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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】電動ポンプの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
F04B49/06 311
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020086699
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021181758
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】譚 国棟
(72)【発明者】
【氏名】池邨 将史
(72)【発明者】
【氏名】石島 正大
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 真治
(72)【発明者】
【氏名】笛木 正弘
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-194654(JP,A)
【文献】特開平01-125577(JP,A)
【文献】特開昭60-211508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ部が電動モータで駆動される電動ポンプに適用されて、指示される要求流量に基づき前記電動モータの回転速度であるモータ回転速度を調整する制御と、指示される要求油圧に基づいて前記電動モータを流れる電流であるモータ電流を調整する制御とを実行する制御装置であって、
前記モータ回転速度を速度制限値以下に制限するとともに前記モータ電流を電流制限値以下に制限する制限処理を実行するとともに、
前記制限処理は、前記要求流量及び前記要求油圧にて区分けされた複数の領域毎に前記速度制限値及び前記電流制限値を設定する処理を含み、
前記速度制限値は前記要求流量が少ない前記領域ほど低い回転速度に設定されるとともに、前記電流制限値は前記要求油圧が低い前記領域ほど小さい値に設定される
電動ポンプの制御装置。
【請求項2】
前記速度制限値は、指示される前記要求流量が含まれる領域における流量の最大値に対応する前記モータ回転速度であり、
前記電流制限値は、指示される前記要求油圧が含まれる領域における油圧の最大値に対応する前記モータ電流である
請求項1に記載の電動ポンプの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、車両に搭載される変速機等、油圧で動作する油圧機器に対して作動油を供給する電動ポンプが知られている。この電動ポンプは、電動モータで駆動されるポンプ部を備えており、電動モータの回転速度であるモータ回転速度を調整することによりポンプ部から吐出される作動油の流量が調整されるとともに、電動モータを流れる電流であるモータ電流を調整して当該電動モータの出力トルクを調整することによりポンプ部から吐出される作動油の油圧が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-194654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動ポンプの駆動制御に際しては、油圧機器の動作に必要な要求流量に応じてモータ回転速度は調整される。ここで、例えば油圧機器における作動油の漏れ量などは機器毎に異なっており、正確に把握することは困難なため、実際に必要となる要求流量を正確に求めることは難しい。そこで、要求流量に応じたモータ回転速度を超えた回転速度で電動ポンプを駆動させることが考えられるが、この場合には、実際のモータ回転速度と要求流量に応じたモータ回転速度との乖離が大きいほど、電動ポンプは必要以上に高負荷な状態で作動することになるため、当該電動ポンプの消費電流が増加してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電動ポンプの制御装置は、ポンプ部が電動モータで駆動される電動ポンプに適用されて、指示される要求流量に基づき前記電動モータの回転速度であるモータ回転速度を調整する制御と、指示される要求油圧に基づいて前記電動モータを流れる電流であるモータ電流を調整する制御とを実行する制御装置である。この制御装置は、前記モータ回転速度を速度制限値以下に制限するとともに前記モータ電流を電流制限値以下に制限する制限処理を実行するとともに、前記制限処理は、前記要求流量及び前記要求油圧にて区分けされた複数の領域毎に前記速度制限値及び前記電流制限値を設定する処理を含み、前記速度制限値は前記要求流量が少ない前記領域ほど低い回転速度に設定されるとともに、前記電流制限値は前記要求油圧が低い前記領域ほど小さい値に設定される。
【0006】
同構成によれば、要求流量に基づき調整されるモータ回転速度の最高速度は速度制限値によって制限される。また、要求油圧に基づき調整されるモータ電流の最大値は電流制限値によって制限される。ここで、同構成では、速度制限値及び電流制限値は、要求流量及び要求油圧にて区分けされた複数の領域毎にそれぞれ設定されている。
【0007】
そして、速度制限値は、要求流量が少ない領域ほど低い回転速度に設定されるため、制限処理によって制限されたときのモータ回転速度と要求流量に応じたモータ回転速度との乖離は小さくなり、これによりモータ電流の過剰な増大は抑制される。また、電流制限値は、要求油圧が低い領域ほど小さい値に設定されるため、制限処理によって制限されたときのモータ電流と要求油圧に応じたモータ電流との乖離も小さくなり、これによってもモータ電流の過剰な増大は抑制される。
【0008】
このようにしてモータ電流の過剰な増大が抑制されるため、電動ポンプの消費電流を抑えることができるようになる。
なお、上記速度制限値として、指示される前記要求流量が含まれる領域における流量の最大値に対応する前記モータ回転速度を適用するとともに、上記電流制限値として、指示される前記要求油圧が含まれる領域における油圧の最大値に対応する前記モータ電流を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電動ポンプの制御装置の実施形態を示す模式図。
図2】同実施形態の電動ポンプの吐出性能を示す概念図。
図3】同実施形態の制御装置が実行する処理の手順を示すフローチャート。
図4】同実施形態の制御装置が実行する処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、車両に搭載された変速機に油圧を供給する電動ポンプの制御装置について、その一実施形態を図1図4を参照して説明する。
図1に示すように、車両に搭載された変速機20には、作動油を貯留するオイルパン22が設けられている。オイルパン22の作動油は、電動ポンプ30に吸引された後、吐出油路50を介して変速機20に供給される。吐出油路50の途中には、オイルパン22に繋がるリリーフ油路52が接続されており、このリリーフ油路52の途中には、吐出油路50内の圧力が規定圧以上になると開弁するリリーフ弁40が設けられている。
【0011】
電動ポンプ30は、作動油を吸引して吐出するポンプ部32と、ポンプ部32を駆動する電動モータ34等を備えたオイルポンプとして構成されている。電動モータ34には、同電動モータ34への供給電力を制御するインバータ回路等の駆動回路60が接続されている。
【0012】
電動モータ34を制御する制御装置100は、中央処理装置(以下、CPUという)110や、制御用のプログラムやデータが記憶されたメモリ120を備えている。そして、メモリ120に記憶されたプログラムをCPU110が実行することにより各種制御を実行する。ちなみに、上記駆動回路60、上記制御装置100、及び上記リリーフ弁40の少なくとも一つが電動ポンプ30に一体化されていてもよい。
【0013】
制御装置100には、変速機20を制御する制御装置200が相互通信可能に接続されている。制御装置200は、変速機20の動作状態に基づき、変速機20の動作に必要な作動油の流量である要求流量Fdと、変速機20の動作に必要な作動油の圧力である要求油圧Pdとを算出する。
【0014】
制御装置100は、電動モータ34を流れる電流であるモータ電流Imや、電動モータ34の回転速度であるモータ回転速度Nmを駆動回路60から取得する。また、制御装置100は、上記要求流量Fd及び上記要求油圧Pdを制御装置200から取得する。そして、制御装置100は、要求流量Fdに基づいて目標モータ回転速度Nmpを算出し、モータ回転速度Nmと目標モータ回転速度Nmpとが一致するように駆動回路60を通じて電動モータ34を制御する。また、制御装置100は、要求油圧Pdに基づいて目標電流値Impを算出し、モータ電流Imと目標電流値Impとが一致するように駆動回路60を制御する。
【0015】
また、制御装置100は、上記態様にてモータ回転速度及びモータ電流を制御するに際して、モータ回転速度Nmを速度制限値NL以下に制限するとともにモータ電流Imを電流制限値IL以下に制限する制限処理を実行する。この制限処理では、モータ回転速度Nmが速度制限値NLを超えている場合には、速度制限値NLとなるようにモータ回転速度Nmが調整されることにより、モータ回転速度Nmの最高速度は速度制限値NLを超えないように制限される。同様に、モータ電流Imが電流制限値ILを超えている場合には、電流制限値ILとなるようにモータ電流Imが調整されることにより、モータ電流Imの最大値は電流制限値ILを超えないように制限される。
【0016】
ここで、変速機20や油路における作動油の漏れ量などは機器毎に異なっており、正確に把握することは困難なため、実際に必要となる要求流量を正確に求めることは難しい。そのため、上記制限処理にて制限された場合でも流量不足を回避するためには、想定される漏れ量の最大値を見込んで上記速度制限値NLを設定することが考えられる。しかし、この場合には、制限された状態の実際のモータ回転速度と要求流量に応じたモータ回転速度との乖離が大きいほど、電動ポンプ30は必要以上に高負荷な状態で作動することになるため、モータ電流が過剰に増大してしまい、当該電動ポンプ30の消費電流は増加してしまう。なお、作動油の漏れ量が少ない機器ほど、本来必要な要求流量は少なくなるため、そうした機器ほど、制限された状態の実際のモータ回転速度と要求流量に応じたモータ回転速度との乖離は大きくなる。
【0017】
また、電流制限値ILとしては、少なくとも上述したリリーフ弁40が開弁する規定圧にまで油圧を高めることのできる電流値を設定することが考えられる。しかし、この場合には、以下のような不都合の発生が懸念される。すなわち、作動油の漏れ量が少ない機器の場合には、動作に必要な要求流量に対して実際に供給される流量が過剰になる場合がある。流量が過剰になると、変速機20と電動ポンプ30との間の吐出油路50内における圧力が増大して電動モータ34の回転抵抗が大きくなる。このようにして回転抵抗が大きくなると、モータ電流Imは電流制限値ILにて制限されるまで増大する可能性があり、制限された状態の実際のモータ電流と要求油圧に応じたモータ電流との乖離が大きいほど、モータ電流は過剰に増大してしまい、電動ポンプ30の消費電流は増加してしまう。こうした消費電流の増加は、電動ポンプ30の消費電力の増加や、電動モータ34及び駆動回路60の発熱量増加などを招くことになる。
【0018】
そこで、本実施形態では、速度制限値NL及び電流制限値ILを適切に設定することにより、電動ポンプ30の消費電力の増加を抑えるようにしている。
以下、速度制限値NL及び電流制限値ILの設定態様について説明する。
【0019】
図2に示すように、まず、要求流量Fdが多いほど、モータ回転速度Nmは高くなるように目標モータ回転速度Nmpは設定される。また、要求油圧Pdが高いほど、モータ電流Imは大きくなるように目標電流値Impは設定される。
【0020】
また、図2に示す実線L1は、電動ポンプ30のモータ回転速度と電動ポンプ30から吐出される油圧の最大値との関係を示す線であり、モータ回転速度が高いほど、その回転速度で得ることのできる油圧の最大値は低くなる。これは、モータ回転速度が高いほど、電動モータ34の出力トルクは低下するためである。要求流量Fd及び要求油圧Pdは、この実線L1以下の領域となるように設定される。
【0021】
より詳細には、本実施形態では、要求流量及び要求油圧にて区分けされた複数の領域が設定されている。そして、各領域毎に上記速度制限値NL及び電流制限値ILが設定されている。
【0022】
一例として本実施形態では、要求流量Fdについては、電動ポンプ30において実現可能な最大流量Fmaxから「0」までの間の流量域が4つに分けられている。以下では、流量域を4つに分けるための3つの境界値のことを、少ない流量から多い流量に向かって順に、第1流量Fd1、第2流量Fd2、第3流量Fd3という(0<Fd1<Fd2<Fd3<Fmax)。また、第1流量Fd1が得られるモータ回転速度を第1回転速度Nm1、第2流量Fd2が得られるモータ回転速度を第2回転速度Nm2、第3流量Fd3が得られるモータ回転速度を第3回転速度Nm3という(0<Nm1<Nm2<Nm3)。なお、これら第1回転速度Nm1、第2回転速度Nm2、及び第3回転速度Nm3は、予めの試験等を通じて適切な値が求められている。
【0023】
同様に、要求油圧Pdについても、電動ポンプ30において実現可能な最高油圧Pmaxから「0」までの間の油圧域が4つに分けられている。以下では、油圧域を4つに分けるための3つの境界値のことを、低い油圧から高い油圧に向かって順に、第1油圧Pd1、第2油圧Pd2、第3油圧Pd3という(0<Pd1<Pd2<Pd3<Pmax)。また、第1油圧Pd1が得られるモータ電流を第1電流値Im1、第2油圧Pd2が得られるモータ電流を第2電流値Im2、第3油圧Pd3が得られるモータ電流を第3電流値Im3という。なお、これら第1電流値Im1、第2電流値Im2、及び第3電流値Im3も、予めの試験等を通じて適切な値が求められている。
【0024】
そして、第2流量Fd2よりも多く第3流量Fd3以下の流量域且つ第1油圧Pd1以下の油圧域が第1領域G1として設定されている。また、第1流量Fd1よりも多く第2流量Fd2以下の流量域且つ第1油圧Pd1よりも高く第2油圧Pd2以下の油圧域が第2領域G2として設定されている。また、第2流量Fd2よりも多く第3流量Fd3以下の流量域且つ第2油圧Pd2よりも高く第3油圧Pd3以下の油圧域が第3領域G3として設定されている。
【0025】
そして、上記要求流量Fd及び上記要求油圧Pdの組み合わせで示される電動ポンプ30の動作点MPは、第1領域G1、第2領域G2、及び第3領域G3のうちのいずれかの領域に含まれるように予め設定されている。
【0026】
また、算出された動作点MPが第1領域G1に含まれる場合には、この第1領域G1における要求流量Fdの最大値である第3流量Fd3に対応する第3回転速度Nm3が上記速度制限値NLに設定される。同様に、上記動作点MPが第1領域G1に含まれる場合には、この第1領域G1における要求油圧Pdの最大値である第1油圧Pd1に対応する第1電流値Im1が上記電流制限値ILに設定される。
【0027】
また、算出された動作点MPが第2領域G2に含まれる場合には、この第2領域G2における要求流量Fdの最大値である第2流量Fd2に対応する第2回転速度Nm2が上記速度制限値NLに設定される。同様に、上記動作点MPが第2領域G2に含まれる場合には、この第2領域G2における要求油圧Pdの最大値である第2油圧Pd2に対応する第2電流値Im2が上記電流制限値ILに設定される。
【0028】
そして、算出された動作点MPが第3領域G3に含まれる場合には、この第3領域G3における要求流量Fdの最大値である第1流量Fd1に対応する第1回転速度Nm1が上記速度制限値NLに設定される。同様に、上記動作点MPが第3領域G3に含まれる場合には、この第3領域G3における要求油圧Pdの最大値である第3油圧Pd3に対応する第3電流値Im3が上記電流制限値ILに設定される。
【0029】
このように、速度制限値NLは、制御装置200から制御装置100に対して指示される要求流量Fdが含まれる領域における流量の最大値に対応するモータ回転速度が設定される。また、電流制限値ILは、制御装置200から制御装置100に対して指示される要求油圧Pdが含まれる領域における油圧の最大値に対応するモータ電流が設定される。
【0030】
図3に、上記態様にて速度制限値NLを設定するための処理手順を示す。また、図4に、上記態様にて電流制限値ILを設定するための処理手順を示す。なお、これらの各処理は、制御装置100が所定周期毎に実行する。また、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって、ステップ番号を表現する。
【0031】
図3に示す処理を開始すると、制御装置100は、まず、取得した要求流量Fdが上記第1領域G1内の流量であるか否かを判定する(S110)。そして、要求流量Fdが第1領域G1内の流量であると判定する場合には(S110:YES)、制御装置100は、速度制限値NLとして上記第3回転速度Nm3を設定して(S130)、本処理を一旦終了する。
【0032】
S110の処理にて、要求流量Fdが第1領域G1内の流量ではないと判定する場合には(S110:NO)、制御装置100は、要求流量Fdが上記第2領域G2内の流量であるか否かを判定する(S120)。そして、要求流量Fdが第2領域G2内の流量であると判定する場合には(S120:YES)、制御装置100は、速度制限値NLとして上記第2回転速度Nm2を設定して(S140)、本処理を一旦終了する。
【0033】
S120の処理にて、要求流量Fdが第2領域G2内の流量ではないと判定する場合には(S120:NO)、要求流量Fdは上記第3領域G3内の流量となっている。そこで、この場合には、制御装置100は、速度制限値NLとして上記第1回転速度Nm1を設定して(S150)、本処理を一旦終了する。
【0034】
図4に示す処理を開始すると、制御装置100は、まず、取得した要求油圧Pdが上記第1領域G1内の油圧であるか否かを判定する(S210)。そして、要求油圧Pdが第1領域G1内の油圧であると判定する場合には(S210:YES)、制御装置100は、電流制限値ILとして上記第1電流値Im1を設定して(S230)、本処理を一旦終了する。
【0035】
S210の処理にて、要求油圧Pdが第1領域G1内の油圧ではないと判定する場合には(S210:NO)、制御装置100は、要求油圧Pdが上記第2領域G2内の油圧であるか否かを判定する(S220)。そして、要求油圧Pdが第2領域G2内の油圧であると判定する場合には(S220:YES)、制御装置100は、電流制限値ILとして上記第2電流値Im2を設定して(S240)、本処理を一旦終了する。
【0036】
S220の処理にて、要求油圧Pdが第2領域G2内の油圧ではないと判定する場合には(S220:NO)、要求油圧Pdは上記第3領域G3内の油圧となっている。そこで、この場合には、制御装置100は、電流制限値ILとして上記第3電流値Im3を設定して(S250)、本処理を一旦終了する。
【0037】
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)要求流量Fdに基づき調整されるモータ回転速度Nmの最高速度は速度制限値NLによって制限される。また、要求油圧Pdに基づき調整されるモータ電流Imの最大値は電流制限値ILによって制限される。ここで、本実施形態では、速度制限値NL及び電流制限値ILは、要求流量Fd及び要求油圧Pdにて区分けされた複数の領域、つまり上記第1領域G1、上記第2領域G2、及び上記第3領域G3毎にそれぞれ設定されている。
【0038】
そして、図2及び図3に示したように、速度制限値NLは、要求流量Fdが少ない領域ほど低い回転速度に設定されるため、制限処理によって制限されたときのモータ回転速度と要求流量Fdに応じたモータ回転速度との乖離は小さくなり、これによりモータ電流Imの過剰な増大は抑制される。また、図2及び図3に示したように、電流制限値ILは、要求油圧Pdが低い領域ほど小さい値に設定されるため、制限処理によって制限されたときのモータ電流と要求油圧に応じたモータ電流との乖離も小さくなり、これによってもモータ電流Imの過剰な増大は抑制される。
【0039】
このようにしてモータ電流Imの過剰な増大が抑制されるため、電動ポンプ30の消費電流を抑えることができるようになる。
(2)電動ポンプ30の消費電流を抑えることができるため、電動ポンプ30の消費電力を抑えたり、電動モータ34及び駆動回路60の発熱量を抑えることも可能になる。
【0040】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0041】
・要求流量Fdの流量域を4つに分けたが、そうした区分けの数は適宜変更することができる。同様に、要求油圧Pdの油圧域を4つに分けたが、そうした区分けの数も適宜変更することができる。
【0042】
・要求流量及び要求油圧にて区分けされた複数の領域のうちの3つの領域を使用するようにしたが、使用する領域の数は適宜変更することができる。
・電動ポンプ30の油圧供給先は変速機20であったが、他の油圧機器に油圧を供給してもよい。
【0043】
・電動ポンプ30が吐出する流体は作動油であったが、他の流体を吐出する電動ポンプ、例えば冷却水などを吐出する電動式のウォータポンプでもよい。
・制御装置100は、CPU110とメモリ120とを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態において実行されるソフトウェア処理の少なくとも一部を処理する専用のハードウェア回路(たとえばASIC等)を備えてもよい。すなわち、制御装置100は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てをプログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するメモリ等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア処理回路や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。すなわち、上記処理は、1または複数のソフトウェア処理回路および1または複数の専用のハードウェア回路の少なくとも一方を備えた処理回路によって実行されればよい。
【符号の説明】
【0044】
20…変速機
22…オイルパン
30…電動ポンプ
32…ポンプ部
34…電動モータ
40…リリーフ弁
50…吐出油路
52…リリーフ油路
60…駆動回路
100…制御装置
110…中央処理装置(CPU)
120…メモリ
200…制御装置
図1
図2
図3
図4