気的に接続されている。キャパシタCaは、直流電流をカットするためのキャパシタである。キャパシタCaを設けずに、補助インダクタLaの一端を、ノードN1に直接接続してもよい。
【0021】
第1トランスであるトランスTR1は、1次巻線21と、2次巻線22と、コア23とを有する。1次巻線21と、2次巻線22とは、コア23に巻き付けられている。第2トランスであるトランスTR2は、1次巻線24と、2次巻線25と、コア26とを有する。1次巻線24と、2次巻線25とは、コア26に巻き付けられている。トランスTR1の2次巻線22の一端は、トランスTR2の2次巻線25の一端に電気的に接続されている。このため、2次巻線22と2次巻線25とは、直列に接続されている。
【0022】
1次巻線21は、漏れインダクタンスLr1と、励磁インダクタンスLm1とを備える。1次巻線21の一端は、ノードN1に電気的に接続されている。1次巻線21の他端は、第2入力端子12に電気的に接続されている。1次巻線21は、キャパシタCr1を備える。
【0023】
1次巻線24は、漏れインダクタンスLr2と、励磁インダクタンスLm2とを備える。1次巻線24の一端は、ノードN2に電気的に接続されている。1次巻線24の他端は、第2入力端子12に電気的に接続されている。1次巻線24は、キャパシタCr2を備える。
【0024】
ダイオードブリッジDBは、2次巻線22に発生する交流電圧を全波整流する。ダイオードブリッジDBは、第1ダイオードD11と、第2ダイオードD12と、第3ダイオードD13と、第4ダイオードD14とを有する。
【0025】
第1ダイオードD11のアノードは、2次巻線22の一端に電気的に接続されている。第1ダイオードD11のカソードは、第1出力端子31に電気的に接続されている。
【0026】
第2ダイオードD12のアノードは、2次巻線25の一端に電気的に接続されている。第2ダイオードD12のカソードは、第1出力端子31に電気的に接続されている。
【0027】
第3ダイオードD13のアノードは、第2出力端子32に電気的に接続されている。第3ダイオードD13のカソードは、2次巻線22の一端に電気的に接続されている。
【0028】
第4ダイオードD14のアノードは、第2出力端子32に電気的に接続されている。第4ダイオードD14のカソードは、2次巻線25の一端に電気的に接続されている。
【0029】
平滑化コンデンサ33は、ダイオードブリッジDBから出力される出力電圧を平滑化する。平滑化コンデンサ33は、第1出力端子31と、第2出力端子32との間に電気的に接続されている。
【0030】
制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、図示しない記憶部に記憶されたプログラムがRAM(Random Access Memory)等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部100は、コントローラ(Controller)であり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0031】
制御部100は、外部から入力される制御信号に従って、スイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q2と、スイッチ素子Q3と、スイッチ素子Q4とのスイッチング動作を制御する。具体的には、制御部100は、1次巻線21または2次巻線22に流れる電流の値に基づいて、スイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q2と、スイッチ素子Q3と、スイッチ素子Q4とのスイッチング動作を制御する。制御部100は、例えば、スイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q2と、スイッチ素子Q3と、スイッチ素子Q4とに対しPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力して、各スイッチ素子のスイッチング動作を制御する。
【0032】
制御部100は、スイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q2とのスイッチング動作を制御することで、第1入力端子11および第2入力端子12に入力された入力電圧をトランスTR1に伝える。また、制御部100は、スイッチ素子Q3と、スイッチ素子Q4とのスイッチング動作を制御することで、第1入力端子11および第2入力端子12に入力された入力電圧をトランスTR2に伝える。
【0033】
制御部100は、定格負荷の場合、アーム301の動作とアーム302の動作との位相を一致させるように、スイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q2と、スイッチ素子Q3と、スイッチ素子Q4とをスイッチング動作させる。また、制御部100は、軽負荷の場合、アーム301の動作とアーム302の動作との位相をずらすように、スイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q2と、スイッチ素子Q3と、スイッチ素子Q4とをスイッチング動作させる。制御部100は、無負荷の場合、アーム301の動作とアーム302の動作との位相を180°ずらすように、スイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q2と、スイッチ素子Q3と、スイッチ素子Q4とをスイッチング動作させる。アーム301の動作とアーム302の動作との位相を180°ずらすことにより、出力を止めることができる。
【0034】
電流検出部110は、少なくとも、1次巻線21または1次巻線24、2次巻線22または2次巻線25、のいずれか1つに流れる電流を検出する。電流検出部110は、電流の検出結果を制御部100に出力する。
【0035】
記憶部120は、各種の情報を記憶する。記憶部120は、例えば、予め定められた閾値電流を記憶する。電流検出部110によって検出された電流の値が、記憶部120が記憶している閾値電流の値を超えている場合には、電源装置1は高負荷で動作していることを意味する。
【0036】
ここで、実施の形態の理解を容易にするため、比較例について説明する。
[比較例の電源装置]
図2は比較例の電源装置1aの構成を説明する図である。
図2に示す比較例の電源装置1aは、
図1に示す電源装置1とは異なり、第1スイッチ素子であるスイッチ素子Q
1、第2スイッチ素子であるスイッチ素子Q
2、第3スイッチ素子であるスイッチ素子Q
3、第4スイッチ素子であるスイッチ素子Q
4の他に、補助スイッチ素子を有する。すなわち、電源装置1aは、スイッチ素子Q
1に対応する補助スイッチ素子であるスイッチ素子Q
5、スイッチ素子Q
2に対応する補助スイッチ素子であるスイッチ素子Q
6、スイッチ素子Q
3に対応する補助スイッチ素子であるスイッチ素子Q
7、スイッチ素子Q
4に対応する補助スイッチ素子であるスイッチ素子Q
8を有する。
【0037】
また、電源装置1aは、補助インダクタLa1と、補助インダクタLa2と、を有する。補助インダクタLa1の一端は、スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2との間のノードN1に接続されている。補助インダクタLa1の他端は、スイッチ素子Q5とスイッチ素子Q6との間の第3ノードであるノードN3に接続されている。補助インダクタLa2の一端は、スイッチ素子Q3とスイッチ素子Q4との間のノードN2に接続されている。補助インダクタLa2の他端は、スイッチ素子Q7とスイッチ素子Q8との間の第4ノードであるノードN4に接続されている。
【0038】
制御部100aは、外部から入力される制御信号に従って、スイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q2と、スイッチ素子Q3と、スイッチ素子Q4と、スイッチ素子Q5と、スイッチ素子Q6と、スイッチ素子Q7、スイッチ素子Q8とのスイッチング動作を制御する。
【0039】
比較例に係る電源装置1aでは、軽負荷の場合におけるZVS動作を補助するために、補助スイッチ素子であるスイッチ素子Q5のゲート電圧の位相をスイッチ素子Q1のゲート電圧の位相からずらす。同様に、補助スイッチ素子であるスイッチ素子Q6のゲート電圧の位相をスイッチ素子Q2のゲート電圧の位相からずらす。これにより、ノードN1と、ノードN2とに電位差が生じる。そのため、補助インダクタLa1のエネルギーをトランスTR1に伝えることができるので、軽負荷の場合におけるZVS動作を補助することができる。
【0040】
上述したように位相をずらす場合、電源装置1aが高負荷で動作している状態でも、スイッチ素子Q5およびスイッチ素子Q6のゲート電圧の位相は、それぞれ、スイッチ素子Q1およびスイッチ素子Q2のゲート電圧の位相とずれたままになる。このように電源装置1が高負荷で動作している場合には、補助インダクタLa1の電流をトランスTR1に供給する必要はないが、補助インダクタLa1には電流が流れ続けてしまう。
【0041】
同様に、比較例に係る電源装置1aでは、軽負荷の場合におけるZVS動作を補助するために、補助スイッチ素子であるスイッチ素子Q7のゲート電圧の位相をスイッチ素子Q3のゲート電圧の位相からずらす。同様に、補助スイッチ素子であるスイッチ素子Q8のゲート電圧の位相をスイッチ素子Q4のゲート電圧の位相からずらす。これにより、ノードN1と、ノードN2とに電位差が生じる。そのため、補助インダクタLa2のエネルギーをトランスTR2に伝えることができるので、軽負荷の場合におけるZVS動作を補助することができる。
【0042】
上述したように位相をずらす場合、電源装置1aが高負荷で動作している状態でも、スイッチ素子Q7およびスイッチ素子Q8のゲート電圧の位相は、それぞれ、スイッチ素子Q3およびスイッチ素子Q4のゲート電圧の位相とずれたままになる。このように電源装置1が高負荷で動作している場合には、補助インダクタLa2の電流をトランスTR2に供給する必要はないが、補助インダクタLa2には電流が流れ続けてしまう。
【0043】
図3は、比較例に係る電源装置1aが定格負荷で動作している際の補助インダクタLa1に流れる電流の波形を示す図である。
図3に示すように、例えば-0.4[A]程度から0.4[A]程度までの電流が補助インダクタLaに流れてしまい、不要な電力損失が発生してしまう。軽負荷の場合におけるZVS動作を補助するとともに、定格負荷の場合における電力損失を低減するためには、例えば、以下のように制御する。
【0044】
すなわち、制御部100aは、電流検出部110の検出結果に基づいて、1次巻線21または2次巻線22に流れる電流の値が閾値電流の値を下回っている場合には、スイッチ素子Q5およびスイッチ素子Q6のゲート電圧の位相を制御する。具体的には、制御部100aは、スイッチ素子Q5のゲート電圧の位相をスイッチ素子Q1のゲート電圧の位相からずらすように制御する。制御部100aは、スイッチ素子Q5のゲート電圧の位相をスイッチ素子Q1のゲート電圧の位相から進めてもよいし、遅らせてもよい。同様に、制御部100aは、スイッチ素子Q6のゲート電圧の位相をスイッチ素子Q2のゲート電圧の位相からずらすように制御する。
【0045】
スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q5とのゲート電圧の位相をずらし、スイッチ素子Q2とスイッチ素子Q6とのゲート電圧の位相をずらすことで、ノードN1と、ノードN2とに電位差が生じる。これにより、補助インダクタLa1のエネルギーをトランスTRに伝えることができるので、軽負荷の場合におけるZVS動作を補助することができる。
【0046】
ここで、
図4および
図5を用いて、比較例の電源装置1aが定格負荷で動作している際の、制御部100aの処理について説明する。
図4および
図5は、比較例の電源装置1aに係る電力損失を低減する方法を説明するための図である。
【0047】
図4は、
図2中のスイッチ素子Q
2のゲート電圧の電圧波形V
G2と、スイッチ素子Q
6のゲート電圧の電圧波形V
G6とを示している。
図4では、電圧波形V
G2を実線で示し、電圧波形V
G6を破線で示している。
図4に示すように、制御部100は、1次巻線21または2次巻線22に流れる電流の値が閾値電流の値を超えている場合には、スイッチ素子Q
6のゲート電圧の位相をスイッチ素子Q
2のゲート電圧の位相と同期させるように制御する。同様に、制御部100は、1次巻線21または2次巻線22に流れる電流の値が閾値電流の値を超えている場合には、スイッチ素子Q
5のゲート電圧の位相と、スイッチ素子Q
1のゲート電圧の位相とが同期するように制御する。
【0048】
図5は、
図2中のスイッチ素子Q
2のドレイン・ソース間電圧の電圧波形V
DS2と、スイッチ素子Q
6のドレイン・ソース間電圧の電圧波形V
DS6とを示している。
【0049】
理想的には、スイッチ素子Q2のゲート電圧の位相と、スイッチ素子Q6のゲート電圧の位相とを一致させることで、スイッチ素子Q2のドレイン・ソース間電圧の位相と、スイッチ素子Q6のドレイン・ソース間電圧の位相とは一致する。同様に、スイッチ素子Q1のゲート電圧の位相と、スイッチ素子Q5のゲート電圧の位相とを一致させることで、スイッチ素子Q1のドレイン・ソース間電圧の位相と、スイッチ素子Q5のドレイン・ソース間の電圧の位相とは一致する。各スイッチ素子のドレイン・ソース間電圧の位相と、対応する各スイッチ素子のドレイン・ソース間電圧の位相とを一致させることで、補助インダクタLa1の両端のノードN1と、ノードN2との電位差は0になる。そのため、補助インダクタLa1には電流が流れなくなる。
【0050】
以上は、スイッチ素子Q
1、Q
2、Q
5およびQ
6について
図4および
図5を参照して説明したが、スイッチ素子Q
3、Q
4、Q
7およびQ
8についても同様である。
【0051】
図2に示す比較例の電源装置1aにおいて、トランスTR1の1次巻線21および2次巻線22のいずれか一方に流れる電流の値が所定の閾値を超えた場合に、スイッチ素子Q
1のゲート電圧の位相およびスイッチ素子Q
2のゲート電圧の位相が、補助スイッチ素子であるスイッチ素子Q
5のゲート電圧の位相および補助スイッチ素子であるスイッチ素子Q
6のゲート電圧の位相と同期するように制御する。こうすることにより、補助インダクタLa1に流れる電流をゼロにすることができる。
【0052】
同様に、電源装置1aにおいて、トランスTR2の1次巻線24および2次巻線25のいずれか一方に流れる電流の値が所定の閾値を超えた場合に、スイッチ素子Q3のゲート電圧の位相およびスイッチ素子Q4のゲート電圧の位相が、スイッチ素子Q7のゲート電圧の位相およびスイッチ素子Q8のゲート電圧の位相と同期するように制御する。こうすることにより、補助インダクタLa2に流れる電流をゼロにすることができる。
【0053】
比較例の電源装置1aにおいては、4個の補助スイッチ素子、すなわちスイッチ素子Q5、スイッチ素子Q6、スイッチ素子Q7およびスイッチ素子Q8が必要になる。また、2つの補助インダクタLa1およびLa2が必要になる。このため、比較例の電源装置1aにおいては、部品点数が増加するため、コストが上昇し、かつ、実装面積が増加する。
【0054】
[実施形態の電源装置]
図1に戻り、本実施形態に係る電源装置1は、ノードN1とノードN2との間に、補助インダクタLaとキャパシタCaとの直列回路が接続されている。すなわち、スイッチ素子Q
1とスイッチ素子Q
2とを含む第1アーム30
1の中点(ノードN1)と、スイッチ素子Q
3とスイッチ素子Q
4とを含む第2アーム30
2の中点(ノードN2)との間に、ZVS補助用インダクタである補助インダクタLaとキャパシタCaとの直列回路が接続されている。このため、スイッチ素子Q
1とスイッチ素子Q
2とを含む第1アーム30
1の動作と、スイッチ素子Q
3とスイッチ素子Q
4とを含む第2アーム30
2の動作との位相差に基づいて、補助インダクタLaが励磁される。
【0055】
図6および
図7は、
図1に示す電源装置1の動作を説明する図である。
図6は、
図1の電源装置1の無負荷の場合の動作を説明する図である。
図6において、電圧波形V
G2と電圧波形V
G4との位相差は180°であり、電圧波形V
DS2と電圧波形V
DS4との位相差は180°である。無負荷の場合には、第1アーム30
1の動作と第2アーム30
2の動作とに位相差が生じて補助インダクタLaが励磁され、補助インダクタLaに電流I
Laが流れる。補助インダクタLaに流れる電流I
Laにより、各スイッチ素子すなわちスイッチ素子Q
1、スイッチ素子Q
2、スイッチ素子Q
3、スイッチ素子Q
4はZVS動作を行うことができる。
【0056】
図7は、
図1の電源装置1の定格負荷の場合の動作を説明する図である。
図7において、電圧波形V
G2と電圧波形V
G4との位相差は0°であり、電圧波形V
DS2と電圧波形V
DS4との位相差は0°である。定格負荷の場合、第1アーム30
1の動作と第2アーム30
2の動作とに位相差が無いため、補助インダクタLaに電流が流れない。すなわち、
図7に示すように、補助インダクタLaに流れる電流I
Laは、0[A]である。
【0057】
図2に示す比較例の電源装置1aにおいては、4個の補助スイッチ素子、すなわちスイッチ素子Q
5、スイッチ素子Q
6、スイッチ素子Q
7およびスイッチ素子Q
8を設ける必要がある。これに対し、
図1に示す電源装置1によれば、それらの補助スイッチ素子を設ける必要がない。このため、スイッチ素子の数が増加することはなく、コストの上昇を抑え、かつ、実装面積の増加を抑えることができる。
【0058】
図2に示す比較例の電源装置1aにおいては、2つの補助インダクタLa1およびLa2を設けている。これに対し、
図1に示す電源装置1によれば、1つの補助インダクタLaで足りる。このため、コストの上昇を抑え、かつ、実装面積の増加を抑えることができる。
【0059】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1、1a 電源装置
11 第1入力端子
12 第2入力端子
13 平滑化コンデンサ
20 絶縁型共振コンバータ
21、24 1次巻線
22、25 2次巻線
23、26 コア
31 第1出力端子
32 第2出力端子
33 平滑化コンデンサ
100、100a 制御部
110 電流検出部
120 記憶部
301 第1アーム
302 第2アーム
Ca、Cr1、Cr2 キャパシタ
D11 第1ダイオード
D12 第2ダイオード
D13 第3ダイオード
D14 第4ダイオード
DB ダイオードブリッジ
La、La1、La2 補助インダクタ
Lm1、Lm2 励磁インダクタンス
Lr1、Lr2 漏れインダクタンス
N1、N2、N3、N4 ノード
Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6、Q7、Q8 スイッチ素子
TR1、TR2 トランス