(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】固体電池及び固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20231024BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20231024BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231024BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20231024BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20231024BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20231024BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20231024BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20231024BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0562
H01M4/62 Z
H01M4/58
H01M4/136
H01M4/38 Z
H01M4/134
H01M10/058
(21)【出願番号】P 2020043875
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 羊一郎
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-253012(JP,A)
【文献】特表2013-521620(JP,A)
【文献】特開2012-033311(JP,A)
【文献】特開2019-145486(JP,A)
【文献】特開2018-116776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 10/0562
H01M 4/62
H01M 4/38
H01M 4/134
H01M 4/58
H01M 4/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1酸化物固体電解質、第1導電助剤及び第1活物質を含む第1電極層と、
第2酸化物固体電解質、第2導電助剤及び第2活物質を含む第2電極層と、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に設けられ、第3酸化物固体電解質を含む電解質層と
を有し、
前記第1電極層及び前記第2電極層はそれぞれ、前記第1導電助剤及び前記第2導電助剤として鉄シリサイドを含むことを特徴とする固体電池。
【請求項2】
前記鉄シリサイドは、FeSi
2を含むことを特徴とする請求項1に記載の固体電池。
【請求項3】
前記第1活物質は、第1正極活物質を含み、
前記第2活物質は、第1負極活物質を含み、
前記第2電極層は、前記第2活物質の前記第1負極活物質として鉄シリサイドを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の固体電池。
【請求項4】
前記第1活物質は、第2負極活物質を更に含み、
前記第2活物質は、第2正極活物質を更に含み、
前記第1電極層は、前記第1活物質の前記第2負極活物質として鉄シリサイドを含むことを特徴とする請求項3に記載の固体電池。
【請求項5】
前記第1正極活物質は、Li
2CoP
2O
7を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の固体電池。
【請求項6】
前記第1酸化物固体電解質、前記第2酸化物固体電解質及び前記第3酸化物固体電解質のうち、少なくとも前記第2酸化物固体電解質は、Li
1.5Al
0.5Ge
1.5(PO
4)
3を含むことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の固体電池。
【請求項7】
第1酸化物固体電解質、第1導電助剤及び第1活物質を含む第1電極層と、
第2酸化物固体電解質、第2導電助剤及び第2活物質を含む第2電極層と、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に設けられ、第3酸化物固体電解質を含む電解質層と
を有する積層体を形成する工程と、
前記積層体を酸化雰囲気で焼成する工程と
を含み、
前記第1電極層及び前記第2電極層はそれぞれ、前記第1導電助剤及び前記第2導電助剤として鉄シリサイドを含むことを特徴とする固体電池の製造方法。
【請求項8】
前記第1活物質は、第1正極活物質を含み、
前記第2活物質は、第1負極活物質を含み、
前記第2電極層は、前記第2活物質の前記第1負極活物質として鉄シリサイドを含むことを特徴とする請求項7に記載の固体電池の製造方法。
【請求項9】
前記第1活物質は、第2負極活物質を更に含み、
前記第2活物質は、第2正極活物質を更に含み、
前記第1電極層は、前記第1活物質の前記第2負極活物質として鉄シリサイドを含むことを特徴とする請求項8に記載の固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電池及び固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の1つとして、固体電池が知られている。例えば、固体電解質を用いた電解質層の一方の面側に、固体電解質、活物質及び導電助剤を含む正極層を設け、他方の面側に、固体電解質、活物質及び導電助剤を含む負極層を設けた固体電池が知られている。また、固体電池の製造に関し、固体電解質、活物質、導電助剤及びバインダーを含む電極シート又はスラリーと、固体電解質及びバインダーを含む固体電解質シート又はスラリーとを積層し、酸化雰囲気の焼成でバインダーを除去し、より高温の窒素雰囲気で焼結を行う技術が知られている。更に、導電助剤として、1種又は2種以上の炭素材料、燃焼開始温度の異なる2種以上の炭素材料を用いる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/038948号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体電池において、正極及び負極の電極層に用いられる活物質単体は、比較的電子伝導性の低いものが多く、そのため、電極層には、炭素材料のような比較的電子伝導性の高い導電助剤が混合される場合がある。
【0005】
しかし、導電助剤として炭素材料を用いる固体電池では、そのような導電助剤を含む電極層形成用のシート又はスラリー(若しくはペースト)を用いた製造過程で行われる酸化雰囲気での焼成において、その温度及び時間によっては、導電助剤の炭素成分(導電助剤として含まれた炭素材料の少なくとも一部)が焼失してしまう恐れがある。導電助剤の炭素成分が焼失してしまうと、焼失した部分が空隙となり、それが電極層の抵抗の増大等を招き、炭素による充分な電子伝導性の向上効果が得られず、高い動作性能を有する固体電池が得られないことが起こり得る。
【0006】
1つの側面では、本発明は、導電助剤の焼失を抑え、動作性能に優れる固体電池を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、第1酸化物固体電解質、第1導電助剤及び第1活物質を含む第1電極層と、第2酸化物固体電解質、第2導電助剤及び第2活物質を含む第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電極層との間に設けられ、第3酸化物固体電解質を含む電解質層とを有し、前記第1電極層及び前記第2電極層はそれぞれ、前記第1導電助剤及び前記第2導電助剤として鉄シリサイドを含む固体電池が提供される。
【0008】
また、1つの態様では、上記のような固体電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面では、導電助剤の焼失を抑え、動作性能に優れる固体電池を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】固体電池本体の第1の形成例について説明する図(その1)である。
【
図4】固体電池本体の第1の形成例について説明する図(その2)である。
【
図5】固体電池本体の第2の形成例について説明する図(その1)である。
【
図6】固体電池本体の第2の形成例について説明する図(その2)である。
【
図7】固体電池本体の第3の形成例について説明する図(その1)である。
【
図8】固体電池本体の第3の形成例について説明する図(その2)である。
【
図9】固体電池本体の基本構造の焼成について説明する図である。
【
図10】導電助剤にFeSi
2、正極活物質にLCPO、負極活物質にFeSi
2を用いた固体電池の充放電曲線図である。
【
図11】導電助剤にアセチレンブラック、正極活物質にLCPO、負極活物質にFeSi
2を用いた固体電池の充放電曲線図である。
【
図13】固体電池の更に別の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
リチウムイオン二次電池は、装置の小型化や軽量化に大きく寄与し、電気自動車、定置型蓄電設備、携帯情報端末、IoT(Internet of Things)機器、ウェアラブル端末等、用途は拡大している。それに伴い、要求される仕様も多様化しており、高いエネルギー密度、安全性への期待が高まっている。要求に対応するための新しい電池として固体電池の開発が進められている。固体電池の1つとして、電解質に固体電解質材料を用いるものが知られている。このような固体電池は、可燃性の有機電解液を用いないため、漏液、燃焼、爆発、有毒ガスの発生といった危険性を低減して安全性を高めることが可能で、大気中での取り扱いが容易であり、また、低温及び高温の条件でも性能を維持することが可能である。固体電解質材料を用いることで、それに対応して、より高電圧で動作する正極活物質を用いることができるため、高エネルギー密度化等、固体電池の更なる性能向上も期待される。
【0012】
[固体電池]
図1は固体電池の一例について説明する図である。
図1には、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0013】
図1に示す固体電池1は、電極層10及び電極層20、並びにそれらの間に設けられた電解質層30を有する。
電解質層30は、固体電解質材料を含む。電解質層30の固体電解質材料には、酸化物固体電解質が用いられる。電解質層30には、例えば、NASICON(Na super ionic conductor)型(「ナシコン型」とも称される)の酸化物固体電解質の1種であるLAGPが用いられる。LAGPは、一般式Li
1+xAl
xGe
2-x(PO
4)
3(0<x≦1)で表される酸化物固体電解質であって、アルミニウム置換リン酸ゲルマニウムリチウム等と称される。この例では、電解質層30のLAGPとして、組成比x=0.5のLi
1.5Al
0.5Ge
1.5(PO
4)
3が用いられる。
【0014】
電解質層30の一方の面30a側に設けられる電極層10には、固体電解質材料、導電助剤及び活物質が含まれる。電極層10の固体電解質材料には、酸化物固体電解質が用いられる。電極層10の酸化物固体電解質には、例えば、電解質層30に用いられる酸化物固体電解質と同種の材料が用いられる。即ち、この例では、電極層10の酸化物固体電解質として、LAGPが用いられる。電極層10の導電助剤には、鉄シリサイドが用いられる。例えば、電極層10の導電助剤には、鉄シリサイドとしてFeSi2が用いられる。電極層10の活物質には、例えば、正極として動作する際の電圧が5V(Li/Li+)程度の正極活物質であるピロリン酸コバルトリチウム(Li2CoP2O7,以下「LCPO」と言う)が用いられる。
【0015】
電解質層30の他方の面30b側に設けられる電極層20には、固体電解質材料、導電助剤及び活物質が含まれる。電極層20の固体電解質材料には、酸化物固体電解質が用いられる。電極層20の酸化物固体電解質には、例えば、電解質層30に用いられる酸化物固体電解質と同種の材料が用いられる。即ち、この例では、電極層20の酸化物固体電解質として、LAGPが用いられる。電極層20の導電助剤には、鉄シリサイドが用いられる。例えば、電極層20の導電助剤には、鉄シリサイドとしてFeSi2が用いられる。電極層20の活物質には、鉄シリサイド、例えば、導電助剤と同じくFeSi2が用いられる。FeSi2は、負極として動作する際の電圧が1V(Li/Li+)程度の負極活物質の一例である。
【0016】
上記のような電解質層30、電極層10及び電極層20を有する固体電池1では、電極層10が正極として機能し、電極層20が負極として機能する。固体電池1の充電時には、正極の電極層10から電解質層30を介して負極の電極層20にリチウムイオンが伝導して取り込まれ、放電時には、負極の電極層20から電解質層30を介して正極の電極層10にリチウムイオンが伝導して取り込まれる。固体電池1では、このようなリチウムイオン伝導によって充放電動作が実現される。
【0017】
上記構成を有する固体電池1は、例えば、次のような方法を用いて製造される。
一例として、ドクターブレード法等により、電解質層用グリーンシート、正極層用グリーンシート及び負極層用グリーンシートが準備される。電解質層用グリーンシートは、酸化物固体電解質のLAGP及び有機系バインダー等を含む材料を用いて形成される。正極層用グリーンシートは、酸化物固体電解質のLAGP、導電助剤のFeSi2、活物質のLCPO及び有機系バインダー等を含む材料を用いて形成される。負極層用グリーンシートは、酸化物固体電解質のLAGP、導電助剤のFeSi2、活物質のFeSi2及び有機系バインダー等を含む材料を用いて形成される。電解質層用グリーンシート、正極層用グリーンシート及び負極層用グリーンシートが、正極層用グリーンシートと負極層用グリーンシートとの間に電解質層用グリーンシートが介在されるように積層され、焼成が行われる。焼成は、大気や酸素等の酸化性ガスが含まれる酸化雰囲気で行われ、この焼成により、電解質層用グリーンシート、正極層用グリーンシート及び負極層用グリーンシートに含まれる有機系バインダー等の有機成分が焼き飛ばされる(脱媒又は脱脂)。更に酸化雰囲気での焼成(本焼成)が行われることで、電解質層用グリーンシート内、正極層用グリーンシート内及び負極層用グリーンシート内に残る材料の焼結が行われる。これにより、電解質層30が電極層10と電極層20との間に介在された構造を有する固体電池1が製造される。
【0018】
また、別の例として、電解質層用グリーンシート又は焼結体が準備され、正極層用ペースト(若しくはスラリー)、及び負極層用ペースト(若しくはスラリー)が準備される。電解質層用グリーンシートは、酸化物固体電解質のLAGP及び有機系バインダー等を含む材料を用いて形成され、電解質層用焼結体は、酸化物固体電解質のLAGP粉体の圧粉及び焼結により形成される。正極層用ペーストは、酸化物固体電解質のLAGP、導電助剤のFeSi2、活物質のLCPO及び有機系バインダー等を含む材料を用いて形成される。負極層用ペーストは、酸化物固体電解質のLAGP、導電助剤のFeSi2、活物質のFeSi2及び有機系バインダー等を含む材料を用いて形成される。電解質層用グリーンシート又は焼結体、スクリーン印刷法等で塗工される正極層用ペースト及び負極層用ペーストが、正極層用ペーストと負極層用ペーストとの間に電解質層用グリーンシート又は焼結体が介在されるように積層され、酸化雰囲気での焼成が行われ、有機系バインダー等の有機成分が焼き飛ばされる。更に、酸化雰囲気での焼成により、正極層用ペースト内及び負極層用ペースト内に残る材料の焼結が行われる。これにより、電解質層30が電極層10と電極層20との間に介在された構造を有する固体電池1が製造される。
【0019】
尚、固体電池1の製造方法の詳細については後述する。
固体電池1では、電極層10及び電極層20に、導電助剤として鉄シリサイド、この例ではFeSi2が含まれる。FeSi2は、上記のような固体電池1の製造過程で行われる酸化雰囲気での焼成においても比較的安定であり、焼失せずに、或いは焼失が抑えられて、電極層10内及び電極層20内に残存する。
【0020】
一方、従来導電助剤としての利用が知られているアセチレンブラック等の炭素材料の場合には、酸化雰囲気での焼成において、その条件によっては、炭素成分(導電助剤として含まれた炭素材料の少なくとも一部)が焼失してしまうことがある。導電助剤の炭素成分が焼失してしまうと、焼失した部分が空隙となり、それが電極層内で抵抗増大を引き起こす抵抗層となって、電極層の電子伝導性の低下、更には充放電容量の低下を招き、固体電池の動作性能が低下する恐れがある。
【0021】
これに対し、上記固体電池1では、電極層10及び電極層20に、導電助剤として、製造過程の酸化雰囲気での焼成においても比較的安定なFeSi2が用いられることで、その焼失が抑えられる。このように製造過程での焼失が抑えられることで、製造後の固体電池1の電極層10内及び電極層20内に残存する導電助剤の量が確保される。これにより、電極層10及び電極層20の電子伝導性の低下が抑えられ、動作性能に優れる固体電池1が実現される。
【0022】
上記の例では、一方の電極層10が、酸化物固体電解質としてLAGP、導電助剤としてFeSi2、活物質として正極活物質であるLCPOを含み、他方の電極層20が、酸化物固体電解質としてLAGP、導電助剤としてFeSi2、活物質として負極活物質であるFeSi2を含む場合について述べた。このほか、固体電池1において、電極層20には、活物質として、負極活物質のFeSi2と共に、正極活物質、例えば、電極層10の正極活物質と同じくLCPOが含まれてもよい。この場合、固体電池1では、電極層10及び電極層20がいずれも、その成分としてLAGP、FeSi2及びLCPOを含む構成となる。このような構成とすると、充放電前は無極性である固体電池1、即ち、一方の電極層10を正極とし他方の電極層20を負極とすることも、或いは逆に、一方の電極層10を負極とし他方の電極層20を正極とすることもできる、無極性の固体電池1が実現される。このような充放電前には無極性の固体電池1では、充放電が開始された時点で正負極の極性が固定される。
【0023】
充放電前に無極性の固体電池1において、その充放電の開始によって電極層10が正極となった場合には、正極の電極層10に含まれるFeSi2は導電助剤として機能し、正極の電極層10に含まれるLCPOは正極活物質として機能する。充放電の開始によって電極層20が負極となった場合には、負極の電極層20に含まれるFeSi2は導電助剤としても負極活物質としても機能する。負極の電極層20に含まれるLCPOは、活物質としては機能しない。
【0024】
逆に、充放電前に無極性の固体電池1において、充放電の開始によって電極層10が負極となった場合には、負極の電極層10に含まれるFeSi2は導電助剤としても負極活物質としても機能する。負極の電極層10に含まれるLCPOは、活物質としては機能しない。充放電の開始によって電極層20が正極となった場合には、正極の電極層20に含まれるFeSi2は導電助剤として機能し、正極の電極層20に含まれるLCPOは正極活物質として機能する。
【0025】
充放電前に無極性の固体電池1では、電極層10及び電極層20に含まれるFeSi2が、導電助剤としての機能と負極活物質としての機能とを併せ持つ。充放電前に無極性の固体電池1では、電極層10及び電極層20に含まれるFeSi2とLCPOとが所定の割合に調整される。例えば、電極層10及び電極層20がいずれも、正極として機能するのに要する量のLCPOと、負極として機能するのに要する量のFeSi2とを含み、更に、導電助剤として機能するのに要する量のFeSi2を含むように調整される。
【0026】
このような充放電前に無極性の固体電池1でも、電極層10及び電極層20に、製造過程の酸化雰囲気での焼成において炭素材料に比べて安定なFeSi2が用いられることで、その焼失が抑えられる。このように製造過程での焼失が抑えられることで、製造後の固体電池1の電極層10内及び電極層20内に残存する導電助剤の量が確保される。これにより、電極層10及び電極層20の電子伝導性の低下が抑えられ、動作性能に優れる固体電池1が実現される。
【0027】
[固体電池の製造]
続いて、上記のような構成を含む固体電池の製造方法について説明する。ここでは、次の
図2に示すようなチップ形の固体電池を例に、その製造方法について説明する。
【0028】
図2は固体電池の一構成例を示す図である。
図2(A)には、固体電池の一例の外観斜視図を模式的に示している。
図2(B)には、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
図2(B)は、
図2(A)の面P1に沿った切断面の一例である。
【0029】
図2(A)及び
図2(B)に示す固体電池1Aは、チップ形電池の一例であって、固体電池本体1Aaと、その両端部にそれぞれ設けられた集電体40及び集電体50とを有する。
【0030】
固体電池本体1Aaは、
図2(B)に示すように電解質層30、電極層10及び電極層20が積層された構造を有する。1組の電極層10と電極層20との間に1層の電解質層30が介在され、最上層の電極層10上、及び最下層の電極層20下に、それぞれ1層の電解質層30が設けられる。電極層10は、固体電池本体1Aaの一端部に設けられる集電体40と接続され、電極層20は、固体電池本体1Aaの他端部に設けられる集電体50と接続される。電極層10の側面は、集電体40との接続部を除き、電極層10と同じ層内に設けられる例えば電解質層30によって囲まれ、電極層20の側面は、集電体50との接続部を除き、電極層20と同じ層内に設けられる例えば電解質層30によって囲まれる。
図2(A)及び
図2(B)に示すように、固体電池本体1Aaの外面には、例えば、積層された電解質層30群(それらの酸化物固体電解質)が露出する。
【0031】
固体電池本体1Aaにおいて、電解質層30には、例えば、酸化物固体電解質であるLAGPが用いられる。電極層10には、例えば、酸化物固体電解質としてLAGP、導電助剤としてFeSi
2、活物質として正極活物質であるLCPOが含まれる。電極層20には、例えば、酸化物固体電解質としてLAGP、導電助剤としてFeSi
2、活物質として負極活物質であるFeSi
2が含まれる。この場合、固体電池本体1Aaでは、電極層10が正極として機能し、電極層20が負極として機能する。固体電池本体1Aaの最表面の電解質層30には、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、集電体40及び集電体50のうちいずれが正極側でいずれが負極側であるかを示す極性マーカ2が設けられる。この例では、負極として機能する電極層20と接続される集電体50が負極側であることを示す極性マーカ2が設けられる。
【0032】
固体電池本体1Aaにおいて、その電極層20には、例えば、電極層10と同じく正極活物質であるLCPOが含まれてもよい。即ち、電極層10及び電極層20がいずれも、その成分としてLAGP、FeSi2及びLCPOを含む構成とし、充放電前の固体電池本体1Aaを無極性とする構成を採用してもよい。このような構成を採用する場合、極性マーカ2の付与は省略されてもよい。
【0033】
図2(A)及び
図2(B)に示すような構成を有する固体電池1Aの製造方法について、以下に説明する。
(LAGP粉体)
まず、LAGPの原料となる炭酸リチウム(Li
2CO
3)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ゲルマニウム(GeO
2)、リン酸二水素アンモニウム(NH
4H
2PO
4)の粉末が所定の組成比となるように秤量され、磁性乳鉢やボールミルで混合される。混合によって得られた混合物は、アルミナルツボ等に入れられ、温度300℃~400℃で3時間~5時間仮焼成される。仮焼成によって得られた粉体は、温度1200℃~1400℃で1時間~2時間の熱処理によって溶解される。溶解によって得られた材料は、急冷され、ガラス化される。これにより、非晶質のLAGP粉体が形成される。
【0034】
得られた非晶質のLAGP粉体は、200μm以下の粒子径となるように粗解砕され、更にボールミル等の粉砕装置を用いて粉砕されることで、目的の粒径p(メジアン径D50)に調整される。ここで、電解質層用のLAGP粉体については、その粒径pが、例えば2μm≦p≦5μmに調整される。また、電極層用のLAGP粉体については、それぞれ粉体状の活物質の粒子間にLAGP粉体を介在させて電極層のリチウムイオン伝導性を確保する観点から、その粒径pが、電解質層用のものよりも細かい、例えば0.2μm≦p≦1.0μmに調整される。
【0035】
例えばこのような方法により、
図2(B)に示すような固体電池1Aの電解質層30、電極層10及び電極層20に用いられるLAGP粉体が準備される。
(電解質層)
一例として、上記方法によって得られた電解質層用の粒径pのLAGP粉体は、有機系バインダー等と混合され、ドクターブレード法等によってポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)フィルム等のキャリアに塗工され、可塑性のある電解質層用グリーンシート(「LAGPグリーンシート」とも言う)が形成される。例えば、このようにして形成される電解質層用グリーンシートが、
図2(B)に示すような電解質層30の形成に用いられる。
【0036】
また、別の例として、上記方法によって得られた電解質層用の粒径pのLAGP粉体は、一軸油圧プレスによって圧粉体に成形され、温度900℃で3時間焼成される。これにより、電解質層用基板(「LAGP基板」とも言う)が形成される。例えば、このようにして形成される電解質層用基板が、
図2(B)に示すような電解質層30の形成に用いられる。
【0037】
(電極層)
一例として、上記方法によって得られた電極層用の粒径pのLAGP粉体、導電助剤としてのFeSi
2、活物質、アクリル樹脂等のバインダーが混合され、ドクターブレード法等によってPETフィルム等のキャリアに塗工され、電極層用グリーンシートが形成される。ここで、電極層用グリーンシートを正極層用とする場合には、活物質として、正極活物質であるLCPOが含有される。電極層用グリーンシートを負極層用とする場合には、活物質として、負極活物質であるFeSi
2が含有される。電極層用グリーンシートを正負極層兼用とする場合には、活物質として、正極活物質であるLCPOと負極活物質であるFeSi
2とが含有される。正極層用、負極層用、正負極層兼用の電極層用グリーンシートについてそれぞれ、活物質の量が調整される。FeSi
2には、Fe及びSiのメカニカルアロイング(Mechanical Alloying)によって形成されたものが用いられる。例えば、このようにして形成される電極層用グリーンシートが、
図2(B)に示すような電極層10及び電極層20の形成に用いられる。
【0038】
また、別の例として、上記方法によって得られた電極層用の粒径pのLAGP粉体、導電助剤としてのFeSi
2、活物質、アクリル樹脂等のバインダーが混合され、電極層用ペースト(若しくはスラリー)が形成される。ここで、電極層用ペーストを正極層用とする場合には、活物質として、正極活物質であるLCPOが含有される。電極層用ペーストを負極層用とする場合には、活物質として、負極活物質であるFeSi
2が含有される。電極層用ペーストを正負極層兼用とする場合には、活物質として、正極活物質であるLCPOと負極活物質であるFeSi
2とが含有される。正極層用、負極層用、正負極層兼用の電極層用ペーストについてそれぞれ、活物質の量が調整される。FeSi
2には、Fe及びSiのメカニカルアロイングによって形成されたものが用いられる。例えば、このようにして形成される電極層用ペーストが、
図2(B)に示すような電極層10及び電極層20の形成に用いられる。
【0039】
(固体電池本体)
例えば、電解質層用グリーンシート及び電極層用グリーンシートを用いたグリーンシート積層法(
図3及び
図4に示す第1の例)によって、又は、電解質層用基板及び電極層用ペーストを用いたスクリーン印刷法(
図5及び
図6に示す第2の例)によって、又は、電解質層用グリーンシート及び電極層用ペーストを用いたスクリーン印刷法(
図7及び
図8に示す第3の例)によって、
図2(B)に示すような固体電池本体1Aaが形成される。
【0040】
図3及び
図4は固体電池本体の第1の形成例について説明する図である。
図3(A)~
図3(C)にはそれぞれ、固体電池本体に含まれる層の要部斜視図を模式的に示している。
図4には、固体電池本体に含まれる層の積層工程の要部断面図を模式的に示している。
【0041】
図2(B)に示すような固体電池本体1Aaの、電極層10の上下に設けられる電解質層30、電極層20の上下に設けられる電解質層30には、
図3(A)に示すような形状を有する電解質層用グリーンシート31(LAGPグリーンシート)が用いられる。電解質層用グリーンシート31は、上記方法によって得られたものがそのまま或いは切断されて、準備される。
【0042】
図2(B)に示すような固体電池本体1Aaの電極層10には、
図3(B)(その中図)に示すような形状を有する電極層用グリーンシート11が用いられる。電極層用グリーンシート11は、上記方法によって得られた正極層用又は正負極層兼用のものがそのまま或いは切断されて、準備される。更に、固体電池本体1Aaの、電極層10と同じ層内に設けられる電解質層30として、
図3(B)(その上図)に示すような形状、即ち、電極層用グリーンシート11をその一端部を除いて囲むことができるような形状を有する電解質層用グリーンシート31が準備される。電解質層用グリーンシート31は、上記方法によって得られたものが切断されて、準備される。準備された電極層用グリーンシート11と電解質層用グリーンシート31とは、
図3(B)(その下図)に示すように、電極層用グリーンシート11がその一端部を除いて電解質層用グリーンシート31で囲まれるように、予め組み合わされてもよい。
【0043】
図2(B)に示すような固体電池本体1Aaの電極層20には、
図3(C)(その中図)に示すような形状を有する電極層用グリーンシート21が用いられる。電極層用グリーンシート21は、上記方法によって得られた負極層用又は正負極層兼用のものがそのまま或いは切断されて、準備される。更に、固体電池本体1Aaの、電極層20と同じ層内に設けられる電解質層30として、
図3(C)(その上図)に示すような形状、即ち、電極層用グリーンシート21をその一端部を除いて囲むことができるような形状を有する電解質層用グリーンシート31が準備される。電解質層用グリーンシート31は、上記方法によって得られたものが切断されて、準備される。準備された電極層用グリーンシート21と電解質層用グリーンシート31とは、
図3(C)(その下図)に示すように、電極層用グリーンシート21がその一端部を除いて電解質層用グリーンシート31で囲まれるように、予め組み合わされてもよい。
【0044】
上記のようにして得られた電解質層用グリーンシート31、電極層用グリーンシート11及び電極層用グリーンシート21が、
図4に示すような順序となるように積層され、熱圧着される。これにより、固体電池本体1Aaの基本構造(積層体)が形成される。電極層用グリーンシート11が正極層用であり、電極層用グリーンシート21が負極層用である場合、最上層の電解質層用グリーンシート31には、極性マーカ2が付与される。
【0045】
図3(B)には便宜上、電極層用グリーンシート11がその一端部を除いて電解質層用グリーンシート31で囲まれる状態を例示するが、
図4に示す積層及び熱圧着後に、所定の位置で切断が行われることで、電極層用グリーンシート11がその一端部を除いて電解質層用グリーンシート31で囲まれる状態が得られてもよい。同様に、
図3(C)には便宜上、電極層用グリーンシート21がその一端部を除いて電解質層用グリーンシート31で囲まれるような状態を例示するが、
図4に示す積層及び熱圧着後に、所定の位置で切断が行われることで、電極層用グリーンシート21がその一端部を除いて電解質層用グリーンシート31で囲まれる状態が得られてもよい。
【0046】
図5及び
図6は固体電池本体の第2の形成例について説明する図である。
図5(A)~
図5(D)にはそれぞれ、固体電池本体に含まれる層の形成工程の要部斜視図を模式的に示している。
図6には、固体電池本体に含まれる層の積層工程の要部断面図を模式的に示している。
【0047】
上記のように圧粉及び焼結によって形成される、
図5(A)に示すような形状を有する電解質層用基板32(LAGP基板)が準備される。電解質層用基板32の一方の面上の一部に、
図5(B)に示すように、電極層用ペースト12がスクリーン印刷によって塗工される。塗工後、乾燥機によって温度100℃で30分間乾燥されることで、塗工された電極層用ペースト12中の溶剤が除去される。電極層用ペースト12には、正極層用又は正負極層兼用のものが用いられる。電解質層用基板32の一方の面上の残部には、
図5(C)に示すように、絶縁性ペースト、例えば酸化物固体電解質のLAGPを含む電解質層用ペースト33がスクリーン印刷によって塗工される。塗工後、乾燥機によって温度100℃で30分間乾燥されることで、塗工された電解質層用ペースト33中の溶剤が除去される。
【0048】
尚、電極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33のスクリーン印刷による塗工は、複数回行われてもよい。この場合、溶媒除去のための乾燥は、電極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33の各スクリーン印刷後に都度行われてもよいし、電極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33の複数回のスクリーン印刷後に一括で行われてもよい。
【0049】
図5(A)~
図5(C)と同様にして、
図5(D)に示すように、電解質層用基板32の他方の面上の一部に、電極層用ペースト22がスクリーン印刷によって塗工され、その面上の残部に、絶縁性ペースト、例えば電解質層用ペースト33がスクリーン印刷によって塗工される。電極層用ペースト22の塗工後、電解質層用ペースト33の塗工後には、乾燥機によって温度100℃で30分間の乾燥が行われ、塗工された電極層用ペースト22中の溶剤、電解質層用ペースト33中の溶剤が除去される。電極層用ペースト22には、負極層用又は正負極層兼用のものが用いられる。
【0050】
尚、電極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33のスクリーン印刷による塗工は、複数回行われてもよい。この場合、溶媒除去のための乾燥は、電極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33の各スクリーン印刷後に都度行われてもよいし、電極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33の複数回のスクリーン印刷後に一括で行われてもよい。
【0051】
図5(D)に示すような積層体3が、
図6に示すように、電解質層用基板32又は電解質層用グリーンシート31と交互に積層され、熱圧着される。これにより、固体電池本体1Aaの基本構造(積層体)が形成される。電極層用ペースト12が正極層用であり、電極層用ペースト22が負極層用である場合、最上層の電解質層用基板32又は電解質層用グリーンシート31には、極性マーカ2が付与される。
【0052】
図5(B)及び
図5(C)には便宜上、電極層用ペースト12の側面が電解質層用基板32及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態を例示するが、
図6に示す積層及び熱圧着後に、所定の位置で切断が行われることで、電極層用ペースト12の側面が電解質層用基板32及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態が得られてもよい。同様に、
図5(D)には便宜上、電極層用ペースト22の側面が電解質層用基板32及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態を例示するが、
図6に示す積層及び熱圧着後に、所定の位置で切断が行われることで、電極層用ペースト22の側面が電解質層用基板32及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態が得られてもよい。
【0053】
図7及び
図8は固体電池本体の第3の形成例について説明する図である。
図7(A)~
図7(E)にはそれぞれ、固体電池本体に含まれる層の形成工程の要部斜視図を模式的に示している。
図8には、固体電池本体に含まれる層の積層工程の要部断面図を模式的に示している。
【0054】
図7(A)に示すような形状を有する電解質層用グリーンシート31が準備される。電解質層用グリーンシート31上の一部に、
図7(B)に示すように、電極層用ペースト12がスクリーン印刷によって塗工される。塗工後、乾燥機によって温度100℃で30分間乾燥されることで、塗工された電極層用ペースト12中の溶剤が除去される。電極層用ペースト12には、正極層用又は正負極層兼用のものが用いられる。電解質層用グリーンシート31上の残部には、
図7(C)に示すように、絶縁性ペースト、例えば電解質層用ペースト33がスクリーン印刷によって塗工される。塗工後、乾燥機によって温度100℃で30分間乾燥されることで、塗工された電解質層用ペースト33中の溶剤が除去される。
【0055】
尚、電極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33のスクリーン印刷による塗工は、複数回行われてもよい。この場合、溶媒除去のための乾燥は、電極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33の各スクリーン印刷後に都度行われてもよいし、電極層用ペースト12及び電解質層用ペースト33の複数回のスクリーン印刷後に一括で行われてもよい。
【0056】
同様に、
図7(A)に示すような形状を有する電解質層用グリーンシート31が準備され、電解質層用グリーンシート31上の一部に、
図7(D)に示すように、電極層用ペースト22がスクリーン印刷によって塗工される。塗工後、乾燥機によって温度100℃で30分間乾燥されることで、塗工された電極層用ペースト22中の溶剤が除去される。電極層用ペースト22には、負極層用又は正負極層兼用のものが用いられる。電解質層用グリーンシート31上の残部には、
図7(E)に示すように、絶縁性ペースト、例えば電解質層用ペースト33がスクリーン印刷によって塗工される。塗工後、乾燥機によって温度100℃で30分間乾燥されることで、塗工された電解質層用ペースト33中の溶剤が除去される。
【0057】
尚、電極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33のスクリーン印刷による塗工は、複数回行われてもよい。この場合、溶媒除去のための乾燥は、電極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33の各スクリーン印刷後に都度行われてもよいし、電極層用ペースト22及び電解質層用ペースト33の複数回のスクリーン印刷後に一括で行われてもよい。
【0058】
図7(C)に示すような積層体4、及び
図7(E)に示すような積層体5が、
図8に示すように、電解質層用グリーンシート31と交互に積層され、熱圧着される。これにより、固体電池本体1Aaの基本構造(積層体)が形成される。電極層用ペースト12が正極層用であり、電極層用ペースト22が負極層用である場合、最上層の電解質層用グリーンシート31には、極性マーカ2が付与される。
【0059】
図7(B)及び
図7(C)には便宜上、電極層用ペースト12の側面が電解質層用グリーンシート31及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態を例示するが、
図8に示す積層及び熱圧着後に、所定の位置で切断が行われることで、電極層用ペースト12の側面が電解質層用グリーンシート31及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態が得られてもよい。同様に、
図7(D)及び
図7(E)には便宜上、電極層用ペースト22の側面が電解質層用グリーンシート31及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態を例示するが、
図8に示す積層及び熱圧着後に、所定の位置で切断が行われることで、電極層用ペースト22の側面が電解質層用グリーンシート31及び電解質層用ペースト33の一側面から露出する状態が得られてもよい。
【0060】
(焼成)
図9は固体電池本体の基本構造の焼成について説明する図である。
図9(A)には、固体電池本体の基本構造の要部断面図を模式的に示している。
図9(B)には、固体電池本体の基本構造の焼成工程の要部断面図を模式的に示している。
【0061】
上記の
図3及び
図4に示したような方法、又は
図5及び
図6に示したような方法、又は
図7及び
図8に示したような方法により、
図9(A)に示すような、固体電池本体1Aaの基本構造である積層体100が得られる。積層体100は、焼成前の電解質層30(上記の電解質層用グリーンシート31、電解質層用基板32又は電解質層用ペースト33に相当)と、焼成前の電極層10(上記の電極層用グリーンシート11又は電極層用ペースト12に相当)と、焼成前の電極層20(上記の電極層用グリーンシート21又は電極層用ペースト22に相当)とを含む。
【0062】
得られた積層体100は、
図9(B)に示すように、焼成炉120に搬入される。そして、搬入された積層体100に対し、焼成炉120において、大気雰囲気中、温度500℃で7時間の加熱によって脱媒、脱脂のための焼成が行われ、更に、大気雰囲気中、温度600℃~625℃で2時間の加熱によって焼結のための焼成が行われる。これにより、焼成後の電解質層30、電極層10及び電極層20を有する固体電池本体1Aaが形成される。
【0063】
ここで、固体電池本体1Aaの電極層10及び電極層20には、酸化雰囲気での焼成において炭素材料に比べて安定なFeSi2が用いられ、その焼失が抑えられる。焼失が抑えられることで、形成後の固体電池本体1Aaの電極層10内及び電極層20内に残存する導電助剤の量が確保される。これにより、電極層10及び電極層20の電子伝導性の低下が抑えられる。固体電池本体1Aaでは、酸化雰囲気での焼成において比較的安定なFeSi2が用いられるため、脱媒、脱脂及び焼結のための焼成を全工程にわたって酸化雰囲気で行うことが可能になる。
【0064】
また、固体電池本体1Aaでは、酸化雰囲気での焼成の際、例えば電極層20内に含まれるFeSi2が、その電極層20内に含まれるLAGPと共に焼成されることで、ピロリン酸アルミニウムリチウム(LiAlP2O7)が生成される。ここで、酸化物固体電解質のLAGP自体は、6Vといった比較的高電位では酸化分解が生じ難い一方、1V以下といった比較的低電位では還元分解が生じ易い材料の1つである。焼成により電極層20内に生成されるLiAlP2O7は、リチウムイオン伝導物質としての機能と、LAGPの還元分解を抑える機能とを有する。そのため、電極層20が負極として用いられる場合、電極層20内に生成されるLiAlP2O7により、低電位でのLAGPの還元分解が抑えられるようになる。
【0065】
酸化雰囲気での焼成の際には、電極層10内にも同様に、それに含まれるFeSi2がLAGPと共に焼成されることで、LiAlP2O7が生成される。固体電池本体1Aaが無極性とされ、電極層10が負極として用いられる場合には、電極層10内に生成されるLiAlP2O7により、低電位でのLAGPの還元分解が抑えられるようになる。
【0066】
(集電体層の形成)
固体電池本体1Aaの形成後、その電極層10が露出する一端部に、銀(Ag)ペースト等により集電体40が形成される。同様に、固体電池本体1Aaの、電極層20が露出する他端部に、Agペースト等により集電体50が形成される。尚、集電体40及び集電体50には、Agペーストのほか、各種金属粒子や炭素粒子等の導電性粒子を含有した導電性ペーストを用いることもできる。固体電池本体1Aaの両端部にAgペースト等の導電性ペーストが塗工され、焼成によってその導電性ペースト中のAg等の導電性粒子が焼結されて、集電体40及び集電体50が形成される。このように固体電池本体1Aaの一端部に電極層10と接続される集電体40が形成され、固体電池本体1Aaの他端部に電極層20と接続される集電体50が形成されて、
図2(A)及び
図2(B)に示すような構成を有する固体電池1Aが形成される。
【0067】
[固体電池の特性]
続いて、固体電池1A(
図2)に関する評価結果について説明する。
(充放電評価)
電極層10及び電極層20に含まれる導電助剤としてFeSi
2を用い、焼成を全工程にわたって大気雰囲気中で行った固体電池1A(一例として
図7~9の方法で形成されたもの)について、下記のような条件で充放電評価を行った。
【0068】
また、比較のため、電極層10及び電極層20に含まれる導電助剤としてアセチレンブラックを用い、固体電池1Aと同様の方法を用いて形成された固体電池を準備し、その充放電評価を行った。
【0069】
充放電評価において、充電は、定電流(Constant Current;CC)充電とし、終止電圧4.5V又は充電容量100μAh、電流値10μAの条件で行った。また、放電は、CC放電とし、終止電圧0.5V、電流値10μAの条件で行った。充放電の測定は、20℃の恒温槽中で行った。
【0070】
このような条件を用いて行った充放電評価の結果を
図10及び
図11に示す。
図10は導電助剤にFeSi
2、正極活物質にLCPO、負極活物質にFeSi
2を用いた固体電池の充放電曲線図である。
図11は導電助剤にアセチレンブラック、正極活物質にLCPO、負極活物質にFeSi
2を用いた固体電池の充放電曲線図である。
【0071】
図10に示すように、導電助剤として、酸化雰囲気での焼成において比較的焼失が起こり難いFeSi
2を用いることで、4V程度の電圧で動作する固体電池1Aが実現されることが確認された。
【0072】
これに対し、
図11に示すように、導電助剤として、酸化雰囲気での焼成において比較的焼失が起こり易いアセチレンブラックを用いた固体電池では、安定した充放電動作が殆ど認められなかった。
【0073】
(電子伝導性評価)
FeSi2の電子伝導性の調査を行った。まず、FeSi2単体の試料の電子伝導率を測定した。更に、FeSi2を大気雰囲気中、温度500℃で10時間保持する条件で焼成し、焼成によって得られた試料の電子伝導率を測定した。更にまた、FeSi2と非晶質のLAGP粉体とを、50wt%(重量%):50wt%、又は20wt%:80wt%の割合で混合し、混合によって得られた粉体を、大気雰囲気中、温度600℃で2時間保持する条件で焼成し、焼成によって得られた試料の電子伝導率を測定した。これらの電子伝導率の測定には、粒子径(メジアン径D50)が1μmのFeSi2を用いた。
【0074】
電子伝導率の測定には、ねじ締め式のトルクレンチにて圧力をかけることができる治具を用いた。電圧の印加にはポテンショ/ガルバノスタットを用いた。手順としては、治具中に50mgの粉体を充填した後にトルクレンチで20N・mのトルク圧をかけて圧粉体を形成し、その圧粉体の試料の厚みを測定した。この試料にポテンショ/ガルバノスタットを用いて±0.001V~0.005Vの電圧を印加すると、各試料の抵抗に応じた電流が流れる。電流を300秒間流した後、最後の3秒間の平均電流値をプロットすると、直線の近似線を得ることができ、この直線の近似線の傾きは、V=I×Rの関係から、測定した試料の抵抗値を示す。そして抵抗値と試料の厚みから電気抵抗率を求め、その逆数をとれば電子伝導率を算出することができる。具体的には、I-V特性の近似線より求めた抵抗値をR[Ω]、治具の表面積をS[cm2](この例では直径10mmの治具を用いたため0.785cm2)、試料の厚みをA[cm]とすると、電気抵抗率[Ω・cm]=(抵抗値R×表面積S)/厚みA、となり、その逆数が電子伝導率となるため、電子伝導率[S/cm]=1/電気抵抗率、となる。
【0075】
また、比較のため、NiSi2を用いて同様な手順で電子伝導率を測定した。即ち、まず、NiSi2単体の試料の電子伝導率を測定した。更に、NiSi2を大気雰囲気中、温度500℃で10時間保持する条件で焼成し、焼成によって得られた試料の電子伝導率を測定した。更にまた、NiSi2と非晶質のLAGP粉体とを、50wt%:50wt%、又は20wt%:80wt%の割合で混合し、混合によって得られた粉体を、大気雰囲気中、温度600℃で2時間保持する条件で焼成し、焼成によって得られた試料の電子伝導率を測定した。これらの電子伝導率の測定には、粒子径(メジアン径D50)が1μmのNiSi2を用いた。NiSi2には、Ni及びSiのメカニカルアロイングによって形成されたものを用いた。
【0076】
更に、比較のため、アセチレンブラック単体の試料の電子伝導率を測定した。アセチレンブラックを大気雰囲気中、温度500℃で10時間保持する条件で焼成し、焼成によって得られた試料の電子伝導率を測定した。
【0077】
以上の電子伝導率測定の結果を表1に示す。
【0078】
【0079】
FeSi2では、大気雰囲気中、500℃、600℃といった温度でも高い電子伝導率が維持される結果が得られた。
一方、NiSi2では、大気雰囲気中、500℃までは比較的高い電子伝導率が維持されるものの、酸化物固体電解質であるLAGPとの焼成後には電子伝導率が低下する結果が得られた。これは、NiSi2の場合、大気雰囲気中でのLAGPとの焼成の際に、電子伝導に乏しい抵抗層が形成され、電子伝導率が低下しているものと推察される。
【0080】
また、アセチレンブラックでは、焼成前の単体の電子伝導率は比較的高いものの、大気雰囲気中、500℃の焼成では焼失してしまい、電子伝導率を測定することができなかった。このことから、アセチレンブラックは、炭素系導電助剤として用いる場合、高温の大気雰囲気での焼成においては、比較的その安定性に乏しいと言うことができる。
【0081】
図10及び
図11の結果から、炭素系導電助剤であるアセチレンブラックを用いた固体電池では安定した動作が得られなかったが、FeSi
2を導電助剤として電極層10及び電極層20に用いることで、焼成の全工程を酸化雰囲気で行っても、4V程度の電圧で動作可能な固体電池1Aを得ることができる。表1に示した電子伝導率測定の結果からも、FeSi
2は、酸化雰囲気の焼成でも、更に固体電解質と混合された状態での酸化雰囲気の焼成でも、高い安定性を示し、導電助剤として有用だと言える。
【0082】
[他の構成例]
以上の説明では、FeSi2を用いた電極層10及び電極層20を備えるチップ形の固体電池1Aを例示したが、FeSi2を用いた電極層10及び電極層20を備える薄形、コイン形、ボタン形、角形、円筒形等の各種形状の電池も形成することが可能である。
【0083】
図12は固体電池の別の構成例を示す図である。
図12(A)には、固体電池の一例の要部斜視図を模式的に示している。
図12(B)には、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
図12(B)は、
図12(A)の面P2に沿った切断面の一例である。
【0084】
図12(A)及び
図12(B)に示す固体電池1Bは、薄形電池の一例である。固体電池1Bは、外装体200、並びに外装体200から外部に突出する端子210及び端子220を有する。外装体200には、例えば、樹脂、セラミック、絶縁コーティングされた金属等の材料を用いて形成されるフィルム状、袋状又は箱状のもの等を用いることができる。外装体200の内部に、固体電池本体1Baが収容される。固体電池1Bでは、所定の絶縁材料(例えば酸化物固体電解質)で被覆された固体電池本体1Baが、フィルム状、袋状、箱状等の外装体200で更に被覆された構造が採用されてもよい。
【0085】
固体電池本体1Baは、電極層10及び電極層20、並びにそれらの間に設けられた電解質層30を有する。固体電池本体1Baは更に、電極層10に設けられた集電体40、及び電極層20に設けられた集電体50を有する。
【0086】
固体電池本体1Baの電解質層30、電極層10及び電極層20、並びに集電体40及び集電体50には、上記固体電池本体1Aaについて述べたのと同様の材料が用いられる。即ち、電解質層30には、例えば、酸化物固体電解質であるLAGPが用いられる。電極層10には、例えば、酸化物固体電解質としてLAGP、導電助剤としてFeSi2、活物質として正極活物質であるLCPOが含まれる。電極層20には、例えば、酸化物固体電解質としてLAGP、導電助剤としてFeSi2、活物質として負極活物質であるFeSi2が含まれる。この場合、固体電池本体1Baでは、電極層10が正極として機能し、電極層20が負極として機能する。
【0087】
また、固体電池本体1Baにおいて、その電極層20には、例えば、電極層10と同じく正極活物質であるLCPOが含まれてもよい。即ち、電極層10及び電極層20がいずれも、その成分としてLAGP、FeSi2及びLCPOを含む構成とし、充放電前の固体電池本体1Baを無極性とする構成を採用してもよい。
【0088】
固体電池本体1Baの、電極層10側の集電体40に、接合や溶接等の手法を用いて端子210が接続され、電極層20側の集電体50に、接合や溶接等の手法を用いて端子220が接続される。固体電池本体1Baは、これら端子210及び端子220の先端部が外部に露出するように、外装体200の内部に収容される。
【0089】
固体電池1Bでは、その固体電池本体1Baの電極層10及び電極層20に、酸化雰囲気での焼成において比較的安定なFeSi2が用いられ、その焼失が抑えられる。焼失が抑えられることで、形成後の固体電池本体1Baの電極層10内及び電極層20内に残存する導電助剤の量が確保される。これにより、電極層10及び電極層20の電子伝導性の低下が抑えられ、動作性能に優れる固体電池本体1Baが実現される。このような固体電池本体1Baが外装体200の内部に収容され、高性能の薄形の固体電池1Bが実現される。
【0090】
また、
図13は固体電池の更に別の構成例を示す図である。
図13(A)及び
図13(B)にはそれぞれ、固体電池の一例の要部斜視図を模式的に示している。
図13(C)には、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0091】
図13(A)に示す固体電池1Cは、コイン形又はボタン形電池の一例であって、電極層10及び電極層20、並びにそれらの間に設けられた電解質層30を有する。固体電池1Cは、例えば
図13(B)に示すように、電極層10及び電極層20にそれぞれ、集電体40及び集電体50が設けられた形態とされてもよい。固体電池1Cは、例えば
図13(C)に示すように、電極層10(又はそれに設けられる図示しない集電体)に接続され、且つ電極層20(又はそれに設けられる図示しない集電体)には接続されない、導電性の外装体201で被覆されてもよい。
【0092】
固体電池1Cの電解質層30、電極層10及び電極層20、或いは更に集電体40及び集電体50には、上記固体電池本体1Aaについて述べたのと同様の材料が用いられる。即ち、電解質層30には、例えば、酸化物固体電解質であるLAGPが用いられる。電極層10には、例えば、酸化物固体電解質としてLAGP、導電助剤としてFeSi2、活物質として正極活物質であるLCPOが含まれる。電極層20には、例えば、酸化物固体電解質としてLAGP、導電助剤としてFeSi2、活物質として負極活物質であるFeSi2が含まれる。この場合、固体電池1Cでは、電極層10が正極として機能し、電極層20が負極として機能する。
【0093】
また、固体電池1Cにおいて、その電極層20には、例えば、電極層10と同じく正極活物質であるLCPOが含まれてもよい。即ち、電極層10及び電極層20がいずれも、LAGP、FeSi2及びLCPOを含む構成とし、充放電前の固体電池1Cを無極性とする構成を採用してもよい。
【0094】
固体電池1Cでは、その電極層10及び電極層20に、酸化雰囲気での焼成において比較的安定なFeSi2が用いられ、その焼失が抑えられる。焼失が抑えられることで、形成後の固体電池1Cの電極層10内及び電極層20内に残存する導電助剤の量が確保される。これにより、電極層10及び電極層20の電子伝導性の低下が抑えられ、動作性能に優れるコイン形又はボタン形の固体電池1Cが実現される。
【0095】
[変形例]
以上の説明では、電解質層30、電極層10及び電極層20に用いる酸化物固体電解質として非晶質のLAGPを例示したが、電解質層30、電極層10及び電極層20にはそれぞれ、非晶質のLAGPに加えて結晶質のLAGPが含まれてもよい。
【0096】
電解質層30のLAGPには、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3の組成に限らず、Li1.4Al0.4Ge1.6(PO4)3といった他の組成のNASICON型LAGPが用いられてもよい。電解質層30には、LAGPのほか、NASICON型LATP(一般式Li1+zAlzTi2-z(PO4)3,0<z≦1)の1種であるLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、ガーネット型のジルコン酸ランタンリチウム(Li7La3Zr2O12,以下「LLZ」と言う)、ペロブスカイト型のチタン酸ランタンリチウム(Li0.5La0.5TiO3,以下「LLT」と言う)、一部を窒化したγ-リン酸リチウム(γ-Li3PO4,以下「LiPON」と言う)等、他の酸化物固体電解質が用いられてもよい。
【0097】
電極層10及び電極層20には、用いられる活物質との組み合わせで一定の性能が実現されるものであれば、LAGPのほか、LATP、LLZ、LLT、LiPON等の他の酸化物固体電解質が用いられてもよい。
【0098】
例えば、電解質層30、電極層10及び電極層20には、一般式Li1+yAlyM2-y(PO4)3で表されるNASICON型の酸化物固体電解質が好適である。ここで、組成比yは0<y≦1の範囲であり、Mはゲルマニウム(Ge)及びチタン(Ti)の一方又は双方である。
【0099】
電解質層30、電極層10及び電極層20には、互いに同種の酸化物固体電解質が用いられてもよいし、互いに異種の酸化物固体電解質が用いられてもよい。電解質層30、電極層10及び電極層20にはそれぞれ、1種の酸化物固体電解質が用いられてもよいし、2種以上の酸化物固体電解質が用いられてもよい。
【0100】
また、以上の説明では、正極とされる場合の電極層10に含まれる正極活物質として、又は無極性とされる場合の電極層10及び電極層20に含まれる正極活物質として、LCPOを例示したが、正極活物質には、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO4)、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3,以下「LVP」と言う)等が用いられてもよい。電極層10、又は電極層10及び電極層20には、正極活物質として、1種の材料が用いられてもよいし、2種以上の材料が用いられてもよい。
【0101】
また、以上の説明では、負極とされる場合の電極層20に含まれる負極活物質として、又は無極性とされる場合の電極層10及び電極層20に含まれる負極活物質として、FeSi2を用いる場合を例示したが、負極活物質には、FeSi2とは異なる他の組成比の鉄シリサイド(Fe2Si5、FeSi等)が用いられてもよく、FeSi2と他の組成比の鉄シリサイドとを含む材料が用いられてもよい。負極活物質には、少なくともFeSi2のような鉄シリサイドが含まれるものであれば、鉄シリサイドに加えて、LATP、LVP、酸化チタン(TiO2)等の他の材料を更に含むものが用いられてもよい。
【0102】
また、以上の説明では、導電助剤としてFeSi2を用いる場合を例示したが、導電助剤には、FeSi2とは異なる他の組成比の鉄シリサイド(Fe2Si5、FeSi等)が用いられてもよく、FeSi2と他の組成比の鉄シリサイドとを含む材料が用いられてもよい。酸化雰囲気での焼成において炭素材料に比べて焼失し難い材料であれば、鉄シリサイドに限らず、他の金属材料や酸化物材料を用いることも可能であり、そのような材料と鉄シリサイドとを含むものを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0103】
1,1A,1B,1C 固体電池
1Aa,1Ba 固体電池本体
2 極性マーカ
3,4,5,100 積層体
10,20 電極層
11,21 電極層用グリーンシート
12,22 電極層用ペースト
30 電解質層
30a,30b 面
31 電解質層用グリーンシート
32 電解質層用基板
33 電解質層用ペースト
40,50 集電体
120 焼成炉
200,201 外装体
210,220 端子