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特許7372195トンネル坑内の監視システムおよび監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】トンネル坑内の監視システムおよび監視方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/13 20060101AFI20231024BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20231024BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20231024BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
E21D9/13 A
G08C17/00 A
G08C19/00 R
G08C15/00 D
E21D9/13 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020069334
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021165494
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 計行
(72)【発明者】
【氏名】西田 与志雄
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-301418(JP,A)
【文献】特開2019-090188(JP,A)
【文献】特開2015-151750(JP,A)
【文献】特開2002-147170(JP,A)
【文献】特開2004-326309(JP,A)
【文献】特開2009-051538(JP,A)
【文献】特開2005-182289(JP,A)
【文献】特開2006-188906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0196160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/13
G08C 17/00
G08C 19/00
G08C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル坑内の状態を監視する監視システムであって、
前記トンネル坑内に設置された複数の固定局と、前記トンネル坑内を移動可能な移動局とを備え、
各々の前記固定局は、計測部と、前記計測部が計測した計測データを記憶する第1の制御部と、第1の無線通信を用いて前記第1の制御部が記憶する前記計測データを前記移動局に送信する第1の通信部と、を有し、
前記移動局は、前記第1の無線通信を用いて通信エリアに含まれる前記固定局から前記計測データを取得する第2の通信部と、前記固定局から取得した前記計測データを記憶する第2の制御部と、を有し、
トンネルは、シールドトンネルであり、
前記移動局は、セグメントを運搬する電気機関車に、前記第2の通信部および前記第2の制御部を備えるデータ収集ユニットを搭載したものであり、
前記移動局は、シールドマシンに移動する往路では前記計測データの収集を行わず、前記シールドマシンから坑口に戻る復路において、通信相手を変更しながら各々の前記固定局から前記計測データを収集する、
ことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記計測部は、泥水シールド工法で用いる配管若しくは打設用生コンの送り管の管厚を計測する厚さ計、トンネルの歪みを計測する歪みセンサー、およびトンネルの漏水を検出する漏水センサーの何れかである、
ことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記移動局は、前記固定局に対して存在の問合せを行い、前記固定局から前記問合せの応答として前記計測データを取得した後で受取完了報告を前記固定局に対して送信し、
前記固定局は、前記移動局から問合せを受けた場合に自身の識別情報と前記計測データとを送信し、その後で前記移動局から受信した前記受取完了報告に対応する前記計測データを再送しないように所定の処理を行う、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の監視システム。
【請求項4】
トンネル坑外に配置される監視用端末をさらに備え、
前記移動局は、前記第1の無線通信または前記第1の無線通信とは異なる第2の無線通信を用いて各々の前記固定局から収集した前記計測データを前記監視用端末に送信する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の監視システム。
【請求項5】
地上の施設内に配置される他の固定局をさらに備え、
前記他の固定局は、前記監視用端末と有線接続されている、ことを特徴とする請求項4に記載の監視システム。
【請求項6】
トンネル坑内の状態を監視する監視システムにおける監視方法であって、
前記監視システムは、前記トンネル坑内に設置された複数の固定局と、前記トンネル坑内を移動可能な移動局とを備え、
各々の前記固定局は、計測部と、前記計測部が計測した計測データを記憶する第1の制御部と、第1の無線通信を用いて前記第1の制御部が記憶する前記計測データを前記移動局に送信する第1の通信部と、を有し、
前記移動局は、前記第1の無線通信を用いて通信エリアに含まれる前記固定局から前記計測データを取得する第2の通信部と、前記固定局から取得した前記計測データを記憶する第2の制御部と、を有し、
トンネルは、シールドトンネルであり、
前記移動局は、セグメントを運搬する電気機関車に、前記第2の通信部および前記第2の制御部を備えるデータ収集ユニットを搭載したものであり、
前記移動局が前記通信エリアに含まれる前記固定局から前記計測データを取得する取得ステップと、
前記移動局が次の前記固定局まで移動する移動ステップと、を実行し、
シールドマシンに移動する往路では前記計測データの収集を行わず、前記シールドマシンから坑口に戻る復路において、前記取得ステップと前記移動ステップとを繰り返し実行することで、通信相手を変更しながら各々の前記固定局から前記計測データを収集する、
ことを特徴とする監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル坑内の監視システムおよび監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
泥水式シールドなどで使用する排泥管は、砂、砂利、土砂などの粒状物を含んだ流体を輸送することから、配管の摩耗が進行しやすい。また、二次覆工やインバートに用いるコンクリートを圧送する場合には、コンクリート中の骨材が圧送配管の摩耗要因となっている。従来、配管の摩耗を監視する技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術は、配管に計測手段を取り付け、計測手段で計測したデータを情報処理手段によって収集する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-090188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、坑内の圧送距離が長い場合に、計測を行うための準備が大変になるという問題があった。また、工事中のトンネルの長さは工事の進捗に従い延長され、それに伴って監視ポイントが増加するというトンネル独自の事情も存在する。そのため、有線通信によって計測したデータを収集しようとした場合、配線が長距離になると共に工事の進捗に応じて延設しなければならないので配線作業が非常に大変である。また、無線通信によって計測したデータを収集しようとした場合も同様であり、随時増加する監視ポイントに合わせてアクセスポイントを設置する必要があるので、アクセスポイントの設置作業が非常に大変である。特に、急曲線や小口径でかつ鋼製の管路では、通信電波が届き難くなるので細かい間隔でアクセスポイントを設置する必要がある。
【0005】
このような観点から、本発明は、トンネル坑内の監視を容易に行える監視システムおよび監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る監視システムは、トンネル坑内の状態を監視する監視システムである。この監視システムは、前記トンネル坑内に設置された複数の固定局と、前記トンネル坑内を移動可能な移動局とを備える。
各々の前記固定局は、計測部と、前記計測部が計測した計測データを記憶する第1の制御部と、第1の無線通信を用いて前記第1の制御部が記憶する前記計測データを前記移動局に送信する第1の通信部と、を有する。
前記移動局は、前記第1の無線通信を用いて通信エリアに含まれる前記固定局から前記計測データを取得する第2の通信部と、前記固定局から取得した前記計測データを記憶する第2の制御部と、を有する。
トンネルは、シールドトンネルであり、前記移動局は、セグメントを運搬する電気機関車に、前記第2の通信部および前記第2の制御部を備えるデータ収集ユニットを搭載したものである。
前記移動局は、シールドマシンに移動する往路では前記計測データの収集を行わず、前記シールドマシンから坑口に戻る復路において、通信相手を変更しながら各々の前記固定局から前記計測データを収集する。
【0007】
本発明に係る監視システムにおいては、移動局が移動しながら前記固定局から計測データを収集するので、移動局と固定局とが接近した状態で通信を行える環境のみを整えればよく、隣接する固定局間の距離や通信状況または配線を考慮する必要がない。そのため、トンネル坑内の監視をより容易に行える。
また、トンネル工事で使用するものを活用できるので、作業を邪魔することなく計測データを収集できる。また、トンネル工事で使用するものを活用できるので、監視システムの構築に係るコストを抑制できる。
【0010】
前記計測部は、泥水シールド工法で用いる配管若しくは打設用生コンの送り管の管厚を計測する厚さ計、トンネルの歪みを計測する歪みセンサー、およびトンネルの漏水を検出する漏水センサーの何れかであるのがよい。
このようにすると、作業員が手作業で監視対象を計測することなしに配管の摩耗、トンネルの歪み、トンネルの漏水を監視することができる。
【0011】
前記移動局は、前記固定局に対して存在の問合せを行い、前記固定局から前記問合せの応答として前記計測データを取得した後で受取完了報告を前記固定局に対して送信するのがよい。
また、前記固定局は、前記移動局から問合せを受けた場合に自身の識別情報と前記計測データとを送信し、その後で前記移動局から受信した前記受取完了報告に対応する前記計測データを再送しないように所定の処理を行うのがよい。
このようにすると、より確実に計測データを収集することができる。
【0012】
トンネル坑外に配置される監視用端末をさらに備え、前記移動局は、前記第1の無線通信または前記第1の無線通信とは異なる第2の無線通信を用いて各々の前記固定局から収集した前記計測データを前記監視用端末に送信するのがよい。
【0013】
地上の施設内に配置される他の固定局をさらに備え、前記他の固定局は、前記監視用端末と有線接続されているのがよい。
このようにすると、無線通信を行い難い地上の施設内(例えば防音ハウス内)の計測データを収集することができる。
【0014】
本発明に係る監視方法は、トンネル坑内の状態を監視する監視システムにおける監視方法である。前記監視システムは、前記トンネル坑内に設置された複数の固定局と、前記トンネル坑内を移動可能な移動局とを備える。
各々の前記固定局は、計測部と、前記計測部が計測した計測データを記憶する第1の制御部と、第1の無線通信を用いて前記第1の制御部が記憶する前記計測データを前記移動局に送信する第1の通信部と、を有する。
前記移動局は、前記第1の無線通信を用いて通信エリアに含まれる前記固定局から前記計測データを取得する第2の通信部と、前記固定局から取得した前記計測データを記憶する第2の制御部と、を有する。
トンネルは、シールドトンネルであり、前記移動局は、セグメントを運搬する電気機関車に、前記第2の通信部および前記第2の制御部を備えるデータ収集ユニットを搭載したものである。
前記監視方法では、前記移動局が前記通信エリアに含まれる前記固定局から前記計測データを取得する取得ステップと、前記移動局が次の前記固定局まで移動する移動ステップと、を実行する。シールドマシンに移動する往路では前記計測データの収集を行わず、前記シールドマシンから坑口に戻る復路において、前記取得ステップと前記移動ステップとを繰り返し実行することで、通信相手を変更しながら各々の前記固定局から前記計測データを収集する。
【0015】
本発明に係る監視方法においては、移動局が移動しながら前記固定局から計測データを収集するので、移動局と固定局とが接近した状態で通信を行える環境のみを整えればよく、隣接する固定局間の距離や配線を考慮する必要がない。そのため、トンネル坑内の監視をより容易に行える。
また、トンネル工事で使用するものを活用できるので、作業を邪魔することなく計測データを収集できる。また、トンネル工事で使用するものを活用できるので、監視システムの構築に係るコストを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トンネル坑内の監視を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る監視システムの概略構成図である。
図2】監視装置の機能構成図の例示である。
図3】データ収集装置の機能構成図の例示である。
図4】本発明の第1実施形態に係る監視システムの動作を説明するための図であり、(a)は計測データの収集処理のイメージ図であり、(b)は計測データの転送処理のイメージ図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る監視システムにおける計測データの収集処理を示すフロー図の例示である。
図6】本発明の第1実施形態に係る監視システムにおける計測データの転送処理を示すフロー図の例示である。
図7】本発明の第2実施形態に係る監視システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0019】
[第1実施形態]
<第1実施形態に係る監視システムの構成>
図1を参照して、第1実施形態に係る監視システム1について説明する。図1は、監視システム1の概略構成図である。監視システム1は、トンネル坑内の状態を監視するシステムである。監視システム1は、トンネルの種類や監視の目的を限定せずに、様々なトンネルにおいて坑内の監視に利用することができる。監視システム1を用いることができるトンネルは、例えばシールドトンネル、山岳トンネル、ボックスカルバート、推進トンネルなどである。
【0020】
図1に示すように、本実施形態では泥水シールド工法における配管の摩耗を監視することを想定する。ここでは配管の一例として排泥管3を例示して説明する。排泥管3は、坑外に設けられる泥水処理プラント(図示せず)とシールドマシン(図示せず)とを繋ぐようにしてトンネル2に沿って設けられている。排泥管3は、砂、砂利、土砂などの粒状物を含んだ流体を輸送することから摩耗が進行しやすい。監視システム1によれば、作業員がトンネル2内に立ち入って手作業で排泥管3を計測することなしに、排泥管3の各部分を自動で監視できる。なお、図1に示すトンネル2は、シールドトンネルである。
【0021】
図1に示すように、監視システム1は、トンネル坑内の状態を示すデータを収集するデータ収集システム1Aと、データ収集システム1Aによって収集したデータが最終的に転送される監視用端末6を備える。監視用端末6は、例えばトンネル坑外の事務所内に設置され、トンネル工事の管理者などによって操作される。監視用端末6は、収集したデータを表示可能である。なお、監視用端末6は、監視システム1における必須の構成要素ではない。
【0022】
データ収集システム1Aは、トンネル坑内に設置された複数の監視装置4と、トンネル坑内を移動しながら監視装置4から計測データを収集するデータ収集装置5とを備える。図1では、監視装置4として、第一の監視装置4-1,第二の監視装置4-2,第三の監視装置4-3の三つを例示している。監視装置4とデータ収集装置5とは無線通信によってデータをやり取りするので、監視装置4を「固定局」と呼び、データ収集装置5を「移動局」と呼ぶ場合がある。監視装置4には予め識別情報が設定されており、例えば監視装置4とデータ収集装置5との通信において監視装置4がデータ収集装置5に自身の識別情報を通知することによってデータ収集装置5は通信相手を認識する。
【0023】
(監視装置(固定局)の構成について)
監視装置4は、監視対象(ここでは排泥管3)に設置される。設置する監視装置4の数や監視装置4の設置場所などは特に限定されず、例えば監視する目的、内容に基づいて決定されればよい。本実施形態のように排泥管3の摩耗を監視の目的とする場合、監視装置4は、例えば排泥管3の延伸方向(軸方向)に対して等間隔に配置する。また、摩耗が激しい部分(例えば曲管部や設置時期の古い配管)により多くの監視装置4を配置してもよい。また、排泥管3の周方向に複数の監視装置4を配置してもよい。
【0024】
監視装置4の構成を図2に示す。図2は、監視装置4の機能構成図の例示である。監視装置4は、主に、計測に関する機能(計測機能)と、計測データを記憶する機能(記憶機能)と、計測データを通信する機能(通信機能)とを備える。監視装置4は、例えば超音波厚さ計11と、制御基板12と、無線モジュール13と、電源制御部14とを備える。なお、超音波厚さ計11は、「計測部」の一例であり、制御基板12は、「第1の制御部」の一例であり、無線モジュール13は、「第1の通信部」の一例である。
【0025】
超音波厚さ計11は、監視対象の厚さを計測する機器であり、本実施形態では排泥管3の肉厚の計測に用いる。超音波厚さ計11は、超音波発振子を用いて振動させてその周波数を解析するものや、超音波の伝播時間を測定するものであってよい。超音波厚さ計11は、排泥管3の外周面に取り付けられるプローブ11aを有している。超音波厚さ計11は、制御基板12に接続されており、制御基板12からの指示によって計測を行う。超音波厚さ計11は、例えば所定間隔(例えば、1時間ごと)で計測を行う。超音波厚さ計11は、計測の結果(計測データ)を制御基板12に送信する。
【0026】
制御基板12は、監視装置4を統括制御する機器である。制御基板12は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、計測に関する制御や通信に関する制御を行う。また、制御基板12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等でなる記憶手段(図示せず)を有しており、この記憶手段に計測データ(計測した排泥管3の肉厚)を記憶する。計測データを記憶する形式は特に限定されず、例えば計測した時刻などと共にログデータとして記憶する。以下では、ログデータといった場合に、ログデータには計測データが含まれるものとする。
【0027】
無線モジュール13は、無線通信を実現する機器であり、例えば無線チップと周辺回路を小型基板に実装した電子部品である。無線モジュール13は、アンテナ13aを有しており、例えば920MHzの無線帯域(いわゆる「サブギガヘルツ帯」)を用いて無線通信を行う。920MHzの無線帯域は、電波到達性や障害物を迂回する回り込み特性に優れていることが知られている。なお、920MHzの無線帯域を用いた無線通信は、「第1の無線通信」の一例である。無線モジュール13は、制御基板12に接続されており、制御基板12からの指示によって通信を行う。なお、通信プロトコル(つまり、通信の手順)は特に限定されない。無線モジュール13は、例えば受信可能状態で常に待機し、データ収集装置5(図1参照)が監視装置4に近づくことによって(無線モジュール13の通信範囲に含まれることによって)通信を開始する。
【0028】
制御基板12は、データ収集装置5に対して同じ計測データを繰り返し送信しないように制御するのがよい。制御基板12は、例えばデータ収集装置5に対して計測データを送信した後で受取完了報告を受信し、受信した受取完了報告に対応する計測データを再送しないように所定の処理を実行する。所定の処理は、例えば送信した計測データ(ログデータでもよい)にフラグを立てる処理でもよいし、ログデータの時刻を用いて管理するものでもよい。
【0029】
電源制御部14は、電源制御に関する機器である。電源制御部14は、外部の商用電源(例えばAC200V)に接続されており、監視装置4を動作させるのに必要な電力を取得する。トンネル坑内には多数の照明装置が設置されており、照明装置用の電源が設けられている。そのため、電源制御部14を照明装置用の電源に接続することもできる。
【0030】
(データ収集装置(移動局)の構成について)
図1に示すデータ収集装置5について説明する。データ収集装置5は、トンネル坑内を移動しながら各々の監視装置4と通信を行い、監視装置4から計測データ(排泥管3の肉厚)を収集する。また、データ収集装置5は、トンネル2の立坑2aまで移動し、WiFiアクセスポイント7を介して事務所内に設置される監視用端末6と通信を行い、監視装置4から収集した計測データ(排泥管3の肉厚)を監視用端末6に送信する。データ収集装置5は、例えば監視装置4との通信ではトンネル坑内でも安定して通信可能な第1の無線通信方式(例えば920MHzの無線帯域を用いた無線通信)を使用するのがよい。また、データ収集装置5は、監視用端末6との通信では比較的大容量のデータを扱いやすい第2の無線通信方式(例えば2.4GHzの無線帯域を用いた無線通信)を使用するのがよい。なお、監視装置4との通信方式と同じ通信方式で監視用端末6との通信を行ってもよい。
【0031】
データ収集装置5の構成を図3に示す。図3は、データ収集装置5の機能構成図の例示である。データ収集装置5は、主に、トンネル坑内を移動する機能(移動機能)と、監視装置4および監視用端末6と通信する機能(通信機能)と、監視装置4から収集した計測データを記憶する機能(記憶機能)とを備える。データ収集装置5は、例えば工事車両5Aと、工事車両5Aに搭載されるデータ収集ユニット5Bとを備える。工事車両5Aは、「移動体」の一例である。
【0032】
工事車両5Aは、トンネル工事に用いられる車両であり、図示しない駆動手段(例えば、モータやエンジン)および駆動機構(例えば、タイヤや車輪)を備える。工事車両5Aは、トンネル坑内を立坑2aから切羽まで定期的に往復する車両であるのが望ましく、またデータ収集ユニット5Bに駆動電力を供給することができる電源を搭載しているのがよい。本実施形態では工事車両5Aとして、シールドマシンにセグメントを運搬する電気機関車(「バッテリーカー」などとも呼ばれる)を想定する。シールドマシンが掘進している場合、工事車両5Aはサイクルタイムの関係からトンネル坑内を必ず往復する。なお、工事車両5Aは、ダンプカー、トラックアジテーター車などであってよい。
【0033】
データ収集ユニット5Bは、無線通信による通信機能および計測データを記憶する記憶機能を備える装置である。データ収集ユニット5Bは、例えば無線モジュール21と、制御基板22と、有線LAN制御基板23と、WiFiアクセスポイント24と、電源制御部25とを備える。なお、無線モジュール21は、「第2の通信部」の一例であり、制御基板22は、「第2の制御部」の一例であり、WiFiアクセスポイント24は、「第3の通信部」の一例である。
【0034】
無線モジュール21は、無線通信を実現する機器であり、例えば無線チップと周辺回路を小型基板に実装した電子部品である。無線モジュール21は、アンテナ21aを有しており、例えば920MHzの無線帯域を用いて無線通信を行う。無線モジュール21は、制御基板22に接続されており、制御基板22からの指示によって通信を行う。なお、通信プロトコル(つまり、通信の手順)は特に限定されない。無線モジュール21は、例えば相手を特定せずに監視装置4に対して存在の問い合わせを行い、監視装置4からの応答があった場合に当該相手と通信を開始する。
【0035】
制御基板22は、データ収集ユニット5Bを統括制御する機器である。制御基板22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、通信に関する制御や情報の収集に関する制御を行う。また、制御基板22は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等でなる記憶手段(図示せず)を有しており、この記憶手段に各々の監視装置4から収集した計測データ(排泥管3の肉厚)を記憶する。計測データを記憶する形式は特に限定されず、例えば監視装置4毎に計測データ(ログデータでもよい)を記憶する。
【0036】
有線LAN制御基板23は、LAN(Local Area Network)による通信を制御する機器である。有線LAN制御基板23は、制御基板22およびWiFiアクセスポイント24に接続される。
【0037】
WiFiアクセスポイント24は、無線LAN(ここでは、Wi-Fiを例示)による通信を実現する機器である。WiFiアクセスポイント24は、アンテナ24aを有しており、例えば2.4GHzの無線帯域を用いて無線通信を行う。WiFiアクセスポイント24は、有線LAN制御基板23を介して制御基板22に接続されており、制御基板22からの指示によって通信を行う。なお、通信プロトコル(つまり、通信の手順)は特に限定されない。WiFiアクセスポイント24は、例えば工事車両5Aが立坑2aに到着した場合にWiFiアクセスポイント7と通信を開始する。
【0038】
電源制御部25は、電源制御に関する機器である。電源制御部25は、工事車両5Aが備えるバッテリー(例えばDC24V)に接続されており、データ収集ユニット5Bを動作させるのに必要な電力を取得する。なお、データ収集ユニット5B自身がバッテリーを備える構成であってもよい。
【0039】
(監視用端末の構成について)
図1に示す監視用端末6は、データ収集装置5によって収集された計測データが転送され、収集されたデータはトンネル2の様々な管理に利用される。監視用端末6は、例えばトンネル坑外の事務所内に設置され、トンネル工事の管理者などによって操作される。監視用端末6は、WiFiアクセスポイント7に接続されている。WiFiアクセスポイント7は、無線LAN(ここでは、Wi-Fiを例示)による通信を実現する機器である。WiFiアクセスポイント7は、アンテナ7aを有しており、例えば2.4GHzの無線帯域を用いて無線通信を行う。監視用端末6は、立坑2aに近づいた工事車両5AとWiFiアクセスポイント7を介して通信を行い、データ収集装置5によって収集された計測データを取得する。
【0040】
<第1実施形態に係る監視システムの動作>
図4ないし図6を参照して(適宜、図1ないし図3を参照)、監視システム1についての動作を説明する。図4は、監視システム1についての動作を説明するための図であり、図4(a)は計測データの収集処理のイメージ図であり、図4(b)は計測データの転送処理のイメージ図である。図5は、監視システム1における計測データの収集処理を示すフロー図の例示である。図6は、監視システム1における計測データの転送処理を示すフロー図の例示である。
【0041】
以下では、監視システム1の動作を「全体処理」、「計測データの収集処理」、「計測データの転送処理」の順に説明する。なお、計測データの収集処理および計測データの転送処理は、全体処理の一部をなすものである。ここでは、工事車両5Aがシールドマシンにセグメントを運搬した後で坑口に戻る際に計測データの収集を行う場合を想定して説明する。つまり、図1の矢印K1の方向に移動する往路では計測データの収集を行わず、矢印K2の方向に移動する復路において計測データの収集を行う。なお、復路に代えてまたは復路とともに往路で計測データの収集を行ってもよい。なお、工事車両5Aは、けん引する台車にセグメントを乗せて運搬する。
【0042】
(全体処理)
工事車両5Aは、必要に応じてセグメントをトンネル2の坑口からシールドマシンまで運搬し、運搬が完了した後で再び坑口に移動する。この運搬作業の復路において、データ収集ユニット5Bと監視装置4とが近づくことによって無線通信可能になると、監視装置4は、記憶する計測データの中で未送信の計測データがある場合にその未送信の計測データをデータ収集ユニット5Bに送信する。この通信は、920MHzの無線帯域を用いて行われる。データ収集ユニット5Bは、複数の監視装置4に対してこの動作を繰り返し行うことによって計測データを収集する。例えば、図4(a)に示すように、データ収集ユニット5Bは、工事車両5Aがまず第三の監視装置4-3に近づくことにより第三の監視装置4-3から未送信の計測データを受信し、次いで工事車両5Aが第二の監視装置4-2に近づくことにより第二の監視装置4-2から未送信の計測データを受信する。このようにして、データ収集ユニット5Bを搭載した工事車両5Aは、各々の監視装置4から順番に計測データを受信し、最終的に立坑2aに到着する。
【0043】
図4(b)に示すように、工事車両5Aが立坑2aに戻ってきたときに、データ収集ユニット5Bは、収集した計測データを事務所内の監視用端末6に転送する。つまり、工事車両5Aが立坑2a付近に到着してWiFiアクセスポイント7と通信可能なエリアに入ると、データ収集ユニット5Bが監視用端末6と通信して未転送の計測データを監視用端末6に送信する。この通信は、2.4GHzの無線帯域を用いて行われる。監視用端末6は、例えば転送された計測データを保存するとともに画面に表示する。
【0044】
なお、上述した方法では排泥管3のリアルタイムな監視にはならない。しかしながら、排泥管3の摩耗の計測はリアルタイムに行う必要性が低いので(つまり、急激に摩耗が進行することはないので)、上記のタイミングで計測データを収集できれば十分である。なお、監視装置4による計測する間隔および工事車両5Aがトンネル坑内を往復する間隔を短くすることによってリアルタイムの計測に近づけることもできる。
【0045】
(計測データの収集処理)
図5を参照して、計測データの収集処理について説明する。データ収集ユニット5Bは、計測データの収集処理を開始する前(例えば、データ収集ユニット5Bの起動時)に、各々の監視装置4から収集した最終のログデータの時刻を監視用端末6から取得する(ステップS11)。これにより、データ収集ユニット5Bは、今回の収集処理によっていつの時点以降のログデータを収集すればよいのかが分かり、ログデータの時間継続性を維持できる。その後、工事車両5Aは、セグメントをシールドマシンまで運搬し、運搬が完了した後で立坑2aに向けて移動を開始する。なお、各々の監視装置4は、データ収集ユニット5Bとは別に独立して動作しており、例えば予め指定された周期で排泥管3の管厚を計測してログデータをメモリに逐次保存する。つまり、監視装置4が排泥管3の管厚を計測するタイミングとデータ収集ユニット5Bが監視装置4から計測データを収集するタイミングとの関連性は特に限定されない。
【0046】
データ収集ユニット5Bは、復路において所定のタイミングで監視装置4に対して存在を問い合わせるメッセージ(問合せメッセージ)を送信する(ステップS12)。この問合せメッセージは、例えばブロードキャスト送信によって行う。問合せメッセージを受信した監視装置4は、自身の識別情報(監視装置ID)をデータ収集ユニット5Bに通知する。なお、問合せメッセージを受信できる監視装置4は、問合せメッセージを送信した時点においてデータ収集ユニット5Bと通信可能なエリアに含まれている監視装置4である。
【0047】
データ収集ユニット5Bは、監視装置IDを通知した監視装置4に対してログ取得開始時刻を送信し、当該監視装置4はログ取得開始時刻を設定する(ステップS14)。この処理は、例えば初回のみ行われる。つまり、最初は、監視装置4がどこまでログデータを送ったかを理解していないので、データ収集ユニット5Bは、最初だけログ取得開始時刻を監視装置4に設定させる。なお、2回目以降では、前回のデータ送信に対する受信完了(後述するステップS18)を通知された後のデータのみを送信すればよいので当該処理を行わなくてよい。
【0048】
次に、データ収集ユニット5Bは、監視装置IDを通知した監視装置4に対してログデータを要求し(ステップS15)、要求を受けた監視装置4は未送信のログデータ(初回ではログ取得開始時刻よりも後のログデータ)をデータ収集ユニット5Bに送信する(ステップS16)。データ収集ユニット5Bは、受信したログデータをバッファメモリに保存する(ステップS17)。データ収集ユニット5Bは、例えば監視装置IDに対応付けてログデータを保存する。そして、データ収集ユニット5Bは、ログデータの送信に対する受信完了を監視装置4に対して通知する(ステップS18)。受信完了を受け取った監視装置4は、例えば今回送信したログデータに送信済みを示すフラグを立てる。
【0049】
次に、データ収集ユニット5Bは、RTC時刻および計測ピッチ等の設定情報を送信し(ステップS19)、監視装置4は、受信したRTC時刻および計測ピッチ等の設定情報を設定する(ステップS20)。RTC時刻の送信は、長期間の計測による時刻のずれを解消するためであり、ここでは一定周期で時刻同期を行っている。なお、計測ピッチ等の設定情報をその都度送信せずに、監視装置4に予め登録しておいてもよい。また、他の時刻同期手段があれば、RTC時刻の送信を行わなくてもよい。
【0050】
ステップS12~ステップS20の間、データ収集装置5は移動を続けていてもよいし、いったん停止してもよい。また、データ収集装置5は停止しないまでも減速して走行してもよい。データ収集装置5は、複数の監視装置4に対してステップS12~ステップS20の処理を繰り返し行うことにより、各々の監視装置4から順番に計測データを受信する。そして、最終的に立坑2aに到着する。
【0051】
(計測データの転送処理)
図6を参照して、計測データの転送処理について説明する。データ収集ユニット5Bは、計測データの収集処理を開始する前(例えば、データ収集ユニット5Bの起動時)に、各々の監視装置4の最終のログデータの時刻を監視用端末6に要求し(ステップS21)、それに対して監視用端末6は、各々の監視装置4の最終のログデータの時刻を通知する(ステップS22)。これらの処理は、図5のステップS11に対応する処理であり、これにより、データ収集ユニット5Bは、各々の監視装置4から収集した最終のログデータの時刻を監視用端末6から取得する(図5のステップS11)。その後、データ収集ユニット5Bは、立坑2aに戻ってくるたびにステップS23~ステップS27の処理を繰り返し行う。なお、データ収集ユニット5Bは、立坑2aに戻ってくるたびにステップS21~ステップS27の処理を繰り返し行ってもよい。つまり、データ収集ユニット5Bは、各々の監視装置4から収集した最終のログデータの時刻を、立坑2aに戻ってくるたびに取得してもよい。
【0052】
工事車両5Aが立坑2a付近に到着してWiFiアクセスポイント7と通信可能なエリアに入ると、データ収集ユニット5Bと監視用端末6との通信が開始される。最初に、データ収集ユニット5Bは、今回の往復動作で各々の監視装置4から収集したログデータ(つまり未転送のログデータ)を監視用端末6に送信し(ステップS23)、監視用端末6は、受信したログデータをファイルに保存する(ステップS24)。これにより、監視用端末6は、全ての監視装置4のログデータを一度に取得する。
【0053】
次に、データ収集ユニット5Bは、監視用端末6に対してシステム時刻および計測ピッチ等の設定情報を要求し(ステップS25)、監視用端末6は、応答としてシステム時刻および計測ピッチ等の設定情報を送信する(ステップS26)。データ収集ユニット5Bは、監視用端末6から受信した情報に基づいてRTC時刻および設定情報を設定する(ステップS27)。なお、ステップS27で設定されたRTC時刻および設定情報は、次回の往復動作で各々の監視装置4に送信され、監視装置4はこれらの情報を設定する(図5のステップS19,S20)。これにより、全装置間で時刻の同期が取れ、また、監視用端末6で変更した設定情報を全ての監視装置4に対して確実に通知することができる(つまり、設定情報の登録作業を監視装置4ごとにしなくてよい)。
【0054】
以上のように、第1実施形態に係る監視システム1は、データ収集装置5(移動局)が移動しながら監視装置4(固定局)から計測データを収集するので、データ収集装置5と監視装置4とが接近した状態で通信を行える環境のみを整えればよく、隣接する監視装置4間の距離や通信状況または配線を考慮する必要がない。そのため、トンネル坑内の監視をより容易に行える。
特に、工事中のトンネルの長さは工事の進捗に従い延長され、それに伴って監視ポイントが増加するというトンネル独自の事情が存在する。監視システム1であれば、監視装置4の他に送受信施設を整備する必要がないので、トンネルが延長されることに伴う作業負担が少ない。
また、第1実施形態に係る監視システム1は、トンネル工事で使用する工事車両5Aを活用できるので、作業を邪魔することなく計測データを収集できる。また、トンネル工事で使用する工事車両5Aを活用できるので、監視システム1の構築に係るコストを抑制できる。
【0055】
[第2実施形態]
第1実施形態では、監視装置4で計測した計測データをデータ収集装置5が無線通信を用いて収集し、収集した計測データを最終的に監視用端末6に無線通信を用いて転送していた。これによって、監視用端末6に計測データが蓄積され、蓄積された計測データによってトンネル坑内の状態を監視することができた。第2実施形態では、データ収集装置5を介さずに一部の計測データを有線通信によって監視用端末6に送信する。
【0056】
<第2実施形態に係る監視システムの構成>
図7を参照して、第2実施形態に係る監視システム101について説明する。図7は、監視システム101の概略構成図である。監視システム101は、トンネル坑内の状態を監視するシステムである。本実施形態に係る監視システム101は、データ収集システム101Aを備える。
【0057】
図7に示すように、データ収集システム101Aは、トンネル坑内に設置された複数の監視装置4と、トンネル坑内を移動しながら監視装置4から計測データを収集するデータ収集装置5と、地上の施設内に設置された監視装置8とを備える。図7では、トンネル坑内の第一の監視装置4-1,第二の監視装置4-2,第三の監視装置4-3、および防音ハウス内の第四の監視装置8-4,第五の監視装置8-5の五つを例示している。監視装置4およびデータ収集装置5は、第1実施形態と同様である。監視装置8は、計測機能を備えている点で監視装置4と同じであるが、無線による通信機能を有しておらず有線回線によって監視用端末6に接続されている。監視装置8は、プロトコル交換ユニット9を介して監視用端末6に接続されている。プロトコル交換ユニット9は、RS485とUSBのプロトコルの変換を行う機器である。
【0058】
監視装置8は、監視対象(ここでは排泥管3)に設置される。監視装置8は、データ収集装置5によらずに計測データを監視用端末6に送信することができる。そのため、監視用端末6は、データ収集装置5がトンネル坑内を往復するタイミングとは別のタイミングまたは往復するタイミングに加えて追加のタイミングで計測データを得ることができる。監視装置8は、無線通信を行い難い場所(例えば、無線の電波が届かない場所や届き難い場所)に設置されるのがよく、本実施形態では地上の防音ハウス内の泥水処理プラントに設置されている。
【0059】
<第2実施形態に係る監視システムの動作>
工事車両5Aは、必要に応じてセグメントをトンネル2の坑口からシールドマシンまで運搬し、運搬が完了した後で再び坑口に移動する。この運搬作業の復路において、データ収集ユニット5Bと監視装置4とが近づくことによって無線通信可能になると、監視装置4は、記憶する計測データの中で未送信の計測データがある場合にその未送信の計測データをデータ収集ユニット5Bに送信する。この通信は、920MHzの無線帯域を用いて行われる。データ収集ユニット5Bは、複数の監視装置4に対してこの動作を繰り返し行うことによって計測データを収集する。そして、工事車両5Aが立坑2aに戻ってきたときに、データ収集ユニット5Bは、収集した計測データを事務所内の監視用端末6に転送する。
【0060】
また、監視装置8は、泥水処理プラント内の排泥管3の管厚を所定のタイミングで計測し、計測データを有線通信によって監視用端末6に送信する。監視装置8による計測および計測データの送信は、データ収集装置5による監視装置4の計測データの収集とは独立して行うことができる。
【0061】
以上のように、第2実施形態に係る監視システム101によっても、第1実施形態と略同等の効果を奏することができる。
また、第2実施形態に係る監視システム101によれば、無線通信を行い難い施設内(例えば、防音ハウス内)にある排泥管3の管厚を計測することができる。
なお、監視装置8を用いることによって計測データを即時に(リアルタイムで)取得することができるので、監視を重点的に行いたい範囲(例えば稼動時間の長い部分や負荷が大きい部分)に監視装置8を配置してもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
【0063】
各実施形態では、監視装置4とデータ収集装置5との通信に920MHzの無線帯域を用いて無線通信を行うことを想定していた。しかしながら、監視装置4とデータ収集装置5との通信方式はこれに限定されず、様々な無線通信方式を用いることができる。例えば、通信距離が長いLPWA(Low Power Wide Area)方式や通信距離が短いRFID(Radio Frequency Identification)などを用いることもできる。
【0064】
また、各実施形態では、泥水式シールド工法における配管を監視する場合について説明したが、トンネル坑内における他の箇所を監視対象にしてもよい。例えば、監視装置4は、打設用生コンの送り管の管厚を計測する厚さ計、トンネルの歪み(セグメントの変形)を計測する歪みセンサー、トンネルの漏水を検出する漏水センサーなどであってもよい。
【0065】
また、各実施形態では、トンネル工事における監視について説明したが、トンネル完成後の運用における監視にも用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1,101 監視システム
1A,101A データ収集システム
2 トンネル
3 排泥管(配管)
4,8 監視装置(固定局)
5 データ収集装置(移動局)
5A 工事車両(移動体)
5B データ収集ユニット
6 監視用端末
11 超音波厚さ計(計測部)
12 制御基板(第1の制御部)
13 無線モジュール(第1の通信部)
14 電源制御部
21 無線モジュール(第2の通信部)
22 制御基板(第2の制御部)
23 有線LAN制御基板
24 WiFiアクセスポイント(第3の通信部)
25 電源制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7