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特許7372179回転翼航空機における広帯域アンテナシステムのコンポーネント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】回転翼航空機における広帯域アンテナシステムのコンポーネント
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/28 20060101AFI20231024BHJP
   H01Q 13/10 20060101ALI20231024BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20231024BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20231024BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20231024BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20231024BHJP
   H01Q 21/29 20060101ALI20231024BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20231024BHJP
   B64C 27/473 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01Q1/28
H01Q13/10
H01Q13/08
H01Q21/24
H01Q23/00
H01Q21/06
H01Q21/29
H01Q1/40
B64C27/473
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020041631
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2020150543
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】16/353,460
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594071675
【氏名又は名称】エルスリーハリス テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】L3Harris Technologies,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・シー・グリーンウッド
(72)【発明者】
【氏名】ランドール・トレント
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-209206(JP,A)
【文献】米国特許第6278409(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/28
H01Q 13/10
H01Q 13/08
H01Q 21/24
H01Q 23/00
H01Q 21/06
H01Q 21/29
H01Q 1/40
B64C 27/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼航空機の狭帯域及び広帯域の無線周波数(RF)通信を容易にするためのアンテナシステムであって、前記回転翼航空機が、第1中心回転ハブおよび該第1中心回転ハブに接続された複数のローターブレードと、第2回転ハブおよび該第2回転ハブに接続されたセカンダリの複数のローターブレードとを含み、当該アンテナシステムが、
3次元空間への電磁波としてRF通信を送信および受信するよう構成された複数のRFコンポーネントを含むRFフロントエンドであって、
前記複数のRFコンポーネントは、前記ローターブレードの内少なくとも1枚および前記セカンダリのローターブレードの内少なくとも1枚の部分を形成し、
前記少なくとも1枚のローターブレードおよび前記少なくとも1枚のセカンダリのローターブレードが複数の異なる種類のRFコンポーネントを含むように、前記複数のRFコンポーネントの内少なくとも幾らかは異なる種類を有する、RFフロントエンドと、
前記中心回転ハブを介して前記RFフロントエンドに接続されたRFバックエンドと、
を備え
前記異なる種類のRFコンポーネントが、前記少なくとも1枚のローターブレードおよび前記少なくとも1枚のセカンダリのローターブレードの内側部分に埋め込まれ、
前記少なくとも1枚のローターブレードおよび前記少なくとも1枚のセカンダリのローターブレードが、少なくとも1つのアンテナアレイと少なくとも1つのRF増幅器とを含み、
前記RFフロントエンドがRF通信リンクのダイバーシティを提供するように構成されており、前記RF通信リンクが、前記少なくとも1枚のローターブレードの前記RFコンポーネントを用いた第1通信リンクと、前記少なくとも1枚のセカンダリのローターブレードの前記RFコンポーネントを用いた第2通信リンクとを含む、アンテナシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナシステムであって、前記複数のRFコンポーネントが外部環境に露出しないように、前記複数のRFコンポーネントが前記少なくとも1枚のローターブレードの内側部分に埋め込まれる、アンテナシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナシステムであって、前記複数のRFコンポーネントが、複数の通信リンクを同時に確立するよう構成される、アンテナシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のアンテナシステムであって、
前記複数のRFコンポーネントの内第1組のRFコンポーネントが、前記少なくとも1枚のローターブレードの背面の近傍に物理的に配置されており、
前記複数のRFコンポーネントの内第2組のRFコンポーネントが、前記少なくとも1枚のローターブレードの腹面の近傍に物理的に配置されており、
前記腹面は前記背面に関する反対面である、
アンテナシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のアンテナシステムであって、
前記背面の近傍に配置された前記第1組RFコンポーネントが、前記腹面の近傍に配置された前記第2組のRFコンポーネントと同時かつ独立して制御され、
前記第1組のRFコンポーネントが、前記回転翼航空機に関して上方向に第1電磁波を送信または受信すると共に、同時に、前記第2組のRFコンポーネントが、前記回転翼航空機に対して下方向に第2電磁波を送信または受信する、
アンテナシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のアンテナシステムであって
前記アンテナアレイ、それぞれが、対応する1つまたは複数のアンテナ素子を備えているアンテナシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のアンテナシステムであって、
前記少なくとも1枚のローターブレードに埋め込まれた前記異なる種類のRFコンポーネントが、RF信号を中間周波数(IF)信号へ、あるいはIF信号をRF信号へと変換するよう構成された1つまたは複数のミキサをさらに含み、
前記少なくとも1枚のローターブレードの前記内側部分に埋め込まれた、前記1つまたは複数のアンテナアレイが、
テーパヴィヴァルディアンテナアレイ、
スタガードパッチアンテナアレイ、または
直線円偏波アンテナアレイ
の内1つまたは複数を備えている、
アンテナシステム。
【請求項8】
請求項6に記載のアンテナシステムであって、前記少なくとも1枚のローターブレードの前記内側部分に埋め込まれた、前記1つまたは複数のアンテナ素子のそれぞれが独立したアンテナユニットとして独立して動作可能になるように、前記1つまたは複数のアンテナ素子のそれぞれが独立して信号供給される、アンテナシステム。
【請求項9】
請求項6に記載のアンテナシステムであって、
前記少なくとも1枚のローターブレードの前記内側部分に埋め込まれた、前記1つまたは複数のアンテナ素子が複数のアンテナ素子を含み、
前記複数のアンテナ素子が1つのアンテナユニットとして集団で動作可能になるように、前記複数のアンテナ素子が電子アンテナ操縦を介して集団として制御可能である、
アンテナシステム。
【請求項10】
回転翼航空機の無線周波数(RF)通信を容易にするための通信システムであって、前記RF通信が狭帯域および/または広帯域の信号を含み、前記回転翼航空機が中心回転ハブと前記中心回転ハブに接続された複数のローターブレードとを含み、当該通信システムが、
複数のアンテナアレイと複数の増幅器とを含むRFフロントエンドであって、
前記複数のアンテナアレイの各アンテナアレイは、複数のアンテナ素子を含み、
アンテナ素子と増幅器との第1組が、前記複数のローターブレードに含まれる第1ローターブレードの内側部分に埋め込まれ、
アンテナ素子と増幅器との第2組が、前記複数のローターブレードに含まれる第2ローターブレードの内側部分に埋め込まれる、
RFフロントエンドと、
前記中心回転ハブを介して前記RFフロントエンドに接続されたRFバックエンドであって、デジタル信号からアナログ信号へ、あるいは、アナログ信号からデジタル信号への変換を少なくとも行うと共にRF通信リンクのダイバーシティを提供するように構成され、前記RF通信リンクが、前記第1ローターブレードを用いた第1通信リンクと、前記第2ローターブレードを用いた第2通信リンクとを含む、
RFバックエンドと、
を備えた通信システム。
【請求項11】
請求項10に記載の通信システムであって、前記アンテナ素子と増幅器との第1組に含まれる少なくともいくつかのアンテナ素子が、少なくとも部分的に前記第1ローターブレードの形状と一致するよう成形されている、通信システム。
【請求項12】
請求項10に記載の通信システムであって、
前記第1ローターブレードに埋め込まれた前記アンテナ素子と増幅器との第1組と、前記第2ローターブレードに埋め込まれた前記アンテナ素子と増幅器との第2組とを含む前記RFフロントエンドと、前記RFバックエンドとが、
前記RF通信の低探知可能性(LPD)、
前記RF通信の低傍受可能性(LPI)、
前記RF通信のアンチジャミング、または
前記RF通信のジオロケーション
の内1つまたは複数を行うように共に構成される、
通信システム。
【請求項13】
請求項10に記載の通信システムであって、
前記第1ローターブレードに埋め込まれた前記アンテナ素子と増幅器との第1組と、前記第2ローターブレードに埋め込まれた前記アンテナ素子と増幅器との第2組とを含む前記RFフロントエンドと、前記RFバックエンドとが、前記RF通信を送信または受信するように共に構成され、
前記RF通信が、L帯、S帯、C帯、Ku帯、Ka帯、または40GHzより高く90GHzまでの帯域の内1つまたは複数の帯域におよぶ、
通信システム。
【請求項14】
請求項10に記載の通信システムであって、
前記複数のアンテナアレイが広帯域アンテナアレイを含み、
前記広帯域アンテナアレイが、前記広帯域アンテナアレイのアンテナパターンの1つまたは複数のサイドローブで衛星干渉の軽減を行うよう構成されている、
通信システム。
【請求項15】
複数の異なる無線周波数(RF)信号を複数の異なるターゲットエンドポイントへ同時に伝搬するための方法であって、前記複数の異なるRF信号が、アンテナシステムのRFフロントエンドに含まれる複数の異なるアンテナアレイによって伝搬され、該アンテナシステムがRFバックエンドも含み、該アンテナシステムが回転翼航空機の一部として含まれ、該回転翼航空機は、中心回転ハブと該中心回転ハブに接続された複数のローターブレードとを含み、前記複数のローターブレードが異なる種類の複数のRFコンポーネントを含み、当該方法が、
前記RFバックエンドに、それぞれが前記回転翼航空機のローターブレードのうち異なるローターブレードに埋め込まれている異なるアンテナアレイに対して、複数の異なる信号を同時に供給させるステップであって、前記異なるアンテナアレイのそれぞれが、対応する異なるターゲットエンドポイントに照準されることにより前記異なるアンテナアレイの前記異なるターゲットエンドポイントによってRF通信リンクのダイバーシティを提供し、前記RF通信リンクが、少なくとも1枚の前記ローターブレードのRFコンポーネントを用いた第1通信リンクと、少なくとも1枚のセカンダリのローターブレードのRFコンポーネントを用いた第1通信リンクとを含む、
ステップと、
前記複数の異なる信号を、前記RFバックエンドまたは前記RFフロントエンドの何れかにおいて、1つまたは複数の中間周波数から1つまたは複数の無線周波数へ変換するステップと、
前記異なるアンテナアレイのそれぞれに、対応する変換されたRF信号を、対応するターゲットエンドポイントへ指向させるステップであって、複数の異なるRF信号が複数の異なるターゲットエンドポイントに同時に伝搬するようにすると共に、前記複数のRF信号が、前記回転翼航空機の前記ローターブレードから前記複数の異なるターゲットエンドポイントに最初に伝搬されるようにする、ステップと
を含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記異なるアンテナアレイのそれぞれを、互いに独立して電子的に操縦するステップをさらに含む、方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、前記複数の異なるRF信号が、音声信号および映像信号の両方を含む、方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、前記回転翼航空機が、ヘリコプター、ドローン、またはティルトローター航空機である、方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法であって、
前記複数の異なる信号で補償を行うステップであって、前記補償は、前記異なるアンテナアレイの回転速度に基づく、ステップと、
前記ローターブレードの複数の全回転位相を通じて、前記異なるアンテナアレイを電子的に操縦するステップと、
をさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001] 回転翼航空機、回転翼機、または回転翼式航空機は、ローターブレードが生み出す揚力を用いて空中を飛ぶ機械の一種である。回転翼航空機の例には、ヘリコプター、無人航空機(UAV)、小型UAV(sUAV)、無人航空機システム(UASやsUAS)、ティルトウィング/ティルトローター航空機が含まれるが、これらに限定されるものではない。回転翼航空機は、軍事目的、商用目的、および娯楽目的で用いられる。
【0002】
[0002] 回転翼航空機は、1つまたは複数の中心ハブおよびこれらのハブから突き出ている任意の枚数のローターブレード(典型的には2~7枚)を有する。従来型の飛行機の翼と同様に、ブレードの形は、ブレードが中心ハブを中心にして充分に回転するとき揚力を与えるよう設計されている。回転翼航空機は、無線周波数(「RF」)通信を送信および/または受信するためのアンテナシステムを備えることもできる。これらのRF通信は、任意の数の異なる外部標的、エンドポイント、無線ネットワークノード、またはシステムへ送信、またはそれらから受信されうる。一例として、回転航空機のなかには、地上送信機/受信機と、他の航空機(例えば、飛行機、無人航空機(「UAV」)、他の回転翼航空機、発射された兵器、など)と、そして地球の上の軌道にある衛星とも通信できるものがある。
【0003】
[0003] 近年、RF通信は著しく進歩した。現在はかつてないほど、回転翼航空機は外部の送信機や受信機と、異なるRF通信リンクを確立(多くの場合、しかも同時に)することができる。このような進歩が、パイロット、乗務員、及び乗客、そして回転翼航空機それ自体の安全性を大幅に向上させた。RF通信により提供される利点のおかげで、ますます多くのRFコンポーネント(例えば、RFフロントエンドコンポーネントやRFバックエンドコンポーネント)が回転翼航空機に搭載されつつある。RFコンポーネントの数を増やすことにより、回転翼航空機は、非常に望まれている通信リンクをより多く確立できることになるが、サイズ、重量、および電力の増大という潜在的な犠牲が生じる。
【0004】
[0004] ここで特許請求される主題は、上述したような環境においてのみ、任意の不利益を解消するあるいは動作する実施形態に限定するものではない。この背景技術は、本明細書で述べる実施形態のいくつかが実施されうる技術分野について、一例を説明するために提供されるにすぎない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005] 開示される実施形態は、回転翼航空機による狭帯域および/または広帯域の無線周波数(RF)通信を容易にするためのアンテナシステム、通信システム、及び方法に関する。
【0006】
[0006] いくつかの実施形態において、アンテナシステムは回転翼航空機内に統合または提供されており、回転翼航空機は、少なくとも1つの中心回転ハブと、中心回転ハブに接続された複数のローターブレードとを含む。このアンテナシステムは、RFフロントエンドとRFバックエンドとを含む。RFフロントエンドは、3次元空間内を伝わる電磁波として広帯域RF通信を受信および/または送信するように構成された、複数の異なるRFコンポーネント(例えば、アンテナ、増幅器、ミキサ、チューナ、導波管、ワイヤ等)を含む。RFコンポーネントは、回転翼航空機のローターブレードの少なくとも1枚のうちの部分を形成(例えば、ローターブレードに埋め込まれることにより)する。加えて、これらRFコンポーネントの少なくともいくつかは、種類が異なっている(例えば、アンテナは、増幅器とは異なり、増幅器はミキサとは異なる、等)。したがって、ブレードが複数の異なる種類のRFコンポーネントを含むため、ブレードは向上する。一方、RFバックエンドは別の場所に配置され、中心回転ハブを介してRFフロントエンドへ接続される。
【0007】
[0007] いくつかの実施形態では、回転翼航空機の通信システムが、RFフロントエンドとRFバックエンドとを含む。RFフロントエンドは、複数のアンテナアレイと、複数の増幅器とを含む。各アンテナアレイは、性能を最適化するために、同じ構成か、あるいは多様な構成の複数のアンテナ素子を含む。アンテナ素子と増幅器との第1組は、回転翼航空機の第1ローターブレードの内側部分に埋め込まれる。同様に、アンテナ素子と増幅器との第2組は、第2ローターブレードの内側部分に埋め込まれる。(例えば、ブレード内に埋め込まれるRFコンポーネントもあれば、アンテナ素子のようにブレードの外側部分と共形に埋め込まれるコンポーネントもある)。RFバックエンドは、中心回転ハブを介してRFフロントエンドへ接続される。加えて、RFバックエンドは、デジタル信号からアナログ信号へ、またはその逆への変換を少なくとも行うように構成される。
【0008】
[0008] いくつかの実施形態は、複数の異なるRF信号を複数の異なるターゲットエンドポイントへ同時に伝搬するための方法に関する。はじめにRFバックエンドが、回転翼航空機のローターブレードに埋め込まれた全てのまたは異なるアンテナアレイへ、複数の異なる信号を同時に供給する。アンテナアレイは、アンテナアレイから放出したビームを対応する異なるターゲットエンドポイントへ操縦するように構成されている。複数の異なる信号は、RFバックエンドまたはRFフロントエンドで、1つまたは複数の中間周波数(「IF」)から1つまたは複数の無線周波数へ変換される。次に、変換されたRF信号のそれぞれが、それに対応するターゲットエンドポイントへ操縦または指向される。そうすることで、複数の異なるRF信号が複数の異なるエンドポイントへ同時に伝搬される。さらに、これらのRF信号は、はじめに、回転翼航空機のローターブレードから三次元空間へ複数の異なる目標へ向けて伝搬される。これらの動作には、FAAの要求を満たす必要性が考慮されている。
【0009】
[0009] この概要は、以下の発明を実施するための形態においてさらに述べる数々の概念を、簡潔に紹介するために提供される。この概要は、特許請求される主題の重要な特徴または必須の特徴を特定するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定する際に補助として用いることを意図したものでもない。
【0010】
[0010] 追加的な特徴や利点は以下の記載に述べられており、その一部は記載から自明であるか、または、ここに記載された教示を実施することで分かる場合もある。本発明の特徴や利点は、添付の請求項において特に指摘された機器や組み合わせによって、実現され獲得されうる。本発明の特徴は、以下の記載および添付した請求項でより完全に明らかにされるが、以下に述べる発明を実施することで分かる場合もある。
【0011】
[0011] 上述した利点や特徴及びその他の利点や特徴を獲得する方法を説明するために、添付の図面に示した特定の実施形態を参照し、上記で簡単に述べた主題をより詳細に説明する。これらの図面は典型的な実施形態を示すにすぎず、それゆえ範囲を限定するものではないという理解のもと、添付した図面を用いて実施形態をさらに具体的かつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】回転翼航空機が地上の受信機または送信機とRF通信リンクを確立したシナリオ例を示す図である。
図2】電磁波がどのように電場と磁場の両方を含むかを示す図である。
図3】回転翼航空機が、地上パラボラアンテナ、移動中の部隊、飛行中の飛行機、および宇宙の衛星といった複数の異なる受信機/送信機と、複数の異なるRF通信リンクを確立したシナリオ例を示す図である。
図4】回転翼航空機の飛行を可能にする、中心回転ハブとローターブレードとの組み合わせを示す図である。
図5】異なる種類のRFコンポーネント(例えば、アンテナ、増幅器、ミキサ、チューニングシステム、ワイヤ、導波管など)が、どのようにローターブレードの一部として含まれうるか、またはローターブレードの内部に埋め込まれうるかを示す図である。
図6】ローターブレード例の側面プロファイル図であり、異なる種類のRFコンポーネントがローターブレードにどのように埋め込まれうるかを示す図である。また、RFコンポーネントの少なくともいくつかが、どのようにローターブレードの形と一致するように成形されうるかを示す図である。
図7A】水平アンテナパターンの非限定例を示す図である。
図7B】垂直、すなわち立面の、アンテナパターンの非限定例を示す図である。
図8A】アンテナシステムのRFフロントエンドおよびRFバックエンドをどのように用いて任意数の広帯域RF通信リンクが確立できるか、の一例を示す図である。
図8B】アンテナシステムのRFフロントエンドおよびRFバックエンドをどのように用いて任意数の広帯域RF通信リンクが確立できるか、の一例を示す図である。
図9】回転翼航空機の任意のローターブレードに、それが(例えば、ヘリコプターの)テールローターであっても、どのようにRFコンポーネントを埋め込みうるかを示す図である。
図10】回転翼航空機がその異なるハブやローターをどのように使って、任意数の異なる外部受信機または送信機と同時広帯域RF通信リンクを確立することができるか、を示す図である。
図11A】複数の異なるRF信号を複数の異なるターゲットエンドポイントへ同時に伝搬するための方法例のフロー図であり、ここで信号は、はじめに回転翼航空機のローターブレードから三次元空間に伝搬される。
図11B】複数の異なるRF信号を複数の異なるターゲットエンドポイントへ同時に伝搬するための方法例のフロー図であり、ここで信号は、はじめに回転翼航空機のローターブレードから三次元空間に伝搬される。
図12】開示される動作の任意のものを実行するために使用が可能であり、かつ開示されるアンテナ/通信システムを制御するために使用が可能な、コンピュータシステム例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0024] 開示される実施形態は、回転翼航空機における狭帯域および/または広帯域の無線周波数(RF)通信を容易にするためのアンテナシステム、通信システム、および方法に関する。開示される実施形態は、DoDやFAAの要件を含む任意の米政府規格、任意の商業使用、および/または他のあらゆる公的使用に従って動作可能である。
【0014】
[0025] いくつかの実施形態では、アンテナシステムのRFフロントエンドは、回転翼航空機のローターブレードの少なくとも1枚の一部として含まれる。フロントエンドが、異なる種類のRFコンポーネントを含むので、ローターブレードも異なる種類のRFコンポーネントを含む。一方、RFバックエンドは別の場所に配置され、回転翼航空機の中心回転ハブを介してRFフロントエンドへ接続される。
【0015】
[0026] いくつかの実施形態では、通信システムのRFフロントエンドは、複数のアンテナアレイ(それぞれのアレイが1つまたは複数のアンテナ素子を含む)と複数の増幅器とを含む。アンテナ素子と増幅器との第1組は、回転翼航空機の第1ローターブレードの内側に埋め込まれ、アンテナ素子と増幅器との第2組は、回転翼航空機の第2ローターブレードの内側に埋め込まれる。通信システムのRFバックエンドは、回転翼航空機の中心回転ハブを介してRFフロントエンドへ接続される。このRFバックエンドは、デジタル信号からアナログ信号へ、またはその逆への変換を少なくとも行うよう構成される。
【0016】
[0027] いくつかの実施形態では、複数の異なるRF信号を複数の異なるターゲットエンドポイントへ同時に伝搬するための方法が提供される。その際に、RFバックエンドは、異なるローターブレードに埋め込まれてRFフロントエンドの一部を成す、異なる(または全ての)アンテナアレイに対して複数の異なる信号を同時に供給する。また、これら異なる信号は、RFバックエンドまたはRFフロントエンドで、中間周波数から無線周波数へ変換される。次に、異なるアンテナアレイのそれぞれ(または全て)が、その対応する変換されたRF信号を、対応するターゲットエンドポイントへ指向し、それにより複数の異なるRF信号が複数の異なるターゲットエンドポイントへ同時に伝搬することになる。
【0017】
技術的効果
[0028] 航空機やRFシステムの設計者が直面している問題の1つは、航空機の不動産(すなわち、アンテナ開口のための適切な表面積および局所的干渉を低減または除去する適正な開口の分離)が限定されていることである。実際のところ、いまや回転翼航空機にはさまざまな種類のハードウェア(RF通信システムを含む)が詰め込まれているため、追加のハードウェアのための場所は尽きつつある。こういった不足にもかかわらず、そして面積やハードウェアのための場所に限りがあることに相反し、可能な限り多くのRF通信リンクを提供することの重要性が増している。したがって、より多くのRF通信リンクを回転翼航空機に提供するという高まり続ける要求を支援するために、RF通信システムの設計方法を改善する必要が大いにある。
【0018】
[0029] 設計者が直面しているまた別の問題は、回転翼航空機でRF通信が行われる場合に生じるRF通信の遮断を、どのようにして除去または低減するかである。具体的には、回転翼航空機の従来のRFシステムは、ローターブレードが頭上で回転している結果として生じる主要な信号干渉や、航空機胴体の他の部分からの干渉に対峙してきた。これらの干渉に(例えば、ブレードがRFアンテナの直上にないときにRF信号をパルス送信/バーストすることにより)対処するために、いくつかの技術が開発されたが、こういった技術では処理の増加や次善の結果が生じてしまう(例えば、信号をバーストすることにより、データの抜けや効率のさらなる低下が起こりうる)。したがって、特に回転翼航空機においては、どのようにRF通信を送信および受信するかを改善する必要も大いにある。
【0019】
[0030] 開示される実施形態の使用により、これらの問題の解決策が提供できる。例えば、異なる種類のRFコンポーネントを回転翼航空機のローターブレードに埋め込むことにより、いままで請求も開拓もされなかった不動産を、開示される実施形態では利用する。これにより、大幅な改善が提供される。そうすることで、開示される実施形態は、航空機が確立しうるRF通信リンクの数を大幅に増加できる。
【0020】
[0031] 前述したように、回転翼航空機における不動産の量はかなり限られている。しかも、通信リンク数を増加させることが非常に望まれている。不動産が制限されていることを受けて、開示される実施形態は、利用可能な不動産すなわち航空機のローターブレードを活用する。今までローターブレードは広帯域RF通信に関しては未開拓の資源であったが、開示される実施形態では、ユニークかつ非常に有利な方法でローターブレードを利用することにより、切望されている技術的改良を提供する。
【0021】
[0032] RFコンポーネントを、胴体の上空(例えば、ローターブレードの中)に配置することで、開示される実施形態は、今まで上方向へのRF通信を妨げていた頭上の干渉を大幅に(または完全に)排除する。これに関連して、頭上のRF通信が改善されうる。さらに、開示される実施形態は、伝送を周期的ではなく継続的に行うことができる。
【0022】
[0033] 開示される実施形態は、回転翼航空機の重量増加を実質的に正味ゼロにすると同時に、RFコンポーネント数(したがってリンク数も)を大幅に増加することでも、技術を改良する。つまり、開示される技術に従ってローターブレードを製造すること(例えば、RFコンポーネントをローターブレードの内部へ埋め込むこと)により、本実施形態は、航空機のRFコンポーネント数を大幅に増加しつつ、重量増加を実質的にゼロにする。言い換えれば、新たなRFコンポーネントによって追加された重量は、ローターブレードから材料を(例えば、RFコンポーネントのための場所を作るために)除去することで軽減される。よって、開示される実施形態は、1つのプラットフォームからの追加リンク数を増大させることにより、回転翼航空機のアンテナシステムに対して重要かつ大幅な改善を提供するものである。
【0023】
RF通信リンク
[0034] ここで図1を見ると、これは環境例100を示す図であり、回転翼航空機105と地上送信機/受信機110とが、互いにRF通信リンク115を確立している。このRF通信リンク115によって、回転翼航空機105と地上送信機/受信機110とは、情報(例えば、データパケット120A、データパケット120B、及びデータパケット120C)を互いにやりとりして交換(例えば、送信および受信)できる。
【0024】
[0035] 開示される実施形態によれば、回転翼航空機105は任意の種類のデータパケットを送信および受信できる。例えば、いくつかの状況では、データパケット120A~Cは、低い帯域の音声データ、高い帯域のビデオデータ、その他あらゆる種類の広帯域データすなわち信号を含む。したがって、回転翼航空機105は、任意の種類の広帯域RF通信を送信および/または受信できる。
【0025】
[0036] RF通信リンク115を確立するために、回転翼航空機105は、地上送信機/受信機110へ電磁波を送信または電磁波を受信する。図2は、電磁波の例200を示す図であり、狭帯域信号および広帯域信号の両方を表している。電磁波200は、電場205と磁場210とを含む。電磁波200はアンテナによって放たれてもよいし、そのアンテナによって傍受、厳密には受信、されてもよい。
【0026】
[0037] 図3は、別の環境例300を示す図であり、図1の環境100と幾分似ている。しかし環境300では、図1の回転翼航空機105を表す回転翼航空機305が、そのRFコンポーネント(例えば、アンテナ、増幅器、ミキサ、チューニング機構、導波管、ワイヤ等)を使用して、複数の異なる外部エンティティと複数のRF通信リンクを同時に確立している。
【0027】
[0038] 図示するように、回転翼航空機305は現在、RF通信リンク315を介して軌道衛星310と通信中である。回転翼航空機305は、RF通信リンク325を介して航空機320とも現在通信中である。最後に、回転翼航空機305は、RF通信リンク335を介して地上パラボラアンテナ330とも現在通信中であり、RF通信リンク345を介して(停止または移動中の)地上部隊340とも通信中である。地上部隊340は、移動または静止している部隊および/または乗物を含むよう広く解釈すべきである。回転翼航空機305は任意数のRF通信リンクを確立することができ、そのリンク数は、利用可能なRFコンポーネント数に基づいて制限されるだけである。
【0028】
回転翼航空機
[0039] 図4は、図3の回転翼航空機305を表した回転翼航空機400を示す図である。ここでは、回転翼航空機400の中心回転ハブ410と、ローターブレード415および420の拡大図405を示す。ローターブレード415および420はそれぞれ中心回転ハブ410に接続されており、中心回転ハブ410は駆動軸(図示せず)に取り付けられている。駆動軸は、トランスミッション(図示せず)に取り付けられており、トランスミッションは回転翼航空機のエンジンに取り付けられている。ローターブレード415および420の2枚しか図示されていないが、回転翼航空機400は任意数のローターブレードを含んでよく、通常は2から7枚の間である。
【0029】
[0040] 矢印425で示されるように、ローターブレード415および420は中心回転ハブ410の周りを回転/スピンする。回転速度は任意の速度にできるが、およそ200Hzが典型的な速度である。矢印430Aおよび430Bは、中心回転ハブ410がブレード415および420の傾斜角をどのように調節できるかを示している。すなわち、回転翼航空機400の飛行制御は、ローターブレード415および420を前後に傾斜させることに基づいている。
【0030】
[0041] 回転翼航空機400は、ヘリコプターの形をとっているが、開示される実施形態は、いかなる回転翼航空機(例えば、ドローン、ティルトウィング、等)で実施してもよい。ヘリコプターの多くは、胴体、テールブーム、メインローター、およびテールローターを有する。テールローターは、メインローターの回転から生じる回転トルクを相殺するために備えられている。上記で概説したように、ヘリコプターの胴体とテールブームは、多くの場合はローターブレードの影の下に位置している。
【0031】
[0042] 従来のヘリコプターでは、アンテナシステムが胴体またはテールブームの上や下に配置されることが多く、アンテナシステムはRFフロントエンドおよびRFバックエンドの両方を含んでいる。ブレードの数やサイズにもよるが、所与の点で、頭上で回転するブレードがこれらのアンテナシステムを遮断あるいは別の方法で妨げることになる。つまり、このような構成は、ローターブレードがアンテナの上を通過するたびにRFリンクの中断を引き起こすことが多い。したがって、従来のヘリコプターアンテナシステムは、ローターブレードの影を通してRF信号を送らなければならず、それによって上述した問題が生じる場合が多かった。
【0032】
埋め込まれるRFコンポーネント
[0043] 従来技術の問題のいくつかを解決するために、開示される実施形態では、アンテナシステムの少なくともいくつかを、ローターブレード自体に配置する。そうすることで、ローターブレードの影を補償する問題は、(上方向のRF通信に関しては)完全に除去できる。さらに、今まで未開拓だった不動産を使うことになるので、不動産が限られているという問題も軽減される。
【0033】
[0044] したがって、図5はローターブレード例500を示しており、これは図4のローターブレード415および420を表している。図によっては1枚のローターブレードしか示していないが、開示される原理は1枚、数枚、あるいは全てのローターブレードに当てはまる。
【0034】
[0045] 開示される実施形態によれば、ローターブレード500はここでアンテナシステムの一部として使用されており、このアンテナシステムが回転翼航空機の広帯域無線周波数(RF)通信を容易にする。ここでアンテナシステムは、RFコンポーネント510、RFコンポーネント515、RFコンポーネント520、およびRFコンポーネント525など、任意数のRFコンポーネントを含むRFフロントエンド505を備えている。符号のついたRFコンポーネントは4個のみであり、図5に示されているRFコンポーネントは18個しかないが、任意数のRFコンポーネントをRFフロントエンド505の一部として含むことが可能であり、ただし、ローターブレード500のサイズすなわち寸法および利用可能なローターブレードの数だけには制限がある。さらに、図面に示したRFコンポーネントは必ずしも正確な縮尺ではない。コンポーネントは、図示されたものよりも大きくても小さくてもよく、違う相対寸法および/または違う形状であってもよく、配置を変更してもよい。
【0035】
[0046] これらのRFコンポーネント(例えば、RFコンポーネント510、515、520、および525)は、任意数の広帯域RF通信を三次元空間への電磁波として送信および/または受信するよう構成される(例えば、図2の広帯域電磁波200)。RFコンポーネントの例には、アンテナアレイ(例えば、各アレイは1つまたは複数のアンテナ素子を含む)、RF増幅器、ミキサ、導波管、ワイヤ、および周波数チューニング機構も含まれるが、これらに限定するものではない。図5に示すように、RFコンポーネントは、実際にローターブレード500の一部を形成している。つまり、RFコンポーネントは、外部環境に露出しないようにローターブレード500の内側部分に実際に埋め込まれている。ローターブレード500の内部にどのように埋め込まれているかを象徴的に表現するために、RFコンポーネントは点線で示している。ローターブレード500の内部にRFコンポーネントを埋め込む方法についての技術例は後述する。いくつかの実施形態では、少なくともいくつかのRFコンポーネント(例えば、アンテナ素子)はローターブレード500の外側部分と共形に(すなわち同一平面に)配置される。より正確に述べると、RFコンポーネントの一部分はローターブレード500の内部に埋め込まれ、その一方でまた別の部分はローターブレード500の外面形状と同一面内に配置される。一例として、アンテナ素子(例えば、レードーム)について考察する。信号を放つには、アンテナ素子の伝搬経路には障害がないとよい。したがって、アンテナ素子の信号を放つ部分を、ローターブレード500の外面形状と水平すなわち同一平面に配置してもよい。このようにすれば、ローターブレード500が信号の邪魔をしなくなる。このアンテナ素子の残りの部分(もしあれば)は、ローターブレード500に埋め込まれてもよい。したがって、ローターブレード500の中に全体が埋め込まれるRFコンポーネントもあれば、一方で、部分的に埋め込まれるだけでローターブレード500の外面形状と共形に成形された部分もあるRFコンポーネントがあってもよい。このような場合、共形に成形された部分の上にRF透過塗料または材料(例えば、ある種の低損失被膜)を配置して、外部環境からその部分を保護するようにしてもよい。
【0036】
[0047] ローターブレード500内部の少なくともいくつかのRFコンポーネントは、種類が異なっている。例えば、RFコンポーネント510はアンテナアレイであり、RFコンポーネント515はRF増幅器であり、RFコンポーネント520はミキサであり、RFコンポーネント525は周波数チューニング機構であってもよい。さらに、またあるいは、RFコンポーネント510、515、520、および525が一体化したアンテナRFフロントエンドであってもよい。アンテナ素子はサイズ、間隔、またはテーパリングがさまざまであってよい。その他のRFコンポーネントは、追加のアンテナアレイ、増幅器、ミキサ、チューニング機構、および/または、異なるRFコンポーネントを接続するワイヤまたは導波管であり得る。これに関連して、ローターブレード500は、それ自体の内部領域に完全に埋め込まれている膨大な供給/制御ネットワークを有している。アンテナアレイの利点のひとつは、アレイの一部がなんらかの理由で故障しても、アレイは動作して信号を放つまたは受けることができる点である。したがって、本実施形態ではアンテナアレイを有益に用いるものである。
【0037】
[0048] アンテナシステムは、図4の中心回転ハブ410を表している中心回転ハブ535を介してRFフロントエンド505に接続される、RFバックエンド530も含む。ミキサがRFフロントエンド505の一部として含まれる場合は、RFバックエンド530は、アナログ中間周波数(「IF」)信号をコンピュータシステムで利用できるデジタル信号へ変換(その逆も同様)するために備えられている。RFミキサがRFバックエンド530の一部として含まれる場合は、RFバックエンド530はRF信号をIF信号に変換してから、コンピュータシステムによる信号処理のために、アナログ信号であるIF信号をデジタル信号へ変換(その逆も同様)する。したがって、RFバックエンド530は、デジタルおよびアナログ信号を生成または処理するために、任意の数のデジタル/アナログ変換器(「DAC」)、アナログ/デジタル変換器(「ADC」)、チューニング機構、ミキサ、増幅器、およびコンピュータシステムを含むことができる。
【0038】
[0049] 開示される実施形態では、中心回転ハブ535を介してRFフロントエンド505をRFバックエンド530へ通信可能に結合している。つまり物理的な配線(および/またはスリップリング構成)が、RFバックエンド530から中心回転ハブ535の内輪へ延びている。中心回転ハブ535は、ローターブレード(例えば、ローターブレード500)へ接続される外輪も含み、外輪はブレードのRFコンポーネントと通信可能に結合されている。内輪と外輪とを互いに接続させるために中心回転ハブ535内にはブラシが備えられている。その結果、RFバックエンド530は、途切れることなくRFフロントエンド505に結合されている。
【0039】
[0050] 図6は、図5のローターブレード500を表わしているローターブレード例600の、側面プロファイル図である。ローターブレード500の構造と同じように、RFフロントエンド605がローターブレード600の内部に埋め込まれている。さらに、ローターブレード600は任意数のRFコンポーネントを含むことができ、RFコンポーネント610、615、620、625、630、635、640、645、650、655A、655B、660、665、および670等を含み得るがこれらに限定するものではない。ここでもまた、異なる種類のRFコンポーネントがローターブレード600の内側部分に埋め込まれている。RFコンポーネントは必ずしも正確な縮尺ではない。また、いくつかの実施形態では、RFコンポーネントをブレードの表面に配置してから、ブレードを共形にコーティングしてRFコンポーネントを封入することにより、ブレード600にRFコンポーネントを埋め込んでもよい。異なる種類には、(1)1つまたは複数のアンテナアレイ(例えば、各アレイは、電磁信号を伝搬するよう構成された1つまたは複数の対応するアンテナ素子を含む)、(2)受けた信号を増幅するよう構成された1つまたは複数のRF増幅器、(3)RF信号を中間周波数(IF)信号へ変換し、IF信号をRF信号へ変換するよう構成された1つまたは複数のミキサ、(4)1つまたは複数の導波管、(5)1つまたは複数のワイヤ、または(6)1つまたは複数のチューナが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0040】
[0051] ローターブレード600が、1種類のアンテナアレイのみを含む実施形態もあれば、複数の異なる種類のアンテナアレイを含む実施形態もある。アレイの種類の例には、テーパヴィヴァルディアンテナアレイ(tapered Vivaldi antenna arrays)、フラクタルアンテナ、スタガードパッチアンテナアレイ(staggered patch antenna arrays)、または直線円偏波(CP)アンテナアレイ(linear circular polarization (CP) antenna arrays)が含まれるが、これらに限定するものではない。簡単に説明すると、ヴィヴァルディアンテナアレイは、同一平面上にある広帯域素子を含むテーパスロットアンテナの一種である。スタガードパッチアンテナアレイは、比較的平らな表面に取り付けることができる薄型アンテナの一種である。直線円偏波アンテナアレイは、特定の面で水平か垂直に振動しながら三次元空間を伝わる直線偏波信号を生成する。
【0041】
[0052] いくつかの実施形態では、ローターブレード600の内部に複数のRFコンポーネントが積み重ねられていてもよい。例えば、RFコンポーネント655AはRFコンポーネント655Bの上に重ねられた状態で示されている。いくつかの実施形態では、RFコンポーネントは、ローターブレード600の全体の形状と一致するよう成形されてもよい。例えば、RFコンポーネント625は、ローターブレード600の湾曲に概ね沿うように屈曲するものとして示されている。
【0042】
[0053] 図6は、第1組のRFコンポーネント(例えば、RFコンポーネント610、615、620、625、および630)が、ブレード600の上面(すなわち、背面)の近く/近傍に物理的に配置されることも示している。第2組のRFコンポーネント(例えば、RFコンポーネント635、640、645、650、655B、660、665、および670)は、ブレード600の下面(すなわち、腹面)の近く/近傍に物理的に配置され、腹面は背面の反対面である。RFコンポーネント610および615は、ローターブレード600の外側部分と同一面に(すなわち、共形に)特異的に配置される。ここで、RF透過被膜をRFコンポーネント610および615の上に配置して保護膜の働きをさせてもよい。いくつかの実施形態では、RFコンポーネント610および615はアンテナ素子であり、ローターブレード600の外面形状と一致するように位置させることで、ローターブレード600からの干渉なしに信号を放てるようにしている。いくつかの実施形態では、後で詳述するように、第1組のRFコンポーネントは、第2組のRFコンポーネントと同時に、かつ第2組のRFコンポーネントから独立して、制御される。一例を挙げれば、第1組のRFコンポーネントが、回転翼航空機に対して上方向に第1電磁波を送る一方で、それと同時に第2組のRFコンポーネントが、回転翼航空機に対して下方向に第2電磁波を送ることが可能である。図6から分かるように、アンテナシステムのフロントエンド605は、信号の送信および受信に使用される任意の種類の能動回路および/または受動回路やその他のハードウェアを含み得る。いくつかの実施形態では、ローターブレード600に埋め込まれるRFコンポーネントをハチの巣状に位置させて、振動やその他の外乱からRFコンポーネントを保護するようにしてもよい。衝撃を吸収するためにローターブレード600内に衝撃吸収ゲルを含ませてもよく、ここで衝撃吸収ゲルは少なくとも部分的にRFコンポーネントをくるむ状態にする。
【0043】
[0054] RFコンポーネントをローターブレードに埋め込むことにより、1つのプラットフォームから追加のRFリンクを形成できる。しかも、RFコンポーネントをローターブレード600の内部に埋め込むことにより、RFコンポーネントがローターブレード600の空気力学的性能を妨げることがなくなる。
【0044】
[0055] RFコンポーネントをローターブレード600の内部に埋め込む技術をここで開示する。まず、現今では、ローターブレード(例えば、ローターブレード600)は、複合材料でできているのが通常である。材料例としては、アルミニウム、炭素繊維、ケブラー、ガラス繊維、または他の任意の種類の複合材料が含まれるが、これに限定するものではない。また、ローターブレードは中心核を含む。従来のブレードは、この中心核から、ブレードが完全に形成されるまで何層も重ねて徐々に作り上げられる。
【0045】
[0056] 開示される技術によれば、この核に新たな層が追加されるときに、新たな層は、コンパートメント、チャンバー、空間、凹み領域、または、その他の形状であって、その形状の場所に配置するよう選択された特定のRFコンポーネントと一致する形状、厳密に言うと、収容するだろう形状を作りだすように成形される。このようにして、ローターブレードの内側部分は、異なるRFコンポーネントを収容するよう徐々に成形される。これらの成形プロセスにより、ローターブレードの製造中に、RFコンポーネントをローターブレード内部へ埋め込むことが可能になる。つまり、ローターブレードは閉じた物体なので、RFコンポーネントは、積層プロセスの間にローターブレード内部に埋め込まれる。
【0046】
[0057] よって、任意の種類のアンテナ素子/アレイ、増幅器、ミキサ、チューナ、ワイヤ、および導波管を含むRFコンポーネントが、ローターブレードの製造中にローターブレードに追加、厳密には埋め込み、される。このようなプロセスにより、外からは変更がないように見える(すなわち、ローターブレードの外観は実質的に変わっていない)が、RFコンポーネントが埋め込まれたため実際は向上したローターブレードが製造される。
【0047】
[0058] いくつかの実施形態では、図6のRFコンポーネント655Aおよび655Bで示されているように、2つ、3つ、4つ、または任意の数のRFコンポーネントを積み重ねてもよい。このように積み重ねることで、非常に広帯域の信号を達成する点で性能を改善できる。加えて、またあるいは、アンテナ放射パターンのサイドローブで任意の種類の衛星干渉を軽減するために、RFコンポーネントのいくつかをテーパしてもよく、これについては後でより詳細に説明する。
【0048】
[0059] ローターブレード600に埋め込まれるアンテナアレイについては、任意の種類の望ましいアンテナ開口も達成されうる。つまり、アンテナ素子は、任意の種類のアンテナ開口(典型的な非アレイ構成を含む)と同等の性能を達成するように、ローターブレードの内側部分内に配列/配置できる。このような配列により、詳しく後で述べるように、各アンテナアレイのビームの慎重な照準、操縦、指向、または追尾が可能になり、または、各アンテナ素子のビームさえも照準が可能になり、ここで照準には、ブレードの回転も考慮されている(これについては後で詳細に述べる)。
【0049】
[0060] 埋め込まれるRFコンポーネントは、どんなサイズのローターブレードの内側にもフィットするよう共形であることができる非常に薄型のアンテナアレイを含んでもよい。RFコンポーネントは、十分なRF電力を提供しかつ回転するローターブレードへ埋め込まれた状態でも耐えられるよう物理的に頑丈な増幅器、も含み得る。アンテナ受信機の低雑音増幅器(「LNA」)までもローターブレードに埋め込むことができる。
【0050】
[0061] したがって、信号対雑音比(「SNR」)の改善を達成するために、増幅器をアンテナアレイの近傍に配置することができる。埋め込まれるRFコンポーネントは、インピーダンスに合う任意の種類のチューニング機構や、RFからIFへの変換およびIFからRFへの変換を行う任意の種類のミキサを含むこともできる。したがって、RF/IF変換やIF/RF変換を、ローターブレード内で直接おこなってもよい。あるいは、望むなら、RF/IF変換やIF/RF変換を、ローターブレードの外部で行うこともできる。いくつかの実施形態では、どこでRF/IF変換やIF/RF変換を行うかは、中心回転ハブのコネクションの機能性および特徴や、そのコネクションにより過剰な損失や過剰なノイズの導入が生じないかに依存する。
【0051】
アンテナパターンの例
[0062] ここで図7Aおよび7Bを参照する。これらの図面は、アンテナ放射パターンの非限定例をいくつか示している。これらのパターンは単に例示目的で示すものであり、制限やなんらかの限定をするものとみなすべきではない。後の章において、アンテナアレイのビームを外部の送信機または受信機にロックオンするために、ビームをどのように電子的に操縦するかを説明する。
【0052】
[0063] 図7Aは、水平パターン例705を示すアンテナ範囲グラフ700Aを示す。すなわち、回転翼航空機のローターブレードは、開示されたRFコンポーネントを備えているものとする。上から見ると(すなわち、方位705Aで示されるような上から見下ろす図)、航空機のローターブレードに埋め込まれているアンテナアレイは、電磁場を放出し、次いで水平パターン例705に示されるような方位角放射パターンを放出しうる。
【0053】
[0064] 同様に、図7Bは、関連するアンテナ範囲グラフ700Bを示すが、このアンテナ範囲グラフ700Bは立面図(すなわち、回転翼航空機に対して横から水平に見たもの)による。図7Bは、上方へ放射する垂直パターン例(操縦可能)710A、および下方へ放射する垂直パターン例(操縦可能)710Bである。開示される実施形態は、第1組のRFコンポーネントがローターブレードの背面付近に埋め込まれ、第2組のRFコンポーネントがローターブレードの腹面付近に埋め込まれている結果として、1、2、3、4、5、6、7(または任意数)の分離した、操縦可能なアンテナパターンを生成しうる。
【0054】
[0065] つまり、第1組は上方へ照準することができ、かつ第2組は下方へ照準することができる。後で詳述するように、第1組に含まれるアンテナ素子は、すべてが一様に動作することにより1つのアンテナユニットとして機能することもできるし、または、それぞれが独立して動作することにより、たくさんのアンテナユニットとして機能することもできる。このようなダイバーシティにより、形成されるRF通信リンク数の増大が可能になる。第2組のRFコンポーネントについても同様の手法が利用できる。
【0055】
[0066] 一例として、ローターブレードが、その背面上または背面内に配置された8つのアンテナ素子を含み、その腹面上または腹面内に配置された別の8つのアンテナ素子を含むというシナリオを考察する。ここで、上部の8つのアンテナ素子のすべてが一斉に同じ動作をすることで、1つのアンテナユニットとして機能してもよい。同様に、底部の8つのアンテナ素子がすべて一斉に同じ動作をしてもよい。上部の8つのアンテナ素子が互いに一斉に同じ動作をし、底部の8つのアンテナ素子も互いに一斉に同じ動作をしている状況であれば、形成されるRF通信リンクは2つのみである。一緒に動作するアンテナ素子の数が多ければ、複数のRF通信(狭帯域および広帯域の両方)が可能になる。他の状況では、これら16個のアンテナ素子がすべて互いに独立して動作して、16個の潜在的なRF通信リンクが形成されてもよい。
【0056】
[0067] 図7Bには、メインローブ715およびサイドローブ例720も示されており、ここで方位725は、この方位が横から見た状態として位置づけられることを示している。後述するように、開示される実施形態は、任意の種類の低探知可能性(「LPD」)操縦、低傍受可能性(「LPI」)操縦、アンチジャミング、衛星干渉、およびジオステアリング(geo-steering)をも実行できる。このような操縦技術で、メインローブ715およびサイドローブ720の幅および強度を調節する。矢印730は、どのようにローブを操縦できるかを示している。
【0057】
[0068] 開示される実施形態は、非常に多様なアンテナアーキテクチャーを提供するので、複数の異なる周波数帯(すなわち、広帯域)をサポートできる。つまり、マルチバンドRF通信を実行しうる。サポートされる周波数帯域/幅の例をいくつか挙げると、L帯、S帯、C帯、X帯、Ku帯、K帯、Ka帯、または40GHzより高く90GHzまでの帯域があるが、これらに限定されるものではない。これに関し、開示される実施形態は、少なくとも500MHzと90GHzの間の周波数で動作可能である。参考までに述べると、L帯は、1~2GHzの間の周波数を持つ波長を含む。S帯は、2~4GHzの間の周波数を持つ波長を含む。C帯は、4~8GHzの間の周波数を持つ波長を含む。X帯は、8~12GHzの間の周波数を持つ波長を含む。Ku帯は、12~18GHzの間の周波数を持つ波長を含む。K帯は、18~27GHzの間の周波数を持つ波長を含む。Ka帯は、27~40GHzの間の周波数を持つ波長を含む。
【0058】
電子操縦
[0069] 上記で概説したように、開示される実施形態は、ローターブレードに埋め込まれたアンテナ素子の任意のさまざまな組み合わせを、電子的に「操縦」または「照準」することができる。一例として、ヘリコプターが4枚のローターブレードを有し、各ブレードが16個の上部アンテナ素子および16個の底部アンテナ素子を有し、その結果ヘリコプターは、RF通信リンクの確立に利用可能な追加の128個のアンテナ素子(例えば、16×2×4)を有するとしよう。各アンテナ素子は、他のアンテナ素子から独立して電気的にバイアスすることができるか、あるいは、各アンテナ素子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または任意数の他のアンテナ素子と協調したアンテナアレイとして動作させることもできる。アレイ性能を向上(例えば、利得の増大、より正確なビーム操縦、等)させるために、ローターブレードのアンテナ素子は、別のローターブレードのアンテナ素子とともに動作させることもできる。なお、ビームは複数のアンテナ素子を用いて操縦される。さらに、後述するように、一枚のローターブレードを、複数のRFリンクをサポートするように構成することができる。開示される実施形態は、波形生成およびモデム機能をサポートするよう動作可能でもある。
【0059】
[0070] 一例として、ローターブレードの16個の上部アンテナ素子は、他のローターブレードの16個の上部アンテナ素子と連帯して動作できる。いくつかの状況では、すべての64個の上部アンテナ素子が互いに一斉に同じ動作をし、それによって複数のRF通信リンク(狭帯域およい広帯域の両方)を確立する機会を提供すると同時に、アンテナ効率やアンテナ利得を増大させることもできる。よって、ローターブレードにある任意の数または組み合わせのアンテナ素子を操縦する頑強なネットワークが提供される。
【0060】
[0071] 個々のアンテナ素子が、またはアンテナ素子の小規模なクラスターやグループを形成して、コマンド・アンド・コントロール(「C2」)型の通信を行うために使用されてもよい。なぜなら、このような通信では比較的低い帯域幅しか必要とされないからである。より高い帯域幅の通信(例えば、ビデオデータ)を達成するには、多数のアンテナ素子を合併または組み合わせて一斉に同じ動作をさせるとよい。このような組み合わせにより大きなアンテナ開口を生み出すことができ、これによってもアンテナ効率およびアンテナ利得が増大する。このように効率や利得がより大きくなることで、高帯域の信号(例えば、ビデオ)の送受信が可能になる。結果として、アンテナ素子を組み合わせて一斉に同じ動作をさせることで、より大きな面積になった開口を介してより大きな利得および効率測定値を得ることができる。
【0061】
[0072] よって、アンテナの開口を、リアルタイムかつ必要に応じて動的に調節することができる。特に、開示される実施形態は、アンテナシステムの「等価等方輻射電力」(「EIRP))を明らかにすることができ、EIRPは、送信機の等方性アンテナに対する、アンテナの送信機電力とアンテナの利得(与えられた方向における)との積を意味する。このEIRPを用いることで、エンドポイント(例えば、衛星、飛行機、等)に確実に伝搬信号が正しく到達するように、開口を動的に調節できる。さらにEIRPは、信号対雑音比または利得対雑音温度比(G/T)(例えば、ここで「G」はデシベルおよび受信周波数で示されるアンテナ利得であり、「T」はケルビンで示される受信システムの等価雑音温度である)が適切であることを保証するために使用できる。したがって、RFリンク全体に適合するよう所望の利得を有するように開口を調節できるので、そのリンクを確立する/閉じることができる。よって、所望の利得が達成される可能性があり、動的に開口を調節することで利得を変化させることができる。
【0062】
[0073] アンテナ素子を電子的に操縦するために、RFバックエンドは、RFフロントエンドに送られる信号の位相および振幅を変更し、場合によっては、地空間適応処理方式を適用する。つまり、アンテナシステムは、外部のエンティティへ信号を伝搬するためにRFフロンドエンドに信号を供給できる供給ネットワークを有する。
【0063】
[0074] ビームを電子的に操縦/照準するために、さまざまな技術が利用可能である。これらの技術は一般的に、RFフロントエンドへ送られる信号の位相および振幅を変更するものである。第1技術は、「MIMO」(multiple-input and multiple-output)技術である。MIMOは、複数の送信/受信アンテナの使用によってRFリンクの容量を増やし、それによってマルチパス伝搬を活用する方法である。つまり、多数の異なるアンテナアレイを用いた結果として干渉が生じるとき、MIMOは、異なる開口からマルチパスを実行することで問題に対処できる。これに関し、任意数の信号を、同じRF周波数/チャネルで、互いに同時に送信または受信できる。
【0064】
[0075] アンテナアレイ/素子を照準するための別の技術は、「OAM」(orbital angular momentum multiplexing)と称されるものである。OAMは、信号が電磁波上で互いに多重化される物理層技術であり、この多重化がその電磁波の軌道角運動量の使用により生じるものを一般に意味する。このようなプロセスにより、この電磁波を異なる直交信号から区別できる。これに関し、OAMは、アンテナの操縦を電子スピン(任意のスケールの)に依存するのが一般的である。RFコンポーネントはローターブレードに埋め込まれており、ローターブレードは回転するので、OAMは、回転しているローターブレードに加えて回転している電子を利用して、電磁波の焦点を特定のエンドポイントへ定めることができる。OAMは、信号伝達におけるダイバーシティも向上させる。さらに、信号は互いに直交にできるので、互いの干渉が低減される(または干渉がないことすらある)。結果として、多数の異なるチャネルを1つの電磁波に同時にスタックすることが可能であり、それにより同じ電磁信号/波形から異なるたくさんのリンクを達成できる。
【0065】
[0076] これらの操縦技術およびその他任意の操縦技術によって、開示される実施形態は、アンテナネットワークで利用可能なリンクダイバーシティを高めることができる。「リンクダイバーシティ」とは、さまざまな種類のたくさんのRF通信リンクが確立されうることを一般的に意味し、これらのリンクは複数の異なる帯域/周波数に及び、かつ互いに同時に生成されうる。ダイバーシティは一般に、空間ダイバーシティ、偏波ダイバーシティ、および周波数ダイバーシティとも関連する。
【0066】
[0077] 回転するローターブレードにアンテナ素子を配置できるため、これらの技術では、ローターブレードの回転速度も計算に入れている。つまり、n次元移動体解析/モデルを行ってローターブレードの回転速度を補償する場合がある。各素子はそれ自体が移動物であり、またあるいは、素子が互いに一斉に同じ動作をすることもできるため、アンテナシステムは、どのようにアンテナ素子が構成されるかに相関するn次元移動体解析/モデルを構成することができる。
【0067】
[0078] このn次元移動体モデルを用いると、信号の位相および振幅をローターブレードの回転の関数として求められる。いくつかの実施形態では、(例えば、各アレイ素子からの)電磁波/ビームの各部分が外部のエンドポイントへ電子的に操縦される。この操縦は、アンテナ素子が中心回転ハブの周りを移動するときに各フレームで生じるので、信号がエンドポイントに到達するときには、信号は完全な合成データ/情報のセットになっている。このようにして(例えば、位相および振幅を変えることで)信号を動的に調節することが「回転補償」であり、これは任意数のローターブレードに埋め込まれた任意数のアンテナ素子について実行できる。
【0068】
[0079] 回転補償の実行により、アンテナシステムは自身の電磁ビームを照準して任意の所望の目標を追尾できる。さらに、結果として生成されるビームを、従来のビームと類似した特徴を有するよう形成することもできる。したがって、受信機は、なにも変更しなくても、また送信された信号が本明細書に記載の改良技術を用いて送られたことを知る必要もなく、動作することができる。この点に関し、実施形態は受信機および送信機に依存していない。
【0069】
[0080] これらの向上した電子操縦技術により、アンテナシステムは、たとえ広帯域周波数であっても、低探知可能性(LPD)、低干渉/傍受可能性(LPI)、アンチジャミング、衛星干渉、ジオロケーション、同一地点干渉(cosite interference)、測位・ナビゲーション・タイミング(PNP:position-navigation-timing)、およびジオステアリングをサポートすることもできる(そして、他の動作を狭帯域周波数で行うことができる)。それゆえ、開示される実施形態が軍事用回転翼航空機で実施された場合、電子戦争(「EW」)が行われうる。簡単にLPDやその他のEW操縦技術に関して述べると、アンテナパターンのサイドローブ(例えば、図7Bのサイドローブ720)を調節して、それらの領域の利得を抑制する(例えば、テーパアンテナアレイの使用により)ことができる。このような動作によってサイドローブを制御することができるので、誰が信号を見て誰が見ていないのかを知ることが可能になる。さらに、またあるいは、実施形態は、一定のスペクトル束密度(spectral flux density)を維持するように信号を成形するよう構成されてもよい。スペクトル束密度は、所与の物理的位置における面積あたりの電力量を定義している。実施形態は、所与の物理的位置へ送られる電力を限定するように信号を成形することができ、スペクトル束密度を限定し、信号がLPD、LPI、ジオロケーション、PNT、などを確実に提供できるようにする。
【0070】
[0081] いくつかの状況では、ローターブレードの先端は、実際にはある程度(例えば乱気流により)バタつきうる。ローターブレードは、可塑性素材でできているのが一般的であり、速度によっては上下に少し曲がることがある。開示される操縦技術は、このような屈曲がいつ起こるかを特定することができ(例えば、リンク強度が増加または低減する場合や、バタつきによって目標の位置が変わる結果としてリンクが一瞬切断される場合があるため)、電磁波をターゲットエンドポイントへ再び合わせるための是正措置を取ることができる。このような是正措置は非常に迅速に(例えば、数ナノ秒で)実行することが可能で、それによりリンクの強度を保持できる。一例として、パイロットがアンテナシステムを使って、あるエンドポイントと通信しているとしよう。ローターブレードがなんらかの理由でバタつきまたは屈曲してリンクが一瞬焦点から外れても、この操縦が是正措置を速やかに実行できるので、パイロット(または特定の通信コンポーネント)はリンクが焦点から外れていたことに気づくことすらないだろう。結果として、電子操縦を介して、アンテナアレイはほぼ即座に元の場所に「跳ね」戻ることができる。これに関し、開示される実施形態は、電子操縦を行っている場合、誤り訂正および任意の種類の圧縮または補償を行うことで、その期間中はRF通信リンクを可能な限り強い状態にしておくことを保証できる。
【0071】
複数同時通信リンク
[0082] 図8Aおよび8Bは、複数の即時広帯域RFリンクが確立される状況をいくつか示している。図8Aでは、回転翼航空機800は、1枚のローターブレード上にあるRFフロントエンド805Aと、別のローターブレード上にあるRFフロントエンド805Bと、さらに別のローターブレード上にあるRFフロントエンド805C(これはテールローターブレード)を含むものとして示されている。RFフロントエンド805A、805B、および805Cは、任意数のRFコンポーネントを含みうる点で上述した任意のRFフロントエンドを表している。
【0072】
[0083] この状況において、RFフロントエンド805A、805B、および805Cは、これ以前の図に示したように、複数のアンテナアレイおよび複数の増幅器を含んでいる。各アンテナアレイは、複数のアンテナ素子を含んでいる。さらに、RFフロントエンド805Aは、アンテナ素子と増幅器との第1組を含み、この組は対応するローターブレードの内側部分に埋め込まれており、RFフロントエンド805Bは、アンテナ素子と増幅器との第2組を含み、この組も対応するローターブレードの内側部分に埋め込まれている。RFフロントエンド805Cも自身のRFコンポーネントを有することになる。
【0073】
[0084] 回転翼航空機800も、第1回転ハブ810Aおよび第2回転ハブ810Bと、RFバックエンド810とを含んでいる。RFフロントエンド805Aおよび805Bは、第1回転ハブ810Aを介してRFバックエンド810に接続され、RFフロントエンド805Cは、第2回転ハブ810Bを介してRFバックエンド810に接続されている。RFバックエンド810は、デジタル信号をアナログ信号へ、また、あるいは、アナログ信号をデジタル信号へ変換する。よって、回転翼航空機800は、即時の混合広帯域RF通信を容易にするアンテナ/通信システムを備えている。
【0074】
[0085]図8Aに示すシナリオでは、RFフロントエンド805Bは、少なくとも2つの別個のRF通信リンクを確立しており、RF通信リンクは2つの別個のターゲットエンドポイントへ向けられている。解説すると、通信システムは現在、エンドポイント815およびエンドポイント820と通信している。実施形態は、RFフロントエンド805A、805B、および805Cのそれぞれの中に、任意数の異なるアレイを動的に形成することができる。これらのアンテナアレイビームも、アンテナアレイから放射されたビームを電子操縦することにより、異なる場所/エンドポイントへ向けることができる。
【0075】
[0086] いくつかの実施形態では、異なるアンテナ開口を動的に形成し、かつこれらの開口を操縦するプロセスは、RFフロントエンドの利用可能性および/またはアンテナ素子の利用可能性に基づく場合がある。例えば、エンドポイント815は、回転翼航空機800の正面やや上にあるので、エンドポイント815とRF通信リンクを確立するためには、前方かつ上方に面したアンテナ素子またはアレイが使用されうる。同様に、エンドポイント820は回転翼航空機800の正面やや下にあるので、エンドポイント820とRF通信リンクを確立するためには、前方かつ下方に面したアンテナ素子またはアレイが使用されうる。
【0076】
[0087] アンテナ素子をエンドポイントへ電子操縦すること、EW機能(例えば、衛星干渉、LPD、LPI、等)を実行することに加え、アンテナシステムは、放射エネルギーを電子操縦する際にパイロットの安全も考慮するよう構成することもできる。例えば、開示される実施形態は、回転翼航空機のマッピングを生成または他の方法で入手できる。このマッピングに基づき、そしてローターブレードの回転速度および位置に基づき、アンテナシステムは、ローターのアンテナがパイロットへ向けられているか、または乗員室内へ向けられているときは、エネルギーを下方へ放射しないようにすることができる。望むなら、エネルギー放出時に回転翼航空機の他の部分を避けることもできる。また、例えばティルティング動作(tilting movements)、バンキング動作(banking movements)、その他任意の他の種類の動作など、回転翼航空機の動作を補償するためにアンテナシステムを制御することも可能である。したがって、アンテナシステムによって放出される電磁エネルギーは高度に指向的に管理することができる。
【0077】
[0088] 図8Bは、異なるアンテナ素子が他の素子と動的に組み合わされて、RF通信リンクを確立するための種々の開口を成しているシナリオを示している。具体的には、図8Bは、複数の異なるRFコンポーネントを有するRFフロントエンド825と、RFバックエンド830とを示している。RFフロントエンド825、RFコンポーネント、およびRFバックエンド830は、上述したフロントエンド、RFコンポーネント、およびRFバックエンドを表している。
【0078】
[0089] ここで、RFコンポーネントは異なる4個のグループ、厳密には、例えばアレイ825A、アレイ825B、アレイ825C、およびアレイ825Dなどのアレイ、に動的に分離されている。図8Bでは、どのRFコンポーネントがどのアレイに属するかを陰影の違いで示している。例えば、アレイ825Aは4個のアンテナ素子を含むものとして示され、アレイ825Bはアンテナ素子を1個だけ含むものとして示され、アレイ825Cはアンテナ素子を1個だけ含むものとして示され、そしてアレイ825Dは8個のアンテナ素子を含むものとして示されている。もちろん、任意の数または組み合わせのアンテナ素子が用いられてもよく、また(例えば、アレイのグループが形成されない別のシナリオでは)、各アンテナ素子が独立してバイアスされてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、各素子は独立したアンテナユニットとして、独立して動作可能である。いくつかの場合では、複数のアンテナ素子が1つのアンテナユニットとして集団で動作可能になるように、アンテナ素子のグループ(または素子の全部ですら)を、電子アンテナ操縦を介して集団として制御可能である。
【0079】
[0090] ここで、アレイ825Aはエンドポイント835とRF通信リンクを確立している。アレイ825Bはエンドポイント840とRF通信リンクを確立している。アレイ825Cはエンドポイント845とRF通信リンクを確立している。最後に、アレイ825Dはエンドポイント850とRF通信リンクを確立している。したがって、任意数のRF通信リンクが任意数のターゲットエンドポイントと確立されうる。
【0080】
[0091] 図9は、セカンダリのローターハブ/ブレード905を有する回転翼航空機900と、別の回転翼航空機910とを含むシナリオを示している。ここで、回転翼航空機900は、セカンダリのローターハブ/ブレード905に埋め込まれたRFコンポーネントを用いてRF通信リンク915を確立している。
【0081】
[0092] 図10は別のシナリオを示しており、メインローター1005とセカンダリのローター1010とを含む回転翼航空機1000が他の航空機と通信している。特に、メインローター1005内のRFコンポーネントは、RF通信リンク1020を介して航空機1015と通信するために使用されている。RF通信リンク1020の確立と同時に、セカンダリのローター1010内のRFコンポーネントは、RF通信リンク1030を介して航空機1025と通信するために使用されている。このシステムは、地上の個人、車両、または他のエンティティと通信することもでき、図10の人物1035との通信で示されているように、これらは静止または移動している。よって、RFコンポーネントを回転翼航空機のローターブレードに埋め込むことにより、空対地のリンクであっても、RF通信リンクの数およびダイバーシティは、大いに拡大かつ改善されうる。
【0082】
方法例
[0093] ここで、実行されうる多数の方法および方法行為を示す図11Aおよび11Bを見よう。方法行為は、一定の順序で記載され、または特定の順序で生じるものとしてフロー図に示されうるが、特に言及があった場合や、ある行為がその行為の実行前に完了する別の行為に依存しているため必要である場合を除いて、特定の順番である必要はない。
【0083】
[0094] 図11Aは、アンテナシステムを制御するための方法例1100のフロー図であり、アンテナシステムは、回転翼航空機のRFフロントエンドおよびRFバックエンドを含み、RFフロントエンドは、航空機の複数の異なるローターブレードに分散された、複数の異なるアンテナアレイを含んでいる。前述同様に、この回転翼航空機は、中心回転ハブと、中心回転ハブへ接続された複数のローターブレードとを含んでいる。さらに、この方法は、複数の異なるRF信号を複数の異なるターゲットエンドポイントへ同時に伝搬するために実行される。
【0084】
[0095] まず、方法1100は、行為(行為1105)を含み、この行為では、RFバックエンドが複数の異なる信号を異なるアンテナアレイへ供給し、各アンテナアレイが、異なる信号を異なるターゲットエンドポイント(例えば、図8Bに示したもの)へ送信または受信する。別の言い方をすれば、各アンテナアレイビームは、対応する異なるターゲットエンドポイントへ照準されている。さらに、RFフロントエンドは、複数の違う種類のRFコンポーネント(例えば、アンテナ、増幅器、ミキサ、等)を含むことで、ローターブレードの中に複数の異なる種類のRFコンポーネントが埋め込まれているようにする。
【0085】
[0096] 複数の異なる信号をRFフロントエンドへ供給するこのプロセスは、上述したいずれの操縦技術を用いて実行してもよい。図11Bを少し見ておくと、この図では、行為1105を実行するために従いうるプロセスのいくつかを、さらに詳しく述べてある。
【0086】
[0097] 具体的には、図11Bは、ローターブレードに埋め込まれたアンテナ素子/アレイの回転速度に基づいて、異なる信号をRFフロントエンドへどのように供給するか、について補償をする行為(行為1105A)を示している。例えば、前述したように、素子の回転の特性を修正、厳密には補償するために、n次元解析/モデルを用いて信号の位相が変更されうる。
【0087】
[0098] 加えて、図11Bは、ローターブレードの回転位相全体を通じて、アンテナ素子/アレイの少なくとも1つのメインローブ/ビームを電子操縦する行為(行為1105B)を示している。もちろん、任意の種類の電子操縦を使用してもよい。さらにこの電子操縦プロセスは、回転位相全体にわたり、アンテナ素子/アレイのメインローブを受信機へ電子的に指向することを含む。またさらに、この操縦は回転速度の補償に基づいていてもよい。
【0088】
[0099] 図11Aに戻ると、方法1100は、異なるローターブレード内に配置された複数の異なるアンテナアレイへ供給された複数の異なる信号について、RFバックエンドまたはRFフロントエンドで、変換を実行する行為(行為1100)も含む。この変換は、外部受信機(すなわち、ターゲットエンドポイント)へ送られる信号について、複数の異なる信号を、1つまたは複数の中間周波数から1つまたは複数の無線周波数へ変換することを含む。しかし、送信機から受ける信号については、この変換は無線周波数から中間周波数へ変換することを含みうる。
【0089】
[00100] それから方法1100は、複数の異なるアンテナアレイの一つ一つを、それぞれに対応する変換されたRF信号のメインローブへ、それぞれに対応するターゲットエンドポイントへと指向させる行為(行為1115)を含む。これらの変換された信号は、図2で示したような電磁波の形態でもよい。したがって、複数の異なるRF信号が複数の異なるターゲットエンドポイントへ同時に伝搬される。さらに、これらのRF信号は、まず回転翼航空機のローターブレードから伝搬され、それから3次元空間へ異なるターゲットエンドポイントへ向けて指向される。
【0090】
[00101] よって、開示される実施形態に従うことで、顕著な技術的改良および技術的効果が実現されうる。つまり、回転翼航空機の重量を実質的に変更することなく、かつ回転翼航空機に設置する必要がある他のハードウェアコンポーネントを移動させることなく、追加のRF通信リンクが確立されうる。さらに、それらのリンクのいくつかは、ローターブレードの頭上の影を考慮する必要なしに形成されうる。
【0091】
コンピュータシステム例
[00102] ここで図12を見ると、本明細書で説明した動作を容易にするために用いることが可能なコンピュータシステム例1200が示されている。コンピュータシステム1200は、種々の回転翼航空機に含めることが可能である。例えば、図12では、コンピュータシステム1200はヘリコプター1200A、ドローン1200B、またはティルトウィング(ティルトローター)航空機1200Cにも含めることができる。3種類の回転翼航空機しか示していないが、コンピュータシステム1200は任意の種類の回転翼航空機に含めることが可能である。いくつかの実装では、コンピュータシステム1200は、アンテナシステムのRFバックエンドの一部として含まれる。
【0092】
[00103] その最も基本的な構成において、コンピュータシステム1200は種々のコンポーネントを含む。例えば、図12は、コンピュータシステム1200が、少なくとも1つのプロセッサ1205(「ハードウェア処理装置」として知られている)、アンテナハードウェア1210(例えば、任意の上述したアンテナ、増幅器、ミキサ、チューニングユニット、等)、およびモデム1215を含むことを示している。モデム1215は、アンテナビーム操縦エンジン1220、LPIエンジン1225、LPDエンジン1230、アンチジャミングエンジン1235、ジオロケーションエンジン1240、衛星通信エンジン1245、ビデオインターフェース1250、ネットワークインターフェース1255、およびモデムプロセッサ1260を含む。コンピュータシステム1200は、ストレージ1265も含む。
【0093】
[00104] 本明細書では、「実行可能なモジュール」、「実行可能なコンポーネント」、「エンジン」という用語、また「コンポーネント」という用語であっても、コンピュータシステム1200上で実行されうるソフトウェアオブジェクト、ルーティン、または方法を意味することができる。本明細書に記載された異なるコンポーネント、モジュール、エンジン、およびサービスは、コンピュータシステム1200上で実行するオブジェクトまたはプロセッサとして(例えば、別個のスレッドとして)実装されてもよい。エンジン、モジュール、またはコンポーネントは、1つまたは複数のプロセッサと、特殊な機能をプロセッサに実行させる実行可能な命令との組み合わせであってもよく、これらの特殊な機能は、この開示で述べたもの、特に、図11A及び11Bに記載した個々の方法行為に関連するものなどである。
【0094】
[00105] アンテナビーム操縦エンジン1220は、開示された電子操縦技術(例えば、MIMO、OAM、等)の任意のものを行うために使用されうる。LPIエンジン1225を用いて、LPI技術を行うことができ、同様に、LPDエンジン1230を用いて、LPD技術を行うことができる。アンチジャミングエンジン1235はアンチジャミングを行い、ジオロケーションエンジン1240は、ジオロケーションを行い、衛星通信エンジン1245は、衛星干渉および他の種類の衛星通信を行う。ビデオインターフェース1250は、ビデオ伝送を行うことができる。ネットワークインターフェース1255は、任意の種類のネットワークとの通信に使用できる。モデムプロセッサ1260は、これら他のエンジンのアクティビティを調整するために、かつ/または任意の他の動作を行うために、使用できる。
【0095】
[00106] ストレージ1265は、コード1270の形でコンピュータ実行可能命令を含むことがある。ストレージ1265は、物理システムメモリであってもよく、物理システムメモリは、揮発性、非揮発性、またはこの2つのなんらかの組み合わせである場合がある。本明細書において「メモリ」という用語も、物理的な記憶媒体などの非揮発性大容量記憶装置を意味することがある。コンピュータシステム1200が分散されている場合は、処理、メモリ、および/または記憶能力も分散されうる。
【0096】
[00107] 他の例では、コンポーネント、モジュール、またはエンジンは、単に任意の種類のプロセッサによって実行可能な実行可能命令であってもよい。また他の例では、コンポーネント、モジュール、またはエンジンは、ASICの形であってよいし、任意の個別の動作(例えば、図11Aおよび11Bの方法に含まれる行為のいずれか1つ)を行うように、または複数の動作(例えば、図11Aおよび11Bの方法行為の組み合わせのいずれか)を行うように、特別に構成されたシステム・オン・チップ(「SOC」)デバイスであってもよい。これに関し、コンポーネント、モジュール、またはエンジンは、コンピュータシステムに特殊な動作を実行させることができるハードウェア処理装置、実行可能コードのコンパイル、または上記の組み合わせと考えられる。
【0097】
[00108] 開示される実施形態は、コンピュータハードウェアを含む専用コンピュータか汎用コンピュータを、備えるかまたは利用してよく、コンピュータハードウェアは例えば、1つまたは複数のプロセッサ(プロセッサ1205等)およびシステムメモリ(ストレージ1265等)であり、詳しくは以下で述べる。実施形態は、コンピュータ実行可能命令および/またはデータ構造を運ぶまたは記憶するための物理的およびその他のコンピュータ可読媒体も含む。このようなコンピュータ可読媒体は、汎用または専用コンピュータシステムによってアクセスできる任意の利用可能な媒体であることができる。コンピュータ実行可能命令をデータの形で記憶するコンピュータ可読媒体は、物理的なコンピュータ記憶媒体である。コンピュータ実行可能命令を運ぶコンピュータ可読媒体は、伝送媒体である。このように、例示であって限定するものではないが、現在の実施形態は、種類が明らかに異なる少なくとも2つのコンピュータ可読媒体、すなわち、コンピュータ記憶媒体および伝送媒体を備えることができる。
【0098】
[00109] コンピュータ記憶媒体はハードウェア記憶装置であり、ハードウェア記憶装置は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM、RAMに基づくソリッドステートドライブ(SSD)、フラッシュメモリ、相変化メモリ(PCM)、または他の種類のメモリ、または他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、または他の磁気記憶装置、または、所望のプログラムコード手段をコンピュータ実行可能命令、データ、またはデータ構造の形で記憶するために使用でき、汎用または専用コンピュータによってアクセスできる、任意の他の媒体などである。
【0099】
[00110] コンピュータシステム1200は、(有線又は無線通信を介して)外部のセンサー(例えば、1つまたは複数の遠隔カメラ、加速度計、ジャイロスコープ、音響センサー、磁力計、データ収集システム、等)へ接続されてもよい。さらに、コンピュータシステム1200は、コンピュータシステム1200に関して説明した処理のいずれかを行うよう構成された、遠隔/分離コンピュータシステムへ、1つまたは複数の有線または無線ネットワーク1275によって接続されてもよい。加えて、電磁信号をターゲットエンドポイントへ伝搬することにより、コンピュータシステム1200は他のコンピュータシステムと無線で通信ができる。図示していないが、コンピュータシステム1200は、任意数の入力/出力(「I/O」)装置(例えば、ディスプレイ、キーボード、マウス、等)、またはユーザーに1つまたは複数の画像をレンダリングするようプロセッサ1205とともに構成されるモジュール/エンジン(ディスプレイグラフィックスやグラフィックスレンダリングエンジン)を含んでいてもよい。
【0100】
[00111] 図12で示したネットワーク1275Aのような「ネットワーク」は、コンピュータシステム、モジュール、および/または他の電子デバイスの間における電子データのトランスポートを可能にする、1つまたは複数のデータリンクおよび/またはデータスイッチと定義される。情報がネットワーク(ハードワイヤード、ワイヤレス、またはそれらの組み合わせ)を介してコンピュータへ送られる、または提供される場合、コンピュータは、そのコネクションを伝送媒体として正式に捉える。コンピュータシステム1200は、ネットワーク1275との通信に用いられる1つまたは複数の通信チャネルを含むことになる。伝送媒体は、データまたは所望のプログラムコード手段を、コンピュータ実行可能命令の形あるいはデータ構造の形で運ぶために使用できるネットワークを含む。さらに、これらコンピュータ実行可能命令は、汎用または専用コンピュータによってアクセスできる。上記の組み合わせもコンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0101】
[00112] コンピュータ実行可能命令またはデータ構造の形のプログラムコード手段は、種々のコンピュータシステムコンポーネントに到達すると、伝送媒体からコンピュータ記憶媒体(またはその逆)へ自動的に転送されることができる。例えば、ネットワークまたはデータリンクを介して受けたコンピュータ実行可能命令またはデータ構造を、ネットワークインターフェースモジュール(例えば、ネットワークインターフェースカード、すなわち「NIC」)内のRAMにバッファしてから、最終的にコンピュータシステムのコンピュータシステムRAMおよび/または揮発性のより低いコンピュータ記憶媒体へ転送することができる。したがって、コンピュータ記憶媒体は、同じく(あるいは主として)伝送媒体を利用するコンピュータシステムコンポーネントに、含むことができると理解すべきである。
【0102】
[00113] 当然ながら、コンピュータ実行可能(またはコンピュータ解釈可能)命令は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または専用処理装置に特定の機能または一群の機能を実行させる命令を備えている。コンピュータ実行可能命令は、例えば、バイナリ、アセンブリ言語などの中間フォーマット命令、またはソースコードであってもよい。主題を構造的特徴および/または方法論的行為に特有の言い回しで述べてきたが、添付の請求項に規定される主題は、上述した特徴や行為に限定するものではないことを理解すべきである。むしろ、記載した特徴や行為は、請求項を実施する形態の例として開示されている。
【0103】
[00114] 実施形態は、ネットワークコンピューティング環境において、パーソナルコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、メッセージプロセッサ、ハンドヘルド装置、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサ搭載またはプログラム可能な家電製品、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、携帯電話、PDA、ポケットベル、ルーター、スイッチ、等を含む多くの種類のコンピュータシステム構成で実施されうることが、当業者には分かるであろう。実施形態はまた、ネットワークを介して(ハードワイヤードデータリンク、ワイヤレスデータリンク、またはその両者の組み合わせによって)リンクされたローカルまたは遠隔コンピュータシステムが、それぞれタスク(例えば、クラウドコンピューティング、クラウドサービス、等)を実行する、分散システム環境で実施されてもよい。分散システム環境では、プログラムモジュールは、ローカルおよび遠隔のメモリ記憶装置の両方に配置されてもよい。
【0104】
[00115] さらに、またあるいは、本明細書に記載した機能は、少なくとも部分的には、1つまたは複数のハードウェア論理回路コンポーネント(例えば、プロセッサ1205)によって実行することができる。例えば、限定するものではないが、使用できるハードウェア論理回路コンポーネントの種類の例として、フィールドプログラマブルゲートアレイ(PGA)、特定プログラムまたは特定用途向け集積回路(ASIC)、特定プログラム標準製品(ASSP)、システムオンチップシステム(SOC)、複合プログラマブル論理回路デバイス(CPLD)、中央処理装置(CPU)、および他の種類のプログラム可能ハードウェアが含まれる。開示される実施形態は、波形生成およびモデム機能もサポートする。
【0105】
[00116] 本発明は、その精神および特徴を逸脱しない限りは他の具体的な形態で実施されてもよい。記載された実施形態は、あらゆる点において例示にすぎず、限定的なものではない。したがって、本発明の範囲は、上述した記載ではなく添付した請求項によって示されるものである。請求項との等価性という意味および範囲にあたる変更はすべて、本発明の範囲に包含される。さらに、開示された特徴、プロセス、原理、または行為はいずれも、個別に実施されてもよいし、または開示された任意の他の原理と組み合わせて実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12